第4期研究費部会(第6回) 議事要旨

1.日時

平成19年7月19日(木曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

霞が関東京會舘 35階 シルバースタールーム

3.出席者

委員

 平野部会長、井上(孝)委員、上野委員、鈴木委員、深見委員、家委員、伊賀委員、石委員、井上(一)委員、甲斐委員、小原委員、垣生委員、池尾委員、岡本委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、藤木大臣官房審議官(研究振興局担当)、大竹基礎基盤研究課長、伊藤振興企画課長、磯谷学術研究助成課長 ほか関係官

4.議事要旨

(1)「審議のまとめ(その1)」について

 事務局から資料2「科学研究費補助金において当面講ずべき施策の方向性について(研究費部会『審議のまとめ(その1)』案)」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【平野部会長】
 ご意見をお出しいただき、必要なところは修正をしていきたいと思っているので、順番に審議したい。まず、「1 基本的な考え方」のうちの「1 学術研究助成に関する基本的考え方」についてご意見があれば伺いたい。

【井上(孝)委員】
 全体的には、今までの議論を集約しており、非常に良いと思うが、14ページの「基盤的経費と競争的資金の役割とそのバランスの在り方」において、第3期科学技術基本計画、基本方針2007、教育再生会議第二次報告などを見ると、基盤的経費と競争的資金の適切な組合せ、評価に基づく効率的資金配分を図るという骨太の方針にあらわれているように、必ずしも基盤的経費から競争的資金にシフトするという考え方があるわけではない。従来から研究費部会においても、基盤的経費は確実に措置する、競争的資金は非常にニーズが多いため拡大するというのが基本的な考え方だったと思う。そこで、1ページの下から2番目の丸において、現状を報告しているという点で、2行目で「一方で、競争的資金については増加する傾向となっている」、と客観的事実が書かれているのは良いが、その後の「大学等への公財政支出が基盤的経費から競争的な資源配分へとシフトする傾向」については、研究費部会でそのような考え方を是認しているようなニュアンスが出るので、不適切ではあり、削除してはどうか。
 関連して、1ページの最後の丸で、「こうした方向性を一層強化することを提言する向きもあるが」とあるが、骨太の方針等ではそのようなことは言われておらず、基盤的経費と競争的資金の適切な組み合わせを今後検討すると言っているだけであるので、この1行もやや書き過ぎではないかと思う。基盤的経費と競争的資金の両者の組み合わせ等については、研究費部会においてもこれまで議論をしてきており、それ以外にも、経済財政諮問会議など、あるいは骨太の方針を受けて、今後、政府部内でその在り方を議論するというところであるため、あまりここで方向性を示すのはいかがかと思う。

【平野部会長】
 文言はまた整理することとし、今の部分については、井上(孝)委員のご指摘の線で考え方をまとめることとしたい。

【小原委員】
 2ページ目の(2)の最初の丸で、「政策課題対応型の競争的資金との違いが明確になるように制度的な改善を図りつつ、その充実を図ることが必要」とあるが、これはもっともだと思うが、色々な誤解もある。政策課題型と科研費との違いを制度的にあまり明確にしてしまうと、以前からずっと申し上げているが、抜け落ちてしまう面が必ず出てくる。「充実」という文言があるので、これでおそらく良いと思うが、やはりこれは科研費の改善のための文章であるため、その意味は、科研費の中で一定程度のセーフティーネットというものを張っておくということと読んでいただきたい。

【平野部会長】
 確かに、誤解もある。トップダウンから来る部分とボトムアップから来る部分について、テーマによっては共通的な似た部分があるのは当然であるが、その点を大学等の関係者以外からも指摘されていることも事実であるため、ここで触れておくこととした。

【磯谷学術研究助成課長】
 原案の趣旨としては、今、部会長がおっしゃったとおりだが、3つ丸があるうちの最後の丸において、シームレスに互いの制度を連携するということも書いているので、トータルで読んでいただきたいと思っている。

【小原委員】
 トータルに、シームレスにというのは、かなり上手に制度設計をしていかないといけないので、そうした精神をきちんと今後の議論に反映していただきたいと希望する。

【平野部会長】
 トップダウンとボトムアップを含めて、後からきちっと壁ができて、切れるというものではないので、この部会としては、今後ともそのようなスタンスできちんと対応し、必要なところには書き込みを行うということとしたい。
 では、3、4、5ページについて、ご意見があれば伺いたい。

【甲斐委員】
 3ページの2つ目の丸で、「他の競争的資金では研究費用を措置することが難しい人文社会系の研究等にも十分に配慮するため」「当面、新規採択率30パーセント以上を目標として予算の拡充を図るべき」とあるが、内容的には大変良いと思う。ただ、挙げられている例で「人文社会系の」というのは必要ないのではないか。他の競争的資金では研究費用を措置することが難しい研究というのは、ほかの分野にもあるので、一般的に書いていただければ十分ではないかと思う。

【平野部会長】
 今のご意見は、特別、ここで人文科学を挙げなくてもいいのではないかというご指摘であるが、いかがか。

【井上(孝)委員】
 この点は、前回もご意見が出ていた、人文社会委員会の検討結果として、人文社会系については、従来、どうしても配分の比率が低いということもあり、人文社会の振興のためには、やはり人文社会系の研究に科研費で配慮してほしいという委員会の意志がここに若干反映され、例示として挙がったものであり、できれば残していただきたいと思う。

【甲斐委員】
 そのような気持ちは大変よくわかっているが、新規採択分すべてがボトムアップで、どこかに偏重しないという基本的合意のままであれば良いが、新規採択率30パーセント以上について、例えば人文社会系を先にしようというような動きにつながるのを懸念したため申し上げた。

【袖山企画室長】
 この議題の後に、今後の検討の進め方についてご提案させていただきたいと考えているが、分野ごとの研究費助成の在り方についても、第4期研究費部会の議論を始める際の審議のお願いしたい事項の中に入っているので、秋以降、特に人文社会系等も含めた分野の特性に応じた研究費の助成の在り方についても、この部会でご議論いただきたいと考えている。

【平野部会長】
 「人文社会系の」というところがひとり歩きをしないよう留意をするということだが、第3期の研究費部会から、人文社会系についてどのように奨励するかという意見が出ていることも伺っている。「十分に配慮するために」は強いので、少し言い回しを考えたほうが良いかもしれない。

【岡本委員】
 「研究等」の「等」が、「人文社会系の研究」全体にかかっているため読みにくいのではないかと思う。例えば、「人文社会系等の研究にも」と修正してはどうか。

【平野部会長】
 「理系はもとより」という文言が入っていればよりはっきりするが、今のご提案で、その趣旨がわかりやすくなったと思う。

【鈴木委員】
 3ページの3つ目の丸について、研究者が安定して研究できる環境を確保するため研究期間を延ばすというのは、理由としてあまり強くないと思う。様々な趣旨の研究によっては、期間が短いほうが適当なものもある。単に安定して研究できる環境を確保するというのは、強いモチベーションにならないように思うので、むしろ、研究種目によって様々な研究があるため、弾力性を持って期間が長い場合も作るというようにしたほうが良いのではないか。関連して、「研究できる環境を確保する」とすると、その下の間接経費の項目にも「研究環境の整備や」とあり、直接経費と間接経費が若干混同しているのではないかという懸念も生じる。その理由もあって、上から3つ目の丸は、もう少しモチベーションが強く出るような書き方にしたほうが良いのではないか。
 また、一番下の丸で「直接経費を減額して間接経費」とあるが、「新規採択率の低下を招くことから不適切」というのは理由としては非常にマイナーであると思う。やはり直接経費が減れば、その分だけ日本の研究基盤が低下するという非常に大きな問題があるため、むしろそのような理由にしたほうが良いのではないか。

【家委員】
 鈴木委員ご指摘の最初の点は、改めて文章を読んでみると、全くそのとおりだと思う。おそらく枕言葉が抜けており、特に優れた研究が継続的に行えるという趣旨だと思うので、それが伝わるような文章を少し工夫していただければ良いと思う。
 また、確かに環境という言葉は、直接経費と間接経費の仕分けに少し障るかもしれない。議論の背景を知っていれば行間が読めるが、初めて読む人には少し違和感があるかもしれない。これが外に出た際に、誤解を招かないような表現にすることが必要だと思う。

【平野部会長】
 上から3つ目の丸について、今、家委員がご指摘されたように、背景はこの部会での議論のとおりであり、特に優れた研究が継続的に進むために、といった表現に置きかえてはどうか。
 それから、全ての種目に間接経費を30パーセント措置する必要がある、パイが限られているため直接経費を削って間接経費に回すようなことは避けたい、という趣旨であり、これも書きぶりの問題だと思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 ご指摘のとおり、「新規採択率の低下」は例示として適当でないので、修正させていただく。

【平野部会長】
 きちんと研究環境を確保するという背景での間接経費の充実は必要であり、書きぶりを少し整理してもらうようにする。

【伊賀委員】
 今の間接経費30パーセント措置の記述について、間接経費を何のために措置するのか、その趣旨を「等の観点からも」の前に入れるべきではないか。例えば、「研究者の処遇改善」とあるが、間接経費で本当に処置できるのか。

【磯谷学術研究助成課長】
 例えば、間接経費で、特別手当など様々な形で人件費を上乗せすることも出来る。

【伊賀委員】
 やはり、きちんとした機関の経理を行うのが一番の根本なのではないかと思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 例示として不適切なので、中心的な内容から書きたいと思う。

【伊賀委員】
 なぜ30パーセントかということを訴えなければいけないと思うので、そのようにお願いしたい。

【石委員】
 伊賀委員のご意見の延長上の議論だが、間接経費を増やすのも結構だと思うが、使い方が問題だ。直接経費をもらった個人に、間接経費を還元している例もあると聞く。そうしたことは間接経費の使い方がしっかり理解されていないから起こるのであり、大学全体のオーバーヘッド的な部分に間接経費を使うということをきちんと言っておかないと、全て個人に還元しては何のための間接経費かわからない。伊賀委員のご指摘を踏まえて、そのあたりをもう少し書き込んだほうがよいのではないか。

【垣生委員】
 3ページの3つ目の丸について、ここには2つのことが入っていると思う。
 最後の行の「優れた研究を継続的に支援可能とする仕組みを確立すべき」であるということと、基盤研究の期間を少し長目にして安定して研究をするということとは、少し違うのではないか。基盤研究(S)については、これで良いのかもしれないが。腰を落ちつけて研究をして、良い成果を捻出するのが基盤研究の期間延長の趣旨だと思うが、その結果、優れているかどうかは別であり、全て最後の1行でくくれるような内容とは理解できないのだが、どうか。

【平野部会長】
 2つあるとすれば、基盤研究(S)について「特に」ということだと理解しているが、どうか。

【伊賀委員】
 私がこれまで申し上げてきた、延伸というのがここのポイントだ。大型のものを次々にもらうトップレベルの研究者が新規参入を阻害する部分もあることから、規模はあまり大きくないが、期間が長目のものを作ってはどうかと申し上げたことが、この延伸という部分に反映されている。研究者が安定にというのは、もらった研究者が安定になるが、もらっていない人はより不安定になる。大規模ではないが長目のものを考えたほうが良いのではないかというのが、ずっと私が申し上げ続けている意見である。ここでは延伸という表現だが、やはり長期的支援プログラムの設置というのが一番大事なところだと思う。

【平野部会長】
 伊賀委員のご意見は、細かく言えば、研究の初期は設備も必要なため規模が大き目で良いが、それ以降は運用できる程度の金額で長期に支援できる体制がとれればという内容だと理解する。

【袖山企画室長】
 各委員ご指摘のように、ここは色々な要素が入り込んでいる。優れた研究が安定的・継続的に支援できるように、というのが大きな趣旨だが、基盤研究の研究期間の延伸は基盤研究(S)に限った話ではなく、基盤研究全体について、例えば、3年から5年というように長くするという側面、基盤研究(S)そのものの充実という側面、評価システムという3つの側面が入り込んでいるので、ご指摘を踏まえ、文を整理したい。

【平野部会長】
 先ほどより議論があるように、全体の中ではあるが、基盤研究(S)については特に、という位置づけで、少し切ってわかるように補足修正させていただきたい。
 間接経費については、石委員も発言されたように、少し趣旨を書いた上で導入するということで良いか。

【甲斐委員】
 間接経費について、その趣旨を少し書くことには賛成する。
 今、石委員が、オーバーヘッドと話されたが、研究費をもらった研究者の研究環境、研究基盤を整備するということが趣旨に入っていたと思う。しかし、実際は逆で、私の知る限りでは、全くその研究者に還元されていない例のほうが多いと思う。完全に大学がオーバーヘッドとして取ってしまうと、研究費の事務を行う場合や、所属する部局、あるいは大学の研究環境を整備する場合には使用できるが、例えば、その研究者が研究費で買った機器が壊れた場合、その研究費が切れてしまったら、次に取っても、その研究費では直すことができないというような不合理が生じている例もある。そのようなものは、間接経費で直しても良いのではないかという議論もあったが、機関の自由であるため、実際には自分の研究に対しては間接経費で全く環境を整備してくれないという不満の声を聞く。そのため、間接経費は完全にオーバーヘッドであるということはないと思うので、研究環境を整備することの事例を幾つか入れていただけるとありがたい。

【磯谷学術研究助成課長】
 間接経費は、機関の長の判断のもと、研究環境の整備に使うことになっているので、機関の長が判断するということについてはオーバーヘッド的なニュアンスがあるかもしれないが、趣旨としては、戦略的に機関の長が判断して間接的に研究環境の整備に使うということだと理解している。

【徳永研究振興局長】
 オーバーヘッドとインダイレクトコストとは全く違う概念であり、いわば手段・方法としてオーバーヘッド、イギリスで言えばトップスライスという扱い方をしている。性格そのものはあくまでもインダイレクトコストであるため、当該大学もしくは研究者の周りを含む環境の整備、その他、例えば、研究担当副学長や研究協力担当職員の人件費まで含め、幅広く研究環境の整備に使うことになる。ただ、その具体的手法としては、通常、オーバーヘッドがとられている。オーバーヘッドをするのが大学本体か当該部局かは様々であるものの、基本的には、間接経費を具体的にどのような形で大学当局が保留し、それを執行するのかということと、インダイレクトコストそのものであるということとは、やや性格が異なるが、その点をもう少しきちんと書き込んだほうが、誤解がないかと思う。

【平野部会長】
 間接経費が出てきた当初は、おそらく各機関において大変な議論があったと思っており、私自身も、大学全体において、例えば検収センターの整備や、部局と研究者個人の研究環境の整備に充てるという部分を含めて間接経費の有効利用に努めているが、その割り振りの違いについては研究者等からクレームも聞いているので、間接経費の趣旨を明示した上で、研究環境の意味内容がわかるような書きぶりに修正することとしたい。

【家委員】
 先ほど出ていた研究期間の延伸の件について、細く長くやりたい人の可能性も認めるという意味では良いと思うが、この記述がひとり歩きして、全体で一律に応募者が研究期間を延ばすと、予算が伸びなければ後年度負担が増えるため、新規採択率を圧迫してしまう。そのため、ここの書き方というよりは、公募要領をどう書くかという問題だと思うが、細く長くやりたい人にも、短期決戦でやりたい人にも可能性があるという、フレキシビリティーを増やすという趣旨だと理解している。

【平野部会長】
 公募要領の問題も含め、少し工夫が要るだろう。

【深見委員】
 基盤研究においては、期間を長くすることも非常に重要だが、トータルの金額が同じで期間を長くしても、あまり喜ばれないと思う。今と同様の水準で長くなるのであればありがたいと思うが、トータルの金額が同じで期間だけ長くするのでは、基盤研究の充実という本来の目的と合致しないと思うので、トータルでもきちんとサポートしていくことが必要だと思う。
 4ページの若手研究者の部分については、若手研究(S)も今年でき、充実してきたことは評価できると思うが、現時点で若手にこれ以上の拡充がほんとうに必要なのか、疑問がある。若手をサポートすることは良いことだと思うが、若手研究(S)ができた時点で、今ここに書く必要があるのか。むしろ、それより多くの研究者が対象になっている、基盤研究の金額について少し柔軟に対応できるような表現が良いのではないか。
 もう一つ、先ほどの延伸については、総額が増えない段階では単に延ばすという意味としてとらえられると思うので、基盤研究(S)、基盤研究(A)、基盤研究(B)、基盤研究(C)について、延伸とともにトータルが増える方向が望ましいという書き方が良いのではないかと思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 今のご指摘は、先ほど基盤的な研究種目のところでご議論いただいた、金額の充実を含めて全体の拡充を図るというところで読み込まれており、若手については、若手研究(S)の学年進行など、引き続き若手種目の内容も充実させる必要があるので、決して新たなものを作っていくという趣旨ではない。

【長澤企画室長補佐】
 研究期間の延伸の問題については、特に2年に関して、細切れの支援でなく、もう少し長期間安定した支援を行うと同時に、現状として、実力のある研究者が少額の研究費区分に短期間で応募され、1年ごとの額は大きく取って、研究を継続するというケースがある。実力がある研究者はそれなりの大型の研究費にシフトしてはどうかいう意見もあり、細切れの支援をずっと続けるのではなく、支援規模に合った研究を長期間設定して行ってもらうのも良いのではないかと考えた。
 年度ごとの額が下がることに関しては、充足率を上げれば対応でき、例えば、拡充がもし間に合わない場合には採択率が少し下がるということもあるかもしれないが、その種目の趣旨、区分に合った研究課題の採択につながっていくのではないかと考え、このような延伸の形になっている。

【平野部会長】
 これについては、先ほどからの議論をベースに、申請の仕方について、次のステップとして議論すれば良いと思うが、どうか。
 期間の延伸については、細かい内容に関しては研究者のやり方にもよると思うので、書きぶりについて留意したほうが良いと思う。
 研究を行う際、初年度に必要な装置を導入して研究を進めるが、3年目ぐらいになると、金額は少なくても良いが、もう一、二年続ければ次の大きな段階に進める場合がある。そうした点は、本人が責任を持って、きちんと計画を立てた申請の仕方があればよいと思っている。伊賀委員の以前のご発言も、そこが基本だと思う。
 4、5ページのところでご意見があれば伺いたい。

【甲斐委員】
 4ページの「科研費の効率的な配分・効果的な使用、不正使用等の防止」について、「『不合理な重複』や『過度の集中』が生じているとの指摘があり」の後、「その排除が喫緊の課題」というのは少し強いのではないか。それほど大きな問題になっているとは思われないので、「必要」という表現で良いと思う。
 次に、「府省共通研究開発管理システム」が稼働する予定であり、その積極的な活用等により、また再び「不合理な重複」や「過度の集中」を排除することが必要と繰り返されているが、2度言う必要はないと思うので、「稼働する予定であり、その積極的な活用が必要」で良いと思う。
 その後に、「研究者が複数の競争的資金に応募することなく、自らの研究課題に沿って研究活動に集中することができるようにするためには、一課題当たりの必要な研究費を確実に措置することが重要」というのは大変良いと思う。ただし、確実に「不合理な重複」、「過度の集中」を排除すべく、あまり厳密にして、ある研究費をもらっている間にほかの省庁に前年度申請することができなくなると、大変重要な、良い課題が切れるおそれがあると思う。そうした多額な経費をもらっている研究は、ある程度優れているため選ばれているので、切れないよう、「措置することが重要」の後に、例えば、「重要であり、同時に継続を妨げない配慮や工夫も必要」といった文言を入れてはどうか。

【鈴木委員】
 「なお、研究者が複数の競争的資金に応募することなく」とあるが、これは必要ないのではないか。色々な研究テーマを持っていれば、色々なものに応募しても良いはずであり、そこまで拘束する必要はないのではないか。
 また、「一課題当たりの必要な研究費を確実に措置することが重要」とあるが、これはその通りだと思うが、具体的方法が思い浮かばない。今までやっていなかったわけでもなく、研究費を今まで以上にきちんと精査して措置するといった方法しか浮かばないので、この「なお」以下は必要ないと考える。

【家委員】
 今の話に関連して、この文章の本来の趣旨は、既に課題が採択されて研究活動を行っている人が、それと並行して、ほかの課題に応募しなければ資金が足りないということがないように、ということだと思う。新規の人は当然、複数に応募するのであり、それを妨げるものではないはずなので、書きぶりに工夫が必要だと思う。
 もう一つ、「一課題当たりの必要な研究費を確実に措置する」については、原則的にはそのとおりだが、いわゆる水増し請求に対してどうするかという問題がある。研究者がモラルを持って必要額を申請すれば良いが、実際には必ずしもそうではない。これを非常に形式的に適用すると、充足率は何割以上にせよ、ということになるが、その場合、水増し請求をした人が結果的に得をするようなモラルハザードを招く事態になると思う。文章の趣旨はわかるが、どのようにすればよいか。

【平野部会長】
 まず、「排除が喫緊の課題」というよりは「必要」のほうが良いという指摘については、これでよいか。
 次の4ページの下の丸について議論となっており、前の2行について「積極的な活用が必要である」とした後の文章については、既に研究が進んでいる同一課題についての重複的な申請を排除できるようにしたいといったことが背景ではないかと思う。
 新規の際には、幾つか応募することはあり得ると思うが、もう既に動いている研究についてどうするか。

【徳永研究振興局長】
 ここで言いたいのは、まず現状をきちんと書くことが必要であるため、研究者が同一の研究課題について科研費を複数申請する背景として、当初申請した額が査定をされて、計画した額より減るのを補うために、実質的には同一の当該研究課題について、別途科研費を申請するということがあり、その結果として、いわば共同研究者として名前を連ねて行われている実態があるという我々の分析がある。そのようなことがないよう、基本的に1課題について確実に措置をすれば、単に金額的、金銭的な面を補うための複数申請を避けられるのではないかという基本的な問題意識や、これまでの事実の分析があるので、それを踏まえて、その点をきちんと書きたいと思う。

【甲斐委員】
 鈴木委員のご意見に賛成する。「研究者が複数の競争的資金に応募することなく」と書かれてしまうと、複数の競争的資金に応募してはいけないかのように思われるが、例えば、同じ課題を四、五年続けて研究していると、申請には書かれていないが、同じタイトルの中から違うことが派生してくることもあり、お金が足りなくなることもあるので、一律に禁じられないと思う。「一課題当たりの十分な研究費を確実に措置することが重要」という言葉はとても良いが、ここに入れなくても良いと思う。ここにこの文言が載っていることにより、多くの研究者が、1つの研究種目では足らずに、小さい種目を2つ3つ合わせて研究しているのを妨げることになり、大型の研究費をもらっている人に関しては、継続するために応募するのを妨げてしまうと思うので、書くとすればきめ細やかな書き方が必要だと思うが、「なお」以下を削除しても良いのではないかと思う。

【平野部会長】
 書きぶりを整理したほうが良いかもしれない。重要なところなので、今のご意見を踏まえて修正し、事務局から各委員にご意見を伺うこととしたい。最後は私にお任せいただき、整理したいと思う。

【池尾委員】
 審査・評価システムの改善について、丸が2つあり、それぞれ審査システムの改善が必要、評価システムの改善を図ることが必要という書き方になっているが、これだけ見ると趣旨がよくわからない。本日の次の議題になっている資料3を見ると、「科研費における評価の充実」と、「評価結果を踏まえた支援の在り方」という2つの課題としてはっきり表現されている。この資料3につながる文章として、ここにあるのだと思うが、現在の文章だけを見ると、資料3のように、明確に2つの検討課題があると読み切れない。後者の丸については、支援の在り方の検討がポイントであることがはっきりするように文章を工夫してはどうか。
 支援体制の在り方まで包含した形での評価システムと理解すれば、この文章で意味が通ると思うが、評価システムは広義に支援の在り方まで含むと必ずしも受けとめられないのではないかという疑念があったため、申し上げた。

【垣生委員】
 審査・評価システムの改善について、これまでの公正性、透明性を旨とする審査システムは、国際的にも評価されているとある。その後に、「審査の国際性」という文言が入っているが、これは、外部評価に外国人を入れて、国際レベルで審査をするということか。そうすると、これまでのシステムに不具合があったのかと読めるが、そのような点を指摘された記憶がないので、これはどういうことなのかお伺いしたい。

【磯谷学術研究助成課長】
 具体的にどのようにしていただくかは、9月以降にご議論いただきたいと思っているため、我々としても具体的な考えを持っているわけではないが、政府の諸会議において、競争的資金の審査の国際性についてさらに充実するという議論もあり、科研費についても、これまでも国際性については様々な議論があったため、ここに書かせていただいた。

【垣生委員】
 具体的に、今、何かがあるというわけではないということか。

【平野部会長】
 国際的には、科研費自身の審査そのものは、非常に公平性が保たれているが、大型を含めた今後の色々な審査を考えると、より国際的な視点での審査が必要ではないかという指摘があるということが、この文章の背景だと理解している。

【垣生委員】
 必要性をあまり感じない。むしろ、申請者、研究者への負担が多くなるだけではないかと思う。

【平野部会長】
 指摘として、この文章は生かしていただき、審査の在り方については、今後また別のところでご議論いただけると良いかと思う。

【伊賀委員】
 同じところに関して、必要性というのは、研究者がもらえる額が少なくなってもやってほしい、と研究者が望んでいるかどうかにかかっている。
 また、国際化する場合、情報セキュリティを国際的に担保できるかどうかという問題が出てくる。

【甲斐委員】
 「審査の国際性」は入れなくても良いのではないか。

【平野部会長】
 「審査の国際性」は必要かどうかという議論だが、「配慮しながら」とあることから、このままとし、配慮の結果、要らないという審査部会の判断があれば、入れる必要はないということで良いか。
 次に、「2 科研費において当面講ずべき制度改善方策」について、9ページの頭までご意見を伺いたい。

【家委員】
 研究領域提案型については、基本的に、今の特定領域研究とそれほど変わるものではなく、少し規模を落として件数を増やそうという趣旨だと理解するのでこれで結構だと思う。
 研究課題提案型については、基本的に考え方はこれで結構だと思うが、問題は、この予算規模及び想定される件数によって、審査の在り方も随分変わってくるという点、もう一つは、基盤研究との重複応募をどこまで認めるのかという点だ。例えば、今、萌芽研究は重複応募が認められているため、多数の応募が殺到し、基盤研究(C)のセカンドチャンスのようになっているところもある。今後の議論の話だと思うが、もし、事務局である程度想定しているものがあれば、ご紹介いただきたい。

【袖山企画室長】
 規模等については、従来の萌芽研究よりは大型のものとして、年間1,000万ないし2,000万程度の間で検討したいと考えている。
 重複制限の問題については、現在のところ我々で案を持っている段階ではないが、全く重複制限をかけないと、非常に多数の応募が想定されるため、何らかの重複制限を検討せざるを得ないと思っており、具体的な内容については審査部会でご議論いただきたいと思っている。

【家委員】
 研究課題提案型に、今の学術創成研究費の予算をそのまま移行するとした場合、例えば、年間予算が1件当たり1,000万ぐらいと想定すると、採択は何件ぐらいになるのか。

【長澤企画室長補佐】
 想定では、学術創成研究費を、基盤研究(S)と研究課題提案型に移行させると考えて、1,000万では80課題というイメージになる。

【平野部会長】
 細かい審査方法等については、今後の議論であり、基本的な考えをここでご理解いただければと思う。
 次に、9ページ目からの「研究分担者の在り方の見直し」について、ご意見を伺いたい。

【鈴木委員】
 研究協力者というのは、なぜ必要なのか。色々な協力をする人は多くいるので、無理に分ける必要はないのではないか。研究分担者と連携研究者がはっきりしていれば、その他の者は特に書く必要がないように思う。

【長澤企画室長補佐】
 研究協力者という区分は、研究分担者や連携研究者との違いをわかりやすくするために設けている。研究に協力するその他の人は皆、研究協力者ということになる。

【袖山企画室長】
 従来、研究協力者については、研究計画の申請の中で、研究協力者という位置づけで調書に書いていただいた事例も多くあり、今回、連携研究者という新たなカテゴリーを設けたこともあるので、それとの違いを明確にするため、この審議のまとめの中では、きちんと位置づけをしておくこととした。ここに研究協力者と書かれたからといって、必ず調書に書かなければならないというものでは全くない。

【磯谷学術研究助成課長】
 従来も、研究協力者というのは公募要領に書いてあるので、改めてここに入れたということである。

【甲斐委員】
 例えば、海外との共同研究をする際、調書にその旨を書いた場合に、海外機関の相手のことを研究協力者として書いていたと思うが、それを今回も残していただいたということだと思う。

【平野部会長】
 次に、10ページの下の「評価の充実、及び評価結果を踏まえた支援の在り方」について、ご意見があればお伺いしたいが、特に無いようなので、基本的にはこの線でまとめていきたい。
 次の「科研費の研究成果のとりまとめ、及び社会に還元していくための方策」についても、この線でまとめていきたい。
 その他のところでご指摘があれば伺いたい。

【鈴木委員】
 元に戻るが、7ページの学術創成研究費について、「一方で、推薦者の専門分野に近い研究テーマが推薦されるケースがあり」とあるが、これは、逆に自分の専門でない分野を推薦するのは非常識ではないかと受け取られかねないので、ここで言う専門分野は非常に狭義な意味であることを書く必要があるのではないか。また、「研究テーマと同時に研究実施者が推薦されるケースが多い」とあるが、書くように求められている実状と矛盾しているのではないか。もう少し具体例を書かないと、誤解される可能性があると思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 後者の趣旨は、研究テーマと同時に研究実施者が推薦された場合、推薦される方と研究実施者の間に利害関係があるケースも見受けられるというご指摘を踏まえたものだが、鈴木委員のご指摘を踏まえて表現を工夫したい。

【井上(一)委員】
 前回も少し指摘した2ページの一番下の丸に関して、ここでは応用・実用化段階までの発展ということで「シームレスな支援」という言い方になっているが、萌芽的・基礎的段階であっても、大型の研究として個別に概算要求していく部分と、競争的資金で取ってくる部分との境目について、「シームレスな支援」をお願いしたいので、その趣旨も含めた言い方にしておいていただきたい。

【平野部会長】
 今の井上委員のご発言の趣旨をこの中へ入れ込めるよう、事務局とも相談して、工夫したい。

【家委員】
 最初に井上(孝)委員がご指摘されたデュアルサポートの件について、井上(孝)委員のご意見に全面的に賛成だが、客観的事実として、総合科学技術会議などでは選択と集中ということが盛んに言われており、競争的資金に関して適用されるならまだしも、基盤的経費に関しても適用されるような空気があるように思う。研究費部会ではそうした考え方をとっていないため書く必要がないと考えるのか、あるいはそうした空気があるため、ここでその問題点を指摘すべきなのか、お考えいただいたほうが良いかとも思う。

【平野部会長】
 これは最初の部会でも議論があり、井上(孝)委員が言われたように、デュアルサポートの意味について、トータルが決まっている中でどちらもサポートするということにならないよう、基盤的経費は確実に措置するということをきちんとうたったほうが良いということだったが、石委員から、限られた予算の中でどの財源が取れるのかという議論があったことを踏まえているが、この部会としては、特に教育再生会議の提言にあるように、基盤的経費を確実に確保した上で、競争的資金の増額を図るということをスタンスにしてはどうか、という理解でよいか。

【袖山企画室長】
 書きぶりについてはご議論いただきたいと思うが、事務局としては、こうした方向性を一層強化することを提言する向きもあるが、というところについて、参考資料としてつけている提言の中では、こうした方向性がにじみ出ているものはないが、それに至る前段階のところ、例えば、この研究費部会でもご紹介した、経済財政諮問会議における民間議員の提言や、財政制度審議会における分析などにおいて、基盤的経費についてもいわば競争的に配分すべしという提言も実際になされている状況を踏まえ、このような書きぶりにした。

【井上(孝)委員】
 2007年の概算要求に絡んで、この審議のまとめをしている観点から言うと、先ほど申し上げた14ページの骨太の方針において、審議会等からの意見をすべて集約して書かれているので、そこに至る様々な議論は、研究費部会の意見と異なるため書く必要がないのではないかと先ほど申し上げた。骨太の方針では、基盤的経費の確実な措置と、基盤的経費と競争的資金の適切な組み合わせということを書いてあるので、それ以前の議論、あらゆる議論をここに包括して書く必要はないのではないかという意味で申し上げた。

【甲斐委員】
 7ページの、これまでの特定領域研究と学術創成研究費を発展的に見直すという方針について、学術創成研究費を取りやめるにあたり、基盤研究(S)を充実して、研究課題提案型を設けることの趣旨は大変よく理解した。具体的方策の2番目の丸について、「新学術領域研究(仮称)」を新設し、新たな審査・評価方法を導入していくことが適当とあるが、学術創成研究費の一部は基盤研究(S)の充実によって補うということが少し見えないため、「新設し」の後に、「基盤研究(S)を発展・充実させ」などの文言を入れていただけると良いと思う。
 また、基本方策は大変よく理解したが、希望として、学術創成研究費には、良し悪しはともかくとして、色々な研究を拾ってくれ、おもしろみもあった。融合領域等に関しては、研究課題提案型で見事に拾っており、基礎的な研究で特別推進研究に行くまでの間の新しい分野の創成や、新しい課題については、基盤研究(S)で拾っており、とても良いと思うが、国際的な見地や社会貢献に関する研究について拾うところがなくなってしまったと思うので、将来的に考える項目の中に、課題として残していただけたらと思う。

【伊賀委員】
 甲斐委員のご指摘に関連して、13ページの「その他」の2つ目の丸において、特別研究促進費とあるが、ここで大事な研究をやるという側面もなくはない。ここは非常に重要なので、調査研究にとどまらず、必要な重要研究であるという形で、「その他」を結んでいただきたいと思う。調査研究だけではなく、応募があるのを待っていても来ないというものでも、特別研究促進費等で措置する必要があればできるのではないか。
 同じ13ページの「その他」の1つ目の丸については、現状ではこのような基礎調査が不十分であることが学術施策の妨げになっているというのは変な論理である。日本学術会議の意見や、日本学術振興会の学術システム研究センターによる学術の動向の調査など、実際に調査がないわけではないので、このような基礎調査を十分に学術振興の施策に反映させるようなシステムの構築が必要、といったポジティブな書きぶりが望ましいのではないか。

【垣生委員】
 科研費に関する制度改善の一環として、6ページから8ページにかけて質問したい。まず、8ページに、特定領域研究と学術創成研究費については新規募集を停止とあるが、それに代わる新学術領域研究を募集するという理解で良いか。今度の予算要求で出すのは、新学術領域研究ということになるのか。その方策についてはこれから詳しく検討するということか。また、現在行っている特定領域研究はそのまま続行するということか。

【平野部会長】
 そのとおり。

【垣生委員】
 その中で、特別な特定領域であるがん、ゲノム、脳は、この制度改正には含まれないのか。

【磯谷学術研究助成課長】
 現在の特定領域の中にポストミレニアムの3分野も入っているので、平成21年度までは、そのまま続くということになる。

【垣生委員】
 それが終わった後、新学術領域研究に行くか行かないかは未定なのか。

【磯谷学術研究助成課長】
 ある意味では未定だが、そのまま行けば新しい制度になると思う。

【垣生委員】
 もう1点、特別推進研究について、審査を文科省からJSPSに移すということだけが記載されているが、特別推進研究については、採択された研究がさらに発展した場合に、その研究をまた特別推進研究にするか、さらに大きいところに展開するかという議論があったように思う。今年の秋までには必要ないかもしれないが、研究費部会でぜひ検討していただきたい。

【平野部会長】
 必要なところは今後検討していきたい。
 本日いただいたご指摘については、整理をし、私のほうで責任を持って対応したいと思っているが、皆様方に書面でお送りし、言い回し等を含めて反映されていないところをご指摘いただきながら、最終的な整理は私のほうにご一任いただければと思うが、良いか。

(「異議なし」の声あり)

(2)「今後、検討をお願いしたい事項」について

 事務局から、資料3「今後、検討をお願いしたい事項(案)」に基づいて説明の後、了承された。

(3)その他

 事務局から、資料4「当面の審議日程について(案)」に基づき、次回の研究費部会は9月28日(金曜日)13時30分から開催予定である旨、及び、今後、月1回程度開催予定である旨の説明があり、各委員の賛同を得た。

(以上)

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研究振興局学術研究助成課