第4期研究費部会(第15回) 議事録

1.日時

平成20年6月18日(水曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

 平野部会長、井上(孝)委員、上野委員、中西委員、深見委員、三宅委員、家委員、伊賀委員、井上(明)委員、井上(一)委員、甲斐委員、小林委員、垣生委員、池尾委員、岡本委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、大竹基礎基盤研究課長、磯谷学術研究助成課長ほか関係官

4.議事録

(1)「審議のまとめ(その2)」に向けた検討について

 事務局より、資料3「若手研究(A・B)の年齢制限を緩和した場合の影響について」、資料4「基盤研究等における継続研究課題の研究期間の短縮による新規応募の取り扱いについて(案)(平成20年5月22日 研究費部会(第14回)配付資料)」及び資料5「『特別研究促進費(年複数回応募の試行)』の見直しについて(案)(平成20年5月22日 研究費部会(第14回)配付資料)」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【岡本委員】
 趣旨はよくわかるが、若手研究Sが42歳までということからも、若手研究Aの年齢を若手研究Bよりも少し上げるような形でメリハリをつけることは考えられないのか。基盤研究等への移行を考えると、年齢を2歳上げたところで、同じ問題が先送りされ37歳で起きていた問題が39歳で起きるだけのような気がする。

【磯谷学術研究助成課長】
 若手研究Aの採択率は非常に低いので、例えば若手研究Aだけを39歳までにしたとしても、意味合いが限られるのではないか。これは、以前にも議論があったように、研究者年齢自体が上がっているということや、医歯薬系の研究者からの改善してほしいという意見を受けて検討している。

【小林委員】
 資料3の2、3ページ目のグラフから、37歳を境目にして、その前後で科研費の採択率に著しい差があることがわかる。30代後半から40歳前後というのは、一番アクティブな時期だと思われるが、その真ん中に制度による切れ目があるということは、制度全体としてあまりうまく設計できていないのではないか。年齢制限を2歳上げたとしても、その基本的構図は変わらないので、その構図をどうするかという視点が要るのではないか。
 それから、年齢制限を2歳上げることに伴って、原案では基盤研究から若手研究に予算を移そうとしている。先ほどの37歳前後で採択率に著しい差があるという問題に対して制度をどうするかということにも関係するが、必要なことは基盤研究の採択率を上げることだという気がするので、基盤研究から若手研究へ予算を移すということは、ある意味で逆行している面があるのではないか。一方、予算を移さなければ若手研究の採択率は当然下がるので、どう対応するかについては、もう少し長期的に制度設計を考えて議論する必要があるのではないか。

【長澤企画室長補佐】
 そういう懸念もあると思うが、採択率を見る場合の年齢は、研究開始の年齢である。若手研究の研究期間は2年から4年なので、年齢制限を37歳から2歳上げて39歳までとすると、43歳までは若手研究の対象となることができる。逆に基盤研究Cの採択率を上げようとすると、すべての世代をカバーする必要があるので、初期段階の方々の研究を遂行させるための資金効率という観点では、若手研究者に対する支援を充実させるほうが、資金を効果的に使えるメリットがあると思う。

【井上(孝)委員】
 前回も発言したが、できるだけ若い頃から、途中で中断することなく継続して研究を行うことが、研究者として成果を上げていく上で必要なことだと考えている。このグラフなどから見ても37歳から38歳にかけて非常に採択率の落ち込みがひどいのは事実である。若手研究の年齢制限を40歳未満までに上げると、ある程度なだらかなグラフになるので、そういう意味でも若手研究の採択枠を増やすことが必要ではないかと思う。一方、私立大学や地方の国立大学等では運営費交付金の減少などにより、研究費が非常に乏しくなってきている。本来、現実のニーズからいえば、基盤研究Cを拡充する必要があると思うが、今、そういう研究者の現状を分析し、どこに重点的に資金を投入し効果を上げるかということを考えた場合、若手研究の年齢制限の緩和と基盤研究B・Cの拡充が、特に求められているのではないか。

【家委員】
 基本は、予算を拡充して全体の採択率をあげることであるが、現実にそれを正面から主張しても、なかなか難しいところがある。そのことを踏まえると、予算効率としてはよい方法なのではないかと思う。最初に指摘されたように、研究者の年齢が全体的に上がっていくという現実を追認してしまう形になることに、少し心理的な抵抗があるが、現実的な施策としては妥当である。
 ただし、これは採択率にかかわることであり、従来の若手研究の対象である37歳以下の方々にしわ寄せがいかないように予算を増額することがキーポイントだと思うので、その辺はよろしくお願いしたい。

【甲斐委員】
 基本的にはよいことだと思うが、基盤研究に応募しなければいけない40代の若い人たちは、非常に採択されにくいという不満を持っている。そこからさらに若手研究に予算を移行するということは、少しおかしいのではないか。当然、すべての採択率を上げて、充足率も上げるということが理想だが、予算を基盤研究から若手研究にシフトした場合に、基盤研究は少々の苦しみは飲み込めるぐらいの余裕があったととられないか。また、基盤研究のB、Cが全然足りないと叫んでいる中堅の方たちは、その予算を割いてでも若手を助けるべきであるということに理解を示してくれるのかということを懸念する。年齢制限を上げることはよいが、基盤研究の予算を割くということに対して他に方策はないのか。

【磯谷学術研究助成課長】
 科研費の場合は、応募状況に応じて採択率も勘案しながら執行している。仮に、ある一定の規模が基盤研究から若手研究へ移った場合に、こういう対応の仕方があるという数字を予算で示しているものである。基盤研究Cや若手研究の予算額を増やしていくということについては、重点的にすそ野を広げ、多様性を確保するということを1つの柱として、概算要求をしたいと思っている。

【中西委員】
 多様性を図るという観点で、研究には様々な分野や形態、多様性があるので、制度設計を一律に決めるのではなく、医歯薬学の分野から年齢制限を上げて欲しいという要望が来ているのであれば、フレキシブルに対応してもよいのではないかと思う。予算確保は別として、やはり大前提は多様性を図るということだと思う。

【垣生委員】
 今までの意見に反対するわけではないが、40代の初めから半ばの人たちが一番悲鳴を上げているということには留意すべきである。若手はもちろん大事だが、そのことを忘れずに予算を組んで欲しい。

【平野部会長】
 この部会でも、基盤・基礎が大事だということをみんなが訴えている。学術の基礎を大切にして、基盤的経費や基盤研究の予算をきちんと充当できれば大変よいが、応募状況に応じた調整もあるということをベースに、基盤研究B、Cの予算を十分に確保する努力を事務局でも行うということで、今回の若手研究の年齢制限を緩和して対応することとしてもよいか。その上で、基礎研究の予算の拡大を全員で求めていくということを取り上げたい。
 それから、基盤研究等の成果はすぐには目に見えにくいものなので、新聞に掲載されたときや、成果として次のステップが出たときはどんどんと公表し、基礎研究の成果が社会につながっており、貢献しているということを、研究者が示す必要がある。それが基礎研究のもとになる科学研究費補助金のあり方を理解してもらう道であり、研究者の務めとして後輩のためにも大いにこの点を主張していくべきではないかと思っている。今回の若手研究の年齢制限の緩和に伴って、基盤研究等々の予算の増大に努力をするということで、この件については進めていきたい。
 続いて、資料4の継続研究課題の研究期間の短縮による新規応募の取り扱いについて意見を聞きたい。

【小林委員】
 条件のところで、「研究計画が完了した場合に限り」という表現になっているが、実際問題として、研究が完了するという状況はあまり想定できない。完了しているかどうかを審査員が判定しなければいけないことになっているが、それはかなり難しいことではないか。

【長澤企画室長補佐】
 このように記載しているのは、継続課題を途中で取りやめて、改めて応募し直すということを、安易に認めてはいけないのではないかということが前提にあるが、当初の研究計画が所期の目的を達成したかどうかについて、自己申告で調書を提出していただき、ピアレビューで評価するしかないと思っている。

【磯谷学術研究助成課長】
 詳細な制度設計はJSPSとも相談して、実際の審査の基準や運用をもう少し絞り込むことも考えられるので、引き続き検討していきたい。

【深見委員】
 この「別途評価し」ということについて、実際のタイムスケジュールはどのようなイメージを考えているのか。例えば辞退する時期や、次の申請との関係、評価の時期、評価結果が出た時の対応などのイメージを教えていただきたい。

【長澤企画室長補佐】
 新たな課題を応募する時点で元の課題を辞退していただく。完了したという調書は、新たに応募する課題の研究計画調書と併せて書面審査員に提示して、その書面審査員はその課題が完了したかどうかの適切性を先に判断をした上で、問題がなければ新たな課題の研究計画調書の審査を行うということを考えている。タイムラグがあると審査員には二度手間になるので、一度で行うほうが効率的だと思っている。

【深見委員】
 評価者は誰か。

【長澤企画室長補佐】
 通常の一段審査員が評価を行い、その上で二段審査員が一段審査員の評価結果をもとに、評価を行うということではどうかと思っている。

【家委員】
 制度設計の問題として、いろいろなケースが考えられる。従来の課題を廃止するときに、その廃止が適当でないという判断が下される場合、廃止は適当だが新たに応募した課題が採択されない場合、新たに応募した課題が採択される場合、それぞれの場合について、従来の課題の辞退届を提出したら、その時点でその継続課題は廃止されると理解してもよいか。

【長澤企画室長補佐】
 それだけのリスクを負うということだと思っている。

【家委員】
 それならわかるし、それほど多くの件数が出てくることもないと思う。

【平野部会長】
 当然、そうあるべきだと思っているので、ある程度の制約は要るのではないか。

【磯谷学術研究助成課長】
 これは、研究が早く完了した場合に、より上位の種目に研究を発展させて、すぐに応募できるように間口を少し広げるというような趣旨である。

【家委員】
 もう1つ想定されることは、基盤研究Cを持っている人が基盤研究Bまたは基盤研究Aに応募するというケースが考えられる。今は基盤研究Cと基盤研究A・Bでは別の一段審査が行われているが、その辺はどう考えればよいか。

【長澤企画室長補佐】
 応募した種目の一段審査員があわせて評価するということでよろしいのではないか。

【平野部会長】
 審査のプロセスに関してどう書くかは、JSPSとも打ち合わせて、次に報告をいただければと思う。

【岡本委員】
 研究者の心理にかかわる問題であるが、研究が完了したという言い方をすると、どうしていいかわからなくなるところがある。言い方は検討していただきたいが、現実問題として、基盤研究Cなどは年限があまり長くないので、基盤研究Bや基盤研究Aにもう少し大きく発展させたいという要求はいろいろなところにあると思う。今度からは、3年目に中間評価があるので、それが1つのよいチャンスではないかと思う。研究期間の短縮による新規応募を何らかの評価を加えて行いたいということであれば、それが客観的にもよいのではないかという気がするので、検討していただければと思う。

【平野部会長】
 1つのよいチャンスかもしれないが、それも含めてプロセスとして検討すればよい。

【磯谷学術研究助成課長】
 もう少し検討した上で、次回報告したい。

【平野部会長】
 制度、プロセスは検討を続けるとして、基本的にはこのような制度を生かすということでよいか。
 もう1件、特別研究促進費の年複数回応募の試行の見直しについて何か意見はあるか。ないようなので、この件については提示されているような形で、この中に含めていくということにしたいと思う。
 次いで、日本学術振興会より、資料6「科学研究費補助金における審査システムの国際性等の観点からの高度化について 検討結果報告(平成20年6月 日本学術振興会学術システム研究センター科学研究費ワーキンググループ)」に基づいて報告があり、その後意見交換があった。

【平野部会長】
 大変重要なポイントに触れながら、具体の案も出していただいているが、今の報告あるいは提言について、自由に意見をいただきたい。

【池尾委員】
 言い方に語弊があるかもしれないが、この報告は依頼するこちら側の都合を書いているという感じがある。これでやってもらえるなら確かに都合はよいが、海外の研究者の側に立ったときに、この制度に協力するメリットがどこにあって、どういう動機付けが働くのかがよくわからない。国内の場合であれば互酬的な面があるので、引き受けてもいいかということになるが、海外の研究者にとっては、時間が割かれ労力がかかることから、金銭的な報酬で全てを報いることが考えにくいのであれば、ボランティアをお願いされるような形になる。海外の研究者から見て、こういう制度に協力することで何らかの研究上のメリットがなければ、本当に優れた忙しい研究者に協力してもらうことは期待しづらいので、この制度に協力してくれるのは、時間があり、あまり活発に研究活動を行っていない方になってしまうという懸念がある。

【渡邉日本学術振興会研究事業部長】
 ワーキンググループにおいても、科研費に応募できない方に、そういったインセンティブが働かないのではないかという議論があった。一方で、日本学術振興会では、例えばグローバルCOEや世界トップレベル拠点など、多少科研費と性格は異なるが、審査を外国人に依頼している経験がある。この場合、必ずしも回答率が低いということはない。これが、研究課題全体の審査と理解されると、この程度の資料では審査できないということで、突き返されるおそれはあるが、報告書の中でも記載しているように、応募している方の業績が本当に世界的なのか、そのテーマが今の世界の動向からいってすぐれた方向を向いているのか、というように審査の趣旨を明確にすることによって、ある程度の協力は得られるのではないかとみている。
 また、謝金についても、あまり非常識でない範囲の金額を払っていく必要があるという議論も出ている。

【垣生委員】
 基本的には、海外の研究者の審査・評価への参画について、いまだに納得していないところがある。ただ、もし導入するとしても、3ページの3の導入の方向性の一番下に、「研究アイデアの海外への流出を防止するため云々」と書いてあるように、応募内容の全部ではなく、差しさわりのない研究計画の概要及び研究実績あるいは受賞歴だけを渡すということになっているが、これでは内容をきちんと評価できるとはとても思えない。
 今までの科研費は、他の国に比べて計画がきちんと書いてないということが問題になっており、これは将来に関してのことなので、きちんと書かないで、実績や研究の概要だけで済ませる問題ではないように思う。

【渡邉日本学術振興会研究事業部長】
 アイデアの流出という問題が一方にあるので、そこをどうするかということであるが、外国人に期待する視点として研究者の実績とそのテーマの妥当性という 2つを掲げているので、その視点で評価するということを限定、明確化することによって、応募内容の一部を使用し、その範囲で判断してもらいたいということを説明していくしかないのではないかと考えている。

【小林委員】
 従来の国内の審査システムはそのまま実施して、そこに海外からの意見を加えて審査の参考にするということが全体のスキームなので、海外のレフェリーだけで判断するわけではないということは補足したい。

【垣生委員】
 海外のレフェリーだけで判断するかどうかではなく、海外のレフェリーに渡す資料として、あまりに表面的過ぎるのではないかということである。

【家委員】
 海外の研究者に審査・評価へ参加してもらうことについては、労が多いわりにあまりメリットが見えない。今、国内の審査をそのまま実施した上で、海外からの意見を参考にすると言われたが、果たして参考になるような情報が得られるのだろうか。今、指摘があったように、差しさわりのないような部分だけを提示して、これで何か言ってくださいといっても、結局、差しさわりのない答えしか返ってこない。おそらく、これを進めるということは、時代の流れで海外ということがキーワードになっているためだと思うが、本当に審査の現場をよくするために、これが労力に見合うかどうかということは疑問である。
 それから、日本学術振興会で、これから公募要領等々について全部英文のバージョンを作成するとのことである。これは大変な労力だと思うが、パンフレットではなくルールなので、内容が統一されている必要がある。翻訳では絶対に同じ内容にならないので、正本をどうするのか。

【磯谷学術研究助成課長】
 十分検討してからでないとお答えできないが、我々の気持ちとしては、あくまで公募要領。どちらが正本かと言われれば日本語版で、その翻訳をサービスとして行うということである。

【家委員】
 問題が起こった場合に、正本を決めておかないとトラブルになる。

【三宅委員】
 領域によって、あるいは特別推進研究で、このメリットがあるかどうかという意見に対して、少し違う領域にいる海外の研究者による審査・評価が入ってこないと、日本の中の研究レベルが飛躍的に上がっていかないのではないかという領域もあると感じている。
 科研費の審査も少し経験しているが、限られた人数で審査するので人文系と情報科学などの様々な融合分野では、世界的な動きで一番活発なところであれば、どういう評価がなされるのかということがきちんと見えていない状態で、新しいものが出てきたときには、その評価が低くならざるを得ないということもある。領域によっては海外の評価を入れるということで、日本の中のある種の閉鎖性というものが打破される可能性は十分あるだろうと思う。
 ただ、3ページの※印にプロポーザルの盗用の話が記載されているが、これは日本の中でも十分起きることであって、申請書を出すかどうかということよりも、盗用されたと思った人が相談に行く場所が日本には全くないと感じている。そういうことに対し、国際的に協力できる組織や制度というものがあれば、全体としてメリットがあるのではないか。

【平野部会長】
 この件については、日本学術振興会が提案したのではなく、いろいろな背景から研究費部会として検討するように依頼しているので、その方向で皆さんの意見をきちんと伺いたいと思っている。国際的な審査について、非常に難しい問題が背景にあることは間違いない。

【甲斐委員】
 三宅先生から、これが必要なところもあるという意見を伺ったので、そういうところは仕方がないと思うが、科研費に海外の審査員を入れるということには大いに疑問を感じている。私も外国の審査に加わったことはあるが、そういう審査はギブアンドテイクで、海外のどこからでも応募できるような研究費であって、規模も大きい。もちろんお互いに守秘義務がかかってくることを理解した上で行っている。一方、科研費はまだそれほどの規模ではなく、申請資格を外国人に与えてもいない。規模が10倍ぐらいになって世界中に開くことができたら、全てに守秘義務をかけた上で、海外の審査員も大いに入れて、外国からも申請書が出せるようにすればよいと思うが、今はそういう段階ではなく、まだ日本の研究費制度だと思う。
 そうすると、先ほどから言われているように、海外で応募できない人に審査依頼をしたとき、何のメリットもない人がどのくらい引き受けてくれるかということを考えると、私は海外にアイデアが漏れるということを懸念しているので、概要だけを渡すという今回の案は1つの策かなと思う。ただ、それだけが送られて来たときに、これだけでは審査できないということは必ず言われるだろう。私も外国からの依頼では膨大な資料が来て読まざるを得なくなるので、1枚だけ来て、これで何が言えということになれば、表面的な答えをすると思う。先ほどCOEで実績があるという話であったが、外国の方の意見を読んでみると、一様に何となく褒めていて、突っ込んだ感じではない。しかもおそらく1課題分しか来ないので、その1つに関して意見を述べようというと、大体褒めることになり、そんなに参考になったという気はしない。受賞歴があって、すごくパブリケーションもある方ならいいのではないかという答えが予想されるが、特別推進研究の審査は、受賞歴がなくても、本当にこれから日本が競っていかなければいけない段階にあって、研究計画がしっかりしているということを真剣に議論している場であると思うので、そういうところに差しさわりのない、この人はすばらしいという意見が来たときに、本当にすごく参考になるのかというと疑問である。
 原則として時期尚早だと思う。しかも、日本はグローバルというと全部英語に変えなければいけない。投稿して、出版物を読んでもらうということは英語の世界だが、英語が母国語でない先進諸国が全部英語で行っているかというと、そんなことは全然なくて、母国語できちんと審査されている。日本の科研費制度において、全部英語で応募、審査をしなければいけないという考え方は、当たってないのではないか。今回いろいろと工夫されたのはワンステップだと思うが、時期的に十分気をつけて進めていただきたい。

【平野部会長】
 この件については、日本の審査・評価が閉鎖的ではないかとか、あるいは偏っているのではないかというような背景から出ているのはご存じだと思うが、今のご意見を見てみると、大変苦労して、外の方に無理にお願いをしなくてもできるという意見と、分野によっては、日本だけでは心配なので海外の方の意見も聞いてもらいたいという意見と、両面あるのではないか。今、日本学術振興会から提出していただいた報告は大変重要な点をついている。
 それを踏まえると、もう少し検討した上で、これを必須項目にするのではなく、逆に応募者から海外の意見を聞いてもらいたいということを付帯として提出させて、検討するという項目があってもよいのではないか。次のステップとしては時期尚早だという意見、あるいは心配が多いということであれば、そのあたりから進めていったらとも思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 前回、研究費部会でかなりの議論をいただいて、今日欠席の委員などからは進めてみてよいのではないかという意見もあったので、それを踏まえてJSPSから報告書を出していただいた。事務局としては、方向性として国際化を何らかの形で進めるということは、研究費部会の意見であると受け取っているので、日本学術振興会から出されたアイデアの方向で、何らかの前進をしていただければと思っている。
 もう少し相談して、次回、具体的にどのように進めるかについて報告できるようにしたい。

【徳永研究振興局長】
 こういった問題が議論される背景には、我が国全体として研究システム全体を、ある程度国際的な状況の中においていかなければいけないという思いがある。その中には、かなり性急な考え方とか、あるいは極めて悲壮的な見方とか、あまり学術のことに詳しくない方が、極めて現象的に危機感を感じているというような様々なこともあるが、共通しているのは、我が国が様々な面でオープンな仕組みをとっていないことが、全体として停滞につながっているのではないかという懸念、もしくは焦燥感といったものがある。
 そういう中で、純粋な学術研究に対する公的なサポートをこれからも堅持し、さらに拡充していくためには、学術界のみならず、広範な国民的な理解と支持を得る必要があるわけで、そのためには、きちんとした説明をするということが何よりも大切である。現実に科学研究費補助金でどういう審査が行われているのか、その結果、科学研究費補助金で具体的にどういう成果が出ているのか、あるいは海外の同種の研究配分機関においていかなる審査システムがとられているのか、また日本学術振興会を中心とする科学研究費補助金の審査体制を含めた制度自体は国際的に通用するのかということについて、十分我々も説明をしているが、一方で、ピアレビューという考え方について、国会等でも疑問が呈されることが多い。
 大学の先生方は、世の中の多くの事柄について、有識者として中立的な立場に立って判断をしている。例えば文部科学省の大学設置認可、教科書の検定、あるいは建築確認など、様々な行政行為について、大学の研究者は中立公正な第三者として機能しているが、こと、学術研究の世界になると、大学の研究者自体が当事者であるということで、そうではない外の人から見ると、自分たちの間で決めているのかということになる。ピアレビューシステム自体に対して、関係者だけが集まって、関係者が決めている世界ではないかというような素朴な疑問も出されている。
 そういった事柄に対して、十分様々な説明をしているが、一方で、それならば、もう少し幅広くピアレビューシステムを構築して、国際的な通用性、信頼性の上に立って、審査システムを展開すべきではないかという意見もいろいろなところで主張されている。
 実際の審査や具体的な学術研究の支援を円滑に行うことがまず必要であるが、そういうことを慎重に検討する際には、拒絶的な反応を示すよりは、まずはきちんと取り組んだ上で、具体的な問題点、あるいは実効があるのかないのかといったことを明らかにしていくことが必要だと思っている。
 そういう意味で、今後とも科学研究費補助金が我が国の中核的なリサーチグラントであり続けるためにも、審査にそういった国際的な要素を導入していくということは、不可欠なことだと思っている。

【平野部会長】
 まず1点、日本にいる外国人研究者等が公募する際の便宜を図るために、平成21年度から公募要領及び研究計画調書等の英文化を図ることについてはよろしいか。それからもう1点、国際的な観点からの審査のシステムについては、国際性を持った、より高い国際的視野からの評価が必要な分野、特に特別推進研究において国際性を図るように検討する、というとあいまいに終わってしまうので、今日は、応募者の意見を勘案して、国際的な審査のあり方を図るという段階でいかがだろうか。効果が出る分野もあることは間違いないということなので、その観点をきっかけとして、国際性を図る具体の例として提案をしていきたいと思うがよろしいか。
 日本学術振興会から出された報告をもとに、検討できるところから検討して、早急に議論を詰めていきたい。ただ、この部会としては国際性を図っていくというスタンスをとっていきたいと考えているが、この点についてはよろしいか。今日は結論まではいかないが、今日の報告の中ではいろいろな背景まで検討してもらっているので、これを参考として、次のステップアップに進めたいと思っている。

 次いで、事務局より、資料2「研究費部会『審議のまとめ(その2)』素案」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【井上(孝)委員】
 1の科研費等の学術研究助成の充実の方向性について、研究活動の裾野の拡大についてはかねてから学術推進部会などでも多様な学術研究の推進ということで議論されている。先ほど中西委員も言われたように、学術研究の多様性を確保するために裾野を広げるということは、当然自由な発想に基づく研究の推進という学術研究における基礎研究が非常に重要な観点なので、その充実を図っていただきたいが、国立大学の運営費交付金や、私学の研究費助成が毎年1パーセントずつ減っていて、今は、裾野を広げるべき研究費が非常に少なくなっているという実態がある。また、各大学は、そのために科研費の中でも、特に基盤研究B、C の応募率を上げようということで、ほとんどの教員が応募しても、今年度の採択状況を見ると、地方大学などでは採択率が12パーセントぐらいに落ちていて、非常に厳しい状況になっている。そういう意味で、ここに記載されているように、特に基盤研究Cなどの予算の拡充をぜひお願いしたい。
 それからもう1つ、2ページの大学等における学術研究の振興で、確かに教育振興基本計画の中にも科研費の間接費30パーセント措置ということが書いてあるが、総合科学技術会議から間接経費については30パーセントという提言があって、それに基づいて今まで間接経費の拡充を進めてきている。総合科学技術会議からの提言についても触れておいたほうが迫力が出るのではないかと思うので、その点を補強しておいていただきたい。

【深見委員】
 先ほどの若手研究の年齢制限の緩和の議論とも関係するが、2ページの一番初めに基盤研究B、Cなどの研究種目における予算の拡充を図るというところがある。もちろんこれはすごくよいことで、ぜひ実施してほしいと強く思っているが、実際に先ほどの若手研究へ予算を回すということになると、表面的であれ基盤研究B、Cなどの予算が削られたように見えることになると思う。そこで、例えばもちろん若手研究にその分の予算を回したからという説明もできるが、基盤研究B、Cの予算が削られたという印象が出てくると思うので、そういう批判をされる可能性があるということも考えておかなくてはいけない。
 実際、採択率等で説明されることが多いが、垣生先生が言われた40代、50代が非常に厳しいという現状や、それから基盤研究Bなどで、実質的な採択率は変わらないとしても、研究の期間を長くすることによって、実質にもらえる単年度当りの金額が減っているという現状もある。そういう点からも、基盤研究B、 Cが、一番望まれているところであるという意識をもう一度強く出してほしい。
 それからもう1つ、iPS関係がでてきて、今年度、研究資金がそちらに流れたという言い方をされる研究者がすごく多い。2ページの真ん中より上ぐらいに、研究資金をシフトするようなことがあってはならないということが書いてあるが、予算の純粋が変わらない中で、革新的技術の重点推進と、そのために予算をシフトしてはならないというところに矛盾が生じる。両方は満たされないだろうというジレンマを、どのように説明し得るのかを教えていただきたい。

【平野部会長】
 基盤研究B、Cの充実というのは、共通の思いではないかと思っているので、若手研究にその予算がいくとしても、基盤研究B、Cの総額が実質的に減ることがないように言い続け、努めていかなければいけない。この行は大変重要である。
 それから、今の予算体系がゼロサムに陥っていることが一番つらいところであるが、私も、革新的技術は学術の基盤・基礎から生まれていて、科研費で言えば、基盤研究等々から出ていると、様々な講演で訴えている。研究者が、基礎研究から革新的技術が出ているということを見えるような形で訴え続けなければいけなと思うので、ここは残して強調するということでよろしいか。

【中西委員】
 非常にいい案と思うが、2カ所気がついたところがある。1つは4ページのe-Radの取り組みというところで、後で引き続き議論すると記載してあるのでこれからの議論だと思うが、これは連携施策群のような府省庁共通研究開発管理システムのことで、ツールである。そのため、ツールとしてのシステムをつくったということで安心しないようにお願いしたい。実際はコンテンツが非常に大切で、原子力や宇宙などの大型プロジェクトも含め、すべての研究を入れ込んでいけるようなシステムをつくってほしい。
 もう1つは、6ページの2審査結果の検証の在り方の現状のところで、より適切な審査体制の確立を目的として審査結果を検証し、その結果を審査委員候補者案に反映するとある。これは、例えばほとんどの人がAの評点をつけたときに、BやCの評点をつけた人をどうするかということにも理解される。他の人とあまりに違う結果を出した審査員を、この書きぶりだと将来排除していくような方向になるかもしれないので注意してほしい。コメントを見ればわかることだが、いいかげんな評点をつけた人は別として、非常にまじめに考えて、ほかの人はAだとしても、私はBをつけるという人は、きちんと残しておくべきだと思う。
 そうでないと、みんながAだと予想される場合には私もAにしようということになり、そうしなければ審査委員になれなくなると思うかもしれない。それでは、審査そのものがおかしくなってしまうので、非常に慎重に対処するべきだと思う。

【袖山企画室長】
 e-Radについては本年当初から運用を開始するということで、システムができた。そのシステムに対して、様々な競争的資金制度が順次データを入力する、あるいはシステムを利用した申請・審査等を行うことにより、徐々に充実が図られてきている。これについては、それぞれの省庁の申請、審査の状況に合わせて逐次充実が図られてくるので、ある程度蓄積した段階で、運用状況も見ながら、さらに議論していただきたい。
 一方で科研費については、その制度自体が非常に大きいため、日本学術振興会で別途持っているシステムとの兼ね合いにより、十分な移行期間が図られていないこともあって、まだe-Redへの完全な移行が済んでいない状況である。これについても、できるだけ早期に移行する方向で順次作業を進めており、そういった動向も見ながら議論していただきたいと考えている。

【平野部会長】
 6ページ目のフィードバックに関しては、特に不採択になった方に対して、次のために参考となる指摘事項を、審査員にあまり負担をかけない形で提示できたらよいということがこの背景だと思っているので、4、4、1という評点における1の理由をたどるわけではないと理解している。
 ただ、審査員の方々が一つ一つ何かコメントを書くということは大変であるが、一言ぐらいでも的確な指摘はあると思う。それを、簡単に集計できるようにシステム化をしておけば、審査員や事務局に負担をかけずにある程度文章の整理がしやすいのではないか。そういうことがこの背景だと思う。

【中西委員】
 ここに審査委員候補者案の作成に反映すると書いてあったので、少し気になった。

【平野部会長】
 審査委員候補者案は、日本学術振興会で作成しているが、その際、慎重に判断して、どうしても不適切という方は排除していると理解しているが、それでよいか。

【渡邉日本学術振興会研究事業部長】
 日本学術振興会では毎年4,000人ぐらいの審査員がいるが、その方たちが審査した案件をすべてチェックしている。主な観点としては、全て普通であるという審査をして、良し悪しをあまり審査しないとか、あるいはコメントをほとんど書いてもらえないとか、そういう点を見ている。また、他の審査員の方と異なる場合は1件1件確認し、明らかにおかしい、あるいは利害関係や利益相反の関係で問題がある場合は取り上げるが、意見が異なるから良くないということは全くない。

【平野部会長】
 きちんとデータを見てやってもらっているということはありがたいことである。経験で言ってはいけないが、当然、審査に関して、同じ項目であっても、すばらしいという意見と、いやとんでもないという意見があるのは、仕方がないことだと思う。特に、例えば1人の方が非常に悪い点をつけたとしたら、その理由のほうが大事である。あるいはある人は平均的な点を付けたが、ある方は非常にすばらしいという評価をしたということもまた大切である。そのあたりの解析をしてもらっていると思っている。

【垣生委員】
 2ページの研究分野の特性に応じた助成の在り方のところで、今後、引き続き審議を行うことにしていると最後に書かれているが、これは、例えば上に書いてある生物系、人文・社会科学系の別添2のところにあるように、費用をたくさん使う分野だとか、そうではない分野だとかという観点で議論していくという理解でよいか。

【平野部会長】
 これまではそのような議論があった。それから、人文系、社会系を含めた支援の在り方の議論がこの背景にあると思っている。

【垣生委員】
 これは例えば金額や期間なども入るのか。

【平野部会長】
 これまでの議論の中では、文系における金額までは言及していないが、相対的な費用の在り方はここでも意見があるので、当然、それは入ってくると思う。

【磯谷学術研究助成課長】
 人文社会系については、別途また委員会が動いているので、そこと連絡をしながら進めるという趣旨もあるし、特に金額や期間について考えるということではなく、検討を続けたいという程度のものである。

【垣生委員】
 採択率の問題にもかかわるので、金額について伺ったが、採択率が高い分野と、そうではない分野に分かれるということも、これから議論していくのかと思い、質問した。

【平野部会長】
 採択率も議論に関係する。
 基本的にはこの素案についてさらに充実させ、必要なところや今日議論をいただいたところを加えて、まとめる方向で整理していきたい。

(2)その他

 家委員より、学術団体のあり方に関する調査研究について提案があり、研究費部会として、科学研究費補助金において調査研究に取り組むことを科学研究費補助金審査部会に提案することが、了承された。
 次いで、事務局から、次回の研究費部会は7月16日(水曜日)13時30分から開催予定である旨連絡があった。

(以上)

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