学術研究推進部会(第12回) 議事録

1.日時

平成17年7月28日(木曜日) 10時~12時

2.場所

東海大学校友会館 「東海の間」

3.出席者

委員

 笹月部会長、岩崎部会長代理、井上孝美委員、白井委員、中西委員、伊井委員、井上明久委員、入倉委員、戸塚委員

文部科学省

 藤田研究振興局担当審議官、河村科学技術・学術総括官、村田振興企画課長、柿沼主任学術調査官、芦立学術機関課長、杉野学術研究助成課長、里見学術企画室長 他関係官

オブザーバー

科学官
 高埜科学官、本藏科学官

4.議事録

(1)学術分科会関係の研究環境基盤部会学術基盤作業部会の審議の状況及び科学技術理解増進政策の関する懇談会からの報告書について、事務局より説明が行われた。
(2)「学術研究における多様な分野の総合的な推進方策」について報告書の骨子(案)(資料3-2)について審議が行われた。主な内容は以下のとおり。
(委員、科学官の発言…○、事務局の発言…△)

○ 8ページの3パラグラフ目に私立大学についてのコメントがあり、私立大学では研究目標や理念云々とあるが、これはどういうことを言っているのか。

△ 私立大学においては、学校における運営にかかわるような様々な目標や理念というものを掲げられているところもあり、その中に、研究目標が書かれているところもあった。全部調べたわけではないのだがそういった例もあったので、今回の学術研究支援戦略というのは、もう少しシャープに、特に3つの視点というものを考えていただいて、より具体的に戦略化していただくということが必要ではないかということを書かせていただいた。

○ 文章が適切ではないと感じた。今のご趣旨であれば、そのような例もあるが、そういうものを見つけ、これに合った方向のことを支援するというようにしないと、私立大学がより戦略的に検討してるということを言っているように見えてしまう。
 それからもう1つ、我々はこれまでずっと、私立大学の立場からもお願いをしてきていることであるが、競争的資金あるいは共同利用研究機関等に私立大学の教員が研究者として加わることができた場合の人件費の負担について、明確に、研究費としてある部分が支給されるべきだという考え方を、どこかに入れておいていただきたい。そうしないと、いつまでたってもその部分は、大学、学生が負担するという考え方であり、少し無理があると思う。これは国立大学法人についても同じことが言えるが、一応、国立大学法人の場合は、教員は国から給料をもらってるということからいえば、少しは我慢できるが、私立はほとんど我慢できないというか、論理矛盾が起こっているという意味で、それを適切なところに入れてほしい。

○ 今まで議論されたことの課題、問題点は網羅的に入っており、そこで何が中心かというのが必ずしも明確ではないという点はあるが、全体的に非常にバランスよく書けている。ただ1点だけ、19ページの学術情報基盤の整備のところだが、ここで「国は、コンピュータ、ネットワーク、学術図書資料等に関して、学術情報基盤に関わる情報戦略を作成し、それに基づいた整備を行う国立大学等に対して支援を行うことが必要」ということで、国立大学については12ページにも記述があるが、今まで学術情報インフラを整備する場合、センター的機能を持ったところの整備が必要だというので、情報学研究所に、学術情報についてデータベースを構築し、学術情報のネットワーク化を進める必要があるという議論が行われてきたと思う。そういう点ではセンター的機能を持つ情報学研究所のデータベースを中心として国立大学のそれぞれの学術情報の提供、ネットワークの構築を目指すべきじゃないかと思う。

○ ファンディングシステムを構築することが必要ということは重要な点だと思うが、16ページに日本学術振興会のことが書いてあるのだが、日本学術振興会はファンディングシステムとして非常に重要な役割を果たしていくと思うので、これだけの記述ではその辺がしっかり書かれていないと思う。日本学術振興会は今、アメリカのNSFなどに比べると、人数的にも非常に厳しい状況の中にあり、その充実を図ることも重要だということを入れた方がよいのではないか。
 次に19ページの下から2行目に審査・事務体制を整備と書いてあるが、いろいろなところにいろいろなことが散りばめられているので、少しまとめた方がよい。
 もう1点だけ言うと、国のいろいろな施策があるが、21世紀COEや魅力ある大学院教育等についても国としての継続性も重要だということをぜひ入れていただきたい。大学としては2年3年ごとにくるくるシステムが変わると大変混乱してしまう。

○ 15ページの上から3つ目の丸、デュアルサポートシステムのことをここで述べているのだが、その下から3行目で、「デュアルサポートシステムの考え方が今後ますます重要」とあるのだが、デュアルサポートシステム自体については、もう基本問題特別委員会等で指摘があるので、「デュアルサポートシステムによる財政支援が今後ますます重要」と言った方がよいのではないか。検討をお願いしたい。

○ 研究の支援、ファンディングの仕方ということが議論のテーマの大きな1つになると思うが、まずそのデュアルサポートシステムについて、15ページの下から2番目の丸の文章について、いわゆる競争的資金に比べて基盤的資金が重要であるということを述べているのだが、もう少し堂々と横綱相撲というか、いかに基盤的経費が重要であるかを、相手に合せた言い方ではなくて、相手がどう言おうがこちらはこうなんだという姿勢の方がよいのではないか。

○ 今の件は非常に重要だと思う。全体的に公的研究資金を増やさなければならないと言っているわけだが、それがなぜ必要なのかというときに、本当の研究の基礎、基礎的研究の部分についても非常に薄くなってきている。だから、そういうところについて、我々はどのくらいのものが必要なのかということを明確にしておかなければいけない。適切な比率を定めて書くのも大事だが、どのぐらい必要であるかという絶対的な量と割合も大事だと思う。
 それともう1つはファンディングのシステムをつくるということを今模索しているわけだが、我々はどのようなファンディングシステムというものを目指していくべきなのかという問題がある。専門分野を考えてファンディングのシステムをつくっていくのか。今のデュアルサポートで言っているような、基礎的な部分についてはどういうファンディングが最もよいファンディングのやり方なのか。それから国がやるようなナショナルプロジェクトのような非常に大きなものについては、どういったやり方を政策的に決めていくのか。そのようなポリシー、初めのファンディングのやり方、決め方について、果たして今のままでよいのかどうか。それぞれの議論をもう1回整理し直してもよいのではないか。

○ 私も今のご意見に大変賛成である。まず、基盤的経費と競争的資金という2つの分け方もあろうかと思うし、国家的プロジェクト、非常に大型のプロジェクトをどこで、どのようなプロセスで、どのようにファンディングするかが、どこで決められるのかということをもう一度きちんと検証し直すということが必要であると思う。
 私どもの分野で実例を申し上げると、脳研究、あるいはゲノム、免疫、再生医療等、非常に重要で大型の国家的に推進すべきプロジェクトがあるが、それは今のところ、独立行政法人において非常に大きな額が投入されている。もちろん、国としてどこかがやらなければならないので、独法が適切かどうかという議論よりも、大学があまりにもそれと離れ過ぎているので、大学の活性化や多様性の創出、あるいは若者の育成という目的から少々離れていると感じる。独法だと、もちろん学部学生はいないし、大学院生も限られているということがある。あれだけのシステム、あれだけの金額が投入されているのに、それが次世代の若者を育てるということにどれぐらい寄与しているのかという問題である。もしあれがどこかの大学にアフィリエイトした組織として幾つかの大学がそれに寄与していれば、また随分その効果が違うのではないかという気がする。そういうことに関するファンディングの在り方というか、まず大枠の決め方というところを検証する必要があるのではないか。

○ 学術研究の多様性の重要性がうたわれている。これは今までも議論されてきたことであり、その通りだが、この予算措置に関して、科研費に非常に重点を置いて書かれている。他の予算関係のところは、例えば21世紀COEあるいは先端研究拠点事業費等という一語のみの表現となっている。文部科学省は科研費以外にも振興調整費その他多様なファンディング体制をとっているため、研究者の発展段階および目的に応じて、適切な選択を行うことができると思っている。その多様なファンディングの仕組みを取っていることを強調するような記述があってもよいのではないか。

○ 16ページの最後の丸について、支援の仕組みについてとあるが、なるべく公正にというような話も出てくるが、どのように決めるのかというときに、文部省時代、科研費に検討班をつくり、1年間ないし2年間、その課題について検討し、今で言う特定領域のようなものや、あるいは大きなプロジェクトを立ち上げるのが適切かどうかということを検討した。現在でも似たようなものが一部残っているようだが、もう少し充実させて検討班を公開で行うというような、大きなプロジェクトに関して、本当に日本の研究者の英知を集めて立ち上げることができるような仕掛け、システム等を検討することも意味があるのではないか。

○ 大きなプロジェクトをどのように仕掛けるかは非常に大切なことだが、多様性を図るということを随分言われてきたことからもやはり研究が個人に属するという点が大切である。だから、全国各地で生まれている個々の研究、個人ベースのアイデアに基づいた研究をどのように育むかというのことも大切なことである。お金の流れというのは人を集めるが、往々にしてそのプロジェクトを遂行する際にはその中で個々のアイデアが埋もれてしまうこともある。だから、俗にばらまきとは言われてはいるが、個々の研究者を大切にし、たとえ浅くとも広く研究をサポートするという姿勢が非常に大切だと思う。大きなプロジェクトは目立ちがちだが、森をつくるのにも下草が必要であるように、下草を育てるというスタンスも忘れずにお願いしたいと思う。

○ 例えば16ページ(2)のところに多様な支援方策の構築というところがあるが、国に対するこの部会の要望としては、一番最初にあったような絶対額を増やせということがしっかりと打ち出されていないと駄目だとは思うのだが、現在のところ、学術研究に関しては科研費等による競争的資金、それから交付金、また新しいことでは、特に交付金の中の特別教育研究経費しかないわけである。
 それで、ここに書いてあるのは、多様な支援方策(ファンディングシステム)を構築、と書いてあるが、要するにその中をいじくり回すだけなのか。一番下の丸には、次のような観点によるものが挙げられると書いてあるが、これはどのファンドに関しての意見なのか。またはこれに相当するような新しい財源をつくれと部会が言うのか、その辺がよくわからないのだが、やはり一番重要なのは、絶対額を増やすことが必要ではないかと思う。その辺がもう少しはっきりしないかなというところがある。
 多様な研究を進めるのは大変重要だが、もう1つの視点は、総合科学技術会議等の議論でもよくあるが、例えばアメリカと日本で基礎研究の絶対額が数倍違う。そのときに、同じように経費を多様にばらまいて、同じような方法で経費を分配したときに、数倍の差が当然研究成果の間に出るのではないか。果たしてそれでよいのかということについて、この部会はどう答えを出すべきか。学術研究というのは、国民の負託を受けて研究しているわけだが、国際競争の下でそこそこにやっていればよいのか。または特徴を持って、例えばアメリカも凌駕するような研究をすべきなのか、その辺の基本的姿勢、何らかの戦略がもう少し見えない。

○ 最も大事な点だと思うが、それは14ページの第3章の一番最初の基本理念の3つ目の丸のところに、欧米先進国と比較して対GDP比で述べているところだが、これをもっと強力に、あるいはもっと繰り返しどこかで述べるという、そういうご意見なのか。

○ これは過去ずっと言ってきたことである。特に高等教育に関するGDP比というのは全然低いわけだ。ただし、高等教育に関しては、これは研究と教育が入っており、例えば総合科学技術会議では教育を入れない。したがって、高等教育という範疇の議論はなされていない。したがって、もしこれが必要ならば、具体的にどのような取組みをすべきであるかというような議論を、もう少し深めるべきではないかと思う。何年たっても、これは同じことがキャッチフレーズで言われているが、むしろ政府負担の研究費に関しては外国の方が増やしているのが現状であって、日本はむしろ遅れをとっているところがある。その辺を具体的にどうすべきかというのも欲しい。

○ これも以前の会合で何度か議論したと思う。ただ単に増やせ増やせというだけでは説得力がない。このような新しいカテゴリー、新しいファンディングシステムで実施するので、これだけのものを増やしてほしいという具体的な戦略を書かないといけない。絶対額を増やしたいというのはみんなの願いであるので、常に出てくるわけだが、とおり一遍になってしまうので、何か戦略が必要だとは思っている。
 そこで、私が前回申し上げたのは、その戦略としては、国家的プロジェクト、どうしても国としてやらなければいけない大型のプロジェクトに関しては、省庁の枠を取った共同提案プロジェクトをつくり、そこに自由に大型のものに関して機関や研究者グループが応募するような、システムがないかということである。そうすれば、1人の研究者が同じようなテーマで各省庁から複数のファンディングを受けるという、いわゆる重複も避けられ、プロジェクトの進め方に関しても、より効率的に効果的に行われるのではないかと思う。

○ それも1つの案だとは思うが、横から見ていると、やはり1つの枠の中で、こっちをいじろうというシステムいじりにすぎないのではないかと思う。絶対額を増やすにはどうすべきか。

○ だから、その部分は、今は各省に予算が出ている。

○ でも、それは全体の科学技術の予算の枠内なわけだ。

○ だから、その分を増やそうという提案なのだ。省庁横断型のカテゴリーを増やす、新たに新設してつくる。

○ そういう方策か。

○ 何かそういう戦略を具体的に示さないと、ただ単に総額を増やせ増やせと言うだけではだめだろう。その1つとして、ちょっと申し上げた。

○ 確かに今の点は、これは学術研究の推進という点と、それから科学技術の振興の中で科学技術振興調整費を活用し、重点分野については研究者あるいは研究機関の連携による研究の推進を図ることが今、議論されている点であるが、科学技術・学術政策全体の中で今のところを明確にして、やはり学術研究についても、ビッグプロジェクト的なものを設定して、それによって研究を積極的に推進するという政策というのが今後必要になってくるのではないかと思うが、その点についても触れたらどうかと思う。

○ それは、現行の総合科学技術会議の連携施策群については、現在、そのための経費は小額が割り振られているようだが、それを例えば100億の単位で新たに予算を要求する。それがよい案かどうかわからないが、わりと具体的な戦略案あるいは新しいカテゴリーの創出ということを示さないと、ただ単にトータルのパイを大きくしてくれというだけでは、説得力がなかろうと思う。

○ 分析的なところは非常によくまとめられていると思うが、解決のための方策について具体的提言が十分でない。第3章で国による多様な学術研究の支援というところで、1番目が基本理念、2番目が具体的方策で、具体的方策は何が今後重要かということで、大学側の視点としては研究施設の整備、設備の整備も非常に重要で、そういう問題は指摘されている。しかし、それを具体的に解決するためには、例えば施設だったら補助金、設備だと特別教育研究経費というように幾つかのファンディングシステムがあるのだが、具体的方策を実現するための、ファンディングの提言みたいなものがない。こういうことが必要だということは書かれているが、それを解決すべき提言が抜けている感じがする。

○ 例えば19ページの(2)のところに、21世紀COEプログラムのことが出ているが、21世紀COEプログラムの次として、より大きなものをサポートするということが、本当は各大学の多様性あるいは大学が持っている特色を生かし、大学の研究者を活性化し、ひいては若者を育てるということにつながる非常に大きな戦略になり得るのではないかと思う。21世紀COEプログラムの第2弾として何か仕掛けをつくるというのが、これまでの継続ということから見ても、検討すべき重要な課題ではないか。

○ 全体的なトーンとして、「重要」と「必要」という言葉が非常に多く使われてて、どれももっともだと思う。しかし、必要であることは当然、皆わかるわけであり、では必要だからどうするのかが重要である。21世紀COEについては、各大学でかなりの意識改革があり、競争的になっていると思う。ポストCOEを具体的にどうするのかということを各大学は期待しているので、しっかりと打ち出していくような方策もぜひお願いしたい。

○ COEは額は小さかったが、与えたインパクトは確かに大きかったと思う。だから、今度は本当にそれが理念だけでなく実現できるように、極端なことを言えば10倍ぐらいに額を増やすというようなことができればと思う。要するに、やはりパイを大きくするということなしには、なかなか難しいので何か具体策を示しながらトータルを増やしていくということが必要じゃないかと痛感している。

○ ここでは緊急に研究成果が出ないような分野も含めて多様な学術研究をサポートするというのが一番重要な背景にあると思うが、そういう面で見ると、例えばCOEというのは、その中での非常に重要な分野をピックアップする、むしろ重点化の方に向かっているのではないかと思う。この一番最初に出てきた高等教育の投資金額が他国のGDPに対して2分の1程度しかないと、そういうことを議論するときには、COE関係は国立大学等の交付金1兆2,000億に対して数百億円にすぎない。もし高等教育を倍増するならば、これは1兆2,000億を2兆4,000億にするということなので、スケールの全然違う話をしなければいけないのではないかと思う。そういう面で、単にCOEプログラムを増やそうと言っていても、学術研究の推進になるかどうかと思う。

○ 先ほど申したように、今の21世紀COEを10倍くらいに、まず確保しなければいけない。1つ1つを積み上げていき、トータルを増やしていこうということであり、初めからこれを2倍にするための戦略を考えましょうということだと、また話は別になると思う。

○ イメージの出し方など予算を増やすために、どういう作戦があるか。まさに私は先程おっしゃるような方向で現実的にやっていただかないと、なかなか予算をとれないと思う。この報告書は力作だということはみんな認めるのではないかと思うが、そういうものを見せていくということはすごく必要だと思う。要するに今までのやり方、国立大学も法人化し、その他研究機関も随分様子を変えてきている。そういう中でファンディングのシステムを変えようと言っている。そうすると、単純に予算がGDP比で半分しかないから、これを倍増するんだというだけのロジックでは、もうそろそろ飽きがきているというか、本当にそれをやるとすれば、例えば社会保障費だって毎年1兆円ぐらいずつ増えていくわけである。そうすると、そこのところについて、まさにせめぎ合いで戦わなければならない。若い人たちの次の日本をつくるための投資をやるのか、大人の生活保障をどれだけやるのか。国家財政は一定なので、一定以下にしなければならないと言っている時代に、そこのところは戦うしかないと思う。
 そういう意味では、我々はこういう仕組みでもって、こういうことをやりたいんだ、これから5年、10年を考えたら、ここのところは絶対不可欠だ、といった問題があると思う。例えば、本当に研究者の育成は日本において十分できているだろうか。かなり目詰まりしていて、どちらかと言うと枯渇しつつある。だから、お金を重点分野で投じても、本当によい研究者がそこに今後集まってくるのかという疑問がある。そういうことから考えれば、そういったことの展望も全部含め、どのくらいのお金をかけなければいけないのか。本当にGDP比半分だってやれているのではないかと言われてしまうと困るわけで、やっぱり国民に対して、こうやらないとどうにもならない、だから社会保障費も少し我慢してもらいたい。そこまで突っ込んで言わなくてもよいが、とにかくそのバランスは最後は政治家がとらなければいけないのだから、それをとれるだけの根拠を与える必要があると思う。そういう意味で新しいシステムというのをはっきり打ち出すべきだ。

○ もう一度もとに戻ると、とにかく総額を大きくしなければならないことは当然として、それを訴え納得してもらうには、どのような戦略が必要なのかということだ。もう1つは若者の育成という観点から、私はやはり大学院生の生活保障が非常に大きなテーマだと思う。だから奨学金で片づけるとすれば、それこそ何倍にも増やさなければいけないだろう。それから、その後のポスドクあるいはRAという話も出たが、それらをきちんとサポートしない限りは、単に若手の育成と言うだけでは事は済まないと思う。

○ 学生のための予算を増加するというところは非常に賛成である。今後さらに少子化になっていくにつれ、大学の数や規模が適正な値になっていくと思うが、それを踏まえても現在の学生が危機的な状況であるというようなことを少しどこかで触れなければならないと思う。

○ 国立大学法人化後、大学にとって一番厳しいのは施設整備の問題である。1兆2,000億の中で施設整備費が500億という額になっているわけだが、これは少なくとも5倍くらいの額にしていく必要がある。ここの18ページのトーンでは、あまりに訴える力が弱い。世界一流の人材が魅力を感じるような品格のあるキャンパスの整備という記述には全く賛成だが、今はそれ以前の問題だと思っている。世界一流の研究教育をやっていくには、それに見合った施設と設備が必要だという論点でぜひ書いていただきたい。
 それと、先程もあったが、大学院におけるこれからの人材の確保が重要である。もうアジア諸国との競争でも待ったなしの状況であり、国家的に考えていかないと悲惨なことになっていくと思う。その辺ももう少しまとめて、大学院に対する支援は強調すべきである。

○ GDP比に対する比率が高等教育についても0.5パーセントで先進諸国の1パーセントより低い。一方、初等・中等教育も先進国で3.5パーセント、日本のGDP比が2.7パーセントであり、そちらも先進諸国に追いつくようにというトータルの議論が両方行われているのだが、ただその場合も、どういうところが現在、不足しているかという具体的な提言をしないと、なかなかトータルで増やせと言うだけでは説得力がない。岩崎委員がおっしゃったように、例えば施設・設備については計画的に、国としてやはり整備計画を進めるべきだというのが第3期の科学技術基本計画に、こういう数値で盛り込まれるべきだといった、ある程度具体的な提言をしていかないと、トータルではなかなか増やすという雰囲気にはなってこないと思うので、学術研究でどういう分野について、さらに資金を投入すべきかということを、ある程度、提言していかなければ、国、あるいは総合科学技術会議などの理解は得られないと思う。そういう点について、さらに検討していただきたい。

△ いろいろお話があったように、予算の獲得のためにも戦略的に考えなければならない。本日、私立大学における研究をどうサポートしていくかという観点でのご発言があった。大変重要な論点であり、まさに日本の大学あるいは学術研究機関がオールジャパンでやっていくためには、私立大学の持っているポテンシャルをしっかりと活用していくという戦略がとても大切である。この報告書の素案もその観点から書かれている部分があると思っている。具体的な話として、競争的資金の中で人件費の面倒を見るということもあり得るのではないかというご指摘をいただいた。よくよく考えていかなければいけない重要な論点だと思っているが、この点については、この報告書においても、基本的なスタッフの確保、特に中心となる常勤の研究者の確保とそれ以外の基盤的な部分の整備についてはむしろ基盤的な経費で対応するという観点で競争的資金と基盤的な経費等のデュアルサポートという形で整理されているかと思う。したがって、常勤の研究者の人件費を競争的資金で面倒を見るという話になった場合には、私学助成、あるいは国立大学、大学共同利用機関の運営費交付金そのものの見直しということにも話が及ぶ可能性があり、それは損な話であると私どもは戦略的に考えているところである。繰り返しになるが、私立大学のポテンシャルをしっかりと活用していくことを考えていかなければいけないと同時に、全体として私学も含めた学術研究の予算額が増えていくという方向での戦略も考えなければならない。この点については実務的にも重要な論点だと思っており、さまざまな角度から慎重に検討していく必要があると考えている。

○ 最初のころは、わりと学術研究のそもそも論や高い理念等議論してきたが、最後にまとめる段階になると、やはりこれはお金の問題になる。研究を推進するにしても若者を育てるにしても、少子化へ向かっての日本において少ない子供たちをどれほどこの学術研究の分野に惹きつけるのかというときには、もちろん学術研究の重要性等を訴えること、あるいはその魅力を伝えることも必要だが、最近の子供たちの特徴として、やはり生活基盤がきちんとしているということが非常に大きな選択のファクターになっているということを、彼らと話してみるとつくづく感じるので、倍増、3倍増の予算要求というものも、やはり必要だろうと思う。

○ 要するに予算を増やすというときに、国の予算という考え方はもちろんあるが、結局は国民各層の幅広い支持をどうすれば得られるかということになる。それから、お金を回してもらうためにどうしたらよいかということだ。非常に文化的なもの等は一般人が参加できる可能性を持っていると思う。そういうところについては、逆に何でも国のお金を予算化するというのではなく、一般人が参加できるということも非常に重要だと思う。
 というのは、一般人はお金を持っているが、今はもうほとんど投資に回らないという状況がある。そうすると、それを投資に回す仕掛けの1つはこういう文化的なものや、若干教育もあるし、やや研究的なものもあるかもしれない。そういうところに一般人にもっと参加して、投資してもらう。そういう興味を醸成しないと、国のお金を0.5パーセント増やしてくれればそれはよいが、これはやはり闘争も必要なのだ。全体からいえば一般人が持っている1,400兆円のお金はあるわけだから。
 国の赤字の方をどんどん増やすというやり方は、日本では無理である。無理だとすれば、科学技術創造立国なのだから、何でもかんでも研究してお金もうけするのではなくて、こういう文化的なもの、何かもっと一般が楽しめるような学問的なものに資金を投入してもっともっと伸ばしていけば、金額的には大したことないかもしれないけれども、非常に雰囲気は変わると思う。

○ 今のと関連して、こういう学術研究に対する気風、税制の改革という文章がどこかに出てきたが、そこに投入される予算、お金をどのように集めてくるのか。国だけではなく、いろいろなところから集める方策をどこかにまとめて書いた方がわかりやすいかもしれない。いろいろなとこにGDP比や税制についての記述が散見されるが、やはりこの提案としては、とにかくトータルを増やすことが大事だということを訴えるために、まとめて書くというのはどうか。

○ 例えば、ミュージアムのお金というのは、国で出したり、あるいは民間の人がやったりしている。一般人がお金を出して、例えば100万円寄附したら、そういうものに、国もマッチングするんだというくらいのことをやれば、文化的なものに非常にみんな興味を持ってくるのではないか。むしろ、そういう方が国が直接お金を出して、とにかく補助金でやってきたという政策の考え方を全く変えることを示すことができると思う。研究だって、本当はそうやりたいが、いきなり研究のところでそれを理解してもらうのは難しいかもしれない。だが、文化的なものだったら、幾らでも可能性があると思うし、大学等も目が向いてくれるのではないだろうか。

○ アメリカの有力な私立大学等では、民間、あるいは個人からの寄附が大変多い。調べたところ、国立大学法人と比べるとけたが違う。2けたくらい違う額を自ら集めているわけだが、よくよく調べると、必ずしも国民全般から広く集まっているわけでもなさそうである。具体的にどこから集まっているかというと、その大学の同窓生が多い。日本でも私立大学は非常に盛んにやっているところもある。国からも倍増せよと言っても、具体的にはなかなかおりてこない。やはり何とか集める努力をしなければならないというのだが、日本には個人の寄附の文化が育っていない。それは非常に長期的な大きな問題になると思うのだが、そうは言っておれないので、大学の戦略としては、やはり同窓生が大きな戦略になっていて、国立大学も法人化して、そういうところに力を入れようと、あちこちでやっておられる。東大も、かなり組織的にやり始めたし、東工大でもそういうことの重要性というのは、やり始めているが、まだまだその文化が育っていないので、アメリカなどに比べると、少なくとも1けた違う。しかし、このような文化が浸透していけば、徐々に増えていくだろうと思う。それがもっと浸透すれば、国民一般からも支持が得られる可能性がある。そういう意味で、アウトリーチの部分が書かれているが、そこはやはり、我々大学人、あるいは研究者も、長期的な展望のもとでの活動を地道にやる必要があるのではないかと思う。

○ これはオールジャパンのことは非常によくまとめられていると思うが、研究機関には大学と、もと国立研究所だった研究所と、地方の試験所のような研究所など、いろいろカテゴリーがあると思う。例えば、地方に根付きローカルな人たちとの交流をうまくするようにということも書いてあるが、研究機関には、それぞれの住み分けがあってよいと思う。オールジャパンとしては、もちろん全体的な方向は示されるべきであるが、施策段階では研究所と大学とどう違うのか、両者共同じようなことやっているのではないかということにならないよう将来の問題ではあるが、今から考えていかなければならない。

○ 欧米の例だと、例えばマックスプランク等の大きな研究所の研究者がある大学の教授である。大学と研究所とのアフィリエーションがうまくいっており、教育もするし、ラボも2カ所に持ってて一緒にやっているという、大学を活性化する、若者を育てるということに同時に役に立っていると思う。
 ところが、日本で、さっき例にとった再生医学とか免疫学とか、新しく大きなお金を投入して独法の1つのセンターをつくる。そうすると、大学と切れてしまい、教育をしなくなる。若者がそこに来る、大学院生や学部の学生が出入りすることがなくなるということで、国全体として研究だけを見ればよいということかもしれないけれども、大学側の視点に立つと、そっちへ人材をとられてしまう。あるいは若者を育てるということに関しては、弱体化する。だから、独法等につくるのは結構だから、いかにそこと大学とが、有機的にというだけではなくて、制度上きちんとそこの研究所の人材が大学の教授を兼任しているというような制度をつくらないと、もったいない気がする。大学と切れた関係になっているということを憂慮するところがあるので、この点も将来考えねばならないと思う。

お問合せ先

研究振興局振興企画学術企画室

(研究振興局振興企画学術企画室)