第4期研究費部会(第1回) 議事要旨

1.日時

平成19年2月28日(水曜日) 15時~17時

2.場所

学術総合センター1階 特別会議室101~103

3.出席者

委員

 上野委員、笹月委員、鈴木委員、中西委員、平野委員、三宅委員、家委員、伊賀委員、井上(明)委員、小原委員、垣生委員、池尾委員、岡本委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、藤木大臣官房審議官(研究振興局担当)、川上振興企画課長、磯谷学術研究助成課長ほか関係官

4.議事要旨

(1)部会長及び部会長代理の選出について

 委員の互選により、平野委員が部会長として選出された。平野部会長の指名により、飯野委員が部会長代理となった。

(2)第4期研究費部会における審議事項について

 事務局から資料3「科学技術・学術審議会学術分科会の組織及び運営規則」、資料4「大学等における研究費について」、資料5「科学研究費補助金について」、資料6「第4期期研究費部会において検討をお願いしたい事項」、参考1「科学研究費補助金の改革に関する今後の検討の方向性について(次期研究費部会への申し送り事項)」、参考2「第3期研究費部会における審議状況」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【伊賀委員】
 大学や研究機関の研究者の科研費への期待が増している一方で、予算の伸びが鈍化してきている。科研費の在り方について、もう一度ゼロからスタートした議論が必要ではないか。新たに委員に就かれた方も含めて、そうした議論をしておく必要があると感じている。
 GDPに対する研究費の割合についての議論はこれまでもなされてきているが、世界的な動向の変化もあり、まずはこの点についての議論を行っていく必要がある。アジア諸国の台頭もあり、数年前に比べ中国や韓国等が非常に大きな研究費を投入しているという状況にあり、我が国はこのままでいいのかということを考えていく必要がある。
 また、ヨーロッパでは、ヨーロッパ・リサーチ・カウンシル(ERC)という大きな組織ができて、基礎研究を支援しようという動きがあると聞いている。その背景には、EUがいわゆるプロジェクト型の研究に重点を置いた支援をしてきた反省があり、ERCの創設によって基礎研究を支援していくこととなったと聞いている。こうした情勢も踏まえ、政府に対して、科研費の拡充を求めていくための議論をこの部会で行っていく必要がある。

【笹月委員】
 伊賀委員が学術研究、基盤研究の重要性について述べられたので、私からは、日本の学術研究の先進性について申し上げたい。私は生命科学分野の研究を行っているが、我が国における学術研究は世界的に見てまさにトップランナーの位置にあるということは国際的にも認められている。
 ところが、医学・生物分野を例に見ると、その成果が患者のケアに活かされているかどうかと言う点では、欧米先進国はおろか、伊賀委員の話にあったアジア諸国にも遅れをとっているというのが現状である。
 この部会のミッションは基盤的な学術研究の推進ということであると思うが、どのように応用研究を推進して、医学の場合でいえば、患者に届く産物まで持っていくかということを強く訴えて、その分野を少し大きくするということが必要ではないかと考えている。
 昨年、文部科学省のある会議で、欧米の科学者から日本の科学の特徴あるいはコメントについてのアンケートを実施したところ、日本のサイエンスは底が浅いという意見が多くあり、驚いた。しかし、それはいわゆる応用研究が弱いと言うことを指したコメントであり、研究の成果が応用に活かされていないという意味であった。このように、欧米のサイエンティストから見ても、我が国の研究の弱点は見抜かれている。
 学術研究が基盤であることは論を待たないし、そのことについてはこれまでも十分議論されてきたので、今後は応用研究を推進することによって、どのように研究成果を活かしていくかを総合的に検討して、国にその支援を要請していくことが必要ではないかと考えている。

【鈴木委員】
 科研費の拡充については、これまでもこの部会でいろいろと議論してきている。しかし、科研費をはじめとする競争的資金が増え、運営費交付金などの基盤的経費が減っていくということを避けるために、デュアルサポートの必要性を訴えてきているが、それがなかなか財政当局等に伝わっていかない。最近では、経済財政諮問会議でも、国立大学の運営費交付金も競争型にしようというような議論も行われている。競争的資金を増やすという議論とともに、基盤的経費のことも同時に検討し、デュアルサポートをどうしていくかについてもこの場で議論しないと、どちらか片方だけを増やすというのでは不十分ではないかと感じている。

【小原委員】
 第2期科学技術基本計画で競争的資金の倍増が明示されたこともあり、科研費の予算が倍増するのかと思っていたが、実際はそうではなく、他の政策オリエンテッドなものが競争的資金として参入し、科研費との区別が曖昧になってくるとともに、科研費の予算もそれほど増えてはいない。
 社会に貢献する成果を生み出した研究もその萌芽期は科研費の支援を受けていることが多く、科研費はきちんと伸ばしていかないと、我が国の研究基盤が薄くなってしまうので、そのあたりはきちんと議論していく必要があると考えている。
 科研費の応募件数が増えてきているという説明があったが、若手研究者を対象にした研究種目などを新設して支援の範囲を広げたこともあり増加しているのだろう。しかし1件当たりの助成額の規模が比較的小さいため、科研費でどのような支援を行っていくかについての理想形態はどうなのかという議論があまり進まない。現実に合わせる中でどのような工夫が必要かということを検討していく必要があると考えている。

【井上(明)委員】
 この部会の名称は研究費部会となっており、ここでの議論は科研費だけではなく、運営費交付金や特別教育研究経費などを含めた議論となるのか。特別教育研究経費などは、運営費交付金の中の競争的資金とも言えるのではないか。

【磯谷学術研究助成課長】
 運営費交付金の在り方そのものということになると、研究費部会の審議事項とは言えないが、学術研究に対する助成が大学等の研究者を主な対象としていることもあり、大学等におけるファンディングの構造を見ながら、その中で議論していただくということになると考えている。その上で、議論の中心が科研費の在り方という形になっていくのではないか。

【井上(明)委員】
 今期の検討事項の最初の事項に「基盤的経費と競争的資金の役割とそのバランスの在り方」とあるが、基盤的経費と言うことであれば運営費交付金あるいはそれに関係する特別教育研究経費についての検討が必要となるのではないか。
 先ほどの意見にもあったが、科研費の予算の伸びは、ここ4、5年、ほとんど飽和状態となっている。一方で、本当かどうかわからないが、基盤的経費の減額分が競争的資金に充当されているという話がある中で、大学の研究者は、基盤的経費の削減で減額された研究費を競争的資金で補っているという状況となっている。こうしたことを考えると、競争的資金だけについての議論でいいのかとも思う。
 また、文部科学省か内閣府の調査だったと思うが、評価の高い研究成果をあげられた研究者のアンケートの回答では、ここ5年から10年の間における緊急の課題として、研究施設や研究スペースの問題があげられている。基盤的経費が減少傾向にある一方で、直接経費の30パーセントの間接経費が措置されるようになってきているが、研究環境の改善といった視点で、施設整備に関することもどこかで声をあげていかないとなかなか現場の声が届かない。研究費部会の議論にそのあたりをどのように位置づけていくべきか考えていただきたい。

【磯谷学術研究助成課長】
 研究費という観点から、研究環境の改善についての議論をしていただくのはよいと思うが、研究費部会の中で議論が拡散しても効率的ではないので、ご指摘をいただいて、それを別のところにつなぐなどの整理を考えたいと思う。

【垣生委員】
 資料6に、「学術研究にブレークスルーをもたらす助成の在り方」という項目があるが、次の2点を踏まえた具体的な議論ができたらいいと考えている。
 まず、「異分野」との融合がこれからとても大事になっていくと思う中で、先ほどの笹月委員の発言と一致するかはわからないが、応用研究との融合など、新しい領域を奨励することにより、大きな研究の枠組みができるのではないか。
 もう一点は、科研費の予算の伸びが飽和状態となっている中で、同じパイの中の予算を生物系、人社系、理工系の各系でとり合ったりするよりは、新しい分野を別に作って、その重要性を主張していくことが、科研費の予算を増やす1つの手段になるのではないか。

【家委員】
 既に何人かの委員が指摘されているが、それなりの研究のインフラがきちんと整備されてこそ競争的資金が生かされて、その研究活動が担保されることになる。ただ、このデュアルサポートの考え方をどのようなチャンネルで関係者に伝えていけばよいのかがよくわからない。
 科研費に関して言えば、前期部会で議論したまとめにも、新規採択率を30パーセントぐらいにしたいという記述がある。科研費の本質は基盤研究であり、研究者が自らの自由な発想に基づく研究計画を応募して、それを採択し支援していくというところに科研費の本質がある。新規に予算を獲得するためには、若手研究者支援などの明快なものが財政当局にも説明しやすいのだろうが、科研費の本筋である基盤研究の部分を予算的に伸ばしていくには、どのような理論武装をすればよいのかについて、各委員とともに考えていきたい。

【平野部会長】
 基盤的経費と競争的資金とのデュアルサポートの在り方については、予算全体のパイが広がっていかなければ、それぞれの獲り合いで終わってしまう。その問題に対する議論の整理がこの部会でも必要であろうし、あるいは別の審議会等にそれがいい形でリンクできるように、事務局として考えていただきたい。
 また、新しい領域をどのように切り開いていくか。どのようなところに分野設定をして、全体のパイも増やしていくか。さらには、若手研究者も含めた研究領域の支援体制を図っていくことなどについての議論を進めていきたいと考えているが、このほかにも何かご意見があればお出しいただきたい。

【井上(明)委員】
 資料4の5ページ目にある、大学等における寄附金等は受託研究と比べて獲得が難しい面もあるが、寄附講座を除いた奨学金はどのような状況にあるのか。寄附講座や受託研究数が増加していることは、数値的には見栄えはよいが、これは運営費交付金が減少してきていることの裏返しという見方もできるのではないか。大学にいる側の者からすれば、非常に切実な問題が起こっているのではないかという懸念がある。
 また、資料5にある科研費配分結果の件数で、生命科学のパーセンテージが40何パーセントとなっているものは厚生労働省の科研費も含んだ値なのか。

【袖山企画室長】
 これは科研費だけの件数となっている。

【井上(明)委員】
 厚生労働省の科研費は含んでいないのか。

【袖山企画室長】
 含めていない。厚労科研費は、「科研費」という名前はついているが、文部科学省の科研費とは全く別の制度であるので、通常は科研費のデータの中には含めない。

【井上(明)委員】
 笹月委員の意見にあった、応用に結びつけるような研究については、科研費でも応用を目指した試験研究的なものを置いていたが、研究種目の整理などで無くなってしまった。それらはステップアップをして、生命科学の場合はトランスレーショナル・リサーチや臨床研究といった形となっている。このように生命科学系には少し光が当たりつつあるが、理工系においてもそのような仕組みが構築できないかという声もあることをお伝えしたい。

【三宅委員】
 冒頭の笹月委員の意見にあった、我が国の研究の底が浅い理由として、基礎と応用ということ以外に、人間や社会に関する研究とそれらの関係しない「本当に物だけを対象にする研究」との間に乖離があるのではないか。例えば、何か新しい科学技術的な開発があった時に、それを人間社会の中に持ち込んだらどうなるのかという、そこまで含めた形での研究というのがあまりできないし、科研費の分科細目ではどれに応募すればいいのか分からないという問題もある。
 最近、科研費を幾つ応募したかを競争しているような傾向もある中では、こうした新しい形の研究は採択されない。3回応募して採択されないと、以後の応募は取りやめてしまうようなこともあり、結局新しい分野は開拓されないままになる。そうなると、新しい分野を作ることよりも、分野間を融合した研究や細目に属さないテーマの応募をどう扱うかといった問題や、応募枠がはっきり特定できない場合に応募先を相談できる仕組みについても議論する必要があるのではないかと思う。

【笹月委員】
 いわゆる基礎研究や学術研究については、明治以来の歴史や経験もあるので、きちんと実施されて成果も上がってきている。一方でその応用については、日本は歴史もないし実績もない。トランスレーショナル・リサーチや橋渡し研究で、光が当たっていると言っても、資金があればできるという問題ではなく、本当に必要な組織、方向性などを議論した上でファンディングしなければきちんと機能しない。これまでどういう研究費があったか、どれだけの人が応募し、どういう成果を上げたかといったことについて、きちんと検証してみる必要がある。

【上野委員】
 科研費の場合は、新しい領域と言いつつ、やはり確立した領域から出発している部分がある。私の専門分野は教育であるが、この分野は教科教育学のジャンルが新しく設定されるなど、少し変化してきている。資料4の「高等教育のファンディングの現状とトレンド」にあるいくかのプログラムには職務上触れることもあるが、プログラム実施中は一生懸命取り組んでもそれが終わってしまった後、それらが一つのカリキュラム、新しいジャンルとして根付いていく手立てがない。相応の国費を投じて全国の大学が一生懸命取り組んでいるものを、どのようにして育てていくかを考えた時に、やはり新しい領域を考えることが必要ではないかと思っており、この部会でもそうしたことを考えていく必要がある。

【中西委員】
 第3期に引き続き、委員を務めさせていただくことになったが、これまでの議論を通して、基礎研究は大切であり、その裾野を広げるために採択率の向上が必要であるということがこの部会の共通認識であったと思う。実は、一昨日の総合科学技術会議の会議で、科研費の細目についての議論があったので紹介したい。それは、「科研費の時限付き分科細目では、応募者数によって重要度が定まる傾向がある。イノベーションの源は少数の研究者から始まることを考えると、応募者数を重要視するのでは新しい学問を育てられず、昔ながらの研究領域のみが続いていく恐れがあるのではないか。」という内容であった。こうした議論もあることから、参考3の「系・分野・分科・細目表」に「その他」という項があっても良いのではないか。新しい学問を産み出す際に、この「系・分野・分科・細目表」は非常に強い影響力を持っていると思う。

【鈴木委員】
 デュアルサポートの件について、この部会でどこまで議論するかについては確かに難しい問題である。本来は国大協や日本学術会議からそうした提言を行うべきであると思うが、そうした動きはないようなので、この部会から国大協や日本学術会議に研究費の増額を求めていくことや、デュアルサポートに関して何らかの方針あるいは提言を行えないか。

【磯谷学術研究助成課長】
 この部会は文部科学省の審議会に置かれており、この部会からの要請を受けて国大協に何かをしてもらうという関係にはなっていないため、やり方としては、部会で報告をまとめていただく中で、デュアルサポートについても取り上げた上で、それを資料として国大協にもお示しするような形も考えられる。

【平野部会長】
 あまり部会長が個別の事柄について発言すべきではないのかもしれないが、私は国大協の理事であるとともに、教育研究委員会の委員長を務めていることもあり、発言をお許しいただきたい。今年度、国大協からはデュアルサポート、特に運営費交付金等の基盤的経費の充実ということも含めた要望を各方面に対して行っており、それは19年度も引き続き継続して行っていくことを考えている。その際は、GDPに対する高等教育費の比率や世界における我が国の位置付けも含めたバックデータとともに、高等教育研究機関全体に対する資金サポートが必要である旨の内容としたいと考えている。

【池尾委員】
 部会長が高等教育機関全体に対してという発言をされたので安心しているが、基盤的経費と競争的資金の役割を考える時に、国立大学法人運営交付金と科研費の関係だと限定されてしまうと、私のような私立大学の人文・社会系の研究者としては少し違和感がある。資料4の「高等教育のファンディングの現状とトレンド」では、研究費ではなく教育のファンディングということになっているが、教育面で全体の半数以上を担っている私立大学に対する経常補助費は国立大学法人の運営費交付金の4分の1であるという基本的な問題を含めて、デュアルサポートの問題はぜひ議論していただきたい。

【平野部会長】
 私としては、あらゆる場面で教育全般の中での高等教育という言い方をしてきており、国公私といった設置者によって格差が生じない形での支援を希望している。先ほどの発言は、国立大学協会の教育研究委員会の報告について、運営費交付金という言葉を使ったので、その点については誤解のないよう、ご理解いただきたい。

【笹月委員】
 先ほどの私の発言の延長線上にあるものとして、諸外国と比べて我が国が力を入れなければいけない領域というのが何であるかをきちんと検証すべき、という考えがある。例えば、公募やそれに対する応募、審査の状況、あるいは、それがどのように評価されたのか。そして、アウトカムがどうであったのか。そのようなことについて、生命科学の基盤研究から、患者に届く研究である臨床研究に関して、課題を掘り下げて、どこを整備すれば、我が国がその分野でもフロントランナーになれるのかということは、極めて真剣に考えなければいけないことだと考えている。

【平野部会長】
 ただいまの笹月委員のご意見は、科研費の検証に関わるところであり、科研費の審査や評価についての検証は、科学研究費補助金審査部会で行うことが適当であることから、お許しいただければ、この部会から科学研究費補助金審査部会に申し送り、そこで検討いただいてはどうかと思うが、それでよろしいか。

【川上振興企画課長】
 先ほどからデュアルサポートの話が出ているが、大学において使われている研究費には、運営費交付金と科研費の2種類だけではなく、行政の側から指定した特定の課題に対して研究者の応募に基づき研究費を交付するという3つ目の資金もある。この部会で科研費を中心とする学術支援のための資金について議論する際には、社会的な目的で措置される資金との関係も念頭に置いてご議論いただきたい。
 また、基礎研究と応用研究を比べた時に、応用研究は比較的社会から求められる、そして、社会へ還元するという目的を表しやすいことから、応用研究の方が社会目的に近いということができる。
 このことから、応用研究を厚くするためには、大学で行われる研究の全体が学術であるという捉え方ではなくて、ある部分については科学技術に委ねることによって相対的に学術研究の中身を充実させるという考え方もできると思うので、そのような意味で社会的な目的で措置される研究資金も念頭に置いたご議論をお願いしたい。

【笹月委員】
 私が申し上げたいのは、国全体として、予算の中で支援する枠組みをしっかりと整備する必要があるということである。基盤研究をやっている研究者が自分の成果を以って薬を作って見せるといって応用研究に応募してきても、その研究は結局、基盤的な研究に偏り実現しない。組織や体制についても並行して考え、その上で支援をしていかなければ、いきなり研究費による支援をしても意味がないと思う。

【平野部会長】
 その他、「科研費における研究種目の見直し」や、よく言われるエフォートに関連する「研究費の過度の集中」を避けるための方策などについて、ご意見があればいただきたい。

【伊賀委員】
 科研費の審査や評価について、事前評価や中間評価、あるいは研究が終わった後の事後評価などがあるが、これらの現状を整理して関係者に伝えていくことが早急に必要ではないかと思う。実は、午前中に行われた自民党の会議で、今申し上げた科研費の審査や評価に関しての話題が出たようで、その場では改善を重ねて非常に合理化された現在の審査体制が十分に理解されないまま、科研費の審査が不十分だというような指摘があったと聞いている。こうした話を聞くと、現状の合理化された審査や評価の方法について、積極的に訴えておかないと非常に危険であると思う。
 また、本日議論のあった細目についても、どのような使い方がされているのかの説明が不十分である。細目は希望する審査分野を示すためのもので、自身の研究に関係するキーワードがなければ応募できないというものではない。私が若い時などは逆で、「あそこにキーワードがあったら駄目だ。私の研究はそれを示すキーワードがないから独創的でいいのだ。」というような感じであった。現在でも研究者の申請の内容を見ると、いろんな奇抜なものがたくさんあり、大多数の研究者はこれまでにない新しい考え方で応募している。
 そうした科研費のいろいろな仕組みを、関係者によく理解してもらうような整理の仕方があると思う。制度を改善して合理化していくことが大事であり、また、その努力を対外的に示していく必要がある。

【家委員】
 伊賀委員の意見に賛成である。応募する側では分科・細目を見て、どこへ応募すれば自分の研究計画が理解してもらえるかと一生懸命考える。これは制度の問題ではない。かつて、私が学術調査官をやっていた頃には「広領域」というものがあったが、審査対象には価値観の全然違う様々な分野のものがあり、委員もバックグラウンドの違う人たちが集まっていたので、審査の実態として、収拾がつかなかった。思想としてはいいと思うので、もし今、そういうものをやるとすれば、我々が考えるようなピアレビューはできないということを前提にして、ゼロからシステムを考える必要がある。
 伊賀委員の言われた「系・分野・分科・細目表」のキーワードについては、必ずしもその分野に合致するものでなくても、研究内容が独創的なものや優れた着想などに基づくものであれば、科研費の審査に携わる審査員の見識を考えれば、適切な評価が行われると思う。ただ、「系・分野・分科・細目表」の改正に際しては、いろんな議論が巻き起こる。これは審査のための便宜的なものであるという位置付けにもかかわらず、学会あるいは分野の存立に関わると受け取られているところがある。
 本当に学際的なものをどうやって選択していくかについては、審査の仕組みとして斬新なことを考えないと、ただ枠組みをつくっただけでは、うまくいかないと思う。

【平野部会長】
 「系・分野・分科・細目表」の改正の際は、確かに大変な議論になる。しかし、審査時に優れた着想のものをどのように拾い上げられるシステムが構築できるかについては、審査の状況を踏まえてきちんと検証する必要があるだろう。
 また、伊賀委員の意見にあったように、審査状況あるいは評価方法については、やはりきちんと関係者にわかるように説明する必要があると考えている。事務局から関係するデータ等を提供いただいて、必要な部分は重要項目としてこの部会で取り上げていきたい。

【岡本委員】
 分科・細目に関連して申し上げたい。日本学術会議に以前、研究連絡委員会(研連)があったが、その構成単位をどうするかという議論が盛んに行われていた。私の専門である数学は第4部の理学系に入っていた。そこではちょうど学校で習う数学、物理、化学という単位ごとに研連が構成されていた。一方、例えば生物系では専門ごとに細かく研連が構成されており、分科の見直しの際にどうするかという議論があった。
 先ほど、分科・細目の話が出て、どこに応募したらよいかわからない、という話もあったが、分科・細目の在り方について、もう少し見直していく点もあるのではないか。

【平野部会長】
 本日は自由討論としたが、ここまでの意見からも科研費を含めた研究費の在り方についての総合的な議論が必要であることがよく理解いただけたのではないか。本日の意見、あるいはデータを基にさらなる議論を進めていきたいと考えているので、事務局には本日の議論を整理するとともに、次回にお諮りすべき検討事項案の準備をお願いしたい。

(3)研究費部会の今後の取り進め方について

 事務局から資料7「研究費部会の今後の取り進め方(案)について」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【平野部会長】
 ただいまの説明のように、概算要求時期に向けて、検討事項を「中間まとめ」としてまとめる必要がある。
 また、基本的な事項も含めた研究費の在り方については、全体のパイを高等教育全体でどのように引き上げていくか。その中で、基盤的経費と競争的資金のデュアルサポート体制をいかに社会の理解を得て、持ち上げていくか。こうした大変多くの課題が控えており、皆さんのご協力をいただきながら、取り進めていきたい。

(4)その他

事務局から参考3「科学研究費補助金『系・分野・分科・細目表』の改正について」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【垣生委員】
 資料によると、第4期は「中間まとめ」を最初の年に取りまとめた後、報告のようなものは出さないと理解してよいのか。その場合、「中間まとめ」以降の議論はどのような形で反映されるのか。

【袖山企画室長】
 前期の第3期部会の場合は、科学技術基本計画の策定を挟んでの審議となったこともあり、非常にイレギュラーな形になってしまったが、通常は「中間まとめ」に加え、最終的な報告という形で審議結果を取りまとめいただく形となる。前期部会においてご審議いただいた事項、特に中間まとめ以降についてご審議いただいた事項についてはその考え方を「申し送り」という形でいただいており、その申し送り事項を踏まえて、今期にもう一度新しい形でご審議いただきたいと考えている。

【藤木大臣官房審議官】
 前期部会の後半の審議で、十分な審議が尽くされる機会が少なかったのではないかというご指摘をいただいた。参考資料の審議状況からもわかるように、前期では空白の時期が多くあったが、今期については先生方の機会をいただき、先ほどの中間報告、あるいは最終報告の取りまとめに向けた実質的な審議が行われるよう、事務局も取り組んでいくようにするので、ご協力をよろしくお願いしたい。

【平野部会長】
 今、審議官から説明があったように、「中間まとめ」を出した後も、基本的な事項も含めて可能な限り充実した議論が尽くせるよう努力して、この期を努めていきたいと考えているので、皆様のご協力をお願いしたい。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課企画室

(研究振興局学術研究助成課企画室)