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総合科学技術会議からは、基盤研究(C)のような小規模の研究種目では、必要な研究費を獲得しようと、研究者からの応募件数が非常に多くなってしまうので、金額の規模を大きくすることを検討すべきといった意見があったが、本部会ではむしろ、人文社会系にとどまらず、理工系、生物系の研究者にとっても不可欠であるという意見が大勢であった。平成13年7月の部会報告においても、基盤研究(B)、(C)の必要性について述べており、今回もそれに従って記述している。
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私は、どちらかと言えば、あまり細かい金額のものを配分しない方がよいということを主張してきている。今回の論点にもあるように、確かに分野によって研究に必要な額は変わってくる。基盤研究では、金額により(A)、(B)、(C)という研究種目の区分を行っているからそのような混乱が生じたのではないか。むしろ、研究者自身が独立した研究者として、自分の研究を遂行するために必要な金額を設定できるようにすることの方が重要になると考える。おそらく、総合科学技術会議の意見もそのような意味であると思う。
原則としては、若手であろうとなかろうと、科研費等の競争的資金を獲得した研究者が独立の研究者として認められて、1年間研究を遂行できるという形になるように、その方向で科研費制度を改善してほしいというのが真意である。
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総合科学技術会議は、基盤研究(C)が悪いという表現を使っているわけではない。ただ、米国のNIHと比較して、科研費は非常に応募件数が多く、そのために評価者に過重な負担をかけ、十分な評価を不可能にしているのではないかと考え、それを解消するための方策として、特に若手研究者向けに支援額の引き上げを図るよう求めてきている。字面だけを見ると、科研費の「若手研究」を拡充すべきと主張しているだけのように読めるが、基本的には規模の小さい基盤研究(C)が若手研究者向けの種目であると認識した上での意見である。すべての研究種目を基盤研究(S)や(A)程度の規模にすれば応募件数は減るが、反面、(C)のような少額の種目を廃止してよいかどうかが問題となる。
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基盤研究(C)という研究種目に関する評価ができていないのではないか。理工系に関しては、(C)でも若手研究者が採択された研究課題は成果が上がっていると思う。しかし、(C)を獲得した年配の研究者の研究については、補助金の交付が効果的であったかどうかという評価がきちんとなされていないのではないかと思う。基盤研究(A)や(B)を獲得できない年配の研究者が(C)を獲得しても、必ずしも満足すべき成果が挙げられていないのではないか。理工系に関して言えば、基盤研究(A)、(B)と(C)とを分け、少額の研究種目である(C)は、応募資格を若手研究者に限ってよいのではないかと思う。
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第1期の研究費部会が平成13年7月に取りまとめた「科学研究費補助金の改善について」という報告においては、「基盤研究(B)、(C)は、人文・社会系の研究者にとって不可欠な研究種目であり、十分な所要額を確保すべきである」と述べられている。
これは第1期の研究費部会が取りまとめた報告であるため、第2期の本部会が拘束されることはないが、それを踏まえ、今回はどのような報告を行うかを考える必要がある。
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先ほどの意見に関連して、骨子案の6ページに「基盤研究の(C)から、さらに基盤研究(B)、(A)、さらには特別推進研究とステッアップする場合がある」とあるが、評価として基盤研究(B)、(C)からどれだけステップアップしているかといった実績を明らかにすることが、これらの研究種目の果たしている役割を説明する上で必要ではないかと思う。
また、人文社会系では、(B)や(C)によって研究を継続していくという意味合いもあると思うので、そのような点から現状を分析して、基盤研究(B)、(C)が果たしている役割を明確にし、その必要性を訴えていくことが必要ではないか。
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最近、いろいろなところで矛盾した議論がなされているという現状認識の下に申し上げたいのだが、応募件数を減らさなければならない理由として、日本学術振興会の業務が過重になるというのであれば本末転倒だろう。どの制度であっても、公募に対し多くの応募があるというのは決して悪いことではないと思う。しかも、基盤的経費を減らそうとする動きがある中で、少額の研究種目への応募件数も減らそうとするのは、何を意味しているのかが理解できない。
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総合科学技術会議が平成15年4月21日に取りまとめた「競争的研究資金制度改革について(意見)」においては、「我が国の競争的研究資金の多くは、申請書の内容が、研究計画自体よりも研究者の経歴、過去の業績に重点が置かれている。さらに研究費の小規模な研究開発課題が多い。このため、若手研究者を中心に多数の申請を行わざるを得ない状況となっており、その結果、欧米に比べても、膨大な数の申請件数となり、評価に過重な負担をかける一因となっているものがある。」と述べられている。
また、それを補足するデータとして、科研費の応募件数は約8万5,000件、採択件数が約2万1千件であるのに対し、NIHは、応募件数は約2万7,000件、採択件数は約8,600件であると指摘している。さらに、ここでは若手を中心に記載してあるが、「若手研究者の独立性を確立し、より流動的な環境の中で研究を進められるようにするため、若手研究者向けの競争的研究資金の拡充を図る。特に、若手向けの競争的研究資金制度については、若手研究者育成の観点から、単純な年齢による判別だけではなく、研究経歴による応募資格、他分野から移って来た多様な人材を排除しないこと等を含め、制度の見直し、拡充を図る。」と述べている。つまり、小規模な研究種目が多いために応募件数が増大し、審査が十分行われておらず、その状況を改善するため、一課題当たりの交付金額を大きくするようにと主張している。
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先ほどの、基盤研究(C)は支援を若手研究者に限るべきという意見は、研究成果のインパクトという点から考えたもので、あまり業績を挙げていない年配の研究者の存在を否定するものではない。そのような人も大きな教育的義務を負っているので、実験教育のための基盤的経費によるサポートは必要だろうと思う。
そうしないと、基盤的経費がなく、競争的資金による研究費も獲得できない研究者が非常に多くなってしまい、そういった研究者の存在意義がなくなる。しかし、大学は教育が最も重要であり、実験教育のための経費は必要だろうと思うので、その拡充はぜひやらなければいけない。応募件数が非常に多いのは、必ずしもシャープな研究を行うという意図ではなくて、大学院生たちに実験を通した教育をするための資金を得るために、やむなく応募しているという面が非常に大きいのではないかと思う。
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基盤研究(C)をめぐる議論というのは、先ほど事務局から説明があったように、まさに分野によって状況が異なる話であり、これを一律に議論することの危険性を感じている。人文社会系は言うに及ばず、先ほどから意見の出されている、年配の研究者が(C)に応募することの是非も、分野によると思う。骨子案の6ページにもあるように、例えば、理論あるいは数学など、研究はステップアップするが、予算面ではステップアップする必要がない分野もある。とかく(A)や(S)、あるいは特別推進研究といった大型の科研費を獲得することがよいという認識が一般にはあるようだが、それは研究費をそれだけ必要とするから応募するのである。元に立ち返れば、競争的資金を獲得すること自体がよいのではなくて、それを獲得してどのような研究を行ったのかを評価することが本来あるべき姿である。
そのため、ある研究者がいつまでも(C)に留まっているということ自体は非難されることではないと思うし、こういった議論をするには、(C)の応募の実態は年齢構成がどうなっていて、(C)に応募した年配の研究者の研究課題について、審査の場でどのように評価されたのかといったデータを基礎にしないと、浮ついた議論になりかねない。多分、調査してみると、分野によって全く異なる結果になると思う。
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評価制度に関しては、本当に大変な作業になっているという現実がどの程度あるのか。現在の科研費の評価制度は、確かに審査員である研究者への負担が大きいが、非常にしっかりとなされており、他の競争的資金制度と比べると、圧倒的に公正な評価がなされているということをもう少し強調してもよいのではないか。
若手の育成についてだが、基盤研究(C)のような研究種目には、まだ芽が出るかどうかわからないような新しい研究分野を育成するという目的もあるが、一方では、若手研究者の中でも優れた研究を行い、大型の研究費を獲得している人もいるので、必ずしも全ての若手研究者に当てはまるものではないのではないか。
それから、この報告書は大きく分けて、科研費に対する総合科学技術会議の評価に対する科研費の在り方についての基本的な考え方と、もう一つは、それを踏まえてどのような仕組みの改善が望ましいかという点に分かれていると思う。その辺りを少し区別して、両方に対してきちんと意見を述べることが望ましいのではないかと思う。どこに提出して、何を言いたいのかという点について、推敲する余地がある。
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今の意見に同感である。NIHのファンドと科研費とでは、役割等が全く異なる。NIHとの比較から科研費について云々言うことは基本的に間違いであるということをきちんと言うべきだと思う。
それから、審査件数を減らすべきという意見の根底には、審査が十分ではないという考えがあるのだろうと思うが、それについても十分なのか十分でないのか、きちんと反論すべきだと思う。
それから、若手研究者の育成についても、今の意見にあったように、総合科学技術会議の指摘がおかしいのであれば、きちんと反論をした上で、本部会として制度改善の議論をすべきである。
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応募件数が多いということは、基盤的経費が少ないという構造的な問題を反映しており、その問題をここにしわ寄せして持ってくること自体が全くナンセンスだろうと思う。研究者が何とかして科研費に活路を見出そうというニーズがある以上は、それに十分答えなければならない責務があるだろう。審査するのが大変だろうから、科研費のシステムを変えるという本末転倒の議論はすべきでないということは、この報告においても述べる必要があるのではないか。
また、6ページの一番下で、過重な負担が審査員にかかるという問題については、きちんと資源の投入を図るべきであると書いてあるのは大変結構だと思うが、その後の「日本学術振興会に設置されている学術システム研究センターにおいて合理的なシステム改善について検討することが望ましい。」という記述では、全くの腰砕けである。「過重な負担がかかる問題については、資源の投入を図りつつ、学術システム研究センターを中心にして、これに耐えるシステムをきちんと構築するよう国は図るべきである。」といった書き方であればよいと思うが、今の書き方では、現行の科研費の審査システム、あるいは研究種目の構成が間違い、あるいは不十分である、というような、次元の低い問題として理解されてしまうおそれがあるので、この部分は工夫が必要である。
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今の意見に賛成で、それはそれでいいと思うが、ただ、先ほどからの少額の研究費を廃止すべきという総合科学技術会議からの意見に対する議論には、おそらく誤解があると思う。科研費を獲得したということは、外部のピアレビューを受け研究していく能力を一応認められたのだから、その研究者がある程度独立して研究が遂行できるような環境をつくるようにすべきというのが根本である。
研究の現場、あるいは審査の現場に長い間携わってきた経験から言うと、先ほど意見のあったように、確かに研究現場自体の研究教育のための資金が足りないという現実がある。そういった点も含めて、科研費が採択された場合、それに専心して研究を進めていけるようにすることが、一番根本の精神である。
そのために、例えば基盤研究(S)は、第1期研究費部会で、他の研究費に頼らなくても研究が遂行できるように、また、萌芽的研究は、海のものとも山のものともつかないが、非常にユニークな研究について応募できるようにという思想から設けられたものだと思う。
従って、その辺りを総合的に考えて改善策を提案すべきで、金額で区切るということ自体が間違っているのではないかと思う。しかし、今すぐにその仕組みを変えるというのは非常に難しく、それはシステムの問題と絡んでくるので、まずは方向性を明確にして時間をかけて検討し、よい方向へ流れを持っていくことが必要ではないか。
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基本的な考え方として、大学に対するデュアルサポートシステムは絶対に維持していくべきだと思う。割り切って言えば、研究は競争的資金によって行われ、そして教育は基盤的経費で行われるべきではないかと思う。科研費は大学の活動を助けるためにあるもので、疲弊させるものであってはいけないと思う。
おそらく国民は、大学に対して、研究機関としてよりも教育機関としての役割の方に大きな期待を寄せているのではないかと思う。極論をすれば、科研費についてはきちんとピアレビューをすることが必要だが、研究費を獲得しておらず、基盤的経費で研究をしている場合は、研究評価をするのは無理なので、研究評価から外すべきだと思う。それらの研究者には、基盤的経費できちんと教育面を担ってもらい、教育面から評価すべきである。人材教育を競争的資金で行うことは、教育的な観点から大学をどんどん疲弊させていくことになるのではないかと思う。従って、科研費の在り方を議論する際は、デュアルサポートシステムのもう一方である基盤的経費の在り方についてもパラレルに議論を進めなければいけないと思う。 |