基本問題特別委員会(第21回) 議事録

1.日時

平成16年6月18日(金曜日) 15時~17時

2.場所

三田共用会議所 C、D、E会議室

3.出席者

委員

 末松会長、小平主査、石井委員、池端委員、磯貝委員、井上委員、伊賀委員、小幡委員、谷口委員、鳥井委員

文部科学省

 丸山研究振興局担当審議官、川原田振興企画課長、藤原学術機関課長、岡本学術研究助成課長、平野科学技術政策研究所総務研究官 他関係官

オブザーバー

(科学官)
 加藤科学官、高埜科学官、西尾科学官

4.議事録

(1)これからの学術研究の推進に向けて

 資料2「これからの学術研究の推進に向けて(案)」に基づき、事務局より説明の後、意見交換が行われた。資料2については、主査一任とし、本分科会で出された意見を踏まえ精査の上、基本問題特別委員会の報告とする旨了承された。その内容は以下のとおり。
 (○・・・委員、科学官 △・・・事務局の発言)

○ 2ページ「2 学術研究の推進に向けて」の前の段落に、「各国の歴史文化等の相違を超えたシステムを構築していく」とあるが、その前に「グローバル化が進展し世界が急速に相互依存を強めていく中で」という前置きがあり、かつ「歴史文化等の相違を超えた」ということになると、各国の文化多様性は一体どうなるのか。ここは、「各国の歴史文化等の多様性を前提にしつつ、しかも相互の違いを」とするなど、もう少し文章の工夫が要る。また、「相違を超えたシステムを構築していく」と言い切っていいかどうかは別としても、システムを構築していく主体は学術研究ではないので、やはり文章の工夫が必要である。
 3ページ「(2)大学・大学共同利用機関の枠を超えた知の融合の推進」の上の段落の3行目「研究者自らが異なる目的意識」という文章であるが、まず「研究者自らが」で点を打たないと後の続きがわからなくなる。
 5ページ「おわりに」というところは、全体をもう少し格調高くすることができるのではないか。また、「おわりに」の1行目「現在の我々を取り巻く社会制度を形成する」とあるが、学術研究は社会制度を形成する主体にはなりえないので、言うとすれば「社会制度の形成に資するとともに」ぐらいで押さえておかないと無理がある。
 あと全体の構成の上で、4ページ「(3)デュアルサポートシステムを踏まえた学術研究への十分な投資」の括弧をとり、「1 学術研究の意義」「2 学術研究の推進に向けて」と並ぶ大きな項目の「3 デュアルサポートシステムを踏まえた学術研究への十分な投資」としたほうがいいのではないか。

○ 3ページ中ごろに「産業界マスコミをはじめ国民各層との対話の機会を積極的に設けるなど社会とのコミュニケーションを通じて、国民の理解と支援を得るための行動が求められている」とあり、そのとおりであるが、もっと上位の概念として、未来にどういう文明を築くのかについて社会的な合意の形成に資するというのが、学術研究の基本にある。そのために、社会との対話が必要なのではないか。

○ 1ページ「1 学術研究の意義」では、学術研究は大事であり、教育も行っていて、人材養成にも役に立っていると述べられているが、非常に平易な言い方であり、学術研究とはそんなものではないという違和感を覚える。なぜかというと、今まで議論してきたように、やはり学術研究を抜きにして、大学における人材養成はなし得ない。専門学校におけるトレーニングは決まったことを教えるという意味であるが、大学は学術研究と教育が不可分であるからして機能が違う。「人材養成の点でも大きな役割を果たしている」というのを、「人材養成の点で根源的な、あるいは根本的な役割を果たしている」としていただく方が意図が伝わると思う。

○ 2ページ「2 学術研究の推進に向けて」の4行目に「我が国は、世界の先頭集団に属するものの責任として」とあるが、どこにアピールするのかということを考えると、少し検討したほうがいいのではないか。例えば、「国際社会においてより一層強く期待されている」など、国際的にかなり重要な地位を占めているということを意味しているとしても、あまり赤裸々に申し上げるのもいかがなものか。
 3ページ目は、短い文章の中で非常にコンパクトにまとめられているので、一言一言が非常に重要な意味を持ってくるとも捉えられる。そういう文脈で、3つ目の段落に、ざっと見たところ1回しか出てこない「学問」という言葉が出てくる。学問と学術は、どう違うのか。学術研究は国民からの信託を受けた学問の発展と人材養成、つまりこの2つが学術研究なのかという見方もできるのではないか。
 それから、全体のトーンとして、今回の案は提言をするのか、それとも確認をするのか。

○ 最後の点は、1ページ中程「本特別委員会は、このような基本的認識に立ち、次期科学技術基本計画の検討作業が近々始められることをも念頭に置いて、大学等における学術研究の意義を再確認するとともに、今後の学術研究の推進に向けて特に重視すべき点等について検討を行い、その考え方を以下のとおり取りまとめるものである」と述べられている。いろいろな要素は入っているが、少し強さが足りないかもしれない。それが結局、全体のトーンに反映して、5 ページ「おわりに」の文章が、「強く求められている」「審議していく必要がある」という必要性の認識にとどまっているところに出ている。どのようにあるべきかというのは、基本的には、以前に出された提言の方向性は基本的に変わっていない。しかし、新たな状況を踏まえると、再確認を行い、さらにこの状況の変化から考えて、特に現時点で重視すべき点を挙げたという形になっている。

○ 国立大学あるいは大学共同利用機関の法人化を契機に、学術研究の重要性をアピールするという観点で「これからの学術研究の推進に向けて」が検討され、早急にまとめる必要があると聞いていたので、学術研究の重要性についての主張や理由を再確認して、今後さらに法人化を契機にどういうことが必要かということをアピールしていく、という認識で考えてきた。
 法人化後、各国立大学法人での平成16年度予算配分の状況は、基盤的研究経費が平成15年度の国立大学当時の研究費の配分に比べて減っているというのが実態である。今後、継続的に審議していく必要があり、第3期科学技術基本計画の審議が秋からスタートするということであるから、それまでに法人化後の基盤的研究経費の各大学の実情などもよく調べていただき、それを踏まえて基盤的研究費についても、国としてさらに投資額を増やすよう努力してもらいたい。
 さらに、各大学でそれぞれの研究者への研究費の配分が減額されており、必然的に競争的な研究資金を確保していかなければ、大学の学術水準を向上させるのは難しい状況になってきているので、競争的な研究資金として科学研究費補助金等を一層拡大すべきであるということを、現状をさらに分析した上で主張したらどうか。とりあえず法人化を契機に学術分科会としてアピールすべきことを主張するというのがこのまとめの考え方であり、第3期計画に反映させることまで考えると、今の段階では現状に対する認識や分析が十分ではないのではないか。
 いずれにしても、学術分科会としては、科学研究費補助金等のさらなる拡大等については、秋以降、本格的な審議をぜひお願いしたい。

○ 4ページ「(3)デュアルサポートシステムを踏まえた学術研究への十分な投資」で、科学研究費が「平成12年度に比べて29%の増、平成7年度に比べて98%の増となるなど充実が図られている」という表現は、本当にこれでいいのか。総合科学技術会議の議員である阿部議員も、ある講演で平成12年度から倍増すべき競争的資金が倍になっていないということをおっしゃっておられる。そうすると、ここは「足りないのではないか」という表現が必要ではないか。
 もう一つは、科学技術政策研究所の「科学技術指標平成16年版」によると、知識に対する国の投資の世界比較がなされている。研究開発については、日本の研究開発投資の対GDP比率は、OECD加盟国の中では3位である。しかし、ソフトウエアに関する投資は19位であり、高等教育は23位である。このようなことで、ここで言っている知的に輝く国をつくることは、本当にできるのだろうか。

○ 「次期の基本計画の検討作業が近々始められることを念頭に置いて」というのは、今ここで言う必要があるのか。この文章を省いて、「基本的な学問、学術研究の意義を再確認するとともに」と言っていいのではないか。
 それから、国の科学技術政策の立案に参画している研究者の中にも、基盤的資金はあてにならない状態にまで落ち込んでいるので、基盤的資金を削ってでも競争的資金の倍増をしたほうがいいというような発言をなさっている人もいると聞いているので、この部分はしっかりと押さえておかなければいけない。

○ どういう形で文章を出すかというときの難しさだろう。競争的資金の倍増が達成されていないことを強く出し過ぎると、基盤的資金を削ってでもということになりかねない。基本的には、我が国の高等教育機関への公財政支出(対GDP比率)は低い水準であり、それを改善するというのが一番大きな枠組みであろう。

○ 全体の構造がどうも社会から理解されていない。高等教育への投資は国際的に比較して大変少ないという状況もあるので、総合的に捉えて発信しないといけないのではないか。いつもある部分からある部分へという議論になってしまうが、もともと予算の少ないところがそれをやると、知識創造において世界的に非常に劣位に陥る。社会と対話をすることで、そうならないように社会的な共通認識をつくっていく必要がある。

○ 3ページ「(2)大学・大学共同利用機関の枠を超えた知の融合の推進」であるが、全国共同利用体制は日本で生み出した非常にユニークなやり方であり、意味があるという点は賛成であるし、確かに大学や研究所の枠を超えていると言える。しかし、それがあたかも組織を合体することが枠を超えることであるという文脈で展開していって、「16の大学共同利用機関を4つに再編したということは、その一歩を踏み出したことである」と流れていく。先日、再編した一機構の経営協議会に出席して、本当に合体することに意味があったのだろうかという懸念を抱き、機構の方々もハッピーな顔をしておられなかったので、少し不安感がある。こういう文脈で、組織の統合がいいことなんだと基本問題特別委員会が支持するような形でいいのだろうか。

○ 「既にこのための大きな一歩を踏み出している」とあるために、研究組織を再編・統合することがそうであるかのような文章になっているが、本質はこういう研究所との連携強化ということであろう。組織を一体にすることがこの文章の本旨ではないと思うので、少し工夫が要る。

○ 大学の研究者1人当たりの研究費は平均1,200万円、国研は6,000万円である。こういう格差が出てくることの正当性というのは果たしてあるのだろうか。民間企業は2,700万円位であったか。数字の基本が違うのかもしれないが、これは国として少しおかしくないか。

○ 研究費というより、必要な予算額である。国研は大きな予算額が必要な仕事を担っており、1人当たりの研究費を算出すると大学の4倍か5倍である。例えば大学共同利用機関と大学を比べると、明らかにそういう傾向が出る。

○ それが全部悪いというわけではないが、人数が少ないところのほうが予算をつけやすいということが働いている可能性はある。国研と同じにする必要があるかどうかはきちんと考えないといけない話であるが、少し格差があり過ぎる。

○ これは研究費と呼べるのか。事業費的な部分も相当あるので、分析しないと難しいかもしれない。予算額が大きいほうが、研究ができているといえるかどうかである。

△ 総務省統計「平成15年科学技術研究調査報告」によると、平成14年度の研究者1人当たりの研究費は、人件費まで含めて、大学等では1,273 万円、国研では6,194万円である。おそらく、大学の場合は人文・社会科学も含めた幅広い多様な分野が入っていたり、国研の場合は比較的大きな施設を使うようなものが入っていたりするので、平均するとこれだけの差になっていると思われる。

○ 研究費の定義はどうなっているのか。大学の場合には、よく研究費と教育関係経費をある比率で分けたりしているが、国研の場合には、いわゆる事業費的なものと研究費は分けられているのか。

△ この総務省の統計データでは、国研でも大学でも研究そのものについては同じ定義を適用している。また、国研では、事業費的なものはほとんどない。すべて研究に絡んでいるので、研究費となる。例えば日本原子力研究所でも、少し例外はあるかもしれないが、おそらく事業費的なものはあまりなく、かなりの部分は研究であろう。具体的な仕切りというのは非常に難しいが、少なくとも研究の定義としては同じものを示して、大学や国研などから回答を得ている。

○ 人件費はどういう取り扱いになるのか。研究費にポスドクなどの人件費を含んでいるような場合だと、統計の出方がかなり違ってくると思われる。

△ 統計では、ポスドクのための人件費は基本的に入っていると思われる。

○ 1ページ「特に重視すべき点等について検討を行い」とあり、その結果として具体的には何かというと、1番目が「(1)大学の自主性・自律性の発揮と社会との連携強化」で、2番目が「(2)大学・大学共同利用機関の枠を超えた知の融合の推進」である。一方では、大学は自律性・自主性を発揮しなさいとあり、もう一方では、枠を超えた知の融合をしていきなさいと書かれているが、相対する部分もある概念なので、もう少しガイドライン的なものがあったほうがいいのではないか。そして、3番目に「(3)デュアルサポートシステムを踏まえた学術研究への十分な投資」ということが記されているが、「(1)」「(2)」において、現状ではそこに書かれていることをするには、資金面でこういう問題があるということがもう少し書かれていると、3番目の記述がより有効になると思う。
 2番目の最後の部分であるが、いわゆる大学共同利用機関等における何らかの融合や統合というのを示唆しているところが少し気になる。

○ 2番目の最後の部分では、組織の統合は本来意図していないはずであり、むしろ運営費交付金等の予算の中で、知の連携を後押しするような仕組みの部分をないがしろにしてはいけないという意図であったはずなので、そう読めるような工夫が必要である。

○ 学術の中には自由な発想に基づくものがある。一方で、社会には重要問題がある。自由な発想に基づくところは、デュアルサポートでやりなさいとある。では、重要問題についてはどうするのか。社会的要請の強い事項に対してはどうするのか。それから、大型の科学に対してはどうするのか。それらの記述がない。さて、それでは共同利用機関、あるいは大学附置研究所はどうなのか。4ページ中程に「機動的・戦略的な研究体制を構築して」とあるが、これからは、今までとは違った重要問題に対する役目を重点的に果たすようにシフトしていきなさいという理解でいいのか。

○ 重要問題とは、具体的にどの部分をいっているのか。

○ 2ページ「2 学術研究の推進に向けて」の上に「地球規模の問題や生命倫理の問題など」とある。これらの問題は、自由な発想でやるというよりも、問題があって、その問題を着実に解決していく研究であるので、これらを社会的要請の強い重要問題と言った。
 大型の研究に関しては、共同利用研にあるような天文台や情報学研など大型の施設を利用する科学に関する記述がなく、それをしっかり支援するという姿勢が見えにくい。
 共同利用研というのを見てみると、3ページ「大学共同利用機関、大学附置の共同利用研究所等では、これまで様々な研究成果を生み出しており、新たな知の創造と世界をリードする国際的COEとして人類の知的財産の創出に多大な貢献を果たしてきた。」とある。確かに、今まで新しい知を生み出してきた機能の一つを担い、大学の学部の教育研究とともに重要な役割を果たしてきたことは確かである。しかし、自由な発想に基づく研究と社会的要請の重要問題、天文学などの大型の研究では、また目的が違うであろう。
 自由な発想に基づく学術研究をデュアルサポートでしっかり支援する。科学研究費等の競争的資金を増やすということは、しっかりやるべきである。その一方で、重要問題を解決しなければいけないということもあり、デュアルサポートがその全体にかかっているように感じる。一体どういう仕組みで、社会的に緊急の国際問題や倫理問題を解決するのか。また、宇宙や天文などの大型科学の支援をどうするのか。これらは、違った支援の仕組みであると思う。だから、自由な発想に基づく研究はデュアルサポートで、重要問題でも社会的要請の強い緊急事態や国際問題はこういう支援の仕方、知の源泉である大型の科学研究に対してはこういう支援の仕方というのが、大枠ではないかと思う。

○ 科学技術基本計画の基礎研究と国家的・社会的重要課題という二分法とこの報告とは、少し次元を異にするものであるという認識で読んでいた。4 ページにあるような問題を解決するためにも、自由な発想に基づく学術研究が重要な役割を果たすということであって、大型プロジェクトはこの報告では触れていないのではないか。知そのものを創造する学術研究があり、人類的な問題や現実的な問題を考えながらもしっかりと基礎的にやっていくという学術研究もある。そういうものが役立っていくという書き方なのではないか。
 だから、どちらかというと大学や大学共同利用機関の中での日常的な地道な研究に焦点を合わせて、この報告はできているのではないか。そのためにも競争的資金だけでは不十分であるという主張なので、その限りでは一応筋は通っている。ただ、全体の表現として融合などの言葉が散りばめられているので、あっちへいったりこっちへいったりしている印象を受ける。

○ 基本的には、この文章は今、委員が言われたところにある。ビッグサイエンスについては以前1度取りまとめたこともあり、ここでは特にビッグサイエンスの推進のために特別な予算的配慮が必要という大きな後押しはしていない文章になっている。
 同様に、地球規模の問題や生命倫理問題についても、学術研究は社会制度を変えるものではなく、それに資するものという話があった。この報告では、地道な学術研究がこういう大きな問題を解決していく上では必須であると述べているが、学術研究だけで何かができる、それにたくさん資源を投資せよという書きぶりにはなっていないと認識している。

○ 今の問題に関して、大学の外にいる立場、いわゆる標準的な人間としてこの文章を最初見たときにどういう印象を受けるかというと、まず最初に思ったのは、ここで言う学術研究の定義とは一体何かということである。もちろん、「1学術研究の意義」の最初の数行に、ある意味では非常に平易で明快な定義がされている。ところが、前回のいろいろな議論を伺った場合でも、各委員の中で学術研究に対してどういうことをイメージしているのかというのが一つではなく、ばらつきがある印象を受けた。今日の議論も、ある意味ではそのことを引き継いでいるという感じがする。
 私自身、まだわからないところがある。例えば、広辞苑で「学術」を引くと、「学問と芸術」というそっけない定義が書いてある。今、ここで話している内容とはかなり違った定義である。前回の会議後、前回までのいろいろな経緯を示す資料などをいただき、いろいろ勉強させていただいた。特に、石井委員が提出された資料は、非常に関心深く読ませていただいた。それを読んで初めて、「1学術研究の意義」の1段落目に書いてある部分の意味がある程度わかってきた。それは、大学等を中心に行っている、要するに知的好奇心をきっかけとして、最終的には知的豊かさを最高評価とすべきような類の知的行為であるというのが、学術研究の一番譲れない定義ではないかという印象を持った。ところが、この文章の2段目、3段目にいくと、だんだん拡張していき、これもあり、これもあるという文章が出てくるので、少し誤解を招きやすいところがあるのではないか。
 知的好奇心に始まり知的豊かさをもたらす研究が、大学で一番やらなければいけない部分であり、それを支援するためにどうしなければいけないかを考えなければいけない。その時に、これが学術研究なんだということを、もっと一般の人が読んでもなるほどなと思えるようにしないといけない。学術研究でないものは一体何であるのかなど、その辺はイメージが少し沸きにくい。この定義そのものは確かに平易でわかりやすいが、イメージとしては非常に沸きにくい。ここでの発言などをもっと盛り込んで、学術研究がなくなったらこんなことが起きるというようなことを言ってもいいのではないか。

○ もとをただすと、今期が始まってからずっと議論してきており、その大部分は学術研究とは何かということであった。

○ 当初からいらっしゃる委員の方は、それが積み重なってきているので、暗黙の了解でわかる。

○ だから、かえってよくない部分があるというのも指摘のとおりある。
 議論の中で、逆にその裏を考えてみたらどうかという委員の発案で、学術研究がなかったらどうなのかを検討してみることとなった。石井委員が随分精力を注がれてあのペーパーを作成された。それをもう少し詰めて書いたのが、「1学術研究の意義」の最初の4行であるが、今の世の中では学術研究というのはわかりにくい。学問というほうがまだわかるのであろうが、それは同じではない。

○ 先ほど学問という言葉が出てきて、学術研究というのはどう違うのかと言われると、あまりよくわからない。

○ 明治の頃なら、学術や学問というと社会でもおわかりになったのではないかと思うが、今はわかりにくくなっている。さらに問題意識として、次期科学技術基本計画の検討作業が近々始められることをも念頭にいれた場合、人材育成が大きな課題になるのは確かであり、第2期から重点分野と並んで基礎研究が非常に重要なので国として推進しようと言っているが、それと学術研究は何が違うのかということも議論してきた。

○ 基礎や応用にこだわることはなくて、知的好奇心から始まっていれば、その内容が応用的であろうと学術研究として十分入る。

○ ただ、それが自由な発想と好奇心というところに根があるかどうかである。会社で商品開発をするために非常に基礎的なことをやる場合もある。そのことを端的に言い表すとするとこの表現になるわけであるが、できればもっといい表現ができるといい。

○ 結局、学術研究だけで社会が成り立つわけではないし、かといって応用研究だけで成り立つわけでもないので、両方がたいへん重要である。学術研究と応用研究をどこで分けるかという議論ができないくらい両者は密接に関係している。学術研究があるから、新しい応用研究や技術が発展し、それがまた新しい学術研究に革新をもたらす。そういう切っても切れない関係にある。応用研究だけが強調されると、もちろん経済の活性化につながるが、今の切っても切れない関係が片方に押しやられているのではないか。そういう問題があるからこそ、ここでしっかりと学術のあり方をアピールして再確認、あるいは提言しようというのが基本的な考え方であると思う。
 そうすると、どこに提言するのかということにもなってくる。自分自身のところで終わってしまうケースもあるだろうし、あるいは、もう少し踏み込んだ提言をするのであれば、これからの政策立案にインパクトを与えることにもなるかと思う。そういうことをしていかないと、運営費交付金は競争的資金に回せばいいのではないかといったような非常に誤解に満ちた話が進んでいき、ますます運営費交付金が減らされる。すると、応用研究とは切っても切り離せないような学術研究が衰退していく。それを担っている大学等が広い意味で衰退するということになってはいけないので、6月中にまとめなければいけないという話であったが、どこに出すために6月にまとめなければいけないのかを教えていただきたい。

△ 法人化に合わせてこのメッセージを発したいということで、昨年からご議論いただいていた。このペーパーの相手先というのは、主査からも前回お話しいただいていたが、1つは学術研究のまさに実際を担っている大学関係者に対するメッセージである。それと、それをしっかり国としても支援していかなければいけないので、文部科学省や財政当局といった行政サイドに対するメッセージでもある。これから概算要求に向けて、また法人化がスタートしてまだ3カ月という段階で、学術分科会基本問題特別委員会として時期を逸失することなくアピールしていきたいと考えている。

○ ここでは幾つかの課題に触れているので、それぞれのファンディングに対しての提案がないといけないのであろう。しかし、ここで最も焦点を絞るべき点は、運営費交付金に代表される基盤的な研究経費が、人材育成や新しい芽を出す苗床を豊かにしていくという意味で、今の時点で特に配慮が必要であるということである。
 今後の文章であるが、最後に議論が行き着いたところから見ると、大幅にこれを変える必要はないのではないか。今日いただいた意見を踏まえて、まず誤解がないようにすることと、もう少しポイントをよく理解していただけるように文言修正をする必要はある。修正については主査に一任いただき、事務局とも相談の上でもう1度委員の方に文案をお送りし、委員会を開催して諮るというのではなく意見をいただき、その上で最終版にするぐらいのことで間に合うか。

○ その方向で大変苦労いただくことになると思うが、一番最初のところで、学術研究と、それ以外に社会的諸問題あるいは政府の政策を遂行するという 2種類の研究があり、ここでは大学が主体としている学術研究に焦点を当ててその重要性を述べるという文章があると、多少主張点が明確になるのではないか。

○ それでは、今日の意見を踏まえて、再度修正した案をできるだけ早くお送りし、その意見を取り入れて最終版とすることを主査に一任いただきたい。
 (「異議なし」の声あり)

(2)科学技術基本計画のフォローアップについて

 資料3‐1「基本計画の達成効果の評価のための調査 概要版」に基づき、事務局より説明の後、質疑応答が行われた。その内容は以下のとおり。

○ おそらく施設関係は補正予算等で充当されているものが多いので、国の当初予算としてどれだけ充足されたかということを評価する場合は、少し注意しなければならない。

△ それは調査しており、確かに補正予算の割合が大きい。非常に大きな課題であると思っている。

○ これはホームページなど、国民向けに公表されているのか。

△ 公表している。

○ 運営費交付金にしてもある程度膨大な予算が投入されている。それがどのように使われているかということは、しっかり説明していかなければいけない。先ほどの「これからの学術研究の推進に向けて(案)」においても、情報発信の必要性について述べられていたが、国民に対して非常にわかりやすく見える形で発信していく努力が必要である。その場合、基盤的研究の大切さも、できる範囲でわかりやすい形でぜひメッセージを出していただきたい。

(3)その他

 資料4‐1「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分方針(概要)」に基づき、事務局より説明が行われた。

5.今後の日程

 次回の基本問題特別委員会は、委員の日程を調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)