第4期研究費部会(第14回) 議事録

1.日時

平成20年5月22日(木曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

 平野部会長、飯野委員、井上(孝)委員、上野委員、鈴木委員、中西委員、深見委員、三宅委員、伊賀委員、石委員、井上(明)委員、井上(一)委員、甲斐委員、小林委員、小原委員、池尾委員、岡本委員

文部科学省

 藤木大臣官房審議官(研究振興局担当)、磯谷学術研究助成課長ほか関係官

オブザーバー

(発表者)
 名古屋工業大学 松井学長、成田学術振興課長、東京理科大学 竹内学長、二瓶学長補佐

4.議事録

(1)有識者からのヒアリング

1.名古屋工業大学からのヒアリング

 名古屋工業大学の松井学長、成田課長より、資料2「名古屋工業大学における研究費の活用について」に基づいて発表があり、その後意見交換があった。

【石委員】
 名古屋工業大学の一つの大きな特徴は、プロジェクト研究所だと思う。最初に話のあった単年度2,000万円、3年で6,000万円という研究費の中身を伺いたい。2,000万円を仮に人件費に充てると、せいぜい2人ぐらいしか雇えないと思うので、おそらくこれ以外にもいろいろな附属的な資金があるのだろうと思う。率直に言って、理科系の大学であれば、2,000万円だけでは、普通の寄附行為などと比べてそう多い額ではない。2,000万円はおそらく最低限であって、もっと多くの額を投入しているのだろうと思うので、実際的にはどういうふうに運用しているのか。人件費以外に別途設備協賛金みたいなものがあるのかどうかをお尋ねしたい。
 それから、学長裁量経費で1億2,000万円ほど使って、いろいろなことを行っている。これは今、どこの大学でも同じようなことを行っているが、この配分の仕方は、何か委員会でも作って決定しているのか。それとも独断と偏見で決定しているのか。

【松井学長】
 まず前者だが、資料の中にミニマムと記載しているのは、下限という意味である。いろいろな民間企業の方と話をしたり、我々が独自に調べた結果では、民間企業が人件費込みで研究プロジェクトを立ち上げる場合には、その企業の実情に応じて2,000万円から4,000万円ぐらいの資金を投じている。我々も、 4,000万円が必要だと思うことはあるが、民間企業の例を参考に、2,000万円を下限として制度を設計している。
 大学の場合、事業主負担を含めて大体680万円程でポスドクが雇用できる。そうであれば、ポスドクを1人雇用して、残りの1,300万円程が研究経費として考えられる。日本の民間企業の特徴として、現金の寄付を受けることは非常に難しいが、設備や資料、機材などであれば、比較的協力が得やすい。そのため、直截の経費として、現金で2,000万円程あれば、寄附行為としては規模が小さいかもしれないが、実質的な研究はきちんとできる。
 もう一つ、学長裁量経費は基本的に私が勝手に決めればいいことになっている。ただ、学長裁量経費に設けている3つのカテゴリーのうち、学外から提案を集めて、大学としてどういう研究に重点を置いて推進していくかという課題に関しては、大学の研究活動全体の舵取りをしている研究企画委員会に付託している。本当は学長がリーダーシップを発揮して我が大学はこの研究を第一線にするということを言えばいいが、現実的に難しいので学内の意見を研究企画委員会で集約させている。

【伊賀委員】
 工業大学として非常に立派な政策を実行していると思う。基盤経費として研究経費を教員個人に配分しているが、これは純粋に研究室に行く額なのか。それとも、教育用や各専攻、学科などで必要なものを含んでいるのか。その仕分けはどのようにしているのか。

【松井学長】
 名古屋工業大学では法人化をしたときに講座制をやめて、教員を領域という一元化した組織に置いているため、教授、准教授、助教はそれぞれ独立している。大学の財務部門からは作業が大幅に増えるため強烈な反対があったが、研究費として基盤経費45万円に、教育や研究への加担に応じて配分する金額を加えた額を、個人毎に配分している。その個人が集積して学科や専攻ができているので、どうしても学科、専攻として必要な共通経費は、それぞれの個人から集めることにしている。極端なことを言えば、共通経費が仮に45万円であるとすると、基盤経費しか配分されない人は研究費が全くなくなることになり、相当厳しい状況である。

【井上(明)委員】
 2ページ目で2005年の自己収入の外部資金の中に100周年の募金活動が含まれているが、そのときに、運営費交付金、授業料、競争的資金のほかに第4のカテゴリーとして、特別な同窓会的な基金のようなものを充実させようという動きはあったのか。

【松井学長】
 100周年記念募金活動は、平成16、17、18年と3年間にわたって行った。目標額の15億円が集まり、記念式典や学内の校友会館の整備など、幾つかの必要経費を差し引いて残った資金に従来から学内に積み上げてきた資金を合わせて、平成20年から大学基金として動かしている。
 他の工業系の大学も同じだと思うが、この基金は、大学院の学生への生活補助や学生自身が発案をして行う研究に関しての補助など学生への援助、教員自身の意欲で行う挑戦的な研究への補助、さらに特許に関する活動をより高めていくための経費などに充当していくことになる。
 この基金の運用を運用益だけで行うのか、減った分を補う形でいくのかについては専門家の指導を得ながら検討しているところだが、結論から言うと、今後は周年記念でお金を集めることが難しい社会的な環境があるので、恒常的に基金の経費を積み上げていくシステムを構築しようと、その出発点として10億円という金額から少しずつ始めている。

【井上(明)委員】
 もう1点、7ページ目に大型研究設備設置のためのスペースの確保が困難との記載があり、極めて厳しい状況であるとのことだが、マスタープランなど全学的な動きで、大型設備等を整備しようというような何か新しい独特なシステムを考えているか。また、現在、大型設備がないことによる問題が発生しているのか教えていただきたい。

【松井学長】
 設備マスタープランに基づいて整備し、学内のスペースを融通するような形での対応は進んでいるが、ここで言っている大型設備の問題は、各種の競争的資金を獲得した場合に、その資金で購入する装置を置く場所を前もって予定していないことである。もちろんオープンスペースや様々な共有のスペースをつくる努力はしているが、活動が活発になればなるほど努力がとても間に合わなくなり、結局、大学院の学生の一室などにしわ寄せが来てしまう。例えば、どこかのスペースをリースのような形でそのプロジェクトの期間だけ借りるようなシステムもないわけではないが、いつもそのシステムが実情に合うような状態で連動しているかというと、なかなかうまくはいかないので、ここで記載させていただいた。

2.東京理科大学からのヒアリング

 東京理科大学の竹内学長、二瓶学長補佐より、資料3「東京理科大学における研究費活用について」に基づいて発表があり、その後意見交換があった。

【伊賀委員】
 国立大学法人の場合は、人件費などに相当の抑制がかかっていて、教職員を減らすことが要請されている。私立大学の場合も、やはり人件費は経費の大きな要素になると思うが、どのような施策で全体の予算と教職員の人件費のバランスをとっているのか聞かせていただきたい。

【竹内学長】
 人件費の問題は私学でも大きな問題であり、現時点で教職員を減らそうという大きな動きはないが、少なくとも増やさないということが基本的な方針である。事務の効率化等についても、現在、いろいろと検討している。

【二瓶学長補佐】
 補足すると、国立大学には運営費交付金の漸減に関する基準があるが、同様に私立大学の助成金も1パーセント減らすという原則がある。いずれ東京理科大学も私学助成の漸減の原則の適用を受けるようになる可能性がある

【小原委員】
 国立大学も法人化して民間に移ったが、予算の使い方について、例えば建物に関しては予算要求書がなかなか通らないとか、目的積立金のようなことは不可能ではないが年度を越えて行うことが難しいということがある。一方、東京理科大学に行くと、立派な建物がたくさん建っていて、いろいろな工夫をしていると想像できるが、国立大学法人と比べて工夫しやすい面が多々あると思うので、そういうところを国立大学も勉強していけばよいと思う。特に二瓶先生が最後に言われた建物に関しては、理系の大学はどこも必要としていて、東京理科大学の場合は、年次計画を立てて長期的に計画していると思うが、その経費は学生からの授業料収入で賄っているのか。それとも助成金が重要であるということか。

【竹内学長】
 建物の建設経費のほとんどは学内の予算である。東京理科大学は一昨年が125周年という節目で、それを記念して老朽化した施設を学内予算で建てかえるという計画が現在も継続しているが、その経費は学生の授業料で賄っているという状況である。

【石委員】
 人材育成ファクターというものに非常に興味を覚えたが、ここでの人材育成というのはどういうことか、その内容を教えていただきたい。おそらく研究費を使った人材育成というときには、若手の研究員に研究費を渡すとか、あるいは大学院の学生に何か支援するという発想があるが、ここで言われているのは、教育全体を見渡した形での補助金というようなもっと広い意味合いがあるのではないかと思っている。それは、研究費部会での審議の範囲を超えたもっと大きな議論という感じがするが、そういう理解でよいか。
 もう1つ、東京理科大学の場合は、個人の先生方にどれぐらい研究費を配分しているのか、先ほど名古屋工業大学では40万円ということを伺ったが、同じような数字に興味があるので聞きたい。

【竹内学長】
 人材育成の件に関して、特に理工系の人材育成には非常にお金がかかる。お金がなければよい人材は育成できないので、人材育成のための補助金にその分の増額要求をしている。これは理工系の人材育成に限った問題だと思っている。
 それから、個人研究費の問題に関しては、東京理科大学でも各先生方に50万円程度の個人研究費を配分している。ただ、研究費と教育費を明確に分けることができないので、1人の教員あるいは1研究室に配分される金額には教育費も含まれている。その額は国立大学よりも多いかもしれないが、教育負担が非常に大きい。例えば実験系であれば、1研究室に卒論生、大学院生を合わせて大体20名程度の学生がいて、教育研究費としてかなりの金額が必要になるという状況である。

【二瓶学長補佐】
 スライド12にある教員1人当りの金額は、これだけを見るとかなり大きな数字のように受け取られると思うが、これは外部資金も含めた総研究費を教員当たりあるいは学生当たりに割り振ったもので、名古屋工業大学の学長が話された積算単価で考えるとほとんど同じ金額になると感じている。
 例えば、教員1人当たり577万円という数字があるが、その前の資料にある割合を見ると基盤的に配分される経費はその4分の1である。その他は競争的資金なので、獲得額の多い先生と少ない先生がいて、全体を平均した金額がこういう数字になるということである。さらに、東京理科大学の場合、研究を必須とする教育課程である卒業論文生、修士1、2年生の人数が非常に多く、学生1人当たりの数字はその人数で割っている。また、その経費は教育経費ではなく研究経費で賄っているので、国からの助成も研究費として受け、できれば間接経費を私立大学に手厚く配分していただいて、その経費で賄いたいと考えている。
 間接経費は建物や設備にも使え、使い勝手のいいお金だと認識しているが、まだまだ金額が少ないことが問題である。

【岡本委員】
 国立大学も法人化されて、これから寄附金、特に基金に当たる部分が非常に大事になってくると思う。これはアメリカの大学と比べると、日本はかなり遅れている。東京理科大学でも基金の運用益などいろいろな収入があると思うが、それを研究や研究者の育成に使うというような明確なポリシーみたいなものはあるのか。

【竹内学長】
 基金に関しては、本学は非常にわずかなものであり、同じ私学でも慶応大学や早稲田大学とはけたが違う。そのため、基金から得られる収入をどう扱うかということについては、基本的には教育研究のために使うということに間違いないが、大きな議論の対象になったことはない。

【井上(明)委員】
 間接経費の使途について、資料の17ページだと研究環境の改善に焦点を当てているが、研究教育の方にはあまり視点を置かないのか。

【竹内学長】
 研究環境整備という中にはもちろん教育のための研究環境ということも含まれている。

【井上(明)委員】
 人材育成に関して、理工系の学生を多く輩出しているとのことだが、大学院の博士課程への進学率、あるいはその就職状況等について教えていただきたい。

【竹内学長】
 修士課程の進学率は50パーセント程度で私学では非常に高いと思うが、残念ながら博士課程への進学は総数が300程度で国立大学に比べて非常に少ない。これは、博士課程を卒業してからの就職に関する不安が非常に強いことや、博士課程へ行く場合は、国立大学へ移ってしまうということがある。国立大学との授業料の差を無視できないのでどのようにしたら博士課程を増やしていけるのかは大きな課題であり、よい知恵があれば拝借したい。

【二瓶学長補佐】
 学生を預かっていると、国立大学の大学院を受けたいという相談を受ける。理由を尋ねると、やりたいことがあるから国立大学の大学院を受けるという本筋の話もあるが、やはり授業料が2倍違うからという経済的負担の問題が大きい。こればかりは、指導する上ではどうしようもない。さらに、正直に言うと、学位を取得した後のことを考えた場合に、研究環境が整っている大学で学位を取ることの方がその先も優位になるということもある。
 ただ、これがすべてということではなく、東京理科大学でも、博士課程の学生が徐々に増えている。

【平野部会長】
 2つの大学から大変貴重なご意見をいただいたので、この部会において参考にし、検討させていただきたい。

(2)「審議のまとめ(その2)」に向けた検討について

 事務局から資料4「研究費部会『審議のまとめ(その2)』骨子(案)」、資料5「若手研究(A・B)における年齢制限の緩和について(案)」、資料6「基盤研究等における継続研究課題の研究期間の短縮による新規応募の取り扱いについて(案)」及び資料7「『特別研究促進費(年複数回応募の試行)』の見直しについて(案)」に基づいて説明の後、意見交換があった。

【鈴木委員】
 資料4に学術研究助成の充実の方向性として4人の先生方の意見があるが、そこに少しコメントしたい。まず竹内先生の「多様性のある公正な評価システムにより、一部の大学等の寡占化を防止することが必要」ということがあるが、では多様性のある公正な評価を行ったら一部の大学の寡占化を防げるのかというと、それは自明ではない。この多様性のある公正な評価というものをどんなに行っても、ある結果に偏りが出れば必ずクレームが来るものなので、むしろ、その前に審査の結果の開示を充実することが大事である。これを今よりももっと充実させて、大きな研究費に関しては反論の余地も残しておく。個々の課題ごとに結果を公にしていけば、むしろ公正な評価につながるフィードバックがかかると思うので、ここに記載されているようなことをするのもよいが、同時に審査結果の開示の充実化ということを入れるべきである。
 もう1点、小林先生の件だが、アメリカは「デュアル・サポートシステム」の方向に動いているのかというと、表面では向いているが本当の真意かどうかはわからない。小林先生の資料を見ると1995年ぐらいからこのようなことが言われているが、アメリカの場合は政府の予算の方針を議員が自由に決めている。例えば今年であれば、政府が世界的な研究に対して1億ドルを出して世界的規模で行うとしているが、議会はこれを0としている。その一方で、国の大学の研究に関しては、政府の額よりも7,500万ドル以上も多く支出している。議員が自分たちの州の利益を優先する結果である。
 1995年から、アメリカではイノベーションが盛んになり、イノベーションに対する様々な資金が出たが、議員が自分の州のためにその資金を持ってきて、大学にラボをつくるなど、州の利益のためにいろいろなことを行っていた可能性もある。今のアメリカの現象が、本当にこういう方向に向かおうとしているのかは、きちんと評価しないと一概には信じられないという気がする。

【池尾委員】
 資料5の年齢制限の緩和の話だが、現在、分野ごとの特性を踏まえた支援のあり方というテーマで議論をしているので、その関係から社会科学の分野について言うと、研究者の養成の道筋が多様化してきている。要するに、大学を卒業して、すぐに大学院に入って、そのまま研究者になるというケースが、圧倒的に多いという状況ではなく、社会経験を何年か積んでから大学院に戻るとか、あるいは実務界で一定の業績を上げた後に大学の教師に転じるというようなケースが増えてきている、社会科学の場合は、社会経験という要素が大きいので、必ずしも大学、大学院とストレートに出て研究者になることが望ましいとは言えない。年齢制限という考え方にあまり妥当性がない状況であるので、スタートアップのような形の考え方のほうが分野特性という意味では適切である。

【平野部会長】
 この「若手」の範囲というのはいつも悩ましい問題で、どこの研究機関でも似たような議論があると思う。

【小林委員】
 資料5では一般的に条件緩和という形で記載してあり、そのメリットだけが書かれているが、現実にはかなりいろいろな影響が出るのではないかと思う。例えば、現在でも30代前半は相対的に採択されにくい傾向にあるので、もし年齢制限の緩和をした場合には、その傾向が一段と強くなるのではないかと考えられる。データを詳細に検討して、慎重に制度設計する必要がある。

【井上(孝)委員】
 若手研究者の育成は、現在、各大学や研究機関で重要な課題として取り組んでいて、各大学の努力に対して科学技術振興調整費が支出されている。分野の特性もさることながら、従来から科研費では、若手だけではなく、特に38歳から40歳ぐらいの研究者の採択率が非常に低くなっているという問題があり、そこに若手研究Sを設けた経緯があると思う。
 今、国立大学法人等では、運営交付金の1パーセント削減や、人件費の5年で5パーセント削減などの影響があり、若手研究者が研究に向けた安定的な職場を確保する年齢が上がってきている。若手研究の全体の配分金額を拡充することによって、30代の前半の研究者についても、従来の採択枠より拡充しつつ、38 歳から40歳の研究者についても、若手研究の枠で採択できるようにし、科研費において若手研究者の研究推進に向けた支援策を講ずるほうが、科研費全体の年齢別採択率のバランスがとれると思うので、資料5にある年齢制限の緩和については、基本的にこの方向で議論していけばよいのではないかと思う。

【岡本委員】
 様々な意見があって、実際、その世代の人たちに競争力があるのかなど、いろいろな問題が出てくると思う。具体的な対応として、例えば、若手Aと若手Bについて一緒に年齢制限の緩和をするのではなく、若手Aだけを緩和してメリハリをつけるということも考えられる。そうすれば、ある段階で基盤のほうに移ってもいいし、若手Aで頑張るということもできる。

【中西委員】
 いろいろな大学の話を伺うと、大体教員1人当たりの研究費は四、五十万円で、教育費が少し加わっても、1人100万円ぐらいで何とかしているのが現状だと思う。
 そうすると、基盤Cの金額が100万円程度だと思うので、それぐらいの金額があれば、特に40歳までになるのかもしれないが、若い人は新しいことにどんどんチャレンジできると思う。基盤S、Aとか言わずに100万円ぐらいの単位で応募した人にはなるべくたくさん、半分以上採択するとか、8割採択するとか、採択率を上げるようなことを考えていただきたい。

【平野部会長】
 この若手の問題については、今の意見を踏まえて今後も議論をしていければと思う。当然、若手の充実を目指すとしても、基盤的経費から単に移すということがないように、基盤的経費はきちんと確保しながら、その上で若手を充実できるよう努めていかなければいけない。
 それから、革新的技術戦略でいろいろな提案が出ているが、今の日本の財政からすると、どうしても全体が落ちた上で、融通するということになる。科学技術振興とは言いながら、予算がどこかに動いてしまって、日本の今後の戦略的な技術の基盤になるような、例えば科学研究費が減るということが絶対にないようにしていかなければいけない。根が弱くなるばかりで日本の将来がさらに朽ちていかないように、声を上げて努めていかなければいけないと、部会長として思っているし、努力をしたいと思う。

【三宅委員】
 新しいテーマが出てきて、今まで5年で持っていたものを、少しまとめて2年で別の形で申請し直したいというときに、大きい資金がないとできない研究であるが、5年間動かせないということがネックになっているケースはあるような気がする。
 それから、複数回の応募をどう使うのがよいのか。今は年度途中で新しく申請する資格ができた人を救うということになっているが、文科省や学振で年度途中に新しい提案を受けつけるということもある。今回の特殊事情だと思うが、今年は新学術領域研究で領域提案型や課題提案型があり、その申請時期の前に、他の科研費の種目の結果が出ていたので、基盤AやSを応募して採択されなかった方が、他の研究者から一緒に応募しようと声をかけられても重複応募になってしまい、研究計画にも参加できないという状況になっていた。継続して新しいことをやろうとするときには、その研究をしてきた人を加えたいと思うし、研究を推進していくために必要な柔軟性が何かの形で保障できるチャンスがあるとよい。

(3)その他

 事務局から、次回の研究費部会は6月18日(水曜日)13時30分から開催予定である旨連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課