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科学技術・学術審議会学術分科会

2002/04/05 議事録
大学共同利用機関特別委員会(第2回)議事録

科学技術・学術審議会/学術分科会
大学共同利用機関特別委員会(第2回)議事録

1.

日  時:平成14年4月5日(金)14:00〜16:00

2. 場  所:文部科学省別館(11階)大会議室

3. 出席者:
(委    員)小平主査、阿部委員、大ア委員、末松委員

(臨時委員)鳥井委員

(専門委員)
増本主査代理、石井(米)委員、石毛委員、海部委員、笠見委員、川合委員、北川委員、北原委員、黒田委員、笹月委員、佐藤委員、菅原委員、福山委員、堀田委員

(科学官)井上科学官、勝木科学官、本島科学官

(事務局)
遠藤研究振興局長、坂田研究振興局担当審議官、井上科学技術・学術政策局次長、磯田総括会計官、尾山政策課長、泉振興企画課長、明野情報課長、吉川学術機関課長、西阪学術研究助成課長、川上基礎基盤研究課長、関量子放射線研究課長、藤木開発企画課長、吉田海洋地球課長、芝田宇宙政策課長、杉野大学改革推進室長、その他関係官

4. 開  会
  主査より、今回、大学共同利用機関からのヒアリングを行う関係で、岡崎国立共同研究機構の毛利機構長に臨時に参加いただいている旨の紹介があった。
 事務局より、今回初参加の委員及び事務局の紹介があった。

5.   
  まず、事務局より、資料2(大学共同利用機関に係る国立学校特別会計予算等の流れ)、及び資料3(国立大学共同利用機関から大学共同利用機関への変更について)について説明が行われた。
  また、資料4(新しい「国立大学法人」像について」)についての事務局の説明の後、質疑応答が行われた。
  (以下、質疑応答等において、○は委員、臨時委員、専門委員及び科学官並びに臨時参加者、△は事務局の発言を示す。なお、◇は、意見発表者と委員との質疑応答において、意見発表者の発言を示す。)

   大学の部分について、グローバルな視点で競争力ある大学になって欲しいと思っているが、そのために、学長の権限が一番重要だと思う。選考委員会を設けることはいいと思うが、その他の、学長の任期、解任も含めた教授の人事権はどうなっているのか。また、もう一つ重要なのは評価委員会であり、評価委員会の構成がどうなるのか。そのあたりがまだ見えていないように思う。

   学長の任期については、この報告書では、まだ特段、はっきりした方向性は記されていない。
   教授の人事権については、現在、国立大学の教授の選考は、教育公務員特例法の中で教授会が選ぶという規定があり、この規定に従って教授の選考が行われているわけであるが、今回は非公務員型とし、また、法人化により、できるだけ法律上の縛りを外すことになっているので、法人化後にどのような手続、ルールで教授選考を行うのかについては各大学の中で議論し決めていただく形、すなわち法律上の縛りのない形となる。
   評価委員会については、この報告書でも述べられているが、経済界、言論界、その他、幅広く各界から、大学人だけではなくて、いろいろな方に加わっていただき、かつ、いわば世界的な水準でご活躍されているトップレベルの方に集まっていただいて、評価をしていただこうという提言がなされているところである。

   ただ今の事務局の説明を聞いた限りでは、国立大学法人と大学共同利用機関の制度設計について、調査検討会議の報告においては、役員以外の運営組織、運営費交付金の算出方法以外はほとんど相違がない、また、相違はなくてもよいとの説明のように思える。一方、大学共同利用機関法人という国立大学法人という類型と別の類型の法人を設計するということが明確に記載してあるので、当然、国立大学法人と大学共同利用機関とで相違点があることは想定をしていることと思う。したがって、大学共同利用機関の内部組織その他について、なぜ国立大学法人と同様の制度設計でなくてはならないのかという議論よりは、むしろ、なぜ大学共同利用機関が、他の独立行政法人通則法によっている法人と違った扱いをするかのという点、その合理的な説明を考えていく方が、より重要な気がするが、そのあたりの考え方を聞きたい。

   まず1点目の大学共同利用機関と国立大学法人の制度設計で一致していないところについてであるが、大学共同利用機関の法人について、連合体を組織するのかどうかによって若干の流動性があるとは思うが、両者の間で全く異質で超えられない壁が、それほどはっきりあるとは思っていない。役員以外の運営組織についても、構想の立て方によっては、国立大学法人と非常に似た設計にできる可能性は十分あると思うし、財務会計制度に関しても、大学の中の研究関係の組織の部分は、大学共同利用機関とかなり共通するような予算積算の方法を採ることも考えられるので、いわば質的に全く違うということにはならないと考えている。
   2点目については、大学共同利用機関と国立大学では元々機能が違うので、そういった点から、組織運営等が異なってくることも当然ありうる。しかしながら、問題は、法制的な面から、両者があまりかけ離れた制度になっていると、同一法の中で両者を規定することが難しくなるのではないかという点であるかと思う。
   大学共同利用機関は、元々大学から派生したものであるので、そういった面から、その他の独法と、国立大学法人・共同利用機関法人とははっきり違うけれども、共同利用機関と国立大学の間の相違というのは、質的に大きく違うものではないと考えている。

   「壁を超えられない」という表現があったが、どんな壁が考えられるのか。

   例えば、仮に連合体組織をつくらない形態で考えた場合、中間報告の段階では、ほぼ現行の大学共同利用機関の組織形態が、法人化後の組織形態の案であると考えられていた。これと国立大学法人の運営組織の違いが、法制的にどのように問題にされるかということかと思う。

6.   
   海部委員、毛利機構長、勝木科学官及び菅原委員より、資料5〜7に基づき、それぞれ国立天文台、岡崎国立共同研究機構、基礎生物学研究所、高エネルギー加速器研究機構についての説明があった。

(1)海部委員説明−資料5関係
   国立天文台は、東京大学に属していた東京天文台を中心に、昭和63年に文部省の所轄の緯度観測所と名古屋大学の空電研究所の一部門と合同し、改組転換・新設された機関である。したがって、大学の中の研究所との違いについても何か説明できるであろうと思っている。
   国立天文台では、天文学のすべての分野を6つの系に分けている研究系、及びハワイ観測所を含めて10ほどの研究施設を運営している。岩手県の水沢から石垣島までのタコ足組織であり、分野もたくさんある。
   (4〜15ページに基づいて、予算関係、研究成果関係の紹介。省略。)
   国立天文台では、16ページのように共同利用のシステムを作っており、先ほど申したいろいろな分野ごとに専門委員会を構成し、そこにいろいろ研究者が入っていただく形をとっている。運営協議員会は、コミュニティのメンバーが半分、評議委員会は、すべてが外部の方で構成される。各専門委員会も、半分以上は外部の先生方にお願いしている。したがって、国立天文台のオペレーションというのは、外部のコミュニティの先生方なしでは動かない。当然ながら、人事も外部の先生方と一緒に行っており、今回、国立大学法人と同じ制度設計にしなければならないとなると、せっかく外部の先生と一緒にやっている人事ができなくなるのではないか、と若干心配をしているところである。
   17ページはそのデータであり、望遠鏡の共同利用から高性能の計算機の共同利用ということが主であるが、いろいろな分野で、年間千何百名かの共同利用の研究者が利用していただいている。
   18ページは、評議員の一覧である。既に、学識経験者だけでなく、いわゆる有識者の範囲まで広げた方に参加していただいており、ジャーナリスト、あるいは民間の会社の方にもなるべく参加していただくという基本的な姿勢でやっている。したがって、今度の国立大学の改革でも特段驚くことはない。
   19ページは、大学院生の教育の状況である。総研大及び各大学等からの多数の大学院生を常時教育し、学位も総研大を通して授与している。そのほか、いわゆるポスドク等の研究員と大学院生を合わせると、100人強が常時いることになる。外国人も10名ほどが常駐している。

   次に、東京天文台から大学共同利用機関に移行して、何が変わったかという点について20ページにある。元々天文学は共同利用的な色彩が強い学問であり、東京天文台時代の施設も、実は一部は共同利用施設として設置されていたなどの下地があったのだが、1988年に大学附置の研究所から大学共同利用機関へ移行するときは、様々な議論があった。
1.    一番大きな変化として、大学との最大の違いであるが、コミュニティに開かれた教官人事は、大変である一方、大変ポジティブな影響を及ぼした。これは断言できることであり、コミュニティの大学の先生方にも認められている点である。
2.    当然独立したわけなので、予算的な自由度が増加して、さまざまな予算要求ができるようになった。
3.    研究分野の流動化が進んでおり、実質上、今は部門という教員組織はないに等しい。これも大変重要なことで、ある意味で研究者の意識変革がこの10年間にかなり起こったと思っている。さらに、研究者の意識の変化といえば、新しい研究方向を常に模索するという意識が大変強くなった。
4.    社会への公開は大きく前進し、この前の大学評価では、社会教育で国立天文台は満点の評価をいただいた。これも共同利用機関になってから大きな変化が次第に起きた。
5.    逆に一つだけ困難なのは、やはり大学院教育であり、大学と離れたことにより、大学院生を獲得することについて相当努力が必要になった。この面では、むしろ、研究所にいる研究者として、大学院教育に関してもっと努力するという意識改革を迫られていると考えている。

   21ページは、法人化に関して行っている取組についてまとめた。法人化については、かなりポジティブにとらえてきた。サイエンスを進める上で、日本のサイエンスのシステムは予算的にも、人の組織としても大変かたいため、海外の研究所との競争は大変困難になっている。そういった部分を柔軟化して国際対応力を強化したい。これが第一で、真に望む点である。現在を88年の改組以来の第2の改革期ととらえ、様々なチームを設けており、法人化を待たずに一部実施していることもある。具体的には次の1.5.がある。
1.    研究職の流動・柔軟化を考えており、全研究職に基本的には任期制を導入したい。実は14年度から、シニアの方には一部任期制導入をし、定期的な研究評価を開始している。若手研究職員を優先的にやりたい。そのために全体的な研究者の職制も変えたい。
2.    研究単位の流動化ということで、既に研究部門はほとんどないが、研究系、つまり分野がある種のくびきになっており、それも廃止していきたいと考えている。研究単位を、基本的には時限つきのラボ、これは大小さまざまなものがあるが、そういうものに再編し、プロジェクト組織を明確化するとともに、萌芽的なものを意識的に育てる方向に進もうと考えている。
3.    技術職も重要で、日本ではこれまで技術職を待遇するのは大変困難であったが、今度の法人化をチャンスにして、多様な技術職を設けたい。技術職への公募とを既に私どもの内部ではやっているが、これを外部へも拡張する。中途採用その他を含めて、最先端の科学を推進するために、是非とも重要な技術の層を構築したいと考えている。
4.    運営組織については、事務組織の改組、柔軟な人事によって専門スタッフを育成するということが重要だと思っている。
5.    国際的対応だが、すばるや、ALMAなどのプロジェクトなど、さまざまな国際対応をある程度しなければならない。また、ハワイ観測所は、現在、国立機関として大型施設を海外にそのまま置いているという状況であるが、法人になった後、どういう対応が必要なのかについて現在検討中である。例えばハワイ観測所自体が、ハワイ州で何らかの法人格を持たなければやっていけない。また、日本人スタッフの対応等についても、身分が変わることによっていろいろな問題が生じる。これはほかの機関にも同様なことが起きることではないかと考えているので、ここに挙げておいた。


(2)毛利機構長説明−資料6-1関係
   岡崎国立共同研究機構(岡崎機構)というのは、物質科学をやっている分子科学研究所(分子研)、生物科学をやっている基礎生物科学研究所(基生研)、基礎医学をやっている生理学研究所(生理研)、異なる研究者コミュニティを背景に抱え、また、目的も異にするこの3つの研究所が、たまたま、同じ敷地に存在するということで、一つの機構を構成しているものである。大学共同利用機関が連合体として一つの法人になるということがある場合の参考になるのではないかと思い、できるだけ簡単に、しかし詳しく述べたいと思う。
   機構の成立の経緯であるが、1975年に分子研が設けられ、その2年後に基生研と生理研ができたが、この2つの研究所が同年度に発足するということで、そのときに生物科学総合研究機構、これが「機構」の初めてのものであるが、この2つの研究所を一緒にして、機構ということで同時に発足させた。このとき、事務組織はそれぞれの研究所には設けられず、既にあった分子研の事務組織が手分けしてやっていた。1981年になって、様々に議論があったようだが、分子研も含めて一つの事務組織(管理局)で一つの機構をつくろうということになった。これは、同じ土地に存在するということと事務組織が一つであるということが最大の理由である。このことは、岡崎国立共同研究機構という名前が端的に示しており、他の大学共同利用機関では、目的とする研究を踏まえた名称となっているが、我々のところは岡崎という土地の名前がついている。しかしながら、その後、3つあることによって、例えば情報図書館であるとか、職員宿舎、外国人宿舎、岡崎コンファレンスセンターなど、こういったものを共通施設として無駄なく建ててることなどが可能になっている。
   もう一つ、大きな変化は2000年に3つの研究所が共同して、新しい分野として統合バイオサイエンスセンターというのを立ち上げた。生物関係だけでそういった研究センターを有しているところは他国にもあるが、マテリアル・サイエンスをやっている分子研も入って、こういった組織を立ち上げているところは世界にもほとんど聞いたことはない。これは一つの機構でのメリットであると考えられる。

   組織及び運営については、それぞれの機構の中の研究所に、海部委員から説明があったように、評議員会と運営協議員会がある。私は機構の部分についてだけ述べるが、機構としては、現在、機構長がおり、機構長は機構の業務を掌理する。機構の評議員会は、普通の研究所の評議委員会とは異なり、この3つの研究所の評議員会の代表が5人ずつ集まって機構の評議員会を構成している。また運営協議員会もあるが、これは実際は、機構全体の運営というよりは、3研究所の共通研究施設の運営に当たるものであるという意図によって設けられている。こういった省令によって設けられている組織の他に所長会議がある。所長会議は、機構内の申し合わせによって設けられているものであるが、これは機構長と3研究所長、管理局長から成るもので、実際の機構の様々な重要事項に関しては、この所長会議で決めている。逆に言えば、そこを通さないと、最終的には実行に移せない形になっている。その点、機構長の役割は、それぞれの研究所の独立性を認めるということもあり、できるだけ公平に、全体の調和を図ることである。大きな連合体が形成されるときに、理事長はどういう性格の方で、どういう方を選んだらいいのかということは非常に重要で、理事長を選ぶ仕組みなどについて慎重にご審議願いたい。
   最も大切にしているのは、各研究所は独立のものであるという考えである。実際、まだ文部省のころ、大学共同利用機関の数は、しばらく岡崎機構には3機関あると勘定されており、我々の意識の上では、それぞれが独立のものであると考えている。
   各研究所の独立性については、人事及び予算が一番重要である。人事については、各研究所それぞれのコミュニティによって考え方が違うので、それぞれ独自のルールでやっている。ただ、例えば内部昇格を原則やらないということは、偶然とはいえ、3研究所で共通して行われている。予算に関しては、概算要求は全部、各研究所から上がってくる。特に機構長が調整するということはない。管理局がそれをまとめて、文部省のときなら研究機関課へ、現在だと、生命関係はライフサイエンス課、それと全体のとりまとめの基礎基盤研究課に持っていく。
   
   機構をつくるメリットだが、特に事務において非常に効率的に仕事がされており、全職員に対する事務職員の割合をとると、岡崎機構の場合は16.2%、ほかのところでは、比較的低い遺伝研でも18%、核融合研、宇宙研は21%ぐらいであると思う。また、先にも述べた共用施設に関して、無駄なくやれるということもある。
   サイエンティフィックな面では、異分野の交流が常に可能であり、その結果として、先ほど述べた新分野、統合バイオサイエンスセンターといったものを作ることが可能になった。
   それぞれの研究所では、哲学その他すべて違うので、何か一緒にやろうとするときには、当然ディスカッションがある。時には非常に激しい議論も行われるが、そういうことをやることによって、お互いの理解が深まる。いい意味のライバルであり、ある一つの小さなパイを分け合うというのではなくて、全体で学術研究を高めていこうという意識が出てくるわけで、一例としては、「大学共同利用機関の概要」(※第1回配付資料)の4ページに各機関の人数と定員と決算額が出ている。これで見ると、岡崎機構の場合は、人数的には、総員にしても研究者の数にしても高エネ研に次いで2番目であるのに、1人当たりの研究費にすると、14機関のうちの12番目にすぎない。なおかつ、我々は、シンクロトロンの放射光施設あるいは大型スペクトログラフ、超高圧電子顕微鏡といった共通の施設を持っているが、予算的には効率的なところで頑張っている。
   その結果として、サイテーション・インデックスにおいて、これだけで良否を論じるつもりはないが、理工系全分野あるいは生物・医学系分野では、いずれにおいても、岡崎機構がトップを占めていて、しかも、かなり高い数字という結果になっている。それぞれの分野の独立性を認めながら、なおかつ機構でやっていくことには、デメリットよりはメリットが多いのではないかと我々は考えている。

   文部科学省の体制については、人員その他に関係する基礎的なところは、例えば学術機関課あたりが担当して、それぞれの分野の大きな経費については、学術分科会や総合科学技術会議などで大枠を決めていただいて、それを各分野課が、所管の研究所に配分していく形で、ある程度うまくいくのではないか。これは私の個人的な考え方であるが、そのように思っている。

(3)勝木科学官説明−資料6-2関係
   ただ今、毛利先生が説明されたように、岡崎機構は、3つの独立の研究所から成り立っている。機構がまずあって、その中から3つの研究所ができたというものではなく、3つのそれぞれ異なる研究者コミュニティから支持されて設置されているものであって、それぞれ設置目的の違う研究所が同じ場所にあるという共通項をうまく利用しようとして機構ができたと考えられる。
   その研究所の一つである基礎生物学研究所に関して、構造上の問題についてだけ説明する。基礎生物学研究所の形態上の位置は、岡崎機構が一つの大学共同利用機関であり、その中の一つの研究所として位置づけられている。ここが独立であるということは、例えば、人事については外に開かれた運営協議員会を通して、我々はそこで完全公募制の人事を行っており、他の2研究所から何ら影響を受けることはないし、機構長から何らかの指示があるということもない。
   この運営協議員会は、大学共同利用機関である研究所にとって最も重要で、実際上の独立を保障し、かつ有効に研究を進めるための組織であると考えられる。一方、機構にはコミュニティは存在せず、機構の運営協議員会というのは、実際上はなかなか機能しにくい。岡崎機構を実際に運営しているのは、毛利先生の説明にもあったが、所長会議である。あくまでコミュニティに支えられることで、大学共同利用機関が世界に伍して発信するだけの力を有することができていると思うが、そのコミュニティが混乱しては、研究機関の特徴がなくなってしまう。その意味では、法人化後に、もし連合体を形成するとすると、文科系、生物系から原子核の研究まで含めて、「学術研究」という別の横断的なコミュニティが観念・形成できるかもしれないということになる。その場合には、資料の右欄に書いてあるように、岡崎機構のようにコミュニティの存在しない小さな機構を形成する意味はなくなり、それぞれが連合体の中で独立の研究所として位置づけられるべきであると考えている。ただ、その場合の「学術研究」の横断的な内容については、十分吟味する必要があり、様々なフェーズの学術研究もあるし、規模も大小100倍ぐらいの違いがあるだろうから、横断的なものをするには、それぞれの研究所が独立ということをまず前提にして、その上で横断的な学術研究機構を考えることが非常に大事である。
   岡崎機構は、確かに考えられる一つのモデルになると思えるが、実際上は、機構は共通のコミュニティを持っていないので、もし全体の連合体を考えるとするなら、何か共通の基盤が必要と考えている。

(4)菅原委員説明−資料7関係
     資料7は、この特別委員会に向けて、我々の法人化に際しての主張を述べたものであるが、本日は、我々の機関がどういう機関かということを理解していただくために努力するものであるので、主として、附録により、どのような経緯でこの研究所ができたのかなどについて説明する。
   本文の6ページに、前回の会議で申し上げたが、我々の検討の結論が書いており、「基本的には中間報告にある一機関一法人が望ましいと考える。その際、当研究機構は、その研究活動の中心を大学研究者の共同利用に置くことを根拠として大学法人法の中にとどまり、単独での法人化を目指す」。この本文は、我々の結論に対してどういうジャスティフィケーションができるかということを、いろいろな観点から述べている。必ずしも我々の機関の個別の事情だけではなく、法人化の精神に基づいて、我々は単独で法人化するということを主張している。自己責任、護送船団方式からの脱却といった観点が非常に重要なものであろうと思う。
   また、10ページに、高エネルギー加速器研究機構(高エネ機構)の組織図がある。同じ機構と言っても、実は岡崎機構とは非常に異なっており、機構のもとに、素粒子原子核研究所(素核研)、物質構造科学研究所(物構研)の2つの研究所がある。どの研究所も加速器を必須のものとして研究を行っているもので、加速器という道具立てが共通のものとなっている。組織図の一番下に加速器・共通研究施設というものがあるが、これは機構に直属しており、しかも、人員的にも予算的にも共通部分が最大である。岡崎機構では、昨今、共通施設に非常に力を入れているという状況が出てきているようだが、我々のところは、そもそもこの共通部分が非常に大きい。機構長の役割は、各コミュニティに基づく研究所の要請を調整しながら、加速器科学の研究の方針を立てるというスタンスであり、単に研究所長との間だけではなく、加速器・共通研究施設というものをにらみながらやっていく。こういった組織の性格などからいって、機構長の役割を連合体の理事長に委託するわけにはいかない事情もある。本文についてはそれだけにさせていただく。

   附録3は、高エネ機構関連のデータであるが、ざっと10万人/日、つまりほぼ毎日、300ないし400人の人間が高エネ機構を利用しにきている。高エネ機構の研究者の数が450人であるので、大体同数の研究者が毎日やってきている計算になる。
   また、国際協力の面で、プロジェクトの参加機関では、外国が30、国内21、高エネ機構1で52機関。実人員にしても、外国が176、国内137、高エネ機構54であり、外国の利用者がメインという状況になってきている。その他のプロジェクトの場合も、ほぼ同じ状況である。
   物構研の活動については、特に大きいのが民間の利用で、そこに放射光実験施設があるが、実験課題数を見ると、国内578に対して、その中の民間が169、非常に大きい割合を民間の研究者が占めている。

   附録1は、大学共同利用機関第1号である素粒子研究所の創設に関するいろいろな経緯を掲げている。その参考資料に、第65回通常国会の審議の状況を掲げてあるが、先ほどの質疑応答の中のやりとりにも関連があるので、詳しく説明する。
   当時の文部省の大学学術局の局長である村山政府委員は、議員の質問に答えて、どういうものを大学共同利用機関として定義したかということについて、直轄研ではありながら、しかも、大学の附置研と非常に近いものという言い方をしているように思う。大学の附置研で共同利用を目的にうたっているのも若干あるが、「高エネルギー物理学研究所につきましても、どういう形がいいか、準備調査会でも十分研究いたしました。その結論が、従来の大学附置研究所でもない、しかし、従来のような文部省直轄の研究所でもない第三の形がこの研究所の目的使命に照らして適当であるという結論になったわけであります。特定の大学に附属するには、いくら共同利用といっても組織にしましても大きいし、また従来の共同利用研究所の運営の実績を見ますと、共同利用をうたっておっても、特定の大学に附属いたしますと、どうしてもその大学の運営管理のかさのもとに入るわけでありますから、共同利用という面から若干の制約がある。したがって、大学附属はぐあいが悪い」と述べており、これは非常に長い議論を経て出てきた説明で、現在の大学共同利用機関のあり方を極めて簡潔に説明している文書だと私は理解している。
   附録のさらに追加の資料1であるが、これは第1号の大学共同利用機関をつくる際して、日本学術会議が内閣総理大臣に申し入れているものであり、これに大学共同利用機関の枠組みがかなり明確な形で述べられており、先ほどの国会答弁等々も、これに沿っている。その中では、「共同研究所は、全国の国公私立大学及び研究機関の研究者の共同研究の場として、研究者の希望に応じ、研究能力以外の点では差別されずに研究のできるために開放されるべきものである」等々、その精神がうたっており、また、「これらの共同研究所或いは共同利用研究所は、従来の大学の学部、学科を超えて、広く科学者が共同に研究する場として、あるものは比較的規模は小さくても、その学問のおおう範囲が広いために、又、あるものは、従来の研究体制とちがった方式による研究を必要とするため(例えば、大規模なプロジェクト研究)、そして又、ある場合には、極めて巨大な施設を利用して研究が行われるために、それぞれ独立した共同(利用)研究所の設立が要請された」と述べている。したがって、高エネ機構のような巨大科学だけを念頭に置いたわけではなくて、いろいろな形の大学共同利用機関があり得るということを最初から念頭に置いた形で、こういう大学共同利用機関が考えられた。
   この設立に関して附帯決議が国会で出されている。政府は、高エネルギー物理学研究所の運営に関しては、学術研究の自由を阻害しないよう十分の留意を要するとあるが、これは、附置研究所であるべきものが直轄研になったときに、大学の研究として学術研究の自由を阻害しないようにという配慮の行き届いた附帯決議となっている。

   追加資料の3は、大学附置全国共同利用研究所と大学共同利用機関との比較であるが、先ほどのオリジンからして、附置研究所と大学共同利用機関は非常に近いものである。附置研究所というのは、一つの大学に軸足を置きながら、全国的な共同利用をしている。大学共同利用機関は、先ほどのいろいろな理由によって、軸足を複数の大学、たくさんの大学に置きながら共同利用を行う。そのために、予算あるいは運営については、最初に事務局から予算の流れの説明があったように、附置研究所では大学を通して要求が出ていく一方、大学共同利用機関の場合は、大学研究者のコミュニティが運営し、予算は文科省から直接大学共同利用機関に来る。そういう運営上の違いはあるけれども、精神としては全く同一で、ただ、規模であるとか、共通性とか、そういう点での違いから、附置研究所と別個にこういう大学共同利用機関が設置されたとご理解いただく必要があるのではないかと思っている。

(5)質疑応答
   岡崎機構についての質問であるが、先ほどの話では、運営は3研究所の連携でやられているということで、それは一つのやり方であると思うが、機構となっていることのメリット、あるいはシナジー効果を挙げていただくと、何が一緒にいることのメリットなのか。

   先ほども述べたが、学問的な面では、最近始まった話ではあるが、新しい分野を創るときには、幾つかの分野が一つに集まっているとやりやすい。異分野の交流で、いろいろな新しいアイデアが出ると思うが、そういうところが利点として挙げられるのではないかと思う。また、一つの研究所だけの機関の場合は、あるものをつぶして新しいものをつくるということはやりにくいのではないかと思っている。
   もう一つ、いろいろ無駄なことが施設面で省けるし、事務的にも効率化が図られている。

   機構長の意見はわかったが、内部の研究所長の意見はどうか。

   今、毛利先生から話があったようなメリットというのは、たまたま、岡崎機構にいる分野だけで何かできるという結果であり、実際に学術研究全体を考えると、岡崎機構に集まっている分野だけでは、必ずしもそれほど自由度は大きくない。したがって、基礎生物学研究所として、非常に率直に申し上げると、実際上、機構なり機構長の絶対的な必要性は特に感じていない。現実には、事務を統一した機構として動いている。
   しかしながら、仮に全体にわたった機構であれば、それは全学問分野を見渡せるという全く質的に異なる機能が生じる。それは、おそらく同じ地域にあるということを超えて、理念的に重要な位置づけになろうかと思う。したがって、現在の機構を前提として、機構になるということのメリット、デメリットと比較することはあまり意味がないと考える。

   特別委員会に与えられた使命は、要するに連合体機構の在り方ということだと思うが、機構というものを作る意味は、今のそれぞれの機構から伺った話とは全く性格が違うのではないかと思う。つまり、ほぼ全体の研究所を網羅する機構であると、それは勝木先生の言ったようにこれまでの機構とは性格が違ってきて、個別の研究所の運営について伺った話、その結果として出てきたイメージを前提にしては論じられないのではないか。単純に言えば、統一機構であるからには、現在各研究機関がやっているような仕事を機構に移していくようなイメージで議論をする必要があるのではないか。

   高エネ機構に一つ質問したい。先ほど、岡崎機構に対して質問が出たのと同じであるが、機構をつくったことのメリットは岡崎機構と大分違うと思う。そこを伺いたい。

   その経緯及びなぜ今の形態にする必要があったかということについては、説明を省いた資料7の附録2に書かれている。原子力研究所と共同でやっている大強度陽子加速器プロジェクトを進めるということを動機として、この機構ということになった。
   それまでは、高エネルギー物理学研究所という名前が示しているように、高エネルギーということを中心にやってきて、その中から生まれてきた加速器利用、特に放射光実験施設、ここからさらに、生物学からケミストリー、マテリアルサイエンスも含めて、様々な分野がパラサイト的に考えられてきたということがある。ところが、それだけ規模が大きくなり、ユーザーの数も本来のユーザー数をはるかに凌ぐものになると、加速器を使うという道具の上での共通性はあっても、もう既に高エネルギー物理学に物質科学などがパラサイト的に設置されている位置付けではないだろうという認識もあった。研究計画の推進と各分野間の独立性というものを含めて様々な審議がなされた結果、この機構というものができた。したがって、学問的に物質化学、高エネルギー物理学に近いといえば近いし、遠いといえば遠いが、学問的な議論と道具の上の議論という両面から相まってベストな形態ができた。
   メリットという意味でいえば、我々の活動は5年間経っているが、機構を作ったことで充実した活動になってきていること自身を証拠として、メリットだと言わせていただければ、それでいいかと思う。

   岡崎機構の発表に関して、資料6-2で説明いただいた現状と法人化後の関係が分からない。つまり、現状では、それぞれが違ったテーマの研究所で共通性に乏しい、コミュニティがないという認識でありつつ、法人化後の場合には、学術研究機構、いわゆる研究者コミュニティがずっとあって、学術コミュニティの連合体になれると言っている。これは、これまで学術機関課、文部科学省がやってきたことを研究者がやること以外に、学術コミュニティとしての実質が成立し得るのか。つまり、岡崎機構の範囲でもできなかったことがどうしてできるのか。

   そこは、先ほど述べたように質の違う問題だと思う。全体の学術研究というものは、大学及び大学の一つの派生形としての大学共同利用機関が全体でそれを担っていて、それが現在及び将来の学術研究になっていくものだと思う。これは、やはり広く高い視野での共通点から見ていく必要があり、文部科学省が今までやってきた部分はあるだろうが、本来は学術を構成するコミュニティがやはり中心になってやるべきことではないかと思う。つまり、それが横断する共通の認識で、もしそういった認識が成立するならば、それは可能である。
   ただ、その場合にも、それぞれの大学共同利用機関が非常に成功しているのは、それぞれの固有のコミュニティに開かれていて、人事その他についても運営協議員会によって所長なりが選ばれる仕組みがあるからである。最終的に評議員会で選ばれるものの、いわば、議院内閣制ではなくて大統領制のようなイメージになるわけである。そういったものを構成するコミュニティが、もし日本全体の学術研究というものをきっちりと謙虚に討論するならば、欧米諸国にあるような、極めて学術中心の強い組織ができるのではないかと私は考えている。

   これはむしろ文部科学省に考えてもらいたいが、機構というものを、資料6-2の右側に書かれているような構想で考えるのであれば、これは非常に大きい学術体制上の変革であり、課題であるので、むしろ独立法を作るぐらいのつもりでやらないと、国立大学法人法の中に入れるとか、法人化の一環という次元を超える要素もあるのではないかという気もする。その辺もあわせて次回にでも答えを聞かせてもらいたい。

   今回、文部省系の研究所が中心になっているわけだが、文部科学省全体としては、科技庁系の研究所がある。これは研究という意味で全く同じなので、それも我々はちゃんと理解した上で大きな方向を考えるべきだと思う。是非そこのところを次回はちゃんと理解させてもらいたいと思う。

7. 閉会
  事務局より、第3回は4月15日(月)の15:00〜17:00、文部科学省別館(11階)大会議室で開催する旨の連絡があり、閉会となった。



(研究振興局学術機関課)

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