学術研究推進部会(第1回) 議事録

1.日時

平成16年7月6日(火曜日) 15時~17時

2.場所

経済産業省別館 1028号会議室

3.出席者

委員

 阿部総合科学技術会議議員
 飯吉委員、石井委員、井上孝美委員、笹月委員、伊賀委員、甲斐委員、伊井委員、稲永委員、井上明久委員、海部委員、川合委員、榊委員、玉尾委員、平山委員、美馬委員

文部科学省

(事務局)
 清水研究振興局長、瀬山大臣官房審議官、丸山大臣官房審議官(研究振興局担当)、森振興企画課長、芦立学術機関課長、甲野学術研究助成課長、他関係官

オブザーバー

(科学官)
 五條堀科学官、清水科学官、高埜科学官、本藏科学官

4.議事録

(1)部会長及び部会長代理の選出等について

 委員の互選により、笹月健彦委員が部会長として選出された。笹月部会長の指名により、石井紫郎委員が部会長代理となった。
 また、学術研究推進部会運営規則は、資料4に基づき事務局より説明の後、原案のとおり了承、決定された。

(2)今後の学術研究推進方策について

 資料5-10-3に基づき事務局より説明の後、阿部総合科学技術会議議員より最近の総合科学技術会議での議論の状況について説明があった。その後、意見交換が行われた。その内容は以下のとおり。

(○・・・・委員、科学官、議員 △・・・・事務局の発言)

○ 平成17年度の資源配分方針において、これまでと一番違うところは、資料9-2「2(2)2)国家的・社会的課題への新たな取り組みに向けた戦略的・総合的な推進」であると思う。競争的研究資金や基礎的な自由な発想に基づく研究の重要性との関係は、平成17年度に関してはどのようになっているのか。

○ 平成17年度に関して申し上げると、「2(2)2)2国の持続的発展の基盤となる重要な科学技術の精選・推進」については、平成17年度に候補を精選し、予算措置は平成18年度以降ということになっている。
 具体的な例はまだ検討していないが、例を挙げるならば、日本の場合、宇宙開発は極めて弱い。しかし、もっと長期的なビジョンに基づいて、しっかりと位置づけていくべきものである。基盤的あるいは基礎的な研究はもっと前段階にあることなので、多分ここには入らないだろう。ビッグプロジェクト的なものを、少数精選することになるのではないか。

○ この部分は、平成18年度以降の第3期科学技術基本計画に対する一つのステップという考え方なのか。

○ 準備というふうに理解している。

○ 基礎研究と国家的・社会的課題の安心・安全のようなものとを切り離さないで、うまくつなげていくという方向はあると思うので検討いただきたい。

○ 基礎研究の推進に対してネガティブな意見は、総合科学技術会議の議員はもちろんのこと、専門委員の中にも全くない。基礎研究をどのようにしてうまく推進していくかという方法論、予算獲得の方法論も含めて、政策の方法論のようなものが大切なのではないか。一般論では大勢が賛成していても、蓋をあけると基礎研究の費用が少ないということはあり得るので、そうならないようにするためにどのすればいいのかということであろう。

○ 科学技術基本計画が平成13年度から平成17年度までの5年計画で現在進行しているが、一般歳出が平成13年度48兆7千億円に対して平成16年度47兆6千億円と減少してきている非常に厳しい国の財政状況の中で、科学技術関係予算が平成13年度3兆4,685億円から平成16年度3兆6,255億円と順調に増えてきているのは、総合科学技術会議や関係者の方々の努力の成果であると思う。ただ、第2期基本計画が平成17年度で終了することを考えると、24兆円に対する進捗率が69.3%という状況であり、平成17年度予算でリカバリーショットがどの程度打てるのか。その点について、総合科学技術会議ではどのように考えられているのか。
 また、競争的研究資金と基盤的研究資金のバランスをどうするかということがいろいろ議論されているという話の中で、大学は研究費がじゃぶじゃぶではないかという意見もあるということであったが、大学はそういう状況にはないのではないか。同じ資料の107ページに、国立大学における教育研究基盤校費が平成15年度で1,502億円とある。これは教育研究経費であり、教育と研究の区分けはなかなか難しいという話があったように、この中でどれだけが基盤的な研究費となっているかというのは必ずしも明確ではない。また、「平成16年度の国立大学法人予算額の構成」の支出のところに教育研究経費等1兆3,386億円とあるが、これは教職員の人件費を含んでいるので、人件費を除くとおそらく1,502億円という状況ではないか。平成16年度は、まだ実際の教育研究経費の配分状況というのが不分明であるし、各国立大学法人では運営費交付金から共通経費を控除して、教育研究経費に配分された額はおそらく減少しているのではないかという心配もあるだけに、運営費交付金をしっかりと措置するべきである。今後、そのことと、科学研究費補助金等の競争的研究資金を拡充する必要があるという両面、デュアルサポートシステムの中身についてさらに議論し、現状分析等をして理論的に説明していく必要があると思う。その点について、示唆いただきたい。

○ 後半については同じ趣旨を申し上げた。大学の研究費がじゃぶじゃぶであるというのは経済財政諮問会議など外部の一部から言われていることであり、特にライフサイエンスについて、一部の委員から指摘されている。総合科学技術会議に直接申し入れされている訳ではなく、経済財政諮問会議で独自に動かれているので、注意が必要である。
 いずれにしても、いろいろなデータ処理が可能になったために、どのくらい重複して採択されているかというのは把握できるようになった。重複していることはだめだと思わないが、厚生科研費も含めて十幾つという研究者がおられたり、中にはテーマがほとんど同じような研究で複数の省庁から採択されているというものもあるので、それは審査の段階で見つけることは可能である。また、採択されるかどうかわからないのに申請している場合もあるので、最終的には大学がエフォート(研究者の全仕事時間に対する研究の実施に要する時間の割合)をどう考えていくかということと連動しないと、有効な政策にはならないだろう。国立大学が法人化されて間もないので、まだそこまで余裕はないかもしれないが、将来的には欧米の大学のように、産学連携や教育との関係なども含めて、エフォートを大学がきちんとしていくことで、適正にしていくのは難しいことではないだろう。
 教育研究経費等については、数年前から東大の工学部などは研究室に配分される基盤校費はほとんどないということを聞いていたし、研究のアクティビティの高い大学はそういう傾向が非常に強い。これは、競争的研究資金を運営するためにかかる間接経費を、基盤校費から支出しているということも大きいのではないか。これから競争的研究資金の中の間接経費が拡充されていくとどうなのかという問題はあるが、むしろあまり競争的研究資金を獲得していない先生の多い大学の方が、基盤校費の中で研究に使っている金額が多くなっているというデータも数年前にあったので、現在はもっと加速されているかもしれない。
 そういったことをある程度分析できるようになると、説得力のあることを言っていけるのではないかと思っている。これは、総合科学技術会議がどこまで言うべきなのか。また、文部科学省の仕事でもあるので、応援はさせていただきたいと思う。
 もう一点、最初におっしゃった24兆円の問題であるが、24兆円の達成は今のところ非常に困難だろう。資料9-2の6ページは、平成16年度までのデータであるが、平成16年度なみに平成17年度の予算が確保できたと仮定すると、21兆円くらいになるのではないかという事務局の試算もある。24兆円に対して21兆円というのはどのような評価になるのかであるが、第二期基本計画の中でGDPの名目成長率3.5%という条件がついているので、それは少なくとも今までは達成されていない。だから、24兆円が仮に達成されなくとも、弁明できるようにはなっている。しかし、できるだけ平成17年度は24兆円に近づけたい。一番の乖離があるのは、やはり競争的研究資金である。

○ 競争的資金はいろいろなタイプがあると思うが、ライフサイエンスも含めて、かなりビッグサイエンスになったものが多くなってきており、例えば非常に大型の設備や投資が必要となるものなどは、競争的資金にはなじまない。そういったものは、別途重点分野等で手当があると思うが、競争的研究資金の拡充とうまくリンクする必要があるのではないか。その辺は国としてどのようにお考えか。

○ 非競争的研究費の必要性というのは、ものすごく認識している。資料9-2の104ページにもグラフがあるが、いいかどうかは別として米国の場合は、32.4%が競争的研究費金で残りの67.6%が非競争的研究資金であり、非競争的研究資金の方が多い。ところが、日本の場合は、競争的研究資金が9.7%であり、あまりにも少ないので、まず競争的研究資金を伸ばそうとしている。競争的研究資金を100%にする、もしくは競争的研究資金の方を多くするという考え方は、おそらくだれも持っていないのではないか。非競争的研究資金の重要性というのは当然あるので、もう少し競争的研究資金が伸びてくると、先生がおっしゃったことをしっかり考えなければいけないという意識が全体的に出てくるのではないかと思う。

○ ビッグサイエンスとスモールサイエンスのバランスの問題などが、これから議論の対象となると思う。資料9-2の38ページに、スモールサイエンスとビッグサイエンスの割合が出ていているが、この内訳がよくわからないので、次回までにもう少し明らかにしていただきたい。これで見ると、スモールサイエンスがビッグサイエンスの6倍、7倍でどんどん増えてきている。内訳をある程度整理して議論していく必要がある。

○ この件は基本問題特別委員会で、既に議論が行われ、ある程度の結果が出ている。

(3)平成17年度特別教育研究経費(学術研究関係)の取扱について

 資料10-1、11-1~11-6に基づき事務局より説明の後、質疑応答が行われ、資料11-3「平成17年度概算要求に係る大型プロジェクトヒアリング実施要領(案)」及び資料11-4「平成17年度概算要求に係る附置研究所の新設等ヒアリング実施要領(案)」については、原案のとおり了承、決定された。附置研究所の新設にかかわるヒアリングを受けるかどうかについての法人への確認は、事務局が行うということで了解された。
 また、資料11-1「平成17年度における特別教育研究経費(学術研究関係)の取扱について(案)」は、今回のご意見を整理し、次回の学術研究推進部会において、調整方針(案)として諮ることとなった。
 質疑応答の内容は以下のとおり。

○ 資料11-1では、各法人からの要求を一定の考え方に基づいて整理するという考え方が示されている。各法人が付した重点事項の優先順位を尊重するということだと思うが、1の「政策目的に則り」という部分の意味が分かりにくいので、具体的に説明いただきたい。例えば、本科学技術・学術審議会等でも推進すべき課題等を議論されていると思うが、この政策目的とはそういうものも指すのか。

△ 基本的には各法人の優先順位を最大限尊重したいと考えているが、「政策目的に則り」とは、学術研究の動向等を踏まえ、是非推進して欲しいという課題を指すと考えている。

○ 附置研究所の新設についてであるが、この部会は附置研究所の設置について審議する機能を持つという理解でよろしいか。
 附置研究所の設置が認められたり、認められなかったりということが、今までの概算要求を受けての審議と比べ大幅に変わるということか。

△ 法人化後は、附置研究所、あるいは研究センターの設置は基本的に大学の自由である。しかし、平成14年に学術分科会の中に設置された国立大学附置研究所等特別委員会の審議において、むしろ附置研究所やセンター側より、大学の内部組織ではあるが、学術的な観点からの活動等の認知、及びサポートをお願いしたいという意見が相当強く出された。この特別委員会の意向を受けて、本部会において学術的観点から活動をしっかり見させていただくなど、積極的に必要性を認知していこうというものである。
 この点については、次回改めてご説明させていただきたい。

○ 「政策目的に則り」の部分について、各法人で付した順位とは全く別個の政策と解釈すると、法人の自主性・自律性に対して、一体我々がどういう正当性を持って順位付けを変更することができるのかという非常に深刻な問題が出てくるのではないか。この「政策目的に則り」とは、前文の上に書いてある特別教育研究経費が設けられた政策目的だと理解したが、それで正しいのか。

△ 国立大学の法人化に関しては、なぜ国立なのか、なぜ独立大学法人ではないのか、つまり、国立であることの趣旨をどこでクリアにするかという基本的な問題があった。
 また、一昨年からの附置研究所等をめぐる様々な議論の中で、その中心にあったのは、附置研究所や研究センターの先生方から、大学のサイエンスポリシーに委ねることで、重要な研究が損なわれるのではないか、我が国の研究分野を全体としてバランスよく発展させられないのではないか、という懸念であったかと思う。
 これを踏まえ、国として中期目標の別表という形で安定的にサポートし、また、経費の増額の仕組みについても、各大学の自主性・自律性に基づいた教育研究のポリシーと、国としてサポートすべきものとを扱い得るように工夫したということである。

○ そういう趣旨ならば、「政策目的に則り」のすぐ上の行に書かれている「学術的観点から」または「学術政策的」といった表現の方が妥当であると思う。「政策目的」は非常に分かりにくい言葉である。

△ この表現については次回ご議論いただき、検討を踏まえながら整理していきたい。

○ 1つは大型プロジェクト、もう1つは附置研究所の新設等に関するヒアリングという2つの案が示されたが、これについて意見はないか。
 資料11-3の大型プロジェクトヒアリング実施要領では、「4.進め方」として「時間配分説明15分、質疑応答5分」としている。質疑応答時間が5分では短いのではないか。
 ヒアリングの件数はどれくらいを考えているのか。

△ 10件程度である。

○ 私はヒアリングを受ける立場だが、今年はスタートが遅れたこともあるので、時間的に可能な範囲で実施するものと解釈している。
 ヒアリングにそれなりの意味をしっかり持たせようと思えば、この時間配分では短過ぎる。私たちとしてはしっかりとしたヒアリングをお願いしたいところだが、今年はスケジュールが非常に厳しいので、こういう提案をされていると理解していた。

△ 趣旨を踏まえ、時間については検討させていただく。

○ 件数や議題にもよると思うので、柔軟に考えて決定いただければと思う。

○ ヒアリングについてだが、新規の大型プロジェクトは単年度で終了するものか複年度にわたるものかによってもその内容が異なると思うが、その辺の考え方を簡単に教えてほしい。

△ 特別教育研究経費の中には、大型プロジェクトで、16年度以前から継続しているものも含まれている。17年度から新しく始める大型プロジェクトについては、今のところ想定されてない。
 各大学からの概算要求書は本日が提出締切である。次回までに事項を整理させていただきたい。

5.今後の日程について

 次回は、7月29日(木曜日)に学術総合センターにおいて開催予定の旨、事務局より連絡があった。
 なお、次回の会議では、特別教育研究経費の学術研究関係要望事項の検討及び附置研究所の新設、全国共用利用組織化などについての各機関からのヒアリングを予定しており、その部分については学術研究推進部会運営規則第3条第3号に基づき非公開とする旨、決定された。

お問合せ先

研究振興局振興企画課