参考資料 学術情報基盤作業部会(第38回)で出された主な意見

学術情報基盤作業部会(第38回)で出された主な意見

  • 現在の論文誌だけでなく、次世代の科学者のコミュニケーションメディアなどの将来を見据えつつ、それをどのように研究に役立て教育に生かすかという視点が重要であり、これは、学界の将来あるいは研究者コミュニティの将来を考えていくことに他ならない。
  • 学協会には、日本の学術誌のビジビリティの向上やインパクトファクターなどで高い評価を得たいという切なる要望がある。そのためにも、日本の学術誌の事業力、経済規模の強化が必要である。
  • 日本化学会が中国を巻き込んで始めたChemistry-An Asian Journalはエディターと投稿者が真剣に取り組むことにより、短期間でインパクトファクターの高い雑誌を出すことができた。日本、中国、韓国、アジアを合わせると世界全体の論文のシェアの3分の1を占めており、日本がどのように国際的な責任を果たしていくかという問題がある。
  • 日本の学会はどこもビジネスの感覚がない。出版はビジネスなので、少なくとも海外との関係では、商業出版社と組んで学術面を学会が担当するとうまくいく。
  • アメリカの学術誌の出版にあたっては、エディトリアルボードにポスドクを入れて一緒に議論して経験させることで人材育成を図っている点が日本の学会誌との一番の大きな差である。日本では、学会によっても違うと思うが、エディターの層が薄く人材育成も不十分である。
  • 日本の学協会は、多くの場合限りなく自分たちの組合で、自分たちの成果を自分たちで出せばよく、研究成果も良いものは自然に認知されるという、ある意味で健全で、ある意味で非常に素朴な発想となっている。
  • 大学では、図書館は膨大な資料を持っているが、それを商業的な資源と考えるようなことはあまりしておらず、そのような知的風土の中で学協会だけがコマーシャリズムに傾斜すると浮くことになるのではないか。
  • 雑誌を流通させるプラットフォームとして、ネイチャーやシュプリンガーのような海外出版社と組むところもあれば、J-STAGEを活用するところもある。さらに、海外出版社から再びJ-STAGEに戻ってくるところもある。数としては日本から海外に行く場合が多いが、それぞれの学協会の事情に応じてプラットフォームは決められており、学会の自主性・主体性の表れといえる。日本の学協会の雑誌刊行資源を一律に考えるような意味づけは難しいのではないか。
  • スケールメリットを生かした合同政策出版体制の構築やパッケージ化によるバーゲニングパワーの創出、オープンアクセスプラットフォームの構築、専任編集長の雇用による質の向上、人文社会科学系のジャーナルの電子化など、学協会の自主性を尊重したリーディングジャーナルの育成と成果の他学会への展開などに取り組むべきである。 
  • エディトリアルサービスは、かなり汎用性の高い技術なので、どこかに一定の人を貼り付けて、そのノウハウを理解するような、専門領域の技術を身につける人たちを計画的に育成するような仕組みを考える必要があるのではないか。
  • 人文社会系の電子ジャーナルを検討する段階では言語の問題が出てくる。研究分野によっては、先端の研究をコミュニケートするのが英文とは限らない分野、あるいは英文だけに限らない分野、工学系、地域性がある分野、医療系など、多様性への配慮が必要である。
  • 学術情報流通の未来を決めるのは誰かという問題については科学者というのが答えとなっているが、研究費が公的資金から措置されていることを踏まえると、科学者ないし学術出版の専門家以外の意見をどう取り入れるかを重要な要素として考えなければならない。
  • 大学の評価は国際的に行われており、評価のポイントは海外の学術誌の引用数等が大きく取り上げられる。このため、日本人が一番良い論文をインパクトファクターの高い外国の学術誌にたくさん出すと日本の大学の評価が高くなる。海外の学術誌に出すだけでは日本のためにならないという議論があるが、皆が日本の学術誌に出すと日本の大学の評価が下がるという関係にあるため、問題は非常に複雑である。
  • 学協会と情報発信・流通との関係については、ビジネスを含めると学協会の在り方なども考えなければならない側面がある。国からの学協会がジャーナルを刊行するための支援は十分ではないかもしれないが、深く関係しているので、一定の方向性が見えるようにすべきである。

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