第4期研究費部会(第18回) 議事録

1.日時

平成20年12月17日(水曜日) 10時30分~13時30分

2.場所

如水会館 「松風の間」

3.出席者

委員

 平野部会長、井上(孝)委員、笹月委員、鈴木委員、深見委員、三宅委員、家委員、伊賀委員、甲斐委員、小林委員、小原委員、垣生委員、岡本委員

文部科学省

 大竹基礎基盤研究課長、勝野学術機関課長、山口学術研究助成課長ほか関係官

4.議事録

(1)基礎研究・研究者の自由な発想に基づく研究の充実に向けた検討について

 事務局より資料2「基礎研究・研究者の自由な発想に基づく研究について(報告)素案」について説明があり、その後、テーマ毎に意見交換を行った。

1.「はじめに」、「1 研究者の自由な発想に基づく研究は全ての研究活動の基本であり、基礎研究は我が国の発展の源である。」について

【伊賀委員】
 これはどこへどのような形で報告するものなのか。

【平野部会長】
 科学技術・学術審議会全体での取りまとめの中で、部会報告として最終的に科研費等を含めた国の対応方針を示していくときの基本となる部分である。特に総会において、部会の意見としてきちんと提示をすることになる。それから、単に報告として出す以上に、国民の方々に提示できればということや、第4期科学技術基本計画の組み立ての中に意見が反映できればということもある。

【井上(孝)委員】
 今回、小林先生の研究をはじめ、4人のノーベル賞受賞者の研究は、基礎研究から実証研究を経て、その成果が世界の発展に貢献しているという観点から、ノーベル賞委員会もノーベル賞受賞の対象として選考したと思う。そういう点で、1には「基礎研究は我が国の発展の源である」と書いてあるが、これだけでは弱い感じがするので、ここは「源であり、その成果は世界の発展に貢献する」として、単に我が国だけではなく、世界全体に貢献するとしたほうがよいと思う。

【三宅委員】
 最初のページの最後に、「今後の在り方等について基本的な考え方を整理する」とあるが、「提言する」などではなく、「整理する」ということでよいのか。

【平野部会長】
 「整理することとした」では弱く、筋がよくわからないということはわかる。そのすぐ上の、「本部会においては『審議のまとめ(その1)』、『審議のまとめ(その2)』で提言した事項を踏まえつつ」というのがあり、その中に入ってくるので、「本部会として提言する」というような言い方で結んだほうがよいのかもしれない。それでよいか。

【鈴木委員】
 1に関して、何となく基礎研究派と応用研究派がいて、基礎研究がノーベル賞を受賞したので、今、基礎研究派が攻勢に出ているが、この勢いが弱まってくれば、また、応用研究派が攻勢に出てくるというような感じにも受けとめられる。そうではなく、基礎研究と応用研究は両輪であって両方やらなければいけない。あまりに基礎研究、基礎研究と言うと前に言った調子で受け取られる可能性があるので、基礎研究も応用研究も重要であり両方を一体に進めなければいけないというほうが長続きする気がする。
 先ほど、この報告を誰に出すのかというときに、「国民に」と言われたが、国民は身近なことへの関心が強いので、その意味では、基礎研究と応用研究の両方を進めることが非常に大事だという雰囲気も入ったほうがよいと思う。

【平野部会長】
 一番上の段落の「基礎や応用を問わず」のところの記述を、少し注意して書き上げるということでよいか。

【家委員】
 私も鈴木委員と同じような感想を持った。そもそも全体のタイトルが、「基礎研究・研究者の自由な発想に基づく研究」と書いてあり、1ページ目の最初のパラグラフには、「基礎研究や研究者の自由な発想に基づく研究(以下『基礎研究等』という。)」という定義がされているが、何か異質なものをくくっている気がする。これは考えがあってされたことかもしれないが、違和感がある。
 2ページ目では、「基礎や応用を問わず、研究者の自由な発想に基づく」とあるが、普通の感覚では、基礎研究と応用研究は対立するものである。研究者の自由な発想に基づくものはテーマ設定型と対比されるものなので、その辺をどこかに絞るのか。何人かの委員が言われたように、全体が大切だというトーンにするのか、あるいは、今まで比較的日が当たらなかったところに重点を置いて提言をまとめるのか、その辺の基本的な考え方の問題だと思う。

【山口学術研究助成課長】
 事務局がこれをまとめるに当たってどういう考え方をとったかを説明したい。前回も基礎研究の議論と研究者の自由な発想に基づく研究の議論が両方一緒にされていたが、両方共通に論じられる部分はかなり多いので、基本的には「基礎研究等」という形でまとめている。
 ただ、基礎研究に関すること、あるいは自由な発想に基づく研究に関することを別物としてとらえるときには、「基礎研究等」という言葉は使わないで、それぞれ、基礎研究はこう、自由な発想に基づく研究はこう、という形で書いている。両方共通するところは「基礎研究等」でまとめているので、ご指摘のように混在してわかりづらいところはあると思うが、考え方はそういうことである。

【平野部会長】
 基本的には基礎研究の重要さをアピールするところで縛るが、「研究者の自由な発想に基づく研究」という科研費の筋を示そうとして、こういう形のくくりになったということである。

【家委員】
 最初にこれを見たときに「研究者の自由な発想に基づく研究」を「基礎研究」と定義していると思ったが、中を読み進めると必ずしもそうではないので、私が誤読をしていたということだと思う。

【平野部会長】
 広く言えば、研究者の自由な発想は基礎研究だけにとどまることではなく、応用研究部分でも当然あてはまる。

【笹月委員】
 同じ基礎研究といっても、研究者の自由な発想や好奇心に基づいたものとトップダウンのものがあると思う。例えば、太陽エネルギーをどのように電気エネルギーに置換して地球温暖化問題を解決するかという大きなテーマがあるときに、ナノテクノロジーかシリコンかよくわからないが、基盤となる研究をしっかりやらないことにはソーラーカーをいきなり実用化することはできない。このように基盤研究でもトップダウンのものがあり得るので、基礎研究をすべて研究者の自由な発想や好奇心に基づいた研究と定義しなくてもよいと思う。また、応用研究でも研究者の好奇心に基づいた研究があり得るだろう。

【三宅委員】
 中身の本質ではないが、その「基礎研究等」という用語がどこに出てきているかを見ると、例えば5ページの真ん中の○△がついている「基盤的経費の減少は基礎研究等」で2カ所くらい出てくる。また、6ページの下から4行目には、「多様な基礎研究等」と形容詞がついて出てきている。9ページの科学研究費に関する今後の方向性のところの一番上には「様々な基礎研究等」とあって、いろいろあることを強調する形容詞がついて出てきていて、11ページにはたくさん出てくるが、これには「等」がなくて、全部「基礎研究」だけという言葉使いになっている。
 1ページ目で、「以下『基礎研究等』という。」と定義したはずのものが文脈に応じて使い分けられている感じがするので、用語をきちんとつくって、それぞれの場所に必要な言い方をするように整理し直した方が、「基礎研究等」という中に自由な発想に基づくものも基礎研究も入っているという全体としての混乱が避けられそうな気がする。
 ここにどういう考え方のものを入れたいのかということが決まれば、後は文章の中でどういう用語を使ったらいいのかは、文章をまとめる事務局にお願いすることもできるのではないかと思う。

【平野部会長】
 研究者の好奇心を基に出てくるボトムアップと政策的に出てくるトップダウンに大くくりで分けたときに、前の部分がここでの対象に相当する。
 そうすると、政策的にトップダウンで出てくる研究に対してきちんとすみ分けをした上で、基礎研究等として定義したほうがはっきりするかもしれない。

【山口学術研究助成課長】
 マトリックスで考えた場合に、基礎研究か応用研究かということ、それから自発的かトップダウンかということの大体4つの枠に分かれると思う。そのうち、応用研究でトップダウンのものは基本的にこの中に入っていない。従って、この中では、例えば自発的な発想に基づく研究をターゲットにして、その中には基礎研究もあれば応用研究もあるという位置づけにするか、あるいはそれに加えトップダウンの基礎研究もターゲットに入れるか。トップダウンの基礎研究については別に存在するけれどもこの中では触れないと最初に宣言する形もあると思うし、基礎研究にトップダウンを入れて論じる形も両方あると思うが、まとめ方としてどちらがよいかということを議論していただきたい。

【平野部会長】
 この研究費部会から提言を出すので、研究費部会がベースを置いて議論するものを中心にしてよいと思う。国全体としての科学技術・学術審議会とは別に部会から提言するときには、少し絞っておいたほうがよいと思う。そのほうが筋はしっかりするし、科学研究費補助金の在り方の基盤にできると思う。最初にそこを設定した上で提言に入っていく。

【山口学術研究助成課長】
 それでは、自由な発想に基づく研究の意義と基礎研究の意義とを書いた上で、この提言の中ではそこをターゲットとして扱うと最初に宣言し、基礎研究にはトップダウンで重要なものもあるが、それはここでは扱わないという形で整理するということにしたい。

【家委員】
 私の感覚では、基礎研究は全部自由な発想に基づくものであって、ただ、特にビッグサイエンスの場合、それをファンディングするときに国策的な判断がある場合もあるという理解だと思う。

【平野部会長】
 初めに、どこをターゲットとして議論し提言するかをきちんと出したほうが間違いないので、取りまとめた後で、またご意見をいただきたい。

2.「2 我が国の大学等の基盤的経費については削減が続いており、研究環境は危機的状況にある。基盤的経費の確実な措置が求められる。」について

【家委員】
 5ページの中ほどにある「書類作成に費やす時間が著しく増加し」というのは、多分実感だと思う。これを書くのであれば、もう一つの側面として、特にトップクラスの研究者が評価に駆り出されて時間と労力が非常に費やされているということにも若干言及していただければと思う。

【小原委員】
 最初の3ページに運営費交付金が減っていると書いてある。これは本当につらいところであるが、一般的に国民から見て「1%程度だったらそんなに大したことない。」と思われる気がする。実際の体感としての1%は、削れないところもたくさんあり電気代なども増額しているので、実質的にはもっと大きい。なぜ1%減が大変なのかということをどこかで説明する必要がないか。それから、法人化によって、本当は学長にもっと自由があり良いことができればよいが、規制が非常にたくさんある。学長預かりなど基盤的経費を吸い上げることのほうがトップとして評価されたり、1%の削減が末端の基盤を支えるところにものすごく影響があることを、難しいことだが、もう少し言わないといけない気がする。

【平野部会長】
 削減は不可能で、逆に増が求められる部分があるため、実質的には1%以上の大きな削減である。そのようなことをここに入れていただければと思う。加えて言えば、そこに人の削減が加わっていることがもっと痛手である。
 今年はシーリングが3%減からきているので、3,300億円の重点枠で戻せるかどうかが非常に大きい。それができないと限りなく3%減に近づくことになり、1%減どころの話ではなくなってしまう。
 今、指摘があったように、ここの部分は、社会情勢から見て、例えば電気・ガス等の単価増を踏まえというところを分かりやすく書いていくことにする。様々なところで説明しても、その実感を理解してくれない方も多い。

【井上(孝)委員】
 5ページの一番上の「基盤的経費の減少は、大学等の研究環境に大きな影響を及ぼしている」というところの3行目に、「基盤的経費の毎年度の減少により、研究環境が悪化し、教員一人当たりの研究費の配分額も低下してきている」とある。実際に聞くところによると、人文社会系では20万円や30万円など非常に低額になってきて、光熱費や水道料、消耗品費などで消えてしまうため、実際の研究に研究費が充当できないという非常に危機的な状況のところもある。配分額が低下してどういう状況だということを少し書いておいたほうが良いと感じた。
 それからもう一つ、3ページのデュアルサポートシステムに関する最初の○△のところについて、基盤的経費と競争的資金との「二本立て(デュアルサポートシステム)によって」と「二本立て」で切れていると、別々のシステムのような感じがする。ここは、後で「教育研究体制」と「体制」があるので、「二本立て支援措置」や「二本立て支援体制」などのように表現の補充をしておいたほうが良いと感じた。

【甲斐委員】
 今の井上委員のご意見に関連して、5ページの最初については、教員1人当たりの研究費の配分額が「低下している」という感じではなく、「基盤的経費で研究できる状況ではない」というように、明確に書いたほうが良い。「低下している」では、まだ十分ある感じがするが、実はそれによって研究できる方は、各分野、ほとんどいない。部屋の光熱費や電話費、ファクス費などを引いたら残らないという配分をしている大学が多いと思う。
 もう一つは、国立大学が国立大学法人になるとき、独立行政法人という名前ではなく、国立大学法人にしようという議論が多くあったと思う。そもそも独立行政法人は、独自に効率よく経費分のお金を稼ぐことによって徐々に自分達でやれるようにしなさい、という意図があって独法化していくものだと思うが、教育関係や研究関係にある大学はそういうものではないということから、独立行政法人になるのではなく、新しい名前をつけて国立大学法人にした経緯があったと思う。従って、効率化には合わないし、大学が効率化して自分たちでお金を稼いで何とかするという考え方と、学問を守ることは違うということを何らかの形で盛り込んだら良いと思う。

【平野部会長】
 これは、国立大学に限れば第2期の中期目標・中期計画の中に入れるようなことでもあるが、この研究費のところに何らかの形で入っても良い。

【家委員】
 1%減が現場にかなり増幅された形で及んでいるのは確かに全員の実感であるが、グローバルに見たときに、国が減らしているのは1%だけで、あとは大学のマネジメントの問題だと必ず言われる気がする。それに対して、実態がどうなっていて、それが増幅された形でどのように及んでいるのか、その辺の説明資料、あるいは理論武装が必要だと思う。

【平野部会長】
 確かに、様々なところへ働きかけるときに、そのような問題がある。削減部分を競争的資金が補てんしているとか、科学研究費も少しずつ増えてきているとか言われるが、現実的にはここで議論をされたような問題が出てきている。1%減が増幅されていることも事実であり、そのあたりの説明データを文部科学省が持っていると思うので、必要に応じて提言の中で触れていただければと思う。

【深見委員】
 6ページの最後のパラグラフに「基盤的経費から競争的資金への単純なシフトを進めることは不適切であり」ということがある。このパラグラフ自身は本当に私たちの切実な思いを反映している。予算が拡大していけば、基盤的経費を確保し競争的資金の拡充を図ることも可能になってくるが、現実的に限られた予算の中でできないときには「どちらを優先するのか。」「どちらがより必要なのか。」という質問をされたときに、この部会としてはどう回答し、どちらを優先するのか。もちろん、私たちはこの両方ができることを望むし、そういう意味合いを表現としてここに入れたほうが良いのかどうかはよくわからないが、例えばどちらかを優先する場合、自分たちはどちらにシフトしたいのかを少し考えておいても良いのではないかと思うがどうだろうか。

【平野部会長】
 この中に、それを入れるかどうかというところである。

【深見委員】
 入れるのは良くないような気がするが、ここでは都合の良いことを書いているので、そことの兼ね合いをどのようにしたらいいのかと思うし、意識としてはどのように持っていたらいいのかという潜在的なところを少し考えておいたほうがいいのではないかということである。

【平野部会長】
 深見委員が言われたとおりで、こういうデュアルサポートの話をすると、予算には限りがあるという話になる。私は、文部科学省関係の予算の限りではなく、本当は将来を支え築くためにどこにメリハリをつけるのか、国の予算の中できちんと議論するべきだと思う。深見委員の意見はよくわかるし、大事なことだと思う。

【深見委員】
 必ず言われるところなので、むしろそこを言われることを予想して、何か良い表現があればと思う。

【平野部会長】
 前回、石委員から、数字を出して、「科学研究費補助金については、せめて2,000億円にしていただきたい。」という要望を出すことは的確なことではないかという意見があったと思う。科学研究費補助金は非常に重要で、そのためにここで議論をしているし、競争的資金の一種であることも間違いないが、ただ、日本がある意味、基礎でも他の国にはないような貢献ができているとすれば、以前、基盤的経費がしっかりあったということが非常に大きな基本になっていると思う。そこのところを何回も訴えているが、今の予算体系からいくと難しいので、せめてデュアルサポートをと言わざるを得ないつらさがある。

【鈴木委員】
 3ページから5ページにかけて、「研究環境は危機的状況にある。基盤的経費の確実な措置が求められる。」ということついて書いてある。3ページにはデュアルサポートや全体が低下しているという話があり、4ページにグラフがあって、5ページにいくと、頭から基盤的経費の削減が研究環境に大きな影響を及ぼしていて、競争的資金が今は大半であってこうだといっている。それから、研究者は資料を作成するために時間を取られているとあって、最後に5ページの真ん中下の○△のところで、「基盤的経費の削減は、大学等の安定的な運営を損なうばかりでなく」とあり、ここが全体の流れのポイントになっていると思う。
 「大学等の安定的な運営を損なうばかりでなく」という流れよりも、むしろ次の「地道で真摯な真理探求の蓄積である人文・社会科学や基礎科学などの学問分野を衰退させるほか、将来の飛躍知につながる萌芽的研究の芽を摘んでしまう恐れがある」ことから「基礎研究等の危機ともいえる状況である」というほうが初めに来るべきであって、これが「大学等の安定的運営」の後に来るのというのはあまりすっきりしない。「地道で真摯な・・・・・・」から下が3ページの3番目くらいにきて、こういう状況にある、かつ、大学の運営がこうだと訴えたほうが強いと思う。

【平野部会長】
 ここは非常に重要な部分なので、前のほうできちんと強調して出すようにしていければと思う。

3.「3 研究者の自由な発想に基づく研究を支援する科研費はここ数年伸び悩んでいる。科研費の拡充を着実に進めていくことが必要である。」について

【甲斐委員】
 10ページの予算のところについて、この提言書は何年間くらい有効なのか。毎年出すものなのか。

【平野部会長】
 今、どのくらいのものかは想定していないが、少なくとも第4期科学技術基本計画を立てるところには、この意見を何らかの形で反映させたいと思っている。

【甲斐委員】
 短期的か。それとも何年間かの単位か。1年間は有効か。

【平野部会長】
 1年は当然。これは基本的なスタンスなので、大きく状況が変わらない限り、スタンスとしては残っていくと思っている。

【甲斐委員】
 1年間であれば、来年度予算がどのくらいということを書くのは意味があると思ったし、もっと何年間も有効であれば、例えば5年後には何千億円と書いてもいいと思った。
 書き振りについては、「科研費については、今後一層の拡充を進めていくべきである。」の後、5ページの一番下に、OECD加盟国中最低であると書いてあるように、先進国中最低の額である状況を考えれば、少なくとも、「5年後に何千億円」ともう少し高額に出してもいいと感じた。このパラグラフはノーベル賞の受賞から始まっており、日本が先進国の中でもサイエンスに貢献していることは明らかである。したがって、先進主要国中最低でやってきたことを強調して、もう少し大幅なことをうたってもよいと感じた。

【井上(孝)委員】
 第2期の科学技術基本計画で科学研究費の倍増を打ち出していたと思うが、実際には12年度の1,367億円から300億円程度しか増えず、17年度は1,739億円になっている。そして、現在、第3期が3年ほど経過しているが、15億円、18億円、19億円とごくわずかな伸びしかない。そういう点から言うと、第3期で一体どこまで伸びるかが非常に心配で、そういう意味で、この前の研究費部会でも、当面、科学研究費は少なくとも新規採択率30%を確保すべきという提言があったと思う。
 基本的には、10ページの最後から2番目の「『基盤研究(B)(C)』などの研究種目を中心に、当面、新規採択率30%以上を目標として」というのは、研究費部会として、変わらない一つの目標ではないかと思う。
 その上の括弧書きの、「当面、平成21年度において少なくとも2,000億円の予算を確保することを目指し」というのは、オバマ次期大統領の10年間で倍増などと比べると、単に充実させるだけでは目標がはっきりせず数値目標を挙げないと説得力が欠けるということもあって、2,000億円という数値を当面の目標として出したと思う。これが、21年度予算で達成できないとすれば、少なくとも第3期中、すなわち22年度までに2,000億円をクリアしておくことは、研究費部会として最低の要求ではないかと思う。第3期終了の22年度時点で、それをスタート台としてどれだけ科研費を拡充するか、また新たな理論を構築して、第4期の数値目標を立てていくべきではないかと思う。

【平野部会長】
 この2,000億円が確保できたら、次のステップをここの中に入れ込む。特に、当面の目標ともう少し先の目標を置くべきだと思う。小林委員がこの間も出ていただいた基礎科学力強化懇談会の内容を、いい形でこれに反映できればと思う。小林委員、その中で長期展望なども議論されていると思うので、できたらどういう雰囲気か教えていただけないだろうか。

【小林委員】
 どちらかというと、皆さん言いっぱなしという雰囲気で、それを聞いて政策にまとめると言われたところで終わっていると思う。

【平野部会長】
 最後の重点枠の部分は首相と財務大臣の話で決めるということなので、ノーベル賞を受賞された先生方が出席した基礎科学力強化懇談会の内容を、きちんと首相に酌み取っていただいて、強化に回ってくれればそれ以上にいくかもしれない。

【家委員】
 今の話にもあるように、数値的なことは大事だと思う。9ページの一番上の、平均配分額が低下しているというのは具体的なデータだと思うが、その後の分析は問題ないか。充足率が変わらずに、申請がBやCに移っているという客観的事実があるということでよいか。

【北風企画室長】
 BやCに採択されている総額が大きく変わるものではないので、一つ一つの申請の額、最初に応募のあった額そのものの減少が事実としてあるのではないかという指摘である。

【家委員】
 それは必ずしも悪いことではない気がする。つまり、応募の上限額に近い数字での申請が多いが、個々の場合で違うと思うので、別に上限額に近い数字で申請する必要はない。自分に必要な額をきちんと申請して、それに対して充足率がそれほど低くないような形で配分されているのであれば、それ自体は研究者の申請のモラルとしては、むしろいいことではないかという気がする。両面あると思うが。

【平野部会長】
 もし、必要額としての申請額がここに反映されてきているのであれば、ここの書きぶりは注意をしたほうが良いというご指摘なので、そこは再チェックをしていただきたい。

【小原委員】
 このまとめの中で、科研費が重要だということは明らかであるが、幾つかの場所で、例えば10ページの最後の●のところで、「科研費など競争的資金の拡充」と書いてあり、科学技術基本計画でも、「科研費など競争的資金の拡充」と書いてある。確かに競争的資金は拡充されているが、いろいろなトップダウンのものが競争的資金に変わったということもたくさんある。当然それも良いが、その中で科研費の拡充が一番重要だという形にしないと、競争的資金は拡充されても科研費はなかなか拡充されないということになるので、言葉の問題だが、「競争的資金の拡充、中でも科研費の拡充」などとしておかないと弱い気がする。

【岡本委員】
 9ページの科研費に関する今後の方向性及び2、4にも関係するが、自由な発想に基づく研究は、発想の大事さとともに、もう一つ、研究の持続性も大事だと思う。例えば、小林先生や益川先生の仕事が、仮にどこかの棚の中にずっと入っていたのでは、その後の科学技術の進歩はない。それに啓発された多くの人が持続的に研究をしてきたことが非常に大きかったので、ぜひ、科研費の意義、自由な発想に基づく研究の意義のところに、「持続的な研究の発展」という言葉を入れていただきたい。それに関連して、科研費の重要性でも、研究の発展というところを、「持続的な研究の発展」としていただきたい。
 もう一つ、4の、研究活動の適切な評価に関する留意点とも関係するが、応用研究を含めて、競争的資金、特に自由な発想に基づく科研費は、将来の研究成果に対する投資だと思う。それに対して、基盤的経費は将来の人に対する投資だと思う。どこの大学でもそうだと思うが、特に、十八、十九歳で大学に入ったばかりの学生を見ていると、まだ研究という枠ではなく、そういう人たちに基盤的経費を使って教育をするということは、将来の人に対する投資だと思う。従って、デュアルサポートは、片方だけあれば良いというものではなく両方必要である。

【平野部会長】
 持続的な研究の発展につながるものであること、それから、教育への投資とはよく言っていることだが、その部分をこの中に入れていただく。

4.「4 短期的に成果を求める成果主義の風潮は研究活動に影響を与えている。基礎研究を長い目で見守る環境の整備が求められる。」、「おわりに」について

【山口学術研究助成課長】
 11ページの下のほうに×の部分がある。成果主義に関する問題点についてはいろいろとご発言、ご指摘をいただいたが、こういうことは憂慮されるということで止まっていたので、これからどうしていくかということについて、事務局で下の二つを試みに入れている。これが必要かどうか。こういった観点は要らないということであれば、これは削除していただいたほうが良いと思うので、そういった面も含めて議論していただければと思う。

【平野部会長】
 ×がついている新規追加の部分について、これは委員の方々からの意見に加えて出されているところであるが、この部分を含めるということでいかがか。
 また、「おわりに」は、当然といえば当然のことであるが、特に訴えていかなければいけないところである。
 今日いただいた意見をさらにブラッシュアップして事務局で取りまとめた上で、1月8日のこの会議で提言としてまとめていきたい。その後、私から科学技術・学術審議会の総会でこの部会のまとめとして報告するとともに、何らかの形で他の方々にも伝わるようにすることだと思う。

(2)その他

 事務局から、次回の研究費部会は1月8日(木曜日)10時30分から開催予定である旨連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課