研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第53回) 議事録

1.日時

平成24年7月13日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.出席者

委員

有川主査、倉田委員、坂内委員、土屋委員、羽入委員、松浦委員、山口委員

文部科学省

(学術調査官)市瀬学術調査官、宇陀学術調査官
(事務局)森本大臣官房審議官(研究振興局担当)、下間情報課長、長澤学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

【有川主査】  それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第53回学術情報基盤作業部会を開催いたします。お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。

 本日は、審議のとりまとめに向けました最後の意見交換をしたいと思っております。

 まず、事務局から配付資料の確認及び傍聴登録等について御報告をお願いいたしますが、本日は7名の方に御出席いただいていますので、過半数の出席ということで、会議として成立しております。

 それでは、事務局より、配布資料の確認、傍聴登録等についてお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室長補佐】  おはようございます。

 まず、本日も関連機関の方々には、引き続き審議に御参加をいただいております。

 配付資料でございますが、机上の資料の束、一番上に議事次第がございます。本日は、資料1から資料5まで、5種類御用意申し上げております。それから、いつもどおりでございますが、ドッチファイルにこれまでのこの作業部会の資料をとじてございますので、必要に応じて御参照いただければと思います。

 本日の傍聴者でございますけれども、15名の御登録、事前の撮影、録画、録音の登録はございません。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 本日はまず、前回に引き続きまして、「審議のまとめ(案)」につきまして御議論いただき、まとめを行いたいと考えております。前回会合の際の先生方からの御意見をふまえて修正した案について、事務局から先生方のところにお届けしまして、御確認をいただきました。その後、さらにいただきました修正意見を含めて反映させたものが、資料1、2でございます。これにつきまして、まず事務局から御説明をいただきまして、その後で意見交換をしたいと思っております。

 では、事務局のほうから、よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、御説明をさせていただきます。

 まず資料1は、御意見等を反映させた、完成版というイメージでございまして、本文と基礎資料、参考資料という形でつくったものでございます。

 資料2が、その本文につきまして、前回のこの部会でいただいた御意見と、さらに事前に御照会申し上げた際の御意見を反映させて修正をさせていただいたもの等の見え消しにして示しているものでございますので、この資料2をもとに、変更点を中心にしまして、まず御説明をさせていただきたいと思いますので、その点で御確認をしていただければと思っております。

 それでは、はじめに、資料2の1ページ目でございます。ここの部分につきましては、特に第4期基本計画の関連する部分に加えまして、東日本大震災の関連で、一般的な社会に貢献するような科学技術、学術の在り方ということがうたわれているということも反映させるということもふまえまして、その位置を少し後ろにずらしまして、変更させていただいたというところでございます。

 それから、3ページでございますけれども、背景のところの上から四つ目の丸でございますが、この電子化の遅れているところにつきまして、全体が遅れているのか、人文・社会系が遅れているのかというお話でございましたので、シンプルに、自然科学系では既に電子ジャーナルが中心ですけれども、人社系では移行が遅れているという簡単な書きぶりに変更させていただいております。

 それから、4ページのところでございますけれども、まず、現状のところで、日本の学術のレベルに関する記述のところでございますが、トップレベルの業績という形でありますけれども、そのあとの、論文数が世界の学術論文の約1割という形につきましては、実際の業績レベルと論文数というのはリンクしないということもございますし、ここにわざわざ書く必要はないのではないかということで、消してございます。それから、インパクトファクターにつきましては、単純にそのままで、掲載論文の平均引用度というのは、後ろの用語解説のところで書けばいいということで、削除しておるところでございます。それから、そこの下の、日本のジャーナルの弱いところというところですけれども、編集体制のところを追記させていただいているところでございます。

 それから、一番下のところでございますけれども、こういった「知識インフラと」いう観点での整備というものが社会の一般にも役に立つということを追記させていただいているところがございます。

 それから、5ページで、課題の一番下のところでございますけれども、関係機関の連携による事業の必要性というところにつきましては、箇条書きのような形で書いておるんですけれども、若干詳しく書かせていただいているという変更点でございます。

 続きまして、科研費の改善のところの8ページでございますけれども、その評価の内容のところがきちんと書かれていないのではないかということがありましたけれども、表題のところで、評価なのか、公募内容の見直しなのかというところがはっきり書いてありませんでしたので、8ページの上から二つ目のところは、発信力強化を評価するための公募内容の見直しというふうな書き方で、ここの塊については、はっきり評価そのものではないという形を明記しまして、9ページの全体の留意事項のところの、その他科研費の改善に関する留意事項の二つ目は、実際の審査の評価に関することだということで、この位置については、そのまま、審査において配慮すべきことだということを明確に書かせた上で、残させていただいているということでございます。

 それから、10ページと11ページは若干朱書きの箇所がございますけれども、これは文言の修正でございますので、省略させていただきます。

 それから、12ページの、論文の出版版と著者最終原稿等について、二重にあることについてどうなのかという意識があるということにつきましては、機関リポジトリのところと両方書いていたわけですけれども、この部分にまとめて、そういった研究者の意識ということもふまえて、修正をさせていただいております。

 それから、12ページの、その他の環境整備の下に、関連機関で標準化に取り組むということが書いてあるんですけれども、これは、後ろのほうの5のところに表記したほうがいいという御意見もいただきましたので、変更してございます。

 それから、13ページの機関リポジトリの役割・意義のところでございますけれども、まず、機関リポジトリの役割は様々あるということと、情報発信の観点から維持するということがはじめに書いてあったんですけれども、その下にある、本来の機関リポジトリが持っている大きな役割、科学技術基本計画における「知識インフラ」につながるような事柄であるとか、それから、これは機関リポジトリをつくることが大学の責務というのではなくて、社会へ知的情報を蓄積・発信して、社会に貢献ということが大学の責務として考えると、その中でリポジトリを推進すべきであるという、この役割ということを前に持ってくる。それから、あわせまして、最近文科省で策定した「大学改革実行プラン」における「大学ポートレート」に関連づけて、これが一連につながるような形であるというふうなイメージで追記をさせていただきまして、機関リポジトリの役割の意義というものを、前に大きな柱を持ってきて、そのあとに、その他の様々な役割もあるし、情報発信の観点から整備する意義としては、機関として、ユーザーとして、それから、雑誌の高騰への対応という形の書きぶりの、書き方を変更させていただいておるところでございます。

 それから、14ページでございます。機関リポジトリの現状というところでございますが、上から二つ目の丸のところには、地域等におきまして機関連携による共同リポジトリの整備も行われておりますということを追記させていただいております。

 それから、15ページでございますけれども、リポジトリの課題、留意すべき点の登載強化への対応というところで、ここの部分で、出版版に加えて著者最終原稿が載ることに対して適切ではないという意識があるということが書いてあったんですけれども、この部分については単純に削除しまして、ジャーナルに掲載された論文につきましては、既にもう情報が流通しているということと、作業が研究者にとっては二重の負担になるということで、インセンティブは高くないという形に変えさせていただいてございます。

 それから、その下の丸でございますけれども、では、そのオープンアクセスジャーナルに登載した場合は、二重に全文情報を載せるのかということにつきましては、その全文情報の位置をポイントするだけでいいとすることによりまして、こういった負担という観点からしたときの考え方を若干追記させていただいておるところでございます。

 それから、16ページでございますけれども、意識改革という観点で、研究者の意識改革か大学等かということ、それから、その責務ということに対しては、若干どうなのかという御意見がありましたので、これは大学等に行っていただく等と、研究者の意識改革、両方であるということをまず表題として示しまして、中身につきましては、大学等が研究者に対して成果をリポジトリに載せていただくということが、その大学の、情報を社会に還元するという責務を果たすことにつながるということで、研究者も取り組んでいただく必要があるということ、そういった理解を促す必要があるという書き方にさせていただいて、機関リポジトリに載せるのが、そのまま責務であるというふうな書き方ではないという形に変えておるところでございます。

 それから、その二つ下の評価への組み入れのところで、機関別評価というのを機関別認証評価等という形で変更したということと、それから、評価の対象にするということと同時に、こういった取組状況を把握して周知していくということも、整備を促すということで必要だということをふまえまして、その必要性につきましても追記をさせていただいておるところでございます。

 それから、17ページでございますけれども、タイムスタンプの役割について、もう少しはっきりしたほうがいいということで、タイムスタンプを付与するということは、その研究成果の時期を明らかにするということと、その研究者の方の成果であるということを明確にして、その優先性を主張する上で寄与するという書き方にしまして、知財の保護などという限定的な書き方には変えておるところでございます。

 それから、19ページでございます。bの関係機関の連携・協力の現状というところのはじめの丸ですけれども、それぞれの統合検索機能を持っている機関について、どういうものかというのを若干明確にするような書き方で、機関の名称を入れておるところでございます。

 それから、その下の部分でございますけれども、特に全文検索機能がやはり重要だという御意見がございましたので、そういったものが必要だということを、書かせていただいておるところでございます。

 その下の、その他のところにつきましては、若干書き方を丁寧に書かせていただいております。

 20ページでございますけれども、丸としては上から二つ目でございますけれども、J-STAGEの役割について、もう少し明確にということも御意見としてありましたけれども、こういったJ-STAGEの期待される機能として、更なる電子化の促進と諸外国へのプラットフォームの普及なども課題としてあるということを、追加で書いております。

 それから、一番下の丸のところに、その前のところで書いておりました、関連機関が取り組むべき事項としての標準化の作業ということも、この必要な取組の中の一つとして、まとめてここの部分で書かせていただいておるところでございます。

 それから、21ページの、その他のところでございますけれども、これにつきましては、今後の情報流通の多様化ということにつきまして、より具体的な記述にさせていただいております。

 それから、丸の二番目ですけれども、特に電子ジャーナルになりまして、状況の把握が難しくて、できていないということの課題があるということにつきまして、追記をしておるところでございます。

 本文としては以上でございまして、その他、用語解説につきましては、先生方に見ていただきまして、よりわかりやすい記述の形の用語解説に変えさせていただきまして、特に略字のところにつきましては、できるだけ日本語の表記を加えるというふうな形での修正をかけておるところでございます。

 簡単でございますけれども、修正点等は以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 これまでの議論、あるいは、お寄せいただいた意見等を反映させていただきましたし、また、最近出ました大学改革に関係したことで、「実行プラン」というのがありますが、そういったことなどにも言及しているということだと思います。

 それで、資料1の目次を見ますと、全体の構成が確認できるかと思います。そういったものも使いながら、これから少し時間をかけて御意見をいただきたいと思います。何かございましたら、どうぞ。

【土屋委員】  では、一つ。

 全体の構成で、前回、2が頭に出てくるのがちょっと唐突ではないかという議論があったと思います。つまり、オープンアクセス誌ということを表に出すにあたって、オープンアクセスについての議論が3のところに入っている、3のところに入っちゃっているから、むしろ3を2の前に持ってきたほうがいいんじゃないかというような議論もあったかと思うんですが、それについては、どういうふうに判断されて、その前の構成を維持したのかを伺いたいのですが。

【有川主査】  確かに前回そういった議論がありましたが、これは、これまで審議をしてきた順番といいますか、それが反映されているのだと思います

【土屋委員】  それはわかるんですけど、経緯は。

【長澤学術基盤整備室長】  まず、やはりこのジャーナルの強化をどうするかという観点をはじめに持ってきて、その中で、経費の支援という観点で、オープンアクセスについても踏み込むということをまず書いたわけですけれども、そのあと一般的な、さらにオープンアクセス全体としてどうあるべきかということに触れるという形で、より詳細な部分を、それ以外の部分というのもふまえて書くという形での整理という形で事務局としては考えて、順番を、オープンアクセスを前に持ってきて、そのあとに科研費の改善という形にしなくてもいいのではないかということで、そのままにさせていただいております。

【土屋委員】  結論としては実は賛成なので、それでよろしいと思いますけれども、前回あったので、一応そこだけは確認しておきたいということで。

【有川主査】  全体を体系的にも議論していくということからしますと、そうしたやり方もあろうかと思います。例えば科研費のことですと、JSPSとのことなどもありますので、こういったやり方のほうが落ちつきがいいのかなという気もしております。

 ほかに何かございますか。

【土屋委員】  もう一つ。前回か前々回から申し上げよう申し上げようと思って、いつも忘れてしまっていた、とても小さいことがまだ残っていたので。

 見え消し版11ページの上から4行目のところに、「論文投稿料のような」とあるんですが、これ、投稿料ではなくて、実態は掲載料なんです。ただ、科研費のほうには、もしかしたら投稿料と書いてあるかもしれないです。でも、実際には掲載料だと思いますので。上から4行目です。

【倉田委員】  2行目にも。

【土屋委員】  2行目にもありますね。

【有川主査】  投稿料、掲載料。

【土屋委員】  掲載料ですよね、普通は。リジェクトされたら幸いにして払う必要はないので。

【有川主査】  そう言えばそうですね。美濃先生、よろしいですか。

【美濃科学官】  その話はそれでいいんですけど、ちょっと全体の話で。

【有川主査】  掲載料はよろしいですね。

【美濃科学官】  ええ、結構です。

 全体のところで、オープンアクセスジャーナルの必要性、機関リポジトリの必要性は、それでいいのですが、この関係というか、つまり、例えば、オープンアクセスジャーナルが今後すごく発展していくと、機関リポジトリはURLだけになってしまうというようなことを推奨しているのか、そうではなくて、機関リポジトリを完成させるのか、国として、どういう形を目指しているのかというのが若干見えにくいというか、要するに二つは重なるわけですね。機関リポジトリで入れようとしているデータは、オープンアクセスジャーナルにも入るという、そういう状況が想定されているわけですよね。そうしたときに、どっちをどう充実させていくのかというところについて、その関係や思想のようなものが書いてあると、大学内で議論する際もいいかなというような気がするんですけど。

【土屋委員】  よろしいでしょうか。

   ある意味では、現在、前回も言及した、イギリスで出たフィンチ・レポートをめぐって、オンラインを含めて、いろんな議論がある中で、そこのところが話題になっていることは事実だと思います。ただ、要するに、前回も、あれはどなたの発言だったか覚えていないんですけれども、基本的に今のところ、確かに理屈の上では先生のおっしゃるとおりなんですけれども、では、どのぐらいオープンアクセスジャーナルに主要な論文が載っているかという話になると、100万とか150万という規模でいったら、数え方はいろいろありますけれども、まだ何万のオーダーが普通だと。ですから、現状において、オープンアクセス全体の推進を考えるという意味では、やはりオープンアクセスジャーナルと機関リポジトリは併用するしかないと考えるべきではないかなという感じがします。

  現実に、サブスクリプションによって維持されている雑誌が非常に膨大にある以上は、そこのオープンアクセス化というのは、単純にそれをオンラインにしろと言って済むものではなくて、それだけの経済的な大きな変更に耐えられるだけの耐力を必ずしも投稿側も出版社側も持っているわけではないということなので、あえて言えば、最終的にどうなるかということには触れずに両論併記してあるというスタイルは、現状における認識の表明と近未来の展望としては妥当ではないかなという印象を、何度も読んだ結果、納得しました。

【美濃科学官】  そうですか。研究者から見てどういう方向というか、どういうふうに進むべきか、進んだらいいのかというビジョンみたいなのがあったほうが良いと思ったのですが。現状そういうものというのは理解できるんですけど、それでは、自分たちの行動としてどうするんだというようなところで、学内で機関リポジトリの議論をしていても、これはテンポラリーにやっているのかというような議論が出てきたり、いろんな話がありますので。

【土屋委員】  ですから、それは、ある意味では、究極の真理を求める研究者としては、どっちなんだという話になるのだろうと思いますが、要するに、研究者以外のステークホルダーが非常に入り組んでいる状況の中では、簡単に動きはとれない。さらに、研究者の内部においても、分野ごとにやっぱり状況が非常に違うわけですね。例えば、化学の先生が現れれば、オープンアクセスなんてそもそも関係ないというふうにおっしゃるわけだし、一方、バイオのほうの中でも、臨床系と基礎系では全然アプローチが違うといったような状況なので、今の段階で一様に、学術情報流通というのはこういう方向に持っていくべきだという発言をするのは、多分不可能なんだと思います。

【美濃科学官】  不可能ですね。

【坂内委員】  よろしいですか。

 土屋先生が言われるように、今後の可能性も含めて考えると、オープンアクセスジャーナルというのは、機関リポジトリの扱っていく、あるいは、扱っていくべきもののサブセットだと思うんですよね。要するに、ジャーナルに載せられないようなタイプの学術研究、あるいは教育のアウトプットっていっぱいあるわけで、それをやはり自らの発信という形で機関リポジトリにストックしていく。それから、例えば彙報のようなもの、それぞれの機関が責任を持って自ら発信というようなもの、あるいは、様々なメディアというような形が機関リポジトリでたまっていって、一方で、ジャーナルというのが、そのサブセットの中である形態で、そのポリシーで査読をされたものがたまっていくと。

 だから、情報のスケールからすると、ある視点での一部が最終的にはオープンアクセスジャーナルに載る。今は、機関リポジトリも、入力とか様々な問題があって、形になっているものを入れていくという形なので、たまたま一致度が高いような気がしますけれども、だんだん併用という中で役割分担していくのではないかなと思いますけどね。

【美濃科学官】  分野ごとに事情が違うということで。

【有川主査】  大事な点を御指摘いただいているのですけれども、少し話が大き過ぎるような気もしています。私ども、もちろん一応考えは持っていますが、現時点でそこまで踏み込むべきかというところがございます。

 それは議論の中で少し触れたことがあって、ここには当然反映されていないのではないかと思いますけれども、こういうICTが普及した時代ですので、学術情報の出版・流通の仕方が変わってきてもいいわけです。そういう意味では、今は過渡期にあるという考え方ができるのかなと思います。既存の学術雑誌等では、査読や論文の評価ということが大事なことになっていますけれども、それさえも変わっていき得るわけです。それから、インパクトファクターという特定の雑誌を対象にしたようなことで普及・定着してきましたが、現在では特定なものではなくて、何でもきちんと対象にするというようなことも相当出てきております。それは、ノイズはあるかもしれませんけれども、そういう意味では、ある種の評価には使えるようになってきていると思います。

 では、査読というのはどういうことかというと、一般の読者が見る前に、二、三人の査読者が見て、良しとして、権威付けて出すわけですけれども、実際には非常に権威あるところから出たものであっても、結構ミスがあったりするわけです。それは避けられないことかもしれないけれども、そういったこともあるので、例えば機関リポジトリに、先ほどの坂内先生の言葉ですと、彙報とか、あるいは、テクニカルレポートでもいいのかもしれませんが、そうして置いておくことによって、それがネット上で評価が高まって、注目されるという評価のされ方というのもあると思います。

 例えば、情報の分野で非常に有名な、京都賞をもらわれたジョン・マッカーシーさんのお仕事というのは、現在は違いますが、ほとんどジャーナルに載っていなかったと理解しています。スタンフォードのテクニカルレポートや、そうしたものが対象になっていたわけですが、その時代においてさえも、そういったことで評価がされていた。今、そうした評価はもっと楽になってきており、この時代にそうした評価でもって広まっていったりしたものもあるのではないかと思います。

 そういうことなども考えますと、現在はある種の過渡期にあるというようなことも考えられると思いますが、この限られたメンバーと限られた時間で、そこまで大上段に振りかざして議論ができるかというと、ちょっと難しいと思います。

【坂内委員】  少なくともオープンアクセスジャーナルに集約されていくということはないというふうな懸念は、ちょっと視点が一面的ではないかなという気がしますけど。

【有川主査】  そういったことが、オープンアクセスとの絡みで言いますと、かぶるところがありますから、今みたいな話があるんですけれども。一方では、社会への情報の発信とか、先ほどの大学改革実行プランとの関連で書いてあるようなことなども考えますと、ポートレートなど、ほかの要因もあるわけです。そういったことを、この時点では両方をにらみながら推奨しておくということで、十分意味があるのではないかと思っております。

【松浦委員】  私は、美濃先生の御意見を報告書に入れておくのが親切かどうかというおっしゃられたことを書いておくかどうかという問題だと思います。機関リポジトリを推進する場合に、オープンアクセスジャーナルとの関係を意識して、それなりの方針を持って臨むべきであると書いておけば、落ちつきがいいと考えます。

 例えば、15ページの下から二つ目の丸の部分で、二重の登載は不要とするという記述があるのは、リポジトリとオープンアクセスジャーナルとをどのように取り扱うのかという問題を示唆しています。この記述に近いところに、「その種の問題があることも意識されるべきだ」という一言を入れておくと、読み手には親切でしょう。

【有川主査】  そうですね。このcポツのところが、課題、留意すべき点ということでありますので、あまりたくさん書く必要はないと思うんですが、課題があるみたいなことで、下から二つ目あたりを少し大きくして言及しておきましょうか。

【土屋委員】  よろしいですか。

 どちらかというと、失礼ながらそれは反対です。確かに、御指摘の趣旨はよくわかるんですけれども、むしろこんなところでそんな細かいことまで書く必要はないんじゃないかなという気がしていたところです。

【有川主査】  この「なお」のところですね。

【土屋委員】  はい。かつ、表現上も、「登載」と「掲載」の使い分けの問題があります。要するに、「ジャーナルに登載した論文」というのはちょっと異様で、ジャーナルは「掲載」なんだと思うし、リポジトリはむしろ「登載」というのは最近の用法だと思うところがあって、丁寧にやろうとすると非常に混乱してしまうと。これは現状において、もうあくまで留意点なのではないかなと思います。ここで問題になっているような疑問をお持ちの方は、二重になることが気になるのではないかということもあると思いますけど、一方で、別にたくさんコピーが氾濫するほうが保存性は高まるわけですから、そっちのほうがいいという見方だってあるので、あまり今の段階でここまで踏み込んで議論しなくてもいいんじゃないかなという印象を持って、いっそなくてもいいかなと思ったのです。

  むしろ、今の松浦先生の御指摘に関しては、10ページから12ページにかけてオープンアクセスについて書いてあるので、ある意味では十分であるという感じがします。つまり、結局、ここの論理構成としては、第4期科学技術基本計画におけるオープンアクセス化の推進というのに対して、この二つの方法があるんだということを指摘して、どちらもやりますと言っているので、それで十分だということです。先鋭化しない方向の議論でよいのではないでしょうか。

【有川主査】  一応その辺で書いてありますね。ですから、基本的には、最初に言いましたように、やるなら、しっかり構えてやらなければいけないと思っています。

 美濃先生、そういう方向でよろしいですか。

 それから、もう一つ、合わせて指摘していただいた15ページの「なお」のところですが、私も若干それは感じていました。今、似たようなものがわっと出てきても、あんまり驚かないようになっていますよね。検索したら、似たようなものがたくさん出てきますが、これとこれは同じだなと、ほとんど自動的にわかって対応しているわけで、それほど大したことではないのではないかと思います。

 ただ、ここで指摘されたのは、おそらく、同じものがあたかも違う論文のようにしてカウントされるということで、業績評価などのことをお考えになったのではないかという気がするんですが。それも今はきちんとチェックもできますので、あまり問題ではないと思います。ここだけ少し細か過ぎますので、ここは取ってもいいのではないかと思います。

【長澤学術基盤整備室長】  取ることは別に構わないんですけれども、一応現場で伺っていると、やはり研究者の方々が協力してリポジトリに成果を入れていただくということに非常に苦労されているということでした。ですので、こういった場合はどうするんだという話ですとか、いろいろ話が出たときに、こういう場合は、オープンアクセスに載っている場合も、全文二重に載せなくてもいいというような形の情報として有益かなというのがありましたので、入れたというイメージでございます。

【有川主査】  実際に機関リポジトリをやっているところを見ますと、そういうことはもうほとんどやっていますよね。

 では、少し検討していただくことにしましょう。

 ほかに何かございますか。

【土屋委員】  小さいことばかりなので申しわけないんですけど、忘れてしまうので、先に申し上げさせてください。

 13ページの冒頭の加筆部分なんですけれども、ほんとうに余りにもくだらないことで申しわけないのですが、第2段落の上から4行目から5行目、「大学ポートレート」と同様にと書いてあるんですけれども、これ、「大学改革実行プラン」で、見出しはこう書いてあるんですが、本文中は(仮称)と書いてあるので統一した方がいいと思います。

【有川主査】  それで、さらに括弧が付いていると考えていいのかもしれません。

【土屋委員】  それから、もう一つは、第1段落の「知識インフラ」を構成する中核的要素というところです。科学技術基本計画の「知識インフラ」という概念が十分理解できているかよくわからないんですけれども、インフラというのは、多分、知識そのものではなくて、それを維持する仕組みのことを言っているんだと思います。だから、知的生産物そのものがインフラだというのは、ちょっと違和感をもったので、何かいい表現がないかなという気がしています。冒頭部分であるだけに、あまりだれも違和感がない表現のほうがいいかなと思ったんですが、なかなかいい代替案が思いつかないので、今申し上げているという状況です。

【有川主査】  ここも括弧書きになっているのですが、ここでは知識そのものとかデータも入っているんですね。

 そういうのを、知識インフラということで、うまくとらえてみたということだったと思います。この辺りは相原さんに聞いたらいいのでしょうか。それとも倉田先生でしょうか。

【倉田委員】  基本的には、知識インフラというのは、土屋先生がおっしゃったように、環境といいますか、土台といいますか、そちらのほうをメーンとしているのは確かなのですが、構成する中核的要素というのは、ステークホルダーではなくて、全体のということで、多分、無理やり入れたということだと思います。ですので、多分、生産物はということで結びつけてしまったのですが、確かに、これだと、生産物が知識インフラを構成する組織とか、それと同等かのように読めることは事実かと思います。ただ、大学等がというふうにしてしまうと、また逆に、意味合いが違ってきてしまうなと思います。ちょっとここは……。

【有川主査】  そうなんですけど、私は、ここについてはあまり違和感がありません。知識インフラというのは、全体的に見ると、入れものみたいに見えますけれども、そこにいわゆる知識や情報、データと呼ばれているようなものがあったりして、そういったものをまとめて知識インフラと言っている。そのために、いろいろな装置的なことも考えなければいけないということで入っているんです。そうして見ますと、知的生産物は知識インフラを構成する大事な要素だと言っているわけですから、まあいいのかなと思うのですが。

【倉田委員】  ということでしたら、知識インフラを構築するための中核的要素というのではだめでしょうか。

【有川主査】  そうですね。

【倉田委員】  その場限りで申しわけないのですが。

【有川主査】  知識インフラというのは、今からつくっていくものですから、構成するというと、ちょっとスタティックな感じがしますよね。ですから、今おっしゃった……。

【倉田委員】  構築するための。

【有川主査】  そんなような感じでいいですか。

【土屋委員】  はい。

【有川主査】  それで、先ほど細かいところとおっしゃった、最後に、「目的とするものである」とありますが、一応ほかにもあるような気がしますので、「ものでもある」というのも入れてみてはどうかと思います。

 ほかに、よろしいですか。

【倉田委員】  ほかのところでよろしいでしょうか。

 7ページ目の一番下のところなんですけれども、科研費の公開促進費の改善にあたっては、国際情報発信力強化の取組が助成対象である。次の一番最後のところは、対象経費について、「国際情報発信力強化の取組に係る経費など」となっているんですが、ほかに何があるんでしょうか。「紙媒体の直接出版費以外にも」と、これは言うまでもない話でして、現在、紙媒体の直接出版費以外に助成されていないということが問題なのであって、新しくなったものに関しては、「電子化の進展をふまえつつ、国際情報発信力強化の取組に係る経費を柔軟に助成することが必要である」で十分なのではないかと思うんですけれども。

【土屋委員】  よろしいですか。 ほんとうに細かいことで申しわけないんですが、多分、この「まとめ」は、今日ここで決まるわけですよね。科研費の新しい枠組み自体は、原則的には、9月1日発表なんだということです。だから、一応ここの提案があって、研究費部会で並行して検討したということがあって科研費の応募要項が出てくるという順番なので、既存のものでは紙媒体の直接出版費に限定されていたけれども、それに加えて、国際情報発信力経費などを柔軟に助成することが必要だということを、こちらの作業部  会が言ったという事実は、その形で残しておくべきではないかなという感じがします。

【有川主査】  これは以前、研究費部会で話題にしていただいて、それが学振のほうに行って、検討していただいて、ある種の結論が出ていたと思います。それと合わないようなことをここに書くわけにはいかないですね。

【倉田委員】  ですので、今の土屋先生の、以前は紙媒体の直接出版費だけだったということが、やはり大きな問題だから、今回はそれ以外のものに柔軟に助成することが必要だということならいいんですけれども。

【土屋委員】  ええ、そういう意味だと。

【有川主査】  ですから、このままだと、やはり紙媒体に引っ張られていると。

【倉田委員】  引っ張られているように読めてしまうんですけど。

【有川主査】  そっちがほとんどメーンなんだけど、ほかもちょっとぐらい考えなさいというような感じに。

【倉田委員】  考えなさいというふうに読めてしまうということです。

【有川主査】  そうですね。

【倉田委員】  こっちがあくまでも中心で、それにプラスアルファ考えたらどうですか的にしかちょっと読めなかったということです。

【有川主査】  そうすると、「紙媒体の直接出版費以外にも」という、そのところをただ取ればいいんでしょうか。

【倉田委員】  ただ、そこは……。

【有川主査】  残しておきたい。

【倉田委員】  残しておいたほうが、その経緯がわかるということであるならば、「従来の」とかを入れていただければいいと思いますけれども。

【有川主査】  「紙媒体」の前に。

【倉田委員】  はい。

【小山内部長】 よろしいでしょうか。

 この件について、問題点の御指摘が6ページの下のほうの丸にございまして、応募対象経費については、紙媒体が前提とされていたため、直接的な出版費が対象となっており、電子化の進展に十分対応できていないという御指摘をいただいておりますので、それに対する提言ということであれば、「紙媒体を前提とすることなく」などという形で、指摘された現状を否定すれば単によろしいわけでございまして。

【有川主査】  そうすると、土屋先生が御指摘のことは、6ページの一番下のところに一応書いてあると考えられるので。

【土屋委員】  まずそこが前提となって、7番で改善という。

【有川主査】  7番のほうは、もう一回それを繰り返す必要があるかということですね。

【土屋委員】  そういう意味では、一応、紙媒体の直接出版費以外を考えたらというふうに考えたということは、そのままでいいんじゃないかなという気はしたんですけれども。

【有川主査】  では、「従来の」ということを入れるということにしましょう。

 ほかに何かありますか。

【倉田委員】  あと、19ページなんですけれども、bの一番上のところの、NII:GeNii、JST:J-GLOBAL、NDL:国立国会図書館サーチとあって、そうすると、その整備にあたってはという第2段落は、この三つのことを指していると考えられるんですけれども、その場合の、「幅広いコンテンツの充実に努めている」というのは、これはこういう検索サイトが対象範囲を広げているという意味ですか。よく意味がわかりませんでした。検索サイトにおいて、利用者が異なり、利用者の利便性を配慮して、インターフェースを変えるということならわかるんですけれども、幅広いコンテンツの充実に努めているという話とどうつながるのかがよくわからないんですけれども。

【長澤学術基盤整備室長】  これは各機関が行っているという意味で書いてあります。

【倉田委員】  何をですか。

【長澤学術基盤整備室長】  各機関がそれぞれの設置目的に従って、それぞれで情報提供する上でのコンテンツというものは、いろんな情報を検索サイトに載せるということで、充実を図りながら、それを検索する機能を充実させて行っているんですけれども、情報についてかぶっているところについては共用するとか、そういうイメージで、幅広い適切な情報提供に努めているというふうな書きぶりで考えておりますので。

【倉田委員】  それは、おっしゃっていることが二つですよね。それぞれの機関が、それぞれ提供すべきコンテンツの内容を充実させているという話と、検索サイト及び検索機能を充実させているという話は、別の話ではないのですか。その二つを一つの文の中でおっしゃっていて、しかも、上のところでは検索だけの話をしていらっしゃるのに、次でどうして提供する情報の全文の話が出てくるんですか。

【土屋委員】  全文?

【倉田委員】  コンテンツって、そういう意味ではなくて、やっぱりメタデータなんですか。

【土屋委員】  この人たちは、コンテンツというと、メタデータしか指さないという伝統があったんじゃなかったでしたっけ。

【倉田委員】  そういうことですか。

【長澤学術基盤整備室長】  そういうことです。ですので、そういうふうな、情報を充実させる上で、内容がかぶってくるということです。そのかぶってきたところについては、相互で流通させながら、効率的に取り組んでおられるので、無駄はないというふうなイメージで書いているということです。

【倉田委員】  それであるならば、メタデータを全部コンテンツに直すべきではないんですか。

【有川主査】  ここの幅広いコンテンツというのは、メタデータではないんじゃないですか。

【長澤学術基盤整備室長】  メタデータだけではないという感じです。

【有川主査】  メタデータは、ここでは意識せずにおいたほうがいいのかなと思いますが。

【土屋委員】  いや、これは検索サイトですから、どこも全文検索はほとんどやっていないので。

【有川主査】  そうですね。

【土屋委員】  検索対象になっているのは、メタデータだけだと思いますが。

【長澤学術基盤整備室長】  前半部分は検索だけをイメージして書いているわけではないので、コンテンツの充実という、そこに少し乖離があるのかもしれません。これは、いろんな情報を集めて、それを周知しているということで一応書いてあるということです。

【土屋委員】  ただ、これでともかくそれぞれが一生懸命頑張って、さらに共通に利用できるように連携を進めていくというと、結局、最終的には同じものが三つできるんじゃないという印象を持たれがちです。それは何となく嫌だなと思います。主な対象として想定している利用者が異なることから、やっぱり分業ということをイメージするわけですよね。それが、幅広いコンテンツの充実にどんどん努め、しかも、相互連携も図ってということになると、どこでも同じものが検索できるんじゃないのということになったら、次には、何で三つもあるのという話になるわけです。

【長澤学術基盤整備室長】  そこまでは考えていないんですけれども、やっぱりそれぞれの機関の、それぞれの目的事業というのは概ねこういうことでということを事前に書いた上で、それぞれが努力されているということを言いたかっただけなんですけど。

【土屋委員】  意図はわかります。

【有川主査】  これは統合検索みたいなことを言っているわけですから、そういうふうなことだとわかるようにしていたほうがいいですね。三つもある必要はないから、どこか一つでやれというように持っていかれたら困りますね。

 どうしましょうか。コンテンツが少し邪魔しているのと、それから、ここで幅広いというのも、またほかのことを考えてしまいます。三つのものがそれぞれやっているわけですから、それぞれがコンテンツの充実に努めている。そのコンテンツがまずければ……。

【土屋委員】  大変作文的な点だけで申し上げて。まずコンテンツの話はもうやめてしまって、要するに、利用者が異なる、それから、ニーズ、利便性ということだから、普通は機能の充実なんだと思うんです。

【倉田委員】  私もそういうふうに思います。

【有川主査】  機能の充実でいいですね。

【倉田委員】  はい。

【土屋委員】  それぞれ異なる利用者に応じた機能をやるけれども。

【有川主査】  それぞれの機能の充実に努めているが。

【土屋委員】  ええ。かつ、ただし、重複がある場合にはお互いに協力しなさいという言い方になっているので、インパクトは弱いにしても、うそではないという感じがします。

【有川主査】  これは、ニーズが重複するものですね。

【土屋委員】  ニーズ。

【有川主査】  論文が重複しているのではなく、ニーズが重複する。

【土屋委員】  ニーズが重複しています、はい。

【有川主査】  この関心で調べたところ、JSTとNII両方に違う論文がある、という感じですよね。

【倉田委員】  というか、違うものではなくて、単に同じメタデータがあるというだけの話なので、別に重複していること自体は何の問題もなくて、ただ、メタデータを作成するところの作業が重複すると煩わしいから、それは両方で流用しましょうというか、共有しましょうという話なのかと思って読んでいると、ちょっと違和感があるので。ニーズが重複するわけでもないし、単に論文情報等の必要なメタデータは、お互いに共通利用できるように連携を進める。それはあって当たり前の話、むしろ当たり前の話で、その話と、各機関がそれぞれなさっている――このGeNiiも、J-GLOBALも、国立国会図書館サーチも、かなりやっているものが違うので、それを別にここであわせてやらなくても、ここで検索サイトの話に狭めちゃうので、話が余計わかりにくくなってしまっていて、検索サイトは検索サイトで、もちろん機能の充実に努めていただかなくては困るし、それぞれ想定する利用者にとって使いやすい形にもっと機能をアップしていっていただきたい。そのことと、使っているメタデータを統合的に共有していきましょうという話は、それは基礎的な話とサービスや機能の充実という話で、私は別のものだと思うんですね。そこを一遍に一つの文章で言おうとされているので、話がどっちを言っているのかがわからない。

【長澤学術基盤整備室長】  これは先ほども話にありました、そういった検索機能が重複して、一つでいいんじゃないかと言われるところを、そうではなくて、やはりそれぞれのミッションがあってやっていて、そういったそれぞれの統合検索機能を有するということは意義がありますということを言いたい。その上で、データとして両方必要な部分については、それぞれでつくって、重複して作業しているのではなくて、つくったものを共有して、効率的にしているということを言いたいという、ただそれだけの記述にしているということであります。

【有川主査】  大体趣旨はわかりました。ここのところは、NII、JST、NDL、JSPS等の連携協力について書いているところですので、連携できるところは連携して、しかも相補的にやっていて、重複ということはない。それで、検索のときに違うものがあっても、それは連携してやれるようになっているということですので、そこは誤解されないように、きちんと表現していく。

【羽入委員】  倉田先生の御意向に添うかどうかわからないのですが、1文になっているのでわかりにくくなっているのと、「が」と書いてある接続語がわかりにくくしているのかもしれないので、ここの「努めている」というところで一度切って、さらに、「その際、ニーズの重複する」というのを取ってしまして、さらに、「その際、論文情報等については、何々のそれぞれが有するものが相互に利用できるように連携を進めている」というほうが、現状を表現していることになるのではないかとちょっと思いました。

【有川主査】  そうですね。

【羽入委員】  接続詞がわかりにくくしているのではないかという気がするんですが。

【坂内委員】  そうそう、これが言いわけがましいんですよ。

【土屋委員】  書いたこと自体が言いわけがましい。

【有川主査】  ありがとうございます。それですっきりしたような気もしますね。

 「配慮しつつ」のところからいきますと、「それぞれ機能の充実に努めている。」ですね。「その際」、ここは「ニーズの重複する」とか、そういった表現はやめる。

【羽入委員】  それは要らなくて。

【有川主査】  NII、JST、NDLの各機関の有する云々を共通利用できるように連携を進めており、望ましい方向で整備が図られているということで、評価しているわけですから、これでいいのではないでしょうか。ありがとうございます。

 倉田先生、いかがですか。

【倉田委員】  はい。

【有川主査】  まとめるのが少し大変かと思いましたけれど、ありがとうございました。

【土屋委員】  よろしいですか。

 今の19ページで、2点ほどあって、一つは、今の直後のなお書きというのは、確かに、いただいたものよりかなり拡充している部分かなと思うんですが。「従来の検索は」と書いてあるんですけど、「検索は」というのは、どういう検索か書かないと、従来の検索というのは、グーグル、アルタビスタとか、その辺までさかのぼると、十数年前から従来のメタデータ相手の検索なんかする人はもういなくなっちゃっているわけで、何なのかなと。「従来の古典的文献検索は」とかというんだったら、よくわかりますが。一応提案して、御批判いただきたい。

 それから、もう一つ、19ページのすぐ次の次のその他のところですが、図書館の総合目録に関するNIIとNDLの役割分担ということですが、NDL自体は総合目録をつくっていないですよね。あれは単館の所蔵目録でしょう。

【相原課長】  都道府県立図書館の目録情報を集めて、総合目録をつくっています。

【土屋委員】  それは知らないわけではなく、言う前にも考えたんですけれども、この場合、NDLのと言ったときには、普通、NDLの所蔵目録を指すほかはないので。それとも、これは確かに県立と大学の図書館で分担しているから、その話だということをおっしゃりたいわけですか。

【相原課長】  はい。その後者の。

【土屋委員】  後者に関してですか。ならいいです。

【相原課長】  はい。そういう意味で理解しております。

【有川主査】  そうしたら、「なお」のあとの「従来」のところは、簡単な言い方としては、「従来の文献検索は」とやると、相当前の感じがしますよね。そうしましょう。まさにこんな感じだろうと思います。

 ほかにございますか。時間が来ましたが、大体よろしいですか。

【土屋委員】  もう一つだけいいですか。

 用語解説のところで、先ほど、イニシャルを並べた形になっているのは、日本語をくっつけるようにしましたという御説明があったんですが、必ずしも一貫していないような気がしていて、別に僕はどうでもいいという感じはするんですが、もしそういう統一を図られるのであれば、統一されるし、どうでもいいと居直られるのであったら、どうでもよく、軽くこのままでいいかなという気はしましたので、それは御判断いただきたいなと思います。

 それから、もう一つ、インパクトファクターというのについてなんですけれども、これ、結局、ベースになるのは、特定の会社がつくっているデータベースの中での計算なので、この書き方だと非常に中立的なというか、何となく客観的に調べられるような数字になっていると思うんですが。どういう表現をするのかよくわからないんですけれども、トムソン・ロイター社がという名前を出したほうがいいのではないかなという気がするんですけれども、その辺、僕はよくわからないので、倉田先生に御意見を伺えればと思いますが。

【倉田委員】  私も限定したほうがよろしいのではないかと思います。今、数字は忘れてしまいましたけれども、あくまでもトムソンが8,000誌でしたか。

【土屋委員】  もうちょっと増えていますね。

【倉田委員】  今、もうちょっと増えておりますか。その雑誌の範囲の中で計算している話ですので、全文献を対象にやれている話ではないということもありますので、そのほうがよろしいかと思います。

【有川主査】  いかがでしょうか。

 今のところの最後のところの「適切である」というのは言いきってしまうんでしょうか。強く定義してしまっていますが。

【土屋委員】  直接行う指標としては、明らかに不適切だと思います。ジャーナルのクオリティを見るための指標として利用することはよくわかるのですが。

【有川主査】  ですから、ここでは……。

【土屋委員】  用語解説だから、こういうことを、価値的な評価を書くなということでしょうか。それは賛成です。

【有川主査】  インパクトファクターは、目安であると。だから、「ジャーナルを評価する一つの目安である」程度は書いてもいいかもしれません。

【土屋委員】  ですから、「目安として利用されている」と書けばいいと思うんですね。確かに出版社なんかは利用しているので。事実として利用されているということにとどめることにして、適切であるかどうかについては、判断しないほうがいいと思います。

【有川主査】  そうですね。では、ここは修正を。

 山口先生、どうぞ。

【山口委員】  別の件でよろしいですか。

【有川主査】  はい。

【山口委員】  研究成果物のオープンアクセスに向けての取組については、時間をかけて、国際比較の議論を展開してきましたが、その情報がどこにも記載されていないと思います。3ページ目の背景の一番最後の丸ポツの最後のセンテンスで、「特に、公的助成を受けた研究成果についてはオープンアクセス化を図るべきという考えが強くなってきていることを十分認識すべきである」という部分に今までの議論が含まれていると理解してよいのでしょうか。もし可能であれば、ここで、欧米では研究成果のオープンアクセスの義務化や検討が急速に進んでいるという議論、例えば米国のNIHと、英国のリサーチカウンシル、そしてドイツのDFGの国際比較に示されたように、義務化の現状、及び、留意点について、言及するのがよろしいかと思います。

 または、10ページのオープンアクセス化の必要性のところで、最後から3行目に、「研究成果に接することを可能にするオープンアクセス化を進めるべきという考えが世界的な流れになっている」と記載されているので、この部分でその情報を書き込んでもよろしいかと考えますが、いかがでしょうか。

【有川主査】  ここは、土屋先生、いかがですか。

【土屋委員】  山口先生がおっしゃる趣旨はよくわかるんですが、この程度の記述がいいかなという感じがしています。つまり、我々がいろんなところで報道されたものを見る限りでは、確かに強いし、具体的なことはたくさんあるんですけれども、実際には、それに対する反対意見というのも結構あって、それはどちらかというと報道的は弱い感じになっているんですね。だけど、直接聞いてみると、あるいは出版社みたいなものが行なうワシントンでのロビーイングとかという状況を見ると、拮抗していると言わないまでも、お互いにやり合っている状態だと思います。ですから、ここの「強くなっている」とか「世界的な流れである」とかでも、それなりに強過ぎるぐらいの印象なんですが、このぐらいは書いてほしいなという個人的な印象はあります。あえて具体的な例を出したときに、やっぱりそれに対する対抗勢力についての検討がほとんどなされていないという以上は、やっぱりこの程度でとどめざるを得ないのではないかなという印象を持ちます。何か後ろ向きの話で嫌なんですけど。

【山口委員】  例えば、どちらがいい悪いという議論ではなく、欧米の各国では、研究成果のオープンアクセスの義務化や検討の話し合いが行われている、そういう動きが急速に進んでいるという表現はあってもよろしいかと思います。

【土屋委員】  いや、それがこの表現だと思っていたんですけれども。

【山口委員】  それで十分認識されますでしょうか。

【土屋委員】  はい。

【山口委員】  オープンアクセスが国際的に大きな関心を集めているという点が重要かと思います。

【土屋委員】  はい。強くなっていることを十分認識すべきであると。我々が今後議論するにあたっては、こういう欧米の流れは十分認識しておくべきだということで、では、我々がこの作業部会で十分欧米の流れについて認識したかというと、僕はまだ個人的には、意見としては、ある一部の意見は聞いたけれども、全体的な状況は何かということについてのヒアリングとかリサーチをしているわけではないということなので、やはりここまで書ければ十分かなという印象です。

【有川主査】  実際には、図書館の専門家とか、あるいは大学図書館等で、世界的な流れというのはある程度把握はしていると思うのですが、私もこのくらいの書き方にしていたほうがいいと思っています。それは、至るところで、欧米がやっているから日本もやるべきだという考え方でやってきているのですが、こういったところぐらい、日本発で強い流れをつくるというようなことがあってもいいのではないかという思いもあります。そういったこともあるので、このくらいの書き方でいいかと。

 よろしいでしょうか。ほかに何かございますか。

 それでは、今日、貴重な御意見をたくさんいただきましたが、整理をさせていただきまして、先生方へ資料1に朱書きしたものをお届けして、御意見をいただくということにしたいと思います。ありがとうございました。

 進行予定からしますと遅れぎみなので、その後でお諮りをして、御意見をいただきますが、その後の取扱いにつきましては、主査のほうに御一任いただきたいと思います。大きなことがありましたら、当然、乱暴なことはいたしませんが、軽微なことでありましたら、そういうふうにして対応させていただきたいと思います。

 その審議のとりまとめにつきましては、研究環境基盤部会及び学術分科会等の関連会議に報告するということになると思います。

 それでは、二つ目ですが、第50回、4月20日の会合の際に事務局から説明をいたしましたけれども、アカデミッククラウドに関する検討会について7月3日に提言がとりまとめられております。それにつきまして御説明いただきたいと思います。資料は3でございます。

 では、課長のほうからお願いします。

【下間情報課長】  私のほうから御説明申し上げます。

 資料3でございます。参考資料、23ページ、24ページ、25ページといったところに既に御説明しておりますとおり、アカデミッククラウドに関する検討会の設置についての趣旨、あるいは、本委員会の委員でもいらっしゃいます山口委員、あるいは、本日御欠席ですけれども、喜連川委員にも御参画をいただいて、西尾主査の下、有川先生にもアドバイザーとして御参画をいただいたというようなことがございますけれども。内容につきましては、大きくまとめますと、21ページの図があるんですが、先日、とある場で、これで説明したところ十分に意を尽くしませんでしたので、ちょっとお時間をいただきまして、全体を御説明させていただきたいと思います。

 目次をごらんいただきますと、ビッグデータ時代におけるアカデミアの役割ということで、研究開発の推進、その際留意すべき事項、我が国としてのビッグデータの基盤構築に向けてというような、現状認識と課題といったようなことを書かせていただいた上で、文部科学省が推進すべき研究開発課題ということを、同じ事柄でありますけれども、データ科学の高度化に関する研究開発、アカデミッククラウドの構築に向けたシステム研究、それから、ビッグデータの活用モデルの構築、こうした研究開発課題の推進によるイノベーション創出といったようなことを書かせていただいております。

 1ページでございますけれども、ここは、現状は、アカデミッククラウド検討会における検討の経緯といったことを書かせていただいておりまして、既に御案内のとおり、量的にも質的にも、つまり、量が多いだけではなくて、多様なデータというものが爆発的に増大しているというビッグデータの時代が到来しているということでございまして、そういうデータの中には、新たな知識、洞察が埋もれているけれども、現況においては、その多くの情報が整理・構造化されておらず、有効に活用できていないという中で、こうしたビッグデータを効果的・効率的に収集・集約して、確信的な科学的手法により知識発見や新たな価値を創造することの重要性というものが、国際的にも認識をされているということ。データ科学、e-サイエンスというものが、第四の科学的手法として、ビッグデータ時代にも科学の新たな地平を開く方法論として注目されているということでございます。

 2ページでございますけれども、そうした中で、質的・量的に膨大なデータを連携して、高度に処理・活用していくためには、新しい方法論というものが必要であって、これらを研究開発することによって、新たな知の創出等、様々な解決が見込まれるということでございますので、そうしたビッグデータに関して取り組むべき事項を早急に整理していくということが重要な課題である。そこで、本検討会において、「データベース等の連携」「システム環境の構築」「データ科学の高度化に資する研究開発」の3点を検討課題として議論を行って、平成25年度の概算要求に向けた具体的事業を提案いただいたという経緯でございます。

 そうした中で、3ページでございますけれども、ビッグデータ時代におけるアカデミアの役割という中では、アカデミアというのは、研究対象が学際的になっている中で、個々の研究分野で収集した膨大なデータを共有する場がほとんどなく、有効に利活用されているとは必ずしも言えない。各分野の研究者がそれぞれの分野のデータということでは取り組まれているわけですけれども、そうした中で、そういう大きなデータをどう扱うかということが大変大きな課題であるわけでございます。

 そうした中で、下の1.(1)で、データ科学の高度化に関する研究開発の必要性をいうことを書いてございますけれども、アカデミアにおいて蓄積されているデータ量が爆発的に増大する中で、既存のデータ処理技術では対応が困難な場面が現に生じていますし、近い将来にも生じていくということでございます。そうした状況で、様々な研究分野において新たなブレークスルーを起こしていくためにも、データ科学の高度化に関する研究開発を進める必要があるということを書いてございます。

 それから、アカデミッククラウド環境の構築ということで、こうしたビッグデータの利活用を推進するにあたって、データベースの連携を推進し、必要な情報が適切に入手可能なクラウド環境を構築することが望まれるわけでございまして、クラウドというのは、既に民間では一般的な用語でございますけれども、そうした中でも、民間ではそうしたクラウド環境構築が進んでいるのかということになりますと、やはり大学等の研究機関がむしろクラウド環境構築に資するような公共的で多種・多様なデータを持っているという状況もございますので、次世代の社会のクラウド環境の構築に係るテストベッドとしての役割も果たしていけるのではないかというようなことで、アカデミアにおいて、クラウド環境を構築することによって、こういうデータ、情報、研究資料等を容易に利用でき、科学的あるいは社会的に意義のある研究成果を出すことが可能になるという意義を書いてございます。

 また、こうした大学等のクラウド環境を構築していくことが、その他の教育機関の環境にも適用できる可能性を持っているということです。こうしたことについて、複数の大学による検討組織を設けて、大学等の立場から課題を精査した後、国主導での課題解決を遂行するといったことが必要である。また、個人情報の扱い等についても留意が必要である。

 それから、3点目として、ビッグデータ活用モデルの構築ということで、我が国においても研究開発法人、一方において、本日JSTからも御出席ですけれども、5法人の統合といったような状況も一方にございますし、また、大学共同利用機関法人等において、非常に多くの専門データもお持ちになっているわけですけれども、こういう大きなデータを研究開発のために効率化・加速化するためには、研究開発法人等の所有する膨大なデータの掘り起こしを行って、そうした研究に活用できるようなルールも含めて整備を進めていくことが必要となっている。あわせて、そういうモデル構築も必要であるということで、こういうことに取り組んでいく。

 その際、6ページからでございますけれども、推進するにあたって留意すべき事項としましては、やはりこういう分野間連携ということでございます。各分野の研究者がそれぞれこういう大きなデータに取り組まれるわけですけれども、ビッグデータの時代になりますと、そうした中で、やはりそうした分野の研究者と、それから、こういうビッグデータの利活用について知見を大きく貢献できる情報科学技術分野の研究者とが、協業とここで書いてございますけれども、共同活動をさらに進めていくということが重要になっているということでございます。特にここでは、そういう様々な分野の研究者の連携協力ということが書いてございますけれども、アプリケーション側の研究者、それぞれの分野ごとの研究者が、増大するデータに独自で対処できなくなっている中で、情報科学技術分野の専門的知見を必要とする事例は非常に増えている。そういう視点で貢献できるということで、分野間連携を進めていく必要がある。

 また、国際的にも、ここで防災、災害といった例を挙げてございますけれども、世界的にも自然災害が各地で発生しておる中で、我が国は東日本大震災、それから集中豪雨といったような多数の自然災害の被害を受けているところでございます。そうした中で、我が国固有の自然災害に関するビッグデータを活用しながら、我が国が主導して防災・減災のための国際連会を行うことも可能ということでございます。米国との関係で言いますと、米国がこうしたビッグデータの活用を図っていくという中で、我が国としても、こうした災害等に関するビッグデータを活用した研究開発を進める中で、国際連携を図って、様々な貢献をしていくことが可能ではないかということ。

 そうした際に、我が国では情報科学技術分野の人材が、他国に比して不足しているという指摘もございます。現に統計学や機械学習に関する大学レベルでの経験を有している学生というのは非常に少ないというのが現状でございますので、こうした中で、ビッグデータ時代において、統計学、プログラミングや可視化といったデータに高度なスキルを持って、分析結果を新たな知に結びつけられる人材(データサイエンティスト)等、人材の育成も必要になっているということを書かせていただいてございます。

 繰り返しもございますが、10ページ以降が、具体的に文部科学省として進めるべき研究開発課題ということでございまして、一つ目は、データ科学の高度化に関する研究開発という中で、様々なデータを組み合わせて大規模な処理を実行しようとすると、想定外のデータ、正常に分析できないデータというのが大きくなることが多くて、必ずしもビッグデータが有効に活用できていないという現状の中で、ビッグデータの解析を円滑に実行するための確信的な方法論等の研究開発を行うことが必要ということで、データの収集、蓄積・構造化、データ処理・分析、処理結果の可視化・検証、モデリング、情報統合等の各段階における研究開発を推進することの必要性。その際、実際のビッグデータを用いて研究開発を進めるということでございますので、そうした各分野の研究者とこうした情報科学技術分野の研究者とのコラボレーションが大変重要になるわけでございます。

 それから、研究開発を推進するにあたっての重要事項ということで、今申し上げましたように、融合研究体制による研究開発ということで、その際、中核的拠点というものも設けつつ、具体的な研究開発について推進していくということを書いてございます。

 11ページの下段から12ページ、13ページといったところにかけまして、こうした具体的な分野についての課題例といったようなものを書かせていただいておりますが、省略させていただきまして、13ページのビッグデータ利活用のための共通基盤の開発ということでございますけれども、こうした共通基盤技術というものを開発していく意図としましては、ここにそこまでの文言は書いていないんですが、分野ごとにもうこういうのを取り組むという可能性もあるわけですけれども、そこを効率的・効果的に研究開発を加速していくということを考えますと、やはり共通基盤となるような技術の開発ということが有効であると考えるわけでございまして、14ページから15ページにかけまして、先ほど申しましたデータの収集、蓄積・構造化、分析・処理、可視化・検証といった様々な課題に応じた具体的な研究開発事項を挙げているところでございます。

 15ページからが、アカデミッククラウドの構築に向けたシステム研究ということでございまして、先ほどの繰り返しでございますけれども、パブリッククラウドの導入というものが遅れている現状の中で、大学間でクラウド基盤を連携・共有することの必要性ということがございます。こうしたビッグデータということとアカデミッククラウドをつないでいくという考え方でございますけれども、ここに十分文言としては表れていないかもしれませんけれども、検討会における議論といたしましては、やはりデータが大きくなる中で、一人一人の研究者が維持、あるいは、それを活用していけるデータというものが限られているわけでございまして、研究者が維持できなくなる中で、大きなデータというものは、やはり共有資産とならざるを得ないという中で、その共有資産をどういうプラットフォームに乗せるべきかというものを考えたときに、今日的な状況を考えますと、そういうクラウド的な環境をプラットフォームにしていくということにならざるを得ないということで。

 ただし、現状のアカデミック分野でのクラウド環境というものを考えたときに、様々な課題があるということが事実でございますので、アカデミッククラウド環境の構築のあり方については、大学間のクラウド環境の連携、16ページでございますけれども、ビッグデータの管理・運営、教育クラウド構築のあり方、設置形態、対象範囲等について、システム研究を行い、例えばでございますが、以下にあるような具体的事項としてここに挙げさせていただいた、大学間のクラウド環境の連携における各大学の情報セキュリティポリシー等の関係でございますとか、データの取扱いに関するルール、それから、研究環境におけるビッグデータの管理・運営として、大規模な解析データ等について、効率的な蓄積・管理・運用を実現するための検討でございますとか、データの標準化と共有化をはかるためのあり方、永続的な保存、あるいは分散的にビッグデータを扱うためのシステムのあり方。さらに、教育クラウドの構築等の関係では、学生のポートフォリオの管理・活用のあり方の検討でございますとか、人文社会学分野まで含めたシステムを活用できるような設計のあり方、それから、商業クラウドサービスがいろいろございますけれども、そうしたものの活用の有無について、メリット・デメリットの整理、それから、教育コンテンツの利用についてのあり方。それから、個人情報の保護等を考慮したシステムといたしましては、やはり大きなデータということに限らず、データに付随する個人情報の保護、セキュリティの確保というのは大変重要なことでございますので、そうした点からの検討、その中でも、特に想定されていなかった複数のデータが結合することで、特定個人のデータが抽出されてしまう可能性等への対策。設置形態としまして、安定的にデータを活用できるような設置形態のあり方といったようなこと、その中で、研究開発法人、あるいは大学共同利用機関法人等が有するプラットフォームとの連携・活用についての検討といったようなこと。あと、対象範囲、システム研究の検討体制、具体的にはフィージビリティスタディということでございますけれども、そういう検討体制、実施計画、その効率的な運用といったようなことがございます。

 それから、こうしたビッグデータを活用する上での活用モデルの構築につきましては、様々な研究開発法人が有しているデータが個別にデータベースとして整備されている中で、そのデータベース間の連携というものが大変重要であるという中で、一方、そうしたデータをオープン化していくという、ここでの御議論もございますけれども、促す必要があるということで、研究開発法人が所有する膨大な専門データの掘り起こしを行い、研究に活用できるよう、ルールを含め整備するということ、また、複数の研究機関が有するデータベース間の連携の推進等が重要であるということで、こうしたビッグデータにつきまして、活用にするにあたっての、20ページでございますけれども、今申し上げたような諸点に留意しつつ、モデル構築を進めていくというようなことになるわけでございます。こうした研究開発課題を、各省連携、産学官連携を進めつつ実施をすることで、様々な課題の解決につなげていくことが可能であるということが、御提言としてまとめられたところでございます。

 今申し上げましたようなことを絵にさせていただいたものが、21ページでございます。

 私のほうからの説明は、以上でございます。よろしくお願いいたします。

【有川主査】  ありがとうございました。

 これはここで議論いただくことではなくて、報告というようなことでございますが、何か御質問などございましたら、簡単なことでもどうぞ。

【小山内部長】 委員ではないのですが、失礼いたします。

 私、日本学術振興会の研究事業部長という肩書きで今日出席させていただいていますが、国際事業部も含めまして、ビッグデータに関して一番海外から誘いがあるのが、アメリカではSSRCであり、イギリスで言うとESRCなんですね。それはやはり21世紀に入ってから、ビッグデータの存在というものが、特に社会学で、社会科学者のメソドロジーというものをもう根本的に変えてしまったと。それは英米では非常に大きなイシューになっているんですけれども、残念ながら、日本ではこれをそれほど大きく騒がれていないのは、おそらく、想像するに、日本の先生方の英語による発信が少ないとか、国際共同研究が少ない、もしくは、ニーズが少ないのかもしれない。もちろん、社会科学は社会がスポンサーでございますので、そういう意味では、ニーズが少ないのかもしれませんけれども、そこにほんとうに乗り遅れちゃっていいのかという、そこが疑問はございます。

 すみません、余計なことでございました。

【有川主査】  ありがとうございました。

 そういう認識は、しっかりこのことを意識している先生方にはあると思っておりますが、非常に大事な点だと思います。おそらく、ここで必ずしもきちんと表現されていないかもしれませんけれども、あるいは、第四の科学のような言い方があったと思いますが、それも含めて、方法論といいますか、ある意味での哲学が変わってくるんだと思います。オーバーに言いますと、今まで全く直面していない時代に入ってきているというぐらいの認識を持っていないといけないのだろうと思っています。

 例えば、科学哲学や科学史というと、昔のことを見ながら、それとのアナロジーでもって、こうすべきだというようなことが主に日本で言われるのですが、そういったことをやるにしても、お手本になるようなものが過去に存在しないという状況にあるのではないかというぐらいに考えて取り組まなければいけないのではないかと、私自身は感じています。

【土屋委員】  ただ、例えば東京大学の社会科学研究所が、個票データを含めて集約して提供しているとかという例もあり、また、全然目立たないかもしれないんですが、英文ジャーナルもあるようなので、それなりに出てはいるのではないかと思います。もちろん、その辺が確かに、向こうから拝見していて、やや表現が弱いかなというふうに思った点です。

 同時に、例えば5ページのところで、個人情報の扱いについて方向性を打ち出せる立場にあることからということですね。ある意味では、社会科学調査における個票データをどう扱っていくかという問題は、かねてから大きな問題として、学術会議なんかでも取り上げていましたし、いろいろなところで問題になっていると思うんですけれども。これに対して、研究利用が、個人情報の扱いに方向性を打ち出せる立場というのは、個人情報の保護という観点から言うと、こう言われてしまうのもやや怖いなという感じがしました。

 つまり、確かに学術利用における特例・例外というのは、既に法律化されている部分もあって、いいんですが、あんまりそういうところばかりデータサイエンス側で言い募ると、かえって萎縮する危険性もある。個票データを集積して利用可能にしていくというのに、もうちょっとその辺のステークホルダーとのコミュニケーションをとって進めていただきたいなという感じを持ちました。

 そこここに個人情報があり、データに付随する個人情報に係る検討と書いてあるんですが、社会科学的なデータの場合には、データに付随する個人情報ではなくて、データそのものが個人情報である部分がかなり含まれるので、そこはちょっと気をつけていただきたいという印象を持ちましたので。

【坂内委員】  そこは、この議論をするもう前提みたいな話なので、もう必ず出る話で、プライバシー・プリザービング・プロセシングだとか、あるいは匿名化だとか、技術的に可能な方法というのは、それはそれで随分進化をさせていて、この研究課題にもなっているんですけど、言われる懸念があったときに、一人の個人へのというのはなるべく避けるんだけれども、ある集合体の特性というのはとれてしまう。それがいいかどうかというのは、またこれは別の制度の問題だったり、社会の価値観の問題だったり、あるいは、これがビッグデータを扱うことでできるバリューと、そのリスクとのせめぎ合いという。それは大きな課題で、心配しなくても、もうどこへ行ってもこれはでてきます。

【土屋委員】  ですから、絶対みんな言うと思うんです。ただ、報告書に入れたときに、ちょっとあっけらかんとした印象を持っているんですが。

【坂内委員】  あまり細かいことは書かないほうが。

【土屋委員】  いや、ですけど、推進する一方で、何かその技術があって。

【有川主査】  これは別なところへ出たものですので、修正可能なものではないので。

【坂内委員】  目的が我々の立場ではないんじゃないでしょうか。

【土屋委員】  だから、今後の扱いについての要望ということですので。

【坂内委員】  それはそうしてと言われて。

【有川主査】  個人情報のことは、必ず出てきますが、実際には、隠したつもりでやっても、まさにここに出てきている言葉で言いますと、データマイニング的なことをやりますと、大体わかってしまいます。おそらく、これはどうしようもないんです。

【坂内委員】  そこまで言うと、データマイニングの研究者が、もうありとあらゆる手段を使って、個人の情報をどのぐらい破れるのかということを研究していたのが、マイニングの研究自体が、どれだけロバストかという研究にも随分シフトしてきているんですね。でも、言われるように、何も漏れないかというと、それではバリューは出てこないので、基準はもうちょっと大きな形で。

【有川主査】  だから、どこかに置いてあったものは、もう見つかると考えたほうがいいわけです。

【土屋委員】  そう達観できればいいんですよね。

【有川主査】  あまりきれいごとで言っていたのではどうにもならない面があるということは認識しておかなければいけません。このビッグデータという言い方で一番大事なことは、それを何とかしなければいけないというよりも、チャンスとして活用するんだ、いろんなチャンスがそこから生まれてくるんだというポジティブなとられ方が必要だと思います。どこかでも発言させていただきましたが、今までは巨大情報とか、洪水とか爆発、、あるいは航海とか、そういう言い方をしてきました。極めて大きなデータがあって、それに何とか対処しなければいけないというような感じがずっとしてきたと思いますが、ここで初めてポジティブにそれが表現されているのかなというふうに思います。もう一つ、既存の理論や技術等がほとんど使えない世界があるということを認識するということが、いわゆる第四の科学などと言われていることからしますと、大事なことだと思います。

 そういったものが出ているということで、今のようなことは、これに付随して、いろんなところで議論していただきますと、そのうちにどこかで反映されるのだろうと思います。ありがとうございました。

 非常に短期間でありましたが、スタートしたときは、アカデミッククラウドという、少し別な観点から議論をされたのではないかと思うんですけれども、一つの大きな流れを短時間にとらえて、方向を出していただいたと思います。ありがとうございます。

 それでは、今後の進め方でございますけれども、私たち、この第6期の学術情報基盤作業部会の任期は、来年の1月末ということになっております。今日議論していただいたものは、今日の御意見をもとにしまして近日中にまとめられるわけですが、その後のことについて、どうするかということでございます。我々は基本的にはコンピュータネットワーク、それから、今日、最初にやりましたような学術情報の発信・流通、それから、図書館という、主に三つのことを対象にしてやってきた経緯がございます。それは何巡かしていると思いますけれども、印象としましては、一回りしたときに、必ず前よりは進んでいて、新たな議論が必要になってきている。それは当然と言えば当然ですけれども、そのくらい進展の早いところであり、図書館などは、古典的と言いながら、大きく変わってきた面があると思います。そうしたことに対応してこられたのではないかと思っております。

 今後の進め方につきまして、長澤室長のほうから御説明いただいて、議論していきたいと思います。お願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  まず、参考となるようなイメージで、資料4をごらんいただければと思います。今後の検討事項についての案というペーパーを掲げさせていただいています。

 二つほど論点としてあるのではないかと思っておりますけれども、図書館の関係では、やはり最近、図書館の機能の見直しというのが急速に高まってきておりまして、その背景としましては、知識インフラとしての学術情報基盤というものにあわせまして、特に学生さんが勉強しないとか、学修時間を飛躍的に増加しないといけないとか、それから、能動的な学習ということでアクティブ・ラーニングの重要性とか、そういったものが中教審とか大学改革実行プラン等でも強調されておりまして、特に自発的学習の場としては、図書館の機能というものを見直す。特にその中で、ラーニング・コモンズとか、そういうふうな動きをふまえて、より強化していく必要があるのではないかということがありますので、そうすると、22年に図書館の整備について審議のまとめを出しているわけですけれども、そのフォローアップというものも兼ねまして、こういった機能強化に対して、この部会として実施すべき点とか、留意すべき点とか、何らかのメッセージが考えられるのではないか。事例としましては、先ほど申し上げましたラーニング・コモンズ等の学修支援環境の充実とか展開について、どのようにしていくべきかとか、先行している事例もあると思いますけれども、そういったものもふまえて対応を考えることができるのではないか。

 それから、やはり財政状況も厳しい中で、こういった機能の強化という観点からしますと、遅れていると言われていますコンテンツの電子化とか、シェアードプリントとかというような状況の中で、こういった増加する学術情報、特に冊子体等ございますけれども、効率的・効果的な保存・流通の促進についての考え方を何らか議論できるのではないか。

 また、情報の流通のコンテンツの中身、それから、その流通形態、様々な内容が多様化しておりますけれども、こういった状況の中で、図書館としては、どういうふうに対応していくべきか。そういったものを利活用する上での取組について、何らかの考え方が議論できるのではないかということが一応例示でございます。

 それから、もう一つは、ネットワーク関係ということで、先ほどのアカデミッククラウド環境につきまして、これからどういった技術開発かということは、例えば、情報科学技術委員会等で具体的なプロジェクトが立ち上がるんだと思っておりますけれども、そういったものをふまえますと、それを支える基盤的な観点で、ネットワークをどうするかとか、環境をどう整備していくかというふうなこととか、それから、こういった膨大なデータを流通させる上で、どういった保管形態がいいか、先ほどのセキュリティの確保とか、認証基盤とか、そういった基盤を整備する上でのハード面での課題とか、それから、特にソフト的な面におきましては、教育的なアカデミッククラウド環境ということになりますと、おそらく、重要な側面という形の議論も実際検討会でもありましたけれども、具体的には、やはり社会貢献という形の先進的な部分が中心となると思われますけれども、そういったことだけではなくて、知識インフラ等も意識しまして、教育面でこういったアカデミッククラウド環境を利活用する上で、どういったものがあるかというのは、この作業部会でも考えられるのではないか。特に、一例としては、e-ラーニングのシステムにおきましてのコンテンツとかの共用を図る上で、いろいろ取り組んでいく、標準化とか、いろんな動きがあるのではないかということも聞いておりますので、様々なそういった利活用のあり方について、御意見を伺えればいいのではないかというふうなことを考えて、一応イメージづくりのために資料を提供させていただきました。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 それでは、御意見などをいただきたいと思います。これは、今後何を議論していくかということでございます。二つありますけれども、ここで私が申し上げました一つが、情報の流通・発信というのがありますが、それはまさに今やったところですので、それ以外のところで、残りの二つが書いてあるという見方でいいかと思います。

 論点1も2もそうだと思いますが、特に論点1のところで、学術情報基盤ということで図書館を位置付けていまして、そういう意味では、全体としては研究のためのというようなことで議論していただくことになっているので、文科省の中では振興局でやっているということもあるのですが、学習ということで言いますと、高等教育局のことになります。この点、特に図書館などは、その境目がなくて、実は少なくとも十数年前までは、大学図書館というのは、学習する場所ではないというような認識があったと思いますが、明らかにかなり変わってきています。

 学習そのものも、昔と変わってきたというようなところがありますし、ある意味では、そういったことを図書館が誘導、先導してきたような面もあろうかと私自身は思っております。ここでは先ほどラーニング・コモンズという言い方をされたと思いますが、そういったような仕掛けが非常に多くのところで導入されています。ここにいらっしゃる土屋先生の前任の千葉大学では、アカデミックリンクと言っていたと思うんですけれども、新しい仕掛けがつくってあって、聞くところによりますと、1日のそこへの入館者が3,000人だということで、千葉大学の学生数から考えますと、すごいものだと思います。学生たちのいわゆる大学生活の中にすっかり定着された格好になっているという気がいたします。

 私どものところでも苦肉の策でやったものが大正解だったというようなこともありまして、いろんなことがわかってきます。学生があまり勉強しない、あるいは勉強嫌いなんじゃないかと言われたりもしていましたが、意外にそういった空間に出かけていって、みんなと議論しながらやるというようなことはやっていまして、これは昔と明らかに違ってきたことではないかと思います。

 学習時間の確保なども含めまして、学生から見たら学習ですが、先生から見ると教育のための装置、あるいはスペース、空間というようなことで大学図書館を考えてみるということが、研究振興局マターではないのかもしれないけれども、そこは少し越境して考えてみなければいけないことなのではないかと思います。そうしておいて、文科省でしたら高等教育局のほうに提言を差し上げる、あるいは、委員会でしたら中教審等に提言を差し上げるというようなことをしていってもいいのではないかと思うところであります。

 そして、もう一つ出てきたのは、これも書いていただいておりますけれども、図書館のほうが、教材開発や、あるいは、先ほど議論しました機関リポジトリなどもそうですが、そういったものをただ買ってきて置いておくだけではなくて、それをきちんと編集したりして使えるようにするというような、新たな段階に来ているわけです。機関リポジトリは論文ということからしますと、研究ということですけれども、教材というような感じでいうと、今度はすぐに学生の学習であったり、教育になったりするわけです。ですから、一つの大事なキーワードとしては、教育あるいは学習機能という面での図書館ということを一回深く議論しておいたらどうかという気もしております。

どなたかございますでしょうか。

【土屋委員】  よろしいですか。

 一つは、有川先生と全く同じ感想で、要するに、ちょっと前であれば、研究振興局の中なので、図書館なり、それ以外の教育的機能、学習支援機能というものについての議論は何となく抑制、自己規制していたようなところがあるのに対して、やっぱり現在の大学の関係というのを見たときに、こういう問題が論点案として出てくるようになったということについては、大変喜ばしく存じます。

 その上で、論点は2点挙げてあるんですけれども、これはどちらかに決めるという形で、どちらかとおっしゃっているのか、まあこんな感じということでおっしゃっているのか、それをちょっと伺いたいんですが。

【長澤学術基盤整備室長】  特にまとめをしないといけないというわけではございませんし、あと二、三回しかございませんので、その中でどういったことを中心にすべきかということで、今日はざっくばらんな意見交換をしていただければと思っているんですけれども、概ねイメージとしましては、おそらく2番目のところは、多分、次期の作業部会で取り組んでいくべきことにつながっていくのではないかと。そうしますと、図書館関係の最近の動きを含めてやっていただくほうがいいのかなというふうに、事務局としては考えてはおりますけれども。

【土屋委員】  多分、まとめると言うとおかしいですが、この期を収束させるためにいいと思うんですが。ただ、ある意味では、図書館での取組って、結構既にいろんなところで紹介されるように、実物があって、お話を聞くと、立派だなということになってしまうなと思うんですが。でも、実際に見ていると、下の、いわば図書館のほうでいろんなことをやっても、そのインフラになる部分のところが非常に不安がある。例えば、認証なんていうのを考えたときも、これだけ一生懸命学認の普及に努めつつも、十分に普及しているとは言えない状況があるとか。でも、何でそうなのかという問題も当然あるし、実際、何十大学からの教育コンテンツ共用コンソーシアムがあったとしても、実際、学認はたしかあそこでも使っていないと思うということがあって、大きい大学よりも中小規模、特に教育ということになると、やっぱり中小規模の大学の役割って非常に重要だと思うんですが、そこのところのインフラの部分というのが実は見切れていないと。

 実際、この作業部会での過去での検討でも、SINET全体とか旧大計センターとかという規模のものについては結構検討を加えてきたと思うんですけれども、中小規模の大学における情報インフラ、それは特に大学の目的からして、教育に対する貢献というのが期待されるようなインフラというのがどういうものであって、実際どういう試みがあって、どういう問題があるのかということについて、あまり見ていなかったような気がするので、図書館は比較的いろんな取組があるんですが、それを支える部分についてどういう問題があるのかというのは、早目に出したほうがいいような気がするので、1と2の間辺りのテーマ設定をしていただくのが、次の期に対して意味があるんじゃないかなという気がします。

【有川主査】  ありがとうございます。

 そういう意味では、今日の審議のまとめなどは、かなり大きなことをやったことになっていると思います。ですから、残った期間で1と2の間ぐらいのことで、何かまとめを出すというよりも、方向性を見極めておく、あるいは、少しフリーにディスカッションしていくということを、必要に応じて、専門の方にもおいでいただいて、お話を聞きながらやっていくというようなやり方があるのではないでしょうか。

【美濃科学官】  教育の環境という意味では、ほんとうに今まであまり議論されていないんですね。図書館もすごく重要なんですが、本来は大学全体として、教育を支えるインフラをどうつくるのかというような議論の中で、図書館を位置付けて、全体としてどういうふうにするかというような議論が必要なんですが、それをできるところが全然なかったんです。大学のインフラにおいては、やっぱり教育と研究というのが両輪です。その両方を考えてインフラをつくらなければいけないのに、ちょっと研究に寄り過ぎていたようなところがあるので、ぜひこの部会で、やっていただきたいと思います。図書館に絞る必要はないんですけれども、時期の問題があれば、絞っていただいてもいいのですが、ぜひそういう議論を進めていっていただきたいと思います。

【有川主査】  実際には、研究をやるということは、非常に大きなプロジェクトでもそうですけれども、その中で必ず大学院学生や、あるいは若手の人材育成というのは必ず必要なわけですよね。そのこととまさに不即不離で、切り離すことはできません。

 そういうことで、かなり越境することになるかもしれませんけれども、学術情報という中に、教育も……。

【土屋委員】  大事です。

【有川主査】  高等教育局や中教審といったところで議論がされればいいと思いますが、今までそういった議論はされていないですよね。やるとすると、我々の学術情報基盤作業部会で、いわゆる研究とのつながりや、インフラなど、いろいろなことについて、既にかなりの経験と知識を持っていますので、少し議論させていただいて、向こうのほうに、少し差し出がましいかもしれないけど、提言をさせていただくというようなことでもいいのではないのかと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

【森本大臣官房審議官】  まさに、いわゆる中教審の議論の前に、やはりある程度腹ごなしをして、技術的にこういうふうにやればできるとか、あるいは現状はこうなっているとか、そういう整理がどうしても必要だと思います。それを中教審のほうに提言をしたり、投げかけるというようなプロセスをふめれば、我々の作業も非常に実のあるものになるかなと思います。

【有川主査】  どうぞ。

【松浦委員】  図書館長をやっていたときに気がついたことなんですが、最近、大学は国際化ということになって、留学生が増えましたですね。最も多いのは中国、次が韓国というような感じになってきたときに、大学図書館はその領域の資料をほとんど持っていないということに気がつきました。データベース系というのは基本的に英語になってきていて、英語を通じて中国の情報は入るけれども、それを原語を使ってやろうと思ったら、かなり大がかりなデータベースを買わなければいけないと。それは、国際化をするときに、多言語の資料をどうやって共有するかという問題は非常にあって、特にASEAN系の人たちがたくさん来たときに、あの辺りのデータってほとんどないんです。しかも、それを国際化の中で、いろんな留学生がいて、日本人の学生が交流するとなると、そういう情報をどうやって提供するかということになりまして、その間には、場合によっては、英語への翻訳問題も含めて考えると、学術情報基盤の多言語の面からのアプローチをもう一回考えないと、実は図書館の持っているデータは非常に偏ってきていると。

 私は法学部なのでが、名古屋の法学部は昔からロシア法の研究をずっとやっていたんです。ロシア語のものは、社会市民権のデータの基本のところはかなりロシア語で書いてあって、そういったものをちゃんと持っていないと、一次資料にいけない。それを考えると、この辺の話のときに、やはり国際化と図書館、国際的な教育、研究をしながら大学が変わるという面を見ると、その辺りの視点も入れていただけるとどうかなと思います。

【有川主査】  これは研究にも深く関係があるわけですね。

 山口先生、どうぞ。

【山口委員】  アカデミッククラウドの検討会に出席した際に、大学の質を向上し競争力をつけるときに、やはり教育の質の向上というのが重要で、それを情報基盤を通じて外にも発信していき、優秀な留学生、日本人学生を惹きつけることで、人材育成を進めてく必要があるという議論がなされました。先ほどの資料にもあったように、教育クラウドの構築のあり方については、教育コンテンツのライセンシングや、大学間の単位互換のあり方に関する議論も展開されていました。その議論も含めて、教育と研究を切り離すのではなく、大学の質の向上、日本全体の大学の教育の質の向上という点に、情報基盤がどの様に効果的に貢献できるかというのは、今後、重要なポイントになると感じました。

【有川主査】  先ほどのビッグデータ時代におけるアカデミアの挑戦の中で、教育のことに言及されていたと思いますが、ここでの認識というのは、おそらく教育データというのが、いわゆるビッグデータと言われるぐらいに大きくなるということなのかなと。先ほども少し言いましたが、それをうまく活用することによって、医療では、テーラーメイドということもありますけれども、ああいった格好の、ほんとうに個人に特化したような、非常に目の行き届いた教育が可能になってくるというところへつながっていくのかなと。そういう中で、今おっしゃったような単位の互換とか、そういったこともごく自然に解決していくというようなことだろうと思います。

 単位互換というようなことはここで議論するには少し荷が重過ぎるような感じがいたします。私たちのほうは、技術や基盤など、そういったことで、こういうことが可能になっているというようなことを調べて、提言を差し上げるというようなことではないかと思います。

 たくさんあると思いますが、時間が来てしまいました。おそらく、この1、2、あるいは、その間というようなことや、もう少し教育、あるいは学習というようなところに踏み込みながらやると。

 ただ、一方で、発散してはいけないわけでして、私たちはあくまでも学術情報基盤といいますか、図書館や、学術情報の発信・流通、ネットワーク、コンピュータであったり、そういったようなことを意識しながら、必要に応じて学習や教育にも言及、あるいは提言していくといったスタンスだろうと思います。ありがとうございました。

 繰り返しますけれど、今日やっていただきました学術情報流通・発信に向けた基盤整備の充実に向けてということに関する議論は、今日で一つの区切りでございます。8月2日に予備日を取っておりましたけれども、これは開催する必要がないぐらいに完成度が高くなったと思いますので、開催しないということにいたします。そうしますと、次は10月19日ということで、今議論していただきました今期及び来期に向けた学術情報基盤に関する検討事項について検討していくということになると思います。

 それでは、事務局のほうからお願いします。

【丸山学術基盤整備室長補佐】  本日はどうもありがとうございました。

 まず、本日の議事録でございますが、いつもどおりでございますけれども、各委員に御確認をいただいた上で、主査の了解を得て、公開の手続きをとらせていただきたいと思います。

 次回は、今主査のほうからも御案内がございましたけれども、次回は10月19日の金曜日に開催したいと思います。時間は、本日と同じ午前中、10時から12時。場所は未定でございますけれども、改めて御案内を申し上げたいと思います。

 なお、予備日の8月2日でございますが、こちらは開催をしないという方向で、よろしくお願いしたいと思います。

 それから、それ以降の当面の日程でございますけれども、資料5のとおりになってございますので、日程の確保について御配慮をいただきますよう、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 本日の配付資料につきましては、机上にそのままお残しいただければ、事務局より郵送させていただきます。

 以上でございます。

【有川主査】  どうもありがとうございました。それでは、これで終わります。

 

―― 了 ――

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