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科学技術・学術審議会学術分科会

2002/10/04 議事録
科学技術・学術審議会/学術分科会 国立大学附置研究所等特別委員会(第1回)議事録

科学技術・学術審議会/学術分科会
国立大学附置研究所等特別委員会(第1回)議事録


1. 日  時 平成14年10月4日(金)15:00〜17:00

2. 場  所 経済産業省別館(9階)944号室

3. 出席者
(委員) 大ア委員、末松委員
(臨時委員)   木村委員
(専門委員) 増本主査、石井主査代理、甲斐委員、中村(道)委員、中村(慶)委員、仁田委員、益川委員、山西委員
(科学官) 秋道科学官、西尾科学官、廣川科学官
(事務局) 石川研究振興局長、山元科学技術・学術政策局長、坂田研究振興局担当審議官、清水高等教育局担当審議官、磯田総括会計官、尾山政策課長、太田主任学術調査官、泉振興企画課長、吉川学術機関課長、西阪学術研究助成課長、関量子放射線研究課長、北尾研究調整官、小山学術機関課課長補佐、その他関係官

4. 開  会
  事務局より、委員及び事務局の紹介があった。
  増本主査の指名により、石井委員が主査代理となることとなった。
  また、特別委員会の運営について諮られ、本特別委員会は、会議、会議資料、議事録について原則公開することとし、別途の取扱を必要とする案件が生じた場合には、改めて委員会に諮ることとされ、以後公開された。

5. 議  事
 

  まず、事務局より、資料1(国立大学附置研究所等特別委員会の設置について)により本特別委員会の設置の趣旨の概要が述べられた。その後、資料2(国立大学附置研究所等の概要)、資料3(審議会等における研究体制の整備等に関する審議状況)及び資料4(科学技術・学術審議会学術審議会−国立大学附置研究所関係自由討議における主な意見−)に基づいて説明が行われた。また、資料5(国立大学附置研究所等特別委員会での検討事項)、資料6(国立大学附置研究所等特別委員会における検討スケジュール(案))に基づいて、委員会としての詳細な検討事項及び今後の検討スケジュール案について説明が行われた。
  主査より、本委員会の今後の進め方等を含めてフリーディスカッションを行いたい旨の発言があり、その後、仁田委員及び中村(慶)委員からの配布資料について、各々の委員より説明があった。
  (なお、フリーディスカッション中、○は委員、臨時委員、専門委員及び科学官、  △は事務局の発言を示す。)

(1)仁田委員よりの配布資料説明
  現在、文部科学省所轄ならびに国立大学附置研究所長会議の会長をしている私から、国立大学法人化後の学術研究体制と附置研究所等の役割について説明させていただ
  く。

  最初に、文部科学省所轄ならびに国立大学附置研究所長会議、「全国研究所長会議」と称しているが、その構成を示す。全体で96機関より構成されており、58機関ある国立大学附置研究所はすべて加盟している。また、研究施設の中で、全国共同利用施設が9機関、比較的大規模の学内共同教育研究施設が5機関加盟している。また、附置研究所の教官数は、大体3,300人位であり、研究施設の教官数が大体280人位というところである。これらの研究者が、日本の学術研究体制の中で重要な役割を果たしていると考えているので、その在り方について明確なご議論をいただきたいと考えている。
  「新しい『国立大学法人』像について」(平成14年3月26日国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議報告)の中で、国立大学附置研究所がどのように記載されているかということについては資料5の通りであるが、具体的に国立大学附置研究所がどのような役割を受け持つかということについての明確なビジョンや方法論というものが提示されているとは我々は考えていない、まだ十分に明らかになっていない点がたくさんあるのではないか。この「新しい『国立大学法人』像について」の中間報告が昨年出された際に、パブリックコメントということで、この全国研究所長会議として申し上げた意見を資料としてつけている。詳しくは、資料をご覧いただければと思う。

  基本的には、附置研究所の役割というものを考える場合には、2つの視点が重要であると考えている。
  1つは、附置研究所というものが、日本全体の全国的な学術研究拠点として一定のミッションを与えられている存在であるということである。研究所の設置経緯等は非常に様々であるが、それらの経緯を踏まえて、また、それらを一層整理をして、今後とも日本の学術研究の発展の中で、十分な働きをしていけるようにお考えいただきたいということである。同時に、附置研究所は国立大学の重要な部局であり、評議会の構成員として研究所長も大学の運営に参加してきているところである。したがって、大学の中で学部、研究科等と共同の研究活動に従事する、あるいは最近では、産学連携において中心的な役割を果たすということで、国立大学の中において重要な役割を果たしてきている。この両方の機能を十分に果たしていけるようにするということが今後の附置研究所の在り方を考える上で大変重要であると考えている。
  また、この委員会は附置研究所「等」となっている。歴史的な経緯によって、研究施設、研究センター等となっているが、全国共同利用の活動を展開しているところもあり、研究上、また教育上、重要な役割を果たしている施設もあるので、それらについても今後機能が維持発展されて、国立大学の中において有機的に成果を挙げていけるような体制をお考えいただきたい。

  具体的には、「検討を要望する事項」として3点挙げさせていただいている。
  第1は、「附置研究所等の制度的基礎の明確化」ということであり、「新しい『国立大学法人』像について」の中で、国立大学附置研究所に関しては、省令で明確化する方法を工夫すると書いてあるが、そこを明確にしてほしいということである。研究施設、研究センター等についても今後、きちんとした活動をしていけるような制度的な基礎を何らかの形で明確化していくことが非常に強い要望として出されているところである。
  2番目に、国立大学附置研究所の活動を支える財政的基礎をはっきりさせてほしいということである。これは、国立大学全体の財政的基礎と関わることなので簡単ではないと思うのだが、研究所には、学部、研究科とは異なった特徴的な部分があるので、それについても考慮した上で、明確化していただきたい。
  3番目に、新しい国立大学法人のシステムの中で非常に重要であるのは、計画を出し、それに対して評価を受けるというところであろうかと思う。附置研究所等をきちんと評価するのに適合した、それにふさわしいような評価システムというものをお考えいただきたいというものである。

(2)中村(慶)委員よりの配布資料説明
  現在、共同利用研究所長懇談会の座長をしている私から、国立大学協会会長・長尾先生宛てに出している要望書を資料として説明させていただく。
  これは今年の5月9日に仙台で開かれた共同利用研究所長懇談会という、共同利用の研究所長が毎年集まり行っている会議で、討議する内容等について出された要望を取りまとめて、議論した内容で、各研究所、研究センターの方々に活動状況をアンケートで2度ほど伺ったものをもとにしたものである。これは、大学共同利用機関特別委員会にも同じものを出させていただいている。

  お手元の資料の最後のところに、共同利用研究所長懇談会のメンバー表がある。私からは、全国共同利用研究所の立場から、少し説明をつけ加えさせていただきたいと思っている。
  この表でご覧いただけるように、共同利用研究所長懇談会には、大学共同利用機関が18、国立大学の附置研究所の内、全国共同利用型のものが19、それから、大学にある全国共同利用施設が17入っている。この内、8研究センターを除いては、全部が全国研究所長会議に入っているということである。

  提出させていただいている資料では、私どもの要望する中身が書いてあるが、共同利用研究所についてご理解をいただきたいということで、4点に整理して書いてある。
  最初は、共同利用研究所や研究センターが大学に附置される意義についてであり、共同利用研としては、当該分野の研究活動の学内拠点であるというばかりではなくて、国内外の研究機関との連携の中核になっているということである。また、それぞれのミッションに関わる研究活動で世界をリードすることを目指して機動的、集中的に推進するとともに、研究交流の現場での高度で特徴ある大学院教育を実践しているということ。そういうことにより、附置されている大学自体の研究面での評価を大きく高めているのではないかということも自負している。
  2番目には、教育面、非常に高度な研究者、専門家の育成ということで、大きな役割をしているということと同時に、新領域開拓に向けた人材育成をも行っており、研究のみではなく、教育という面でも非常に大きく寄与しているということを、書かせていただいている。国内外の多様な背景を持った関連の研究者がここで協力して研究をすることができ、そのような幅広い交流が新たな研究の視点を生み出して、それがまたそれぞれの大学の研究・教育活動の視野・対象を広げることに大きく寄与しているのではないかということである。
  3番目に、そのような研究所、研究センターが法人化後にどのようにあるべきかということで、組織的に連携を強めていくということが大事なのではないか。しかも、そういうことを保障していくような財政体制や組織形態の柔軟な変更を可能にするような制度的保障も必要ではないだろうか。それから、研究コミュニティーを形成しているような研究連携について、国全体としての戦略的な視点に立った財政措置というものを制度的に保障していただくことも大事ではないかということを書いてある。
  4番目に、その活動を推進するための財政措置。国全体の学術研究の戦略を視野に入れた評価を伴う「組織に対する競争的研究資金」といった枠組みをつくることが必要ではないだろうか。ただし、長期的な展望に立たなければ成果が見られないような基礎的な研究をやっているところもあり、そのようなところに対する評価にも十分配慮をしていただきたい。いずれにせよ、国全体としての戦略的な視点に立った財政措置を講じていくことがこれからの学術研究を進めていくには非常に重要ではないだろうかということである。その研究の企画とか立案の中核に、全国共同利用型の研究所や研究センターがなっていると思う。それから、先ほど申し上げたが、研究所等は、研究機能だけではなくて、人材育成機能も併せ持っているので、そういう二面性に対応した財政措置もお考えいただきたい。

  これが私どもが5月に提出させていただいたものであるが、なお現在、この特別委員会に向けて、すでに3度目のアンケートで活動状況を実施しており、それについては、次回以降、また機会をいただければご報告をさせていただきたいと思っている。

(3)フリーディスカッション
  主査より、今までの議論を踏まえて、質問、意見、この特別委員会そのものの目的を含めて、今後の検討課題や進め方等についてフリーディスカッションを行う旨の発現があった。なお、議論の際、立場をある程度はっきりした上で意見等を述べてほしい旨の提案があった。

  この特別委員会での議論の対象ということで、いろいろご説明いただいたのだが、当方としてさらに議論の対象としてご配慮いただけたらありがたいということで意見を述べさせていただきたい。最初、本省から国立大学附置研究所等の概要、仁田委員から文部科学省所轄並びに国立大学附置研究所長会議のメンバーリストがあったのだが、このリストは、多分学術機関課の関連のところが挙げてあるのではないかと思う。仁田委員の方からご説明いただいた96機関という最後のところ、横長の研究所等機関に関する類別のところで、大学に置く全国共同利用施設で9機関ということで書かれているが、これに加えて、今後の議論の対象としていただければありがたいと思うのは、全国共同利用施設として情報課が所管している、以前は大型計算機センターと称していて、ここ数年間、情報基盤系センターという形で改組拡充をしてきているものがある。
  これは、昭和40年から数年にかけて、全国7大学に全国共同利用の施設として大型計算機センターとして設置されたもので、ここ数年間では、計算機リソースを全国の7つの地区に、日本の科学の発展のために提供するということのみならず情報通信分野での世界的な研究拠点を目指して改組拡充がなされているものである。全国共同利用施設の議論がなされる場合に、これら情報基盤系の7センターに対しても、今後議論の対象にしていただければと思っている。ここで議論をしていただけないとすると、これらのセンターが今後どういう形で法人化を迎えるのかということに関して非常に難しい状況であるので、ぜひお願いしたい。

  学術分科会の席でもそのような議論があり、科学官にそもそも入っていただいているのが、それも議論の対象になるという含みである。だから、ご発言でそういったことも意識してほしいということがその確認と思う。

  資料5の「新しい『国立大学法人像』についての検討事項の1の「附置研究所等の教育研究施設は、大学に包括されるものと位置付け」という、これは大前提として考えなければいけないのかどうかという点を確認したい。というは、大学共同利用機関については、設置形態が同じなので5つの独立行政法人に括るという中間的なまとめがあったと思うが、それをこちらに合わせていくと、今のお話にあった全国共同利用施設といった、全国的な研究の連携が非常に重要だという状況があり、それを大学単位に考えなければいけないというのはかなりの縛りになるのではないかと思う。だから、例えば、設置形態が違っても内容的に似たようなものであれば、それを大学を超えて括るような議論をしていいのかどうかということについて、この「大学に包括されるものと位置付け」という言葉の読み方の問題だが、これを最初に決めておかないと議論がしにくいのではないかと思う。

  この最終報告の文章の意味しているところは、先生のおっしゃるほど深い意味はないと思う。というのは、ここでは、大学と切り分けて、別の設置にするというようなことがあり得るのかということについて、そうではなくて大学法人というものの中の一部分、一部局なりとして位置付けていく、附属物として位置付けておくという意味で「包括される」と表現されており、つまり、図書館等様々な附属施設があるが、それらも皆、大学法人の管理下にあるという意味での位置付けだということが確認的に書いてあるということであって、先生のおっしゃるほどの深い意味はない。

  先般のご質問は本質的なご質問で、当特別委員会にとっても非常に重要だろうと思う。というのは、国立大学法人制度自体の基本的な考え方というのは、個別法人は個別法人として、それ自身の目的、計画で運営をするということ、その目的、計画というものは、基本的には個々の法人、具体的には学長先生のリーダーシップで決めていくというのが基本線なのである。しかし、そこで典型的なのは、大学附置の共同利用研究所というのは、その意味では異質の存在になるわけである。これは、現時点でも異質の存在であって、場合によっては大学の中でコンフリクト(矛盾)が生じているが、それがより明確に出てくるので、そこをどうシステムとしてうまく収めるのか、つまり、個々の大学法人の管理運営のシステムと附置の共同利用研の運営システムというのをどう調和させ、どう位置づけるかということは、本特別委員会の重要な検討事項ではないかと思われる。
  これは、共同利用型附置研究所ではなくても、一般の附置研究所も、そもそも本来的には、共同利用研と同じじゃないかというようなご主張が底流に常にあるようにも思われるし、研究行政というところから見れば、研究政策というのは個別大学に閉じ込められる話じゃなくて、どうしてもナショナルレベルでの配慮が必要になってくるので、ナショナルレベルでの研究体制というものから来る要請というものを国立大学が法人化した暁にはどう位置付けるかということを議論するのが、この特別委員会の1つの大きな使命ではないかと私は理解している。
  同時に、個別大学が自由に教育研究活動を展開するということは非常に重要な点なので、ナショナルレベルでの組織の形成と並んで、個別大学で自由にできるということのイメージをどう作っていくか、あるいは、そのための財源措置その他をどうするかということも併せて、文部科学省としては、そういう個別大学での研究活動を可能にするための手当みたいなものをどうするのか。具体的には、運営費交付金の算定ということもあるだろうし、組織ということで言えば、計算機センター、情報処理センターの話が出たが、他に例えば、機器センターや動物実験施設のような研究支援のインフラ、学内共通インフラをどう考えるのかが非常に重要になってくると思われるので、それらの点についての検討も併せておやりいただければいいのではないかと思う。

  今ご指摘のあった部分は、これまでの大学、あるいは国立大学附置研究所と国との関係、ナショナルサイエンスポリシーという観点から一方では附置研があり、一方で予算慣行として大学側の予算要求を受けながら国がセンター等を整備していくということがある。いわば、ある部分で大学のポリシーとナショナルサイエンスポリシーとが調整されるということだろうと思っている。それが、予算慣行としての大学の要求を受けて予算措置をしていくという形であらわれているのかと思っている。
  大学法人制度は、制度設計で事務局の立場に立ったので、これらの点について、大学法人の制度設計で意識していなかったわけではない。現実の問題として、1つの組織としての戦略、組織としての自己組織の決定性という問題であり、組織はそれぞれの法人のポリシーに基づいて自由に組織できるべきであるという部分と、一方で、法人制度からその内部組織、自己決定性と同時に安定性をどう確保するのか、そして、その安定性を確保すると同時にナショナルなものとが出会うところをどのようにするのかということが、この最終報告でのまとめ方になっている。
  言いかえれば、大学による研究施設だけではなく、附属病院その他、附属学校も含めた施設は、大学法人に全部包括されるのだが、法人の中の内部組織としてどう位置付けられるのかということについて、学部、研究科、附置研究所については、何らかの形で、名称であるのか、分野であるのかはともかくとして、大学自体の1つの目的、業務をあらわすものとして、それを何らかの形で法令で示し、それを運営費交付金、あるいは計画策定上の単位として考えようという考え方である。
  したがって、別な言い方からすると、ここの4にあるように、特定の大規模な研究施設については、内部組織の問題としてとらえ、ここの中には研究施設や教育施設と様々なものがあるが、それは1つのプロジェクトベースとして、中期計画の中で大学の目標計画に位置づけながら、予算の裏付けがあるものとして認可する。裏側で言えば、運営費交付金では、特定運営費交付金のプロジェクトベースの中でそれを手当していく。このような形のものとして、大学側の戦略と、その中における様々な全国共同利用、その他も含めた研究センター等をプロジェクト事業としてとらえていくという形で、内部組織の自己決定と折り合いを付けつつ、運営費交付金の関与も可能にする仕組みにしようということを考えている。

  なぜ省令に書くかというのは、もちろん大学の意向というのを当然踏まえるとは思うが、文部科学省の意思としてこの組織というのは少なくともスタンディング(継続的)に必要であるものを省令という形で登録するということだと思われる。それを裏返して言えば、現にある諸々の多くの研究組織のどの部分をどういう理由でそういう必要のあるものとして登録すべきかという、そこが考え方の整理、特別委員会での議論の整理によるのだろう思われる。
  それから、4番目の中期計画というのは、私はどうも「大規模な教育研究施設については」というところがひっかかる。各大学のストラテジー(戦略)として、むしろ大規模というよりは、大学にとって重要なという視点があり、規模にこだわるのには違和感がある。
  なお、基本には財源措置をどうするかということがあって、その財源措置の経費というのは、1つは、研究に従事する人の人件費をどういう理屈で確保するかというのがおそらく非常に重要な点なので、人件費とランニングコスト(運営費)とインフラというものについて、様々なレベルでの研究についてどう考えるかというシステム設計をぜひご検討いただければありがたいと思っている。

  国立大学という大きなフレームワークが、議論の上では重要なことだとは思うが、例えば競争的資金などを取る場合に私学などのいろいろな人々とも競争していて、私学でもすごく良い研究をやっているところがある。これは議論というよりも事務局の側でご準備いただきたいのだが、私学の側の研究所組織の問題とか、この前決定された21世紀COEプログラムとかといったことも考慮に入れて国レベルという位置付けをすべきだと思う。つまり、文部科学省の中で国レベルではなくて、日本国にとっての学術研究として考えるべきではないだろうか。それが本当の国レベルでの、今後の日本国の科学研究のあり方を考えることにつながると考えるので、そういう資料をよろしくお願いする。

  今までのお話を伺っていて、大学の独立行政法人化という大きな方向の中で、この附置研究所をどう持っていくかという、やや全体の話がどうしても受け身的な、対応型の議論にならざるを得ないのかなということも感じるのだが、一方で、やはりこれまで附置研究所、あるいは共同利用の研究所、センターを運営してこられて、いろいろ問題があって、そういう問題をこの機会に前向きにとらえる、そういうチャンスととらえて、少しいろいろな検討をやっていただけたら、実際の現場でやっておられる先生方にもアプリシエート(評価)されるのではないかという印象を最初に持ったので申しておく。

  研究所と研究施設の議論をしていくときに、従来の研究センターの多分ほとんどがそうだと思うのだが、いわゆる時限という扱いになっている。10年時限でできているセンターが多いかと思う。これは従来の公務員制度の中で、定員制度の運用の中で位置づけられてきた制度だと思うのだが、法人化後、時限という考え方が一体どういうことになっていくのかということによって、今後の組織の形成の仕方が変わってくるのではないかと思うので、その辺についても何か検討していただければと思う。

  時限というのは、もちろん定員制度を前提にしており、10年を契機に様々な在り方が見直されて、そのセンターが別のセンターに衣替えしたり、あるいは大学院等に吸収されたりという様々な例がある。今後は定員というものが理屈の上ではなくなるということになるので、おそらくそれに変わるものと考えられるのは、中期計画ごとの計画の認可であって、中期計画で認可された場合は6年という期間となる。この6年の期間はある意味では安定、継続するということで一定の保障になると思われるが、それを超えた部分で、今度は大学の戦略等に応じて、例えば、そのセンターをやめて別のものにするとか、財源のやり繰り等をするというような形で、6年ごとの見直しということが大学の自主性の中で起こってくるということは考えられると思う。

  現行の時限施設についての例だが、資料2の「国立大学附置研究所等の概要」というところの14ページに、研究センターの事例が載っているが、この中でも、一番上の先端科学技術研究センターには時限を付けていない。その次の発生医学研究センターについては時限が付いている。現在の時限についての基本的な考え方としては、例えば、地震や火山の観測をするといったような、経常的にデータを取っていかなければならないようなものについては、当然時限は付さない。あるいは、非常に大きな装置を動かしているセンターがある。例えば、広島に放射線のセンターとか幾つかあるのだが、そういうものについて全国共同に供しているもの、こういうものも基本的には時限を付さない。あるいは、古来からの資料をたくさん所有していて、それが全国的に安定的に確保していかなければいけないといったものについても時限は付していない。
  ただ、原則的には、いろいろな先端的な研究をやっている場合、一定期間に一定の成果を挙げるということで期待されるものについては時限を付けるということで処置しており、そういう意味では、種々雑多というのが状況である。

  時限のついている研究組織と時限のついていない研究組織というのは、既往のものまでさかのぼると、必ずしもそれほど合理的にできているわけでは多分ないので、その意味では、今度法人化への移行に際しては、基本的には、全部の組織が6年ごとに見直されるという意味では一種の時限付きだと言えないこともないのだから、時限が付いているか付いていないかということにあまりこだわらないで、ご検討いただければいいのではないか。

  先ほどの説明に若干補足させていただくと、特定運営費交付金でプロジェクトベースなものとしてセンターを考えるときには、それを構成するもの、そこに人がいて、そこに研究経費、基盤経費が付き、特殊装置が付き、その特殊装置の運転経費が付くということがある。そういうもの全体をプロジェクトベースとしてとらえていこうということである。
  逆に言えば、それをどのような形で組織としてとらえていくかは、大学の判断ということであって、したがって、例えば、そこにおけるプロジェクトを見た場合に、どのような計画でどのように続いていくものなのかにより、1つの組織の評価としての時限という大学内部の問題となる。一方では、国レベルで見る限りにおいては、プロジェクトが中期計画期間内のもので完結するものであるのかないのか、中期計画内でいわばどの程度の成果を見込むのか見込まないのか、また、それはだれがどういう形で評価するのかという問題が起きてくる、こういうことだろうと思っている。

  若干気になるところを申し上げさせていただくと、中期計画に記載するのはプロジェクトとしてとらえるんだというのは、やはり現時点では誤解を招くおそれが非常にある。つまり、これまではプロジェクトというのは、1つの研究課題の遂行ということであるが、教育研究施設というのは組織性を持つから、一定の分野なり領域についての研究組織の設置ということになる。それは当然人員もあるし施設もあるしということで、例えば、フランスのCNRS(フランス国立科学研究センター)が大学に研究施設を時限つきで設置するというようなこともプロジェクトというのであればよろしいのだが、そこは従来のプロジェクトという言葉の使い方からはみ出す部分が大きいので、ご認識をいただければありがたいと思う。

  これからの議論の進め方についての質問なのだが、資料5にこの委員会での検討事項というのがまとめてあるが、例えば、大学の附置研ということに絞っても非常に多様なものである。設立の目的が総合的な大きなフィールドを抱え込むものから、特殊な特化したものもあるし、実際にそれが設立のときと内容は随分変わっているものもあるわけである。その中で、分析、経過、現状というのは比較的簡単だと思うのだが、今後の附置研究所の在り方というところを考えるときに、一般的な原則というか、   全体に摘要できるような事柄ということも議論されるべきなのだろうが、そのときに、このように非常に多様なものの中では、具体的な例を頭の中で思い浮かべながら議論しないと、私にとっては非常に考えにくいのだが。
  最後の3のところに「法人化後の附置研究所の要件及びこれに基づいた見直しと選定」とあるのは、これはかなり具体的な事柄についても検討するということなのであろうか。

  最後のご質問はまさにそういうことであって、それを目的にしたいと考えている。今回は、個々の研究所についてのデータなり情報というのはあまり出していないが、第2回以降、それを少し出していきたいと思う。一様でないとおっしゃるのはまさにそのとおりであって、具体例をある程度インプットしていただいた中で、要件なりを議論していただくという手はずでいきたいと思う。

  研究所等の組織の評価、今後の在り方を考えるときに、少し極端な1つの例を出すのだが、研究をするということは未知のことを研究するわけである。だから、中期計画、中期目標みたいなものを考えても、それはその通りに動くとは限らない。開発研究みたいなものは、これだけのものを開発すると言ってプロジェクトを立てる以上、そのとおりやってもらわないと困るのだが、アカデミックな研究というのは、素粒子理論の実験分野を考えてみると、一国でもできないような大装置を作り、その設立趣旨書などを見ると具体的にこういうことを明らかにすると言って始めるのだが、おおむねその通りに成果を挙げたためしがないのである。しかし、それは全く違うことであっても、必ず成果は挙げている。だから、この研究所はこういう目標を掲げて設立されたがということや、中期計画に挙げたが必ずしもこのとおりの成果を挙げていないということも、近い学問分野ではそれなりに着実にやっていると言うことができる。まだ具体的には成果は挙げていないが、個別的に見ればよくやっているという評価はできる。
  しかし、ここで議論するとなると、そういうかなり専門的な視点からの分析がないとなかなかできないと思うのだが、そのような種類の資料というのは、ある程度出していただけるのか。

  今ご指摘いただいた点については、様々な今後の附置研等の在り方の議論の中から調査のご指示をいただいて、それをデータとして取り寄せたいと考えている。だから、専門的な、言ってみれば研究のレベルをできるだけ明らかにできるような、そういうデータを収集するということに努めて、そのデータをもとにして、来年からになると思うが、個別の研究所についてのご審議をしていただきたいと考えているところである。

  私どもは、わりあい附置研の中でも大規模な附置研とつき合いが深いのだが、非常に心配しているのは、今回の法人化に当たって、大学の先生方、特に学長の方々が集まられてご議論されている中で、なかなかこの附置研の問題について注目がいかないというところがあって、そのためここでいろいろ議論して、大学に対してもこういうふうにしてほしいということをたくさん言うと思う。それに対して、大学は、ここで決まったことに対してきちっと対応してもらえるということになるのかどうかということを非常に心配している。高等教育局の方で、その点についてもし何かお考えがあったらお聞きしたい。

  いろいろご意見を伺って、今後、どういうご意見がご議論されるのかよくわからないというところもあるが、基本的に踏まえながらきちんと対応をさせていただきたいと思っている。

  私は、この国立大学附置研究所等特別委員会というのができた経緯というのを知らないのだが、ただ、法人化に伴って大学の附置研の存在意義、それから、存続の問題、財政的な問題というのが非常に危ういということの危機感は感じていた。だから、そういうときにこういう委員会を立てていただいたということは、附置研についてその大学個々で考えてくれということではなくて、附置研の存在意義ということを国レベルで認めていただいていると思った。
  それで、積極的な良い方向に附置研をうまく活用する、良いところは伸ばすような議論が行われるのだろうと期待するが、1つ疑問は、先ほどから出ている中期目標という話がある。中期目標というのは、独法化に伴って各個々の大学でつくるようにということで、私の大学でも各部局にその部分を出せということになっている。それを統合して大学がまとめるという形なのだが、非常に附置研究所が書きやすくはなっていない。教育ベースでどういうことをやってきたかとか、どういう教育とか実習とかを行ってきたかということ、あるいは、まず定員というのは変えないので考えろとか、あまり夢のないことで、とても書くのが大変だったわけである。研究所には研究所のやってきた意義というのがあり、今まで、大学の中でも学際的な領域とか新しいことをやるとかということを考えて設置されてきた経緯があって、その役割を果たしてきたものである。だが、このような中期目標の書き方の中では、そのようなことが極めて書きにくくなっている。中期目標について、財源措置等の在り方にも触れるのかもしれないが、他の書き方でも書けるというようなことをこの委員会で討議するのかどうかということも含めて考えていただけたらと思う。

  今おっしゃったのは、おそらく学内で中期目標、計画の案を作成する、そのための準備のためのさまざまな作業の一環であろうかと思う。その点については、文部科学省の方でも目標、計画のいわばモデル的な書き方についてのガイドラインというか、そういったものを検討している最中であって、書きにくいとおっしゃったのは、決してそれで決まったというような作業ではない。
  そういったことについて、我々は担当の課として、やはり書きにくいと言われないようなものをガイドラインで示していけるように努力をしたいと考えているところであって、決して今お書きになったものというのが、中期目標、計画案にそのまま直結するということではない。

  資料4が学術分科会で議論された内容であるが、先ほど来ずっと議論、意見が出ているように、附置研究所などの役割というものをもう一度きちんと明確にしていただいて、その上で、ではどういう意義を付くけるかというようなことを、ここではっきりしていただきたいというのが1つである。今まで、どちらかというと、大学ということに対して盛んに議論されてきたが、大学の中における研究所の役割と位置づけ、それらをはっきりさせていただきたい。
  それからもう一つは、資料4の2番目に書いてあることだが、財政措置に関してどのようになるのかということについて、一方で、大学の学長が自由に裁量でやりたいというのが今回の非常に大きな趣旨なのだが、他方、ナショナルレベルで考えるとそれを超えたものがあって、その役割というもの、それから、その役割に見合ったファンディングの仕組みをここではっきりしていただいて、研究所等が担っている役割がきちんと果たせるようにご検討いただきたい。

  私自身は、研究科という研究所ではないところに属しているのだが、それで懸念するのは、大学が法人化した際、完全に学長のリーダーシップでやるということである。また、共同利用研が大学の中でどういうように評価されているかということもわからないが、研究科、学部にあるいろいろな研究を支援する組織について、評価もなかなか難しいところを、これからどういうふうに文部科学省としてはやってもらえるのかということがわかない。それから、非常に特化したセンター、小さいセンターがあると思うのだが、それでとかく大学の評価と学問的な評価が違った場合にはどうなるのかという懸念もあるので、ぜひそういうこともディスカッションしていただきたいと思っている。

  中村(慶)先生の方からご報告があった連携の件なのだが、文科系のいわゆる連携と理科系の連携では、お金の問題からして随分違うと思う。文科系の場合、例えば共同研究会を年間に五、六回やる程度で、それもほとんどやってない共同利用研もある。理科系の研究でいった場合、お金なども非常にかかるので、言葉の上でも連携ということが意味するものを具体的にイメージしないと、連携といったことが難しくなる。今度、大学共同利用機関でできる人間文化研究機構ではどういう連携をするのかというのを私たちはもう考えているが、ゲリラ的にやるしかないだろうと考えている。つまり、何かトップダウンで決まるようなことじゃもう遅い。本当に実質的な連携をやるという認識と行動力、実践力プラスお金がないとだめだと思うので、そういう連携ということについての議論を、本当に連携できるのかということを踏まえてよろしくお願いしたいと思う。

  行政改革の一環で、大学が独立法人化したとき、研究機関、研究所とか研究施設をどうするかということで一番重要なことは、現在ある、数の非常に多いそれらが、本当にきちんと目的に沿って動いているかということが本当は大事なことで、私は大きくここで見直すべき時期に来ていると思っている。その評価は、第7回以降の来年になるのだろうと思うが、その前に一番心配なのは、心配というか我々の興味があるのは、財政的にどういうふうに研究機関がうまく動くようにしてもらえるのかということが一番重要なところだと思うのだが、これは国のほうの話で、ここでこうしてくれと言ってもなかなかそうはいかないのだと思う。
  研究したり、あるいは連携したり、共同研究をやる場合に、どうしてもそういう資金が要るというときに、どういうソースがあるのだろうかという問題、皆さん心配しているのは、そこら辺が一番多いのではないか。

  財源措置等のあり方も、ここで当然ながら議論していただくということになるので、私ども研究振興局としては、いずれにしても日本全体の研究能力を高めるために、法人化後においても、大学の附置研等がしっかりその役割と機能を果たしていただくというそういう観点から、この場でしっかりご議論いただきたい。まとめられたものについては、高等教育局ともしっかり話をして、できるだけ実現するように我が局としては頑張りたい。


6. 閉  会  
  事務局より、第2回は10月22日(火)10:00〜12:00、文部科学省別館の11階の大会議室で開催する旨連絡があり、閉会となった。


(研究振興局学術機関課)

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