学術研究推進部会(第6回) 議事録

1.日時

平成17年1月11日(火曜日) 15時~17時

2.場所

東京會舘 「シルバールーム」

3.出席者

委員

 笹月部会長、石井部会長代理、白井委員、伊賀委員、甲斐委員、伊井委員、稲永委員、井上明久委員、海部委員、川合知二委員、坂内委員、玉尾委員、中村委員、平山委員、美馬委員

文部科学省

 清水研究振興局長、小田研究振興局担当審議官、村田科学技術・学術総括官、河村政策課長、森振興企画課長、芦立学術機関課長、小川量子放射線研究課長 他関係官

オブザーバー

 池上委員、川合眞紀委員、家委員、谷口委員、戸塚委員、観山科学官、山内科学官、吉田科学官
(科学官)
 五條堀科学官、清水科学官、本藏科学官、山本科学官

4.議事録

(1)平成17年度予算案の概要等について

 資料1-1~1-4に基づき事務局より説明が行われた。

(2)学術研究設備作業部会の設置について

 資料2-1に基づき事務局より説明の後、質疑応答が行われ、学術研究設備作業部会の設置について原案通り了承された。その内容は、以下のとおり。
 (○・・・・委員、科学官の発言 △・・・・事務局の発言)

○ 国立大学法人だけを対象にしているのか。

△ 必ずしもそうではない。特別教育研究経費は国立大学法人が対象となるが、研究設備の在り方、例えば共用であるとか、国公私を通じてどう使っていくかについてまで議論が広がれば、国立大学法人や大学共同利用機関法人に限定されない視点も視野に入ってくると考えている。

○ 特別教育研究経費については財源があるので、それを前提にした議論ができるが、それ以外の研究資金も考え得るのか。どういう条件のもとで議論することになるのか。研究資金の見通しをある程度立ててやれるのか、あるいは、要望を出していくという形になるのか。

△ 特別教育研究経費には限らず、例えば、大学関係者から、戦略的に集中的な資本投下がある一定の時期に行われた後、維持経費や運転経費をどう確保すべきか、あるいは、その辺りが顧みられていないのではないかという意見が寄せられている。そういう部分については、制度設計をしている側に考えを提示することなどが考えられる。研究設備も全国共同利用の設備、科学研究費補助金で対応できる設備、従来の基盤校費で対応できる設備、さらにそれ以外の設備と多種多様であるので、整理をしながら議論をしていくことは意味があるのではないかと考えている。

(3)学術研究における多様な分野の総合的な推進方策について

 資料3-1~3-3、3-5に基づき事務局より説明の後、鳥取大学乾燥地研究センター長である稲永委員よりプレゼンテーションが行われた。その後、「研究費、研究環境・研究基盤の改善」について審議が行われた。さらに、資料3-4に基づき事務局より説明の後、審議が行われ、資料3-4について一部修正の上、学術分科会へ報告する旨了承された。その内容は、以下のとおり。
(○・・・・委員、科学官の発言 △・・・・事務局の発言)

○ 説明のあった鳥取大学の諸問題は、鳥取大学だけではなくて各大学の共通の問題である。基盤的資金をどうやって増やすかという具体的な推進方策であるが、基盤的資金が重要であるとただ言っても財務省も納得してくれない。なぜ必要なのかというのは今までやってきているので、何か新しい考え方を基盤的研究資金にも入れなければいけないのではないか。例えば連携融合など、何か新しい仕組みの中で基盤的なものを打ち出していく。基盤的研究資金は各大学の運営費交付金で賄うというのではなく、基盤的でありながら連携して社会の役に立つ、もしくは新しい研究をする、そのための競争的資金ではなく基盤であるが必要であるといったような枠組みをつくっていく必要があるように思う。

○ ある国立大学では、基盤的な当り校費に相当する部分の運営費交付金を学内でまた査定し直すという話があった。これは、学長にも経営責任があり、戦略的な発想が望まれるということが世間や文部科学省、審議会などでも盛んに言われた結果かどうか知らないが、この大学だけに限らない一つの傾向として否定できないのではないか。文部科学省が措置している運営費交付金の額そのものは減らないが、学部や研究科、あるいは学科、専攻といったように現場に近づけば近づくほど目減りが実感されている。これを一体どういうふうに考えるのか。学長がリーダーシップを発揮することはある意味で必要なことかもしれない。しかし、基礎代謝に必要なエネルギーのようなものに対して、学長のリーダーシップは、一体どういうふうに働くべきものなのか。基礎代謝に必要なエネルギーを戦略的に配分するということは、実は概念矛盾なのではないか。学長のリーダーシップというものを、少し考え直していただく必要がある。競争的資金のほかに基盤的な経費が重要であるということが、研究費部会でも盛んに言われている。そういう点を考えると、基盤的な経費を何か積んだり削ったりという対象にしてしまうということの是非について、もう一度、学術関係者は考えてみる必要があるのではないか。学長は何もするなと言っているわけではないが、すべきでないところまでやっているとすれば問題かもしれないという問題提起である。

○ 運営費交付金をどのように基盤的教育研究に使えるかということは、大学にとって重要であるが、もう一つの点は、共通経費というものである。例えば、光熱水費や、大学全体で考えるべき施策等に使う共通経費などである。おそらく、全学的なものと部局に必要なものの両方があると思うが、それを合わせると結構な額になる。現在、この共通経費が増えるほど基盤的研究費が圧迫されるという構造になっている。それに対して、運営費交付金が増えるかというと、効率化係数があるので、減ることはあっても全体として増えることはない。このような状況において、運営費交付金の増額の要求をしたところで非現実的な話であろう。
 大学の裁量で使えるもう一つの経費として、競争的資金の間接経費がある。現在、30%ぐらいついているものもある。外部資金についても、間接経費がついているものがかなりある。その間接経費をいかに有効に組み込んで位置づけるかということは、非常に重要な問題となってくる。全学的に必要な共通経費のかなりの部分を間接経費がサポートすることができれば、総体的に基盤的研究費が確保されるということになる。そうすると、間接経費は30%でいいかどうかというのは、いろんな議論があると思う。もっと間接経費を増やすべきであるという議論があってしかるべきであるし、その使い方についても、トータルに捉えて、大学全体の基盤的研究費を圧迫しないような方策を立てるべきだろう。

○ データによると日本は研究者数が4%増えている。研究者が非常に逆境の中にいるにもかかわらず、日本は不思議な国である。人口1万人あたりの研究者数は日本が世界一多い。おそらく日本は60人を超えたと思うが、アメリカが約50人、欧米先進国は30人~35人である。日本はある意味で非常に特殊な環境であると思ったが、研究者の定義にもよるので、この辺はもう一度検討いただきたい。
 それから、鳥取大学の乾燥地研究センターであるが、これは鳥取に砂丘があるからつくられたのではないかと思うが、砂漠や乾燥地域という特殊な場所を扱っているので、経営的な立場に立つといろいろなやり方が考えられる。例えば、自衛隊がサマワに派遣されるというのなら、すぐ自衛隊に赴き砂漠の情報をいろいろ提供する。そうすると、もしかすると防衛庁から資金が来るかもしれない。他にもいろいろ考えられるが、そういう意味からすると、少し日本に閉じている感じがする。外国を対象にして、レバレッジ的な効果で研究費を増やすことも可能なのではないか。気になるのは、人数が少し中途半端であり、クリティカルマスに本当に達しているかどうかということである。おそらく、少し少ないという感じではないか。いずれにしても、マネジメントの立場で考えると、他の共同利用のセンターよりもやり方はたくさんあると思う。
 それから、資金の問題である。資金はどこにあるのかを考えると、国にはない。だから、国の予算に頼っている限り、学長は収入が少なければやりようがない。確かに学長の見識は重要であると思うが、法人化により自分の給料が評価委員会で決められるような仕組みになっているから、学長も功を焦るのは、ある意味では流れとしては仕方がない。だが、資金がどこにあるかを考えると、国にはないが民間にはある。その民間の資金をどのように導入していくかというのが一つのポイントではないか。日本の大企業は、海外に日本の大学に出している倍以上の資金をさらに増やして出している。例えば、大企業の基礎研究について大学や国研が担当するならば、大企業がどういう研究を大学に担って欲しいのかを聞いて参加させ、投資を促す。やはり、資金のあるところにターゲットを合わせない限り、それ以上の展開は望めない。

○ 本当に基盤研究において民間からの投資が期待できるのか。

○ 民間の社長に、国と大学は科学技術に対して何をやるべきかという質問をしたら、必ず基礎的なことをやって欲しいと言うに決まっている。10年、20年先に役に立つことに予算を投入して欲しいと。ある意味では国の予算でやって欲しいということでもあるが、どういう分野の研究をして欲しいのかという要望を出すなど、彼らも参加することができれば理解してくれるのではないか。むしろ、我々が基礎的な研究やリスクの非常に大きい研究に対して、中途半端に物分りがいいせいもあるのだろうが、ヘジテートしている感じがする。海外から評価されているような大企業の社長と直接話をすれば、新しい展開が出てくるのではないか。

○ 学術研究や基盤研究の重要さを十分に認識していただくことにより、他省庁の予算をいただくという方向もあると思う。学術分野や民間、その他役所も含めて、社会に対して何をやらなければいけないかというターゲットを絞る場合、例えば、人が100歳まで死なないようにしようとか、交通事故で死ぬ人がいないようにしようとか、国際的に砂漠化が広がっているが世界で何とかしようといった場合、今のスキームであると、10年先あるいは50年先でもやらなければいけないことというのははっきりするが、それではそこに予算を投入しようと短絡してしまう。アメリカがさすがであると思うところは、情報通信の分野であるが、そういうターゲットを10年、50年先に実現しようとすると、解かれていない難問は何かという限界突破のアプローチをしていることである。基盤的研究や長期的研究と言ったりするものの本当の使命は何かというと、時間がかかっても、いずれ必要になる限界突破によって難問を解くことである。この難問解決や限界突破の重要性をしっかり認識していただき、そのために必要な学術分野への投資額を考えていただく必要がある。学術分野は、今まで先生方が好き勝手に研究をしていて、おもしろいこともある。それを必要に応じて利用するというのが他の省庁や民間のスタンスであるなら、それはトップダウンに置いたときの本来の価値である難問突破性ということが十分に理解されていないと思われる。
 アメリカでは、この5、6年で基礎研究に対する研究費を5割ぐらい増やしている。いろいろな見方があるかもしれないが、国際的な研究開発のリーダーシップをとるために基礎研究が重要であるという戦略のもとに、定量的な限界突破性ということに関して価値を置き始めている。我が国も我が国なりのターゲット設定を行い、その中で、学術分野が責任を持ってその限界を突破することによって、我々のアクティビティの価値というのを明確に理解いただく。そうすることによって、結果的に他省庁や民間も含めた資金が、プロジェクトなどを通して学術コミュニティに流れ込んでくる。

○ 稲垣委員のご説明の中で、重点4分野だけでなく、学術研究全体の振興と、それから各大学がつけた要求順位に拘らない評価ということがあった。特別教育研究経費については重点4分野に拘らない評価をされるのは当然と思うが、各大学がつけた要求順位にも拘らない評価ができれば、それは大変望ましいことである。現在は、どうしても大学に順番に割り振るというやり方になりがちであるが、大学の中で研究所が存在感を出していこうとすれば、外部からの資金獲得や評価に頼ることになるので、特に特別教育研究経費においては純粋なサイエンスの立場からの評価を確立していくことが大変重要なことである。
 もう一点は、法人化した利点はどこにあるのかということである。法人化した結果、非常勤職員や契約職員は非常に窮屈になったと聞く。これは、本来の法人化の目的とは、真っ向から反対することである。なぜそうなっているか。従来の国家公務員時代の規約・規則をそのまま受け継いだ上に、民間準拠になった結果、訴えられては大変であるということで、大変萎縮した人事政策になっているのではないかと危惧する。やはり我々はマネジメントしなければいけない。運営費交付金の1%削減というのは、一方的で約束が違うと思う一方、経常的な運営については現在でよしとするわけにはいかない。できるだけ効率的な運営をし、一人一人の効率を高める。そのためには、優れた人を雇い、養成する必要がある。事務や技術も含め、日本の研究所は国際レベルから見ると、マネジメントの点で非常に遅れている。それを国際水準まで高めないと国際競争に勝てない。マネジメントの重要性は研究所といえども非常に大事であり、ある程度のリスクはあるが、そのリスクを一切避けるようなやり方では法人化のメリットは生きてこない。特に非常勤職員や契約職員に象徴されるような守りの姿勢をどう脱却するのかということについて、天文台では情報交換も含めて思い切ったことをやっているので、非常に法人化のメリットを受けていると感じている。しかし、リスクもあるので、いろんな実例等を交換しながら、文部科学省でも情報を集めて、もっとこんなやり方もあるということを知らせていただかないと、なかなか効率的な研究所にはなっていかないのではないか。

○ 現在の立場から離れて一個人の意見として申し上げると、他省庁からの予算の受入というのは、ぜひ進めていかなければいけない。経済産業省や総務省からは、少しずつ入ってきているがまだまだ足りないと思う。外務省のODAや防衛予算については、アメリカのDAPAのような仕組みをつくればいい。防衛庁が、戦争しているわけではない。災害救助や地震対策、あるいはいろいろな復興について支援しているので、その技術的、推進的バックアップをするというファンクションは、大学人が担うべきところが随分ある。それから、他省庁の科学研究費があってもいい。一般的な競争的資金でもいいし、ターゲットを決めたトップダウンでもいいが、いずれにしても他省庁の予算の導入というのが有効である。
 もう一つは、基盤研究費の変質をよく理解すべきである。運営費交付金は、大学の設備など大学を立派にするというところに大学のリーダーシップがあり、研究者が研究するための資金は競争的資金で獲得していくということに変質しかけている。それに対して、現在抵抗しているという縮図である。そのまま行くのであれば、競争的資金をやはり倍増する必要がある。研究者は、競争的な環境の中で研究費を獲得していく仕組みにするということを掲げた競争的資金の倍増をやっていかないと、パイの中での取り合いの議論だと限界がある。
 あとは、少し乱暴な意見になるが、教育研究債といったような債券を発行する。シニア世代が持っている貯金を、将来のために、楽しみのために使ってもらう。10年、20年ぐらいの債券を発行する。ある研究者に、この株を買うのであなたには何ができるかと問う。それを楽しみにシニア世代が債権を買う。もう一つは、研究教育税1%というような税制を導入する。エネルギー税や防衛税の話とセットにして、1%は研究・教育に使う。消費税が5%から10%になるであろうが、そのうち1%は研究・教育に使うことができるように約束してもらうと、大学をはじめ、初等・中等教育も全部よくなる。それに対して、国民も、物を買う際に1%は貢献できるという気持ちなる。あとは、外国資金の導入である。今までの国立大学は、外国から研究費をもらうと言うと売国行為であると怒られたが、国益を損なわない外国研究費の導入というのは有効ではないかと思う。

○ 今の意見に大賛成であり、消費税を1%上乗せしてでも教育の部分に回す。年金が足らないというようなことばかり言わないで、前向きなところをもっと主張しないといけない。教育にかけている予算は少ないと思う。予算を有効に使うことも重要であるが、やはり足らないと言わざるを得ない。それで、少し違う観点から申し上げると、世代というか人口動態というものをそろそろ考えていかないと問題がある。今は法人化して間もないこともあり仕方がない面もあるが、これから人口がどんどん減少して若年層が研究の中核になる時代がもうすぐ来るわけである。日本人の人口が減少しても、今と同じレベルかそれ以上のアクティビティを望むなら、外国人と一緒にやらなければいけない。そうすると、それぞれの分野で卓越したものがないと優秀な研究者は集められない。そういうものを、これからどのようにしてつくっていくのか。これは全ての大学が同じようであるとか、それぞれの大学のやりたい研究だけというのでは、なかなかコントロールできないのではないか。そういう作戦をそろそろ考えなければいけない。

○ 基礎研究、特に基盤的研究は、国の果たすべき役割であるという考え方でいくと、それは出口が見える見えないと関係なく、国が予算を投入していく。知的探求権とでもいえるような国民一人一人にそういうものを探求する権利があるが、実際には、プロに任さざるを得ない。したがって、プロに任せるためには、もちろん責任もあるが、その分を消費税や法人税に入れていく。むしろそこをしっかり押さえた上で、積極的にそういう立場をとっていく。
 一方、法人のマネジメントからすれば、運営費交付金の数パーセントでも、財務運用に回せるといいのではないか。また、基盤的研究とは分けておかなければいけないが、出口の見える研究については証券化や債券化を、一つのオプションとして考えるべきではないか。
 財務運用や債券化によって、法人がある益を得る。しかし、もともとは国の予算である。授業料を値上げすればその分運営費交付金の交付額が下がるのと同じであれば、インセンティブは全くなくなる。こうなると本質的な矛盾である。つまり、自助努力すればするだけ運営費交付金は下げていかざるを得ないというこの部分を解決しない限りは、どちらの道をとるにしてもやはり難しい状況である。

○ 問題は、いかに具体的な施策を練っていくかということである。今の問題がどのように発生したかというと、国の財政改革の一端として、学術研究や大学の在り方が議論され、大学の法人化が行われているわけである。理念に基づいて行われているのではない。理念を求めて、学者のほうから積極的に提案をしていかないと、もう抗うことができない時代の流れに差しかかっていることは間違いない。それは、必ずしも危機的な状況と言えるものではなく、我々が自助努力をし、さらに大学を改革するいいチャンスでもある。
 そういう観点から、2つ申し上げたい。一つは、学術を守ることは、文部科学省しかできないので、文部科学省がいかに学術政策をより強くアピールしていくかということが非常に重要である。その学術政策をサポートするための科学技術・学術審議会なので、その位置づけを再確認して、総合科学技術会議や財務当局にも強くアピールしていく仕組みを検討していただきたい。
 もう一つは、大学の研究者の自己努力が非常に重要である。世の中の目というのは、この審議会のメンバーとは全く違ったものがあるということは間違いない。甘えたことを言っている、もしくは、ただ今の大学のぬるま湯に浸っていたいからではないか。もう少し努力をしろというのが世間の風潮である。これを的確に捉えながら、将来、我々が社会と共有できる考え方を提示していかないと、これからはやっていけない。だから、学術の根幹をしっかり担いつつも、具体的な努力をしていかないといけない時代であると思う。だから、これまでとは別の価値判断に基づき、外国も含めた様々なところからの資金導入や共同研究するなど、積極的な動きが必要である。なおかつ、運営費交付金で基本的なところをしっかり守るという大学としての理念や考え方を確立していくことが大切である。学長をいかにサポートする体制が確立できるかということが、ある意味では大学の存立を担っていると言ってもいいのではないか。そういう努力をしてきながら、学術の在り方を捉えていかないと時代の流れに押し流されてしまいかねない。

○ 結論的には、もう決まったパイの中で基盤研究を推進しようとしても無理があるという共通の認識であったと思う。だから、どのように国として基盤研究や大学の研究・教育を支えるのか、根本的な議論をしないと解決できないように思う。
 本日で、第2期の学術研究推進部会は閉会となるので、次回1月17日に開催される学術分科会に、審議経過を報告しなければならない。資料3-4に審議経過報告(案)あるが、この審議経過報告案について、どなたか意見はあるか。
 特にないようであれば、今日は研究費についての議論だけであったので、1ページ目の一番下の部分をそのように直させていただき、次回の学術分科会に報告させていただく。

(4)第3期科学技術基本計画に盛り込むべき学術研究の推進方策について
 資料4-1~4-3に基づき事務局より説明の後、審議が行われ、本部会で出された意見に基づき修正し、学術研究推進部会の案として学術分科会に諮る旨了承された。なお、最終的な取扱いについては部会長に一任された。その内容は、以下のとおり。
(○・・・・委員、科学官の発言 △・・・・事務局の発言)

○ 全体的に自己努力や社会への貢献といったトーンが、非常に希薄に思える。これは学術研究の在り方ということを考えても、別にどこかに対抗するためにということではなく、例えば、特定領域研究などの研究の中でも実際に社会に貢献する研究はたくさんあるので、学術研究の推進においては大学や研究者が自ら努力して社会に理解を求める、あるいは社会に直接貢献するといったようなことも大切である。総合科学技術会議の基本政策専門調査会が新しく発足し、ここがいろいろな方策を立ててくるので、当面ここに対してしっかりとした対応をしなければいけない。そのときに、学術研究は高邁な文化の構築に貢献するだけではないことを示していくことが、非常に重要ではないか。
 それから各論の「1.多様性に富んだ知的基盤としての学術研究への十分な研究費の確保」であるが、「科学と技術のみならず、文化と芸術を対象とする」とあり、並列的に扱われている。果たしてこれがいいのかどうか検討いただきたい。科学や技術にとどまらず、芸術や文化の構築にも貢献するというような捉え方もあるだろう。

○ 人材の育成と国際化という点に絞って意見を申し上げたい。これまで大学の人材の流動性は非常に低く、任期制のポジションをつけたり、相当な努力をされていることは大いに評価すべきことである。しかしながら、この文面を見ると閉鎖社会での論理のように感じる。もう一歩、開放策を、次の第3期に向けて謳っていくべきではないか。国立大学の中で人材が流動しているだけでは、実はまだまだ間口が狭く、企業や国際的なコミュニティなどの間で人が流動することによって、真の国際的なコミュニティが形成される。大学の法人化前からのやり方を引きずっている雇用制度や給与体系というのは、流動化の足かせになっている。国際的に超一流の人材がキャリアアップのパスを日本で過ごすというシステムをつくっていくことが、真の国際化の証しになるので、年金制度も含めた給与体系を見直すべき時が来ていると思う。ぜひ検討いただきたい。

○ 非常に閉鎖社会の論理というのが一貫しているのではないか。もっとオープンなシステムが、あってしかるべきである。その点でいくと、社会との連携や関わり、広報体制も含めて、報告案の7番目あたりに謳っていただければと思う。第3期科学技術基本計画では、対社会を意識した文言や項目をぜひ入れていただきたい。
 また、基盤研究というのは何をもって基盤研究というのかが、よく見えない。何をもって基盤研究と皆さんは思っているのか。あるいは、社会が思っているのか。そのすり合わせをしないと、いつまでたってもミスマッチのまま議論が上滑りなものになってしまう。ぜひ社会との連携、社会を意識した何らかの活動、それから研究者自身の自覚といったものも謳うような項目を入れていただきたい。

○ 案を見ると、学術研究が重要とある一方、競争的資金はやはり素晴らしいと書いてある。ところが、先ほどからの議論は、むしろ運営費交付金をどうにか措置して欲しいという話に聞こえた。2ページの2.(1)2つ目の○部の後半には、「このため、国立大学法人・大学共同利用機関法人に関しては運営費交付金を確実に措置するとともに、私学助成の充実を図る。」とあるが、少しトーンが違うのではないか。つまり、ここでは運営費交付金をうまく使うことによって、学術研究をよりうまく進めることができるということがないと、「では、競争的資金でいこう。科研費がある。」ということで終わってしまわないか。

○ 社会との関係を入れるべきである。特に、大学や学術研究者が社会的責任を明確に自覚するということを入れるべきである。今年の4月から環境配慮促進法という法律が施行される。この法律によると、大学等の法人は、環境社会報告書を作成して公表する義務が課される。民間企業等は、すでに900社ほどがそういった報告書を出している。大学等も法律によって強制されるので、社会的責任を明確に自覚して、労働、安全、衛生及び人権に配慮した活動をして、しかるべき社会貢献をしているということを自らアピールしなければいけない。そういう項目を入れたほういいのではないか。

○ 基盤研究費をどう確保するのかということに関しては、2ページの1.の最後の「国の実現の基本であり、一層推進する。」と書かれている部分や、2.(1)1つ目の○「公財政支出を欧米諸国並みに近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある。」という部分を、もっと具体的な書き方にできないか。

△ 科学技術基本計画であるので、平成18年度からの5カ年の間に、どのような目標を設置するかということである。科学研究費補助金については、平成12年度の予算額からの倍増を目指すということを記載させていただいている。このような具体的なことがあれば結構であるし、基盤的なところを何かサポートする新しい研究費のシステムというようなお考えがあればお伺いしたい。

○ 間接経費をどのように使うかというところなのではないか。現在、間接経費の使途には、直近の具体的なテーマに対して設備を整備するなど制限があるが、その競争的資金を獲得するために大学が人件費などを先行投資していたことになるので、その分に対する経費も当然措置しなければいけない。間接経費が、運営費交付金のように、学長裁量で人件費も含めて運用されるようになれば、ずいぶん違うのではないか。

○ その辺りは、大学によって違う。間接経費の扱い方は、現在かなりフレキシブルになっている。直接経費は、ある特定のプロジェクトなどの目的に従って使うものであるが、間接経費は、大学全体の設備や事務的経費など、そのサポート体制をどうするかというところに考慮が行っている。そういう意味では、共通経費的な要素がかなりある。競争的資金の全てに30%の間接経費がついたとすると、大学の裁量が相当増えるので、大学の方針に従って、どのように学術研究を推進していくのかという観点が新たに生まれる。それをうまく機能させていけば、場合によっては基盤研究のサポートにも、間接的に使えることもあり得る。民間からの資金も同じである。民間からの資金であろうと、他省庁の資金であろうと、そこに間接経費が30%、もしくは50%ついたとしたら、大学の裁量はものすごく増える。その機能は、非常に重要であると思う。

○ 事務局としては、運営費交付金の中でやらなければいけないという縛りがあるのか。

△ 運営費交付金という仕組みと、その中における基盤的な研究経費、そして、それと競争的資金の関係という3つの関係ということだろう。
 各大学が、マルチのシステムの中で様々な形でインセンティブを維持し続けられるよう運営費交付金の制度設計をした。いわば、マルチファンディングというシステムに切りかえた。その中において、大学のポリシーとして、教育や研究、組織の戦略をベースにしながら、組織の在り方、研究体制の在り方、あるいは資金調達やインフラの整備についても、切りかえが進みつつある、あるいは、まだ動き切れていないというのが率直な状況であろう。
 本日のご指摘等を踏まえながら、第3期にあたる当面の5年間について、当部会として何を提言いただくのかであるが、長期的に見ると、例えば、運営費交付金という仕組みの中で基盤的と言っている部分や、特別教育研究経費の在り方なども見直していかなければならないだろう。学術研究整備作業部会や学術情報基盤作業部会においても、各大学の戦略を支援するために、国としてどのような研究インフラを重点的に、限られた資金で整備していくべきかということをご議論いただくこととなる。そして、それらについて社会的に理解を得る道というのは何なのか。この辺りの関係が重要であろう。
 いずれにしても、表現の問題は、いただいたご意見を含めて整理した上で、相談させていただければと思う。

○ 構成を少し工夫されたほうがいいのではないか。大事なものは何かということを死守しなければいけない。例えば、「1.多様性に富んだ知的基盤としての学術研究への十分な研究費の確保」は大事であるが、「7.学術研究の推進を支える研究基盤の充実」でまた基盤の充実と出てくる。大事なものは、基盤的なものをしっかりする。それが、最初にあるのだろう。「2.多様性に富んだ研究を生み出すファンディングシステムの構築」であるが、これをみんなが望んでいるわけではなく、「(2)競争的資金の拡充」を望んでいると思われるので、埋没しないようにしたほうがいい。それから3.については、研究拠点を整備する中で、国際性があり、いろいろな融合領域もあるとして、ここにおられる各課が絶対死守する大項目というものを挙げておかないといけないのではないか。大体は散りばめられているが、見たときに忘れられてしまいそうなところに埋没しているように思われるので、少し工夫が必要である。

○ 7.のところであるが、老朽化対策を具体的につけ加えたほうがいい。第2期において、老朽化対策は50%しか実現していない。これが一番遅れているように思うので、具体的な取り組みとして積極的に取り組んでいただきたい。

○ 社会貢献についてであるが、説明責任のところで科学コミュニケーションという言葉を生かしたらどうか。それは、研究についてPRをすることであったり、次世代の育成につながったり、ポスドクの学生などがある時期に取組むことで人材の流動性も出てくると思う。

5.その他

 第二期科学技術・学術審議会学術分科会学術研究推進部会の閉会にあたり、笹月部会長及び事務局を代表して清水研究振興局長より各委員等に対して謝辞があった。

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)