第4期研究費部会(第8回) 議事要旨

1.日時

平成19年10月31日(水曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

KKRホテル東京 11階 孔雀

3.出席者

委員

 平野部会長、井上(孝)委員、笹月委員、鈴木委員、中西委員、深見委員、三宅委員、井上(明)委員、小林委員、小原委員、垣生委員、池尾委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、大竹基礎基盤研究課長、磯谷学術研究助成課長、清浦競争的資金調整室長、渡邊日本学術振興会研究事業部長ほか関係官

4.議事要旨

(1)今後、検討を進める事項と審議スケジュール(案)について

 事務局から資料2「今後、検討を進める事項と審議スケジュール(案)について」に基づいて説明があり、この案に沿った事項・日程により審議を行っていくことが了承された。

(2)研究費の「不合理な重複・過度の集中」を避けるための方策について

 事務局から資料3「科学研究費補助金における重複制限制度について(検討メモ)」、資料4-1「府省共通研究開発管理システムを活用した『不合理な重複』『過度の集中』の排除について」、資料4-2「エフォートの取扱いについて」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【深見委員】
 科研費は優れた研究をなるべく多く支援することを目的としており、個別の課題に対する支援額もそれほど大きくないことを考えると、重複制限においては、科研費内ではなく、むしろ他府省の研究費との重複受給が最も重要な問題であり、科研費内の重複に視点をおいて、あまり制度を変える必要はないのではないか。
 審査員を務めていて感じることは、不合理な重複に関係して、同じ研究者が府省横断的に複数課題を応募した際の説明に、文部科学省には基礎研究としての課題を応募し、厚生労働省には応用研究としての課題を応募したということが多い。しかし、両者が本当に異なる研究課題なのかは判断が難しい。
 府省横断的に受給の上限を設けるのは難しいと思うので、COEのような拠点形成型のものを除き、1人当たりが受給できる研究費額の目安を設け、審査の段階でそれを超えていれば審査員にその旨がわかるようにしてはどうか。他府省の研究費の受け入れ状況や大規模の研究費が交付されているか否かを審査の段階で審査員によりわかりやすく提供していくことが重要だと思う。

【小原委員】
 政策課題対応型の他府省の研究費については、特定の目的という出口が設定された上で交付されている。設定された目的の実現のための資金が必要となるし、それを達成できる人材が他にいなければ、その人に依頼するのは構わないのではないか。ただ、事後評価における、目的が達成されたのかという点についての評価が甘いのではないかと思う。これらの制度については、極端な言い方をすれば、ある程度の重複は構わないが、評価の結果、設定された目的が達成されていなければ資金を返金させる等の措置が必要ではないか。科研費は個人補助だが、政策課題対応型の委託研究費は機関補助であるため、機関が責任を持ってその評価を行い、所定の目的が達成されなかった場合には返金を求めるようにすれば、各機関は目的が達成可能なものに絞って応募するようになるのではなり、おのずから応募件数は縮小していくのではないかと思う。このように、重複の問題は評価等との兼ね合いという面がかなり強いと感じた。

【井上(孝)委員】
 研究費の不合理な重複・過度の集中については、総合科学技術会議からの指摘もあり、これまでも本部会で議論してきた。事務局からの説明にもあったように、科研費では、不合理な重複についてはルールがある程度示されており、また、同じ審査制度の中で採択されるので、過度の集中や不合理な重複は少なくなっていると思う。ただ、これまでも本部会で問題になっていた他府省の研究費との重複については、平成20年1月から稼動する府省共通研究開発管理システムによるチェックが可能になれば、府省間での不合理な重複を排除するシステム作りが必要になるのではないか。その中でエフォートの考え方が整理されれば、不合理な重複は排除されていくと思う。今後は、府省共通研究開発管理システムを有効活用し、府省横断的な不合理な重複・過度の集中排除のための共通基準やシステムを作ることにより、過度の集中を排除していけばよいのではないか。
 以前、総合科学技術会議議員であった阿部博之氏が、ライフサイエンス関係の研究などは研究費の規模が大きい上、特定の優秀な研究者に集中する傾向があると話していたが、分野によっては特定の優秀な研究者への研究資金の集中や、エフォートの関係などについて審査段階で十分にチェックするシステムを確立していくべきだと思う。

【笹月委員】
 重複や集中の問題についての原則やルール作りについては、既に十分議論されており、一定の共通理解はできている。ただ、具体的なデータの蓄積が十分でないのではないか。例えば、研究費を200万から400万に増額しても大して効果はないが、それが2,000万、3,000万の規模になれば飛躍的に成果があがる。しかし、他方投資額が非常に過大になると、効果が下がる、というようなことが傾向として見て取れるデータベースが必要ではないか。投資額と成果との関係のカーブは分野によって異なるだろうが、そうしたデータがないと個人の受給額に対する制限に納得は得られないと思う。時間はかかると思うが、そうしたデータの整理を行なう部署ができたのであれば、多くのデータを取って解析することが今後のために重要であると思う。

【井上(明)委員】
 重複の問題は、申請時に他に受けている資金を記載させることにより、かなり改善されてきているという印象を持っている。しかし、他府省の研究費などでは申請時に研究代表者がプロジェクト全体の膨大な受給金額を記載するものの、その資金の大半は共同研究者である企業に配分され、実際に研究代表者が使用する研究費は少額に過ぎないといった実態について、現在の申請書類に書くようになっていないのではないか。金額だけが一人歩きするような傾向があるので、見直して、実態に合わせたものにしていただきたい。
 また、エフォートに関して、研究者の年間の全仕事量を100パーセントとした場合に、教育等の割合は非常に個人差があると思う。大学によっては、この教授は研究に特化させるといった方針もあるだろうが、エフォート率の配分等について個人に委ねていて良いものかどうか。問い合わせも多いことから、統一的な基準を設けるのは難しいとしても、およそのガイドラインがあっても良いのではないか。

【笹月委員】
 先ほどは過度の集中について申し上げたが、重複の問題について申し上げると、今議論されているのは配分された研究費を受ける側の個々の研究者における重複の話だが、研究者に資金を交付する配分機関における重複もある。文部科学省も他府省も最終的には同じ目的のプロジェクトに研究費を配分しており、例えば、疾病のゲノム解析について、プロジェクト名は異なっても現場の研究者が行う研究内容はほとんど同じものであり、複数の研究者が重複してバラバラに行っている。そのため、各プロジェクトの対象とする患者の数が極めて限られてしまうという量的問題や、プロジェクトにより、質が異なるという問題が非常に出てきている。
 こうした配分機関側の重複を改善すれば、無駄も省け、研究の質も向上させることができると思う。

【鈴木委員】
 重複の問題について、データベースを作るのは結構だが、実際には重複の数はそれほど多くなく、およその該当者がわかるほどである。今、対応すべきことは、審査・評価の段階、特に審査の段階で重複をきちん排除するシステムを作ることだと思う。現在の科研費の審査のように、1人に大きな負担を強いるのではなく、金額が大きい費目の場合は、少人数かつ合議制によりしっかりと審査するという改善を行えば、かなり解決するのではないか。
 また、今までにない観点の重複があると思う。特別推進研究において、同じ研究者が何度も繰り返し受給するということが分野によってはあると思う。そうした重複にどう対応すべきかという問題である。

【垣生委員】
 同一の研究課題について複数の研究費に応募することは、研究資金を確保する上で、仕方がないことであると思う。したがって、課題レベルの審査という視点ではなく、その一段階上のプロジェクトとしての視点で考えれば、重複の排除はもう少しスムーズにいくのではないか。
 また、政策課題対応型の研究について、その研究を任せたい研究者がいる場合、当該研究者が既に金額の大きい研究費を受給しているとしても、その人に交付を行う傾向があるため、重複の問題については、政策課題対応型の研究資金との関連も考える必要があると思う。
 もう一点、エフォートについて、研究者の全仕事時間のうち何パーセントか、また当該研究者の研究に費やす時間のうちの何パーセントかという2つがあるが、後者もはっきりしないことには、重複に関する評価の基準を考えることはできないのではないか。

【池尾委員】
 「研究分担者の重複制限をどう考えるべきか」という項目については、研究分野の特性と関連するかもしれないが、理工系や生物系の研究組織が階層的であるのに対して、人文・社会系の研究組織は極めてフラットな場合が多く、誰でも研究代表者になり得る面がある。例えば、A、B、Cの3人の研究者がいる場合、Aが研究代表者、BとCが研究分担者として研究課題を1つ応募し、一方でBが研究代表者、AとCが研究分担者として別の研究課題を応募するということが起こり得る。その点を考えると、研究代表者にだけ着目して重複制限を考えるのは、人文・社会系においては必ずしも実情に合わない部分があるため、研究分担者に関しても、何らかの制限を受けるという措置も検討する必要性はあると思う。

【三宅委員】
 資料4-1の6ページ「文部科学省各競争的資金制度の新規採択件数と配分額(平成19年度)」の図について、ここには私学助成が挙がっていないが、この図のどこに入るのか。また、現代GP等も、人文系の研究分野では金額が少ない割に時間を要する研究を行っているが、どこに入るのか。

【磯谷学術研究助成課長】
 この図は文部科学省の競争的資金について、研究に着目して整理したものであるため、国の競争的資金ではない私学助成や現代GPについては資料から除かれている。

【三宅委員】
 先ほど、エフォートについて、教育と研究を分離し研究に充てる時間を100と考えるという話があったが、特に私学の場合、理系、文系を問わず、私学助成や現代GPに関わらざるを得ない部分がある。その意味では、教育と研究とが密接に関わっていると思うが、エフォートを考える際には、教育及び研究に充てる時間を別々に100としたときの割合と考えてよいのか。

【徳永研究振興局長】
 現代GPや特色GPは、組織的な教育活動に係るものであるため、これらにおいて、教員のエフォートを論じる必要はないと思う。

【中西委員】
 資料4-1の6ページの図は、非常に参考になる図だと思う。問題は、あらゆる研究を支援する「基盤研究」と政策課題対応型の科学技術振興調整費との重複が増えてきた点にあると思う。また、この図にもう一つ教育面の軸を加えて、グローバルCOEの教育面やJSTの人材育成に関するプログラムも見えるようになるとありがたい。まずは文部科学省の競争的資金における重複について考え、その次の段階で非競争的な研究費や他府省の研究費との重複を考えるべきではないか。また、各制度でこれまでどのぐらいの研究者が育ってきたかという情報があれば、非常にわかりやすいと思う。

【小林委員】
 他府省の研究費との重複について何らかのルールを設ける場合、どこでその議論が行われることになるのか、また、関係府省の連絡会議ではどれだけのことができるのか、教えていただきたい。

【清浦競争的資金調整室長】
 他府省の研究費との重複に関するルールについては、一義的には総合科学技術会議で議論すべき課題だと思う。実務的な調整は関係府省の連絡会議等で行い、具体的な手段を決めていくことになると思うが、基本的な方針は総合科学技術会議で議論すべき課題である。これまでの議論について補足説明をすると、エフォートに関しては、資料4-1の1ページ目にあるように、全仕事時間は教育活動も含めたものと定義されており、その定義に基づいて運用されている。
 また、府省共通研究開発管理システムは、競争的資金のみならずプロジェクト型の研究費も可能な限り登録する方向になっており、プロジェクト型研究費についても参照できるシステムとすることを目指している。

【磯谷学術研究助成課長】
 本部会では、学術研究の振興という観点から他府省の競争的資金との重複はどうあるべきかを議論していただきたいと考えている。

【平野部会長】
 これまでの意見を総括すると、重複や集中の問題については、今後も検討が必要な事項はあるが、科研費では一定のルールが既に構築されており、それに基づいた運用が行われている。その中で、研究分担者の重複に関しては以前、本部会において、研究分担者の在り方について審議・決定しているので、その点を踏まえ、重複に関して議論することが必要だということだと思う。
 また、科研費と他府省の研究費との関係は大きな問題であり、この点の調整や決定時期が遅いものとの問題等については、本部会からの提案も含め、総合科学技術会議でより具体的に検討していただくことも今後必要ではないかと思う。
 重複に関する議論については、また次回以降にも改めて議論をしていきたい。

(3)審査結果のフィードバックの在り方、審査結果の検証の在り方について

 事務局から資料5「審査結果のフィードバックの在り方について」、資料6「審査結果の検証の在り方について(論点メモ)」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【平野部会長】
 審査結果のフィードバックの在り方、審査結果の検証の在り方について、相互に関連があるが、可能であればそれぞれ分けてご意見をいただきたい。まず、主にフィードバックの在り方について、ご意見があれば伺いたい。
 フィードバックについては、不採択になった応募者に、特にどこが問題であったのかなど、一つの事項であっても応募者に開示すれば次回の応募時に参考になると思う。
 例えば、5つの項目について評価し、その合計で判定するシステムであれば、そのうちの1つの事項、特に低かった評点の平均点などは、一定のフォーマットにより開示が可能ではないかと思うが、いかがか。

【小林委員】
 日本学術振興会における審査においては、審査の各項目について平均点を開示するようになっているため、問題点についてはその中で把握できると思う。

【井上(明)委員】
 日本学術振興会で試行的に審査結果の検証を行った際、審査員3,500名のうち、何らかの問題があるとされたのが400名おり、それらについて詳細に審議した結果、25名に問題があるとの判断に至ったという話があったが、これは審査結果のフィードバックとも関係する。審査が終わった6月に400人の審査員が何らかの問題があるとされたことと、その審査員により不採択とされたことについて、結果は是正されていると思うが、因果関係はあるのか。もう一歩のところで不採択となったものについて、通常の審査であれば採択された可能性があるという点についてはどうか。

【磯谷学術研究助成課長】
 先ほど部会長が言われた、不採択になった場合の問題点を一定のフォーマットで開示することについては、科学研究費補助金審査部会でもご議論いただきたいと考えている。

【渡邊研究事業部長】
 審査員の適正さに問題があった場合でも、担当した課題の採否についての因果関係についてまでは調査していない。ただし、採択を決定する際には合議審査を行い、書面審査の結果を全て確認するため、一人の書面審査員だけ極端に低い評点や高い評点を付けている場合には、その妥当性について審議を行っている。したがって、その際に問題が指摘されれば、問題のある審査員による評点の影響はある程度排除できていると思う。

【笹月委員】
 アメリカでは、審査結果のフィードバックを受けた際に、採否のボーダーラインにある応募者が付されたコメントに対して異議申し立てを行い、次の段階の審査を受けるチャンスを得ることがある。このような仕組みをすぐに導入することは難しいと思うが、審査結果のフィードバックを行おうということは、その延長上に将来そうしたことを導入することも考えた上でのことなのか。もし将来、導入しようと考えているのであれば、十分な議論や準備、一度不採択になった課題を再び採択するための予算措置が必要となるなど、様々な課題があるが、そうしたことも検討課題の一つと考えておいていただきたい。

【鈴木委員】
 「特別推進研究」や「特定領域研究」で不採択になった翌年に応募してくる方は、前年に指摘を受けた欠点を修復して応募してこられるようなので、審査意見については、ある程度は機能していると思う。難しいかもしれないが、審査員の質を向上させる、あるいは審査結果の質を向上させる意味で、コメントを書いた審査員の名前を公表することも考えてはどうか。不採択となった応募者からの反論にも十分対応できるということを考えながら、審査あるいは公表する内容の質を向上させていくことも考える必要があるのではないか。

【平野部会長】
 笹月委員、鈴木委員の提案について、科学研究費補助金審査部会で検討する可能性はあるか。

【磯谷学術研究助成課長】
 笹月委員のご提案についてはまだ考えていないが、コメントを書いた審査員氏名を公表するという鈴木委員のご提案については、「特定領域研究」では、現在のシステムを考え直す必要があるが、いずれにしても審査部会で議論していただくことはできると思う。

【平野部会長】
 審査結果のフィードバックについては、審査書類の内容にもよると思う。審査意見や手続きの一部をフォーマット化できれば、審査員の負担も軽減され、事務的にもデータとして整理ができるのではないか。応募課題の7割以上を占める不採択課題全てについてコメントをつけるのは審査員の負担が大きいため、事務的であっても一定のフォーマットにより審査意見をフィードバックすることは一つの方法かと思う。
 次に、審査結果の検証の在り方についてご意見を伺いたい。
 質問だが、評点については相対的な分布をとるよう審査員に求めていると思うが、それを守らない審査員がいるということか。

【渡邊研究事業部長】
 ご指摘のとおり。審査員は一人当たり平均90件を審査しているが、その中で、評点の分布を相対評価で概ね1対2対4対2対1にするよう依頼している。これは目安として示しているものだが、大幅にぶれているものについては機械的にはじき出して、さらに詳しく検証している。

【磯谷学術研究助成課長】
 問題があるとされた400人の審査員の中で、25人に次の年の審査を依頼しないというのは、1年ごとに委嘱し、2年の任期とされている審査員について、2年目の委嘱を行わないという理解でよいか。

【渡邊研究事業部長】
 委嘱は1年ごとで、基本的に2年続けて依頼することとしているが、1年目に問題があった審査員については、2年目は委嘱しない。最終的に問題があるとした25名とは、2年目に委嘱しない者と2年目の審査で問題があった者を合わせた数である。

【平野部会長】
 審査に携わっていた際、特に第二段審査において、委員の間で評価に偏りがある際には、特に注意をして議論する必要があると提案した。例えば、ある審査員が高い評点をつけた際、その背景は慎重に検討する必要があるが、萌芽的な研究については評価が分かれるのが当然であり、平均点だけ見れば不採択になりかねないものについてもしっかり審査しようと何度か提案した。現在も当然、そのように審査していると思うが、審査員本人の偏りは、その意味では評点分布の偏りと理解してよいか。

【渡邊研究事業部長】
 ご指摘のとおり。
 特に、「萌芽研究」については、3人の審査員のうち1人だけでも最高の5点をつけるような場合、念入りな審査をお願いしているが、他の研究種目についてはそこまで行き届いていないという事情もある。

【垣生委員】
 資料6において、「審査結果だけではなく、審査の過程をレビュー・検証する仕組みが必要ではないか」とあるが、これについて公表するのは非常に難しいと考えるが、どのような形を想定しているのか。

【袖山企画室長】
 具体的な案はまだないが、例えば審査の過程をレビュー・検証した時に、その結果を何らかの形で公表するという取組そのものはやはり必要ではないか。その場合、例えば個人の利害との兼ね合いをどのように考えるべきか、あるいはそれを踏まえた形での公表方法にはどのようなものがあるかを、ぜひご議論いただきたい。また、レビューについては、単に個々の審査員の審査状況だけではなく、審査における全体的な問題点や、その年の応募、審査の傾向も踏まえた全体的な審査状況のレビューも必要ではないか。そのようなレビューを公表している競争的資金制度もあるが、科研費においては現在、審査結果のみを公表しており、審査員の負担や実際にレビューを行うとした場合にはどのような仕組みで行うべきか、あるいは誰が行うのかという点も含めてご議論いただく必要があると考えている。

【垣生委員】
 審査過程を公表するという点に疑問を覚えるが、具体的には、例えば「今回は著しい偏りがあった」という形で公表するということか。審査過程を公表することは非常に難しいのではないか。レビューの仕組みを考えるのは良いと思うが、レビュー自身の公表をどのように行うのか想定できない。

【平野部会長】
 それはまだ具体的に考えておらず、それを含めて本部会で検討しなければならないが、この点について特にご意見があれば伺いたい。

【垣生委員】
 もしレビューを行うのであれば、例えば「評点の偏りがあるが、非常に萌芽的な研究は今回採択した」といったことや、審査の透明性の確保という点で、審査に携わった者の人数などについて、審査結果をフィードバックする際に合わせて記載してはどうか。

【平野部会長】
 科研費については、慎重な審査が行われ、全体としてはうまくいっていると聞いているが、さらに応募者が納得するような改善をする必要があると考えるがいかがか。

【池尾委員】
 審査員が責任を持って審査をしなければいけないのは当然だが、制度として審査員の匿名性を確保するか否かは、非常に大きな問題ではないか。審査員の責任が無限責任のような形になると、審査員になることを拒否するという事態にもなりかねないことから、採択について最終的に責任をとるのは制度としてであって、審査員個人については、匿名性が維持される形のシステムの範囲で考えるべきではないか。

【平野部会長】
 審査員が責任を持つべきと発言した趣旨は、審査員になれば当然責任を持って審査に当たらなければならないという意味であり、名前の公表を念頭においての発言ではない。
 本日は主に2つの議題について議論したが、本日の資料やこれまでの動きを踏まえ、意見や補足的なことがあれば、事務局にもその旨伝えて、次回部会に臨んでいただきたい。

(4)その他

 事務局から、参考1「平成19年度科学研究費補助金の配分について」、参考2「平成20年度概算要求における科学技術関係施策の優先度判定等について(科学研究費補助金部分抜粋)(平成19年10月29日 第70回総合科学技術会議配付資料)」に基づき説明があった。

【小原委員】
 別の会議で質問を受けたので1点だけ確認したい。平成20年度科研費から、「基盤研究」の研究期間が、従来の「2年から4年」から「3年から5年」へと変更されている。本部会において研究期間の延伸について議論があり、本部会がとりまとめた「審議のまとめ」においても4年の期間を延伸するべきとされているため、4年を5年に延伸するのは良いが、2年を3年に延伸するのは、現場から見れば単年度当たりの研究費が減ることになり、非常に戸惑いがあると聞いている。2年から3年の延伸について、本部会ではきちんと議論されていないが、経緯は把握する必要があり、研究者コミュニティーにとっても非常に重要なことだと思うので、「審議のまとめ」と実際の施策との関係について確認させていただきたい。

【磯谷学術研究助成課長】
 様々な議論を踏まえて概算要求を行った。特に、総合科学技術会議の下の研究資金ワーキング・グループにおいて競争的資金の制度改革等について検討され、最終的に基本政策推進専門調査会がとりまとめた報告書の中で、競争的資金制度全体として、短期間の申請を続けるのではなく、適切な資金配分を受けて、しっかり研究していただくということで、例えば原則として研究期間は3年から5年を基本とするという方向性も示されている。政府全体の方針や本部会の議論も踏まえて、概算要求あるいは制度改善を提示している。
 ご指摘の件は、大学へ制度説明に伺った際などに時々聞いている。特にライフサイエンス系については資金確保のために短期間の研究種目に応募するようだが、適切な規模の研究種目にできるだけ応募していただきたいと説明している。
 最後に、事務局から次回の研究費部会は12月6日(木曜日)13時から開催する予定である旨の連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課