第4期研究費部会(第12回) 議事録

1.日時

平成20年3月13日(木曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

 平野部会長、井上(孝)委員、鈴木委員、中西委員、深見委員、三宅委員、家委員、石委員、井上(明)委員、井上(一)委員、甲斐委員、小林委員、小原委員、垣生委員

文部科学省

 大竹基礎基盤研究課長、磯谷学術研究助成課長ほか関係官

オブザーバー

(発表者)
 東京医科歯科大学 大山副学長、森田評議員
 京都府立大学 山岸学長、木村研究部長
 北里大学 井上副学長、柴田研究支援センター事務長心得

4.議事録

(1)有識者からのヒアリング

1.東京医科歯科大学からのヒアリング

 東京医科歯科大学の大山副学長、森田評議員より、資料3「東京医科歯科大学における研究費活用について」に基づいて発表があり、その後意見交換があった。

【石委員】
 いくつか質問させていただきたい。1点目に、どこの大学も、競争的資金が入って以来、リッチとプアの領域が学内に出てきているが、それを東京医科歯科大学ではそのままにされているのか、あるいは、オーバーヘッドや学長裁量経費を使う等、リッチの領域からプアの領域に経費を移すような是正措置を講じているのかどうかお聞きしたい。
 2点目に、競争的資金の中では科研費が最も重要だと思うが、大学として研究者個人が申請するのに任せているのか、あるいは、科研費等を申請する際にあたり、大学として戦略的な取り組みをされているかどうかお聞きしたい。
 最後に、目的積立金というのは、余ったお金を積み立てるというよりは、あらかじめ目的を決めておき、将来使うべきお金をいろいろなソースからまとめておくという認識でよいか。

【大山副学長】
 リッチとプアに関しては、一部は是正をしているが、全学的に、例えば戦略会議を設けて、その中で是正を図るということは現在行われていない。

【森田評議員】
 実際、戦略的に外部資金を獲得してきているかというご質問については、本学の場合、完全に研究者個人が獲得して研究を行っている。したがって、特定のプログラムについて、研究者にこの外部資金を獲得させるといったことはなかなか難しい。教育プログラムに関しては全体的に対応しているが、研究に関しては個人に任されている。

【大山副学長】
 目的積立金については、今年が5年目になる。残り2年間で全学的な見直しを行い、それを目的達成に使うべく、大学として動いている。

【井上(明)委員】
 例えば、歯科医師を育てる教育において、必要となる患者を治療するための椅子のような共通基盤設備については、間接経費を充当しているのか、あるいは何か他の特別予算等を充当しているのかお聞かせいただきたい。

【大山副学長】
 本学の歯学部は、患者を治療するための椅子を313台所有しており、学生用に約80台を充てている。また、研修用に約40台を備えている。その更新あるいは新規購入については、学長裁量経費から充当している。昨年は15台を更新したが、次年度にも、更新時期に来ている椅子について同様の方策で充当することになると思う。

【井上(明)委員】
 東京医科歯科大学では、歯科医師の教育といった目的があるため学長裁量経費等が使いやすいと思われるが、総合大学においては、大学全体の資金を特定の目的のために充てるのが難しい状況にある。
 また、間接経費は全て大学全体に関することに充てられるという点について、例えば若手育成の観点から、「若手研究(A)・(B)」に関して、間接経費でインセンティブを与えているような施策はあるか。

【森田評議員】
 本来的に間接経費は、個人で獲得した人に対してインセンティブを与えるものではないため、若手研究者については、技術スタッフが事務的なサポートは行っている。その他、研究環境を向上させるための間接経費としては、特に若手で他の競争的資金を獲得していない研究者に対してサポートする形になっている。

【小林委員】
 科研費での知的財産権の特許化の金銭負担・制度等の見直しが必要という意見があったが、もう少し具体的な提案はあるか。

【森田評議員】
 知的財産権は、独法化以後、大学の中では非常に重要な分野となっている一方、経費がかかる部分でもあり、大学として知的財産権を維持していくことにそろそろ限界が来ていると思っている。こうした事態に対して、国の政策として、科研費の申請時に、これは特許になるということを提示させ、審査の結果、十分価値があると判断されれば、インセンティブを与えて大学と国と研究者の三者が連帯して動いていくような方法をとらないことには、いつまでも日本の研究から生まれる知的財産がうまく運んでいかないのではないかと考えて提案させていただいたが、具体的にどうずれば良いかということは今後の課題だと思う。

2.京都府立医科大学からのヒアリング

 京都府立医科大学の山岸学長、木村研究部長より、資料4「京都府立医科大学における研究費活用について」に基づいて発表があり、その後意見交換があった。

【平野部会長】
 資料の28ページに、基盤的経費の配分とあり、科学研究費補助金の部分と京都府一般会計繰入金の部分があるが、人件費等は、京都府一般会計繰入金の中に入っているのか、あるいは人件費はまた別の財源から出ているのか。

【木村研究部長】
 人件費は、別の財源から出ている。

【井上(明)委員】
 京都府立大学は、大学病院は持っているのか。

【山岸学長】
 持っている。

【井上(明)委員】
 この基盤的経費の配分の中には、大学病院の収入などが含まれていない。

【木村研究部長】
 今回、それを含めて提示する機会がなかったため、入れなかった。特に競争的資金について中心にまとめた。

【井上(明)委員】
 論文など、業績を上げられていて大変すばらしいと思う。国立大学協会では、大学病院を含む大学に関して、2パーセントの経営改善係数や、診療費3.16 パーセントの引き下げなどにより、臨床の先生方が非常に忙しく、基礎研究に時間をなかなか回せなくなったと聞く。そのため、日本全体の研究活動は、世界が急速に右肩上がりとなっているのに対し、横ばい状態であり由々しき状況だと言われている。そういう意味で、非常に頑張っておられると思うが、これは、やはり府立大学ということで法人化されていないことが非常に大きいためなのか、教えていただきたい。

【木村研究部長】
 この問題については、幾つかのファクターが貢献していると思う。本学では、大学院重点化を行ったのが平成15年と非常に遅かったが、これは、先行する国立大学の法人化の内容を見て、十分検討した上で対応したいと考えたためである。また、共同研究の促進や、中央研究室として共同研究機器をできるだけ使ったスペースなどの活性化できる部分の掘り起こし、学内の幾つかのプロジェクトを中心に連携を進めること等、小さいながらもレベルの活性化に努めたことが、右肩上がりに大きく貢献しているのではないかと思う。しかし、課題として、大学全体としての個性を高めていかなければならないと認識している。

【小原委員】
 最後に言われた若手研究者の自立支援は非常に重要である一方、問題も多くあると思うが、インフラの整備とともに、教育の充実のために、講座当たり常勤教員5名を充てているのは非常に手厚い支援をされていると感じる。そこのバランスが難しいと思われるが、京都府立医科大学では、インフラとはどのようなことをイメージされているのか。これから実現しようとする際にはどのような問題があると思うか。

【木村研究部長】
 この問題は、たやすくないことは十分承知している。小さい大学であり、研究室単位で競争しても勝てないことは十分把握しているので、学内連携をしやすく、しかしその中で若手研究者が独自のアイデアで研究できるようにするには、共同研究スペース、あるいは施設の一部を優れた若手研究者や、研究費を獲得した若手研究者に充てるなどの施策を、今後重要な施策として講じていかなければならないと思う。

【垣生委員】
 研究開発センターを設置されていて、様々な分野の研究者が同じ場所に集まるようになっているが、ここには、研究者の研究に対する経済的な支援はないのか。研究者それぞれが自ら獲得した研究費を持って集まるのか。というのは、修士課程を設置されているが、今後、若手で、有給ではないノンメディカルのフィールドの研究者が増えると思われるので、その研究者の研究を伸ばさなければならず、さらにその先として、テニュア・トラックの制度の導入を考えるとすると、その一方で常勤教員の定員が決まっているという問題があると思うので、どのように将来のプランを立てているのかお聞きしたい。

【木村研究部長】
 額は小さいが、間接経費を戦略的に充てる1つの柱として、研究開発センターにおける基幹的なプロジェクト単位で、若手研究者や、そのプロジェクトの推進などに充てている。額は大きくないため、所属する研究者の獲得した競争的資金も充てるが、それだけではなく、例えば研究ユニット単位で研究者を雇ったり、補佐的な者を雇うなどの取組を進めている。テニュア・トラックのための人員をどう生み出していくかということも非常に難しい問題だが、基幹的な研究ユニットを中心に、大学として戦略的に考えている部分に対して、優先的に充てていくということが今後必要だと考えている。

3.北里大学からのヒアリング

 北里大学の井上副学長より、資料4「北里大学における研究費活用について」に基づいて発表があり、その後意見交換があった。

【甲斐委員】
 大変ユニークな支援策で、参考になった。AKPSという独自の研究費支援制度について、上限1,000万円までということだが、実際にはどれくらいの額で、何件ぐらいで、何年ぐらいの単位でサポートしているのかお聞きしたい。

【井上副学長】
 あるプロジェクトが通ると、3年で申請する。最大2,000万円だが、申請が多いため、大抵は最大1,000万円になる。2年目には必ず評価を行うが、評価結果により、1年目が1,000万円でも2年目には500万円になるものもあり、強制的に支援を打ち切るものもある。

【甲斐委員】
 その結果、その研究者は実際に外部の競争的資金を獲得できているのか。

【井上副学長】
 実際に、グローバルCOEの獲得に結びついた。このAKPSは、単独の学部での申請は一切受け付けず、学部横断的でないと申請してはならないことになっている。

【甲斐委員】
 審査が学部横断的なのか、あるいは共同研究でないと申請できないのか。

【井上副学長】
 申請の際に学部横断の共同研究でなければならないとしている。審査は、全学で行っている。

【甲斐委員】
 AKPSの財源はどのように確保しているのか。

【井上副学長】
 大学の積立金の利息を充てている。

(2)研究分野の特性に応じた助成の在り方について

 三宅委員より、「学術基盤推進のための新領域提案」に基づいて提案があった後、意見交換があった。

【小原委員】
 「予測的アプローチを可能にする方法論」とあるが、例えばゲノム研究は社会的に非常に大きなインパクトがあるため、その研究を紹介するとともに、その研究がどのように社会に影響するのか、市民と一緒に考える催しを行っており、その中では、生物学出身者や法律学出身者などが集まっている。学問にしてほしいが、その方法論がまだ確立しておらず、市民からの意見を取り入れる際に、どのように定量化すれば良いかもはっきりしていない。このようなことをイメージすれば良いのか。

【三宅委員】
 新しい提案が、例えばトップダウンでなされた場合、それを一般の人がどのように受けとめるものなのか。研究の成果を活用していくのはその研究グループの人だけではないので、その外側の一般の人が提案をどのように受けとめて、実際に成果を生かすように社会として動けるのかという点について、もう少し研究する必要があるということ。

【小原委員】
 特に生命科学では非常にその必要があると思っているが、受け皿となる人材があまりいないため困っている。この辺りは重要なことだと思うが、もう少しイメージがはっきりしたほうが良いと感じた。

【平野部会長】
 おそらくこの提案にあるように、人材育成を含めて、日本にまだあまりない研究であるため、海外で今動き出している研究者も巻き込んだ研究チームを構成することも必要という背景があるのではないかと思う。

【三宅委員】
 確かに、特に日本ではまだ力が弱い部分であると思う。

【平野部会長】
 これは本日初めてご提案いただいた貴重なご意見であるので、また次回にご議論いただきたい。

(3)その他

 事務局から、次回の研究費部会は4月30日(水曜日)13時30分から開催予定である旨連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課