学術研究推進部会(第4回) 議事録

1.日時

平成16年11月15日(月曜日) 15時~17時

2.場所

経済産業省別館 1028号会議室

3.出席者

委員

 笹月部会長、石井部会長代理、飯吉委員、井上孝美委員、伊賀委員、伊井委員、稲永委員、井上明久委員、海部委員、川合委員、榊委員、玉尾委員、外村委員、中村委員、仁田委員、平山委員

文部科学省

 清水研究振興局長、小田大臣官房審議官(研究振興局担当)、村田科学技術・学術総括官、河村政策課長、森振興企画課長、芦立学術機関課長、甲野学術研究助成課長、三浦情報課長 他関係官

オブザーバー

 小平分科会長、家委員、加藤科学官、觀山科学官、山内科学官、吉田科学官
(科学官)
 五條堀科学官、高埜科学官、本藏科学官

4.議事録

(1)学術情報基盤作業部会(仮称)の設置について

 資料2-1、2-2に基づき事務局より説明の後、質疑応答が行われ、学術情報基盤作業部会の設置について原案を一部修正の上、了承された。その内容は以下のとおり。
 (○・・・・委員、科学官の発言 △・・・・事務局の発言)

○ 「2.検討事項」に「3大学図書館の役割、在り方等」とあるが、「1.趣旨」の1行目には「大学図書館等」とある。大学にはアーカイブズ(古い記録や公文書の保管施設)や資料館などがあり、文化資源をたくさん保有している。大学図書館のみならず、そういう施設も含めた在り方を検討すべきである。そういう意味では、「3大学図書館等の役割、在り方等」としていただいたほうがいい。

△ 資料館等についても視野に入れていきたいと考えているので、そのように修正させていただく。

○ 学術情報基盤作業部会については、ただいまの点を修正して、他は原案どおり設置するということでよろしいか。

(「異議なし」の声)

○ 委員及び主査については、学術研究推進部会の運営規則第2条第3項及び第4項の規定により、部会長が指名することになっている。委員の任命については、部会長に一任いただき、委員をお願いする先生方には後日連絡をさせていただくことになるが、よろしいか。

(「異議なし」の声)

(2)学術研究における多様な分野の総合的な推進方策について

 資料3-1~3-7に基づき事務局より説明の後、各委員等からの意見発表と自由討議が行われた。その内容は以下のとおり。
 (○・・・・委員、科学官の発言 △・・・・事務局の発言)

意見発表

○ 2つ申し上げたい。まず、学術研究推進部会がこういう目的で1年間かけて大事な課題を検討していくことは、大変時宜を得ていると思う。最近の研究はとにかく専門化が進み、それぞれの分野が非常に進化してきている。その点は大変評価できるが、総合的に見て、学問全体の中でそれぞれの学問がどのように位置づけられているのかという視点がこれからは大事なのではないか。それぞれの全体の中での位置づけと意義をはっきりした上で、推進していくことが非常に大事である。
 どこが推進するのかということであるが、総合科学技術会議もその1つであると思うし、もちろん学術分科会もそうである。もう1つ大事なのは、日本学術会議のような専門家コミュニティの意見もきちんと汲み上げるということである。その中で、学術研究推進部会は、学術的・総合的に見るという大変大事な位置を占めており、非常に大切な働きを期待されているのではないか。
 もう1つは、科学研究費補助金審査部会において議論になっていることがある。最近の競争的資金は時限が決まっているので、そこである意味では終わってしまう。科学研究費補助金制度は階層制ができているが、特定領域研究や特別推進研究において非常に大きな成果が上がったものを次につなげていくためには、どこに持っていけばいいのか。持っていき場所がない。科学研究費補助金だけでなく、いろいろな時限つきの競争的資金の成果の中で光るものを、どのようにして次に進化させていくかということを、ぜひ学術研究推進部会で検討いただきたい。

○ 資料3-7の6ページ目「人文・社会科学分野」の中ほど、体系的な図書館を全国共同利用の体制で整備するという提案は、私が回答したものである。基盤的経費の減少により、文科系では図書館の体系的な整備という点で非常に衰微が目立っている。1つ付け加えたいことは、図書館の整備は、天文学にとっての望遠鏡に匹敵する必須のツールであるとともに、人文・社会科学にとっては、図書館やそこに集められた文献そのものが観測ないし観察の対象であるということである。つまり、文科系の学問は、価値観や個人の思想と無関係にはあり得ない。そこから来るバイアスをどうやって吟味し、次の新しい学問の発展につなげていくかということが大事であるが、直前の研究を参照するだけではなく、過去にさかのぼってそれをしなければならない。地質学者が地層を観察することによって地球や地層の成り立ちを研究するのと同じであり、ある時期の文献が図書館で欠けるということは地層がひずんで形成されることになるので、十分に考えていかなければならない。
 なお、競争的資金で本は買えるが、そのプロジェクトに必要な本を買うだけであり、今言ったような学問の地層を形成していくという点では目的が違うということに注意いただきたい。

○ 1点目は、学術研究の推進の必要性の説明責任を十分果たすべきであるという点である。学術研究は中長期的視野に立って成果を待つべきものであるので、学術研究の成果が、科学技術創造立国の推進の上で、特に基礎研究の分野で極めて重要であり、またそれらの幅広い応用によって科学技術の発展を促しており、経済効果をもたらすものであることを具体例を挙げて十分に説明していくということが、今後の推進の上で必要である。
 2点目は、教育研究インフラとして研究施設設備の充実、研究員と補助職員などの支援体制の整備など、研究環境の整備を推進し、国際的な研究環境において日本の研究がフロントランナーとなれるような条件整備を行うように努力することが必要である。
 3点目は、従来から基本問題特別委員会等で指摘されていることであるが、学術研究推進を支援するためのデュアルサポートシステムの重要性が強調される以上、基盤的資金と競争的研究資金の確保に向けて、現状分析による必要性と今後の研究環境の変化による必要性を説明していく必要がある。特に基盤的資金の充実の必要性については、国民や関係者の理解が得られるように、わかりやすく説明する必要がある。国立大学の法人化後、運営費交付金は人件費、物件費への区分以外、使途が特定されていないので、かなり使い勝手が自由になっている。各法人の自主的な判断に任されているだけに、大学の研究チームによる21世紀COEなどを育てるような、個性ある教育研究を推進する観点からの学内における配分を期待したい。
 また、科学研究費補助金などの競争的研究資金に対する期待が法人化後ますます高まってきており、研究者に外部資金を自ら確保する努力が高まっているように見受けられる状況であることから、申請者に対する採択率(新規)を現在の23ないし24%位から、30%程度に引き上げる努力をしていく必要がある。
 人材の活用の点では、ポスドクなど若手研究者を活用するためにも、大学研究機関等では研究者の流動性を高めて、優秀な研究者を活用することができるようにするために、教員研究者については任期制をできるだけ採用し、公募によって採用するという透明性を高める採用方式に移行していくことが期待される。

○ 3つほど申し上げる。まず、なぜ研究をするのかというのを国民に理解してもらえる努力をすべきである。学会だけではなく、マスコミで取り上げていただいたり、研究者が学校に行って成果をどんどん訴えるなどの努力をすべきである。
 2番目は、エクセレンスの継続性を考えるべきである。エクセレンスの代表的なものとしては、大型の科学研究費補助金や21世紀COEがある。これらは、研究期間が終了するとそこで終わりになっているのが通例である。多くの有能な研究者に伺うと、大型の科学研究費補助金で施設等は整ったが、その後また基盤研究(A)や基盤研究(C)を獲得しないと続かないという声もある。したがって、その後も年間1,000万円から2,000万円位をレビューを含めて継続的に支援する必要があり、それは非常に効果が大きいと考えられる。研究代表者が定年になったら打ち切るということでもいいと思う。それから、21世紀COEは300近くのチームが動いているが、これは日本の科学技術・学術をほとんど網羅しているすばらしい内容であり、これを何らかの形で支援する必要がある。プログラムの継続は難しいかもしれないし、新しくプログラムを起こすことになるかもしれないが、あまり高額でなくていいので継続的な支援が必要であると思う。そのプログラムには、中学校や高等学校へ行ってその成果を訴えるといった義務を課し、それをやらないと支援を打ち切るという感じで、大きな予算をとって何が行われているかについて国民の理解を増進するという別の意味合いのプログラムとしても考えてはどうか。
 3番目は、真のオリジナリティを伸ばすファンディングが必要である。萌芽研究などいろいろあるが単発的である。いかに独特であるかということを重点的にクレームし、200万円位の少額でいいので、4年プラス4年、合計8年間ぐらいで、時間的に少し長めのものを継続的に支援してじっくり芽を育てることも必要ではないか。

○ まず、この部会は学術の振興という面で概算要求と密接に関係があり、平成17年度についてはこれがまとまったばかりである。具体的にどのように審査や評価をするかという議論を今後行うということだが、検討に当たっては平成18年度以降の概算要求を視野に入れておく必要がある。また、各大学から出てくる中期目標や中期計画の研究に関する部分については、この部会等がかかわるべきではないかと考えている。今のところ、この部分について公開審査にはなっておらず、多くは大学と行政とのすり合わせということになっているのではないか。
 それで、具体的な検討事項として3点お願いしたい。まずは、既存のプログラムや仕掛けによって動いている全国共同利用機関や全国共同利用施設等の中期目標や中期計画に沿った設置目的の一層の明確化、それに対する審査評価、その結果に基づく大型施設・設備の充実をどう図るのかという方策、それから共同利用機能をさらに向上させるにはどうしたらいいかという具体策などについて検討する必要がある。
 2番目は、21世紀COEプログラムであるが、5年間の支援が終わった後に対するケアが必要である。世界最高水準にするためには、果たして1大学だけのそういう拠点でいいのか。もっと広げるような支援が必要ではないか。
 3番目に、今後日本の将来設計を考える上で育てていかなければいけない研究分野についてであるが、具体的に検討していかなければならないというのは全く同感である。ただ資料を見ていると少し弱いと思うのは、日本が加盟している国際条約にどう対応していくのかということである。条約では日本の貢献義務が謳われ、国別報告書が求められている。それに対して、学術研究の面での取組みや成果といったものを発信していく必要があるのではないか。

○ 人文学の立場から申し上げたい。第2期科学技術基本計画において科学技術創造立国ということが書かれている。科学技術は非常に大事なことであるが、そこに自然科学と人文・社会科学とを総合した英知が求められるということが書かれており、そのもとに概算要求などがなされていると思うが、十分に機能していないのではないかと危惧している。参考資料4の6ページ以降「基本計画特別委員会(第1回、第2回)における意見の概要(暫定版)」にも、「科学技術については、物質主義に偏らず、学術・文化の発展を促す観点も必要。」とか、「人文・社会科学も含めた総合性を本質に戻って考える必要がある。」など、様々なことが書かれていた。
 ただ、現在の私立大学を含めた人文・社会科学は、ポスドクの就職先がないなど危機的な状況にあり、このままでは将来、人文・社会科学が基盤的には継続できなくなる恐れがある。人文・社会科学はとかく個人商店になっているが、これからは人文・社会科学も連携してやらなければいけない。人間文化研究機構では、自然科学分野ではできない戦争や人口移動、権力システムというような様々なことをやろうと考えており、今、ユーラシアと日本との交流に関する総合的研究を進めていて、来年度から正式に発足させる。人と水という問題では、水や河川、人口問題などを進めていこうと思っている。もう1つのテーマとしては、人間文化とは何か、ということや人間の精神文化を根本的に考えようということで、今年は企画調査を出し、来年度以降に特定領域研究を申請していこうと思っている。それによって、多くの若手の研究者、院生を参画させ、新しい研究者の養成と研究の市場を開拓していきたく思っている。
 最後に、先日10月23日の朝日新聞朝刊「私の視点」に、元文部大臣の有馬先生が書かれたものが掲載されていた。有馬先生は、基礎科学の重視について述べられた後、「そのためには一見役立たないと思われる基礎科学、もっと広くいえば人文・社会を含めた基礎学術を幅広く支援する必要がある。」とお書きになっており、私もぜひそういうことを理解いただきたいと思い、お願いする次第である。

○ 法人化後、効率化係数によって1%ずつ運営費交付金が削減されていく状況下において、今後、教育研究においてどのような予算体系をとっていくのか。特別教育研究経費や他省庁の大型予算等を大学の基盤的経費に充当していったとしても、それらは期限や特定の目的があり、ストップしてしまうと支障をきたす。総合的な大学の教育研究のレベルアップを図るような継続性について、文部科学省は今後どのように考えていくのか。
 アンケート項目にもあるが、研究環境の面で設備の狭隘化等の問題がある。大学内の研究室に同じ装置がいくつももあるというのではなく、文部科学省として技官や研究支援者の在り方等も含めた研究環境の在り方について提言していってはどうか。
 任期制については、一部は先行しているところはあるが、まだ導入していないところもある。任期が満了して次の職場を探すには、ある程度の数の大学が任期制等を導入している必要がある。ある条件を満たせば任期制の大学で人事交流が図れるような体制、あるいは流動化を高めるような体制を文部科学省として考えていくことも必要でないか。また、高度研究者養成のために、修士課程と博士課程の5年間の一貫教育の在り方というのが重要である。これは、若手人材の育成と将来の学術研究とも非常にリンクしている問題である。その一環として、インターンシップ制度や海外留学制度の在り方など、総合的にどういう方法が将来一番よい人材を育成することができるのかというきめ細かい議論がなされてもよいのではないか。
 最後に、講座ないし専攻において、協力講座として2つまでは所属が認められるとしても、人件費が非常に節約される状況下において、分野横断的、学際的分野をつくろうといったときに、専任教官の所属の自由度をもう少し高めるような仕組みについても議論いただき、学際的分野が今後発展しやすい環境づくりをしていただきたい。

○ プロジェクト的なサイエンスに携わる者として、事前送付された会議資料にはなかった点に注目して、席上配付資料にもとづき、幾つか具体的に挙げさせていただきたい。
 1つ目は具体的な課題である。まず、特別教育研究経費の評価・審査プロセスの確立であり、この部会が緊急にしなければいけないことであると認識している。それと同時に、大型プロジェクト(ビッグサイエンス)の評価・審査及び予算をどうしていくのか。これが今見えていない部分である。大型プロジェクトは学術に関してはボトムアップなものである。それをトップダウンの国策的な大規模プロジェクトと混同されるのは大変危険である。大型学術プロジェクトについてのしっかりした審査の体制、それからどのようにして予算を今後保障していくのかという検討は、早急に進めるべきである。3番目に、現在の評価の動きは非常に心配している。せめて学術研究評価については達成度評価ではなくピアレビューを行うこと、それから国際評価が重要であるということを基本的に確認していくべきではないかと考えている。
 2つ目、3つ目はこの部会の範囲を超えるかもしれないが、日本の学術として長期的に考えていくべきと思っている点を挙げさせていただきたい。
 1つ目は、いわゆる「科学技術」と「学術」とをしっかり分離すべきであるということである。科学先進国においては、学術はサイエンスであるが、応用とは明確に切り離された評価のシステムや推進システムが確立している。しかし、日本では科学技術という言葉が使われ、総合科学技術会議はさらに科学技術と学術をすべて結びつけて一体として評価しようとしている。これは学術の特性から見て、非常に間違った方向である。このことは、きちんと申すべきではないか。そのことも含めて提言としては、学術と応用的な科学技術とは明確に区別して考えるべきであるということと、学術研究のための一定の予算を出していく方針を政策として確立すべきではないかということである。
 もう1つは、これまでの日本の学術行政はかなり成功してきたと思うが、今や現状のままではいかないと認識している。特に国際レベルでの競争や協力を行う上では、現在の学術行政体制では不十分である。科学者や研究者がそこに入り込んで、行政との間の本格的な協力体制をつくらないと、アジアの諸国にも負ける。欧米諸国ではいうまでもないが、今、アジア諸国でも確実にそういうシステムをつくりつつある。日本はその方向に向かって、少しでも具体的に動き出すべきではないかと思うし、ぜひ検討していただきたい。

○ 今後の学術推進の具体的な方策ということで非常に重要な点を1つ挙げるとすると、COEとネットワークではないかと思う。どの分野においても、その分野で中心になるリーディンググループと全般的なレベルの底上げが一致していないといけないし、これに尽きる。
 運営費交付金が削減されていく中で、特別教育研究経費という非常にいいシステムを文部科学省として考えていただいた。これに少し関係することであるが、一般的な研究設備が今後どういうふうに整備されていくかという点である。概算要求の仕方など、今までと少しシステムが変わってきているように思うので、1度しっかりと議論したほうがいい。これはネットワークや全体の底上げという観点になる。
 全体の底上げとしてもう1つ重要なものとして、全体の総合的な学術の推進ということからすると、重点4分野以外への対応をどうしていくかという点である。その辺をしっかり議論して、全体的なレベルアップを図るのが大事である。
 3点目は、COEである。21世紀COEは、大変いいグループを選んでいるが、これが5年で終わるとはとても思えないし、どうやって継続制を持たせ、さらに伸ばすかという議論をすべきである。例えば、大学間でCOE同士が連携したようなものへの支援や、さらに選ばれたCOEへの支援などいろいろ考えられるが、いずれにしても文部科学省としては、学術研究推進部会を通して、平成18年度の予算など具体的なところで対応していただければと思う。

○ 科学技術に予算がつぎ込まれるのは国策であり、産業振興などいろいろな目的があると思うが、いわゆる政策のための科学技術と科学技術を振興するための政策は、必ずしも一致しない。そこは、しっかりと分けて考えないといけないだろう。最近は、科学研究費補助金でも特許がとれるのかとか、研究によるプロダクトがあるのかなど聞いてくるが、全部にその評価を入れることは必ずしも正しくないと思う。
 現在、私はビッグサイエンス側にいる。非常に大きな投資が行われるが、大型プロジェクトは大型プロジェクトとして動いていて、それに関連するいろいろな個別研究がそこへつながらない体制になっている。これからは資金の有効投資という意味から考えても、大学や個別の研究者とうまくリンクするような体制づくりが非常に大事である。

○ 4つほど述べさせていただく。1つは、基盤的研究分野の継続的支援方策である。例えば、物質創成科学というのは、重点4分野を先導するぐらいの意味合いを持っているように思っているが、そういう分野にビッグサイエンスの支援方式のような方式をうまく導入していただき、支援できる体制をとっていく必要があるのではないか。
 もう1つは、基礎学問分野の空洞化対策が必要ではないかということである。このまま重点4分野の研究者ばかりが増えると、10年後には基礎学問ができる人材がいなくなってしまうので、教育や大学での研究室の人事など、何か方向性を示していく必要があるのではないか。
 3つ目は、大学の事務体制についてである。研究者と事務の間に、専門家集団のような事務体制を構築する必要がある。これは、研究者を研究に専念させるためには必須ではないかと思っている。専門家集団とは、具体的にいうと、広報や研究の新しいシステムの構築、大学の全体の機器の配置など、そういうことが全部コントロールできるような事務体制であるとイメージしている。
 4つ目は、狭隘化・老朽化対策についてであるが、改修や立て替えの間の学問上の時間的ロスや人的ロスも考慮して、最も効率よくできるように考えるべきではないか。画一的な方式ではなく、ケース・バイ・ケースで柔軟に対応していく方式が大事ではないか。

○ 科学技術予算が増大し、研究が活性化されつつあることは、「ネイチャー」や「サイエンス」を読んだり、COE予算で開催する国際会議などに参加したりした時に、日本人の活躍を肌で感じる。しかし、優れた研究者が大変忙しくなり、自分独自のアイデアを温めたり、自分自身で研究したり、新しいことをやるために装置作りをするような大切な時間がなくなってしまったような気がする。私は企業にいるが、企業の感覚では、研究者が良い仕事をしたら、マネージャーが、素早く次の予算を確保し、雑用をなくして、さらに良い仕事に専念してもらい、ノーベル賞でも取ってもらいたいと思う。しかし、実状は、本人が忙しくなり、その研究者以外の人では代理の出来ない“研究の時間”をなくしてしまい、折角の宝をふいにしてしまっているように思える。また、大学や国研が法人化によって自由度が増し、研究が加速されるはずと期待していたが、経理面では、監査を気にしてか自由度は増しておらず融通もきかなくなっている。優秀な研究者は、法人の看板に持ち上げられたり、COEや大学評価で駆り出されたり、スポンサーが喜ぶからといって、必要以上に新聞発表の努力をしたりと、多忙を極めている。短期的には良いかも知れないが、こんな環境で若い人たちがどう成長し、50年先、100年先の日本がどういう状態になっているかが心配になる。
 “30名ノーベル賞を出す”と基本計画にはあるが、小柴先生が物理学賞を受賞された時に調べてみたが、物理では、この60年で4人しか受賞していないが、アメリカは60名もいる。受賞者が2、3年出ないと大騒動である。厳然として基礎研究では格段の差があり、しかもアメリカは、世界を常にリードするという意識もある。50年前に、物理の中心国がヨーロッパからアメリカに移り、加速器と企業の研究でノーベル賞を独占した。文明や科学は、何100年も一国が支配することはないことは歴史が示している。それから50年経つので、次は一体どこか気がかりである。ヨーロッパ、アメリカと来ると、今度はアジアあたりの番になるが、アジアに来るなら中国、韓国、インドでなく日本であってほしい。50年、100年後に、日本が科学で世界をリードすると言うのなら、それを念頭に置いて、策を施せば、今いろいろな成果が出ているので、可能性は充分にあると思う。ただ、新しいものは10年かかるので、2、3年で成果が出るような研究だけに予算をつけたり、2、3年でプロジェクトを評価する今のやり方では無理である。せいぜい、現状の延長、或いは欧米で芽の出た研究をするしか手が出せないからである。
 以前、東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設で事故が起こったときに、事故調査委員会で5年後に現状に復帰できるという報告を聞いた。神岡では、日本が初めて素粒子実験で世界に抜きん出た成果を得たので、アメリカが加速器物理でそうした様に、どんどん投資して、日本がノーベル賞を独占してほしいと思っていた。所が、現状に復帰するのが5年かかり、そのころには、ちょうど世界の他の装置が立り上がるのでタイミングも良いと聞いて、どういう感覚なのかと、びっくりし、憤慨した。この際に、壮大な計画を立てて、他国が追随できないような計画を聞かせてほしいと思っていたが、後で聞くと“神岡の予算はもう終わった”と言う認識だったと聞き、何ともやり切れない思いをした。日本に、世界に類の無い“新しい分野”や“突出した分野”を設けるには、あわてても始まらない。まず、日本をどういう状態にしたいのかというビジョンを持って、50年後、100年後を狙う必要がある。現状を見ると、不可能なことはないと思うので、せめてニュートリノ、電子顕微鏡など、幾つかの分野で他国を寄せ付けないレベルの分野を持つ、特徴ある日本にしたいと思う。

○ 人材育成、研究費、基盤的研究に対して力を入れるべきであるという点については大賛成なので、重ねて申し上げない。2つだけ簡単に申し上げる。
 1つは、日本は、そろそろ入り口社会から出口社会にいくべきではないかと思っている。典型的な例が、大学入試のやり方である。研究費の配分も似たような状況にあったのではないか。基盤的研究は別であるが、少なくともこれからは、扉を広く開けて中に入れ、競争をし、何をやって、どういう成果があり、どれだけ公表したのかといった出口を重視したい。プロジェクトの評価も1つの指標になるかもしれない。ぜひ積極的にお願いしたいし、そういう視点で設備や研究費の補助を考えていかなければならない。
 2つ目は、もう少しアジアに目を向けていただきたいということである。今まで科学や技術というと、どうしても欧米の先進的な研究開発を重視しがちであった。それもやむを得ない面もあるが、これからはアジア等に目を向けていかなければいけない。資料3-5の中にも、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)との連携ということがうたわれている。それを1つの突破口にして、少なくともアジア諸国との連携あるいは支援でもいいので、そういう視点で自分たちの科学研究を進める上でどういうやり方があるのか、どういう仕組みがあるのかということも考えてやっていきたい。私どもの会社でも、環境や科学技術についての顕彰制度を持っているが、必ずアジアを入れている。ただ、欧米の評価基準で評価すると、アジアには合わないものが多い。だから、別の評価基準や考え方をしなければならないと思っている。もし力をいただけるなら、この場で幾つかの評価基準を考えていきたい。そうすれば、日本を支えていこうというサポーターがアジアに増えるのではないかと思う。

○ 4点申し上げたい。1点目は、法人化により国立大学は大学ごとの個性を強め、それに基づいて予算配分をするということになる。それに対して、全国的な視点から戦略的に予算をつけるということが一方で必要であるので、その仕組みをしっかり考えてほしい。その役目は、この学術研究推進部会にあるのではないか。
 2点目は、重点4分野の話である。全く素人の感想であるが、4分野では少な過ぎるのではないか。もっと増やしていいのではないかと思う。
 3点目は、ポスト・ポスドク問題である。ポスドクを育成したが、次の行き先がない。大学がそんなに増えるような状況ではないので、民間企業に博士課程を出た人を採用してもらわなければいけないのだが、民間企業ではそんな人に来てもらっては困るという話になっている。人を育てても、行き場がなかったら意味がない。このことについて、だれかが責任を持って考えるべきではないか。
 4点目は、社会科学についてである。社会科学の分野は、やや偏っているように思う。新しい分野がもっと出てきていいと思うが、大きな障害になっているのが科学研究費補助金である。科研費の分科が固定的過ぎる。せっかく学際複合新領域ができても、これは特定の新分野の集合で、本当に学際的研究を行うために申請する先となっていない。特別推進研究や特定領域研究といった比較的大きな研究種目はあるが、もっと小さな学際的研究も簡単にできるようにしてほしい。そして、日本の社会科学をもっと盛んにして、理系の人が世界最高水準といわれているのと伍するためには、データが大事である。日本は、統計データやその他のマイクロデータの利用が非常に難しく、自由度が低い国である。だから、アメリカ並みとはいかなくても、せめてヨーロッパ並みに統計の目的外利用を学術研究にとってよりやりやすい形にしていかないと、実証的な社会科学研究は進まない。また、実証的な社会研究が進まないと、理論的な研究も新しいものが出てこない。

○ 3点ほど意見させていただく。資料3-7の2ページ、基盤的経費の3つ目のにもあるが、基盤的経費というと、どうしても研究をするだけになりがちであるが、研究者育成という観点から見たときに、教育面からも非常に重要な面があると思う。その観点からも、基盤的経費の在り方は考えていく必要があるのではないか。
 それと関連して、そういうことを全体的にやる場合、全国共同利用の附置研究所や大学共同利用機関のような共同利用の考え方は非常に重要である。それがしっかりと機能しているか、あるいはそこをどうやって充実していくのか。共同利用によって大学も含めた全体の研究を発展させていくところを支援する必要がある。
 3番目に、支援部門の問題である。支援部門というのは、事務部門だけでなく技術部門の問題もある。大学において、定員削減の中で多くの技術職員が削減され、場合によっては、大学で持っていた特殊な技能のようなものも消えていっているような気がする。全部を大学や研究機関の中で持つことはできないと思うが、どの部分が外部の人材が活用でき、どの部分は大学や研究機関の中で持つべきなのかということも考える必要がある。特に技術職などは、その処遇や職の充実ということなしに技能が高まっていくとは思えないので、研究者だけでなく、支援部門をどう考えていくということも視野に置いた検討が必要である。

○ 20世紀のサイエンスは、非常に細分化されて発達した。21世紀のサイエンスを考えるとき、それをどう統合化して、個別研究に使うのかという視点が重要ではないか。大規模プロジェクトから出てくる研究や個別的な知識発見研究が、ある種のパラダイムクラッシュを起こしているような現状がある。
 それに対する1つの提言であるが、情報統合、つまりデータをどのように統合するか。そして、個別的な知識発見をどう向かわせるのか。様々な情報が出れば個別的な発見に向かうし、個別的な発見をやる上でのデータはさらに情報統合できる。いわゆる情報統合と個別的な知識発見のリサーチの正のスパイラルを構築する。21世紀最初の10年にこそ、このスパイラルを構築すべきである。
 そういう視点に立つと、COEやその他の競争的資金、あるいは大型プロジェクト等から出てくるものをどのように成果としてつなげていくのか。例えば、ライフサイエンスでいえば、系統的な生物ができたけれども、それをどうするのか。あるいは、データベースはできたけれども、維持も更新もできない。人材の問題もポスドクもやりようがない。研究支援者も消えてしまう。正のスパイラルを構築するためには、基盤的な研究費の確保について、競争的資金の充実とともにしっかり考える必要がある。とりわけ、大学共同利用機関や大学附置研究所の共同利用のさらなる活性化や、他大学、その他の研究機関に対する活動をしっかりサポートする必要がある。
 この会議で今後1年かけて議論するということであるが、平成18年度の概算要求の問題があるので、基盤的経費等についてはすぐに考えていただきたい。

○ 3点あるが、1点目は、国立大学の先生方の私学への兼職、この自由度を増していただけると、私学にとっては大変ありがたい。
 2点目の問題としては、学術システム研究センターができて、日本学術会議や学協会の性格がやや変化する傾向があろうかと思うが、そのこととは別に、本来の学術コミュニティのパイプ役をどう機能させていくのかが大事であると思っている。本日、設置された作業部会の検討事項になっているので、それは省略する。
 3点目であるが、資料3-4の2枚目の頭にあるアーカイブズについて少し触れさせていただく。アーカイブズというのは、現在の文書や記録をどう保存管理していくのかというシステムの問題である。現在の記録をいかに未来に残すか、逆にいえば、何を廃棄していくのかという問題でもある。図書館と博物館とともにアーカイブズ、日本語訳では公文書館とか文書館、資料館と呼ばれているが、これが社会的には必要である。欧米はもちろんであるが、アジアにおいても中国、韓国などは充実したものが整っている。韓国には、あっという間にトップダウン方式で乗り越えられてしまった。先月は、台湾で話をする機会があったが、大変乗り気で、事によると台湾にもまた乗り越えられてしまうのではないかという不安を持っている。日本の場合は、内閣府が国立公文書館を管理しているし、都道府県のアーカイブズも30館ぐらいできているが、それは自治体の管轄である。文部科学省に期待されるのは、その専門職をどう養成するかという教育システムをつくることである。先生方や公務員の皆さんも、アーカイブズのことは今まで勉強なさる機会がなかったのではないか。そういう意味では、初等教育の中で地域アーカイブズを訪問するようなレベルから、大学の教養レベルの授業も必要であるし、専門職養成はマスターコースでやらなければいけない。そういう教育や研究は、文部科学省の高等教育機関直轄で進めていくことが必要なのではないか。

○ 4点について意見を申し述べさせていただきたい。1番目と2番目は国立大学の法人化に関係することである。国立大学の法人化に際してのキャッチフレーズは、競争的環境の中で個性あふれる大学法人ということである。このこと自体は非常に結構なことであるが、各大学は競争的な意識と個別の大学の個性化に視点が集中し過ぎているように思う。そのため、大学を横断するような研究、例えば、科学技術・学術審議会で建議としても出されているが、地震や火山等のプロジェクトといったものは、大学を超えて推進する必要がある。しかし、そのあたりの目配りが各大学でばらばらになっている状況でなので、少しサポートするシステムを考えなければいけないだろう。それが第1点である。
 2点目は、各大学の活性化及び個性化の努力として、21世紀COEがあちこちの大学で動いている。重点4分野はトップダウン的なものであるが、このようなCOEというのは各大学が自発的に自分たちの強い分野で、ある既存の組織を超えてグループを結成しているところが多い。また、いろいろな分野が融合されて新しい分野を創出しようとする努力が非常に見える。21世紀COEは期限限定で終わってしまうが、その後どうするのかというのは、各大学の学長のリーダーシップのもとで考えることになっており、ヒアリングでそういうことも問われていると思う。各大学の独自性に任せればいいのであるが、それを運営費交付金でさらに発展させろというのは、非常に難しい問題である。これを強力にサポートし、その中から我が国の強いところをさらに発展させるという体制が必要ではないだろうか。
 3点目は、ボトムアップ的な研究活動で、将来強い分野をどんどん創出していくという観点からすれば、萌芽的な分野を常にサーチしていなければいけない。あるいは、そういうものが出てくるようなシステムとしていなければならない。端的にいうと、重点分野以外の分野に常に目配りが必要であるということである。聞いた話によると、最近はナノブームであり、ほとんどがナノテクであるが、ナノテクを支えるものは実はナノサイエンスである。ナノサイエンスのようなところも広く、常にサポートする必要がある。
 4点目は、研究環境である。大学の法人化に伴い運営費交付金という形になったが、運営費交付金で大型施設や設備を維持し、あるいは新たに導入するのが非常に難しくなってきている。これについては、特別教育研究経費である程度サポートされているが、依然として不十分である。ただし、ある程度大型の設備等を導入したり、維持したりする際には、各大学法人で全体としてそれをどのように位置づけ、いかに有効に使うのかという観点を今後はしっかりと取り入れていかなければならないだろう。その上で、研究施設整備をサポートするシステムが必要ではないかと考えている。

○ これからの日本は、経済力も含めて持続的な国力をどうやって築いていくのか。その持続性を考えると、そのための知的資産の形成の在り方という考えそのものを、今までのフローを促進するという観点からストックの蓄積をいかにして強化していくかという方向に、資源配分も物事の評価も大きくかじを切っていく必要があるのではないか。短期的に効率を重視したアウトプットを見るというフローに着眼したシステムから、国の底力をつけていくためストックを上げるという長期的多様性を持たせた観点にシフトするべきである。そのためには、様々な制度やそれを支えるインフラストラクチャーに今後いかに投資していくかという観点で考える必要がある。

○ 1つは、教育というか、大学院と研究所の関係を考えてみる。例えば、本当に広い分野、新しい分野の学問を創成するときには、研究所ではない大学院が持っている自由さ、それから大学院生が持っている若さと柔軟性、これをどう将来へつなぐのかという教育が大事であると思う。日本における研究者は、大学院生を自分の戦力として使うことが大きかったのではないか。すなわち、教育という視点よりも、自分の研究を推進する仲間という観点で取り扱ってきた。だから、いわゆる大学院教育が非常に手薄であったというのが反省点である。アメリカでは、大学院生は教育されるべき人達なので、研究を激しく推進する者にとっては、日本のように必要な戦力ではない。だから、ほったらかされ、大学院のカリキュラムを粛々とやっていく。逆に、日本においては、教授にとって大学院生は非常に大事な戦力なので、一生懸命自分の研究を推進するために教育もするし、面倒も見るという意味では大事にされているという側面もあるかもしれない。しかし、将来の新しい分野の知の創出ということに関しては、自分の分野の学問を継承する者を育てているという側面であったのではないか。だから、大学院に重点化した大学はカリキュラムを充実させ、附置研究所も強化する。大学院教育を旨としながら研究を進める大学院と、研究を旨としてかつ大学院生あるいは学部学生にもいい意味での影響を及ぼす研究所と、この二重構造が本当の意味での強い知的な集団を形成するのではないか。COEという場合には、大学院と研究所が一体となったCOEが本当力強いものではないかと感じている。
 もう1つは、いわゆるグランドデザインをつくるところ、評価対象となる研究課題を設定するところにおいて、研究者がどのように政策の策定に入り込むのかというシステムについてである。総合科学技術会議が、本当の意味で機能しているのかどうか。先月の朝日新聞(9月26日朝刊)に、小柴先生のコメントとして「元学長だから科学をすべて正当に評価できるという保証はない。」とあり、その横には総合科学技術会議のことが述べられていた。本当に機能させようと思うなら、そこにどれぐらいのブレーンの組織を公的につくるかということが大事であろうし、そういうものが日本はまだまだ不足しているのではないかという感じを持っている。
 だから、教育の問題とグランドデザインをどう策定するのかというところに重要な点があるのではないかというのが私の考えである。

△ 「本日ご欠席の委員等からのご意見」と書かれた配付資料をご覧いただきたい。こちらは本日ご欠席の科学官の意見である。要点に当たる部分を読み上げさせていただく。

  1. 今後の学術研究推進の新たな提言。我が国で伝統的に強い分野である「脂質生物学」をぜひ、ポストゲノムの重要課題に1つに取り上げ、国策としてサポートしていただきたい。我が国ではこの分野で国際的に顕著な成果を上げており、これを一層促進する必要がある。特に米国で2003年より大型研究費が脂質にそそがれ始めたことを考慮すると緊急の課題である。
  2. 現状の抱えている問題点。人を育てるということにお金を投資する必要がある。具体的には学生、大学院生の生活保障、研究費、実験費などの校費拡充。それらを確保した上で、競争的資金を大幅に増やすことが必要であろう。ちなみに、最も適切と思われる競争的配分は科学研究費補助金である。

自由討議

○ 21世紀COEの継続という話が出てきたが、その中で特別教育研究経費では難しいという発言があったように思うが、どこの辺りが難しいのか。

○ 特別教育研究経費が難しいといったのではなく、運営費交付金では難しいということである。

○ そういう意味なのか。それを特別教育研究経費のようなものでやるのはどうか。

○ それも1つの選択。21世紀COEは5年で終わるが、学長のリーダーシップのもと新たな組織創出を目指してほしいし、その分野を大学としてきちんと育ててほしい。どうやってやるのかというときに、大学独自でやるとなると外部資金や運営費交付金を使うことになるが、運営費交付金でやるのは非常に難しいであろう。だから、何らかのサポートする仕組みをつくらないといけない。その重要性は認識していても、現実には動かない可能性が非常に高い。科学研究費補助金でケアするのも1つの考え方かもしれないし、特別教育研究経費でケアすることも1つの解決策だと思う。

○ ポスト・ポスドクの重要性というのは、すごく大きな観点であると思う。10年前の第1次科学技術基本計画策定の際にも、ポスドク1万人計画というのが出たが、そのときからポスト・ボスドクを考えておかないと将来大変なことになると指摘した。今はまさしくポスト・ポスドクが非常に重要なことで、考えていかなければならないならないと思う。資料3-6「日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員からの主な意見」の中で、大学院卒業生の就職機会を確保・拡大する必要があるという指摘がある。ただ、企業やメディアなど多様な就職先が考えられるが、科学技術や研究開発をやっている修士・博士の卒業者は研究職を求めていて、大学院修了者が果たしてそういうところに行く気持ちがあるのかどうか。ミスマッチがあると思うので、これも考えていかないといけない。ミスマッチがあるといっているだけでは問題は解決しないので、むしろミスマッチをしないようなことは何があるのかということも少し考えていかないといけない。ご存じの方がいたら指摘いただきたい。

○ 今ご指摘のポスドク1万人構想も、最終的にはピラミッド構造にならざるを得ないという社会である。アメリカは、ポスドクが研究を支えているという側面があるが、アメリカ国籍を持ったポスドクは最近非常に減ってしまい、むしろ日本人や中国人、韓国人、インド人などが、ポスドクの多くを占めて研究室での一流の研究を支えている。そういうことを考えると、日本のポスドクも日本人だけの枠ではなく、外国人の枠を広げて、本当優秀な者を採用していくというのも、解決策の1つではないか。研究を推進していく上で、ポスドクは必要である。大学院生を、テクニシャンといったら極端であるが、そういう形で使うには戦力としても弱いし、教育を授けてより新しい分野の研究者を育てるという意味でも間違っている。第一級の研究を支えていく上では、ポスドクは数が必要であるし、また高度な技術者も必要である。この2つの職種は、サポートし続けていかなければいけないだろう。技術系職員という話が出たが、この人たちをどうするのかというのも大きなテーマとして考えていかなければいけない。

○ ポスト・ポスドクやドクターコースの卒業生の問題は非常に大事で、たくさんの施策があり得る。日本もアメリカと同じように、テニュアあるいは常勤職員という形で、35歳以上は臨時雇いにしないという法律をつくる。流動性ばかりアメリカのまねをしているが、アメリカの流動性指数は1.5で、日本は1ぐらいなので、過去のデータでは流動性は必ずしも高くはないが、安定的な職場の提供は抜本的にやらなければいけない。
 それから、21世紀COEで期待するのは、どこでも使えるドクターを育成することである。人文系にしろ、大学にしか残らないというのではなく、政策立案者やジャーナリストになるとか、いろいろなところへ行けばいい。そういう教育をCOEで期待する。だから、大学の構造改革と社会の構造改革と、いろいろな施策を組み合わせないとけない。例えば、日本学術振興会特別研究員の就職先のデータがあるが、バイオ系は常勤職員につく率が低く、人文・社会系はほとんど大学しか行かない。理工系はさすがに広い。卒業していろいろな職種に就職するのだから、修士で卒業して就職するのではなく、もう少し勉強してからいろいろなところへ行けばいい。人材委員会が科学技術・学術審議会にはあるので、具体的な審議はそこで掘り起こしていただくことをお願いするのが適当かと思う。

○ 先ほどのご意見に対して一言だけ感触をいていただくと、ライフサイエンスを含めて、日本全体で大学発ベンチャーが300社を超えて出てきた。大学の教授の先生達はベンチャーをつくった一方が、ポスドクに1年ぐらいベンチャーで頑張ってこないかと言うと、大学にポジションを探したいと言う。ところが、大学にポジションはないという状況である。学術研究という枠組みはしっかり押さえた上で、ベンチャーに行ったらもうそれでおしまいということではなく、ベンチャー経験の中で研究や論文が出てくれば、また大学に戻ってくるというような流動性が必要である。しっかりした学術研究の定義とともに、ベンチャー経験の活用や学術研究との人材交流の在り方というのも、ポスト・ポスドク問題の1つのテーマではないかと思う。

○ 海外のポスドクに目を向けることは、非常に大事である。大学院重点化をしてから、大学院生の質が全体的に落ちた。これをいくら鍛えても底が知れている。アメリカがいいのは、優秀な人材がどんどん世界中から集まってきている点である。我が国も世界の最先端で本気で戦おうと思うと、これまでの就職の世話までする自前主義の閉じた状態ではこれ以上の発展は難しい。優秀な人材は限られていると思うので、外の人材も活用することも視野に入れ、広く開いて競争状況をつくり出すことが大事である。

○ 私の専門は、人事管理とか労使関係である。そういう観点からいくと、ポスドクは就職させにくい人である。大学院後期課程卒業時のほうがまだいいし、大学院前期課程卒業時のほうがさらにいい。つまり、若いほうが比較的就職させやすい。それは日本企業の雇用制度の問題もあるが、今までやってきた学問と同じことを実生活においてもずっと継続していくことは常に可能ではない。だから、実際の民間企業で働くためにはいわば職種転換しなければいけないので、転換可能性というようなことを一方で考えていかないといけない。使い捨てでは困るので、雇用政策の面からも何か考えてほしい。

○ 今回、すべての先生方から意見を賜り、検討すべき課題などが少し明らかになってきたと思う。1年かけて検討を進めるので、今回も特にテーマを絞り込まずに意見を伺ったということに留めさせていただきたい。

5.今後の日程等について

 今後の審議のために資料3-8のアンケートに協力いただきたい旨と、資料4に基づき今後の進め方について事務局より説明があった。
 また、次回の学術研究推進部会は12月24日(金曜日)13時30分~15時30分に開催予定の旨、事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)