第4期研究費部会(第10回) 議事要旨

1.日時

平成20年1月17日(木曜日) 10時~12時30分

2.場所

如水会館 2階 オリオンルーム

3.出席者

委員

 平野部会長、飯野委員、井上(孝)委員、鈴木委員、中西委員、深見委員、三宅委員、家委員、伊賀委員、石委員、井上(一)委員、甲斐委員、小林委員、小原委員、垣生委員、岡本委員

文部科学省

 岩瀬科学技術・学術総括官、伊藤振興企画課長、大竹基礎基盤研究課長、磯谷学術研究助成課長ほか関係官

オブザーバー

 渡邊日本学術振興会研究事業部長 ほか
(発表者)
 早稲田大学先進理工学部 竹内淳教授、大阪大学産業科学研究所 沼尾正行教授(日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員)

4.議事要旨

(1)有識者からのヒアリング

 事務局からの参考1「科学研究費補助金の平成20年度予算案について」に基づく説明に続き、早稲田大学 竹内教授から資料2「研究資金配分制度についての提案-米国のファンディングエージェンシーとの比較を主として-」、日本学術振興会学術システム研究センター 沼尾主任研究員から資料3「より信頼される科研費を目指して」に基づき発表があり、その後意見交換があった。

【大竹基礎基盤研究課長】
 JSTの戦略的創造研究推進事業は、具体的な政策目標に沿って将来の応用につなげる目的基礎研究であり、学理的な探求を旨とする科研費とは異なる制度であることから、研究対象をかなり絞っており、科研費とは審査に当たる専門家や運営の方法が異なることもあり得る。
 戦略的創造研究推進事業における利害関係者の排除についての規定が緩いとのご指摘であるが、自らの共同研究者や子弟関係にある者の課題審査においては、審査員は退室することによって公正さを担保しており、利害関係者を除いた者の査読に基づく採点をして、審査を行っている。
 また、採択件数が1領域当たり5~10件と非常に少ないので、私立大学の研究者が占める割合も変動が激しくなる。科研費と比べると事業の規模が小さいため、採択される大学の内訳に変動が大きいということをご理解いただきたい。競争的資金にも多様な制度があり、政策目的型のものと学術探求型のものでは審査方式も異なる方式を採るべき、との主張を竹内先生もされている。我々の側でも、制度や審査について、誤解を招くことのないようきちんと説明するとともに、これからも改善していきたいと考えている。本日は貴重なご意見をいただき、感謝申し上げる。

【石委員】
 竹内先生の「大艦巨砲主義」や「二極化」はやめるべき、とのご指摘はもっともである。そうさせないための手段として、上位への投資はそのままに下位のものについても投資を行えばだんだん格差は埋まることになるが、それにはかなりの財源が必要となるし、その財源は簡単に捻出できるものではない。
 上位のものへの投資を削って下位のものに回すべき、というご主張は、いわゆるレベルの低い人に回すのではなく、「将来に向けた投資」というお考えではないかと思うが、その考え方について教えていただきたい。限られた予算を有効活用するためには、とりあえず現在の水準を下げないようにしなければならないという考え方からすると、上位のものへの投資を削って下位のものに回すということは難しいのではないか。
 一方、沼尾先生のご発表は、審査の改善や採択率の向上に伴い、今後とも二極分化は是正されていくことになるので、採択数を増やしていけば良い、というものであり、竹内先生とは若干ニュアンスが異なっている。そこで、二極分化が是正されてきた大きな要因とは何であるのか伺いたい。その要因がきちんと分析できていないと、採択率の向上を図ればそれでよいという話にはならない。

【竹内教授】
 概ねご指摘のとおりであるが、私は、いわゆる「上位」とされる旧帝大への研究費を安易に減らすべきではないと考えている。旧帝大はようやく世界一線級の競争力を持つようになったが、今後、米国などの研究費も伸びるかもしれない。そのような中、競争力を有するものに対する研究投資を削る必要はないと思う。ただ今後、日本の研究費が伸びていくのであれば、上位ではなく、裾野の方に対して重点的に配分すべきと考えている。例えば「グローバルCOE」とか「トップ5」などの特別な予算は、旧帝大にではなく10位から20位、あるいはそれより下位の大学など、今後競争力を強化すべきところに配分すべきではないか。決して旧帝大への研究費を削るということを主張しているのではない。

【石委員】
 「下位のものは研究のレベルが低い」と言われていることに対してはどのようにお考えなのか。

【竹内教授】
 例えば、私立大学の研究者が旧帝大の研究者に比べて研究者の質が劣っているとは考えていない。私立大学の研究者にとっての問題は、特に教育負担が多いということである。国立大学と私立大学では、学生の数に比べて教員数や職員数が半分となっている。そのため、教育と事務に割かねばならない時間が非常に多くなる。その点さえ改善され、国立大学と同様の研究費があれば同じパフォーマンスを発揮できると考えている。

【沼尾主任研究員】
 本日は、時間の関係で審査の改善についての詳細な説明は省き、主に統計データの分析に基づいて説明したが、平成15年に日本学術振興会に学術システム研究センターが設置されてから、科研費制度は飛躍的に改善されていると自負している。例えば、今年度の申請書については、記載欄を厳選しつつ、以前のものと比べて大きく増やしており、研究の内容が非常によくわかるように改善している。
 また、審査員の選考に活用する審査員データベースの登録数も現在は4万1,000人であるが、大幅な充実を図っており、私立大学に所属する方の情報も多く追加している。
 科研費の審査制度について、学術システム研究センターが関与し、地道な改善を進めた結果、私立大学にも適切に科研費が配分されるようになっていると考えている。

【岡本委員】
 今回、お二方とも国立と私立、あるいは旧帝大とその他という構造で分析を行われているが、そうした分け方はあまりに大ざっぱ過ぎるのではないか。私立大学と言っても何百校とあり、細かい構造を見ると同じ大学の中でも状況は全く異なっている。
 竹内先生は、私立大学に所属する研究者は教育負担が多いと言われたが、平均的に見れば確かにそうかもしれない。しかし、私のようにいわゆる教養部にずっと籍を置いた者から見ると、国立大学の教養部の先生方の方が教育負担ははるかに多かった。一般的に見て、というのではなく、それぞれが持つ細かな構造「ファインストラクチャー」を見ていただきたい。

【竹内教授】
 ご指摘のようなお考えもあると思うが、この場は全体を議論するところなので、ファインストラクチャーを細かく見ることは必ずしも意味があるとは思えない。
 例えば早稲田大学と東京大学を比べると、早大は東大に比べて2倍の学生数がいるが、早大の教員数は半分ぐらいである。つまり、早大の教員は東大と比べれば、4倍の教育負担を抱えていることになる。個別に議論されれば、ご指摘のようなケースもあると思うが、全体について議論すべきなので、ご指摘は今日の論点にはそぐわないのではないかと思う。

【平野部会長】
 この点についてはいろいろなご意見があると思うが、教育研究という観点ではなく、お二方の発表に関連して、研究費における改善点について、加えてご意見があればいただきたい。

【家委員】
 お二方の発表は問題点を非常に的確に浮き彫りにしていると思うが、科研費に関しては、沼尾先生が言われたように、長年に渡り改善を続けてきた結果、ミクロで見ればいろんな問題点はあるかもしれないが、全体的には非常に公正にやっていると思う。
 今、採択率が20パーセント台の前半にとどまっているというところが最大の問題であって、これが30パーセント、あるいはもう少し上昇すれば非常に多様性のある採択結果となると思う。採択率の向上については、この研究費部会の場でも以前からお願いしてきたが、何とか財政当局にも理解していただけるように、事務局とこの部会のメンバーで知恵を出し合っていきたいと思う。

(2)科研費における評価の充実、及び評価結果を踏まえた支援の在り方について

 事務局から資料4「科学研究費補助金における審査システムの国際性等の観点からの高度化について(案)」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【垣生委員】
 資料にある「導入の効果と留意点」の最後に、研究アイデアの海外への流出等の危険性についての記述があるが、このような懸念は我が国だけのものなのか。また、海外の類似の制度でも国外の研究者に評価を依頼しているのか。その中で、そうした問題が生じているかどうかといった情報は、導入の是非を検討する際に一つの判断材料になると思うが、海外でこのような制度を導入している例はあるのか。

【袖山企画室長】
 前回部会の資料でいくつか例をお示したように、海外の配分機関で、国外の機関に所属する研究者に評価を依頼するという例はあるようだが、評価時の留意事項や海外へのアイデア流出防止のための策を講じているのかなどの詳細については、十分に把握できていないため、今後、日本学術振興会における検討などにおいて考慮して進めていただくことを考えている。

【甲斐委員】
 私も、研究アイデアの海外流出などの危険性は大変重要なことと考えている。学術システム研究センターの報告書には、相当額の国家的競争研究資金を研究者に提供している国の中で、審査員を国内に限っている科研費の体制は大変特異である、と書かれているが、このことについての説明をお願いしたい。
 NIHでは審査を外国人研究者に依頼しているが、外国人研究者の応募についても認めている。国際的に配分される資金であるから、当然ながら審査も外国人研究者が行って良い。研究アイデアの流出などに対しては、お互いに責任をとるという体制があると思う。科研費の審査員にも守秘義務があり、審査で知り得た研究アイデアの漏洩などは堅く禁じられているが、万が一そうした違反を行った場合は、研究者としての自分の応募資格がなくなることが考えられる。このことが審査における不正防止になることを考えると、応募資格を持たない外国人研究者に安易に審査だけを依頼して良いのか懸念がある。
 外国人研究者にも科研費の応募資格を認めることになれば、審査への参画は問題ないと思うが、我が国と米国の研究費には大きな格差がある中で、海外に配分するのではなく、科研費の採択率を向上してほしいと願っているのが現状である。そのため、外国人研究者に審査だけを依頼することについてはやはり慎重に議論する必要がある。また、特に高額の研究種目において取組を進めていく方針となっているが、我が国がトップになるために国として支援していこうとする研究の情報を、守秘義務が担保できない状況で外国人研究者に出すということに少し危惧を感じる。
 この提案について今後、日本学術振興会での検討を求めるということになると思うので、もう少し本部会としての議論が必要ではないか。

【三宅委員】
 海外から審査依頼を受けたことのある自身の経験であるが、審査を引き受ける際の同意書に、審査員は審査対象課題にあるアイデアと同じ研究をその審査対象課題と同時期に行ってはいけないということが記載されていた。また、応募者の研究テーマが審査員によって流用されたと考えられる場合は、そのことを訴えるための窓口が用意されている。
 このような仕組みがあれば、先ほどのような懸念が払拭されるのではないか。

【家委員】
 外国人研究者も交えた具体的な審査の方法については想像がつかない。誰に依頼するのか。応募者が推薦した人に依頼するのはほとんど意味がない。当該分野の審査に適切な外国人評価者を選考するに当たり、その評価者の持つバックグラウンドや、応募者との利害関係などを探るのは非常に難しいと思う。
 また、そうした情報がないと、評価者のコメントに対する捉え方がわからないので、外国人研究者の審査への参画が行われたとしても、苦労が多いわりに、得られる情報は極めて少ないのではないか。

【鈴木委員】
 現段階で取組の対象範囲まで一律に決めてしまう必要はないと思うが、我が国に適当な評価者がいないと思われる研究分野などについては、外国人研究者の参画を認めるということがあっても良いのではないか。
 また、少々突飛な研究提案を行った場合、我が国では応募してもほとんどの評価者に否定されるということもある。研究者コミュニティの中では、非常に良いアイデアでおもしろいと評価された研究であっても、全く採択されそうもない場合などに、応募者が国際的な評価をやってほしいと申し出た場合に、それを受け入れることのできる体制は整備できるようにしておくべきではないか。

【小原委員】
 事務的な煩雑さや制度における位置付けは大変だと思うが、基本的にこうした取組としては進めるべき。守秘義務等の制度はきちんと整備しておく必要があるが、審査員の選定は日本人の場合も苦労して行っており、外国人の場合も然るべき人物が選考者となっていれば、日本人研究者と同等レベルの研究者を選べるのではないか。ジャーナルのレビューアーなどを見ても、外国人研究者の方が公平と感じることも多くあり、外国人の適切な研究者からの意見は、日本のサイエンスを高めるためには重要だと思う。
 ただし、いきなり全て研究種目の審査に導入するのは大変な労力を必要とするであろうし、審査期間も延びるのは良くないので、特別推進研究など必要性の高いところに対象を限定して行う、ということが適切だと思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 いろんな観点からご議論いただくことは意味のあることで大変結構だと思うが、皆様のお許しがいただければ、本件については、外国の事例などを踏まえて、日本学術振興会学術システム研究センターにおいて、具体的な手段やアイデアを検討いただいた上で、方向性をもう少し絞っていただくことということにしたい。

【平野部会長】
 ただいま事務局から説明があったが、最終的な方向性は本部会で決定することとなるので、これまでのご意見を考慮した上で、日本学術振興会の方で少し基本的なところを検討していただくということではどうか。検討の結果は6月頃を目処に本部会に提出いただき、その内容についてさらに検討を進め、必要な部分を修正の上、本年夏の「審議のまとめ」にその内容を盛り込む、ということで本件に関する審議については、本日はここまでといたしたい。

(3)研究分野の特性に応じた助成の在り方について

 事務局から資料5「研究分野の特性に応じた助成の在り方について(論点メモ)」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【岡本委員】
 政策課題対応型の研究助成というものが既にある中で、科研費としても政策課題対応型の項目をつくるのか、あるいは現に課題対応型で動いているようなテーマに関して科研費の枠組みの中で特別なやり方を考える、ということなのか伺いたい。今回のiPS細胞の研究も特別推進研究などで支援しており、科研費は研究の基礎の部分で非常にいい働きをしたと思うが、ずっと科研費による支援を継続していくのは疑問がある。そうしたことを考えると、研究分野の特性に応じた科研費の支援の在り方とは、私は後者と理解しているのだが、そのような理解で良いか。

【磯谷学術研究助成課長】
 お考えのとおりである。政策課題そのものを正面から捉えるという意味ではなく、分野によって異なる特性に応じてボトムアップの手法で別の枠組みでの支援が必要ではないか。ただ、既存の研究種目の枠組みでは、ほかの分野と一緒にしてしまうとなかなかそうした形での支援が難しいといった場合もあるかも知れないということで今回、問題点を整理したということである。

【伊賀委員】
 従来、こうした対応に関係する研究種目として、学術創成研究費があった。この研究種目は政策課題対応型ではないが、学術界から重要なテーマを挙げていただき、それを行う適切な研究者を選ぶ、あるいはテーマが挙がってきて、応募してきた研究者の中から選考してやってもらうというものであり、科研費の中でも少し変わった存在であった。学術創成研究費の新規募集を停止する際の議論にもあったと思うが、政策課題対応型ではないにしても、本部会あるいは科学技術・学術審議会から大事なテーマを指摘して推進するということがあっても良いのではないか。

【中西委員】
 科研費は、あらゆる学問の基礎を強化することが基本だと思う。歴史的に見ても、がん関係の研究、特定領域的なものは昭和41年からずっとつながっている。その一連の流れの中から、iPS細胞の研究が出てきたことは大きな成果だと思う。あらゆる基礎研究を将来どのようにつなげていくかという道筋も考えて、後の評価がしっかりとできるようにする必要がある。
 もう1点は、我が国は一次産業分野の研究サポートが弱い。例えば、農業・漁業部門や食糧部門、さらには環境部門の基礎的な研究の発展をきちんと考慮する必要があると思うが、現状はあまり行われていない。一次産業にももう少し目を向けていただきたいと思う。

【井上(孝)委員】
 科研費は学術研究の推進を目的としており、研究者の自由な発想に基づく、裾野の広い多様な研究を推進することに本来の役割がある。ただ、がん、ゲノム、脳などの重点的に研究を発展させる必要がある分野については、戦略的な要素も考慮し、重点的に資源を投資することも必要ではないかと思う。
 例えば、脳科学研究は科学技術・学術審議会の研究計画・評価分科会と学術分科会の両方で推進方策についての審議が行われている。トップダウン・政策課題対応であるから科学技術振興調整費だけでなく、脳科学研究の進展が研究者の自由な発想に基づく研究の裾野を広げるという意味で、重点的に科研費を振り向けるという必要性もあると考えられる。そのあたりは、科研費本来の役割を十分考慮しつつ、重点研究を進めるということが世界への貢献や国民の利益につながるという点からも必要ではないか。

【小原委員】
 科研費は、研究者の自由な発想に基づく研究の支援を行う資金であることから、採択率を3割まで高めていくという目標は良いと思うが、研究の進捗に応じてシームレスな支援を行っていくことも必要ではないか。一つの研究が政策課題レベルまで発展するまでの間を科研費で支援していく必要があると思う。
 資料に例示のある「研究リソースの提供」などは、個々の研究者ではできない分野もあるし、ばらばらにやっていては強さがなくなる。そうした部分を支えるのは政策課題対応型ではなくて、いわゆる科研費の延長だと思う。ピュアなサイエンスではないが、インフラを支えるようなグラントというものが外国には必ずあって、分野によってはそうしたものが非常に効果的であり重要なので、科研費における取組を是非進めていただきたい。

【家委員】
 分野の特性に応じた支援というのは一般論として必要だと思うが、問題はそれを科研費の枠内でやるかどうかである。
 資料に例としてあげられているもののうち、例えば人文学・社会科学の支援と、ビッグサイエンスの基礎段階における支援では、必要な研究費の規模も相当違ってくるだろうし、研究スタイルも異なる。人文学・社会学の場合であれば、時限付き分科細目の拡張なども一つの支援方策と成り得るが、ビッグサイエンスや、感染症・再生医療ではそうした手法での対応では難しい。こうした分野による違いも考えなくてはいけない。
 また、現在科研費として支援を行っているものの中でも、学術雑誌に対する刊行助成などを行う研究成果促進費や特定奨励費など、突き詰めていくと科研費にはあまりそぐわないのではないかと思えるものもある。こうした部分も含めて科研費の再構築を考えていくつもりなのか、事務局の考えをお聞きしたい。

【袖山企画室長】
 今期部会での議論に関しては、特に科研費という枠にとらわれることなく学術研究の振興という観点から行っていただきたいと考えている。ただいまご指摘のあった点も含めて議論をいただければ結構であり、議論の範囲に特に制約を設けるものではない。

【平野部会長】
 トップダウンである国の方針に基づいて行う政策課題対応型のものと異なり、研究者コミュニティなどからの発意に基づく、ボトムアップ型の学術研究推進のための意見をどのように汲み上げるか、その中で、重点的に研究を発展させる必要があるような特定的な課題をどうケアしていくか、ということについての議論が必要である。
 予算的な科研費としての枠がここまでということではなく、学術研究の振興を図るという観点でどのような支援の在り方が考えられるか、という立場で議論を整理していきたい。

【井上(一)委員】
 「政策課題対応型の研究」と「研究者の自由な発想に基づく研究」という分類だけでなく、「研究者の自由な発想に基づく研究」の中でも、例えば、宇宙を利用した学術研究については、文部科学省の中でも違う枠組みの下で行われている部分がある。NASA(ナサ)やNIHなどがある種の別のルートで競争的資金を学術研究のために用意しているように、我が国においても別の発想があっても良いかも知れない。限られたリソースをどう整理するかは非常に難しい問題であるが、科研費においても「新しい整理」ということを考えていただいても良いのではないか。

【垣生委員】
 「研究者の自由な発想に基づく研究」の中で、特有の事情や融合型への対応というのは、今回新設される「新学術領域研究」が受け皿となるのではないか。
 特殊な事情のある新しい学問領域は、研究者の中から発想されて、自分たちの希望として出てくるのが理想だと思うので、新学術領域研究の領域提案型の拡充を図っていくことも1つの方策ではないかと考えている。

【鈴木委員】
 科研費の中にも、ある程度政策課題対応的なものも必要だと思うが、がんにしても、ゲノムにしても、我が国全体でその分野の研究を推進した時に、科研費で行う当該分野の研究が全体の研究の中でどのような位置付けで、どう貢献することになるのかがわからない。政策的な対応を行う場合、省庁を超えたところで、全体はこのような戦略で行い、その中で文部科学省の科研費はこう対応する、といったような全体像が見えないといけない。我が国全体の研究マップが見えた上で、科研費はどう対応するか、という議論をしないと、推進する理由が出てこないのではないか。がんもそうだが、特定領域研究の領域の中では、科研費以外での支援も様々なところで受けており、科研費の研究で成果を出してきても、科研費でどこまで成果が出たのかというのがわからない。やはり、資金を投資した中でどれだけの成果があったかを見るためには全体像が見えないと評価しにくい。そうした観点から制度の改良をお願いしたい。

【磯谷学術研究助成課長】
 今のご指摘に関して、「がん研究」については、関係省庁と連携して施策を行っており、関連予算の状況に関する資料もあるので、今後の議論に応じて提供していきたい。

【平野部会長】
 研究者の立場からすれば、今回のiPS細胞研究に対して、国をあげて様々なところから支援を行うべきであるが、成果のうち何をどの資金のものとして位置付けるかというのはなかなか難しいと思う。
 一方で、日本学術振興会と科学技術振興機構を統合すべきとの議論があった際、私も何人かにその問題点を説明したが、それぞれの位置付けが理解されず、「政策対応」も「学術」も同じであり、一つにして良いと言われた。
 研究を行う者、あるいはその政策を行う者は、それぞれの立場で、自らの活動の位置付けをきちんと国民にもわかる形で説明できるようにしておく必要がある。ただ、本来はそうした役割を総合科学技術会議が担うべきであり、科研費や他省庁の競争的資金なども含めた全体像を把握し、それぞれに説明を促していくことが必要ではないかと思っている。

【中西委員】
 特定奨励費については個別の研究機関を対象に助成しているようでもあり、科研費の中でも他の助成とは異なるようにも思えるので、制度の考え方についておたずねしたい。

【袖山企画室長】
 特定奨励費は、もともと科研費とは別の、学術研究法人や学術団体に対する団体補助制度であったものを科研費の制度として統合したものである。我が国の学術基盤を形成するという観点から、非常に希少な価値を持つ研究を行っている団体に対する研究助成を行っている研究種目であり、分野をある程度特定した形での公募を行っている。その意義は十分あるとは考えているが、過去の経緯等もあり、大きな見直しをしないまま今日まで来ていることもあるので、制度の在り方や具体的な運用といった面も含めて議論を行う必要があるのではないかと考えている。
 最後に、事務局から、次回の研究費部会は2月21日(木曜日)10時30分から開催する予定である旨の連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成21年以前 --