人文社会系

専門分野 特性・特色 方向性・課題等
文学 国文学 ○ 人文学は、具体的な目に見える成果が出ないだけに、比較して位置付けるのは困難な分野である。
○ ただ、日本文学は、西欧、アジア(とりわけ中国、韓国)では研究が活発になってきており、国際的な支援態勢が是非とも必要。
● 人文学は、現状では特殊な専門性と細分化により、他の分野との共同研究が困難になりつつある。文理融合を含めた、共同研究や連携研究を積極的に推進し、新しい学問分野の創出を図っていくことが、将来の人文学研究の活性化につながっていくと思う。
史学 日本近世史
アーカイブズ学
【歴史学と隣接するアーカイブズ学について】
○ 国際的に見て、日本では大幅に立ち後れている。
○ フランス革命(1789)以降、アルシーブナショナルが設立され、200年以上にわたって定着しているフランスを始め、欧米・オーストラリアのみならず、アジアの国々もアーカイブズ制度とその学問であるアーカイブズ学は進んでいる。
● 記録史料保存法である日本の公文書館法(1988施行)はユネスコ加盟120ヶ国で最も遅い。
● 国立公文書館(1971)の他、公共アーカイブズは約60館。中国の公共档案館3900館と比べ大きく異なる。韓国も急速に整えている。
● 日本社会にとって、世界から大幅に遅れたアーカイブズ制度の整備は不可欠。 専門職(アーキビズト)を養成するため、アーキビスト養成大学院(専門職大学院)の設立が求められ、大学院教育担当者の養成が求められる。
文化人類学 文化人類学 ○ 専門ごとの区分けが比較的明確な人文・社会系の学問の中で、日本の文化人類学・民族学は、初期においては欧米の影響を受けつつ、様々な学問分野からの研究者が参入したが、教育制度の整備と共に専門化の傾向を強め、さらに最近では対象社会の変化にともない、自らの学問のあり方を問い直しつつある。
○ この分野で海外調査に出る研究者の数は、世界でも有数である。
● 研究論文は日本語で書かれるものの方が多く、調査件数に比べ国際的影響力は限られる。その点の改善のため、日本文化人類学会はJapanese Review of Cultural Anthropologyにより、日本人の研究の紹介を行ってきている。
法学 法学国際法学  ○ 人文・社会科学は、ことばによってさまざまな社会事象や人間の精神作用などを説明する学問である。
○ 国際法は、国際規範を研究対象とすることから、学問そのものが国際的であるが、これまで歴史的経緯および語学の点で世界的に日本がリードしているとはいえない状況があった。しかし、近年、中堅から若手の研究者において外国での論文・著作の公刊や国際学会での活躍が目立ってきている。
○ 研究は国際法の全分野について質の高いものがあり、研究内容が外国(特に欧米諸国)と較べて遜色はない。
○ 国際法は特に日本の独自性が強く現れるような分野ではないが、わが国の置かれた地理的経済的位置から、海洋法や国際経済法の分野での活躍が相対的に大きい。
○ 国際法について、アジアと較べればわが国の研究の質の高さは明らかである。
 
法学 ○ わが国の法律学においては、従来から、外国の法制度の研究が盛んであって、国際的な色彩は濃い。 ● 今年度から法科大学院が始まったが、法科大学院の授業・研究では、わが国の実務(判例)が主に研究対象となるため、外国法の研究はやや手薄になる可能性がある。
● わが国の法律学は、従来、西欧の法制度についての研究が盛んであったが、今後は、東アジア法などに目を向けて、東アジアの法制定・発展過程に寄与していくことが有益であろう。
● 工学系との融合として、都市計画法、インフラ法、交通法、エネルギー法、原子力法など、法律学との関連は多い。
● 生物系、医学系においても、生命倫理、個人情報保護の観点などから、法律学が関わっていくことは有益であろう。
法学 法制史 ○ 社会科学の一分野である法学は、現に存在する法律の解釈を主たる任務とする「実用法学」・「実定法学」と法の基礎的・理論的研究を任務とする「基礎法学」に分けられるが、法制史は法哲学、法社会学等と並んで後者に属する。
○ 実用法学は各国独自の法律を対象とし、それぞれが独自の使命と課題を負っているので、通常は「競争力」の観念とは結びつきにくいが、各国の制度が違いつつも、事実上どこかの国の法制度が国際スタンダード化すると、他国もそれに追随しなければならなくなるような分野(例:知的財産法)では競争力が問われる。この点我が国はアメリカに遅れをとっている。
○ 基礎法学については、従来我が国の学界は手薄な面をもっていたが、最近は諸国が基礎法学への資源投資を怠るようになって、彼我の差は急速に縮まり、分野によっては世界をリードする研究者も出現している。
○ 特筆すべきは、近年、実定法学者と基礎法学者、さらに法実務家の協力により、発展途上国の法制度整備支援が盛んとなり、アメリカ(法)の覇権に歯止めをかける努力が実を結びつつあることである。しかしこの面では、ドイツ、オランダ、フランス、オーストラリア等もしのぎを削っており、今後の一層の努力が求められている。
● 法学分野のパラダイムが大きく変わろうとしている。いわゆる司法試験科目中心の教育研究では世界の趨勢に立ち遅れる。基礎法学、他の社会科学との連携なしには日本の法学の将来はありえない。
経済学 経済学 ○ 経済学は人文・社会系の中で、国際化(国際的標準化)の著しい少数の専門分野の一つである。特に、理論経済学と計量経済学の分野は言語・教育・研究・評価等の点でほぼ完全に国際化しており、一部の領域(ゲーム理論、数理経済学等)では日本の研究者群が高い国際競争力を発揮している。欧米著名大学に招聘される研究者も少なくない。 ● 日本固有の経済制度の理解を前提とする経済政策・経済事情の分野、史料等の講読を前提とする日本経済史の分野では、国際標準的な研究方法が浸透しつつあるとはいえ、なお従来からの教育・研究方法に沿った専門研究が中心となっている。この分野での研究成果水準も、国内での競争環境の高まりから着実に高度化しているが、研究成果の大部分が日本語で発表されているため、海外への情報発信は極めて限られている。
● 今後伸びる可能性がある分野:グローバルな観点からの研究。例えば、東アジア諸国(特に中国)の経済制度・経済発展研究、空間経済学等。
● 他分野との連携・融合が有効な分野:医療経済(医学)、技術進歩(ナノテクノロジー工学)、情報処理(情報科学)。ただし、経済学系研究者には医学・工学・情報科学等の基礎的な研究を併せて行う必要がある。
● 現在の主流は社会学や労働法にある社会保障や福祉国家の経済分析的な研究。ただし、経済学系研究者も人口論、社会保障論等の研究を併せて行う必要がある。

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