資料3‐6 日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員からの主な意見

学術分科会
学術研究推進部会(第4回)
平成16年11月15日

 平成16年10月15日に、日本学術振興会学術システム研究センターの協力の下、学術システム研究センターの主任研究員の専門分野及び関連分野について、アンケート調査を行った。
 主な意見は次のとおり。

分野共通

1.国立大学法人化後の状況

  • 校費と旅費の区別がなくなるなど、項目間の細かい縛りがなくなり、使途に柔軟性が出た。
  • 基盤的経費が数割減り、光熱費その他を除いた実際に使える部分が極端に減少。
  • 基盤的経費が減少するおそれがあり、人員雇用を含め長期的な計画策定が困難。
  • 競争的資金が基盤的経費の減少を補う状況にあり、競争的資金獲得の必要性が一層高まっている。
  • 基盤的研究費は法人化前から額が少ない。来年度は書籍購入を半減し非常勤講師手当に充てることとしたが、強い反論が起きている。非常勤講師の削減等の対応が必要。
  • 非常勤講師の予算が削られ、やむなく基盤的な研究費を約6パーセント削った例がある。
  • 附置研究所の場合、法人化後は大学の裁量による予算配分となり、教育重視の傾向が強まり研究関係予算が圧迫される可能性(法人化前は学部とは別の配分)。
  • 校費研究費で購入した本を全て図書として登録することになったため、同じ本の重複登録が増え、図書の整理業務も増加。
  • 法人化により企業との協力研究がやりやすくなった。
  • ポスドクの採用条件の制限が緩和された。
  • 法人化により大学が独自の経営戦略を採ることになり、大学間の競争も増し、大学間の連携を採ることが返って困難になっている。
  • 大学は附置研究所を含め経営の一体性を強めており、大学の枠を超えた共同利用という観念が薄まるのではないかと懸念。

2.研究費

  • 産学連携や科学技術重点項目以外の基礎科学、主に大学において行われている基盤的研究への配分にも十分な配慮が必要。
  • 独自性をもつ研究は、初期段階では、目立ちにくい萌芽として出てくるが、それを見出して支援する体制が不十分。
  • 地味な研究を評価する視点が低い。
  • 助成金が得られたら進展するであろう独自性の高い研究など、潜在的な研究力を啓発する方策の検討をすべき。

基盤的経費

  • 長期的な展望に立って、基本的な研究をカバーしうる研究費が現場にくることが必要。
  • 萌芽的な研究も含めて科学研究費補助金などの競争的資金で賄うべしとの流言飛語があふれている。集積した成果を飛躍させるために必須なビッグプロジェクト経費と共に、日常的な研究の中で芽生える新規の研究端緒を支援する経費の一層の充実をすべき。
  • 科学研究費補助金の申請割合を基盤的経費の配分に影響させている大学等がある。

競争的資金・科学研究費補助金

  • 複数の研究資金源を同時に申請できないのは不条理。米国では可能。
  • 次の研究資金を獲得するまでの間、全く資金が獲得できない場合がある。
  • 科学研究費補助金の使い勝手は向上している。
  • 優れたアイデアがありながら研究費が得られないため高度な成果に結びつかない多くの研究がある。基盤研究の採択率を少なくとも30パーセント以上にすることが大切。
  • 審査基準を(現状のような成果中心でなく)プロジェクトの独自性、新規性、研究推進能力という点から評価すべき。
  • 科学研究費補助金申請を教員各位に強力に呼びかけている大学もある。

3.研究環境

  • 施設・設備維持、更新、老朽化対策は将来的に大きな問題。
  • 研究室が不足、狭い。外国人研究者を招いても研究室がない。
  • 欧米との競争に勝つため、施設の整備状況は依然不十分。
  • 米国では、教育・研究インフラ(有能な事務員・技術職員、完備した図書室と充実した共通汎用機器、法律に適合した快適な研究環境、研究員・学生・留学生の生活保障などの研究基盤)がしっかりしており、良いインフラをもとにはじめて競争力のある研究が行われていることを思い出すべき。基盤的経費を大幅増額すべき。
  • 概算要求の考え方では、メンテナンスという概念が欠落している。
  • 科学研究費補助金で購入した施設・備品は、プロジェクト終了後のメンテナンスが大変。有効活用が継続されない。整備した施設・備品の光熱水料を計上することが必要。
  • 大型資金で得られた機器も、人的な不足のため十分に活用されていない例もある。設備のための経費を広く浅く分配すべき。
  • 各大学にある程度の設備を備えると共に、共同利用可能な施設・設備を備えた拠点大学の増加が必要。
  • 学内で協力して使える補助的設備の更新が遅い。
  • 学外で特別に利用できる設備、共同利用の可能な機関が少ない。
  • マネジメント、編集作業、ネットワーク関連、コンピュータ関係のサポート等のため、複数機関が共有するようなインフラ・センターのようなものの整備が必要。
  • 労働衛生面は一般レベルまで改善すべき。
  • 国立大学法人の事務の定員削減は限界。非常勤では対処しきれない仕事もある。
  • 長期展望の下、効率的事務機構の制度設計が必要。
  • 事務レベルで企業との交流を増やすべき。

4.大規模プロジェクト・共同研究

  • ビッグサイエンスを国際社会の中でどのように進めていくか、我が国の独自性をどのように出していくかなどの戦略を分野横断的に検討する組織又は仕組みが必要。
  • 大型施設の建設を国際協力で進める施策を検討する分野横断型の組織(審議会)のリーダーシップが必要。
  • 長期にわたる国際協力業務としての研究や、基礎科学分野への研究費配分が不十分。

5.人材

  • リサーチプロフェッサーとティーチングプロフェッサーに分離されていないので、時間的制約を受けている研究者もいる。ある期間研究に専念できる体制が必要。
  • 教育業務の重要性が強調されていること、助手が少ないこと、学術行政業務の増加などにより研究にさける時間が減少、しっかりとした研究が推進できない。

若手研究者

  • 大学院重点化、助手層の定員減少等により、就職(常勤職)が見つからない大学院卒業生・若年層が急増。35歳を過ぎて職のない人が多い。就職先の確保、拡大が必要。
  • PDの枠をもっと拡大すべき。
  • 特別研究員制度は採択率を上げるべき。
  • 中央省庁やメディアがもっと博士号取得者を採用すべき。
  • 官公庁が修士卒業生を積極的に採用すべき。
  • 学際的学科が増加し、若手研究者の専門性が弱まる傾向。一方、採用は専門性から判断する傾向が依然強く、学際的背景を持つ若手研究者の就業を制約。学際性を評価するような判断基準が必要。
  • 法人化後、有力大学による若手研究者の囲い込み現象があるのではないか。
  • 私立大学では助手の数が少なく、過重な講義負担とあいまってしっかりとした研究を推進できない環境にあるので、その支援策が必要。

流動性

  • 流動性が高まっているが、指導教員の移動で影響を受ける学生も出ている。
  • 教員の年齢構成を再検討すべき。
  • 流動性の高まりに合わせ、年金、退職金の扱いをどうするかが課題。
  • 教員の勤務時間という概念をどう捉え、保険でカバーする範囲の勤務時間と位置付けるかが課題。

女性

  • 大学・研究所内の託児施設の配備を推進すべき。
  • 女性専用の研究者育成機関の充実が必要。
  • 産休をとった女性のポストに対し、国・機関として手当てをする体制が必要。

6.研究評価

  • さまざまな面で評価活動が増えている。エネルギーを消耗しすぎないようなシステム構築が必要。

人文・社会科学分野

  • 人文社会の研究者は、基盤的経費があれば研究することができる。
  • 人文社会系の研究では、共同研究を如何に有機的に組み立てるかが重要な課題。
  • 人文社会系の人材育成では、積極的に研究プロジェクトや調査等に参加させ、実地経験をつませることが必要。
  • 研究論文は日本語によるものが多く、国際的影響力は限られる。必要なところに翻訳、校閲の費用を措置すべき。

自然科学分野

  • バイオテクノロジーの分野の研究には、長期にわたる基礎から応用まで継続的研究支援が必須。論文を書きにくい分野。
  • 農学は、成果が出るまでに時間がかかる科学。
  • 農学領域は、理学、医学などの他分野、他省庁の研究機関との協力が必要。
  • 生物系の医歯薬では、一部の施設に研究費が偏っている傾向がある。
  • 臨床医学では、外国人医師の臨床参加が困難なので交流が困難。

文理融合分野

  • 人文社会系を含む広い範囲の叡智を集めて、先進技術の統御・利用など「知の方向性の検討」が必要。
  • 環境、開発、人権、ジェンダー、平和構築等の研究もさらに推進されるべき。

その他

  • 日本でどのような科学を育てたいかについての議論が不十分。
  • 現在は「最新のファッション性」が重視されているが、研究と教育がファッションに流れるのは危険。
  • 子供の理科離れを防ぐために、基盤的な研究費の配分が必要。
  • 先端的な分野のみならず、問題解決型研究課題にも関心を持つ必要。
  • 途上国への備品の寄付を認めるべき。

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研究振興局振興企画課学術企画室

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