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科学技術・学術審議会学術分科会

2003年9月8日 議事録
科学技術・学術審議会  学術分科会  基本問題特別委員会(第17回)議事録

科学技術・学術審議会   学術分科会
基本問題特別委員会(第17回)議事録


1.日   時   平成15年   9月8日(月)   15:00〜17:00

2.場   所   文部科学省分館201,202特別会議室

3.出席者   末松会長
(委   員)   小平主査、伊賀委員、池端委員、石井委員、磯貝委員、小幡委員、川村委員、郷委員、戸塚委員
  (科学官)   寺西科学官、本島科学官
  (事務局)   石川研究振興局長、林科学技術・学術政策局長、井上科学技術・学術政策局次長、瀬山大臣官房審議官、丸山研究振興局担当審議官、磯田総括会計官、河村政策課長、藤木開発企画課長、川原田振興企画課長、他関係官

4.議   事
(1) 平成16年度概算要求について
   資料2「平成16年度概算要求の概要−科学技術創造立国の実現−」に基づき、事務局より説明の後、意見交換が行われた。

    ( ○・・・委員、科学官      △・・・事務局の発言 )

   2点質問させていただくと、大学共同利用機関法人等における独創的・先端的基礎研究の推進については、大学が法人化される初年度ということに絡んで、ゼロから一気に930億円とのことだが、前年度比はどのような数字になっているのか。従来だと基盤校費、あるいは国立学校特別会計の予算と推察するが、これまでに比べてどういう数値になっているのか。
   もう1つは、資料の6ページの(1)競争的資金の改革及び拡充の箱の中に、7「競争型戦略的重点分野研究推進事業(新規)(再掲)」とあるが、どこと再掲になっているのかということと、事業の概略を教えていただきたい。
   まず1つ目の質問について、今年度の予算と法人化後の予算とを比較することは、制度が変わり難しい部分もあるが、全体として今年度並みの水準を確保するよう予算が組まれていると承知している。
   2つ目の質問について、競争型戦略的重点分野研究推進事業は、分野別の予算の中に入っている。実質的には公募、審査をして、採択をするという競争的資金の内容に当てはまるものを幾つかこの中に掲示している。具体的には、ライフサイエンス分野のゲノムネットワークとがんのトランスレーショナルリサーチにかかわる研究費、情報通信分野の知的資産の電子的な保存・活用を支援するソフトウエア技術基盤の構築、それからナノテクノロジー・材料分野のプロジェクトについてもやはり公募するものがあり、それらを競争的資金として登録したものである。
   ITER計画等で約86億円だが、原子力研究所の予算を見ると、ITER研究で4億2千万円ほどである。残りはどこに配分されるのか。
   ITER計画の推進の経費については、日本原子力研究所が独自に行うブランケット開発等の経費として4億円を日本原子力研究所の経費の中に計上させているが、残りの経費については、内局の経費として82億円程度の予算を計上させていただいている。これは主に施設整備を行うための経費である。現在、ITERを六ヶ所村に誘致をしているが、誘致できることを前提として、六ヶ所村のサイト整備を行う経費やITER本体の超電導コイルを作成する経費、ITERを実際建設する場合の技術基準を整備するための経費等を計上しており、将来的にITERの国内の実施機関が決まれば、その機関に対する補助という形で執行することを想定している。
   8ページの人材養成のところで、大学院博士課程学生の支援で82億という予算が計上されているが、日本学術振興会の事業で、何か新しい仕組みをつくられるということか。
   補足資料の日本学術振興会のところに細かく出ていると思うが、ポストドクターをずっと増やしている。それに比べて、大学院博士課程の学生の支援が特に大事ということが、総合科学技術会議や文部科学省等のいろいろな議論の中で出たので、重点的に今年度は増やしていくということである。
   特別研究員(大学院博士課程在学者:DC)の拡充的な色彩が強いということか。
   そうである。
   法人化になる前に、国立大学の建物スペースが随分足りないので、何十%か補充していただけることになっていたが、まだ残っている部分がかなりある。その辺はどのように考えられているのか。
   今のお話は、研究室等を含めた施設整備の件と思われる。今手元に資料がないので正確な数字を持ってご説明することは難しいが、昨年の例で見ると、通常の国立学校関係の施設費の該当枠が1400億前後ぐらいしかない。そのような状況に加え、大強度陽子加速器の建設やその他研究関係の大型プロジェクト等も走っている。また、国立学校の施設整備で、年次計画で進めてきているものもある。現状では、新たに施設整備として取りかかる、あるいは改善をするというプロジェクトに取り込むことは、一般的に申し上げると非常に厳しい状況である。そういう中では、施設整備5カ年計画を着実に進めていかなければいけないということで、施設部を中心に尽力している。
   競争的資金は、5年間で倍増する計画があるという話を聞いている。16年だと4年目に当たるが、この予算では、倍増計画という目標との関連で、どのくらいまでいっているのか。
   全部要求どおり査定されたとして、他府省の分も全部含めておおよそ5割ぐらいである。

(2)    ビッグサイエンスの推進について
   資料3−1「ビッグサイエンスの在り方について(案)【概要】」、資料3−2「ビッグサイエンスの在り方について(案)」に基づき、事務局より説明の後、意見交換が行われた。本委員会で出された意見に基づき修正し、再度各委員に意見照会の上、基本問題特別委員会の案として学術分科会に諮る旨了承された。なお、最終的な取扱いについては主査に一任された。

   多目的化ということが5ページの下から書かれている。これは、一例を挙げたのだろうが、加速器が、化学や医学、材料科学など、様々なところに役に立つというのは大変よくわかる。また、それを踏まえて、投資が行われるということが大変大事であるということもよくわかるが、ビッグサイエンスの中には多目的でないものもあると考えられないのか。
   これを強調することは非常に大事なことだが、多目的でないものが仮にあるとした場合、それへの投資が後順位になってしまうなどの裏返しの問題はないのか。ハワイの天文台は化学や医学にはあまり役に立たないと思われるが、しかし科学研究のツールとしては重要であることにかわりない。そういう点を考慮した表現は必要ないのか。
   1ページの中ほどに、「研究手法が高度化や研究装置の大型化に伴い、研究プロジェクトが巨大化する傾向にある」と書かれている。過去の予算額の推移グラフがあるが、トータルとしてはビッグプロジェクトの総額があまり変わってない。もしほんとうに記載されているような傾向があるとするならば、実際にはどのような状況が起きているのか。つまり、大型化や高度化により、研究費が足りないという事態になってはいないのか。
   研究者側でどう感じているかという問題と、取りまとめるに当たって事務局側はどう認識しているのかという両方の問題があると思うが。
   機関課で行っていた多くのビッグプロジェクトが、近年、次々と大体完了期を迎えており、今は谷間に入っているので総額としてはそれほど増えていないという実態があるが、過去10年ぐらい前を振り返ると、次々と大きなプロジェクトが推進されてきた。
   今後の課題として、このビッグサイエンスをどうするのかということをご審議いただきたい。
   統計から見ると、過去5年間ほぼ横ばいであるが、80年代から90年代における大型ビッグサイエンスの予算は、現在の水準までずっと伸びていた。今は、その時代に伸びてきた計画がある程度完成して、一息ついたような状態であることもあり、横ばい状態である。さらに、今後どう進めるのかという審議をしっかり考える必要があるという話である。
   2つ目のパラグラフの「グローバルな観点からの評価」というときのグローバルの意味は、研究費の全体を見ろということなのか、それとも地球的なということなのか。
   これは引用符がついているので、総合科学技術会議の文章の記述である。
   「グローバルな観点」というのは国際的な観点ということであり、国際共同研究という観点で、日本がどこまで、どういう役割を果たすべきかという検討が必要だということと理解している。
   憶測だが、総合科学技術会議がビッグプロジェクトについての問題関心を持ったきっかけは、ITERや国際的な宇宙ステーションが、非常に多額の予算を必要としそうだというところからなのであり、「グローバルな観点」というのは、そのような国際的な約束事や国際的な競争、協力を念頭に置いたものと思われる。
   この文章を読むと、ビッグサイエンスという出だしになっている。括弧の中に「大きな資源の投入を必要とするプロジェクト」と再定義されているところを見ると、必ずしも、先ほどの概算要求で皆さんの関心が集まったような、いわゆるサイエンスの中のビッグというよりも、もう少し一般的な広い意味で、ITERやISS(国際宇宙ステーション)などを含み込んだようにもとれる。今回、本特別委員会で議論するビッグサイエンスとはこういうことだということを示す必要があったので、わざわざ「『ビッグサイエンス』の定義」というのを1として設けた文章構造になっている。
   4つ目のパラグラフに、「国の厳しい財政状況等に鑑みれば、このような大規模プロジェクトについては、その意義や優先度を厳しく評価するなどして、効果的・効率的に推進することが求められている。」とあるが、これが1つの前提になって推進のあり方を考えるということでよいのか。しかし、最後までみていくと、全体の構成が、優先順位を行い効率的に推進しなければならないので、ここであり方を考えるということに必ずしもなってないのではないか。「効果的・効率的に推進することを求められているので、その進め方はこうである。」という回答なのか、それとも「効率的に進めなければいけないと言っていることは意味がなく、そうではない。」という主張なのか。
   ビッグサイエンスについて出てきたのは、ITERやISSまで意識して、大きなプロジェクト、一度決めると継続的にやらなくてはいけないものについていろいろなご意見が出てきたので、積極的にやり方を検討しなくてはいけない状況になってきているということだった。ただ、その中で、いわゆる基礎科学のビッグプロジェクトも範疇に含まれるような状況になってきているという側面もあり、今の委員のご発言はその辺の絡み合った微妙な状況を、我々としてはどういう観点で、これを取りまとめるのかという問題提起である。
   ご指摘のあった部分は、よく読んでみると、ビッグサイエンスだけに当てはまる話ではない。これは考えてみれば、学術研究全体で研究手法が高度化したり、装置が多かれ少なかれ従来と比べて大型化していくということが大前提であり、一般論で言っているのか、ビッグサイエンスだけで言っているのか、よくわからない。一般論として言っているとすれば、学術研究全体を効果的・効率的に推進すべきだと読める。しかし、効果的・効率的に推進しなければならないから検討するのかということではない気がする。最後のほうにくると、ビッグサイエンス一般ではなく大型装置だけを対象にしている。全体として、この議論が始まったときのビッグサイエンス全体をつかまえてというよりも、多少議論が矮小化されているのではないかという感じがする。
   ご指摘の「しかしながら」から終わりが「効果的・効率的に推進することが求められている。」というところは、2つの文章から成っていて、後段は「一方、国の厳しい財政状況等に鑑みれば、このような大規模プロジェクトについては」ということで、大規模プロジェクトに焦点が当たっているが、先程、委員がおっしゃったような部分をどうとらえるか。確かに、1で定義するビッグサイエンスというのは、もう少し幅がある中で、かなり特定のものに限っている。これは、取りまとめにある種の実効性を持たせようとすれば、土俵をはっきりさせたほうがいいという配慮もあるのではないか。
   基本的に、総合科学技術会議から1つの問題点が投げかけられたことを受けての動きという経緯等もあり、ビッグサイエンス、いわゆる巨大プロジェクト全般というよりは、基礎科学におけるという問題点の投げかけられ方をしてきているものと受けとめている。「平成16年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」が総合科学技術会議で取りまとめられた段階では、まだビッグサイエンスというものについての定義は必ずしも明確にはなされておらず、基礎科学を少し超えるような範囲のことも念頭に置きながら書いていると思われる。よって、矮小化という厳しいお話もあったが、やや焦点を基礎科学という範囲に絞りながらこの議論を進めようということで、全体の文章構成が考えられている。基礎科学におけるビッグサイエンスと言われているものを進めるに当たっては、優先順位づけや効率的にやっていくということが大事であるということを、最初の部分で大きな方向性として述べられているところである。
   ただ、これも先ほどご指摘があったように、「研究手法の高度化や研究装置の大型化に伴い」というのは、確かにビッグサイエンスのことを指しているのか、全般を指しているのかということは必ずしも明らかでない。全体を指しているという読み方も十分できると思う。原案を整理した気持ちとしては、ビッグサイエンスについての返答として書いたつもりであり、こういったものは効率的に、あるいは優先順位をつけながらやらなければいけないという思いである。
   事務局のご説明で非常に明確になったと思うが、仮にそうするとすれば、この「しかしながら」のパラグラフの前半、「ますます多くの資源を多分投入することが必要となってきている。」の後に、「特にビッグサイエンスについては」と言えば、文章のつじつまが合い、その後、ビッグサイエンスのことを言うという気持ちが入ると思う。
   問題は、一体この文章はどこを向いて書かれているんだということである。次のパラグラフの「総合科学技術会議の指摘を踏まえつつ」というのは、どう踏まえているのかがなかなか微妙である。片足ぐらい乗っかっているのかもしれないが、その後で、ビッグサイエンスの定義から始めるという議論の立て方になっている。総合科学技術会議の資源配分方針の記述は、ビッグサイエンスとビッグプロジェクトの区別が全くなされていない文章である。それをきちんと本審議会で整理をして、正しい定義、問題点を以下に示していくという姿勢がここで見えている。
   それを受けたところが、次の「1.『ビッグサイエンス』の定義」であるが、その中ほどに「さらに」という接続詞で始まっている文章では、「実用化を視野に入れた技術開発的な要素を持つ大規模プロジェクトも数多くある。例えば」ときており、我々が議論するのはこれではないと言いながら、もう1つ別のものがあると書かれている。さらに「技術開発的な大型プロジェクトも、少なくとも大きな資源の投入を必要とするという点では、大型基礎科学プロジェクトと共通であり、科学技術に関する資源配分を考えるに当たって、研究全体の中でのバランスへの配慮や」と続き、その腑分けの意味と腑分けしてどうすればいいのかというところが、曖昧でよくわからない文章になってしまっている。我々はこの文章の中で一体どこに目をつけているのかというところが、この部分で一遍ぼけてしまうけれど、ぼかしたことに意味があるのかもしれない。そこは、この会議の席上で、きちんとスタンスを決めていかなければならない。
   また、その後の「基礎科学のビッグサイエンスについて言われるべきこと、考慮されるべきことは、技術開発的なことについても基本的に当てはまるものと考えられる。」という文章は、一体何のためにここに書かれているのかも、わかりにくい。それを矮小化と受け取るのか、どういう文脈の中で理解するのか、ここでは基礎科学的、学術的な大型サイエンスのことだけを言うという本来のスタンスとの関係で、この文章をどう評価するのか、という問題があると思われる。この学術分科会基本問題特別委員会では、その部分はもう少し整理して明確にしてもいいのではないか。
   委員がご指摘下さったくだりの1の一番最後2ページの1の一番終わりの部分は、「本分科会では、このたびの検討を行うに当たり、上記のような非大型装置型の大規模プロジェクトや技術開発目的の大規模プロジェクトの存在を考慮しつつも、主として大学共同利用機関等において、学術研究・基礎科学の研究として行われる、大型の施設・装置を用いた大規模プロジェクトを念頭において、『ビッグサイエンス』を捉えることとした。」と、ここで限定をかけている。これは、ある意味では小さく限って議論をするということだが、その前段で、場合によっては非常に重要なコメント発信のようにも読めるし、ちょっとつけてあるだけとも読めるわけだが、ほかのものについても「基本的に当てはまるものと考えられる」というコメントが入っているという流れだと思われる。
   総合科学技術会議の発信、問題提起自身に少し幅があるので、いろいろな場合を勘案して少し幅広に対応してあるが、我々がメッセージを出す部分は、我々の守備範囲であり、専門とする領域であるという限定だと思う。委員は、この部分について何か積極的なご提案があるか。
   総合科学技術会議で、ビッグサイエンスとビッグプロジェクトの区別はあまりはっきりしていなかったが、いわゆるグローバルな観点からの問題意識から出てきた議論だろう。それが、最終的に今年の資源配分方針で取りまとめられたのだろうが、当時の議論として、基礎科学あるいは学術研究における大型のプロジェクトについては、総合科学技術会議が単純に口を出すべきことではないという共通の了解があった。しかし、資源配分方針の文章では、基礎科学も何もあまり区別しないで、全部一緒になってビッグサイエンス(大型プロジェクト)というかたちで出てきたので、総合科学技術会議の射程距離の中に基礎科学的なビッグサイエンスまで入ってきたような状況ができてしまったわけである。
   本審議会では、それをどう受けとめ、どう反応するのかということが基本的な問題だと思う。技術開発的なものと基礎科学的なものとが2種類あって、基礎科学的な部分というのは、基本的に科学者が科学的な見地からしっかり議論して順位をつけなければならないものだとすれば、順位をつけるという議論をし、総合科学技術会議ではなく何とか科学者が順位付けをしようということが、ここでの課題ではないのか。要するに、しっかり我々の中で審議体制を整えてしっかりやろうのが、それに対する答えだと思う。
   もう一つ、ここ数年間の統計だけで安心できるのだろうかということである。文章全体として、ビッグサイエンスが他の分野の研究活動を圧迫するような心配な状況ではないから、安心して今までのような雰囲気の中で、科学者が議論すれば良いということで済むのかという問題が出てくる。それはまた次の問題としても、総合科学技術会議から出てきた文章が、何をあて名にして、何を対象にして議論しているのかということと、ここで議論すべきことが何であるかということをきちんと区分けして、社会に理解してもらい、総合科学技術会議にも議論してもらうことが必要になる。
   我々に問われているのは、総合科学技術会議が少し幅広な設定で投げかけているもののうち、学術や基礎科学に関する部分について我々なりのスタンスをきちんと示すことだと思うが、そういう観点で見ると、この2ページの1の終わりあたりの最後から第2番目の「なお、技術開発的な大型プロジェクトも、少なくとも大きな資源の投入を必要とするという点では」から、「これらのプロジェクトについても基本的に当てはまるものと考えられる」という文章をここに入れる必要があるのかどうか。つまり、我々が審議すべき専門領域を後に特定するわけだが、そこからはみ出ている部分について、「当てはまるものと考えられる」というようなコメントがここで必要なのかどうかということである。むしろこの段落は、少なくとも学術研究、基礎科学に関するビッグプロジェクト、ビッグサイエンスについては、学術関係者の専門的な意見に基づいて判断されるべきであるという文章の方が適切ではないだろうか。
   この「なお」書きの部分は本文から削って、どうしても入れたければ脚注か何かで入れるのがよいと思う。なぜかといえば、「これらは基礎研究とは言いがたいので、今回議論の対象とするのはどうか」と、その少し前の部分ではっきり整理ができているからである。   一方、若干気になるのは、その前にある分散型の基礎科学についてであるが、分散型のものをなぜ議論の対象にしないかの理由が何にも書いてない。理由は、今の事務局の話だと、指摘されてないからだということであるが、それでいいのか少し気になる。
   今の時点で早急に取りまとめるというのは、攻めに対して守るということではなく、この際に我々のスタンスを明示するということであり、分散型についても当然やらなければならない課題だと思っている。
   次に進んで、「2.『ビッグサイエンス』の意義及び必要性」だが、「(1)学術上の観点」「(2)国際的な観点」「(3)社会的・経済的効果の観点」という構成で、ここは基礎科学の大型装置を使うようなビッグサイエンスという土俵が確定した上での議論になるので、内容に踏み込んでご意見いただけると思う。
   4ページ「(3)社会的・経済的効果の観点」の部分に、「また、ビッグサイエンスは、最先端で独創的……。」という短い3行の節がある。これまで、日本で開発される技術はなかなか育たない。つまり、科学研究費が伸びても大半の研究費はアメリカにいってしまうというような指摘が繰り返されてきたように思うが、ここでは我が国における技術の革新等に大変役立っているというくだりが出てきた。どちらが、事実なのか。
   装置がほとんど外国製であるのは、むしろスモールサイエンスで使われる装置ではないだろうか。ビッグサイエンスに関しては、その装置の建設等は産業と非常に密接であり、R&D(研究開発)からすべて国内でやっている。例えば、最先端の大電力のマイクロウエーブ技術は、民間との協力で日本が圧倒的に進んでおるという認識がある。よって、少なくとも、スモールサイエンスの先生方が自分たちの研究のために単に実験に使う機械を購入するというような思想は、ビッグサイエンスでは全くないので、この3行は正しいと思う。
   国産の科学技術を使うという点は、大変重要なことである。大型のサイエンスになると、当然大きな技術を使う必要があるが、外国から機械を導入した場合の一番大きな問題は、大型・小型に限らず、その機械の使い方はもちろん、サイエンスをしていくための物の考え方まで支配されてしまうという点にある。これは試薬なども一緒だと思うが、特に大きな規模の国費を使ってやっていく場合には、自前の技術に対する感度を高くすることが非常に重要である。それがスピンオフ(副産物)にもつながっていく。我々の分野でも、材料を買ったりする部分は多少あるが、90%〜95%は自前の技術であり、他のビッグサイエンスの分野も大体同じ水準にあるという点では、同じ考え方を持っていると思われる。
   大規模装置の場合には、日本の産業力で本当に開発や製造ができるのかどうかというのは、予算をつけるときの審議の段階で、かなり大きな基準になっていると思う。おそらく、すべて外国から買うような大きな装置というのは、まず予算が認められてない。
   これを否定しないが、一般のスモールサイエンスで全部外国製のものを買っているという意見に対しては、反対である。研究者としては、最も優秀な装置を買わないと研究の生命を奪われるので、国産であれ外国産であれ、その研究に合う一番いいものを買うというのが基本である。外国の装置を買うのもその中の選択の1つである。科学研究費の申請の状況を拝見していただくとわかるのだが、外国製のものばかり買っているわけではない。
   もう一つは、ややその傾向があるのは、いつの内閣の時代かは定かではないが、外国製を買いなさいという国策で、我々は命ぜられてやっていた部分があった。そういう傾向がまだ今も残っている。先ほどの概算要求の話にあったように、今は計測装置を支援しようという国策に変わってきたのだと理解している。極端にスモールサイエンスが外国にお金をばらまいているという印象は避けたい。
   確かに、科学者としては自分たちでやりたいという思いが強いが、政府から外国のものを買うようにと強く言われた時期があった。
   他の点になるが、「(2)国際的な観点」4ページの冒頭あたりで、国際協調・国際共同による推進を図る理由の最たるものが、経費がかかるからであり、その経費を賄うことが困難だから国際協調・国際共同により効率的・効果的にやると書いてある。これは非常に大きな要素だが、人類未踏の挑戦をするために高額化する場合には、やはりグローバルにやろうということになる。この文章は、あくまでも経済有効性が第一と読めるところもあるので、人類未踏の領域に踏み込もうとすると、という意味合いがどこかに欲しい気はする。
   3ページの下から5行目の「第一は」というところのパラグラフに「世界一を目指してサイエンスとしての我が国の独自性を追求し」とある。この言葉の意味だが、独自性を追求して我が国独特のものを、ということはわかるが、私たち経済学者はいつも比較優位ということを考えていて、相対的に日本が強みを持っている部分をやるのが世界のためになるという理論がある。その理論が必ずしも全部、科学技術の問題に当てはまるとは思わないが、非常に単純に考えると、それぞれの国が相対的に強いところをそれぞれにやったほうが世界が幸せになるということは、すなわち世界の効率が高まるということになる。日本が相対的に強いという比較優位を持っている分野を担当することは必要ないのか。
   比較優位の議論に基づいて、各国がそれぞれ優位な部分を担って分担するというのは、普通、国際的な枠組みのときに比較的強く主張される。「第一は」と挙げてある部分では、ほかに比べて進んでいるからということよりも、人類がやったことない最初のものを自分たちがやり独自性を追求するということのように思う。比較優位の議論は、第二の国際強調・国際共同の観点や、第三の技術安全保障の観点において国際的な枠組みでこれを分担するという場合に、大変重要であると思われる。
   3ページから4ページにかけての、第二の国際協調・国際共同による推進という記述と、第三の国際的な枠組みの中で一端を担うという記述があるが、例えば、国際宇宙ステーションの取り組みやITERはどちらに入るのか。
   両面あるが、どちらかというと軸足は技術安全保障の側面だと思う。世界的なエネルギー政策の中で、日本がITERに加わっていくということ、国際宇宙ステーションという宇宙の足場を世界で1個築くという中に日本が入っているということであるから、それらは第三の観点に近いと思われる。
   基礎科学分野でもこういう要素がある。今の議論の枠組みは基礎科学に限られているので、国際宇宙ステーションや国際熱核融合実験炉そのものはこの議論の対象にはなっていないが、「第三は」の終わりに書いてあるように、「基礎科学におけるビッグサイエンスのプロジェクトについても、副次的にはこのような意義が認められるものもある。」ということである。
   先ほどの「(3)社会的・経済的効果の観点」の3行だが、このビッグサイエンスは、多くの研究施設や巨大な装置をつくるのに日本で買うから、経済的効果があるということか。もう少し発展しているものも含んでいるのか。
   技術的な資産も含まれる。
   前者について、野村総合研究所に天文台のプロジェクトを対象に調査してもらったことがあるが、直接の資源投下では公共事業と同じ程度の経済効果があると報告があった。
   「経済を支える」というフレーズが余計ではないか。
   「経済を支える革新的技術などの」よりも、「革新的技術」だけでもいいわけか。「経済を支える」と言うと直接の資源投下の効果のようにも読めるので、ここは工夫の余地があれば工夫させていただく。
   それでは、一番大切な「3.『ビッグサイエンス』の推進の在り方」の部分についてご意見いただきたい。一番重要なのは、この5ページである。今の5年間の予算状況について後ろの付図にのっとって説明している。前2回もこのような図を見てご議論いただいたが、今日のような非常に核心を突いたご意見に至らなかったのでこういう取りまとめになっている。過去5年間の状況と80年代から90年代前半にかけての状況とは大分違う。ただ、行き着いた額が、この数値なのだが、この辺についていかがか。
   この部分で非常に違和感があるのは、「2.『ビッグサイエンス』の意義及び必要性」で、ビッグサイエンスはこんなにいいことがあると言っていて、「3.『ビッグサイエンス』の推進の在り方」にきたら、予算は増やしていないと書かれている。これだけビッグサイエンスは意義があると言っておいて、800億円の横ばいというのはおかしい、もっと増やせというのなら話はわかる。スモールサイエンスを圧迫してないからいいというのは、読む人が読めばわかるが、少なくとも一般に公表する文章としては論理的に非常に矛盾をしていると言わざるを得ない。たまたま800億でとどまっているだけであって、だからビッグサイエンスについてどうするのかという点については、この文章では表わせていないのではないか。
   今の委員のご意見のようなところに踏み込むとすれば、以前の経済成長期のビッグサイエンスの伸びと、ここ数年の日本経済自体の停滞期における横ばいの分析が必要になる。今、総合科学技術会議から投げられているのは、日本経済が横ばいの時期、場合によっては経済規模縮小という時期に入っている国家経営の観点が背景にある。だから、その全般状況にここでどこまで踏み込むかにかかると思うが、現在の経済状況を見ると、かつての大切だからどんどん伸ばせという単純な論調ではうまくいかないのは明らかである。
   まず、この規模の予算を確保するという点において大変な努力がされていることを承知した上で発言するが、いろいろな分野においても、予算の枠が決まっての議論というのは大変苦しいものがあると思う。学術ということを軸足に置いて日本の科学技術をどう発展させていくかという議論であるので、まず必要なものには出す努力をするということを前面にもう少し強く出していただく。その上で、最初の議論だが、いかに効率化するか。重点化という言葉は使われてないが、いかに効果的・効率的に推進するかということを各分野で努力しているので、結果として800億円前後というのはリーズナブルな数字ではないか、という趣旨の報告書と理解している。そのあたりの積極性について、将来にわたり我々研究者がいろいろな計画を出していけるような、もしくは夢を持てるような形の表現をお願いしたい。
   経済的な停滞期に入っている日本ではあるが、その一方で、追いつけ追い越せ時代からトップランナーグループに入った日本として、こういうものが国際的な場でいかに重要であるか、また、国民や産業界、技術者をはじめとする方々を勇気づける上でいかに重要かということを、「2.『ビッグサイエンス』の意義及び必要性」でうたってきた。したがって、それを受けて、積極的な部分を書き入れ、その上でもう少し締めた文脈に持っていくというのは適切なご指摘である。この書きぶりは工夫が要るので、何人かの先生にご意見いただいて、お力添えをいただくかもしれないが、ご意見にできるだけ沿う方向で努力させていただきたい。
   次の「(2)ビッグサイエンスの多目的化、国際化」の部分についてであるが、委員から多目的でないものは、順位が下がるという感じになるのかとお話が出ていたが、ここでは運用上の工夫が図られるべきであるということだがこの文章の書き方では、どうしても多目的に使えないものは順位が下がるというニュアンスに読めるのか。
   「ビッグサイエンスの効率化という観点からは、施設・装置の多目的利用について考慮することが重要である。」と書き出されているが、先ほども言ったように天文台も多目的に使うようにと読まれると、趣旨が違うと思われる。
   共同利用について、加速器の場合は、確かにそれを使って医薬品の開発やたんぱく構造の決定などいろいろできる。学問分野、学術的な面で幅広くいろんな分野で使えるということでは、天文分野でもコミュニティーを広げて、地球物理関係や惑星科学など従来の天文固有でない部分と一緒にいろいろな計画を立てているので、ある意味ではこういう配慮を一生懸命払っているように思う。
   ただ、それが学術の本来の姿なのかというと必ずしもそうではないと思う。学術を追求していった結果が、いろいろな新しい学問分野を開いたり、関連分野を刺激していくというのは大切なことだと思う。ここの「運用上の工夫が図られるべきである」という部分は、「べき」なのか。「ことが望ましい」なのか、この辺の言葉遣いの問題かもしれないが、工夫させていただく。
   最後の「(4)ビッグサイエンスの評価及び推進に係る審議体制の充実・強化」の部分だが、従来からも、学術研究体制を議論できる場が必要であるというご意見があった。それにも重なる部分が最後の結論の一部になっているので、今回の「ビッグサイエンスの在り方について」のまとめにしてはどうかということである。具体的なことについては、今後、この特別委員会も含めて検討を続けることになる。
   少し戻るが、気になるのは2ページ目の学術、基礎科学の研究でないところに言及している部分を入れるのかどうかである。本日のご意見では、むしろこれを外して、学術、基礎科学については学術関係者が責任を持って主体的に工夫をすべきであるというような文章を入れるということであった。それから、5ページ目のビッグプロジェクトの経費が横ばいになっていることを、妥当だと言っていく部分であるが、結論としては、これを大幅に増やすということではないというご意見と理解した。ここに持っていく論理展開を、前の意義を受けて、もう少し積極性のあるところから展開して、限られた資源をきちんと工夫して使わないといけないという文脈につなげる部分を工夫すること、その2つが大きいところと理解した。
   このくくりは基礎科学におけるビッグサイエンスであると考えておられたわけであるから、研究者が取り仕切らなければならないことに最後はなると思う。しかし、先ほどの分散型のものにも重要な基礎科学がある。それをここで意図的に抜くことに意味があるのか。むしろ入れておいて、将来は中に入れられるような仕組みを考えておくのも一考かと思う。
   2ページ下、「1.『ビッグサイエンス』の定義」のところの最終段落の1つ前、「なお、技術開発的な大型プロジェクトも」のところでは、分散型のものと技術開発的な大型プロジェクトと両方の部分を除くということになっているが、「これらのプロジェクトについても基本的には当てはまるものと考えられる。」とある。その辺は、分散型の学術研究には相対的な資金が多ければ当てはまるところがある。
   基礎科学であれば、それはやはり科学者が面倒を見るのではないか。
   やるというスタンスをここで書かせていただいて含めることは可能だと思う。うまく取り入れられるかどうか相談させていただく。

(3) 核融合研究作業部会の設置について
   資料4「核融合研究作業部会の設置について(案)」に基づき、事務局より説明の後、質疑応答が行われ、核融合研究作業部会の設置について原案どおり了承された。

   このビッグサイエンスのあり方、取りまとめの最後にもあるように、今後は、学術分科会の中での審議体制も整備していくということで、整い次第、この作業部会もその中に統合されていくものと思われるが、差し当たり第1期には核融合研究ワーキンググループがあり、非常に有意義な取りまとめがなされた。ITER計画のその後を追う形で、第2次の作業会をつくりたいということである。
   「原子力研究所の核融合研究との連携」とあるが、原子力研究所だけが名指しで挙がっているわけが、それで十分なのか。
   それから、もう一つは、「大学等の研究者を越えたコミュニティー」という表現があるが、そのようなコミュニティーが存在すると考えていいのか。
   まず、日本原子力研究所についての表記は、1回目のワーキンググループでも、このような表記で議論させていただいた経緯があり、決して原子力研究所だけを特定したり、特別扱いをするいうことではない。
   それから、コミュニティー内の継続的な意思疎通については、特に重視しているところであり、コミュニティーとしては、ワーキンググループの議論でいろいろな考え方の方向性も出していただき、今後の展開についてのまとまりをつくれてきているのではないかと思われる。大きく動いている分野の1つであり、重点化や新しい分野の挑戦のためにも、コミュニティーの了解、合意をとる必要がある。そういう意味で、コミュニティーということを強調している。
   趣旨の文章の下から2行目「調査検討を行う機関を設置する。」の機関とは、作業部会のことか。
   作業部会のことである。
   核融合研究のための大きなフォーラム等があり、このコミュニティーというのは大学に限らず、非常に幅広い社会を巻き込んだものであるので、そのことを踏まえての表現と、そのコミュニティーと意思疎通を図りつつ審議を進めることは大切である。
(4) その他
   資料5「南極地域観測事業外部評価書」に基づき、事務局より説明があった。

(5) 今後の日程
   次回の基本問題特別委員会(第18回)は、委員の日程を調整の上、事務局より連絡することとされた。


(研究振興局振興企画課学術企画室)


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