第4期研究費部会(第13回) 議事録

1.日時

平成20年4月30日(水曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

 平野部会長、飯野委員、鈴木委員、中西委員、三宅委員、家委員、伊賀委員、石委員、井上(一)委員、甲斐委員、小林委員、小原委員、垣生委員、岡本委員

文部科学省

 藤木大臣官房審議官(研究振興局担当)、伊藤振興企画課長、磯谷学術研究助成課長ほか関係官

オブザーバー

(発表者)
 一橋大学 西村副学長
 関西大学 越智副学長、藤田教授
 筑波大学 小林教授

4.議事録

(1)有識者からのヒアリング

1.一橋大学からのヒアリング

 一橋大学の西村副学長より、資料2「一橋大学における研究費活用」に基づいて発表があり、その後意見交換があった。

【小原委員】
 人件費の抑制は確かに大事だが、抑制しすぎると学問が衰退すると思う。前年度比2.6パーセント減と書いてあるが、一般的には5年間で5パーセント削減と言われている。一橋大学においては、それ以上に削減しているということか。
 また、金額にばらつきはあるが、間接経費もある程度獲得できているようなので、若い人のためにもポストは減らさないほうがいいと思う。その辺の戦略はいかがか。

【西村理事・副学長】
 5年間で19億5,000万円ほど足らなくなるという見通しであったため、約19ポストを各部局に配分して削減するなど努力をしてきた。平成23年度まで、あるいはそれ以降も1パーセントの効率化係数が続いていくのであれば、教員の人件費抑制で対応せざるを得ない。
 しかし、長い目で見て、決してそれでいいということではなく、そういう状況の中でも若手の教員をどう採用するかということは大問題である。大学としてではなく個人の見解であるが、退職教員の再雇用しかないと考えている。つまり、実質的に給与の大幅削減を伴う定年延長である退職教員の再雇用と何らかの形でリンクさせて、若手教員を採用していくという可能性があると思っている。

2.関西大学からのヒアリング

 関西大学の越智副学長、藤田教授より、資料3「関西大学における研究費の活用状況」に基づいて発表があり、その後意見交換があった。

【石委員】
 有機的に様々な試みをしていて、研究費の獲得に熱意を持っていることがよくわかる。
 いくつか確認の意味で質問をしたい。学内の研究費を獲得した場合に、外部資金に応募することを義務づけているが、それではあまりインセンティブが働かないのではないか。逆に、外部資金に応募している場合に、学内の研究費獲得に優先度を与えるとしたほうがよいのではないか。
 また、研究推進委員会では、学内の研究費の配分や倫理規定の制定等、非常に熱心に有機的に運営されていると思うが、大学においては出てきた結果をどう評価するかが一番問題になるのではないかと思う。出てきた結果を評価する手段を何か持っているか。
 さらに、研究費関係の経費は、全て学内運営経費から支出しているのか、研究基盤を支えるような何か特別な基金はあるのかお聞きしたい。

【越智副学長】
 学内の研究費と外部資金との関係について、学内の研究費は、幅広くシーズを育てるという観点で競争的に使うことを考えている。従って、外部資金をすぐには獲得できない萌芽的な研究に対して、学内の研究費を額は小額であるが、活用して育てていき、それをベースにして外部資金に応募、獲得していくことによって、徐々に大きく育てていくという流れであり、学内の競争的な研究費はその出発点という位置づけである。
 それから2点目の評価の重要性については、そのとおりだと思う。学内の研究費を公募したときに、レベルの高い研究を集められるかどうかは、いかに厳正な評価をできるかにかかっていると思う。
 現在、学内の競争的な研究費への申請に対する審査については、委員が厳正に評価するシステムを構築している。研究成果の評価を行い、その結果を応募した研究者に還元する仕組みができているかという点については不十分であり、今後の課題だと認識している。
 それから3点目の研究費の基になる資金はあるかというご質問だが、関西大学に特別な基金があるわけではない。学生の納付金や寄附金など様々な形での事業収入の中から研究に対する予算が認められて支出しているという状況である。

【小原委員】
 人文科学分野向けの大型研究費が必要という要望があったが、人文科学系の基礎学術研究に限れば、多額の研究費はそれほど必要ないと認識している。NEDOなどを例に挙げていたが、金額などを含めて、どのようなものをイメージしているのか。

【藤田サブリーダー】
 中国や韓国では、国家事業として人文科学の古典書籍等をデジタル化し、データベース化するという仕事を行っている。これは、一研究所、一研究組織においてできる仕事ではないので、国家事業として実施する必要があるのではないか。また、この分野の研究者から、日本では例えば個々の『源氏物語』といったプロジェクトは動かしているが、アジアの他の国々の状況と比較すると、立ち遅れているのではないかという意見が出ている。

【甲斐委員】
 研究費部会では、多くの科学研究費の設定が理系をベースに行われているため特別推進研究や特定領域研究、大型の基盤研究などは金額が大き過ぎ、人文科学系にとっては、むしろ小型で長期に渡る研究費が必要だという意見が多い。
 今の意見も、特定領域研究で十分カバーできる範囲ではないかと感じるが、何か応募にあたって不備な点があれば、教えていただきたい。

【藤田サブリーダー】
 特定領域研究に人文科学系で試みるという例を幾つか身近で見てきたが、やはり採択数されるのは難しいのが現実である。文部科学省の研究費が人文科学系には最も手近であるので、我々はどうしてもそういうところに目が行きがちだが、理科系や社会科学系でも文部科学省以外の幾つかのプロジェクトが動いている。
 大型研究資金というのは、100万円、200万円という金額ではなくて、少し大きなチームを組んで動かなければならない場合に必要な研究費という意味であり、古典書籍のデータベース化はあまりにも人文科学的であるが、そのようなアイデアが出てきたときに、どこに応募すればいいのか、吸い上げるシステムはどこにあるのかということが、周りの研究者から出ている要望である。

【家委員】
 要望の中に、複数回応募の件があり、先ほど着任時期がずれた場合のケースを言われたが、それに関しては現行の制度で対応していると理解している。何か現行制度で対応できていないところがあれば教えていただきたい。

【藤田サブリーダー】
 新しく着任した研究者については申請可能であるが、その研究者が来たことで立ち上がるチームの例が実際に幾つかあったので、着任の時点でその研究者を入れてチームを組みたいという要望である。さらに、機会が複数回あれば再挑戦できるのにというのが研究者の正直な気持ちだと思う。

【平野部会長】
 本日発表していただいた内容、要望等を参考にしてまた別の機会に議論をしたいと思う。

3.小林筑波大学教授からのヒアリング

 小林筑波大学教授より、資料4「米国大学における研究資金配分」に基づいて発表があり、その後意見交換があった。

【三宅委員】
 NSFの最近の大きな変化の1つとして、ある程度成果を上げてきたところが1つのより大きなセンターをつくって、お互いに補完して行う研究に対して、積極的に長期にわたって支援することを鮮明に打ち出したことがあると思う。今、言われた中には、大学それぞれが競争するのではなく、本来は競争関係にある大学を連携させ、より強化するということを、NSFや国の機関がきちんと制度化してサポートする必要がある、という主張が入っていると考えてよいか。

【小林教授】
 2000年頃からアメリカの資金配分の仕組みがかなり変わってきていて、NSFではネットワーク形成に対する支援などをいろいろな分野で始めている。それだけではなく、DODやNIHでも類似のプログラムをつくっている。従来、特にNSFでは大学の中で閉じるような小型の研究活動への支援が多かったが、それをもう少し規模の大きいグループにしたりネットワーク化するなどして、複数の大学間の協力や、異分野間の協力などを重視していこうという傾向が見られる。

【石委員】
 アメリカの州政府と日本の都道府県の役割についての比較は、そのとおりだと思う。1つの切り口として、アメリカの州政府での研究費配分という視点で説明があったが、日本の都道府県というのは、研究費というよりは、地域活性化のために若者を集めるといった視点で資金の配分を行っている傾向が強い気がする。その辺りが日米で違うのではないかという印象を持っている。
 例えば、沖縄の名護では、10年程前に地域で集めた資金で名桜大学を設立し、町全体を活性化してきた。今、公設民営や、公立大学の統合などいろいろな取組があるが、その発想は研究費というよりは若者を大勢集めて地域を活性化するという発想と理解している。アメリカには、そのような発想はないのか。

【小林教授】
 アメリカの場合は、いろいろなケースがあるが、田舎でも比較的人口増加があり、産業振興などに熱心で、そういう意味で研究を活性化しようと考えている大学が出始めている。昔はアメリカの研究費は、上位10くらいの州に集中していたと言われているが、その下の10から20の州がかなり活発化してきているというのがアメリカの実態だと思う。
 日本の大学の場合は、公立、私立、国立で大きな違いがあるが、国立に関して言うと、知財法の制約があったために、今まで研究費という観点で都道府県が国立大学に協力をしたり、資金を提供したりすることは実質的にほとんどできず、地域の振興につながるような産学連携のみ認められていた。これは法的にやむを得なかったが、それが今年1月に変わった。まだ具体的な事例が出てきていないのでわからないが、今後どうなるかということだと思う。
 ただ、そういう意味で、実態として、日本の都道府県は研究の振興ということをあまり考えてこなかったのだと思う。

【中西委員】
 選択と集中を見直したということは非常に興味深い話で、強いものをより強くするということは大変わかりやすいと思うが、次のイノベーションを掘り起こして醸成する土台をどのように育てるかということが一番難しいと思う。それから、先ほど少し言われた、アメリカで2000年頃に、研究の持っている社会的価値が認識され研究費に対する考え方が変化してきたことに関して、何が多くの州の人々の考えを変えたのか、要因はいろいろあると思うが、教えてほしい。

【小林教授】
 いろいろな動きがあってよくわからないところもあるが、一番はやはりバイオを中心とする産業が起きてきた時代であったということだ。90年代前半はIT が非常に活発化し、それに続くものとして、90年代末ぐらいから、医療や薬などを中心としたバイオ産業の可能性が見えてきた。2000年になり、バイオ産業の可能性がかなり明らかになった中で、従来にない産業分野が多かったことから、それを様々な州が地元に引っ張ってきたかったということだと思う。
 その成果を見ることで、政治家も含めて、特にバイオ系を中心として、研究の重要性のイメージが形成されたのではないか。要するに、当時、研究を行うことが経済的な発展に結びつくのではないかというイメージが強くなったのだと思う。

【平野部会長】
 今後の国の方針自身にも関連があるので、ぜひ何らかの機会に今回の話を参考にしながら動いていければと思う。

(3)その他

 事務局から、ライフサイエンス作業部会の審議状況について、資料5「ライフサイエンス作業部会の審議状況について」に基づき報告があった。また、今後とりまとめる予定の「審議のまとめ(その2)」の骨子案について、資料6「審議のまとめ(その2)骨子案」に基づき説明があった。さらに、次回の研究費部会は5月22日(木曜日)13時30分から開催予定である旨連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課