学術研究推進部会(第14回) 議事録

1.日時

平成18年3月22日(水曜日) 14時~16時

2.場所

経済産業省別館1014号会議室

3.出席者

委員

 笹月部会長、岩崎部会長代理、井上孝美委員、白井委員、中西委員、飯野委員、井上明久委員、入倉委員、小野委員

文部科学省

 清水研究振興局長、樋口政策評価審議官、村田振興企画課長、柿沼主任学術調査官、杉野学術研究助成課長、里見学術企画室長 他関係官

オブザーバー

 石井分科会長
(科学官)
 高埜科学官、本藏科学官

4.議事録

学術研究分野・領域の特性に応じた振興方策の在り方について、資料2-1~2-6について事務局より説明後、意見交換が行われた。主な内容は以下のとおり。
(委員…○、科学官、事務局の発言…△)

○ 学術分科会の今後の検討課題が先ほど紹介されたが、資料2-1の2枚目の(2)に、主な検討課題として、研究分野・領域の特性に応じた研究費の支援方策及び研究分野・領域の特性に応じた研究環境・基盤の整備方策等、全部で4つ掲げられている。これに対応して考える場合に、今回の学術研究動向調査は、それに貢献するものでなければいけないと私は思う。過去の平成8~9年時の調査のサンプルとして出されている生命科学系については、現状について、数値的なデータが全く出ていない。最近は、審議会の審議も、できるだけエビデンスベーストでやらないと説得力を持たないし、最後は結局、概算要求に結びついていくわけだから、それにはそれだけの基礎的なデータが必要ではないかと思う。平成8年~9年時の調査を踏襲するだけでは通じない世の中になってきているのではないかと思う。
 その意味で、今回の調査スケジュール等を見ると、日本学術振興会の「我が国における学術研究動向調査」がここに掲げられているが、そういうエビデンスベーストに役立つような研究の実態、研究費のあり方等、そういう実状を把握した上で、この段階で、どういうような点に研究費や研究支援をさらに推進するか、あるいは基盤施設整備や研究環境をどのように改善するかというような提言をしないと説得力を伴ってこないのではないか。それから、単なる研究者のヒアリングだけでは、それは業界の言葉であって、国民全体から見ると説明責任を果たしているのかとの批判を浴びるのではないかと思うので、その点について、実態をどの程度、数値等によって調査するのか。
 それから、特に国立大学、研究機関ともに、法人化した後の実情はよくわかっていない。私もいくつか国立大学法人の経営協議会の委員をやってきて、教育研究費については、特に1人当たりの研究費が地方大学はかなり減ってきている実態を方々で耳にしている。そういう実情も踏まえて、基盤的経費が非常に減少傾向にあり、それをどうしたら確保できるかということもあわせて、やはりこの研究推進部会で、提言をまとめていく必要があるのではないか。

○ 非常に大事な視点を指摘してもらった。審議に入る前に、項目や、あるいは審議の進め方ということで意見を伺いたい。資料2-2の3ページ目にある、調査項目3の研究推進のために必要な支援方策が最終的な出口の例であるが、本当にこの4つだけでいいのかどうか、その辺も議論を進める中で膨らませていかなければいけないのだろうと思う。
 それで、井上先生が言ったように、このようなことに関して、支援方策を提言するためには、おそらく文科省ではデータを持っていると思うが、それぞれの項目についての定量的なものを示してもらいながら、議論を進めていくことが必要ではないかと思っている。里見室長から、何かあれば。

△ 今、井上委員が指摘の点は大変重要な点だと思っている。まず本日、議論をしてもらいながら、不十分な点については、ぜひ調査項目に追加していく方向で考えさせてもらいたい。また、部会長から御指摘があったように、文部科学省の中でも、いろいろな局にまたがって調査されているものがある。事務局で、こういった調査をできるだけ把握しながら、本部会に提示し、検討材料として見ていただきながら、部会としての調査を深めていけるように、事務局として気を配っていきたいと思う。

○ どういうところに実際研究できる人がいるのか。人的資源がどのぐらい、どういうセクターに必要なのか。大学あるいは研究機関ということで考えたときに、どこにどのぐらいいて、どのぐらい有効に、そういう人たちが研究をやってくれているのか。あるいは今後、何か投資すれば、そういうところがやってくれる可能性があるのか。そういう観点の調査は今まであまりない。可能性があるところにファンディングしなければいけないわけであるから、それをどこかでクリアにしてもらいたい。

○ もちろん我が国の調査が必要だが、まずは一体、それぞれの分野に、国内外で、どのようなレベルの研究者人口というか、どういう研究機関がそもそもあるのかについて、まず定量的な数値が必要だろうし、それに対して、現状では、どのぐらいのお金が出ているのか。井上委員が先ほど言ったように、定量的に、まず全貌を知ることが大事である。ここでは、わりとソフトな部分、どういう分野、どういう関心がということが主に載っているが、最後の最終的な出口、アウトカムで、どういう提言をするのかという項目を並べたときには、それに答えられる資料をまずそろえなければいけない。そういうことを調査して、十分みんなで認識した上で議論しなければいけないと思うので、ぜひその辺の資料を揃えて欲しい。
 ほかに、このテーマに関して審議の進め方、あるいは資料のそろえ方、その他、最初に質問はないか。
 それでは一応、準備された資料2-2の順序に従って、調査項目1の研究動向をまず調査しましょうということであるが、本日は、この中身を議論するのではなくて、項目だけがどうか。そして、それぞれの項目について意見をもらいたいと思うので、よろしくお願いしたい。
 これまで既に行われたという研究動向調査の中身は、(1)~(4)の形式で整理されているのか

△ 必ずしもそうではない。

○ 例にはなるということか?

△ はい。1つの例として、このようにまとめられたものもあったということである。ただ、学術研究の動向調査を単発で終わらせてはいけないのではないかと思う。国としての方針を立てていく中では、旧文部省の時代に行ってきたように、ある程度の期間を置いて、きちんと動向を見ていくことが必要ではないかと思っており、今回は、そのひな型をつくっていきたいということである。
 その期間をどのぐらいのスパンで取っていくべきかもあるが、前回の調査が平成8年だったこともあって、例えば10年程度のスパンで動向調査を行うとすれば、過去10年と今後10年の大体20年をスパンとして見通せることになる。これを例えば5年スパンで見直していくこともあり得るので、どういうスパンで見ていったらいいか御審議いただきたい。また、研究者の関心が、今、集中しているところを見るのか、むしろ過去はそうだったが、現在はこうだということで、振り返って見ていくのか、いろいろな観点があろうかと思うし、国際的な研究動向の中に位置づけられて、世界を舞台に行っているようなものと、人文社会科学のように、むしろ日本でやっているものが世界唯一というものもあり得るような分野もあるわけで、調査項目がこれで十分かどうかを見てもらいたいという趣旨である。

○ 一応、この調査項目1の研究動向の中身は(1)~(4)まで例示されているが、例えば「過去10年間の研究の展開」というのは、上の調査方法を見ると、科学官その他からのヒアリング、学術振興会の学術システム研究センターによる調査、この2つをもとに議論するということか。

△ はい。

○ そのときに「過去10年間の研究の展開」をどういう尺度というか、視野で見るのかは、またいろいろ問題かと思う。例えば自然科学の中でも、医学・生物学とか、その他の分野で言うと、ジャーナルでいえば『セル』『サイエンス』とか、『ネーチャー』、それにどういう分野のものが過去10年間、何編掲載されたとか、そのように非常にドライに定量的な表現の仕方もあると思うが、「過去10年間の研究の展開」というのは、具体的にはどのようなことをイメージしてを調査するのか。

△ これも参考の資料として配った資料2-6の168とページが振ってある「生命科学系全般」の「1.最近の研究動向の概観」で示したものをもう少し深めたイメージを考えている。例えば「最近の動向」では、主要な点は、遺伝子クローニング技術の発展云々と書いてあり、最近の画期的な成果を紹介している。また、ヒトゲノムについては、もう少しで解読できるのではないかといったような方向性も示しているし、それから最近、大きく起きてきているのが脳分野についての研究であるということが書かれている。その下に「課題と展望」が書かれているが、どういったことに分野としての課題があるのかがまとめられている。このような2枚ぐらいのまとめをイメージしている。

○ そうすると、研究分担者8名の方の意見を集約したことになるがどうか。

△ そうなる。

○ そうすると、これに参加した人の数が限られているし、分野も当然限られてくるので、これを読んでも、ほんとうに網羅的にやったという感じがちょっと足りないのではないかと思う。先ほど言ったように、幾つかのトップジャーナルを指定して、そこにおける項目別のパブリケーションの数を10年間の経過で見てみるとか、個人の興味とか関心とは別の視点を入れてもらうのがいいのではないかと思う。

○ このような調査は非常に重要だと思うが、それ以前にも、このような調査がなされた結果、それがその後の10年なりに大きく影響を与えたということがあり、その調査を今やろうとしている、というように調査にあたってのその重要性をアピールするような大前提が最初にあってもいいと思う。
 各分野において、10年でドラスティックに変わる分野と、そう大きな変化はない分野がある。従って、分野ごとにも、単なる10年ではなくて、過去の事例を振り返ったとき、やはり15年、20年とさかのぼるべきか、いや、10年なんて過去の話で、5年に限定すべきというように、それぞれ強弱があってもいいような気がするが、そのあたりは全く一律的なものなのか。過去の事例を参考にしながら、各分野で特徴を発揮できるような調査ができればと思う。

△ まさにそのとおりだと思う。この平成8年、9年の調査の前に、平成2年に同じような調査をしている。その意味では、ある程度定期的に調査してきたわけであるが、その調査の結果を具体的に何か施策に結びつけることはしてきていなかったので、この調査をしたことで何かの制度ができたといった形での結果は判然としないという感じである。科学研究費補助金の一定の考え方の中に、このような議論が整理されたことが含まれていったことはあろうかと思う。
 またご指摘のように、分野によって、5年でサイクルがどんどん変わっていくようなものと、非常に長いスパンで動いているものとがあろうかと思うが、今回の調査で、この分野においては、どのぐらいのスパンで見ていかなければいけないのだというようなことがわかれば、今後は、そのようなスパンで見直しをしていくということで考えてはどうかと考えている。

○ あまり理想的なことを言ってもしょうがないが、どのぐらいの人手を投入できるのか。そのようなことにもよるので、あまり難しいことを要求してもいけないかもしれないし、先ほど部会長も言ったように、かなり定量的なデータは、今はわりと簡単に取れるようになってきたわけである。だから、論文類もソートされているわけだが、それぞれの部門の中で、日本の学術的なプロダクトが世界でどのぐらいなのか。その中で、日本のものがどのぐらいのインパクトを持って、現実に効果を上げてきたのかという科学技術の分野は、簡単にはっきり出るということがあろうかと思う。それほど時間がかかることではない。だから、その結果を見て、どうするかは次の問題であるが、期間も短いほうがいいか、長いほうがいいか、どういうスパンで見るか。それも10年1種類だけではなくて、5年というスパンで取るものもあってもいいのかもしれない。世界でのという位置づけができるような学問分野は簡単ではないかもしれないが、結構定量的にできる分野は多いと思う。その中でまた、生命科学分野やメディカル等について、日本はどのような特徴を持っているかという数値ではなかなか表れない概括的な意見はやはり貴重だと思う。そのような両方の面の調査があっていいのではないかなという気がする。
 先ほど人の資源とか、研究の可能性というものの調査をやってほしいと私が言ったのは、仮に東京大学なら東京大学という中でも、いろいろな学問分野での競争はあり、その中で人はたくさんいるが、あまり効果が出ていないところもあるかもしれないし、ものすごくよくやっているグループとか、貢献しているところもある。同じ大学あるいは研究所等々でも大きな差が現実にはあり、そのようなものをどのように見るのか。それは単なる競争ということだけではなくて、施設が悪い、リーダーが足りない等、いろいろなことがあると思うが、どういうことが足りなくて必ずしもアウトプットが出ないのかということも含めて、てこ入れが必要ではないかと思う。施策はある程度考えてあげてもいいのではないか。私立大学等はいろいろなものが足りないが、同じお金を投じるのでも、どういうところにやれば一番効果的かということがある。
 それからもう一つは、この調査の中で、そのような細かいことをやっていくと何が問題になるかというと、ファンディングのスケールの問題等である。これまで、科研費はどの学問分野も、基本的にはルールは1個であった。しかし、ほんとうにそれでいいのかどうか。もっと学問分野ごとのやり方の違いがあって当然であるし、逆に言うと、幾つかの大くくりの学問分野で、もっと競ってもいいのかもしれない。人文社会系のところでは非常にお金が回らなくて問題になっているということが指摘されているわけだが、果たして今のようなスケールのお金の配り方がほんとうにいいのかどうか。それから、単位やグループのつくり方も問題である。大学間の協力はすごく重要だが、そうでないやり方もあり、かなり細かく分けてしまうというやり方もある。どのようなものが一番効果的なのかも非常に大きい研究の対象になる。そのような種類のことがもう少しあってもいいのかなという気がする。

○ 政策評価について、どれだけ投資して、どれだけの政策が実現したかは絶えず検証し、説明責任を果たしていくことが求められている。その関連で、今、白井委員がおっしゃったことは非常に重要だと思う。「研究分野の特性」の中の「(3)研究成果の特性」の最初に「成果の形態」があり、これがまさに、いろいろな支援策を講じた成果である。ここでは成果の形態だけを述べているが、かねてから科研費の成果については、ここでは論文から特許などまで挙がっていますが、研究成果がこれだけ上がって、それが社会にどれだけ貢献しているかが、やはり学術研究にしろ、科学技術の研究にしろ、さらにそれに投資を呼び込む1つの大きなインパクトになっていくのではないか。その意味では、単に論文とか、特許などがどれだけあったかというよりも、その成果が社会にどれだけ活用されているか。例えば論文については、さらに研究を推進するのに、どれだけ世界的に引用されているかとか、利活用の状況もあわせて調べて、それを発表していかないと、単に論文数が幾らあっただけでは意味がないと思う。それから特許なども、今、知財関係の活用で、政府でも取り組み、大学でも知財本部を設けて、TLO等でいかに実用化するかという取り組みをしているが、そのように成果がどれだけ社会に貢献しているかという説明責任を果たす必要がある。我が国のみならず、世界にどれだけ貢献することになるかということの説明にもつながると思うので、その点についても、やはり明らかにしていく必要があるのではないかと思う。

○ その視点での定量的な調査ということも必要だということである。

○ 今おっしゃったことにもかかわるが、社会への貢献という点について一言コメントを。研究の成果が、どのような形で社会に貢献したかをはかるときに、もちろん引用件数もあるが、教育の分野で、次の世代を育てることにいかにかかわったかも重要な評価ではないかと思うので、そのあたりも成果として見てもらいたい。特に人文系の場合は、あまり目に見えるものとしては出てこないが、教育の面では重要なところがあらわれるのではないか。
 それから、やはり人文系で言うと、成果が上がるのに、あるいは研究の動向が変わるのに、かなり長い時間がかかると思うので、10年のスパンで研究の展開がはかれるかどうか、ちょっと気になるところである。どれぐらい過去に蓄積があったかも、今後に及ぼす力として、はかっておいたほうがいいのではないかと思う。

○ 日本としては、日本が今強い分野をさらに伸ばしていくことも大切なので、このような調査結果は、今、どういうところが強いのか、またこれからどこにもっと助成すべきかなどを検討するために、非常に参考になると思う。それと同時に、ファンディングについての示唆も与えると思われる。ある分野を重点的に伸ばそうと思い、資金をたくさん用意すると自然にそこに研究者が集まり、成果もだんだんたまっていくものだと思う。投じる助成のアカウンタビリティーは非常に大切だが、一方、助成した分野からほんとうに将来を支える研究が出てくるとは限らないことも現実である。そこで、例えば研究者がどのような研究分野に移動してきたかとか、科研費で落とされたテーマがどのようなものでその中に将来発展した分野があったのか、また落とされた分野の研究者はどのテーマにシフトしていったかなど、少し難しいかもしれないが、研究や研究者の動きみたいなものが示されると非常にいいと思う。有名な例であるが、昔、ポリウォーター論争というものがあって、水に特別な構造があるという仮説があった。このことが取りざたされた途端に、その分野に研究者が殺到して、研究ファンドや論文数も増えたと聞いている。お金や話題性があると、みんなが飛びついていく傾向もみられる。だから、研究の動向を知ることも大切であるが、同時に研究者がどういうところに興味を持って研究を進めているかも一緒にわかればと思う。

○ ありがとうございました。今の動向というか、トレンドをつくる1つのファクターとして、確かにどれぐらい国がお金を出すかが影響を与えている。ゲノム科学にこれだけ出せば、人も集まり、成果も出るという1つの流れをつくるファクターとして、ファンディングの仕方は確かに大きな要素である。
 それから、もう一つ大事だと思うのは、トレンドをつくる源がどのように生まれたのか。あるいは、そのようなものを生み、どのように育てるのか。これもまた非常に大切なことだと思う。しかし、そういう調査はなかなか難しいとは思うし、そういう1つの大きな流れができた本当の源は何かと問うてみても、なかなか結論を得るのは難しいだろうが、もしそのようなことまでさかのぼることができれば、それは一つ日本にとって本当に大事なファクターを知ることになると思う。

○ 先ほど来、議論が出ているように、研究の振興方策をどう考えていくかということを考える場合、やはりデータをきちんと示すことは大事なことだと思う。その意味で、学術研究の動向調査を何年かに1回、きちんとすることは大変いいことだと思う。
 一方で、たしか科学技術政策研究所や科学技術振興機構などでは、科学技術の動向調査を結構やっている。これももちろん研究だけではないのだろうが、そのようなものも十分参考になり得ると思うので、どうリンクをつけていくかはあるかと思うが、学術研究の動向は、全く科学技術の動向と無関係ではないと思われるので、その点は参考にするのがいいのではないかというのが一つである。
 もう一つは、(2)にあるように、学術システム研究センターということで、今回ちょうど3年を迎えるので半分の委員を改選し、まさに大学や研究機関の現場で活躍してい研究者の方々に、パートタイムではあるが、学術振興会の主任研究員あるいは専門研究員という形で来てもらっている。現場の研究動向をその方たちに調べてもらうのは、私は大変タイムリーではないかと思う。その意味で、この調査自体はかなり難しいし、ほんとうにどこまで具体的に作業が必要になってくるかを考えると、かなりきついなという気がするが、せっかく日本を代表する方々に来てもらっているので、このような方々の意向を十分踏まえながら、私どもはファンディングもやっているので、その上で、ファンディング自体の、科学研究費自体もより改善をしていきたいと強く思っている。そのようなものに参考になるようなデータが、ここでも出てくれば、非常に意義がある調査ではないかと思う。できる限り協力したいと思っている。

○ ありがとうございました。資料2-2の調査の方法の(1)に、科学官などからのヒアリングがあって、(2)に今おっしゃった学術システム研究センターによる調査があるが、これは具体的には学振として独自に行う調査なのか。あるいは既に調査が進んでいて、データが蓄積されつつあるということなのか。

○ 学術振興会の主任研究員の方々には、このような調査をお願いすることも、従来のミッションの一部にも入っているので、完全ではないが、若干の調査は今までも行ってもらっている。ただし、今回新しく文科省のほうで学術研究動向調査ということで、きちんと方向を出して、その中の一環としてセンターにもお願いしたいということであるから、よりきめ細やかな、より詳細なものになると思う。

○ 既に、その戦略というか、どういう方法で調査するかは決まっているのか。

○ これは実は予算の関係もあるが、私どもの研究員が調査を行うための経費があり、その意味では、今でも若干の調査は行っているが、より組織化して、調査方法も明確化した上でなければと思う。今でも外国のファンディングのシステムの調査や、あるいは当該分野における外国の研究の動向、あるいは日本国内における動向等それぞれ調査してもらっている。ただ、それはまだ予算関係で、私どもがお願いしていることへの返事になっているので、きちんとした全体的な調査には至っていないわけである。それは今回、文科省から、このような依頼を受けて、きちんとお願いしていくことはあり得ると思う。

○ 石井先生、この辺はいかがか。今までは、個別にメンバーの方に任せて、それぞれが独自にやられているのか、あるいは、もう決まった方法でやられているのか。

○ 今までは個別に研究費、調査費を差し上げて、リポートを時々出してもらうという形を取っていたが、この学術研究動向調査を14年ぶりにやるということになると、今までとは少し事情が違ってくると思う。小野委員からも話があったように、システマティックにやらなければならない。それぞれの研究者が、自分の周囲のことについて折に触れて調査した結果をまとめて、束になるというのとは全く違う話だろうと思っている。またシステム研究センターの研究員の方々と、この問題について話題に出したことはない。だから、これからの話だろうと思う。そうなると多分、100人近くの研究員の先生方がいるわけではあるが、ほんとうにきめ細かいところまでできるかどうか。これは1つに、分野をきちんとカバーするという問題もあるし、もう一つ、さまざまな資料を集め、分析するという仕事が、一体、研究員の先生方だけでできるのかという問題もあろうかと思う。具体的に言うと、調査の補助体制がしっかりとしていないと、しっかりとしたデータ、あるいは役に立つ調査結果は出にくいわけであって、これは私が言う問題ではないだろうと思うが、学振も独立行政法人であって、効率化係数が確実にかかってくる組織であるので、文科省として十分な措置をお願いしたい。
 それからもう一つ、実は私はこの部会のほかに、研究情報というか、学術情報基盤の関係のほうの部会、あるいは作業部会の仕事も同時にさせてもらっているが、そこで共通に話題になることは、これから我が国の研究機関も、これは主として、本来はアカウンタビリティーのほうから出てきた話であるが、機関デポジトリーと言われている作業、例えば東京大学なら東京大学という大学、研究機関が、関係者、あるいは組織がつくり出した知的な成果を、きちんと機関としてデポジットして、そして社会に対して発信するという作業をしなければならない。これは社会に対して、あるいは納税者に対してまず第一に求められることである。今までは学会誌に、あるいは『ネーチャー』とか『サイエンス』とか、さまざまな有名な雑誌に出して、アカデミアの世界、専門家の世界に、自分の成果を発表してきたわけである。もちろん学術の世界は、それが本道であるし、それがなければ始まらないのだが、それと同時に、機関として各大学なり、各研究所なりが、その研究成果をきちんと把握して、求められれば社会に提供できるような形にする。これは著作権等との兼ね合いの問題もあるし、なかなか技術的には難しいが、我が国でもすぐにでもやらなければならない仕事だろうと思っている。この機関デポジトリーというものがきちんと着実に行われるようになると、これはおそらく、このような学術研究動向調査をやる場合も非常に仕事が速く、かつ綿密な形でできるようになるのではないかと私は思う。研究者が寄り集まって、何か座談会や研究会のようなことをやって、いろいろな議論をして、それで報告書をまとめるというのと少し次元が違う、きちんとしたデータを積み上げた形でできる。それはもちろん機関ごとのデポジトリーが基礎である。それを、このような方針ですれば、それぞれの分野のことがおのずから浮かび上がってくるので、動向調査の将来を見据える意味においても、この機関デポジトリーの話は、各研究機関に対して、あるいは研究機関がやろうとしても、学会がそのようなものを出してもらっては困ると言われても全然進まないので、学会や出版社等とうまく話をつけて、日本でもデポジトリーが行われるような体制をどんどんつくっていくことが早急に必要なのではないか。ちょっと話がずれるが、ついでにお願いをしたい。

△ 科学官として発言させていただきたい。先ほどの資料でも、科学官にヒアリングがあるということなので、私も戦々恐々としている。
 これまでも科学官会議等で、いろいろな分野の意見交換を行ったが、あくまでも1人の人間の集まりであるので、網羅的にレビューをしたり、今後の動向をはかったりすることはなかなか難しい。皆さんもそれは十分わかっていると思う。一方、個別のいろいろな分野の学会においては、多くのところでは、その分野の例えば10年なら10年、今後10年、どういう方向に行くべきかを議論している。将来構想とか、そのような名のもとで、いろいろと議論していると思う。私が今、会長をやっている小さな学会でも、かなりの時間をかけて、これまでの10年を総括し、今後、どういう方向に向かうべきかを議論して、1つの冊子にまとめてある。私がカバーしている分野の1つに惑星探査があるが、それについても、かなり綿密に外国との比較も行いつつ、取りまとめているはずである。だから、そのようなことになると、学術会議との関係にもなってくるのかなと思うわけで、この種の調査を網羅的に行おうとするならば、やはり、そちらとの連携も必要になるのではないかと思う。それを、ただ、先ほど言った日本学術振興会において、個々のすばらしい先生方がいろいろいることは承知しているが、網羅的に行おうとすると、どうしても学会関係との協力が必要になるかと思う。

○ では、最初の今の調査項目1は終わりとして、調査項目2「研究分野の特性」、3の「研究推進のために必要な支援策」があるので、次に2の「研究分野の特性」に幾つかの項目が列挙してあるが、これらについて何か意見があれば伺いたい。
 例えば「研究手法の特性」だと、よく言われるのは、大学共同利用機関での大型の機器を必要とする分野、あるいは大きな機械は要らないが、やたらに消耗品が高価である分野。今のゲノム解析がまさにそうであるが、1人のゲノムを解析するのに何十万円という消耗品を必要とするということもあるし、あるいはいろいろな調査で、研究補助員等たくさん必要であるとか、あるいは度々海外へ出かけての調査が不可欠であり海外への旅費が必要な分野とか、あるいは、これは私がいつも言うことだが、例えば医学・生物学的な発見を患者に届く薬にするためには、やはりケミカルライブラリー等、さまざまなライブラリーを必要とするとか、それぞれの研究分野にとって、ぜひ支援をしてもらいたい項目があると思う。確かにそういうものを分野ごとにきちんと列挙して明らかにしておくことも必要だと思う。ファンディングからすれば、研究内容の特性は、どのように研究を進めていくのかということで、どういう人やお金、大型の機器が要るのかという切り口が必要なのかなと思う。

○ 私も同感である。この「研究手法の特性」の中に、実験を行うものとか、主に文献調査を行うものとか、この分類は別におかしくはないと思うが、同じ実験をやるという性質のものでも、あるスケールがなければできないというものは明らかにあるし、小さくてもできるような研究もある。それなりの研究があるところではできると思う。しかし、どう考えても、相当な人を抱えて、組織的にやらなければ、なかなか効果が上がりそうにないという分野もある。そのような見方からしたときに、今、日本の中にあるそれぞれの分野、例えば宇宙探査はどういう組織形態でやるのが適切なのかということは、おのずとあると思う。大体そういうふうには収束してきているとは思うが、細かく見ると、個々の大学で、こういうテーマを数人でやっていても、ちょっと無理ではないかというものでも、かなり無理してやっているというものもある。そのようなあまり効果的でないものをやめてしまえとは言えないが、そこでやることが適切かどうかという種類の分類もあるのではないかと思う。

○ 私も、今、白井委員が言ったことと同じ印象を得た。この「研究手法の特性」に書いてあるのは、当然、これでいいが、基本的に大学共同利用機関の話だと思うが、個人で取り組むものやグループでやらなくてはいけないもの等結構いろいろ細分化されていると思う。そうするとこの分け方だけだと、特に大型のグループが必要だという分類が抜けているのではないかと思う。

○ だから、この特性というときに、学問的な特性というソフトな話ではなくて、それを支援するために、どういう特性を持っているか。すなわち、研究の進め方の特性ということが切り口になるのではないかと思う。

○ 国に求められる支援というところにまさに関係してくるので、そこで発言してもいいのかもしれないが、とりわけ若い人たちが今、問題になっているわけである。例えばポスドクの問題がある。そのような人たちが今後、どういうふうに展開できるかということと、もう一つは新しい人がどういうふうに参入できるのかという問題も極めて重要だと思う。そうすると、学問の分野の魅力というのか、インセティブを研究分野の特性と絡めて十分考慮しておかないと、それなりの人が集まって来ないという結果になりかねないわけである。ちょっと変わった人だけが集まって来ているということになる。その人たちは興味があるのだから、それはそれでいいということもあるかもしれないが、やはり学問分野がそれぞれに、ある程度バランスが取れていくためには、ふさわしい人材がある程度集まって来る仕掛けが必要である。これは後の支援のやり方の論争に関係すると思うが、そこはこれから非常に大きな問題になると思う。

○ それは非常に大きなことで、例えば最近、科学研究費を投入して、それがどのように国民に還元できたのかということが、あまりにも強く要求される故に、それと少し離れた、いわゆる純粋学問の分野に人がだんだん行かなくなる。お金が来ないと、そういう分野に行かない。そうすると、結局は枯渇してしまうという悪循環になると思うので、2の「研究分野の特性」というところでは、やはりほんとうに最終的には応用可能な、いずれは国を富まし、人類の健康を守ることに役立つことが目に見える学問と、簡単にはそこまではいかないという学問があると思うので、その辺の特性をきちんと明確に区別して、支援する体制を考えるということが、一つ大枠として非常に大事ではないかと思う。

○ 今の話は大変大事な問題だと思う。私が知る限りでも、文学部系には「絶滅品種」が非常に増えつつある。これを私は非常に心配している。そして、こう言っては不謹慎だが、そういう絶滅に瀕している分野の先生が、結構、その学部なり、研究機関にとってバックボーンをなしている。実務上非常に有能なという意味でバックボーンをなしている人もいるが、精神的に、この人はやはり偉いと周りの専門以外の人でも認めると、結局、それが研究機関なり、学部の品位を高めるとまではいかないまでも、維持するのに非常に役立つ。その確率がどうも高いような感じがする。困っているところの先生は、やはり困っているところで、「家貧しくして孝子出ず」というのかどうか知らないが。結局、そういうところが絶滅していくと、そのような偉い人が育たない。そのかわり別のところが困ってきて、そこからまた出てくるのかどうか知らないが、それを繰り返しているうちに文学部がなくなる。大げさに言うと、そういうことになりかねない。やはり、ある分野が必要だという議論と、そのような分野を持っていることが、その研究組織や学部、研究科、研究所にとって必要なのだという観点もぜひ必要なのではないかという感じがする。

○ 今、大学の現場では、学術推進戦略やマスタープランを立てて、研究基盤に関する概算要求、特別教育研究経費を申請している。現場では、今、長期的な学術推進戦略を長期的にたてるため、ここに書かれている研究動向や研究分野の特性、研究推進のための必要な支援等について、真剣に各法人において真剣に議論がなされていると思われる。もちろん科学官・学術調査官、外部有識者、日本学術振興会からのヒアリング等は非常に重要だと思う。多少身勝手な意見が出てくるかもしれないが、それを差し引くような形でも、真剣に日ごろ、頭を悩ましている大学現場の問題も聞いてもらって、国としては、ボトムアップ的な点も重要視していただきたい。学術の多様性ともリンクしている問題であり、さらに研究者の実情を考慮に入れて方策を立てようとしているのだということが明確にわかるようにしてもらえると非常にありがたい。これは現場サイドからの要望である。

○ 前回の多様性を生み、それを育てるというものの続きとしての今回の調査である。だから、多様な学問分野がありその分野の特性をいかした支援の方策はどのようなものかということを明らかにしようというもので、前回は向こうを向いていて、今回はこっちだというのではなくて、その延長線上にある支援方策を検討しようということだと私は理解している。

○ それに関連して、確かにこの学術研究推進部会は、我が国の学術をどのように推進するかという基本的な観点から、前回は多様な学術研究の推進ということで、部会長を中心にまとめていただいているわけで、それとの整合性は確かに必要だし、石井委員が先ほど発言されたことは、我が国の学術研究全体を見たら非常に重要なご指摘だと思う。それだけに今、大学や研究機関の効率化の話があったが、今後5年間で、人件費を5パーセント削減するという課題が今、国立大学法人なり、研究機関にとって非常に大きく重くのしかかっている。そうなってくると、実際に若手研究者の育成が重要だと思う。しかし、若手研究者に研究をする環境を整備すると一方で言いながら、実際には個別の大学なり、研究機関に判断させると、自分たちが重要性を置かないような部門の助手とか、助教授を切っていくという実態があらわれてきている。その辺、国の研究に対する基本的な方針として、やはり学術研究は、それぞれの重要性を持ち、それらがバランスの取れた多様性のある形で推進される必要があるという基本的な方向が出ているわけだから、それを今後、どうサポートするか。単に実学的に役立つ分野ばかりを重視するとなると、哲・史・文という伝統的な学問分野が壊滅的な打撃を受けていくという心配もある。その点を目配りして、全体として学術研究の多様性を確保するような方向の議論を今後も進めていただきたいと思う。

○ 調査項目3「研究推進のために必要な支援方策」については、具体的にいろいろなことを調査した後、最終的に提言をするための項目ということだと思うが、4つの項目が立てられているが、これについてご意見をいただければと思うがいかがか。
 もちろん学問分野によるが、その研究を推進して国民に還元する、何か国民に資するようにするということを要求されるとすれば、ほんとうに純粋な学術研究で、研究者の知的好奇心によって明らかにした発見物を国民に還元するためには、そこをつなぐ支援部隊、支援組織が必要である。これをつくらない限りは絶対に国民までは届かないと思うので、「研究推進のために必要な支援方策」の中に、常に国民にどう還元したかを問うのであれば、やはりそれができるような支援組織、支援部隊、あるいは支援のためのライブラリー、そういうもので共通の組織をつくる。それを支援するということをぜひ掲げてもらいたいと思う。項目立てについて、何か意見をいただければと思う。

○ これから国がかなり主導的に、いろいろ進めていく学術研究の支援という意味で言うと、まだちょっとファンディングのやり方とか、そういうことについてのはっきりした考え方等は必ずしも整理されていないと思う。先ほども少し言ったように、要するに国でなければ、絶対にこのような研究はできないというのがはっきりしているものもかなりあって、それは国主導で戦略的にやっていく。これにはだれにも文句はないし、疑問もない。もちろんやることが実際に間違っては困るのだが、それはそれなりの人がしっかり考えてやってもらうしか仕方がないということだと思う。
 そして、その次に競争的な環境として、ある分野は国で伸ばすべきだ。しかし、グループが名乗り出て、提案をしてやっていかなければならない。これもまた一つ、かなり説得性がある。だから、今回の調査なんかは2番目の、国がある程度支援して、国としてやっていかないといけない。いろいろな観点から、自分たちの考えを持って、競争的に資金を得てやるような分野というのは、かなりあって、どういうところにどういうふうにするかは、今回の調査の1つの大きな柱にはなるだろうと思う。
 3番目に、これはデュアルサポート等でもまさに問題になったが、各組織が、自分たちの特徴を生かすとか、あるいはグループを生かすとか、先ほど石井先生が言われたように、各大学の本当の特徴、文化をなしているものとか、そういう種類のものは、もちろん国全体で何か保全していこうというものはあるかもしれないが、どちらかというと、それぞれの組織や個人等が、ぜひともやりたいというようなところから来る研究なり、文化的な活動があるわけで、これをどのように我々はきちんと位置づけて支援するか。だから、運営交付金を減らしていくというよりは、そういうところに、ファンディングしていくような考え方でもいいのではないか。何でも競争的資金や科研費を取ってくればいいではないかというのではなくて、もう少し各組織が自分たちはどうするのかを大事にしようとか、そのような種類の次元で考えられるようなお金の配分の仕方というのか、研究ができるような状態、それは例えば機関評価等の中で、こういうものは絶対にやりたいのだということがはっきり見えていれば、それはそれなりに予算措置されるとか、そのような第3の部分があっても、私はいいのではないかと思う。だから、全体に国の支援のやり方という中に、特に国立大学法人かもしれないが、研究機関も含めて、ファンディングのやり方はもう少し精密にあってもいいかもしれないという気がする。

○ 先ほどのファンディングの仕方によって、1つのトレンドというか、学問分野を守り、あるいは大きくすることがあるということを最初に議論したが、確かに国がどういう哲学で支援をするのか。その辺も大事なことになろうかと思う。

○ この調査項目で(4)の「研究時間の確保」であるが、私は個人的には、これが一番重要だろうと思っている。今の話にもあったが、評価ばかりされていて、今、いろいろなところがいろいろな評価をするから、評価書を書くのに忙しいということも現実としてある。どういう意味かはちょっとわからないが、具体的には例えばサバティカル制度みたいなことを言っているのか、例えば大学によっては、研究科と研究者の交流とかということもあるが、この「研究時間の確保」は、もちろん重要な意味を持つことはわかるが、調査する場合に、あまりに違った意味でとられると問題なので、どういう意図かを説明願いたい。

△ こちらに4つ書いたのは、人、それを支える基盤、研究費、そして、その人自身に対してのサポートという整理で書いてみたわけで、これに限られて考えているわけではない。研究時間は、おっしゃるとおり、非常に重要な問題として、今、クローズアップされているのかと思う。
 サバティカルリーブのように、一定期間、そのような労働を外すという発想もあり得ると思うが、研究の多様性の報告書の中では、例えば、ある程度の研究費を確保した人に、ある程度の研究時間もあわせてあげられるような仕組みを作っていくこともあり得るのではないかという提言もあった。また、間接的な問題としては、これは研究基盤にも密接にかかわることとして、どういったサポート人材を、こういったところに配置できるようにしていくのか、つまり、研究の内容もかなりわかるサポート人材がいることによって、自分が考える時間が取れるような仕組みをどうつくっていくのかにも密接に関連していると考えている。組織の単位で行うこともあると思うが、国としても何らかのサポートの可能性があるのであれば、その点もあわせて調べてはどうかということである。

○ よくわかったが、私は、実際に(4)は、ここに書いてある(1)(2)(3)すべてがかかわってくると理解すべきだと思う。このように分けておくのはいいのだが、少し調査の意図がわかるような整理をお願いしたい。

○ この(1)~(4)は、きちんと問題点を指摘していると思うが、もう一つ、その前提として、つまり、日本の学術の世界として一体どれだけの陣容、具体的にはポスト、あるいは研究者の数、それぞれの分野、研究機関、学部、研究科レベルで、日本全体として幾つあったらいいのか。そのようなアカデミックミニマムとでも言うべき部分も一度考えておく必要があるのではないか。つまり、もともとあったと仮定して、それが今、どんどん削られていく過程にある。これは5年で5パーセント、次の5年はどうなるのか。それはゼロでとまるのか。とまってくれればいいが、どうなるかさっぱりわからない。これでいくと、要するにまともな国だとすれば、この分野については、これだけの厚み、層が存在していることが求められるというアカデミックミニマムを切ってしまう可能性がある。一国に富士山みたいなピークが一つあればいいというわけではなくて、一昔前は、八ヶ岳論というものがあった。ところが、八ヶ岳さえ、もう維持できなくなるぐらいの危機が今、迫りつつあるのではないか。そうなると、つまり、そのピークを支えるすそ野がなくなってくるから、そのピーク自体がどこかで崩れる恐れがある。例えていえば、砂を積んでおいて、そこへどんどん水が流れてくると、すそ野が削られていって、その砂山がガシャッと崩れるというような話になるのを私は一番心配している。
 だから、それぞれの研究分野、それぞれの動向調査をするのは必要であるが、それと同時に、例えば文学部なら文学部という世界を取り出して、それがどれぐらいのミニマムなものを必要とするのか。それを守るために、どういう戦略を各大学なり、部局なりが持っているのか。そのようなことを考えてもらわないといけない。先ほど井上先生が、ストラテジーはみんな、考えているとおっしゃったが、伸ばそうというところのストラテジーと、死なないように頑張るストラテジーをつくるのとは、ちょっと話が違うかもしれない。情けない話ばかりして申しわけないが、それぞれの大学や部局にそこのところを考えてもらい、それをきちんとこちらが把握すべきである。
 これをせずに、「小さな政府」論が大学に自動的にかぶってくるというのが続いたら一体どうなるのか。大学の研究の仕事、教育の仕事はアウトソーシングができない。それから、地方移管もできない。政府の官僚制組織と同じ論理でというか、同じ数字をアナロジカルに大学に適用するという今の手法が続く限り、日本の学術は壊滅する。特に最初に来るのが人文社会系だと思うので、各機関・組織がきちんと、どれだけを自分たちのミニマムとして必要とするのか提示すべきだ。実はほんとうに各国立大学法人とか、共同利用機関法人が、中期目標の変更で4年間で4パーセント、人件費を減らすと書き込まされた。来年度の年度計画は1パーセント減らすという条項をつけ加えさせられた。皆さんのほとんどは、しょうがないなと思ってやった。それを見た立花隆さんが怒り狂った。あんたたち、何を考えているのかと。研究者は、ほんとうにしかられた。私は、ほんとうにそうだと思う。そこのところのきちんとした話を、我々もあちら側にいらっしゃる方々もきちんと、そこのところはわきまえて、主張すべきことは主張する。公務員の数を減らす、独法の人件費を減らすという話と、大学の研究者の話とは全然違うことを文部科学省はきちんと踏まえて、それなりの施策をやっていただきたいというのが一番に申し上げたいことであるが、そのための動向調査でもあってほしいと感じる。

○ どうもありがとうございました。今を生きる我々がみんな、感じているところだと思います。

△ 少し具体的な話をさせていただきたい。先ほどから、学術をいかに国民に還元していくのか。これが1つのテーマになるし、文科省にとっても1つの使命だと思う。例えば人文の歴史や文学、考古学等その成果を国民にどう伝えていくのかというときに、博物館あるいは文学館、いろいろな施設があるが、それは国の施設もあるが、県立のものなどがかなりある。ところが現在、そこを指定管理者制度という形で、民間のディスプレー屋さんに丸投げしてしまう。そこの研究員たちは引き上げていく、あるいは契約関係にする。要するに自治体の人件費減らしも、そこにつながっていくという状況がある。
 それから、私はアーカイブ制度に関心を持っているが、欧米どころか、アジアの国々と比べても、極めてこのシステムや制度が遅れている。今現在、全国の都道府県で32館ぐらい、何とか県立のものができているが、まだ十数館が進まないような状態である。それは博物館が今、危機に陥っているのと共通している。そのような状況だから、なかなか先に行かないわけだが。これは総務省の管轄であるが。あるいはまたごく最近の事例で言うと、これは法務省の管轄関係になるが、人は死ぬと戸籍から除籍される。除籍されてから、80年間、除籍の記録が保存されるが、80年たつと、それを焼却せよということになっている。しかし、世界的に見て、人の生存の記録を何も焼却することはないので、それこそが貴重なアーカイブスになる。それを法務省の民事局の課長と話をして、これはやはり除籍簿を80年たったら、それでは都道府県などの公文書館、アーカイブスに移管すればいいではないかと言ったら、そういう制度や受け皿が十分にできているのかと。まあ、これも総務省の問題でもあるが…。
 つまり、文科省で今、審議会で、こういう問題を立てているが、実はその先で、国民に還元をすると言いながら、その展開を阻止している自治体の問題、総務省の問題、法務省の問題、つまり関連する分野のところに対して、こちらからどれだけ強いアピールをしていくことができるか。直前の石井先生の発言と共通していると思うが、そのようなことも、最終的な段階で強い意見が出せることを望みたい。

○ この会を、これからどのぐらいの頻度で行って、いつごろをめどに提言をまとめるのか。この会の今後の進め方の説明をお願いします。

△ 本日さまざまな御議論をいただいたので、調査項目そのものもかなり改定をしていく必要があろうかと思っている。ただ、先ほど言ったように、資料2-4でスケジュールをお示ししているように、2~3カ月に1回ぐらいは、科学官・学術調査官、外部有識者等、例えば各国立大学法人あるいは私立大学、学会からも御意見を聞いてはどうかという議論もあったので、こういった方々から、この部会でヒアリングをしていただきたい。また、学術システム研究センターは、小野委員からもご指摘があったように、メンバーの交代が4月にあるので、その際に、このような調査をしたいという趣旨を伝えて、事務局と相談しながら、最終的にどのような形の報告を本部会にしてもらえるのかという骨格を相談していきたいと思っている。おそらく班の単位で、議論していただくことになるかと思っているが、一定の形が見えてきた段階で、本部会に報告してもらう。それらを両方聞いていただきながら、例えば科学技術政策研究所や、科学技術振興機構での動向調査、あるいはファンディングに関する調査も参考にしていただき、大体1年程度で報告の形にまとまるようにしてはどうかと思っている。

○ そうすると、こちら自身が何か調査をすることはないわけで、ヒアリングをすること、それから学振からの調査結果の報告を手にすること。それなしには議論はこれ以上は進められないということか。

△ はい。

○ そうすると、学振からの報告は、それほど簡単に出てくるものなのか。

○ かなり大作業になる。

○ しかし、これは1年ぐらいで提言をまとめるわけなので、例えば半年やそこらで、学振から何か回答は来るのだろうか。

○ 文科省とも相談しながらすすめたい。それから、センターの先生たちとも相談してみたいと思う。

○ 先ほどおっしゃったほかの機関との協力もあるが。

○ 確かに科学技術の動向については、かなりいろいろなデータが出ているので、それを活用することはある程度可能だとは思う。もちろん科学技術の動向だから、学術とはちょっと違うが、かなりオーバーラップしているところもあるから、それは工夫して、できるだけ省エネルギー化することも勘案する必要があるだろう。

○ それと、先ほど言った幾つかの定量的な国内外のデータ、そういうものは既に、いろいろな資料があるだろうと思うが、そういうものも早く出してもらって、それをもとに議論できるところは議論していくということか。

△ はい。

○ 少し戻るが、ここでの議論の中で特に重要だと思うが、結局、研究者も世代交代が起こる。そういう時代に差しかかってきている。要するに若い人も、こう言っては失礼だが、やや余っているという中で世代をどう考えて、政策的に入れていくのかは、今後、非常に重要だと思う。石井先生が言われたことは私もほんとうにそうだと思うし、文科省も頑張ってもらわなければいけない。しかし、現実に全体の予算が減らされてきていることは進行している。その進行しているものに対応して、どうだという知恵は、やはり出さなければいけない。そうすると、予測される予算をどういうぐあいに配ればいいのか。それは分野の問題もあるが、どういう人が、どういう給料でというか、人件費で現実に研究を推進していくのか。あるいはいろいろなサービスを推進していくというところに、どういうぐあいにファンディングして、どんなシステムでやっていけばいいかは物すごく大きな問題だと思う。この観点は、この中では極めて大きく、きっちり言っておくべきだという気がする。

○ なるほど。いわゆる研究者、あるいはそれを取り巻く支援部隊の職種、あるいは世代、それを給与の面でどうサポートするのか。

○ 全体でレベルを上げるということだ。はっきり言えば、団塊の世代は、そろそろどうすればいいか。団塊の世代の給与を高くしてもあまり役に立たない、あまり大した研究もできないとなったら、どうやって引退してもらうかという問題もあると思う。私などは、はっきり言って、給料もあまり高い給料はもらってはいけない。そのような種類のことは、あらわにはなかなか言いにくいが、ファンディングの部分等では結構言える。政策的に持っていくことはできると思う。

○ そうでしょう。そうすると、次回以降、議論を進めるための資料を手にするということ。そのために、先ほど来、ここで示された「研究動向」「研究分野の特性」「研究推進のために必要な支援方策」、これらについてたくさんの意見をいただいて、それらについての調査結果をいただきたいということである。帰られた後、こういう項目についてもぜひ資料を提出してほしいということが、考えてもらう中でだんだん出てくると思うので、それはぜひ事務局へ逐次要求してもらって、それをみんなで共有しながら考えていく。そういうことで進めたいと思う。よろしくお願いしたい。
 それでは、次回はいつごろを考えているか。

△ 調査項目についても少し精査して、また考えさせていただきたいので、とりあえず日程は改めて追って連絡したい。
 それから、こちらの部会に直接関係はしていないが、学術関係の動向ということで、2件、報告したい。
 1件は、科学技術基本計画である。本日、総合科学技術会議が夕方に開催されることになっていて、本日、この総合科学技術会議の議を経て、来週、閣議に付される予定である。その内容は、12月に総合科学技術会議から出た答申、これを部分的に修正したものであって、基本的な方向性は全く変わっていないと理解いただいてよろしいと思う。
 もう1件は、研究活動の不正について、かなり世間を賑わせていることもあって、2月1日の科学技術学術審議会の総会において、特別委員会を、この審議会のもとに設置することが決まり、3月17日に第1回目の研究活動の不正行為に関する特別委員会が開催されている。こちらの石井分科会長が主査である。中身の議論は、基本的には不正といっても、捏造、改竄、盗用といった3点に絞って、競争的資金の問題を中心に議論をいただくことになっている。こちらは夏ごろを目途に報告書を取りまとめる方向性になっている。以上である。
 また、科学技術基本計画の関係では、分野別推進戦略を策定する作業が総合科学技術会議で進んでいた。こちらについても同じく本日、22日にあわせて決定の予定である。

○ どういう議論が行われているのか、キャッチアップするのに精いっぱいだったので、場違いなことを言うと思うが、私などは物理学をやっていると、最先端のこと、国際的なことをやると、そういうところにどうしても目が行きがちである。基本的にはそれが全体の方向としては正しいのだと思うが、2つのことを言いたいと思う。
 1つは、石井先生がおっしゃったこととも間接的に関係すると思うが、生物の人から聞いたが、一時、ゲノムとか、そのような方向にみんな講座が移ってしまって、進化の系統という分野が抜けてしまった大学が随分あって、例えば学部授業をするときに、担当の先生がいなくて困ると。大きな大学であっても、そういうことが起こっているということを聞いたことがあって、学問にとって、最先端を担っていく基礎的な部分が抜け落ちていないかというバランスの問題が重要だと思う。今日、多分、議論した中に入っていると思うが。
 それと関係するが、私もどうしても研究という面に重きが行くが、人材育成という面で、今のことと関連するが、教育をするという観点から見たときに、ほんとうにバランスよく、日本において学術研究が進んでいくというバランスの問題も重要だと思う。

○ 今の話もあって感じたが、今回、いわゆる研究であるが、実はこれは教育と裏腹である。例えば私どもの分野で言うと、解剖学とか、病理学は、形態学だから、目に見えるもの、あるいは顕微鏡、あるいは電子顕微鏡、そういうもので見える範囲のことにおける正常な形態、それから病気における形態、そういうものはほとんど記載し尽くされたわけである。だが、病理学というと、やはり顕微鏡を見て、まず診断するわけなので、そういうことができる人がほとんどいなくなってしまった。すぐ分子のレベル、遺伝子のレベルに行ってしまうが、やはり教育ということにおいて、これは絶対に必須であるということをきちんと列挙して、主張して、それを教育として生かすことによって、逆に学問・研究の推進にも役に立てる。何か教育面での裏打ちをしながら、研究推進に利用する。そういう戦略が必要ではないかと常に感じている。

○ つけ加えると、筑波大学の場合、進化の系統学をやっている例えば井上勲という男がいるが、彼は非常に古典的な方法でやっている。去年、かなり新聞を賑わせて、『サイエンス』のトップを飾った論文がそうだが、ハテナと名づけた、植物と動物のちょうどあいのこような新しい生物を発見したことがあって、もう忘れられてしまったような分野の中で非常に重要な分野が残っていることがあるという例であり、あまりに一つの方向にベクトルが向いてしまうと危険だという面がある。

○ ありがとうございました。その意味でも、前回の多様な学術研究を生み出し、推進することの精神が、ここでも生かされると思う。それでは、時間も来たので。今日は大変ありがとうございました。またよろしくお願いしたい。

─ 了 ─

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