学術研究推進部会(第10回) 議事録

1.日時

平成17年6月7日(火曜日) 15時~17時

2.場所

三田共用会議所 「第4特別会議室」

3.出席者

委員

 笹月部会長、井上 孝美委員、郷委員、中西委員、伊井委員、飯野委員、井上 明久委員、伊賀委員、入倉委員、戸塚委員

文部科学省

 清水研究振興局長、柿沼主任学術調査官、芦立学術機関課長、甲野学術研究助成課長、里見学術企画室長 他関係官

オブザーバー

(科学官)
 五條堀科学官、高埜科学官、山本科学官
(説明者)
 小野日本学術振興会理事長、本藏科学官

4.議事録

(1)資料1-2、3-1、3-2に基づき、事務局より説明が行われた。

(2)資料2-1に基づき、小野日本学術振興会理事長より、「学術における国際共同研究の推進」についてプレゼンテーションが行われ、その後、質疑応答が行われた。主な内容は以下のとおり。
(○・・・委員、科学官の発言、△・・・事務局の発言、▲・・・説明者の発言)

○ 資料の19~20ページに「アジア諸国との連携推進」とあるが、日中韓は大変重要なパートナーであり、私どもも恒常的に研究所間の交流を行っているが、さらに研究を推進するためにはどうしてもインドの積極的な参加が必要であり、大変力を入れているところである。しかし、基礎科学の推進にもかかわらず、ビザ等の問題で、NPTの問題が波及してインドの研究者が自由に日本に来れないという問題があり、最近では事態が大分改善してきてはいるものの、ぜひ考えるべきことであると思う。
 アジアにおける連携推進について、EUの過去を見ると、今後50年程でAUができるのではないかということであるが、まず科学技術の面でイニシアチブをとるべきではないか。例えばEUでは物理学の分野はCERNがまず最初にでき、それが大きなヨーロッパのセンターになったわけである。同じようにリージョナルな科学的なセンターをぜひアジアに作り、それを拠点としていくべきではないかと思う。 もう一つ、13ページに「大学・研究機関同士の共同研究」とあるが、我々も含めて世界の5つの研究機関同士で極めて活発に共同研究を行っているところであるが、そのときにどうしても、大規模研究においては研究者レベルでの話と同時に、ファンディング・エージェンシー同士の話し合いが同時進行で進むということが必要不可欠になってくる。その際、文部科学省サイドがなかなかそれに対して積極的に参加しようという態度が見受けられない。研究者同士はすでに完全に国際化しているのだから、ファンディング・エージェンシーの国際化というのをさらに進めていただかないと、機関間、国同士の共同研究で立ちおくれる可能性がある。 例を挙げると、例えばALMA計画において、日本の対応は遅れてしまったし、コヒーレントな共同研究が欧米のみで進んでしまったということがある。今後、国際的な枠組みについては、少なくとも情報収集という面では積極的に参加していただきたいと思う。

▲ インドは技術力も高いし、大変重要な国である。私どもも決して日中韓だけにとどまるのではなくて、インドも含め、将来考えていかなければいけないと思っている。インドの研究者が日本になかなか来にくいことがあることも事実であって、JSPSの事業でも時々引っかかることがある。これは外務省にもお願いしなければいけないことかもしれないが、本当に純粋に研究面で来られるのであれば、そこはできるだけ来日しやすくなるように努力をしていかなければならないと思っている。
 もう一つのファンディング・エージェンシー同士の話し合いについては正にそのとおりであり、実は私どもも中国のNSFCとは非常に緊密な連携をとっている。こういった単に大学や研究機関同士だけではなくて、ファンディング・エージェンシー同士も含めて、国全体で前向きに考えていくことが必要かと思っている。ただ、予算がそこまで確保できるかという問題もあり、少し萎縮する向きはあるのかもしれないが、できるだけ積極的に取り組んでいきたいと思っている。

○ 例えば、日中の新興・再興感染症に関する共同研究では、日本が国際的にリーダーシップを確立するためのセミナーを実施するための枠があり、日本と中国でセミナーをやることによって、非常に盛り上がった。しかし、研究を実際に具現化するときに、日本は日本で競争的資金に応募せよ、という状況であり、中国側とファンディング・エージェンシー同士の話し合いがない限りは共同研究を設定するというのはなかなか難しいと思う。
 一方、我々が文科省や厚労省に申請して科研費を手にすると、極端なことを言えば、中国側は、日本人の研究者が研究費をとるために日中間のセミナーを開催し、自分たちは利用されただけだと思ってしまう。それを避けるため、ファンディング・エージェンシー同士が前もってきちんと話し合いをしておくということが必須だと思う。これはJSPSに限らず文科省が相手の国のどこかときちんと相談するというプロジェクトを立ち上げない限りは、日本と外国との2国間の共同研究で日本がリーダーシップをとるということを言うと、相手側は、「日本の政府が金を出してくれる」という印象を得ることもある。これからはイコール・パートナーシップということで、両国できちんと話し合いをするということが大事だと思う。ぜひ、JSPSに限らず文科省でもきちんと考えていただければと思う。

○ 海外の拠点で連携をしていきたいというお話があったが、各大学でも北京や上海に作ろうという動きはあるが、連携をどのようにしていくかお教えいただきたい。また、日中韓ということで人文学でも言語や文化ということでかなり連絡しているところもあるが、中国では学長がかわると今までの分野をやらなくなってしまうというように継続性に非常に難しいところがあるので、これをどのように維持していくのかをお教えいただければと思う。

▲ まず海外拠点であるが、例えば、ワシントンにJSPSの現地事務所があるが、そこと大学と協定を結ぶことが考えられる。大学が事務所を借りたいということであれば、予算面では対応できるが、JSPSは定員がなくて実に困っており、定員をお貸しいただいて一緒に仕事をするような方式もあり得るかもしれない。それから、各大学も1人派遣するほどの定員余裕がない場合でも3分の1程度なら派遣できるとなれば、3つの大学が共同してJSPSと共同し合ってやるという話もありうる。
 例えば国立大学法人の職員の研修の意味もあるので、国立大学法人の職員の方にJSPSに研修に来ていただいて、1年ぐらい外国の事務所で研修と仕事を一緒にしていただいている。そのことがまた大学にとってもメリットでもあるので、具体的に海外拠点の協力はしていきたいと思っている。現在、北京の事務所を申請しているが、北京側の事情で少々時間がかかっているところである。現実には事務所の部屋もあるが、正式な許可を得ていないという状況なので、何とか早い機会に許可をいただけるように努力したいと思っている。
 それから、人文学をはじめとして研究協力した場合に、人がかわったりしたことで途切れてしまわないようにということだが、私どももアジア諸国との拠点大学交流は従来、10年間ぐらい事業を実施してきている。そういう意味では非常に永続性があるけれども、一方ではあまり長く続き過ぎるとマンネリ化してしまうところがあり、そうならないようにきちんと中間評価をしながら、一方では継続的にきちんと話ができるような、そういった努力もしていかなければいけないと思っている。

○ 国際的な連携をしていく中で、例えば中国であるとNSFCのほかにCAS等がある。しかも、北京と上海では違う。例えば韓国でもKOSEFのほかにはKIST等がある。この辺りはどのように選ばれるのか。日本の場合では、国際戦略からするとJSTがあるので、今後の学術推進の中で国際交流を一元的、あるいはその性格を極める形で分担をしていくということも重要かと思う。

▲ パンフレットの32ページをご覧いただきたい。例えば中国であると、NSFC以外に中国科学院、中国社会科学院、教育部と連携している。中国医学科学院、それとNSFC、それから科学技術部、これだけの機関と協定を結んでおり、それぞれ特色を生かしながらつき合っていきたいと思っている。例えば韓国であるとKOSEFが大きな機関なのだけれども、人文社会系の分野でもぜひ交流をしたいという申し入れなどもあり、その辺は画一的にならないようにそれぞれの特色を生かした交流をしていきたいと思っている。
 日本の中におけるJSPSとJSTの仕分けであるが、これはお互いに独立行政法人ということもあって、比較的トップダウン型がJSTの業務、JSPSはボトムアップ型の、各大学や研究機関の研究者の自由な意思をできるだけ尊重しながら交流を図るという仕分けがある。お互いにノウハウを共有したり、あるいは協力しながら、できるだけ幅広く交流をしていきたいと思っている。

○ アジアからの留学生は増えているけれども、欧米からは減っている点は一番ショッキングなところである。また、アジアとの関係では最先端研究がどのくらい生まれるかという観点から交流と共同研究は別々に考える必要もあるので、いろいろ枠組みを作った後、最先端の研究がどれくらいできたかという指標をぜひ作っていただきたいと思う。
 研究というのは、結局は個人に帰するところが多く、魅力ある研究室作りをしっかり支援することが一番の基本である。そうすれば世界中からいろいろな人がやってくると思う。だから、アジアだけでなく、是非、優秀な研究者をいかに引きつけたかという指標も作ってほしいと思う。優秀な人の数は限られており、世界中でその頭脳の奪い合いが起きている。そのような観点からの指標も含めて考えていただければと思う。

▲ 指標という意味ではまだだが、例えばフランスと人文学関係で交流を図ろうとか、あるいはさくらプロジェクトという新しいプロジェクトを始めており、これは今結構、人気が高い。それから、ドイツとも新しい交流をいろいろやろうと思っている。欧米先進国と強力なパイプをつくるということは非常に大事であるので、我々も、ヨーロッパ先進国・アメリカ、それとアジア・アフリカとも、それぞれの分野で、交流を図ってまいりたい。特に最先端のマックス・プランクやCNRSといったヨーロッパの有力な機関とも密接な交流を図るよう、努力をしたいと思っている。
 どういう指標ができるかというのはなかなか難しいけれども、本当の意味で最先端の研究者の交流、あるいは共同研究、そういったものを実施していく努力をしていきたいと思っている。指標については少し検討してみたいと思う。

○ 研究環境の整備ということで、例えば英語が常用語になっていなければだめだとか、また、外国人宿舎、キャンパスの中に家族でも住めるような部屋も確保した宿舎のサポートなど、国としてのサポートがぜひ必要ではないかと思う。

▲ 英語に関して、日本の子どもたちの学力は非常に高いと初中局の方は言っているけれども、TOEFLの国際比較をすると世界最低に近い。いろいろな議論があったけれども、大学センター試験におけるリスニングテストを実施しようといったことも背景として日本全体の英語に親しむ環境が広がっていくと思うし、おそらく文科省で検討されているだろうが、小学校その他義務教育段階での英語教育ということも考えていかなければならない。
 それから、大学の授業をより一層国際化していくことも大事で、この辺は文科省にいろいろお願いをするなり、JSPSとしても主張し続けていき、英語ですべて授業を受けられるような大学の数をできるだけ増やすことも必要であるし、そういう努力はしていきたいと思っている。

○ ポスドクに関しては、欧米からでもポスドクとして支払うことはできるのか。

▲ 外国人特別研究員の制度がある。

○ それは枠、制限があるのか。

▲ 予算の枠がある。これから策定される第3次基本計画の中でも、非常に財政が厳しい中でも、若手研究者の育成というのは、大事なことであるので、できるだけ力を入れていきたいと思っている。

○ 中国が盛んにやっている、いわゆる海亀作戦は日本は明治の初期にやったので、もう今さらと言う意見もあるが、国がそういう若者が外国のすぐれた大学の大学院、あるいは学部で研究することをサポートするということは依然として必要なのではないかと思う。

▲ 日本の若者が外国に行くことも応援しなければいけないし、外国で活躍している日本の優秀な研究者も日本にぜひ帰ってきていただきたいと思う。どうなるかわからないが、来年度予算で何らかのインパクトを与えるようなことができないかと検討しているところである。これは高等教育局とも相談しなければいけないし、若い人たちが教授から離れて、ある程度独立的に研究できるように何とかサポートできないか努力をしてみたいと思っている。

○ 実際に外国と交流をスタートするときに、いわゆる2国間科学技術協定が結ばれていると非常にスムースにいくが、それがないといろいろな意味で制約があるということを多くの人から聞く。ありとあらゆる国とぜひ締結していただきたいという気もするが、外務省に聞くと、そのためには5年ぐらいかかると言う。これはすぐスタートしなければいけない緊急のことではないかと思うが、この点はいかがか。

▲ 外務省に対してそういう交流がしやすくなるような条件づくりをしてほしいという強いお願いもしているし、各国の大使にもそういう交流をどう深めたらいいかについていろいろお願いをしていきたいと思っている。文部科学省にもお願いしてみたいと思う。

○ この国際共同研究について、研究者に成長する前の段階にある大学院の学生等が、例えば15名か20名ほど、3カ月間ほど日本に来て、見聞を広めると共に交流を深めたいといったことを支援するようなファンディングは今日お話しいただいた内容の中にあるのか。あるいは複数の国から、マッチングファンド形式でそういうことは申請することが可能なのか。そうした活動が、将来、研究者としての交流に花開いてくる素地を作ることになると思うのだがいかがか。

▲ 外国人特別研究員という形で外国の方を日本に招聘するプロジェクトはある。もう一つ、例えば今アメリカやドイツとやっているが、FOSという形で異分野の若い研究者が集まって議論をする。期間は短いけれども、若い人が触発されて分野を超えた人の議論を聞いて新しい発想をし、また研究に励んでいく、そういったプロジェクトも行っている。ドイツのDFGともそういうものを今結ぼうとしているが、共同してマッチングのプロジェクトを行うまでは至っていない。しかし、若い人たちをいかに希望を持って研究していただくかというのは非常に大事なことであって、いろいろ検討していきたいと思っている。

(3)資料1-3に基づき事務局より主要な論点を確認の後、資料3-3~3-6に基づき、事務局より、「学術研究の評価と成果公開」についての説明が行われた。その後、本藏科学官より補足説明が行われ、質疑応答が行われた。


○ 例えば特別推進研究について、これは採択された年だけカウントされるのか、それとも5年間続くと5年間常に採点対象に入るのか。

▲ これは研究科から上がってきたばかりなので、私もそこまで調べていないが、おそらく代表者として特別推進を持っている期間だと思う。

○ 例えば賞関係などでも、1回とるとずっと加算されていくのか、それともとった年だけなのか。

▲ これはおそらくその受賞された年だと思う。ただ、これは初めてであり、今回はこの年の結果を使うと思うが、考え方としてはいろいろあって、これを例えば平均で何年もならしていくという形になると1回の受賞で何年間も有効な形になる。

○ この評価は、大学としては最終的な評価の目標はどこに設定するのか、また、活用ということではどういうところを設定しておられるか。

▲ 評価室としては大学の評価ポリシーというのをまず定めてこれを進めるべきなのであるが、同時並行で進めており、これもまだ試行的な段階にある。このようなものを進めつつ、評価とはどうあるべきか、本学の実情にあわせ、どういう評価が適切かということを今後考えていくわけである。
 基本的な考え方としては、各教員個人が自分を客観的に見つめ、自分はどういうところに位置し、こういうことを実行すると自分で目標を定めることもできる。1回行うと、次はもう少し自分を高める目標を置き、その目標に対して自分が年度終了時に達成できたかという自己点検ができる。
 だから、基本的には各教員の教育、研究、いろいろな活動を活性化させ高度化させるということが原点である。しかし、そうは言っても特にパフォーマンスの高い若手には、何らかの優遇措置を施すべきであると考える。

○ 資料3-3「国の研究評価に関する大綱的指針」の5ページ、評価システムの改革の方向の丸が3つあるが、その中の1番に「創造への挑戦を励まし成果を問う評価」とある。この項目に関して、各大学によって違うと思われるが、何を目標に自己点検評価し、自分がどこに位置するかを知って、そしてどういう方向を向かせるのかというところが非常に大事だと思うがいかがか。

▲ そのとおりである。例えば研究については、研究者が自分で自分を高めようとするのは当然であるので、あまりとやかく言うことはないだろうと思うが、例えば自分の教育がポイントが低いということであれば、教育に関してもうちょっと努力をせねばならない。例えば学生による評価もある。自分が教育面で劣っていて、その部分については自分をもっと高める必要があるという現状をまず見つめて、それから高める努力をしてもらう。
 これはいろいろな活用項目があって、例えば経年変化を見ていく。ただ単に、あるポイントだけではなくて努力の跡が見えるかどうかというところを追跡する際にも使える。努力の効果が見えるような形で我々はデータを提供するというのが基本なのである。

○ 所属されている研究室、あるいは部局でも、現在では中期目標、中期計画に基づき傾斜配分を行うことが要請されていると思うが、個人評価は傾斜配分をする基本のデータととらえているのか。

▲ この問題は大変難しく、部局等に対しても傾斜配分をどう考えるとかいうことが要請されることになると思う。あるいは学内でもそういうことを考えなければならない事態が訪れるかもしれないが、現時点ではそこまで踏み込んでいない。今後の課題であるとは思うが、今の時点でそれを念頭に置いてやっているわけではない。

○ 評価することによって第三者が何かを追加するということはあった方がいいと思う。これは全部自己評価であるので、研究者が本当に優秀かという総合的な部分で数値化できない部分があるかもしれない。
 大学として発展するための多様な価値観があるので、そこへ教員として貢献しているものの数値化できない部分もあるかもしれない。その辺を考えると本評価システムは少々柔軟さに欠けるという感じがするので、もう少しソフトな部分、自己評価ではできない部分なども追加されるととてもいい評価になるのではないかと思う。

▲ それは評価室だけでなく、全学的にも検討しており、必要だという認識は我々も持っている。ただし、現時点でそこを加えていないのは、本学は理工系総合大学で様々な研究科、研究所はあるが、基本的には同じ価値観を持っていると思っているからである。今後の評価はどうあるべきかということを検討する際に、指標を同じにしておくため、評価項目は固定させていただいている。
 今後どうするかについて、例えば、試行期間を終えて評価のあり方について教員もみんな納得し、自己啓発にも使え、自己向上のための努力指標にも使えるということが分かった段階で、さらにこれを高度化するにはどうしたらいいだろうかについて検討に入っていこうと私は評価室長として考えているわけである。

○ 例えば、いわゆる絶対評価で日本における5位、10位よりも、ややインパクトファクター等は低いけれども、日本ではトップだ、というものが評価され、それを生かすのが大学の特徴を発揮し、あるいはもともとのテーマである多様な学術研究をサポートするということにもなろうかと思うが、その点の配慮はあるか。

▲ 重要な視点であると思う。今、1つの例を出した。もちろんウエート付けはなされていると思うが、これはいかにもいろいろなものを総花的にとっており、評価室長としてこれを見たとき、実は私自身も少々驚いた。もう少しメリハリというか、この部局はここのところを重要視し、この部分で世界で勝負するという姿勢が出てくるかなと思っていた。残りの部局も徐々に今評価を行っており、そういう部局も出てこようかと思う。それは部局の姿勢であって、どこをポイントにするのかということを実は見たいがために評価項目は同じにしておいて、ウエートはどのようにするかという方法をとった。
 だから、ウエートをゼロにすれば、そこは考慮しないということに対応するわけだが、ウエートをゼロにすることも認めている。それから、全部の項目を取り上げる必要はない。自分のところで重要と思うのだけピックアップする。ただ、全学的なものを見るときに対応が困るので、追加することだけは現時点では認めていない。おっしゃるとおり、ある部局では非常にコンパクトにまとめてくる可能性があろうかと期待している。

○ 私は非常に違和感を感じる。会社であると売り上げ、あるいは利益という単純な指標の中でどうそれを最大化するかということは非常にわかる。一方、そのシステムが学術推進においても、確立されればされるほど、いかにリスクをとれるような研究を保障あるいは研究の多様性というのをどこまでサポートするのかが問題となるのではないか。大学院にしても、研究所員にしても、それが基盤として必要である。しかし、委員会活動もできないし、大学活動もできないけれども、すごく研究はできるんだという人もいる。そこは部局ごとによる重みづけというところでそのような人を配慮するということろもあるのだろうが、必ずしも十分でない可能性がある。したがって、このシステムが全国の大学や共同利用機関に入っていくとすると、少々恐ろしい気がする。
 私はよく「研究者牧場」という表現をするが、とにかく自由にやってみろといった部分がどこかにあると、まれにとんでもない研究成果が出てくる。だから、研究者の研究内容の多様性と、もう1つは研究者発意の自由性、それをどこかで担保できるようなシステムを残しておかないと、今活躍している人たちだけが評価されて、その次の世代や次の分野を担う人たちが過小評価されていく。
 また、大学や共同利用機関においては資金が頭打ちで、運営費交付金は1パーセントずつの減がある。外部資金をよほど十分にとってこなければ、結局、限りある資金としてのパイを食い合うわけである。基盤的資金はほとんどの場合が人件費に費やされていくであろう。そうすると、むしろ昇給ではなく、誰を減給していくかというような逆の作用も現実的には出てくると思う。そのあたりに不安を持つがいかがか。

▲ それには反論したい。後者のほうについては現時点ではわからないが、前者については私はそうは思っておらず、我々が今まであまりにも評価に対して無関心であり過ぎた。我々がやろうとしているのは、研究者を萎縮させるためでは決してない。目立たないけれども非常にすばらしい研究の芽、研究のアイデアを持っているようなところをつぶしてはいけないということは、我々も全く同感である。ただし、それが故に何もしないというのはあまりにも無策である。
 だから、今出したのは1つの例で、これが全てだとは言っていない。だが、評価というのものからは逃れられるような時代ではないというのが我々の認識である。例えばアメリカにおいては競争的資金をとってこないと研究自体が成り立たない。そういうファンディングシステムになっているわけである。もちろん日本ではデュアルサポートというシステムをとっている。その重要性というのはここで既に何度もうたわれている。当然、そういうものを反映するような形の評価でなければいけない。
 そうであるがゆえに我々は、外国とは違う我々自身の、しかも、大学が法人化されて個々の大学の個性を重んずるようになったわけであるから、どの分野においてもその大学に合ったような評価システムを考え抜かなければいけないわけである。我々はその取り組みをしているのであって、こういうものを恐れずにとにかく進み、いい評価システムを確立する。決して、萌芽的な研究を行っている人たちを潰してはならない。それがためにはどうしたらいいのかというのが我々の問題点であり、今後検討すべき大きな課題であると思っている。

○ 評価には目的がある。評価をすることによって何をどうしていくのか。つまり、次のアクションとつながらない限り、評価の意義というのは出てこないと思う。だから、その意義をどこに求めるかということは、差別化をどのように図るかということでもある。そこで、例えば評価後の給与や研究費の配分等について、どのような議論をされているか教えていただきたい。

▲ 今の評価を活用するというのは、中期計画でうたっているので、それはどこの大学も同じだろうと思う。それをどう生かすかというときに、ボーナスや特別昇給のところに現時点で生かし、それから、若手研究者に対しては研究科長裁量経費で対応しようというようにやっている。ボーナスや給与というのは、国立大学時のシステムを引きずっていると思う。そのときにいろいろな形で実は評価は行われてきた。大抵は研究科長や部局長が行っていたと思う。その部分をもっと透明化しようという要素もここにはある。
 目標はあくまでもそこにあるのではなく、例えばある研究科の中で自分がどういう立場にいるのか、例えばどの学術研究については、こういう評価項目にした場合に自分がどういうところにいるのだろうか、あるいはどこか欠けているものを自分で見る。それから、毎年やるから経年変化が出てきて、それを生かしながら、自分の欠点を見つめなおす。どこを自分は強くしていかなければいけないのかということを自分自身で考えて、自己を向上させるというところが、あくまでも評価の基本である。

△ 東工大では教養教育のカリキュラム改善の中で、個人ベースではなく、学生と教員、いわば教える側と教えられる側のミスマッチの状況について何か改善のためにやられたと思うのだが、例えば教育評価の部分で、今度教員の教育評価というようなことを1人1人に行おうとした場合には、カリキュラム改善というような形での試行、あるいは授業力の改善のようなことをを試行されておられるのか。

▲ 授業の改善については現在は学生による評価がシステマティックに行われて、どの科目についても、その教員に知らされ、それに対して教員個人が対応するようになっている。それに対してここに出されているものは、いろいろな教育のところで、もうちょっと多面的なものを取り入れようとしている。例えば博士課程の学生はどのぐらい育っているか、あるいは講義数をどのぐらい担当しているかなど。中身は尋ねていないところがあるので、これだけではだめで補完すべきことはあると思う。どういう講義を行っているか学生による評価はどう取り入れるのかという話も今後出てくるかと思うが、現時点では残念ながらそこまでいっていない。教育については、教育推進室という別の組織があるので、そこで教育の質の向上を図るためにはどうしたらいいかということの参考にはなろうかと思う。

○ 最近、ここにも出てくるが、世界水準の信頼できる評価ということで、外国人の評価委員を呼んでくるというようなことをやっている機関も幾つかある。そういうところに行ってみると、その機関の長が長年の友人を何人も呼んでおり、せっかく外国から連れてきても、何だか手前みそ的な感じが否めないというのがしばしば見受けられる。
 だから、国内の場合でもそうだが、評価委員をどのように選ぶのか、これが外部評価のときの非常に重要なポイントだと思っている。その点についても何か工夫が必要なのではないかと思う。自己点検評価ではだめで、外部評価だというが、その外部評価委員の選定のところにまた幾つかの問題があるのではないかということを常日ごろ感じているがいかがか。

▲ これとは直接関係ないのであるが、評価室としては、例えば部局ごとの評価を考える際には、新たな視点を入れてみようかと今考えている。国立大学法人全体が取り組んでいる中期目標、中期計画、年度計画の考え方をそのまま取り入れようというものである。今までは部局はあまり中期目標、中期計画、年度計画に当たるものを作ってこなかったと思う。ある意味では場当たり的に自分たちの思いつきみたいなものでどんどん進めてきている。もちろんいいことをやっているわけであるが、それをもうちょっとシステマティックにやってみようではないかというものである。我々は大学全体の中期目標、中期計画、年度計画とは別に、各部局がそれぞれ目標を立て、計画を立てて年度計画を作ってくださいとお願いしているところである。
 それに対しては、これは企画室担当であるが、進捗状況のチェックを入れる。それから、年度末には自己点検を求める。それを今後毎年行うことにしているのであるが、そういう軸でもって何年か貯めて外部評価にかけようとしている。だから、もちろんいい評価委員を選ぶことは大切なのであるが、外部から来てくださった方には何か指標みたいなものを用意したいと思っている。それに基づいて、例えば経年変化を見て、あるいは目標を立てるので、その目標に向かってやったかどうかというチェックをしていただくことは可能になるわけである。そういうものも少し導入しようかなと今考えているところである。

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