第4期研究費部会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成19年3月28日(金曜日) 10時~12時

2.場所

グランドアーク半蔵門3階 華の間

3.出席者

委員

 平野部会長、井上(孝)委員、鈴木委員、中西委員、深見委員、三宅委員、家委員、伊賀委員、石委員、小原委員、垣生委員、岡本委員

文部科学省

 川上振興企画課長、磯谷学術研究助成課長ほか関係官

4.議事要旨

(1)第4期研究費部会における審議事項について

 事務局から資料2「第1回研究費部会における主な意見」、資料3「科学研究費補助金の現状について」、参考1「第4期研究費部会において検討をお願いしたい事項」、参考2「研究費をめぐる最近の政府の動き」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【家委員】
 2点ほどお尋ねしたい。資料3の1-2の総表における学術創成研究費の応募数はどの段階のものか。また、2-2の「研究者の年齢別分布」では、医歯薬系では年齢とともに、科研費を申請する研究者が減少しているが、これは、開業医になっていくなどの理由と考えてよいか。

【長澤企画室長補佐】
 応募数については、推薦を受けた時点のものである。

【袖山企画室長】
 後段のおたずねについては、具体的な要因は不明であるが、研究室の構造として年齢が進むに従って大学の外に出られる方が多くなることに起因しているのではないかと考えている。

【伊賀委員】
 資料3の2-3における「19年度研究者合計」の定義について教えていただきたい。

【袖山企画室長】
 科研費の研究者番号が付与されている研究者の数である。

【垣生委員】
 資料3の1-7では、特定領域研究の分野別採択・配分状況が示されている。意見交換の前に確認しておきたいのだが、その中には、がん特、ゲノム、脳と言った、ある意味ではトップダウン的な、そうした性格のものは含まれているのか。

【袖山企画室長】
 それらを含めた内容となっており、そのため、全体の数が多くなっている。

【井上(孝)委員】
 前回欠席したので、議事録の主な意見を拝見して感じたことを申し上げたい。科学技術・学術審議会の学術分科会、基本計画特別部会等では、これまでも学術研究の在り方について審議してきたが、多様な研究を推進するためには、デュアルサポートシステムとして、基盤的経費と競争的資金のそれぞれの確保が重要であるという主張をしてきている。特に、基盤的経費については、運営交付金が効率化係数として毎年1パーセントずつ減額され、私学の経常費助成も19年度から1パーセント減額されるという中にあって、高等教育に対する公的財政の支援の在り方をどうするかということについて、しっかり考えていかなければならない。経済財政諮問会議の有識者議員提出資料においても、国立大学運営交付金配分ルールの検討について言及されているが、これは高等教育に対する国の支援についての基本的な問題に関わる話である。昨年12月に成立した教育基本法に基づく教育振興基本計画の策定に関連して、国公私立大学に対する支援の在り方については中教審の特別部会で今後議論されていくことになっている。基盤的経費については、そちらの議論をある程度待つ必要があると思うが、運営交付金あるいは私学経常費助成の減額によって大学等における研究環境が劣化していることは共通認識になっているので、今後とも科研費の間接経費を充実させて研究環境のインフラ整備について活用できるようにするとともに、研究費の不正使用がないような内部監査体制の整備を進めていくことが必要である。また、前期部会期間中の科研費の予算の伸びが思わしくなかったこともあり、予算の拡充を図り、新規採択率30パーセントの枠を確保というのが今後取り組むべき重要課題ではないかと考えている。
 大学の研究環境が劣化して研究費配分額が非常に低下していることもあり、各大学では競争的資金の確保、特に科研費の確保を目指して応募を奨励していて、科研費応募者には研究費の加算をするなどのインセンティブを与える措置を講じている大学もあると聞いている。そうした点からも科研費の量的な拡充については、研究費部会として強く要望していく事項であると考えている。
 いずれにしても、科研費に対するニーズが非常に高まっていることも踏まえて、研究の深化に応じた助成の在り方についても今後本部会で進めていく必要があると感じている。

【石委員】
 科研費の構造等について説明をいただいたが、以前と比べ随分と複雑になった感を受けた。制度というものは複雑になると、メリットもあるがデメリットも多く出てくる。日本人は極めて真面目なので、要求に応えようとして制度を複雑化させていく傾向にあるが、その結果が良い形で機能しているかについては1度レビューしておく必要がある。
 現場の声を反映して新しい種目を設けたり、研究費の規模に従って研究種目を分化させることにはそれなりの意味があるとは思うが、逆に統合する形でも良いのではないか。科研費では、既にこれだけの体系が構築されている中で、今後更なる細分化の方向でお考えなのかについて伺いたい。
 以前は、現在ほど研究成果の公開ということが話題になることはなかったが、本日の説明を聞くと、研究成果の公開に対する補助もあるようで、そうした仕組みが構築されているということは非常に結構なことである。複雑化のメリットの部分として、是非そうした経費を伸ばしていってほしい。

【磯谷学術研究助成課長】
 ご指摘のあった制度の複雑化については我々も同様の感想を持っている。資料3の1-1で科研費の構造をお示ししたのは、科研費の在り方についての検討を行っていただく中で、科研費の構造についてもご意見をいただきたいという考えに基づくものである。科研費の基本として「基盤研究」があり、研究者の自由な発想に基づく研究の多様性を確保した上で、別枠で若手研究者の支援というものも行っていく必要がある。さらに、新しい、チャレンジングな領域を切り拓いていく研究への支援も必要であり、この3つの研究支援構造を基本として今後、科研費の研究種目をどうしていくべきか、ということについて、委員の皆様の積極的なご検討をお願いしたい。
 特に、新しい領域の形成については、学術創成研究費や特定領域研究などの研究種目があり、それらの整理も必要ではないかと考えている。
 科研費は「基盤研究」を基本としてそれぞれの研究種目がうまく連携するとともに、不断の努力により総合科学技術会議や日本学術振興会の学術システム研究センターの提言などに基づく改革を進めるなど、制度全体としてうまく機能していると考えている。今後は、研究実績や所属にとらわれない「異端」のチャレンジングな研究、あるいは学術研究にフレキシブルな発展をもたらすような研究をどのように育てていくかということが課題ではないかと考えている。

【伊賀委員】
 先ほど話題となった研究成果の公開についてであるが、研究成果を公開し、その内容を世に問うことは研究を実施した者の責任としてきちんとやるべきであると思う。ただ、その成果が新しい課題の応募にうまくつながって、成果が効率よく次の課題の応募に活かせる仕組みがまだ構築されていないのではないか。研究成果の公開にも大きな労力が必要であり、それが効率よく活かされる仕組みが必要である。現在の研究を継続中に、並行して関係する別の課題の審査を行うことが多く、研究効率の面で疑問がある。研究成果に対する評価が出ないうちに次の審査をして、審査と評価が一連のものとなっていないというのが問題である。
 また、科研費の審査は極めて民主主義的であり、複数の審査員による審査会で、多数の高評価を得たものが採択される仕組みとなっている。逆に言えば、少数にしか評価されない新しい知見を拾い上げるには、部分的に審査の手法を少し変えれば良い。多数決によるピア・レビューはベストではないかもしれないが、他になかなかいい方法が見つからないというのも事実である。

【垣生委員】
 今のお話は、「特別推進研究」で実施されている「研究計画最終年度前年度応募」の制度を「基盤研究」にも拡大するというご提案ととらえてよいか。
 研究成果に対する評価が出ないうちに、新しい課題を評価して科研費を交付することはなかなか難しいと思うし、「基盤研究」は研究費規模や研究期間に応じたコースも多くあるので、現在のままで特に支障はないのではないかと思う。

【伊賀委員】
 少し誤解を生じているようなので、改めて申し上げるが、私が申し上げたのは、「研究成果の評価」と「新しい課題の審査」という2つのプロセスが平行、または前後して起こるというのは非効率ではないかということである。

【井上(孝)委員】
 若手研究者の育成支援については、これまでも経済財政諮問会議や総合科学技術会議から指摘されているが、本部会の提案で今年度には「若手研究(スタートアップ)」が開始され、来年度には「若手研究(S)」も開始されることとなっている。これにより、若手研究者の研究を継続的に支援する仕組みが構築されたことになり当面、これ以上の研究種目の細分化は必要ないのではないか。これまでの本部会の議論を振り返っても、研究種目については、改善すべきところは改善してきたのではないかと思う。

【平野部会長】
 チャレンジングな課題が審査に付された時、あるいはその領域においてわずかの応募しかなかった領域の細目の分野で、これまでの採択傾向からして不採択になるであろうものを拾い上げることを考えた場合、審査手法の検討無しには話が進まないであろう。
 私の経験からすると、平均点以下の課題については、高い評価を与えた委員と低い評価を与えた委員の両方がいる。このあたりの分析をきちんとしてみれば、採択される課題の傾向も少し変わるのではないか。

【家委員】
 評価の問題については慎重な対処が必要である。例えば、評価をきちんと行い、その結果を継続して行う研究や次の課題に反映させることは必要であるが、それをあらゆる場合に一律に適用するような議論になると、先ほど話題となった効率性の問題なども出てくる。税金を原資とする研究費の支援を受けて研究した以上、その成果について報告するのは研究者の責務であるが、研究者の一番の責務は、やはりきちんと研究成果を出してそれを論文として公表することであって、報告書を書くことが第一ではない。科研費の中でも研究費規模の大きなものについては、研究成果をきちんとまとめて公にすることが義務として求められて然るべきと思うが、「基盤研究(C)」や「若手研究」のように件数が多く研究費規模の比較的少額なものにまで同様の手続きを求めることは、それを評価する側の労力も考えれば必要ないのではないか。
 また、「評価を次につなげる」ということと「従来にない新しい発想の課題を採択する」ということは両方とも重要であるが、科研費制度にそれらを組み込もうとすると非常に複雑なことになる。そのための手法として、「萌芽研究」のようなものを拡大して、新規公募分については別の審査体系を適用することも考えられるが、そうすると新たな研究種目を設けるのと同じことになる。石委員の、研究種目が複雑になりすぎているという指摘には非常に共感しており、このあたりで科研費の構造を根本的に見直すべきではないかと思っている。
 冒頭で学術創成研究費についておたずねしたのは、学術創成研究費の現在の運営が、設立時と比べて変わってきているような感を受けているからであるし、先ほどお話のあった「若手研究(S)」についても必ずしも若手研究者の研究支援に貢献するものになっているとは言えないのではないかと思っている。37歳を超えた途端に研究費が獲りにくくなることの改善には、やはり「基盤研究」の採択率向上のために予算を拡充し、全体のパイを大きくするということが本筋だと考えている。

【中西委員】
 基盤的経費だけでは十分な研究ができないので、大学に籍を置く研究者は科研費をとても頼りにしている。研究者の悲願として、科研費の採択率向上がある。研究種目によっては新規採択課題の採択率が10パーセント代のものもあり、10人に1人程度しか科研費の支援が受けられないとなると、研究現場が非常に疲弊してくる。科研費の全体額を伸ばしていくことが必要だが、近年は「基盤研究」ではなく、「若手研究」など他の部分を重点的に充実させていく手法で予算の拡充を図ってきている。先ほどの議論にもあったが、そろそろ基本となる「基盤研究」の充実を中心に考えていくべきではないか。また、予算額を増やせないのであれば、採択率を上げるために課題当たりの研究費を減らすことも考えて良いのではないか。例えば、生物系では大規模装置の導入には多額の資金が必要だが、導入後は比較的少額の研究費で実施できる研究もたくさんある。一件当たりの額が多少下がっても多くの人に研究費が行き渡るようにしてほしい。将来どういう分野が成長するかは予測できない。現在の予算の範囲でできる取組として、なるべく多くの人に科研費が行き渡るように配慮いただきたい。

【深見委員】
 資料1にある「基盤的経費と競争的資金の役割とそのバランスの在り方」について申し上げたい。経済財政諮問会議の有識者議員提出資料においても「研究」や「競争」という部分のみが非常に強調されているが、大学は研究機関であると同時に教育機関であるという視点が欠けている。基盤的経費は研究だけでなく教育にも使用されるものであり、教育に対する基盤的経費の重要性をきちんと考えずに議論を進めると、新聞記事にあるように地方大学の半分は無くなってしまう結果になりかねない。それは、地方の衰退にとどまらず、我が国全体の衰退につながっていく。そうした観点からも基盤的経費と競争的資金のバランスについて、しっかり考えていく必要があると思う。
 同時に、若手研究者とそれ以外の支援のバランスについてもしっかり考えていく必要がある。先ほど少し議論があったが、科研費の基本はやはり「基盤研究」であると考えており、「基盤研究」の採択率や研究費規模を充実させていけば、「若手研究(S)」の対象者もそちらで十分吸収できるのではないか。また、「若手研究(S)」と「基盤研究(S)」は、ともに5年間で最大1億円程度の研究費が交付されることになっているが、当該研究者を含めた数人で研究を行う「若手研究(S)」の対象者と、より大規模な研究チームを率いる指導者クラスが中心となる「基盤研究(S)」の対象者に交付される研究費が同額であることには疑問を感じている。
 なお、「若手研究(S)」は、大規模な研究室のセカンドボスのような立場の人に交付されるケースが多くなるのではないかと思うが、それによって研究室単位での「過度の集中」を引き起こすのではないかと懸念している。

【小原委員】
 経済財政諮問会議の有識者議員提出資料に、競争的資金の割合を高めるという記述があるが、全体額を増やさないと相対的に基盤的経費が減っていくということになる。デュアルサポートの考え方をきちんと伝えていくべき。
 また、資料3の1-2を見ると、応募件数のトータルは13万件強となっているが、研究者番号保有者が18万人程度と言うことから考えると、科研費では平均して1人1件弱の応募を行っていることになる。ところが、私の周りではもっと多く応募しているような感がある。米国のようにある程度の研究費規模があり、1件採択されれば一通りの研究ができる資金があれば良い。以前は基盤校費と合わせてその程度の額が確保できたのだが、今はそれも難しい。重複応募の制限もあるが、複数資金の支援を受けないと満足のいく研究はできないというのも事実である。科研費による研究支援のためには総額でどのぐらいの金額が必要であるか、また、どのような研究種目を設け、それぞれにどの程度の金額が配分できるのかについて考える必要があるのではないか。

【磯谷学術研究助成課長】
 各研究種目における研究費規模の充実については、前期部会においても議論があったし、今期部会への引継ぎ事項にも同様の趣旨の記述がある。研究種目当たりの金額を充実させなければ少額の細切れの研究となり、またそれぞれの研究ごとに評価を受けなければならないため大変な労力が必要となるという意見も聞いている。なお、ご指摘のあったような調査については、必要な研究費の額は、研究分野や研究段階によって様々であり、全てを理想的に算出するというのは大変難しい。悉皆調査となると、恐らく4、5年の期間を要すると思われるが、例えば分野別にケーススタディの形で行えば、今期部会の2年間の間にある程度把握することはできるかもしれない。

【鈴木委員】
 科研費の構造が複雑になっていることに対する私なりの解釈であるが、基本となる「基盤研究」のほかに、若手研究者向けの研究種目が設けられている理由の一つには、科研費の審査が実績主義で行われていることがあると思う。実績主義の審査では、研究経歴の浅い若手研究者は不利になるため、若手研究者枠として「若手研究」が設けられたと記憶している。なお、前々期の部会では、研究業績は研究計画の実現可能性、妥当性を判断する材料として重要な役割を果たすという認識であった。また、分量の少ない科研費の研究計画調書では実績を重視した評価が難しいため、それを補うために審査システムの改革も必要となる。科研費の構造が複雑となっている理由の一つには、研究種目ごとの特性を明らかすることにより、審査システムを補っているという面があるのではないか。

【中西委員】
 要望ばかりで恐縮であるが、他の制度と比べて非常に公正なものとなっている科研費の審査システムを一層透明なものとするために、審査情報をもっと公開してはどうか。どの審査員がどのような採点を行ったかかがわかれば、審査する側もされる側も緊張感が増し、審査が更に公正なものとなると思うが、そのような取組は可能か。

【磯谷学術研究助成課長】
 審査員の氏名・所属は審査終了後、公開しているが、どの審査員がどのような採点を行ったかまでは公開していない。また、審査内容の改善については、集中的に何か機会を設けて議論する必要があればその時に対応したい。

【垣生委員】
 新領域の形成に関連して発言したい。新領域の形成は、これからの科学技術あるいは学問を展開していく上で、日本が世界に伍していくために非常に重要であり、科研費で言えば「特定領域研究」に加えて「萌芽研究」もその考え方に含まれると考えている。「特定領域研究」の審査に携わっている立場から申し上げるが、「特定領域研究」の公募対象には、「研究の発展段階の観点からみて成長期にあり、研究の一層の発展が期待される研究領域」と「その領域全体の学術的水準が高く、研究の格段の発展が期待できる研究領域」というものがあるが、前者が後者に押しやられ、なかなか採択に結びつかない傾向にある。
 理由の一つとして、研究業績という点では成長期にある研究領域のグループは学術的水準の高い研究領域のグループにかなわない。両者の審査を分けて行えば、後者にもっと陽があたり、新領域の形成という点で有効だと思う。このやり方は、大幅な制度改革も不要であるので、是非提案させていただきたい。例えば、それぞれをAとBとし、Bの審査対象は本当に萌芽的な研究領域に限るとしてはどうか。

【岡本委員】
 前回の部会で、応募の際にどの分科細目に出せばよいかわからないといった話があったが、区分を細分化すればするほど、どれを適用していいのかが難しくなっていく。物を細かくするということは、却って事をわかりにくくするという一面がある。
 逆に、一見複雑に見えるが、簡単に解決できるようなこともある。例えば、先ほどから議論になっている「基盤研究」と「若手研究」の関係についてであるが、「若手研究」の対象は37歳以下とされている。しかし、それが正しい基準なのかと言うと、私はそうではないと思う。「基盤研究」のほかに「若手研究」を作ったのは、研究経歴の浅い若手研究者を別枠で審査する、いわゆる若手優遇策の一環であるが、若手研究者の中でも研究経歴は千差万別である。そうすると研究経歴の差を考慮して研究種目を作ったのに、公募対象を年齢で決めるのは矛盾していることになる。新たに研究種目を設けるよりも例えば、もっと公募対象年齢を上げて、途中から「基盤研究」に移行させるといった取組などは比較的簡単にできるのではないか。

【三宅委員】
 研究成果の公開に関連しての意見であるが、実績報告書や研究成果報告書の多くはそれを読んでも、誰がどこでどのような研究を行っているかわからないものとなっており、作成意図について疑問を感じることがある。
 これらの報告書の類は情報が凝縮された形で内容も専門的であるので、それらを書き下して、高校生レベルの知識の者でも一生懸命頑張れば読めるような形にする、あるいは実績報告書に記載された成果の関係情報をインターネット上に公開し、電子媒体で作成した報告書から直ちにリンクできるなどの機能を持たせておくなどすれば、報告書の利用価値も高まるのではないか。また、そうすることにより、報告書を作成する研究者の側も自身の研究を客観的に見て、研究に対するスタンスを再確認できるような効果もあるのではないか。

【平野部会長】
 研究種目の見直しを含め、大変貴重なご意見をいただいているところであるが、研究費の不合理な重複や過度の集中という事項についてもご意見があればお願いしたい。

【伊賀委員】
 前回の部会でも議論があったが、研究費の「過度の集中」が起こる原因の一つには、安定した研究活動のために継続した研究費の交付を望む研究者意識というものがある。研究者は研究費が途絶えないようにするために複数の資金に応募することが多く、審査結果によっては同時期に複数の資金からの支援を受けるという事態が生じることになる。今後は、データベースの整備などによって後から審査を行う配分機関がそれまでの配分状況を基に採択を決定するなどの対応が必要である。ただ、その際はあくまで同一内容の研究課題で複数の資金からの支援を受ける「不合理な重複」の排除にとどめ、優秀な研究者の横断的な研究を阻害しないようにしなければならない。
 また、継続した研究費の交付を望む研究者意識に応える一つの方策として、研究期間を延長すれば良いと言う意見がある。例えば、研究期間が2年のものを4年あるいは5年とすれば、研究者はその間は落ちついて研究ができるという考え方である。私が所属する日本学術振興会の会議においても同様の意見があった。例えば、比較的少額の研究費で研究可能な人文・社会系のものなら100~200万円規模で10年間、研究費規模の大きい「特別推進研究」を終えた中核拠点クラスのものであれば、1,000~2,000万円規模で10年間などの長期支援が考えられる。交付期間中はその研究に専念して、他の事業への「乗り換え」は遠慮してもらう必要があると思う。
 また、研究費規模を拡大するということについては、科研費の総額を増やしていくしかなく、そのための理論的バックボーンを本部会が中心になって考えていく必要がある。

【岡本委員】
 研究費の「過度の集中」についてであるが、制度的にそれを排除しようとすることについては賛成しない。ピア・レビューの結果として採択に値する評価を受けた研究者、あるいは研究室に資金が集まったのに、それを「過度の集中」として排除するための制度設計をすることになれば、制度が複雑になるばかりで、あまり効果はないのではないかと思う。

【石委員】
 科研費の総額を拡大していく必要があるとの意見があったが、そうした意見は他府省のものも含め、どの審議会においても必ず出てくる話題である。どの役所の人間も自分のところの経費が一番重要であり、他のものよりプライオリティーが高いと信じている。そのような中でどういう取組を進めていくかであるが、幸い、科学技術振興費は社会保障費と並んで他の経費に比べれば優遇されている。これを更に高めていくにはどうすべきかについて考える必要があるが、まずは政策決定をする立場の人間に事柄の重要性を理解してもらわなければならない。総合科学技術会議の有識者議員や「イノベーション25」関係者、あるいは経済財政諮問会議の有識者議員、そうした人々に繰り返し説明して、納得してもらう必要がある。
 そのためには、やはり地道に科学技術の振興が我が国の経済社会の進歩につながるという説明を関係者に行っていくことが重要であり、先ほど申し上げた政府関係者のほかにも財政当局にも折に触れて科研費の重要性について説明していくことが必要である。厳しい財政状況を考えれば、先行きは決して明るいものではないかもしれないが、そうした努力を怠ってはならない。若手研究者重視の傾向などもあり、制度の枝葉が広がっていった感があるが、予算拡充の手法としてそうした手法はもう限界だと思う。本部会で集中的に意見交換を行って、いい知恵を出していくしかないのではないか。

【平野部会長】
 関係者に対する説明の必要性は私も痛感している。一番効果的な説明方法は、社会に貢献している様々な技術について、誰も振り向かない萌芽期から科研費で支援してきていることを実例をあげて説明することである。

【石委員】
 特に、マスコミ関係者にはきちんと説明しておく必要がある。

(2)「中間まとめ」に向けた検討について

 事務局から資料4「『中間まとめに』に向けて検討をお願いしたい事項」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【小原委員】
 「2 学術研究にブレークスルーをもたらす助成の在り方」の中に、「『特定領域研究』等の見直しを含む」とあるが、「特定領域研究」を例示としてあげているのは、全ての研究種目のうち、特に「特定領域研究」についての議論が必要ということなのか。

【井上(孝)委員】
 「1 基盤的経費と競争的資金の役割とそのバランスの在り方、学術研究を助成する科研費とその他の競争的資金の意義、役割に関する基本的考え方」については、これまでも科学技術・学術審議会の学術分科会や第3期基本計画策定に向けた基本計画特別委員会において審議を行い、意見を集約してきた。それらを概観した上で、議論をしなければ、これまでの意見と重複して散漫な議論になると思うので、それらの意見の整理を事務局にお願いしたい。
 また、第3期基本計画には期間中の政府研究開発投資額として25兆円という数値目標が明記されている。その数値目標を実現するための推進策のうち、科研費部分については、本部会で議論し、財政当局に説明していくことが必要である。

【伊賀委員】
 「3 科研費における研究分担者の在り方」については、もう少し大括りの考え方とし、例えば「効果的研究費の使用について」などで良いのではないか。

【鈴木委員】
 資料5の審議日程案に関してだが、とりまとめを予定している第5回目の部会が6月29日に設定されているのは、概算要求の作業を見越してのことだと思う。「中間まとめ」に向けた審議事項をいくつか提示いただいているが、簡単に結論が出るものばかりではないので、新しいアイデアが出てきたら、各事項の「等」で読み、それらも含めて概算要求に結びつけていくようにしてはどうか。

(3)その他

 事務局から資料5「第4期研究費部会の当面の審議日程について(案)」に基づいて説明の後、次回の研究費部会は4月27日(金曜日)に開催する予定である旨の連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課