平成16年5月26日
総合科学技術会議
現在は、技術の大変革時代であり、目覚ましく発展する科学技術が、社会や産業の構造に大きな変化をもたらしている。世界的に見ても、科学技術が国力の根幹であるとの認識が定着し、先進欧米主要国はもちろん、成長著しいアジア諸国においても科学技術への投資を強化しており、先端技術分野におけるこれら諸外国と我が国との間の国際競争は激化の一途をたどっている。この競争に生き残っていくためには、絶え間ない技術革新の創出とこれを担う人材の育成が不可欠である。
さらに、我が国は、急速な少子高齢化や経済のグローバル化の中で、以下のような喫緊の課題に直面しており、これらの課題に対応するためには、科学技術の活用が極めて有効である。
等
科学技術に対する投資に目を向けると、科学技術関係予算は年々増加し、年度毎の政府研究開発投資の対GDP比(フロー)は、ようやく欧米主要国に比肩するところまで到達しつつある。一方、科学技術への投資が成果に結びつくには相応の時間を要することが一般的であり、絶え間ない技術革新を創出するには更なる投資の蓄積(ストック)が極めて重要であるところ、1970年代から90年代の我が国のストックと欧米主要国のストックを比較すると、引き続き、その充実が必要な状況にある。
以上で述べてきたように、資源の乏しい我が国が、厳しい国際競争の中で、諸課題を解決しながら持続的に発展していくためには、科学技術を発展の軸として、これまで以上に科学技術に重点的に投資して科学技術創造立国を実現することが不可欠である。
なお、科学技術の推進を支える基盤となる人材については、長期的な観点からの育成と適切な登用が不可欠であり、特に、人材育成に関して重要な役割を担う大学が、国立大学の法人化等の変革の時期に競争的環境を一層醸成していくことが重要である。
また、独立行政法人、国立大学法人等については、国民や社会に対する説明責任を果たすことを前提に、重要とされる活動を積極的に実施できるよう所要の運営費交付金を措置し、個々の法人の特徴に応じ、優れた科学技術活動を行えるようにすることが重要である。ただし、中期目標や中期計画に基づき、科学技術活動の質的向上を図りつつ効率的な運営を行う中で、その活動の見直しを行う必要がある。
平成17年度は、科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定、以下、「基本計画」という。)の最終年度であるとともに、次期科学技術基本計画の方向性を定める重要な年である。したがって、上記のような認識の下、総合科学技術会議を中心として、基本計画に掲げる諸目標の達成に向けて、科学技術関係施策への取組を加速しなければならない。特に、科学技術関係施策への政府投資については、戦略的に重点化を進めつつ、強化・充実を図ることが必要である。その際、自由な発想に基づく基礎研究と成果につながる研究開発プロジェクトとのバランスや海外(特にアジア)との連携・協力の強化に留意する。また、「選択と集中」を徹底し、限りある研究開発資源を効果的・効率的に活用するための科学技術システム改革や府省間の縦割りによる弊害の排除・連携の強化に取り組むことが不可欠である。以上の考え方に基づき、具体的には次に述べる方針に沿った施策を重視する。
知の創造と活用の源泉となる質の高い基礎研究を競争的環境の下で推進する。特に、その主要な資源である競争的研究資金について、倍増目標に向け、重点的に拡充する。また、我が国の持続的な発展の基盤として必要であって、長期的な国家戦略の下、国として責任を持って取り組むべき重要な科学技術を精選し、平成18年度以降の本格的な推進に継承する。
重点分野においても、特に我が国が進んでいる、あるいは強みを有する分野・領域を特定し、今後、重点的に投資する。また、現在進行している経済活性化のための研究開発プロジェクト(みらい創造プロジェクト)を着実に推進する。さらに、中長期的な経済の発展基盤となる新産業の創造を見据えた研究開発(「新産業創造戦略」に基づく研究開発)を推進するとともに、地域における科学技術活動を一層推進する。
高齢化社会における健康寿命の延伸、感染症対策、食の安心・安全確保、犯罪防止等の個人生活の安心・安全確保、情報通信の安全性・信頼性向上、災害対策、環境対策等の社会・経済の安全確保、国境・水際における監視・取締りやテロ対策等の国の安全確保に関する研究開発を、国際的な視点を踏まえつつ強化し、平成18年度以降の本格的な展開に継承する。
評価の着実な実施、科学技術関係施策の優先順位付け等、知的財産の戦略的活用、産学官連携の推進、研究開発型ベンチャーの振興等、これまで進めてきた科学技術システム改革を着実に推進する。また、世界的な競争環境の中で活躍できる科学技術関係人材の育成・確保や大学の国際競争力を強化するための改革の推進等への取組を進め、平成18年度以降の取組に継承する。
研究振興局 振興企画課