第4期研究費部会(第5回) 議事要旨

1.日時

平成19年6月29日(金曜日) 15時~17時

2.場所

全国都市会館 3階 第1会議室

3.出席者

委員

 平野部会長、飯野部会長代理、井上(孝)委員、上野委員、中西委員、三宅委員、家委員、伊賀委員、井上(明)委員、井上(一)委員、甲斐委員、小原委員、垣生委員、池尾委員、岡本委員

文部科学省

 戸渡政策課長、川上振興企画課長、大竹基礎基盤研究課長、磯谷学術研究助成課長ほか関係官

4.議事要旨

(1)科学研究費補助金における「研究分担者」の在り方について

(2)科学研究費補助金における評価の充実、及び評価の結果を踏まえた支援の在り方について

(3)科学研究費補助金の研究成果のとりまとめ、及び社会に還元していくための方策について

 事務局から資料3「科学研究費補助金における「研究分担者」の在り方について(素案)」、資料4「科学研究費補助金における評価の充実、及び評価の結果を踏まえた支援の在り方について」、資料5「科学研究費補助金の研究成果のとりまとめ、及び社会に還元していくための方策について」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【平野部会長】
 まず資料3の研究分担者の在り方について、ご意見があれば伺いたい。

【家委員】
 研究分担者については、前回の部会での議論が反映され、落ち着くべきところに落ち着いたと思う。後は、研究分担者がどのようなものであるかということを研究者に周知徹底することだと思う。
 1つ確認したいのは、複数の研究機関にまたがる研究で、経理は研究代表者が一括して行うものの、購入した備品の一部を別の研究機関の分担者のところに設置するケースがあり得ると思うが、その場合に別の研究機関に属する研究者は、ここでいう連携研究者であっても可能なのか、あるいは研究分担者でなければいけないのか。

【袖山企画室長】
 今の家委員のご指摘のケースは、基本的には連携研究者という位置づけを想定している。

【平野部会長】
 今、家委員が話されたように、研究分担者の役割について、研究者に理解してもらうよう努めていかなければいけないと思う。
 次に、資料4にある、評価の充実、及び評価の結果を踏まえた支援の在り方についてご意見を伺いたい。

【小原委員】
 施策の方向性の部分で、特別推進研究について、指定席化ととられないような配慮は理解するが、更新回数に制限を設けると、これまで応募していた研究者はどこへ応募すればよいのか。枠組みとして重要だと思うが、良い人材が国外に出てしまわないか。
 全体が少ないため更新できない場合は当然あると思うが、もともと応募のチャンスがないとなると、その研究者はどうすればよいのか。

【袖山企画室長】
 特別推進研究の採択については、更新回数に制限を設けるが、それ以外の種目へ応募し採択されること自体を妨げるものではない。また、例えば特別推進研究の評価結果がすぐれている場合には、その評価をもって基盤研究Sに応募した場合に、基盤研究Sにおいて採択が有利になるという仕組みを構築し、すぐれた研究は継続して行えるようにする。
 ただ、特別推進研究を、例えば15年、20年と続けていくことは望ましくないのではないかと考え、例えば基盤研究S、Aにおいてさらに発展させていくということを想定している。

【小原委員】
 現実的にはそうかもしれないが、結局、何回か採択されたら出しても通らないというルールになると理解してよいか。

【袖山企画室長】
 特別推進研究に出していただくのではなく、ほかの種目に出していただくということである。

【小原委員】
 ほかの種目がもっと充実するのであればよいと思うが、特別推進研究と基盤研究Sを比べると規模が随分違うので、規模を下げろと言っているのとほとんど一緒だと思う。

【袖山企画室長】
 基盤研究Sについては、従来の特別推進研究とのギャップを埋めるべく、いわゆる規模の大型化を図る必要があるのではないかという指摘もあるので、そうした内容を審議のまとめで記載してはどうかと考えている。

【磯谷学術研究助成課長】
 補足だが、特別推進研究については、様々な人にチャンスを広げる観点から、3回、4回と同じ研究者に出すのはいかがなものかという議論を聞くことがあるので、このような提案とした。小原委員はそのような制限を設けなくていいというご意見だが、先生方のご意見をまさにお聞きしたい。

【甲斐委員】
 確かに特別推進研究は指定席になっていて、強い研究者がとっている限り、ほかの若い研究者がとれないという問題はあるが、私も回数に制限を設けるのはよくないのではないかと思う。
 特別推進研究は、すぐれた研究であるから選んでいるのであり、必ずしも10年、15年で終わるものではない。ほかの種目のSを充実していくとの考えがあるのだろうが、Sの規模もまだ決まっていない段階で先に制限を設けるのは、逆に質を落として平均化させていくという考え方が先行するようでよくないのではないかと思う。Sを上げることも、ほかの種目を上げることも必要だが、回数制限は設けないで、自然にほかの種目に流れるならよいが、すぐれた研究であるがやはり後進に譲るべきだと、我々が言うことではないのではないかと思う。

【井上(明)委員】
 更新回数の制限については、間を1年か2年おく、あるいは違う種目を間に1回置けばいいということか。
 また、特別推進研究においてもう少し広い予算体系があってもいいのではないか。ステータス的なものも重要だが、特別推進研究を1、2回行うと、かなりの装置がセットアップされ、その定常的な経費が必要なケースも多々ある。もう少しオーバーラップする基盤研究Sと、特別推進研究の下限よりも基盤研究Sの上限のほうが大きいケースもあってもよいのではないかと思う。

【平野部会長】
 更新回数に制限を設けるか否かということよりも、期間の問題と一、二年に与える費用、その後研究を推進するときの費用も含めて考え直したほうがよいという意見と理解してよいか。

【井上(明)委員】
 確かに、ただ単に2回以上は更新できないというのはどうかと思う。しかし、基盤研究Sでテーマがさらに発展してくれば、また特別推進研究はとらないというようなケースもあると思う。

【家委員】
 特に特別推進研究で非常に良い成果が出て、継続してサポートすることが必要なケースで、その評価が非常に良い場合、今、井上委員がおっしゃったように、設備は既にできているので後はランニングコストをサポートすればいいということであれば、基盤研究Sができたときにそのような趣旨もあったと理解しているので、評価結果を反映して、ある程度優先的にサポートするということは良いと思う。
 ただ、さらに、もう1回特別推進研究に応募する、あるいは研究規模を拡大するような場合には、新規と同じ土俵で勝負してくださいということで、更新回数に制限を設けることについては反対である。特別推進研究を何回も行うことは好ましくはないと思うが、チャンスをなくすことには反対であり、新規の課題と同じ土俵で勝負をした結果、新規が採択されなくても仕方がない。
 ランニングコストをサポートするものであれば、今の基盤研究Sを少し拡大したもので支援し、特別推進研究をもう1回行いたいという研究者はそこで勝負してもらう。
 今、井上(明)委員が発言されたように、特別推進研究でも申請応募額を下げて応募してくるならよいが、実際には制限いっぱいに応募してくるケースがあり、予算の関係で新規課題が採択されないという事例もある。

【井上(明)委員】
 分野により違うと思うが、特別推進研究においてすばらしい成果が得られたら、他省庁が放っておかないというような形で発展版に移っていくことがあるとすると、特別推進研究においても、3回目ぐらいになる研究者は、何々特別推進研究というような、発展版に進む形の科研費システムがあってもいいのではないか。特別推進研究を3回、4回続けるよりも、他の分野の研究者にとってもわかりやすいと思う。

【池尾委員】
 これは評価の仕方の問題と関連していると思う。厳正な評価の結果、3回目のものが選ばれれば問題はないのであり、機械的に更新回数を制限することは、評価自体が厳正に行えないため、やむを得ず取った処置だといううがった見方をされかねない。回数を重ねるほど、厳しい審査をするといった配慮はあってもよいと思うので、機械的に更新回数を制限するのではなく、更新の際に、更新であるという条件を踏まえてさらなる評価をするという対応が適切ではないかと思う。

【中西委員】
 評価の際、継続する研究は、新規の研究と比べて十分に実績があり、その実績が重んじられる傾向にあると思うのでその公平性をどう保つかが問題である。
 しかしながら、研究は継続性が重要であるので、回数で区切らないほうがよいのではないかと思う。例えば、1回で区切るとなると、その助成をもらうことだけが目的になってしまいかねずその分野の研究育成と異なってくる恐れがあると思う。

【伊賀委員】
 井上(明)委員が言われたように、私も、長期間のものが必要だと考えている。装置等も充実している研究をさらに国際的に発展させることも重要だが、新規者に機会を与えることも必要だ。
 例えば、科研費のL、ロングを設け、まず2,000万クラスを10年ぐらい続けた後、200万ぐらいを10年ぐらい続けるという対応が最も良いのではないかと、前期部会でも申し上げた。これについては技術的な検討が必要だと思うが、ステータスを保ちながら研究を継続することが可能になるのではないか。

【小原委員】
 先ほど井上(明)委員が発言されたことは、生物系でも当然あると思う。非常にすぐれた研究であれば、他省庁等が放っておかないこともあり、JSTのCRESTと行ったり来たりすることもあるが、CRESTは出口が求められる。特に生物系において、すぐに成果には結びつかないような基礎研究も国として大事にしたほうがよいのではないか。金額の査定はきちんとできると思っているので、更新回数を制限するのではなく、運用で井上(明)委員のご発言されたことは十分出来ると思う。

【井上(明)委員】
 非常に広い幅ができれば、回数制限はなくしてよいと思う。

【平野部会長】
 これまでの意見をまとめると、今の形で回数更新の制限を設けることはよくない。制度設計をどうするかについては次のステップが要るが、ベテランに比べると実績が少ない新しい人たちをどう育てるかが大きな問題だと思う。
 そうすると、運用上そうした人をきちっと評価して、一定年数続けられるような制度設計を考えておけば、更新回数については、ここであえていう必要はないのではないかと理解する。制度設計は簡単ではないので、経験者を踏まえて議論をする必要があるということでよいか。
 新しい人が入れるよう特別推進研究のゲートを広げようという意識は皆同じだと思うので、今まで続けて良い成果を出している研究者について、次をどうするか、回数制限ではなく、何らかの制度設計を加えて、次のステップを考えるということでよいか。
 次に、資料5についてご意見を伺いたい。

【家委員】
 研究成果報告書をインターネットで公開することについて、1つ検討が必要だと思うが、研究成果報告書には大抵の場合、自分の発表した論文が後ろについており、これをインターネット上で公開するということについては、著作権の問題があり、出版社によって対応も異なるので問題があると思う。

【長澤企画室長補佐】
 国会図書館関西館に送られている研究成果報告書をそのままインターネットに載せるのではなく、例えば、今提出いただいている研究成果報告書の概要を少し充実させたものをインターネットに載せるなど、簡単な仕組みで研究期間全体を通じた研究成果報告書を公開することにしてはどうかと考えている。
 冊子体の提出については、今は研究者から直接、国会図書館関西館に送っているが、手間やお金がかかるわりにあまり意味がないのではという意見もあり、簡素化して提出を求めないこととする。
 また、研究内容を知りたいと様々なところから求められており、現在の800字程度の成果の概要よりも充実したものを、すぐに取り出せる仕組みがあったほうがありがたいということで、例えば5年間で何をやったのかがわかるものをウェブに載せることにより有効活用されると考えている。

【伊賀委員】
 日本学術振興会が行っている学術創成研究費と基盤研究Sについては、日本学術振興会の科研費部会の了承を得て、図面等を含んだA4版2枚の提出を試行することにしている。図面等があるので著作権の問題は慎重にしなければならない部分があるが、A4版2枚で大体の研究内容は把握でき、より詳細な内容については機関で見ることができるので、今の800字の概要と大部の冊子体との中間をねらって試行的に行っている。これについてはいつかご披露してご批判をいただければと思う。

【岡本委員】
 趣旨はよくわかったが、家委員のご意見は、2次使用に関する著作権関係がかなり複雑であり、非常に多数の方が報告書を書く際、必ずどこかで問題が起きる可能性がある点について考えておかなければならないということではないか。
 例えば、今私の大学でも行われているが、先生方の講演をネットに載せてどこでも見られるようにしている。しかし、講演の中の冗談についてさえも著作権の問題が発生したことがあり、ウェブに載せることについては制度をきちんと考えておかないと、影響は大きいのではないかというのが家委員のご意見の趣旨ではないかと思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 本日ご提案したことは、すべての事項についてすぐに実施するということではなく、特に岡本委員や家委員のご指摘の問題も当然あると思うので、フィージビリティー等含めて検討し、ある程度具体的な形が出た段階で、ご報告、ご相談することを考えている。

【平野部会長】
 伊賀委員からご発言があったように、日本学術振興会で少し試行されているようなので、次の機会にご披露いただき、次のステップに進めるか議論をしていきたい。
 公開のあり方についても、著作権の問題と合わせ、考え方を整理しなければならないと思う。

【甲斐委員】
 科研費の情報公開は国立情報学研究所、NIIで行われる。坂内所長とも話をしているところだが、意欲的に国民に成果を知ってもらうことを考えておられるので、あわせてヒアリングしたらどうかと思う。

【平野部会長】
 一度そういう機会を設け、議論をもう一歩進められればと思う。

(4)研究費部会「審議のまとめ(その1)」(素案)について

 事務局から資料2「科学研究費補助金において当面講ずべき施策の方向性について(研究費部会「審議のまとめ(その1)」素案)」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【平野部会長】
 2部構成であるので、まず基本的考え方についてご意見を伺いたい。

【小原委員】
 2ページ目に、「他の資金との連携強化により、…シームレスな支援を行うことが必要」とあるが、ここは科研費について議論する場なので、他の資金との連携強化は必要だと思うが、どういうことか。

【袖山企画室長】
 従来、研究費部会は専ら科研費について議論をしていたが、第4期は必ずしもそれに限定せず、学術研究をサポートするという観点から、幅広く研究費のあり方、助成のあり方についてご議論いただくということでスタートした。そうした観点から、学術研究助成に関する基本的な考え方については、科研費に限らず、科研費を中心としつつも、その他の資金等とのシームレスな連携によって、全体として学術研究助成を図ることの重要性をうたってはどうかと考え、このような記述とした。

【井上(一)委員】
 当初部会に来られなかったので、議論があったかどうかわからないのだが、例えば宇宙科学のような分野における衛星計画など、個々の研究機関が用意するような大型の研究費の規模と、科研費の規模との境目についての議論はどのようになっているのか。

【磯谷学術研究助成課長】
 今までの議論の中心は、主に科研費と、その他の競争的資金の在り方であり、今後、分野別の研究費助成のあり方や、学術研究全体の振興の中での科研費と大学共同利用機関等における支援との関係についても議論していただく必要があると思っているが、今回審議のまとめではそこまで踏み込んだ議論をしていない。

【伊賀委員】
 4ページの一番上のタイトルに「効率的な配分、不正使用等の防止」とあるが、「効率的な使用」が中に入るとよいのではないか。文章の中に、「研究費の効率的・効果的な使用」を「不合理な重複」と「過度の集中」の排除により解決するという論点があるが、やはり効率的な使用については別の概念として必要であると思う。繰越について、各研究者の関心が高く、効率的な使用ができるため活用が進んでいるにもかかわらず、本報告書の中に書かれていないので、触れたほうがよいと思う。
 繰越については、過渡期であるため、数は増えているが、評価という観点からどのように進めていくか戸惑いもあるので、評価との関連、効率的な使用という観点から、触れるのがよいのではないか。

【中西委員】
 3点申し上げたい。1点目は、新規採択率30パーセントとあるが、競争的資金の全体の予算規模がもし変わらない場合については、次のページにあるような他の研究費の採択とのバランスを考えていく必要があると思う。予算が全て伸びればよいが、片方しか認められない場合もある。しかしそれでも科研費の新規採択率を上げることを検討してほしいと思う。
 2点目に、従来の常識にとらわれない挑戦的な研究に対する支援について・・とあるが、言葉は非常にわかりやすいが、実際の評価は極めて難しいと思う。評価の客観性が担保されることで初めてこの文章の意味が出てくると思う。トップダウンで選んだ場合には、ともすると不公正になる。不公平はあってよいが、不公正は排除する方向でいってほしい。
 3点目は、今、伊賀委員が話されたこととも関連するが、4ページ目の「府省共通研究開発管理システム」は非常に重要な進歩だと思うが、これはまだ第一歩ではないかと思う。いろいろな府省庁で同様のプロジェクトが行われているので、将来は各府省庁共通の研究プロジェクトを立ち上げる方向で検討していかないと、この問題は解消しないのではないかと思う。
 以上、3点気がついたが、あとは非常によく書かれていると思う。

【井上(孝)委員】
 基盤的な経費の確実な措置と競争的資金の拡充という、いわゆるデュアルサポートシステムの考え方はこのとおりだと思うが、基盤的経費については、骨太の方針2007などにおいて、教育再生会議や経済財政諮問会議、規制改革会議等の議論を収束した形で、大学・大学院の改革を前提として、運営交付金の配分見直しを平成19年度中に行うと述べられている。その関連で言うと、国立大学の運営交付金や私学に対する経常費助成をどのように配分するかは不分明であり、この基本的な考え方だけでは、それらに対して十分説明ができないのではないか。ただ、科学技術・学術審議会学術分科会の中での議論は、従来からこの基本的な考え方のとおりであるため、本部会としてはこの方向でよいと思うが、年度末まで、シビアな議論が展開されるのではないかと思う。
 また、先ほど議論のあった、他の資金との連携強化によるシームレスな支援に関しては、研究費部会でどこまで議論するかについて従来もずっと議論が行われてきたが、ここにある「萌芽的・基礎的段階から応用・実用化段階まで研究の発展に応じてシームレスな支援を行うことが必要」というのは、まさに競争的資金全体の考え方を示しているのではないかと思う。先ほどの井上(一)委員のご意見のように、研究費の分野で必ずしも十分議論がされていない分野もあると思うが、全体としてここで必要性を述べていると受け取ってもよいのではないか。
 それから、先般も申し上げたが、第2期科学技術基本計画に際し、科学研究費補助金を2,400億まで倍増するという計画があったが、今のところ1,913億と第2期基本計画の達成もおぼつかない状況である。ただ、新規採択率の向上については、今の応募状況から見て、やはり21.2パーセントでは研究者の意欲をかなりそぐのではないかという心配がある。その点では、科学研究全体の量的な拡充を第3期科学技術基本計画の第3年度目に行わないと、競争的資金の中で重要な役割を果たす科研費の量的拡充が見えてこないとの心配がある。第3年度目の20年度に向けた拡充について、研究費部会として意思表示するとともに、文部科学省にも基本計画の達成に向けてして努力いただきたい。
 また、全ての研究種目に間接経費30パーセントを早期に実現するとあるが、来年度を考えた場合、若手研究者向けの種目について間接経費を措置するのが昨年来の課題だと思うので、若手研究者向けの研究費について間接経費を措置することをはじめ、といった形で特記して強調する必要があると思う。
 もう1点、先ほど伊賀委員や中西委員が話されたが、平成20年から公的研究資金の交付状況を一元的に把握できる「府省共通研究開発管理システム」を稼働する予定とのことだが、従来から研究費の超過配分等、各省をまたがる部分で非常に問題になっている。これを解決する第一歩と先ほど中西委員も話されたが、これをぜひ活用し、今までの弊害を克服するような取り組みをお願いしたい。

【垣生委員】
 2ページの「基盤的な研究種目における採択率の向上と学術研究の裾野の拡大」について、採択率を向上するのが良いことは論をまたないが、採択率が下がったときに、実際に研究者数が減っているかどうかも重要だと思う。というのは、どのような分野の人が増えているから裾野を拡大しなければならないかということにもかかわると思うが、研究者の層が厚くなるのは採択率の向上によるものだけではないと思うが、どうか。

【袖山企画室長】
 科研費においては、研究者番号によって研究者を管理しているが、研究者番号を付与している研究者の数や、研究者の所属別・分野別のデータは十分に分析ができていない状況である。
 しかし、電子申請化等を図ってきていることにより、様々なデータが取れるようになってきているので、研究者の属性と実際の採択結果とを突き合わせ、研究費部会での今後の議論に資するようデータの解析等を進めていきたい。

【平野部会長】
 次に制度改善方策についてご意見を伺いたい。

【家委員】
 3点お伺いしたい。
 1点目は、基本的考え方の方には新規採択率の30パーセント向上と書かれているが、制度改善方策の方には書かれていない。これは制度改善ではないから書かれていないのかもしれないが、平成20年度に向けての概算要求では、特定領域研究などの再編を主にやると読めないこともないと思うが、事務局の考え方をお伺いしたい。
 2点目は、特定領域研究と学術創成研究費の再編の問題について、6ページの3に「これまでの『特定領域研究』よりも規模を抑えることにより」、つまり総額を下げて数を増やそうという考え方があるようだが、これで本当に良いのか。様々な研究が出ることは良いと思うが、例えば先ほど井上(一)委員がご指摘されたように、ビッグサイエンスについては本来概算要求でやるべきものと、それより少し予算規模が小さく、特定領域研究や特別推進研究に頼っているものとがある。場合によっては、そうした研究の行き場所がなくなってしまうのではないか。
 3点目は、研究課題提案型について、趣旨は非常に良いと思うが、かつての広領域や、現在ある萌芽研究との違いがよくわからない。また、趣旨は良くても、先ほどの中西委員のご意見のように、実際に審査するのは非常に大変だ。考え方は良くても、実際にそれを機能させるためには相当の制度上の工夫が必要だと思う。細かいものが非常に多くなるという印象もあり、ある特定の学問分野を丸抱えでサポートするような巨大なものはブレークダウンしていただきたいと思うが、現在の10億から、最高が5年間で20億ぐらいの道を開いておかないと非常に困る分野が出てくるのではないか。

【垣生委員】
 今の家委員のご発言に関して、特定領域研究については、領域がかつての学問体系の1つのジャンルそのものになっているような傾向があり、その規模が大きいと私は理解している。

【家委員】
 そのような分野は分科細目にあるので、分科細目に対しては基盤研究などで予算措置されており、それと重複して、その分野を丸抱えでサポートするような特定領域が必要なのかどうかと思う。例えばがんという1つに絞られた研究目的の下に特定領域を組むなら非常によくわかるが、がん、あるいは脳として非常に大きい特定領域を設定するのは疑問に思う。

【垣生委員】
 大き過ぎるというのは十分承知しているが、それを除いた特定領域においては、ある分野を幾つか融合させたものと、すぐれた研究者が多くいる領域を伸ばすものと2つあると思う。

【小原委員】
 今、特定領域研究の上限は6億となっているが、実際に6億を通すかどうかは審査の問題である。しかし、規模を小さくすることは、領域をもっと小さくせよというメッセージであり、今の特定領域研究のメリットを生かしつつ、運営で工夫をしていくという意味で、小さくするのは反対と前回申し上げた。それに関してほぼ合意が得られていたと思うが、なぜ規模を抑えると書かれているのか、理解できないので撤回していただきたい。

【垣生委員】
 学術創成研究費は、ある特定の分野において非常に重要と考えられるものについて推薦を受けているものだが、これを特定領域研究の小型版とみなし、特定領域研究と学術創成研究費とを今回別物にしようという趣旨なのか。

【袖山企画室長】
 まず、この報告書の構成、考え方についてであるが、家委員ご指摘のように、2番の制度改善方策については、まさに制度改善に係る、応募要項に係るような内容について記載したため、概算要求に出す全ての内容ということではない。1番の基本的考え方のうち、「科学研究費補助金の拡充に関する基本的考え方」が予算に臨む基本的な考え方とご理解いただきたい。
 垣生委員のご質問については、5ページにあるように、特定領域研究も学術創成研究費も、既存の学問分野、体系の中での研究活動というよりも、新たな分野、領域を生み出す、あるいはそれをさらに発展させるという観点に立った研究種目であると理解しているが、特に学術創成研究費については、推薦制という形で実施されてきたことにより、分野連携や新興領域の形成とは若干異なる方向に向いてきているのではないかと考え、特定領域研究、学術創成研究を新しい学術領域の形成のための種目に再編成し、研究領域提案型と研究課題提案型に整理することとした。中でも、研究領域提案型については、特定領域研究のメリットを十分に生かして対応することとしている。
 研究課題提案型については、学術創成研究のメリットを生かす面もあるが、推薦制という運用は行わず、審査方法を工夫することにより、非常に挑戦的な研究をうまく拾い上げるような仕組みを導入することによって、新しい芽を生み出していく種目として再編するという考え方である。

【小原委員】
 特定領域研究には、新しい分野を開くほか、その分野を強くし、日本の学問を強くするという目的があり、学術創成研究費には、普通では見落としがちな研究を拾うという目的があった。しかし、今度の新しい種目では、両方が抜けてしまう。新しいタイプを作ること自体は良いと思うが、これではシームレスではなくなるのではないか。抜けた部分の行き場がないので、これはかなり大きな変更ではないかと思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 事務局として基本的な考え方を整理する際、様々な先生方の意見もお聞きして案を作ったが、小原委員の、抜け落ちるのではないかというご指摘については、原案を作成した立場としてはそうではないのではないかと思っており、学術創成研究費の果たしてきた新しい領域を開拓するという面と、特別推進研究との引き継ぎという面とを整理してはどうかという提案である。
 特定領域研究の金額については、審査部会において年間2,000万から6億の規模の中で最もふさわしい規模に査定をされて採択されると伺っているが、毎年の傾向を見ても年額6億はかなり例外的であり、むしろ3億、4億程度を上限にして大原則とするほうが、今まで指摘されている様々な弊害を解決できるのではないかと考え、提案した。領域そのものを小さくするというよりも、共同研究がうまくいくおおよその規模を最初に設定しておいたほうが良いのではないかという考え方である。

【三宅委員】
 私学で、研究基盤はあまり大きくなく、その研究に対して海外などからの評価はあるものの非常に孤立しているような場合、特定領域研究は、サポートスタッフが非常にいないとどうにもならないところがある。また、学術創成研究費は、推薦がないとなかなかできないところがあり、私学で孤立している場合には非常に難しいことから考えると、新しい枠を入れることで、出せるところが可能性として増えてくると思った。
 ただ、孤立しているような研究者たちがネットワークを作ってある程度の研究を行おうとする場合、金額が大きくないと立ち上げが難しいと思う。また、応募の仕方と審査の仕方が何を基準に行われるかがわかっていないと、例えば海外からの評価が入るなど具体的基準があり、このような点でアピールできれば通るというのがないと、小さいところから応募するのは大変だと思う。このような種目が出てくると非常にありがたいと思いつつ、どのようにしたら研究者が元気を出せるかと考えると、まだ壁はあると感じる。

【甲斐委員】
 2つ議論が分かれているようなので、1つずつお話する。
 まず研究領域提案型は、特定領域研究が変わったものと考えられる。今議論になっているのは規模だと思うが、例えば人社系にとっては、小規模グループによる提案があったほうが良いと思う。生物系についても、がん、ゲノム、脳は別にして、普通のもので規模が大きいものは、中に柱が幾つか立っているので、それを分けて小規模にして、後で両方受かったら組めばいいという考えなので、小さくなっているのではないかと思う。そうすると、中の柱のうち小さいほうに弱い人を入れるようなことは排除でき、それぞれが受かろうということだと感じられるので、できるかもしれないと思っている。
 ただし、例えば理工系などで6億全部でないとできないという規模があるのであれば、家委員に教えていただきたい。人社系はもう少し小さくても良いと思うが、小さな特定領域研究があったら、それはそれで良いとの考えなのだと思う。
 領域の特殊性があるので、金額については一度議論してはどうかと思う。私の感覚では、生物系は大小両方あり、大きいものの中で2つに分けられそうなものは受かっていると思う。
 もう1点、研究課題提案型については、学術創成研究費の生まれ変わりではなく、萌芽研究の大きいものだと思うが、これはこれであったほうが良いと思うものの、学術創成研究費を消してしまうのは疑問がある。これでは、個人型でかなり大規模の金額の研究ができる種目が特別推進研究だけになってしまうので、その点が少しデメリットではないかと思う。
 例えば、「創成特推」のような、全く新しい提案を入れた、初めてでなければ通らないような特別推進研究があっても良いと思うが、かなり大型で、1人で提案できるという学術創成研究費のメリットは、ここには入らないと思う。学術創成研究費のメリットはやはりあると思うので、なくすことには少し懸念がある。

【平野部会長】
 学術創成研究費のメリットをどのように生かしていけるか、もう1つ検討すべきポイントではないかというご指摘である。
 大変重要な点だと思うので、学術創成研究費のメリットをどこかではめ込んで動けるような体制がとれるかということについて、再度検討して取りまとめたい。

【磯谷学術研究助成課長】
 補足だが、基盤研究Sの充実を我々は考えており、今まで学術創成研究費でとっていたような規模のものについて、基盤研究Sの年額を上げることにより、そこでとりたいと考えている。

【小原委員】
 問題意識について、前期部会からの申し送り事項になっているのではないかと思うが、特に特定領域研究、学術創成研究費について、メリット、デメリットがあると思うが、このような文章を作る際には、メリット、デメリットきちんと整理して、メリットを生かすという論理構成にすることが必要なので、整理させていただきたいが、そのような資料はあるか。

【磯谷学術研究助成課長】
 断片的なものは整理して作りたい。

【平野部会長】
 メリット、デメリットについて一部の声の大きい人の意見が動くということもフェアではないので、昨年度までの委員会等で出ていた意見を事務局で整理して、早目に資料を委員にお送りし、それを踏まえて次の議論に臨みたい。

【中西委員】
 今、井上委員と話していたことだが、特定領域研究、学術創成研究費といっても、特定領域研究であれば人文系、理工系、生物系の3つに領域が決められている。せっかく分野融合について考えてきているので、もっと発展的な観点から、領域の枠を取り払った複合領域を育てるという観点でも検討してほしい。

【平野部会長】
 重要なご提案なので、次回の提案の中に勘案して入れたい。

【垣生委員】
 メリット、デメリットは、結論が出るようなことでなく、たくさん出ていると思うので、それを全部箇条書きにしていただいたほうが議論しやすいと思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 できるだけいろいろなものを集めたい。

【平野部会長】
 良いところは残しながら、改善すべきところは改善するという点については皆同じ意見だと思うので、少し時間はかかるが、次にまた議論をしたいと思う。

(5)その他

 事務局から、次回の研究費部会は7月19日(木曜日)10時30分から霞が関東京會舘において開催する予定である旨の連絡があった後、「審議のまとめ(その1)」素案について意見があれば7月5日(木曜日)までに送付するよう依頼があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課