学術研究推進部会(第3回) 議事録

1.日時

平成16年8月24日(火曜日) 15時~17時

2.場所

KKRホテル東京 「孔雀の間」

3.出席者

委員

 末松会長、小林会長代理、小平分科会長
 笹月部会長、石井部会長代理、飯吉委員、井上孝美委員、白井委員、甲斐委員、伊井委員、井上明久委員、海部委員、坂内委員、榊委員、玉尾委員、外村委員、中村委員、仁田委員、平山委員、美馬委員

文部科学省

 清水研究振興局長、小田大臣官房審議官(研究振興局担当)、村田科学技術・学術総括官、河村政策課長、森振興企画課長、甲野学術研究助成課長、芦立学術機関課長 他関係官

オブザーバー

(科学官)
 五條堀科学官、高埜科学官、本藏科学官

4.議事録

(1)平成17年度特別教育研究経費(学術研究関係)の取扱について

 本議事は、平成17年度概算要求に係る内容及び各法人の個別事項に係る内容を取り扱うものであることから、学術研究推進部会運営規則第3条第3号の規定に基づき、非公開で行われた。
 資料2-1~4-2に基づき事務局より説明の後、質疑応答が行われ、資料3-1についての委員からの意見を踏まえた修正は部会長一任とされ、資料2-1、4-1については原案のとおり了承された。

(2)今後の学術研究推進方策について

 参考資料1に基づき事務局より説明の後、自由討議が行われた。その内容は以下のとおり。

 (○・・・・委員、科学官の発言 △・・・・事務局の発言)

○ 日本の国力からいえば、学術的な研究費をもっと措置すべきである。科学技術は日本の生命線という意味でたいへん大事であるが、もう少し総合的、もしくは学術的な、いわゆる文科系と称しているような分野をもっと支援をし、知の冒険とでもいうような思い切った幅広い研究をやっていくべきではないか。そのような思い切った研究ができているんだという充足感を持てば、これは当然やるべきだという雰囲気も出る。
 全体の予算を押さえてやろうとすると科学技術は桁外れの予算を使うという議論に大体なるが、日本の国力からすれば潤沢に使っているわけではないということを、我々はもっと考えて支援するべきである。

○ 文系も含めて基礎的・基盤的研究を幅広く力強くやれるようにするべきである。
 先ほどのテーマの中に、デュアルサポートシステムの重要性というのがある。デュアルサポートシステムというのは、欧米のマルチサポートシステムとは違う意味で日本では使っている。マルチサポートというのは、国や州、あるいは企業など、さまざまな視点を持った研究費の配分システムがあるということが非常に重要であり、日本はほとんど国からしか配分されていないという点で、基本的にはシングルサポートシステムである。国からの支援を基盤的資金と競争的資金に分けてデュアルサポートシステムという言葉になっていて、これは日本独特かもしれない。しかし、そういう意味でのデュアルサポートも、非常に重要である。参考資料の中でも、たびたび基盤的資金と競争的資金の両方をきちんと措置していかなければいけないということは触れられているが、最近、総合科学技術会議では、競争的資金倍増の目標を達成できないから基盤的資金を減らして競争的資金に回せということを言っておられる。これは、デュアルサポートとは違う考えを打ち出されたということである。果たしてそれでいいのか。科学技術・学術審議会が今まで訴えてきたことと違う方向に行きそうで心配である。
 第2点は、理学系の大学の先生方に伺うところでは、特にあまり大きくない大学では、経常経費が大幅に減っているようである。効率化により基盤的資金を1%減らすという以上に、各大学において何十%という経費が学長裁量経費として集中化されていることによる影響のほうが、実は大きいのではないか。もしそうなら、大学自らが基盤的資金の重要性についてどう考えているのかということも当然気になる。長期的に見ると、競争的資金や社会からの経費のインプットがないような分野は痛手をうけるのではないか。まさに文系や、理学でも純粋科学のような分野では、その点を非常に憂慮しておられる方々が多い。法人化の影響をよく見る必要がある。

○ 競争的資金は、学問が非常に先端的に進んでいて成果も次々に出るような分野に使われているが、基盤的資金は、まだ将来どうなるかわからないが重要そうな萌芽的研究に使われていると思う。
 研究成果の評価の仕方であるが、競争的資金によってサポートされた研究は、例えばパテントの獲得数や、どういうジャーナルに発表されたのか、あるいは引用件数などで評価されるだろうが、基盤的資金にサポートされた研究を同じ評価システムで評価すると、評価は必ずしも高くならない。そのために、ますます基盤的な分野が圧迫を受けることにもなりかねない。

○ 基盤的資金は、人体や動物に即して言えば一種の基礎代謝を支える経費である。基盤的資金がこれ以上削られたら、多分それはろくに食べ物を食べないでマラソンをやれというのと同じことになる。それぐらい深刻な問題として考えていかなければならない。基礎代謝を支える経費が足りなくなると、競争的資金が競争的資金としての効果を発揮できないような事態を招きかねない。つまり、基盤的資金の不足分の穴埋めとして、基礎代謝を支えるために獲得した競争的資金が使われてしまい、競争的資金を見かけ上増やしてもかえって無意味なことになってしまうという矛盾があることを指摘していかなければならない。
 最近、科学研究費補助金基盤研究(C)という比較的少額の研究種目に、シニアのエスダブリッシュされた研究者が申請する傾向が増えてきている印象がある。分野によって違うだろうが、特に基礎的な純粋科学の分野で、研究室を維持するために、高額の研究種目より採択される可能性が高い比較的少額の研究種目に申請する傾向があるように思う。現在、基盤研究(C)に申請・採択された人の平均年齢の分析を試みているが、まだ結果は出ていない。しかし、少なくとも、そういうことを強くおっしゃる研究者が増えているのは事実である。そうなると、若手研究者で独立し始めた助手や講師、若手助教授が基盤研究(C)を獲得し、それで研究して、次に基盤研究(B)、基盤研究(A)へ行くという、これまでの科学研究費補助金全体の構造が崩れてしまいかねない。だからといって、基盤研究(C)に年齢制限をつけるようなことはすべきではない。研究内容によっては基盤研究(C)で構わない分野はいくらでもある。我々は、基盤的資金が削られることによって、科学研究費補助金の持っている意味合いや効果が減殺される危険性が大きいということをしっかり考えておかなければいけない。
 文部科学省でも、何か統計的な数字があるなら教えて欲しい。

△ 科学研究費補助金における傾向について、今はデータを持ち合わせていないが、ご指摘のような状況があるかどうか確認してみたい。また、お尋ねの部分は、科学研究費補助金のことというよりも基盤的資金と競争的資金の最適な状況、あるいは実態についてということだろう。
 まず、デュアルサポートの場合にどういう状況が最適かということについては、どの国においても、この割合が最適であるという明確なものは一般的にないようである。
 2点目の大学等における研究費の構成については、総務省統計で、予算的な面だけではなく、様々な形で大学に入ってくる収入分を含めて、研究費としてどういう割合になっているかというデータがある。一般的に国立大学などは、教育と研究が一体化されて予算措置される。また法人化されたことにより、教育研究費だけでなく人件費や物件費も含めた全部一体のものとして運営費交付金が措置される。さらに、法人の自己収入やその他の外部資金等も含めて予算を立てることになるので、予算上からは法人における教育と研究とを区分して活動別の実態を把握することは困難である。ただ、決算ベースでは教育と研究を区分する形になっており、もう少し具体的な研究費の流れを明らかにするような努力が必要ではないかと考えている。

○ 産業界の基礎研究費は、明らかに減っていることはよく知られているが、10年前や20年前から研究費がどのように推移して、そこで行われた研究が今どういう製品につながっているかという分析はある程度存在する。そのような分析に基づけば、我々も今後の予測がある程度出来るのではないか。どのぐらいであれば、どういうことが将来予測されるのかという説得性のある数字を、ある幅で出すべきである。これをやっておかないとひどいことになるという理論でもある程度はカバーされるかもしれないが、不足ならどのぐらい不足なのかということを言わないと説得性がない。

○ 今やらなければ、もっとサポートしなければ将来が危ういと、いろんな研究者が自分の研究分野についてそういう意見を述べるが、その評価や査定というのはなかなか難しい気がする。

○ 科学研究費補助金は現在、基盤研究から特別推進研究といったように階層化した構成になっているが、特別推進研究などで非常にいい成果を出した研究であっても、それをさらにサポートするシステムが出来ていないために先が見えない状況である。COEもそうであろうが、先端的な我が国の科学技術の研究をさらに進めていく非常にいい材料が、その辺にもあると思う。そういうものをさらに育てていくことも、学術研究推進部会で検討していくことが必要ではないか。
 もう一つは、ビッグサイエンスとスモールサイエンスのバランスの問題である。旧文部省関係に限定して話をすると、10年ほど前、科学研究費補助金とビッグサイエンスは500億円位で推移していた時期があるが、今は競争的資金ということで科学研究費補助金はどんどん増えて3倍位になっている。それに対して、ビッグサイエンスはほとんど横ばいである。ビッグサイエンスの大切なこととして案外見過ごされているのは、日本の技術力の育成に非常に貢献しているという点である。最近、日本の技術力の低下が懸念されているが、それはある意味では産業界や企業にビッグサイエンスに付随した非常に高い技術の仕事が回っていかないということにも起因しているように思う。そのため、これまで産業界に蓄積されていた技術が、今はどんどんITなどソフト的な方向へ分散しているため、本当の意味のものづくりの技術がだんだんと元気がなくなってきている。ビッグサイエンスとスモールサイエンスのバランスの問題は、単に金額だけの問題でなく、そういう視点からの配慮も必要である。
 いずれにしても、日本の新しい先端研究を引っ張っていく推進力のようなものを構築していく必要がある。

○ 参考資料の7ページを見ると、間接経費が急激に増えてきている。これは、総合科学技術会議においても言われていることであり、世の中の流れとして積極的に受け入れていくしか仕方ない。
 間接経費は、競争的資金から得られるものだが各大学法人の自由に使えるので、間接経費をもっと充実させることによって基盤的資金とうまくリンクさせていくような方式はとれないだろうか。
 また、間接経費は対13年度でも300%近く増えているが、文部科学省において間接経費の使われ方についての調査結果などはあるのか。

△ 確認の上、次回報告させていただきたい。

○ 間接経費を厳密に定義すると、その研究に特化して、その研究を推進するための基盤を支える経費ということでいいのか。

○ 間接経費の取扱いについては、各大学ごとに方針があり違う。典型的な例として、間接経費の5割を全学経費とし、残りの5割を競争的資金を獲得した研究者が属する部局の経費にしているところが結構あるようである。間接経費は競争的資金から得られる経費であるが、競争的資金を獲得した研究をサポートするためにあまり使っていないように思える。正確には、調べていただかなければいけないが。
 また、間接経費が基盤的資金にどのくらい回っているかということについては、大学によって、基盤的資金を強化するために使うべきであるという意見もあれば、学長裁量経費として学長のリーダーシップのもとで大学の個性ある独自の取り組みに対して使うべきであるという意見もあり、それぞれの大学のポリシーで決まっていると考えられる。

○ 間接経費については一度議論したほうがいいと思うが、財務省では間接経費を増やしたから基盤的資金は削減するという発想で議論をしているので、それに対しては、全体として予算を増やす話を持っていかなければ戦いは不利になる。
 運営費交付金のシステムを含めた財務の全体構造を我々としても勉強して意見を言うべきであると思うが、国立大学法人の現状としては、減価償却費などは措置されていないし、保全の面からいうと、プリベンティブメンテナンス(防止的な保全)がされないでブレークダウンメンテナンス(破損に対する保全)になっている。だから、累積的な不良債務をたくさん抱えている施設を持っているのが国立大学法人であるという現状を踏まえた上で政策を打ち出すべきであり、研究資金の問題は、最も基礎的な建物がしっかりと建っているか、水が漏れてこないかといった基礎代謝の前段階の話から含めて、長期的に日本の国立大学セクターがしっかりやっていけるかどうかを検討すべきである。
 それから、基盤的資金と競争的資金の配分の問題であるが、基盤的資金を減らして競争的資金にするというのは全くばかげている。基盤的資金はもちろん不足していて、その中に運営費交付金が計算されているなら、運営費交付金のうち人件費はかなり固定的な部分であり、その取り扱いや今の計算の仕方そのものに疑問を呈していく必要がある。民間企業でも、人件費は固定費ということ減らしてきているが、その結果、それを外注経費に置きかえているという側面がある。つまり、人件費の削減を数値目標とすると、結果として、外注経費(物件費)で人件費をまかなうということになる。このような現象が長期的にみて日本企業の競争力やものづくりの基盤にとってどういう影響があるかということは、現在の企業経営にとっておそらく大きな問題であろう。この大学における競争的資金と基盤的資金の配分問題にしても、あまり機械的な数値目標でやってしまうと将来に禍根を残すのではないだろうか。

○ 1つの成果をうまく次に渡す仕組みや考え方が非常に少ないという点であるが、それは文部科学省の中で完結するようなシステムではなく、日本全体としてそのようなシステムがなければいけない。しかしながら、現状は意識も非常に希薄である。どうしたらいいのかということを考えると、総合科学技術会議がもう少しリーダーシップをとるような体制がないといけないのではないか。
 次に、参考資料の7ページのグラフを見ると、競争的資金の伸びがかなり強い。10年程前の第1期科学技術基本計画のときに、基礎的研究をしっかり支援して足腰を鍛えないと将来が危ういのではないかということを申し上げた。それから10年経ち、そのとおりになるつつあるのが非常に残念であるが、その時にも念頭にあったのは、国全体として競争的資金と基盤的資金とのバランスがとれればいいのであり、文部科学省の中だけでそのバランスをとる必要は全くなく、むしろ文部科学省は基礎的研究を守るという仕事をしっかりするほうがいいのではないかということである。現状はどうなっているか。このグラフを見ると、他省庁と同じように競争的資金の割合が増えているのではないかと危惧する。文部科学省としては、どういう考えでマネジメントをしようとしているのか。

△ 基盤的資金と競争的資金の2つの仕組みが重要であるということは全く同じ認識であるし、運営費交付金を削って競争的資金に充ててはどうかという総合科学技術会議の一部の意見に対しては、両方の拡充が相待たないと競争的資金も機能を発揮できないということを文部科学大臣から申し上げている。
 来年度予算については、運営費交付金の充実と同時に、競争的資金は平成17年度が第2期科学技術基本計画の最後の年であるため、思い切って競争的資金の20%の要望枠を最大限に使った予算要求を出そうと考えている。今までの様々な資金をもう一度整理した上で競争的資金を新設したり、科学研究費補助金をはじめとする従来の競争的資金を伸ばすことで、平成16年度の文部科学省における競争的資金の総額が約2,800億円に対して、平成17年度は4,500億円の要求で現在省内で調整している状況である。そしてそれは同時に、間接経費増にもつながっていくものである。

○ 成果を次に渡す仕組みについてであるが、大型の科学研究費補助金特別推進研究などが終了したところで、比較的応用研究に近い分野は、他省庁や文部科学省の中でもJSTがやっているプログラムに申請しやすく、実際にそちらでより大型の研究費を獲得されている方が多く、そういうコースが少なくともある。それに対して、純粋科学の場合はそれがやりにくいので、基礎研究や純粋科学を守るという観点から、科学研究費補助金をはじめとする競争的資金の設計をどうするのかということは文部科学省としても十分考えなければいけないし、そのために競争的資金の総額を増やしていく必要もあるだろう。
 しかし、競争的資金だけをむやみに増やそうとする傾向に対しては、かなり警戒しなければいけない。幸か不幸か、第2期科学技術基本計画に数値目標が挙がっているのは競争的資金の倍増だけであり、それが実現しそうもないということで総合科学技術会議が相当思案されている。国立大学の助手相当分の人件費は2,000~3,000億円位になるらしいが、それを競争的資金にすれば倍増になるというシナリオもあるように聞いている。つまり、国立大学から助手がいなくなるということである。その対処策としては、競争的資金でポスドクで雇えばいいという。これは理化学研究所ならともかく、大学でそのようなことをすると教育に途端に問題が起きてくる。それこそ片肺を全部摘出するような恐ろしいことになる。では、どうしたらいいのか。
 科学研究費補助金は、競争的資金であり成果がわりと説明しやすい。最近、新聞に科学技術関係の成果が出ると、その関係者の科学研究費補助金歴を調査している。記事の関係者はほとんどが科学研究費補助金を獲得しており、科学研究費補助金の成果が新聞に載らない日はほとんどない。ところが、基盤的資金は説明しにくい。基盤的資金の効用は、消極的な面からしか説明できない。基盤的資金をなくしてしまったら、死んでしまう、基礎代謝分を奪う話であるといういうような比喩としては言えるが、それをどこまで積極的に言えるかが多分一番問題であろう。ただ、基盤的資金をなくしたらどういう歪みが起きてくるのか、起こり得る恐ろしい結果というものは、きちんと説明しなくてはいけない。助手の話もそうであるが、そのような緻密な作戦をとっていかないと、第3期科学技術基本計画においてもまた同じ話になりかねない。

○ 先ほどの成果をうまく次に渡す仕組みについてであるが、文部科学省だけではない全体のシステムが必要であるが、まだ文部科学省の中でも旧科学技術庁関係予算と旧文部省関係予算の棲み分けができていない。ある先生には、同じような研究テーマで研究費が重複しているようなこともある。このような点は、外部からの疑問に対してしっかり答えられる仕組みにしないといけない。これは、審査の評価の問題である。
 それと、我が国の科学技術の必要性をどのようにして国民に説得していくかということである。国民を説得していくためには、成果をうまくつないでいくと同時に、これからは私立大学の重要性をもっとうまく取り込んで裾野を広げながら科学技術関係予算を増やしていくことも考えていく必要があるのではないか。

○ 国の答申等に「質の高い基礎研究を競争的環境下に推進する」という文言が繰り返し出てくるが、本当にこんなことが可能なのかという非常に根本的なところで疑問を持っている。本日の議論をお聞きして、やはり「基礎研究を競争的環境下に推進する」ということを考え直さなければいけないと思う。基礎研究は国力をつくる源であり、競争的環境下での研究は全く別の発展の仕方をするものである。これらを一緒にして考えてしまっている点が問題である。では、基礎研究をどう定義するかであるが、発展性を秘めた基礎的・基盤的研究あるいは純粋科学研究であると考えると、これが競争的環境下で推進できるかというとそうではないように思う。国が基礎研究を競争的環境下で推進すると言う場合、基礎研究をどういうところでやろうとしているのかすら、だんだんわからなくなってきている。このような議論も必要ではないか。

○ 今後の学術研究推進方策について今後議論する場合の主な目的は、現段階から第3期科学技術基本計画の中に、学術研究推進方策に係る資金をどう盛り込んでいくかということであると思う。
 そういう点からいうと、第1期、第2期の科学技術基本計画の中の学術研究推進の成果をレビューし、評価して、今後の課題を分析する必要がある。事務局でも今まで出た意見を整理し、学術研究推進部会の5つの主な検討事項について現状を分析し、課題を整理し、その課題を克服するためには今後具体的な方策としてどういうことが求められているかを理論的に整理して構築していかないと、国の資金を確保するため、国民に対するアカウンタビリティ(説明責任)を果たして、透明性の高い審議会としての意見表示にはなっていかないのではないか。今後、その点については各委員の意見を十分に参考にしていただき、それぞれの課題について分析した上で、さらに不足している点を洗い出し議論を進めないと、今まで出た意見がなかなか生きてこないのではないか。

○ 本日は全般的な自由討議ということで始めたが、今ご指摘があったように、次回からは、どのような提言ができるのかを考えながら議論を深めなければいけないだろう。

○ 国立大学法人の運営費交付金を競争的資金が肩がわりするとなると、科学研究費補助金の配分の際、どうしても国立大学法人中心、旧国立機関を優先させざるを得なくなるような印象を受けた。そうなると、私立大学が二の次、三の次になっていく。私立大学についてもいろいろな議論をしなければいけないと思うが、今後の社会全体の展望の中で私立大学の重要性をどのように取り込んでいくのか、その観点からも基礎的な交付金をしっかり充実させていかなければいけない。

○ 我々の議論は、明確な学術の方向性について社会に対して説得力のある提言をしていくということである。その目標として、第3期の科学技術基本計画が重要な部分としてある。
 本日は基盤的資金と競争的資金について主に議論があったが、研究費はそれだけではない。大型で長期的な学術のための資金というものがある。これは運営費交付金とは別に措置される場合もあれば、運営費交付金を使わなければいけない場合もある。これはある種競争的である。大きなプロジェクトは、それぞれの主張をして、何年も開発し、準備をし、だんだんと頭角をあらわし、そして認められるという形で熾烈な競争をしている。しかし、これを普通は競争的資金とは言わない。さらに、議題(1)で審議された運営費交付金の中の特別教育研究経費がある。この性格がどうなっていくのかということを考えなければいけない。運営費交付金は、2つに分かれた。1つは基盤的資金であり、1%ずつ削減しなければいけない。もう1つが特別教育研究経費であり、これは概算要求で要求し、審査があり、競争的環境に置かれている。当然、評価・審査の対象にもなる。大学共同利用機関法人においては、特別教育研究経費の占める割合は、全経費の半分近くになる。それでいろいろなプロジェクトや研究を進めるのだから根幹にかかわる問題である。国立大学法人でも研究を大規模に進めている大学は、特別教育研究経費はかなりの額になる。特別教育研究経費の評価、その結果に基づく決定プロセスなどは、今後特別教育研究経費の性格をつくっていく非常に重要な問題であり、学術研究推進部会の重要な議題である。
 ぜひ4つ研究費があるという整理から、全体の評価、運用の方向について議論願いたい。

○ 参考資料の1ページ「6アカデミーの役割について」というところで、結局どういう学問・研究分野をサポートしていくのかという政策決定は、この文章を読むと「政策決定は最終的には政治の役割であるが、決定プロセスにおいてアカデミーが一定の役割を果たしていく必要があり、その役割を政府の審議会を含めてどのような形で果たしていくのか」ということが述べられている。
 これまでは、競争的資金や基盤的資金、その割合、あるいはその評価について議論されたが、そもそもどういう学問を、どういう課題を、あるいはどういう領域を大きく支援するのかという最初のディシジョンメーキング(意思決定)が非常に重要である。その関与なしに行われた研究に対して評価をするのは、非常につらい部分がある。だから、どのような学問領域にどのように大きなサポートをするのか、その質と量をどこでどのように審議・決定するのかということが非常に大きなテーマではないか。そういうことも含めて、投入した予算、それに伴うアウトプットを考えるとすれば、やはり最初のグランドデザインをどのように決めるのか、だれが決めるのかということが非常に重要な課題ではないか。次回以降、もしそのようなことまで学術研究推進部会で検討することができるなら考えていただきたい。

5.今後の日程について

 次回の学術研究推進部会は、委員の日程を調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)