第4期研究費部会(第17回) 議事録

1.日時

平成20年11月20日(木曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

 平野部会長、笹月委員、鈴木委員、中西委員、深見委員、三宅委員、伊賀委員、石委員、井上(明)委員、小原委員、垣生委員、池尾委員、岡本委員

文部科学省

 倉持大臣官房審議官(研究振興局担当)、戸渡科学技術・学術政策局政策課長、大竹基礎基盤研究課長、山口学術研究助成課長ほか関係官

4.議事録

(1)基礎研究・研究者の自由な発想に基づく研究の充実に向けた検討について

 平野部会長より、議事について趣旨の説明があった後、事務局より資料2-1「基礎研究・研究者の自由な発想に基づく研究の充実に向けて(委員からの御意見)」、資料2-2「研究費部会『審議のまとめ(その1)、(その2)』(抄)」及び資料2-3「第3期科学技術基本計画(平成18年3月閣議決定)(抄)」について説明があり、その後、テーマ毎に意見交換を行った。

1.「基礎研究の意義や期待される役割」、

2.「研究者の自由な発想に基づく研究の意義や期待される役割」について

【笹月委員】
 1に書かれていることは繰り返し議論したことで、つけ加えることはないが、2の最初の丸では分野間の垣根を低くすることが大事だということ、その次の丸では発想が生まれる土壌ないし環境を整備すべきだということが書かれている。私はこれもいつも言っているが、分野間の垣根を低くする、すなわち、融合領域を公募するというときに、2つの領域があって、研究者が一緒になろうとしても、それぞれの研究者が個人のレベルできちんとした教育を受けて、生物学で言えば生命に対する見識、あるいは物理学や化学の方でもよいが、両方の見識を持った人が、それぞれの領域を代表して領域を融合させようとしないと、1つの領域のことしか見識がない人たちが一緒になっても、なかなか本当の意味で領域が融合して、新しいサイエンスが生まれるということはない。日本で、融合領域の研究がうまくいかないのは教育、特に大学院における幅広い教育が足りないということが大きな問題であって、ここでは研究がテーマだが、やはり裏腹には教育ということがあるので、そのことをぜひ検討していただきたい。それから、2番目の自由な発想が生まれる土壌・環境に関しても、初等教育や中等教育、高等教育で幅広い教育をきちんと受けてないと、そういう発想が生まれるはずもないので、繰り返しになってしまうが、大学院教育の重要性、それから、初等教育からスタートするきちんとした教育の重要性ということを再度申し上げたい。

【平野部会長】
 研究のもとになる教育は非常に重要なことだと思う。
 「基礎研究は時間がかかる」ということを理解してもらうことは大変難しい。ノーベル賞をとられた方がどうこうということではなく、大学内で評価をするときに当然論文数などは聞かないし重視もしていないが、10年間論文を書いていない方についてどう考えるのかというと、短期的な論文数だけの評価であれば多分悪い評価になる。そうすると、10年前の論文でノーベル賞を受賞したケンブリッジの方は、それ以後論文が出ていないが排除するのかという議論がいつも出てきてしまう。特例は特例であると一部で言わざるを得ないが、おそらくこういう長期にわたる研究については、ある段階できちんと説明ができる形にしておく必要がある。そうしないと、何か1つの尺度だけで見ることになり、逆に成果だけを問われるという、非常に厳しい環境になってしまうことを心配している。

【笹月委員】
 基礎的な研究の推進というときに、もう一つ大事なことは、新しい方法論や機器の発明あるいは開発が日本は著しく立ち遅れているということである。医学・生物学の分野でのブレークスルーについて言えば、例えば核酸の増幅方法、いわゆるPCR法の開発や、あるいはセルソーターの開発など、ありとあらゆるものに関して外国のアイデアや外国製の機器を購入している。日本の経済界を活性化しようとして予算を組んでも、実際にはアメリカの機械を買っているので、アメリカの産業界を活性化していることになる。学術研究の推進はよく議論されるが、どうすれば新しい誰も知らない方法論の開発、あるいは機器の開発ができるのかということはあまり議論がされていないので、これもやはり検討する必要があると思う。

【平野部会長】
 これも重要なことで、いろいろなところで言われながら、残念ながらあまり動いていない。ぜひ重要なポイントとしたい。
 予算の場合というのは、日本全体の予算が緊縮体制にあるところで、なぜこれだけかということが常に言われるので、そういうことも含めて説明できるような体制をとっておきたいということが背景である。事務局にお願いをしたいと思うが、基礎科学は当然知的好奇心を満足させる点においても、非常に重要な役割を果たしているが、成果というかそういうところが見える形について、できれば整理していただきたいと思う。もう一つ、基礎科学がイノベーションに役立っていることは明らかなので、これも研究者以外の方にもわかるような事例を含めて整理してもらえれば、いろいろな場面で説明するときに役立つのではないか。

3.「大学等の研究者が置かれている研究環境」について

【井上(明)委員】
 ここに書かれていることはすべて適切なことで、好奇心に基づく研究も重要だが、今、次期の中期目標・中期計画においては、機能別分化ということがかなり求められてきている。これは、各大学が今後いろいろ検討していくべき問題だと思うが、すべて同じ方向に沿う意見だけでよいのかということもあるので、この機能別分化という視点からも研究へのかかわり方を検討していくことがあってもよいと思う。

【平野部会長】
 今のご意見は、特に国立大学に求められてきているものだと思う。当然、公立大学や私立大学においても似たような議論があるとは思うが、国立大学においては第2期の中期目標・中期計画において、1つの意見として機能別なくくり、進化を見るということが議論されているので、そういうご意見が出たのだと思う。端的に言えば、より教育を重視する大学と、研究重点でいく大学とに応じて、この研究費のあり方についても議論すべきではないかということでよろしいか。

【井上(明)委員】
 言われるとおりで、決して差別ではなく、自主・自立のもとで特徴づけるということである。そこで、教育に特化するのであれば、それに対する基盤経費等はそれなりに尊重されて充当されるべきだと思うし、そこは各学長等の指導力の発揮の仕方の1つだと思う。

【平野部会長】
 教育に重点を置くところへは、基盤的経費を含め教育への費用対応をきちんとする。研究重点のところには、研究費に基盤的な部分と競争の部分を入れ込むというようにする。やはりその担保がないと非常に厳しいと思う。

【石委員】
 5ページに書かれている私立大学と地方の公立大学のところに関して、まさにこのような現実が起こっている。研究費の配分を見ると確かに大きな国立大学のほうに大幅にシフトしていて、ここに書いてある中小規模大学が非常に不利をこうむっているということは事実である。ただ、研究費は大学に来るのではなく研究者に来るので、要は、研究費を獲得できる能力のある教員がどれだけいるかということだと思う。したがって、中小規模大学にいると途端に不利になって優秀な研究者でも研究費をもらえない、あるいは、少し劣るとしても大きな国立大学にいれば研究費をもらえるという事実があるのかどうかを確かめないと、ここでは大学による不利・有利のみを強調している。そういう意味で、結局、大学はいい研究者を集めれば研究費が増えるし、集まっていないところは増えないというのが事実であるが、そこを表面的に大学の格や規模だけで議論してしまうと少し違和感がある。

【平野部会長】
 少し加えさせていただくと、競争的資金と基盤的経費のバランス、特に基盤的経費をきちんと確保した上で競争的資金があることが一番重要である。ベースが同じではないところで競争をしろといっても、非常に厳しいのが今の状況だろう。その中で競争的資金には間接経費がついてくる。これは非常に重要なものではあるが、一方で、より大学の教育研究環境の整備において、格差を助長してきていることも事実だと思う。
 ただ、この場でも各大学から発表をしていただいて意見をヒアリングしたが、間接経費は大学の教育研究環境の整備の上で非常に重要であることは間違いないので、間接経費をつけることについて、これまで以上の努力が必要だろう。5ページ目の上に書かれていることは、その際、格差についても留意をする必要があると理解したほうがよいと思う。

【池尾委員】
 今の点に関して、出発点をある程度そろえた形で競争ができるようにすべきだという趣旨だと思う。最初から極めて大きなハンディキャップがついている状態で競争といっても、それはフェアな形ではないが、ただ、現状において競争ということが強調される程度に比べて、初期条件がどうであるかとか、どういうハンディキャップがあるか、ないかということの調査がなされていないのではないか、またそういう基礎的な認識が必ずしも確立されていないのではないかと感じた。
 それから、先ほどの機能別というときに、大学レベルで教育大学、研究大学という特色を出すという話もあると思うが、もう一つ、大学の中の個々の教員のあり方ということもあると思う。現状では、建前上すべての教員が研究や教育、学内行政的なことを同じような比率で行うことになっているところが多いと思うが、実際ある程度大学教員を長くやると、それぞれの人の特性や得手不得手みたいなものが出てくるので、教育に重点を置く教員、組織運営に重点を置く教員というのが出てきてもむしろ当然だと思う。そのときに違う分野に重点を置いた教員間の評価が、それぞれに努力している度合いに応じてフェアに評価される仕組みを人事制度として用意するようなことを考えないと、現状においてはなかなかそういう分業ができず、ただただ忙しくなるという結果につながっているということではないか。

【中西委員】
 大学のシステムについて、大学は部局の自治を大切にしているが、これは非常に大切なことだと思う。何が効率的で、何を効率的にしたほうがいいのかどうかは後にならないと分からないことも多いと思う。今までは、大学の各部局などのまとめ役の人は、グループの代表者のような形で選出されたり、順番に選出されたりしてきた。そういう人たちが本当にマネジメントをやらなくてはいけなくなってきたことに問題が出てきたのではないかと思う。会社の研究のようなマネジメントとは異なり、大学の基礎研究をどのように発展させるかということはまた違った側面があると思うが、そういうことを学んだ人が必ずしもまとめ役になっていないので、もっとやりようがあるのではないかなどの問題点が出てくるのではないかと思う。組織をつくり上げることがいいのかどうかは問題だと思うが、マネジメントしてどのように基礎研究を組織の中で発展させるかということを、手法としてあまり理解されていない場合が多いのではないか。例えば学長がこうしたいと思うことを、末端までうまく行き渡せるような仕組みがもう少しあってもよいのではないかと思う。

【平野部会長】
 これは大学の問題として、基礎あるいは応用も含めて研究環境の整備という点で重要なことだと思う。

4.「基礎研究の推進方策」、

5.「研究者の自由な発想に基づく研究の推進方策」について

【鈴木委員】
 デュアルサポートをどのようにまとめ、実現に向けるのかということは、これを機会に積極的に進めていくべきだと思う。例えば、アメリカの研究者なども、日本の基盤的経費、以前の校費を非常に重要だと認識している。研究費を獲得してくればよいというだけでは、様々なプロジェクトに片足を突っ込み、大きな自分の研究ではなく、だれかのプロジェクトから研究費を持ってくるということになる。そのようなグラント式のため、一般の欧米の研究者は、自分で発想するような研究がなかなかできない。そういう意味で、日本の校費は非常に良いということを昔から聞いているし、この機会にこのデュアルサポートを相当な勢いで進めてもらいたい。
 もう一つ、ここには施設整備や研究費にお金をつけるべきと書いてあるが、お金がついたからといって本当に研究ができるのかというと、必ずしもそうではないような気がする。先ほど笹月委員が言われたように、装置の開発をなかなかしないということがあるが、それはなぜかというと、一方でお金がつき過ぎているという面もあると思う。例えば、競争的資金をとれる人はすぐそれで新しい装置を買って測定する。自分で装置を開発するという習慣が徐々になくなっている。これは電子顕微鏡やナノチューブの世界でもそうで、昔は顕微鏡を自分たちで開発しながら研究を行っていったが、最近、徐々にお金がとれるようになると、それをしなくなっている。施設整備や研究費が充実したからといって良い研究ができるかということは必ずしもイコールではないと思う。
 その辺を一方でどう考えるのかという点と、研究者がどうしてもこういう研究をやるんだという、学生も教育も含めた意気込みのような、メンタルな面での充実をどうやって図るのかということもどこかで入れないといけないと思う。そのメンタルな面の1つの要素は、やはり時間だと思う。時間がないととても考える余裕がないという面で、法人化でいろいろ忙しくなっていても、いかに研究や教育に割ける時間を多くするかということを制度的に何かの形でまとめるべきではないかという気がする。

【伊賀委員】
 1~5まで拝見して、一般あるいは政治家の方々にわかっていただけるところまで到達したかというと、やはりあまり進んでないのではないかという気がする。わかりにくい原因は、学術あるいはサイエンスには、基礎科学のような発明・発見や理解の科学、工学や文学など何もないところから何かをつくる科学や学術、それから法学や経済学、建築学など社会を安定させるような科学の3つがあると思うが、基礎研究といったときに、数学や高エネルギー科学など基礎科学を指しているように思う場合と、基盤的経費による自由な発想で何でもよいものという場合とが重なっており、言う人と聞く人の認識もやはり重なっているからという気がする。したがって、日本の学術の発展は基盤的経費と言われる、何でも使ってもよいというものが支えてきたことが大きいが、理解を得るにはそれ相応の説得力を持った言い方をしないといけないと思う。
 それから、基礎科学にしても、自由な発想ではあるがほとんど計画的に進んでいる場合があり、計画的な研究はいわゆる競争的なものになると思うが、これと自由な発想に基づく研究との区分けを説明しないことには説得力が出てこない。役に立つかどうかということは、エンジニアリングや社会を安定させるような環境の研究などでは、成果が出てくれば比較的説明しやすいが、基礎科学が何の役に立つのか、どこがおもしろくて何がわかったのかということについての説明が足りないのではないかと感じている。もう少しその辺を整理し、基盤的研究と基礎科学の仕分けをわかるようにしないといけない。

【平野部会長】
 まさにそのあたりをきちんと説明できるようにしなければいけないと思う。私たちは、研究者ではない方々が何を見るのかということを真摯に理解しておかなければ、次にこの予算を大きくするとか、あるいは削られないようにするというときに、大変厳しい環境になると思う。ぜひその仕掛けを少しでもいいから出してもらいたい。
 今、鈴木委員からはメンタルな面という大変重要なご意見があった。これは基盤的経費で行う研究でも競争的資金で行う研究でも全く同じである。一方で、そのような議論をすると、例えば、研究大学だと言われて大学院を重点化してきたところでは、学部をなくして大学院の教育と研究を重視すれば講義も含めてもう少し整理ができるはずだという意見も出てきている。そういうことも含めて、説明をしていく必要があると思う。評価も当然大きな問題ではあるが、それについてはおそらく改善されてくると期待している。

【岡本委員】
 やはり最終的にだれに説明するかというと、仮に社会に説明するというしかないと思う。社会にどのように説明するかというその説明の仕方は、最終的には社会を巻き込んで一緒にやっていくしかないと思う。大学のいろいろな事情や機能別分化などを説明してもなかなか通らないだろう。例えば、こういう研究をすることは大事だと説明すれば、きっと「それは、大事だ」と言ってもらえると思うが、そのために100億円が必要だと言えば、結局、予算が決まっているので、「それでは、どこかから獲得してきたら」ということで話が終わってしまう。
 そういうときは、何か一種回らない車のようになっている。同心円の歯車、輪があって、そこに紐が2本あれば転がるかというと転がるはずはない。動かそうと思えば滑らすか外すしかないが、社会から外すわけにはいかないので、うまく滑らして動かして説明していくしかない。具体的な良い案は出てこないが、そういう手だてを研究者や大学も含めて全体で考えていかなければいけない。
 さらに、一言申し上げると、大学を様々に、例えば私立大学はこう、地方国立大学はこう、大規模な大学はこうというように割り切ることは、研究ではできないことがたくさんある。例えば、私が地方国立大学にいて、今やっていることそのままはできないが、自分の研究だけを考えれば10分の1の金額でできる。その理由は、別に東京の物価が高いからではなくて、役割が違う。同じ研究でも、私が若いころいた一橋大学で必要な金額と東京大学に移って必要な金額とでは異なる。大学院生がたくさんいて教育という面もあるし、研究を発信していかなければいけない。一橋大学にいて、教養部の教員として数学教育をやることが仕事で、それ以外の時間を使って自分の研究をしていたときは、論文を書くことが発信だったが、機能が違う。そのような違いはたくさんあると思うので、その辺をどうやって社会と一緒になって、理解を得てやっていくのかということを考えている。

【平野部会長】
 これまでの中から少しでも共有する部分、工夫しながら前へ進んでいける部分が出てくればと思う。第4期の科学技術基本計画がどうなるかはまた別だが、第3期の科学技術基本計画も3年が進行しているが、予算的な体系から見て、全く対応できてこないだろうと思う。予算の枠が決まっている中でどうするのかということも含めて、今日ここで全部結論を出すということではなく、次に議論したい。

6.「その他」について

【伊賀委員】
 資料2-1の6の4番目の丸のところに、私が申し上げたかったことが書いてあるように思う。基礎研究というのは、いわゆる基礎科学からエンジニアリング、社会科学、法学、医学などどの分野にもある。そこを自由な発想でやってみるということは、その分野の芽を出すということなので、やはりきちんとやらなければいけない。また、計画的で競争的なものは、それなりの成果が問われるので、予算を獲得し説得していく上で必要だと思う。それがデュアルサポートの根本的な思想だと思うので、この4番目の丸が非常に大事だと思う。
 それから、最後は、COEについてはこういうこともあるかもしれないが、記述が少しネガティブである。大多数のCOEはこれを有効に使って、大学院博士課程の教育改革に取り組んでいる。また、そこの学生の評価はきちんとサポートしているはずであり、私どもの大学はそうやっている。制度をどう改革していくかという記述に変えないといけないのではないかと思う。

【平野部会長】
 伊賀委員が言われたこの4番目は私も同意である。最後のところは、このまますべてを出すというわけではなく、ここに関連するものとしてきちんと中を読み取って書けるようにしておく必要があると思っている。予算等も含めてこれまで議論いただいた「審議のまとめ1・2」に入っている部分も多いが、本日いただいた意見により、補足も含めて入れ込められる点について少し整理して、また素案を委員の皆さん方にお諮りをしたいと思う。

【岡本委員】
 相続税・法人税の基金のことについて書いてあるが、これもまた微妙な話で、税制改正をしたら大学への寄附が増えるかというと、そういうものではないと思う。一番肝心なことは大学へ寄附をするモチベーションであり、この意見には少し違和感がある。税制改正を求めてもいいが、それをして何かいいことが自動的にあるとは思えない。

【平野部会長】
 残念ながら、税制を変えたからといって寄附が大学にそのまま来るということはないかもしれないが、大学全体を支える寄附文化をきちんと日本全体の中で喚起しようということがこの背景にある。

【笹月委員】
 最初のころに教育ということを申し上げた。ここでも少し6ページに出ているが、教育のことは例えば中央教育審議会で審議していて、ここでは対象外みたいなことで、2つの検討が同じ文部科学省なのにきちんとキャッチボールされない。例えば、基礎研究を本当に推進するためには、教育がどうあってほしい、どうあるべきだという議論がここで出てこないで、向こうで議論しているから良いということでは足りないと思う。やはり必要なことはここで議論すべきだと思うので、その点についても今後の検討として考えていただければと思う。

【平野部会長】
 大変重要なことである。基礎研究を進める上でも教育は当然ベースになるので、幅広い知識を持った人材を育成するための教育システムを、特に融合の分野では、しっかり入れなければいけないということを、この委員会から言ってはいけないことはない。必要なこととして、教育側の人づくりが基本になっているという記述は入れておけばよいと思う。

【石委員】
 9ページ目の丸の2番目に、ノーベル賞を受賞したから科研費を2,000億円にするべきと書いてあって、大変控えめな請求だと思っていた。ただ、机上配布資料を見ると毎年10億円単位で増えているので、今年度の1,932億円から2,000億円という68億円の増額は、例年をはるかに上回る要求ということになるが、少なくとも、まさにこのぐらいは獲得する必要がある。今回は非常に良いタイミングで、基礎研究に対する社会的な理解が深まっているということを踏まえれば、少なくとも2,000億円ぐらいはとってこなければという気がする。今、全体が厳しい中で、科研費の推移と比較すると、非常にリーズナブルな要求だと思うので、この文句は大いに強調すべきだと思う。

【笹月委員】
 私も同じようなことを申し上げようと思う。例えば、オバマが基礎研究の予算を10年で倍増すると言っていたり、あるいはかつて文部省も1,000億円を目指してやると言っていたように、やはりそういう数値目標を常に提示することが、それに近づくことになると思うので、高い水準での数値目標をきちんと訴えていくということをお願いしたい。

【平野部会長】
 大変重要なところだと思う。直接経費や科研費全体を増額する要求は当然行っているが、一方で間接経費も全部つけてほしいと言うと、トータルが伸びないため直接経費が落ちてきているというのが、ここ一、二年の状況である。間接経費をつけた上で直接経費が伸びる金額をどこに設定できるのか、2,000億円がいいのかどうかはわからないが、背景を出しながら1つの数字として訴えていく必要があると思う。

【垣生委員】
 成果主義になるのは、1つは、財務や一般の方々など説明する相手を説得できるようにするためということであるが、この中にもたくさん書かれているように、自由な発想ですばらしい研究をするためには、すぐに成果が出ない、あるいはむだと感じるところもあると思う。そういう中で、こういう成果が生まれたということを、例えばこれだけ大学院生が増えたからこういうものが出てきたというように、文部科学省から数字で発信するための機関やグループをつくって、継続的にキャンペーンをしていく努力が大事だと思う。

【平野部会長】
 私も同感で、文部科学省もやってくれているが、私ども委員一人一人や関係する人たちすべてが「基礎研究を大事にすると、こういうことが出てくる。」とか、「5年かかったがこういうものが出てきた。」というように訴えて、何らかの形で見えるように整理しないといけない。ノーベル賞を授与される先生方は、本当に大変な努力やサポートもあって受賞されたが、危惧するような一過性で終わってしまう。そのため、何か見える形になればと思い、冒頭で、事務局にできればぜひもう一度整理をしていただきたいとお願いした。

【小原委員】
 基礎研究ということで、分野によって異なるかもしれないが、今、生命系で一番問題になっていることはポスドクの問題である。若い人の行き場がない。非常に優秀な人で、かつてであれば当然職につけたような人でもなかなか難しい。研究費が増えたから人も雇えるが、それがなくなれば非常に不安定になる。これがPIであればお金がなくなっても1、2年は耐えていくことができるが、若い人はそういうわけにはいかない。ノーベル賞が仮に出ても、研究者になりたいという人がどのくらい増えるのかということや、博士課程進学者がどんどん減っているということも含めて、この自由な発想の研究を支える基盤がかなり悪くなっているということは事実だと思う。これは非常に大きな問題だと思っている。留学生に頼ることもできるが、受け入れの問題もあるのでそう簡単ではない。そういうことをトータルで考えないと、先が厳しいと感じているので、その辺も考えていただければと思う。

【平野部会長】
 これも文部科学省の関係で人材委員会というものがあって、そこでポスドクを含めた若手研究者の育成・処遇という問題を審議しているので、そことも関連がとれるように意見の橋渡しをしていただければと思う。
 当然、今日これですべてというわけではなく、常にこういう議論を背景にした対応をとっていきたいし、取りまとめを行い要請していきたいと思うので、ぜひ今後ともご意見をお聞きかせいただきたい。

(2)研究費部会「審議のまとめ(その1)、(その2)」のフォローアップについて

 事務局より、資料3に基づき、「審議のまとめ(その1)、(その2)」の提言事項への対応状況及び「審議のまとめ(その2)」において引き続き検討が必要とされた事項について報告があった。

(3)その他

 事務局から、次回の研究費部会は12月17日(水曜日)10時30分から開催予定である旨連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課