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科学技術・学術審議会学術分科会

2002/05/29議事録
科学技術・学術審議会学術分科会(第6回)議事録

科学技術・学術審議会/学術分科会
大学共同利用機関特別委員会(第6回)議事録

1. 日  時:平成14年5月29日(水)15:00〜17:00
   
2. 場  所:ダイヤモンドホテル「エメラルド」
   
3. 出席者:
  (委    員) 小平主査、大ア委員、末松委員
  (専門委員) 阿部委員、石毛委員、井口委員、海部委員、笠見委員、川合委員、北川委員、北原委員、黒田委員、笹月委員、佐藤委員、菅原委員、福山委員、堀田委員、山西委員
  (科学官) 井上科学官、勝木科学官、本島科学官
  (事務局) 遠藤研究振興局長、坂田研究振興局担当審議官、泉振興企画課長、明野情報課長、吉川学術機関課長、西阪学術研究助成課長、川上基礎基盤研究課長、田中ライフサイエンス課長、藤木開発企画課長、吉田海洋地球課長、その他関係官
   
4. 開会
  事務局より配布資料の確認、席上配布された共同利用所長懇談会から国立大学協会にあてた要望書についての説明があり、主査より議事録案についての説明が行われた。

5. 議事1
  事務局より、資料3「大学共同利用機関における検討課題」、資料4「各検討課題ごとの委員の意見等」、資料5「独立行政法人通則法上の制度との関係の整理」、資料6「大学共同利用機関と附置研究所の比較について」の説明があった。
  また、主査から、本島科学官より提出された資料7「大学共同利用機関の業績について」について説明を求める旨の提案があった。
(以下、質疑応答等において、○は委員、臨時委員、専門委員、科学官、△は事務局の発言を示す。)
   
  本島科学官説明―資料7関係
  まず最初の1のところは、創設の精神に関わることである。昭和46年に高エネルギー物理学研究所を第1号として発足した共同利用機関は、昭和44年8月の学術審議会の答申に示されているように「大学における研究と同様の基礎科学の研究を行い、かつ、国立大学の教員その他の者で、この研究所の目的である研究と同一の研究に従事する者に利用させるものとして設置するものとし、文部省直轄の国立研究所とする。なお、この研究所は大学院の学生の教育に協力するものとする」という精神を持ち、これが現在まで引き継がれている。
  2はその後の経緯である。その後、種々の学術分野の要請に基づき、15機関・18研究所まで拡充されてきているわけであるが、これは我が国の学術研究に対するコミュニティーの高い学術的見識による要請が、国策に反映された結果であると言える。大学共同利用機関の受け持つ分野は、このように多岐にわたるわけであるが、各々の分野で必要な評価に基づいて国策として推進されたこと自体、大学共同利用機関というものが評価を得ているということを示している。昭和59年の学術審議会の答申において「共同利用機関が必要かつ有効と考えられるにもかかわらず、未設置である分野については、今後研究動向等を勘案しつつ、附置研究所、所轄研究所等の転換も含め計画的にその整備を図る必要がある」と非常に積極的な方針が打ち出されていることが、その間の事情を典型的に示している。ここには、我が国独自の学術研究の発展を実現するとの趣旨が込められ、その方針によって今日に至っている。
  この流れに沿って発展してきた大学共同利用機関であるが、研究手法と制度的な面の改革が、大学や国研などに先行して進められた部分が随分ある。手元の「学術研究評価の現状」という冊子に研究手法及び評価の方法が具体的にまとめられている。各研究所の研究分野、組織規模、共同研究の実施実績は書かれてあるとおりであるが、限られた予算の中で多くの共同研究者が研究所との共同利用研究を進め、コミュニティーの学術研究拠点としての機能を果たしてきたということがわかる。この特別委員会でも、15機関・18研究所を代表して、国立天文台、岡崎機構、高エネ機構、民族学博物館から報告がなされているが、国際的にも評価されている高い学術レベルを有していることが確認できる報告であった。
  3は、制度的な側面である。教授会制度を排し、所長の権限を強化し、外部の有識者による評議員会、コミュニティーから選出される運営協議員会が設置されている。所長の選考、共同研究の推進、人事等必要な施策が効率的に実施されているわけである。そこに加えて、管理部、技術部などの組織を有して共同研究を推進してきている。重要な点は、大学等に先行して必要な行政上の改革を実行してきた、できたということである。この点も評価に値するところである。また国際協力の窓口としての役割も果たしてきている。
  4はコミュニティーとの関係についてである。もちろん大学共同利用機関は、コミュニティーの求めに応じて、共同研究による研究機会を可能な限り提供してきているわけであるが、共同利用研究には、当然双方向性があり、大学共同利用機関側のアウトプットも多く得られ、学術基盤がより着実なものになってきたとも言える。別の言い方をすればボトムアップ的手法であるということが言える。
  それに加えて忘れてならないのは、大学共同利用機関がこういう共同利用研究を通してコミュニティーから厳しい評価に常にさらされてきたという点である。この評価というのは学会などでの定まり方に負うところが多いわけであるが、やはり運営協議員会などを通したコミュニティーと共同利用機関の緊張感のある関係が、研究分野の発展、それから研究の健全性を維持していく上で非常に重要であった。これがこの大学共同利用機関の研究レベルを高める上での、非常に大きな制度設計上の施策の特徴の1つであると思う。

6. 議事2
  機構再編の考え方、及び制度設計の考え方についての大学共同利用機関所長懇談会の検討状況について、資料8に基づき北川委員より説明があり、その後、質疑応答が行われた。
(以下の質疑応答について発表者の回答は◇で示す)
   
  北川委員説明―資料8関係(前半)
  大学共同利用機関の法人の形態については、去る3月26日に調査検討会議から国立大学の法人化に関する最終報告が出された。そういう状況を踏まえて、所長懇談会としても、改めて国立大学の法人像との整合性も含めて、大学共同利用機関の法人像について検討した。その結果、我が国の学術研究をより一層発展させるためには、学問的理念を共有する大学共同利用機関が既成の研究分野を越えて連合し、4つの研究機構を構成することが適当であるという結論に至った。
  まず1.の「法人化における基本的考え方と機構化」について、大学共同利用機関は、研究者の自由な発想に基づいて学術研究を推進する組織であり、共同利用、共同研究等を通して大学等の研究者と一体的に協力し、我が国の学術研究の発展と高度な国際水準の維持に重要な役割を担っている。また、その優れた研究教育環境を生かして大学院教育を分担してきた。したがって、大学共同利用機関は、その法人化にあたっても国立大学法人法の中に規定され、国立大学に準ずる形で取り扱われるべきであると考える。ここは法人化における一番基本的な事項と考えていることを書いたものである。
  次の段落に移り、大学共同利用機関は、それぞれの学術分野において、我が国を代表する中核的研究機関として国際的にも高い評価を得てきたが、現代の人間社会がさまざまな課題や困難に直面する中で、学術研究の総合化と新分野の創成が一層重要性を増している。実際、これまでの活動の過程で学問的必然性によって既に研究所間の密接な交流が生まれている。我々は、法人化にあたって単に個々の機関を法人化するのではなく、学問的理念を共有する研究機関が協力して、総合的学術研究の強力な推進と新たな学問領域の生成、あるいはパラダイムの生成を可能とするような開かれた体制を組織化することが、我が国の学術研究の発展に貢献する道であると確信している。
  これを実現するために、それぞれの研究機関の研究領域、研究の手法及び規模等を考慮して検討を重ねた結果、学問的理念を共有する研究機関が自律性を保持しながら連合して、これから紹介する4つの研究機構を構成することで一致した。なお、これらの研究機構はいずれも新たな連携機能を活用して、高度な人材育成にも当たるものとする。
  次に2.の「具体的な機構の構成と各機構の構成機関」について、これは暫定的な案であり、また、附属施設等については言及していない。
  まず、高エネルギー加速器研究機構。この機構は、国内外の主として大学における素粒子、原子核の研究者及び生命体物質を含む物質構造の研究者が、高エネルギー加速器を用いてその研究を行おうとする場合に、その機会を提供し、かつまた、そのための手段として加速器に関する開発研究を行う。また、機構内の研究者は、外部の研究者と共同で上記の分野の理論的、実験的研究を行う。世界的にもこの分野における有数の研究機関として、今後とも国際的な競争及び協力関係を維持していく。構成機関としては、素粒子原子核研究所及び物質構造科学研究所の2研究所である。
  次に、仮称であるけれども人間文化研究機構。巨大化した科学技術と人間性の調和を図ることが21世紀の世界における重要な課題である。それに応えるために、法人化を機会に5つの大学共同利用機関が旧来の学問領域の枠を越えて連合し、新しい人間科学のパラダイムを創出することにした。それは自然と文化、日本と世界を主な対象とする研究を行い、併せて文化的資料のナショナルセンター機能、博物館活動を通じた研究成果の社会還元の機能を備えた機構である。構成機関としては、国文学研究資料館、国際日本文化研究センター、総合地球環境学研究所、国立民族学博物館、国立歴史民俗博物館、以上5研究所である。
  次に、これも仮称であるが自然科学研究機構。この機構は、法人化の機会をとらえてプラズマ−核融合科学、分子科学、天文学、基礎生物学、生理学(基礎医学)等の多様な自然科学分野で先端的研究を進めている大学共同利用機関が分野を越えて連合し、広範な自然の構造、歴史、ダイナミズムと循環等の解明に総合的視野で取り組むことによって、自然科学の新たな展開に貢献しようとするものである。各構成機関は、それぞれの分野における中核拠点としての機能と役割を発展させるとともに、大学及び大学附置研究所等との共同と連携、自然探究における新たな研究領域の開発・育成等を協力して積極的に推進する。構成機関としては、国立天文台、核融合科学研究所、分子科学研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所、以上5機関である。
  4つ目が、これも仮称で複合領域研究機構。この名称に関しては、依然としていろいろ議論があり超領域、または基盤科学、あるいは情報関係の名前にしたほうがいいという議論もある。地球環境、情報社会、生命情報など21世紀の人間社会の変容にかかわる重要課題の解決には、従来の学問領域の枠にとらわれない研究への取り組みが必要となる。当機構は、それぞれの研究所の持つ特性を生かしつつ領域を越えて発展させ、地球システム、環境などの観測データや、遺伝子情報などの大量情報処理や実証的・数理的アプローチを駆使した問題解決を目指し融合研究を展開する。また、今後新たに発生する課題の解決のための研究基盤を提供する。構成機関としては、国立極地研究所、国立遺伝学研究所、統計数理研究所、国立情報学研究所、以上4機関である。
  それから一番下に書いてあるように、メディア教育開発センターに関しては、別途検討中につき、未確定という状況である。
   
  1のところの最後に、学問的理念を共有する研究機関が自律性を保持しながら連合して、以下の4研究機関を構成すると書いてあるけれども、(3)の自然科学と、(4)の複合領域について、どのような理念で研究所を分配したのかちょっと理解できないので、その点説明願いたい。
   
  (4)の複合領域については、2つの側面があると思う。1つは、情報の観点でまとめたという側面、それから領域的に複合的な領域のものをまとめたという側面である。これはどちらもある意味で、従来の縦型の科学に対し、横型のタイプの科学であると考えている。1つは、特定の領域に区別しにくいような、例えば極地研究所であると生物的なもの、天文的なもの、海洋、いろいろな研究をやっている。それから、情報や統計などは、いろいろなサイエンスに共通な方法的なものを研究したり、あるいは基盤を提供している。そういう意味で従来の縦方向の分類に対して、一つここで横方向のものを提供したと考えている。
   
  生物学、医学の関係の立場から眺めると、やはり(3)に所属している基礎生物学研とか、生理研、(4)の遺伝研とか、言葉が(4)は複合となっているが、情報、統計などが必要となる観点で見れば(3)も複合であり、理念というかそういうものがよくわからない。
   
  高エネ機構を除いて3つに再編するとの案であるが、高エネ機構以外を1つにできなかった理由をもう一度整理して教えていただきたいと思う。それから、今の質問に関して、やはり同じことになるが、縦型と横型は一緒の組織になるということは大変いいことで、分ける理由は特にないというのが素直な気持ちである。もう少し実務的に、こういう点が難しかったとか、そういう本音のところを、ぜひお聞かせいただきたい。
   
  ます、ライフサイエンス関係のご質問については、例えば、ライフサイエンス関係の研究所3つを全部まとめるという考え方もある。ただしここで分けた1つの理由としては、ライフサイエンスの中でも情報という観点と、物質的な観点と2つの面からとらえたいということである。そこを小さくまとめるよりも、将来、大学の附置研等との関係を見ていく場合に、できるだけ広くカバーできるようなものがいいと考え、また同じ分野であっても違う観点からやっていくほうが将来の発展性があるのではないかと考えた。それはライフサイエンスにとっても、ほかの研究機関にとっても、そういうつながりがあるほうが将来の発展の契機になり得ると考えた。
  1つにできなかった一つの理由として、やはり高エネ機構が入っていないときに、残りで1つになった機構の理念が一体何であるのか、これは我々にとってなかなか説明しづらいものであり、高エネ機構を含めて1つにまとまることができないという状況であれば、むしろある程度学問のスタイル、学問の方向、そういうものが共有できる部分で集まって、実際的に将来の発展が見込まれる形でまとまるほうがよいと考えた。1つになって学術全体に貢献するという部分は、別途考えることもでき得るわけであるから、この機構化にあたっては、そういう学問的性格、理念、規模、その辺を考えて4つに分けたということである。
   
主査より、他の大学共同利用機関の長である委員等からも回答を求める旨の提案があった。(その回答も、以下◇で示す)
   
  高エネ機構以外で1つになれなかった理由は、1つは理念の問題で、高エネ機構を除いた全体の理念をどのように立てるかというところがなかなか難しかったということと、もう一つプラクティカルな理由として、国立大学法人の1つになるためには、そういう大きな集合を進めていくことは難しいのではないかという判断があったことが実際には大きな理由であったと思う。
  それから特に(3)の自然科学、(4)の複合領域がわかりにくいということについて、ライフサイエンスを1つにまとめる、例えば3研究所で1つの機構をつくることも一度は考えたが、最終的に現在考えているのは、ライフサイエンスは、生命から情報の方向と、生命から分子・構造というような方向と、その2つの未来方向に大きく展開するのではないかということである。そういう立場に立って、2つの機構に分けるのがよいのではないかと考えた。
  現在、この(3)(4)には、私の考えている構想の一部は含まれており、例えば(4)では、遺伝研と統数研、情報研というように、生命から情報という方向はきれいに貫徹していると思う。国立極地研をここに入れることについて、その考えが貫徹できるかということは、もう少し広げて考えないといけないと思うが、しかし極地研にはもちろん生命の研究者が何人もいるし、また、極地の観測上の様々な問題が、今後の我々の研究の幅を広げる可能性が十分にあると考えて、この(4)の形に賛成をしているわけである。一方、生命から分子という方向は、いわば現在の岡崎機構がそういう形を現実的にとっているわけであり、それが(3)の中で機能していると考えられる。ライフサイエンスが2つに分かれているのではないかという批判はあると思うけれども、むしろそれは積極的な意味で分かれていると理解をいただければと思う。
   
  (2)の人間文化については、まず皆さんが一番意外に思われるのは、文系の機構に理系と考えられる総合地球環境学研究所がなぜ入っているのかということである思う。
  実は、この地球環境学研究所は、環境省系の研究所などが大変理学的な手法で環境をとらえているのに対し、人間を主体とした環境、人間にとっての環境というものを考えて環境の研究をするという理念で設立されているので、本質的には、この地球環境学研究所も自然と文化に関する研究をやっているところだという性格が大変強い。例えば、文系である国立民族学博物館と協定を結び、民族学者がこの研究チームに入るということもある。そういう意味で、こういった環境についての研究は、実は文系の研究にとって大変大事なことである。文化というものは、すべて素材を環境から得ており、そしてまた、環境のあり方が文化を規定し、逆に文化が環境を変えていく、そういった性質のものである。したがって、ほかの文系の機関との間でも様々な新しい領域を開拓する研究が可能である。例えば、歴史学と環境の関係では、かつて環境決定論というものがあり、今はもうはやらなくなった学問であるが、そういった歴史と環境の関わりから新しい歴史学の展開が生まれている。例えば民博でも、あるいは国際日本文化研究センターなども、そういった自然環境の研究をやっている。一緒になることによって新しい歴史学もつくれる。あるいは新しい問題解決型の民族学というのも育まれていく。そういった可能性もあるということ、つまり文系だけでまとまらないことで新しい領域をつくることにつながるのではないかということが、文系と理系が一緒になった機構をつくったことの説明である。
   
  資料8の最後のページに、3の(2)に、法人を統括する機構本部の機能及び組織のあり方というのが課題として書いてあり、これは研究所を統括する機構ではなく、この4つの機構をさらに統括する機構本部というものを考えているのか。そうだとすればそれはどういうものを考えているのか。同時に、同じページの3の(5)には大学共同利用機関法人相互や附置研との連携の仕組み、横断的組織の設置ということが書いてある。こういったものをかなり実体的なものとしてつくるということを視野に置いての提言であれば、どのように分割するかは、便宜的な議論のような気もする。つまり、4つに割ること自体についても、今非常に説得性のある説明があったといえ、反論しようと思えばいくらでもできることもまた事実である。そういう意味で、どう分割しても問題が出るということを前提としても、これを世間にさらしたときに、やはり人間文化研究機構の中の総合地球環境学研究所、複合領域研究機構の中の遺伝研については、やや違和感を覚えることは否定できない感じがする。
   
  研究者コミュニティーの一員という立場で述べれば、私は個体物理と分子科学と両方にまたがるようなコミュニティーの一員だと思っているが、この4つに切られた形を見ると、私は一体どこのコミュニティーだと声を上げられる立場なんだろうかと思う。色々な事情から高エネ機構は別になるということが最初に境界条件として与えられていたとすればそれは致し方ないことかもしれないが、高エネ機構の中にある物質構造科学研や、(3)の自然科学の中にある分子科学研究所などに我々のコミュニティーが分断されている。また、これから大学附置の共同利用研がどういう扱いになっていくのかわからないが、つまり、東大の物性研のような大きいところが大学の中に入ったままで済むのか、将来的にそういうものも共同利用機関の一員として考えるのかというところもかかわってくるが、そういった事態まで考え合わせると、筋が通っているようでよくわからないというのが本音である。
  そうすると4つの機構の全体を考えるシステムの存在が大変大きくなり、科学者コミュニティーがリーダーシップを取って運営できるようなシステムをつくってもらえるならば、現状でとりうる切り口で幾つかの法人に分けることに関しては致し方ないという気がする。しかし、やはり法人化するという大きな機構改革であるので、この形で2,3年でころころ変わるようではあまり意味がない。長期的に10年、20年を考えて、なお暫定的な形にする必然性があるとすれば、それは暫定的な形であるということをあらかじめ認識した上で大学の法人化その他全部が終わったときに、トータルとしてこのシステムでいいのかどうかをもう一度きちんと見直すべきではないかと思う。
   
  今の問題意識は、大学の附置研究所としても共有しているところである。大学共同利用機関の十数機関の組み合わせをどうするかは、当事者間で大変大事なことだと思うが、大局的に見たときにもっと大事なことは、そういう機関の組分けの背後にある国全体の学術研究体制をどう考えるかということである。
   
  我々大学共同利用機関は、それぞれのコミュニティーを背負っている。例えば、国立天文台だと日本の天文学をいわば負っていかなければならない立場で物事を考えている。同様に他の研究所も、それぞれの分野のコミュニティー、あるいはさまざまな歴史と手法を背負って考えており、全体として分野を越えた大きな1つの学術法人をつくり日本の学術を積極的に進めたいという希望は、実はみんなが共有している。そのことは何度も確認しながら我々は議論してきたが、実際問題として、現在議論されている独立行政法人・国立大学法人という枠の中に何もかも今の時点で納めきるということが、結局できなかったということである。
  しかしながら、私たちは、将来に向けて目指した方向を何とか実現するステップに進みたいということでその後も議論を重ね、できるだけ大くくりの形にすることで、将来の発展性や、あるいは様々な他の研究所との連携を図りやすくすることを考えた。また、色々な意味での発言を広い立場でできるようにしたいということで種々議論を重ねた。その結果がこれである。
  それぞれの研究所のいろいろな事情があるのは確かであるが、高エネ機構は少し別としても、仮に文系と理系、あるいは自然系という分け方にすると、どうしても、それではおさまらない部分が幾つも出てくる。これは現在の学問的動向の中では、文系・理系ということでは、もう話が進まないというか、むしろ積極的にその枠を越えていかねばならない部分がたくさんあるわけで、その典型は例えば、地球環境研や情報学研究所であり、この辺は自然系、文系ということではどうしてもおさまらない部分がある。そのことがもっと大きなくくりであるこの4つに落ち着いた最大の理由であると私は理解しているし、こういう状況の中では、これが最善のやり方であると思う。ただ、指摘があるように、どうしても少数の研究所については難しいグレーなところが残る。
  しかし、将来は、やはり学術としての大連合を目指したいという希望は依然持っている。このことは所長懇談会としても確認してきているところであり、その気持ちは特に資料8の3の(5)のところにあらわれている。
  3の(4)は資金の問題で、これは我々の死活問題であり、大学の附置研も非常な危機感を持っているので、共通した問題として議論願いたい。特に我々大学共同利用機関の場合は、国立学校特別会計で今までやらせてもらっているが、それがなくなる。なくなった後、どんな資金が確保されるのかということは、私たちはまだ何も聞いていない。これは非常に不安である。どのような形で、どのような流れで、あるいはどのような審査評価を経て様々な基礎研究のための資金が確保できるのかと。これは死活問題であるので、ぜひ議論してもらいたい。大学の附置研究所が、今後法人化する大学の中でどのように活動を展開していけるのかということについては、今非常に議論をしており、そういうところと大学共同利用機関は、今までも不可分で協力しているから、今後いわば仲間として色々やっていく必要がある。議論の際には、ぜひ私どもで考えていること、あるいは附置研のほうで考えていることも出して議論したい。大学共同利用機関が仮に4つの機構に分かれるとしても、それがバラバラになるのではなくて、その4つに共通した課題、あるいは大学附置研、あるいは大学の研究にも共通した課題をも積極的に扱う強力な組織をつくってもらえないかということが私たちの願いである。常設かつある程度の事務的能力もあり、研究者も入っていけるようなものをぜひ考えてもらいたい。日本の基礎科学を進めていく政策的な機構が、欧米諸国に比べると、やはり日本の場合未整備であり、そういうものを一度につくるのは不可能としても、このチャンスに一歩でも二歩でも進めたい。そのために、大学共同利用機関がまずは一体となったような組織を、何らかの形で考えてもらえないかということが、この3の(5)の趣旨である。
   
  このような4つの形があり得るというのは基本的には理解ができるが、やはり本質論を抜きにして再編するのはよくないと思う。研究機構としてのミッションがしっかりしていないとだめだと思うし、特に中に幾つかの研究所が、今までどおりの研究所としてあるのなら、再編する意味が何もないわけだから、どういう融合を果たしていくのか、それが社会から求められている技術領域なのかという点をしっかりさせる必要がある。そのくくりに属する研究所がどういう融合を図り、世界的に見た競争力を果たしていけるか。長い目で見て、社会に貢献できるか。そういうことをしっかりベースとして入れないと困ると思う。研究機構としてのミッション(使命)と融合して、どういうことができるのかという点について、もう少しきちんと詰めていただきたい。
  それからもう一つは、全体をくくる組織が何のために必要なのか、私はよくわからない。それぞれの研究機構が、それぞれにすばらしい成果を出してもらえればいいし、いい研究者がそこで育ってくればいいと思う。資金をどう配るかということは非常に問題であるが、大くくりにした組織が資金を一括して、また分けるということは、その内部者で内部に分けることにすぎないから、もう少し外部評価をきちんとして、それによって研究資金が各機構に行くようなシステムを考えるべきだと思う。
  さらにもう一つの視点は、資料7の1で説明されたように1つの共同利用研究所のコミュニティーという意味は、色々なところに属している研究者が、ミッションに応じて集まるということだろうから、例えば、こういう4つにくくったときに、そこにいる研究者の何人がプロパーで、何人がその周りから兼任なり何なりで集まって来てるような状況になっているのかというのも非常に大きなファクターだと思う。
  もう一つは、やはり教育だと思う。大学院の学生を教育するということは非常に大きな設立のミッションになっているわけであり、そういう中で、普通の大学の大学院生をどのぐらい今教育しているのか。総合研究大学院大学は少々違うので両方数値を分けていただきたいと思うが、そういうこともしっかりやっていただきたいと思う。
   
  生物学を情報と構造というふうに分けなければいけないその必然性は、依然としてよく理解できない。情報と構造を持った生物学というのは1つのくくりにするほうがずっと理解しやすいし、あるいは実際に成果を上げるという意味でも意味があることだと思う。(3)(4)を構造と情報の生物学とくくったときに、残りのものが1つのくくりとして意味があるのかどうか、専門外なのでコメントできないけれども、少なくとも生物グループにしてみれば、生物を構造と情報と2つに分けずにそれを1つにくくることが、将来に垣根を残さないくくり方ではないかと思う。
   
  これからの生物学には、情報もあり、物質もありというのは当然のことであるが、私たちの理解は、むしろ大学共同利用機関の中で、生物学あるいは基礎医学というものを大きく発展させるためには、共通のところよりは、今から将来に発展させる部分に分けて考えたほうが、はるかにポジティブなくくり方ではないかと考えた。当然、専門家は両方にまたがることはよくわかっているわけだが、そこに新しいコミュニティーをつくっていくということになると、2つ一緒のところに集まっているよりは、別のそれぞれの勢いで発展するほうが、はるかに我々の学問の今の方向に合致するのではないかと考えた。
  また、ライフサイエンスということで一括され、生き物を扱っているから同じように見える分野も、学問として非常に広い、多様性に富む学問領域であり、今の3つの研究所ではとてもライフサイエンスの領域をカバーすることはできない。そういった視野から眺めてみると、共通のところを見るよりは、むしろポテンシャル的に今から発展させていかなくてはいけない方向を見て別々の法人に積極的に分けたということである。分けることに非常に意味があると考えて行ってきたものである。
   
  分けるときに大学共同利用機関だけで自足的に分けるのではなくて、大学の附置研なり研究センターなりの参加・連携を視野に置いて、どう分けるかを検討することが、より学問の発展に結びつくという観点にとっては、重要である。
   
  北川委員説明―資料8関係(後半)
  3.の(1)、これは大学共同利用機関の法人化は、国立大学法人法のもとで規定されることが必要であるということであり、これが基本である。
  (2)は、そうはいっても大学共同利用機関には、国立大学とは違う部分がある。その特殊性から国立大学法人法の中、あるいはそれに準じて規定する場合にも制度設計においてその違いを十分考慮してもらう必要がある。(ア)は、広く大学等研究機関の研究者コミュニティーに開かれた運営を確保するための制度設計が必要である。特に役員及び役員会、運営協議会、評議会等の構成と役割及び法人の長の選出方法の部分についてである。これに関連して図1がある。上半分は、国立大学法人法で考えられている国立大学法人の運営組織である。中心に役員会があって、左右に運営協議会、評議会というものがある。それに対して下半分が大学共同利用機関法人を考えた場合の組織である。基本的には国立大学法人法に準じて規定する必要があるので、本質的に違う形にはできず、なるべくそれに近づけたものが必要になるが、大学共同利用機関の場合は、右側の評議会の部分が特に問題になる。大学では教学と書かれているものが研究になるわけであるが、それ以上に大事な点は、大学の評議会が、学内の代表者だけで構成されるのに対して、これまでの大学共同利用機関がコミュニティーの意向のもとに運営されていることを反映させる必要から、評議会の中にも、研究に関する機構外の有識者を入れて、その意見を反映する必要がある。そこを法律の中で何とか工夫してもらう必要がある。
  (イ)の部分について。機構を構成する個々の研究機関の設立の趣旨、学問分野の特性、サイズ、予算規模等の多様性を踏まえて、機構を構成する各研究所の名称及びその業務を法令上に記載することを前提として、自主性と自律的運営が確保されるような法人設計が必要である。特に研究所長の選出、及び各研究所の予算・人事における自主性を確保する運営方式が必要である。
  それぞれの研究所は、これまで独自の理念あるいは歴史を持って発展してきており、その活動を損なうような形になってはいけない。その自主性、自律性を確保しながら、同時に全体の機構としては、より発展できるような形を工夫する。このことに関して図2がある。ここに我々が考えている2つの案があるが、上半分の第1案、分科会方式というものは、これは法律的に現在検討してもらっているが、評議会の中に分科会というものが構成できないかということである。それぞれの研究所に対応する分科会というものを構成できれば、法令で規定された評議会の中で各研究所の運営に関与するグループができる。そういう形で、ある程度自主性が確保できるものと考える。第2案のほうは、それが困難であった場合に、各研究所に運営会議(仮称)を設置して、そこで審議していくという形になるのではないかと考える。
  (ウ)の「法人を統括する機構本部の機能および組織の在り方」について、ここの部分に関しては、複数の法人を統括するということではなく、1つの法人の中を統括する機構という意味である。これをどういう形にするかということも具体的に検討中である。
  次に(3)、総合研究大学院大学の基盤機関として、最前線の研究現場での大学院教育を引き続き発展させる体制の確保が必要である。法人化後というのは、当然のことながら研究機構の部分と総合研究大学院大学が別の法人となるわけであるけれども、それにかかわらず、従来どおりの連係により大学院教育を行うことができるようにする必要があると考えている。

7. 議事3
  事務局より資料9「国立大学法人の制度設計について」、資料10「大学共同利用機関等における大学院教育について」の説明があった。
  また、福山委員より資料11「国立大学法人化後の学術研究体制に関する提案(II)」について説明が行われ、自由討議が行われた。
   
  福山委員説明―資料11関係
  資料11は、これから国立大学、大学共同利用機関が法人化されていく中で、附置研まで含めた、我が国の学術研究体制がどうあってほしいかという希望をまとめたものである。その際に、当然、諸外国の学術研究体制に関しても整理しており、それをまとめたものが参考資料の冊子である。
  まず、付図1について、この図は、去る3月のこの特別委員会に提出した資料を具体的にしたものである。この図のポイントは、大学等における学術研究の企画、評価、審議を行う機関として、研究審議会のようなものがまずあるべきではないだろうかということである。学術研究の推進に統一性を持たせるために、まとまった組織が必要ではないかということで、イギリスのリサーチ・カウンシルに対応するようなものをイメージしている。この研究審議会は、できれば研究を推進してきている研究振興局の下にあるのがいいのではないかと思う。この研究審議会というのは、前回の3月に、ここに提出した資料では学術戦略企画室という名前で書いたけれども、本質的に同じものである。
  この研究審議会には、事務的なヘッドを置いて、その審議の結果を踏まえて予算に関しての具体的なアクションが取れるような体制が望ましいのではないかと思う。これは学術研究の推進に行政としても責任を持っていただくということである。
  研究審議会は、日本の学術研究の中長期的なプランを練り上げ、分野別の要請の調整を行い、社会のニーズと学問の自発性、ボトムアップ的な研究のバランスを考える。これは学術の発展と社会の要請とを、よくバランスを取るという観点である。
  研究審議会には、分野別研究カウンシルを設ける。分野別研究カウンシルは、各分野の研究の推進に責任を持ち、さらに外部資金導入等の可能性も模索する。これは分野による違いを特に考慮した審議が可能になるようにということである。
  この分野別カウンシルのメンバーは、各分野から選出された任期付きの研究者であり、ここのアクションに関して責任を持つ。分野別カウンシルは、ピアーレビューに基づき、その分野の大型研究推進経費の分配、審議、評価、企画を行う。ここでは絶えず評価を含めて、予算の配分等々、学問の傾向を見ながら全体に戦略性を持たせるという視点である。
  分野別研究カウンシルの分野のイメージは、これは先ほど議論があった大学共同利用機関がどのような機構に分かれるかという問題に関係しているが、全国研究所長会議の分類に仮に従うのであれば、理工系、生物・医学、人文系の3つ及び大きな施設を有する、国際的な機関である中央研究所などがイメージとして考えられるのではないかと思う。ちなみに、全国研究所長会議の中の部会の分類は、理工、生物、人文社会の3部会である。ただし、大学共同利用機関の中には大変大きな組織があるので、それは諸外国に大体共通していることだけれども、そういう大きな組織に関しては、別途、中央研究所的な概念がいいのではないか考えられる。
  それから、大型研究を推進する経費は、必ずしも大型のものに限らず、文系などの長期的な継続的なものも含み、大学共同利用機関、附置研・センター、すべてに開かれた競争的な資金として考えるのが健全ではないかと思う。いろいろ組織的な研究が大学等の中に分布しているわけで、その間での適切な競争原理が働いた研究環境ができればという期待がある。
  最後に、大学共同利用機関法人と国立大学法人は、共同研究の遂行や研究の委託等により、強い連携を図っていく。これは前からここでも議論があったように、附置研と大学共同利用機関の間で人的資源を最大限に活用して、お互いの研究の協力、それから競争等を通じて活性化を図れればということである。
   
  資料8の(2)の(ウ)について、機構の機能というものについて結論を出さないまま、それで機構がいいという主張はやや時期尚早ではないかと思う。評議会に部会を置くことまでは難しいとは思うものの、できるだけ各研究所の研究者コミュニティーに支えられた自律的運営を確保したいという考えは当然のことであると思う。しかし、それでいて、なおかつ機構としてまとまるということであれば、境界領域なり、色々な発展がそれによって期し得るということなど、機構が具体的にどのような機能を発揮するのかとい検討が事前にあるはずであり、そうでなければ、機構がいいという結論はあり得ないと思う。これは当然もう議論があって、今回の会議に出ていないだけだと思うが、次回には聞かせていただきたい。
  それからもう一つは、この機構図について、評議会のほうは研究を担当し、運営協議会は主として経営を担当するとのことだが、その経営に関する機構外の者、機構内の者というときに、大学の共同利用の機関ということで国立大学法人法に位置づけるとの性格づけをするのであれば、その管理はやはり国立大学法人の共同管理だという性格を持つようにする必要がある。したがって、運営協議会にも、いわば国立大学法人の見解が十分反映するよう考慮される必要がある。つまり、共同設置・共同管理という考え方について、本当に研究者コミュニティーにオープンだったら、国立大学の枠にはまること自体がおかしくなるのではないかという議論もあると思うので、そのことはどこかで意識をしておいていただいたほうがいいと思う。
  それからもう一つ、(4)の運営交付金等の資金配分方式についてはどう考えるのか。独立行政法人一般の考え方としては、積上計算なのか、ルール方式なのかという2つの選択があって、先行して既に独立行政法人になった研究所は大体がルール方式である。要するに前年度もらった額をベースにして、それに一定割合、効率化係数だとか、必要経費指数だとかを乗じて、前年ベースの予算を一応保証するということである。それに対して、国立大学法人のほうは、調査検討会議の報告では、むしろルール方式をさらに精緻なものにして、標準収支差を交付するという考え方と、それから特定の積み上げというのを併用するということになっていて、しかも標準収支のほうは、現時点では学生数という指標が非常に大きなウェートを占めているというところまできている。それに対して研究所は、どういう方式が望ましいかということを、研究所サイドでむしろ積極的に提言するほうがいいのではないかと思う。
   
  機構を認めるからには機構長は法人の長であるから、やはり大きな権限を持たないとだめだと思う。共同利用が大切というなら別の形をつくればいい。
  それからもう一つは、共同利用だけでは長続きしないわけであるから、やはり常にいい研究成果をそこで出して行く必要があり、そのいい研究成果を出すためのマネジメントと共同利用との間のバランスは、非常に大きなポイントだと思うので、ぜひ機構長がやるべき権限をもう少しクリアにしてもらいたいと思う。
  それから、(2)の(ウ)は、やはりこれは誤解を招くので、法人内と書いていただく必要があると思う。

8. 閉会
  事務局より、第7回は6月14日(金)の16:00〜18:00、文部科学省別館11階大会議室で開催する旨の連絡があり閉会となった。


(研究振興局学術機関課)

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