研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第50回) 議事録

1.日時

平成24年4月20日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.出席者

委員

有川主査、三宅主査代理、石川委員、倉田委員、田村委員、土屋委員、中村委員、羽入委員、松浦委員、山口委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官、宇陀学術調査官
(事務局)吉田研究振興局長、森本大臣官房審議官(研究振興局担当)、岩本情報課長、長澤学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

【有川主査】  それでは、時間になりましたので、始めたいと思います。

 第50回学術情報基盤作業部会で、今年度初めてでございます。お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

 本日は、前回に引き続きまして、オープンアクセスと機関リポジトリに関する議論の観点等について意見交換を行いたいと思います。

 まず、4月最初ということでございますので、事務局にも異動があっております。それも含めまして、配付資料の確認、それから傍聴登録等につきまして、事務局から報告をお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室長補佐】  おはようございます。

 まず、4月1日付で科学官、学術調査官、事務局に異動がございましたので、御紹介申し上げたいと思います。

 まず、科学官といたしまして、喜連川前科学官の後任として、美濃導彦京都大学教授でございます。

【美濃科学官】  科学官の美濃でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室長補佐】  それから、学術調査官でございますけれども、阿部前学術調査官の後任として、市瀬龍太郎国立情報学研究所准教授でございます。

【市瀬学術調査官】  市瀬でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室長補佐】  次に、学術基盤整備室長でございますが、前任の鈴木が常勤の学術調査官に異動となりまして、その後任として長澤公洋が着任してございます。

【長澤学術基盤整備室長】  長澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室長補佐】  なお、喜連川前科学官でございますが、引き続き議論に御参画を頂きたいということで、今日も御出席をお願いいたしてございます。それから、関連機関の方々にも、引き続き審議に御参加を頂いております。どうぞよろしくお願いいたします。

 配付資料でございますけれども、お手元の資料の議事次第をごらんいただきたいと思います。まず、資料が4種類、資料1から資料4まで、参考資料として、参考1、参考2の2種類を御用意してございます。それから、毎度お手狭でございますが、ドッチファイルにこれまでの資料を整理してございますので、御参照いただければと思います。

 資料名の読み上げについては省略させていただきますが、不備がございましたら、事務局までお申しつけいただきたいと思います。

 最後に、本日の傍聴者が11名、事前の撮影、録画、録音の登録はございません。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 それでは、まず、前回、3月21日の作業部会で、主としてオープンアクセスを中心にして議論をしてきたわけでございますけれども、そこの議論のポイントについて確認をしたいと思います。その後で、前回の作業部会で議論できなかった機関リポジトリに関する検討を行いたいと思います。前回、それも併せて議論する予定だったのですが、オープンアクセスの方に相当な時間を割いて、深い議論をしてしまったものですから、積み残していたという状況にございました。最後に、前回に引き続き、公的助成を受けた研究成果のオープンアクセスについて議論をしたいと思います。

 それでは、事務局から、3月21日の作業部会において議論しましたポイントについて、説明をお願いします。長澤室長。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、御説明させていただきたいと思います。

 まず、資料1をごらんいただきたいと思ってございます。前回の作業部会において、こういった議論があったということを確認していただくためにつくっているペーパーでございます。審議の経過というところでございまして、方向性をまとめたものではないというところは御留意いただければと思ってございます。

 オープンアクセスの基本的な考え方ということでございますけれども、まず、公的な助成を受けた研究成果については、オープンアクセスにすべきだという御意見があったということでございます。

 対象について考えた場合は、公的といいますと、すべてという形になってしまいますけれども、ここでは、とりあえず科研費等の競争的資金を対象として議論するということでございます。

 オープンアクセスの定義でございますけれども、基本的には、論文全体に無料で制限なく利用できるということがオープンアクセスでございますので、英文の論文であれば、英文のまま全文にアクセスできるということが、基本的にそういう定義だということが議論なされているところでございます。

 論文のオープンアクセスへだれが対応するか、どのように対応するかということでございますけれども、著者である研究者の方がオープンアクセス誌への掲載、若しくは公開されるウェブサイト(機関リポジトリ等)への掲載により対応するという形でございます。

 あわせまして、国等が出版社側に対しまして、ジャーナル自体のオープンアクセス化、若しくは掲載論文へのオープンアクセスに対する許諾等を促していくという形があるということでございます。

 機関リポジトリ等のウェブサイトで公開する論文についての方向性でございます。どういったものを対象とするかということでございますが、まず、同じ論文に対して学術情報が複数流通するということは、基本的にはよくないということで、「出版されたジャーナル論文と同じもの」を公開すべきということもありますけれども、その一方で、例えば出版社側と交渉して、機関リポジトリへの掲載が認められたりするのは、「受理された最終原稿」であるという場合が多いということで、NIHで義務づけられているものも「受理された最終原稿」であるということで、いろいろな考え方があるということを踏まえて対応する必要があるのではないかということでございます。

 学協会のジャーナルのオープンアクセス化の意義ということでございますけれども、オープンアクセスを推進しますと、まず、学術誌の電子化が促進されるということで、そういうことを伴えば、学術情報の世界的な発信が強化されて、最終的にはフィードバックされて、日本の学術研究の底上げに大いに寄与するということで、それは望ましい方向性であるということでございます。

 ただ、その場合に、学協会としましては、査読システム等に係る経費というものを論文の購読料等で、多くの経費もかかっているということで、それがオープンアクセスすることによってちゃんとペイできるのかというところも考えないと、学協会としてはなかなか動けないということがございます。

 J-stageに搭載すれば、基本的に学術誌のオープンアクセス化ということになるわけですけれども、現在は約600誌――これは全体で3割程度と聞いておりますけれども――にとどまってございまして、規模の小さい学会が個々にオープンアクセスに対応することは難しいということから、こういったものをよりよいものにしていただいて活用していくことが必要ではないかということでございます。

 最後の方向性でございますけれども、科研費の対象機関は1000件程度あるということでございますけれども、現在、機関リポジトリが構築されているのは220件程度ということで、学術雑誌の電子化を進めることとともに、機関リポジトリの構築をより推奨していくという方向性を国が示してエンカレッジするということが必要ではないかというところまで、前回の議論であったと理解してございます。

 説明は以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。前回、3月21日に議論しましたことを中心におまとめいただいております。前回、御出席でなかった方につきましても、その様子が少し理解していただけたのではないかと思います。

 これについての質疑応答に関しましては、後ほど、機関リポジトリ及びオープンアクセスの検討を行いますので、そちらでやらせていただきたいと思います。

 前回、議論できなかった機関リポジトリによる情報発信に関する議論の観点について、項目ごとに検討を行いまして、その後で、機関リポジトリによる情報発信全体について、まとめて議論をしていきたいと思います。

 今日は、機関リポジトリ関係につきまして、70分から75分ぐらい使いまして、項目ごとに、余り議論が発散しないようにしながら進めて、最後に全体的なことをやるというやり方をしたいと思います。その後で、前回議論しましたオープンアクセスに関して、倉田先生から提案をしていただくことにしております。それに30分ぐらいかけまして、その後で、次回以降の進め方について、お知らせしておきたいと思います。

 それから、この作業部会と情報科学技術委員会との合同会議において議論しましたアカデミッククラウドについて、この時期、極めて大事なコンセプトでございますが、それをどう進めていくかというようなことに関する検討委員会ができております。後ほど、その辺についてのお話もしていただくことになるかと思います。

 それでは、まず、長澤室長から、資料2に基づきまして御説明を頂き、その後で議論していきたいと思います。よろしくお願いします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、若干お時間を頂きまして、御説明をさせていただきたいと思います。

 資料2でございますが、機関リポジトリによる情報発信に関する議論の観点(案)(たたき台)ということで、資料を用意させていただいてございます。これにつきましては、これまでの部会の先生方の御発言等も踏まえつつ、こういう観点があるのではないかということでまとめさせていただいているところでございます。

 まず、機関リポジトリの現状というところでございますが、機関リポジトリ自体には発信環境、研究環境、学習・教育環境という多様な、重要な機能を有しているということでございまして、これを整備すれば、大学の有している知的情報・資料を集積させて長期保存ということで、データセンターとしての機能がある。それから、学術情報を発信、流通するための基盤として活用が期待できる。それから、先生方が持っている学習・教育のための教材とかそういったものの共用とか、そういった基盤を担うことができるという、多様な機能を有しているということでございます。

 第4期科学技術基本計画におきましても、国は、機関リポジトリの構築やオープンアクセスを促進することとされているところでございます。

 これまでは、機関リポジトリにつきましては、各大学等の自発的な努力によりまして構築が行われておりまして、現在約200を超える機関において、整備は進みつつあるところでございますけれども、昨年度からは、より一層の推進を図るということで、NIIの方で共用リポジトリシステムということで、プラットホームのようなものの提供も開始されまして、整備のための素地は整っているという状況でございます。

 しかしながら一方で、具体的な整備に当たりましては、大学等におきましては、図書館を中心に部局とか研究者の協力を得て進められるという状況でございますし、研究者の方々の作業としましては、既に学術誌に掲載されている論文をそのまま機関リポジトリに掲載するということになりますと、二重の負担になるという意識も強くございまして、なかなか個々の研究者の方々のインセンティブは高くはないというような状況にございます。

 このような状況の中で、ただ、機関リポジトリを構築する場合は、コンテンツの充実ということが必要になるわけでございますけれども、研究者のセルフアーカイブ、御自身による登載ということになりますと、それを幅広く収集して充実させるということは困難ではないかと思われるというのが現在の状況でございます。

 このような現状を踏まえまして、これをどのように構築していくかという論点でございますけれども、まず、留意すべき点といたしましては、機関リポジトリが有している意義とか役割というものを一層明確にする。学術情報の集積、下に書いてございますけれども、関係者の理解を促しまして、その充実、機能を定着していくということが重要だということでございます。

 役割としては、簡単にまとめますと、大学の有しているすべての知的資産を一義的に収納して保全する。1か所に集めて保全するという機能があるということ。

 ユーザーの立場からしますと、大学の教育研究資源に対しまして、ここにアクセスすれば、ワンストップでアクセスできて、利活用がまとめて図られるという機能がある。

 大学の教育研究成果を、このリポジトリを通じまして国内外に迅速かつ広範に情報発信するという、これはオープンアクセスということにつながりますので、こういったことが期待できる。

 最後、4つ目でございますけれども、このリポジトリのオープンアクセスによりまして、現在、商業出版社がおおむね独占しております学術論文の流通システムに代替するような機能も期待できるという観点がありますので、非常に重要だということで、各大学、研究者の方の理解を得ていく必要があるのではないかということでございます。

 その上で、こういった事柄につきましては極めて重要であるということを、まず、大学の方で認識していただいて、これは大学の使命、責務的なことでとらえていただいて、自主的、積極的に取り組んでいただかないと機能としての充実が見込めないのではないかということで考えております。

 また、機関リポジトリに登載すべきコンテンツにつきまして、限定する必要はないと思っておりますけれども、一応、統一感のようなものを持っておく必要もあるのではないかという観点で、こういう事例、事項が考えられるのではないかという例示をさせていただいてございます。

 その上で、大学等で、こういった例示を踏まえまして、どういったコンテンツを重点的・網羅的にするかとか、このうちのどれだけをオープンアクセスするかというのは、自主的に判断して整備をしていただくということが望ましいのではないかという論点でございます。

 また、特に学術誌に掲載された論文につきましては、オープンアクセス化を促進するということが必要であると認識し、それで、流通を促進するということが必要だと思われますので、研究者の方々の理解を得た上で、機関リポジトリに登載することによりまして、二重となっても、広く流通させるために積極的に登載していくべきではないかということでございます。

 また、一方で、学術関連のコンテンツに関する教育、研究、様々な情報のツールがございますけれども、そういった取り組みの実施に対しましては、ある意味、重複感とかそういったものも考えながら、機関リポジトリとの連携とか役割分担、統合化についての検討も考えておく必要があるのではないかということをつけ加えさせていただいてございます。

 2番目でございますけれども、この充実・利活用の促進に当たりまして、改善及び留意すべき点というところでまとめさせていただいてございます。

 まず、機関リポジトリを充実させるということで、例えばコンテンツを載せるに当たりまして、学術雑誌の出版社に払う経費等が発生すると、どれぐらいのコストがかかるのかというところでございますけれども、こういった場合には、大学等で、特に競争的資金を受けている場合には、間接経費の充当等も考えられますので、そういったものを使って積極的に充実してほしいという対応ができるのではないかということを上げてございます。

 それから、インセンティブを高めるという観点がやっぱり必要ではないか。義務化という判断もございますけれども、一義的には、こういった重要な取り組みをしているということにつきまして、まず、大学等の組織的な取り組みを評価するという観点を持っていかないと、なかなか自発的な充実ということにはつながっていかないのではないかということ。

 それから、大学等におきましても、コンテンツを登載させる研究者の方々に、取り組みに積極的に注力されている方につきましては、研究者の評価の一環としてそういった観点を加えていただくとかによりまして、インセンティブを高めていくということも必要ではないかということがございます。

 また、もう一方で、研究者の方が登載する上の負担軽減という観点で、もし可能であればということでございますけれども、学術誌に掲載された論文が、出版社側との協議等を行いながら、データ提供を受けて、スムーズにリポジトリに収納されるようなシステムというものが構築できれば、そういった方向性は望ましいのではないかということがございます。

 3ページでございますけれども、機関リポジトリの整備を更に推進するためには、先ほど御説明しましたけれども、NIIで提供していただいた共用リポジトリのシステムの積極的な活用を促して、利用していただくということ、それから、既にいろいろ活用されているリポジトリのソフトウエア、検索機能とかいろいろなものの高度化、それから、リポジトリが電子刊行につながるような取り組みとか、発信機能を強化して、より役に立つようなサービスの充実が必要ではないか。

 それから、ユーザーの立場からしまして、こういったコンテンツに多様なアクセスができるように、内容の充実ということとともに、システムもできるだけ統一化したり、機関リポジトリのネットワークとか国際連携ということで、アクセスをより簡素にして、サービス機能を強化していくという取り組みも重要ではないか。

 最後に、日本語の文献によるニーズ・重要性は当然高いということは十分考えられますけれども、より国際情報流通を促進するという観点からしますと、コンテンツを英語に翻訳するシステムとか、より英語で発信するという取り組みの整備、強化というものも必要ではないかという論点を加えさせていただいたところでございます。

 資料の御説明は以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 先ほど申し上げましたように、70分程度ということで、11時半ぐらいまでを使いまして議論していきたいと思います。全体が大きく2つに分かれていまして、2つ目の方を更に2つに分けておりますが、それぞれについて御意見等を頂きながら、最後に、全般的なことについて意見を頂きたいと思います。

 まず、機関リポジトリの現状ということで、5つほど書いてございますが、これにつきまして、御意見等がございましたらお願いいたします。

【土屋委員】  現状と書いてあるのですけれども、最初の部分は定義ですよね。要するに、現状の部分の何をまとめられているか、実は余りよくわからないというのが率直な印象です。つまり、現在200というのがあるんだけれども、200というのは多いのか、少ないのかというのに関して、既に200達成したという事実があるけれども、まだ200だというのとどっちを言いたいのか、それがその後の展開に結構重要かなという感じがするんだけれども、そこがいま一つはっきりしないなという感じがあって、個人的には、200ぐらいあればいいじゃないかという側面も実はあるわけです。

 つまり、論文をそれなりに出している機関というのはそんなものかなということです。だから、自分でつくるといったら200ぐらいで、これで十分。ある意味で、自分でそれをつくれるところはこんなものかなということで、言ってみれば、これ以上無理して増やすような話ではないんじゃないかという方向性もあります。しかし、いや、でも、700以上ある大学の中の200は、数から見ても少ないだろうという、直観的というか、量的な反応もあると思うので、その辺の現状把握のスタンスがいま一つわからないなという感じがするので、それがはっきりしないのはちょっと気になるというのが1点です。

 それから、研究者のセルフアーカイブに任せるという点について、非常にネガティブな調子になってしまっているわけですけれども、確かにいろいろな形で、十分ではないという事実はあるんですけれども、一方で、国際的に見ると、日本の研究者の方がまじめにやっているかもしれないというのがあるので、その辺は褒めてあげてもいいんじゃないかという感じがするんですね。

 つまり、確かに少ないといえば少ないんだけれども、全体の方向性としてどうしていくかが問題なのです。例えば、義務化といったことを取り入れたところでも全然進んでいないのに比べると、日本の収録率は結構高いという感じもする。もちろんそれは大学によって全然状況は違うので、何とも言えないんですけれども。ですから、研究者のインセンティブが高くないと言ってしまうだけでいいのかどうか。現実には、例えば七、八年前に比べれば、今の方がはるかにインセンティブを持った研究者が増えてきているということもあるので、こういう否定的な断定のような表現でとどめていいかどうかということについては、若干疑問が残るなという感じがします。

 とりあえず感想です。

【有川主査】  大事なことを御指摘いただいたと思います。最初の方の200というのをどう見るかということですけれども、最近では、それぞれの機関が、何らかのホームページをまず100%持っているのではないかと思います。そこで大学の案内やアクティビティーの紹介など、いろいろやっているわけですけれども、そこの大学の先生がお書きになった論文や教材といったところまで踏み込むべきではないのかということを考えますと、いわゆる機関リポジトリが200というのはまだ少ないという見方があると思います。

 ここでは、多い、少ないとは言っていないわけですけれども、七百何十分の200というふうに考えれば、ホームページはお持ちでしょう、それの一環としてやるということも考えられるでしょう、という見方をしますと、非常に少ないものだろうと思います。

 それから、研究者のセルフアーカイブというのはそれぞれの大学でやるとしても、200のところでは、必ずしも組織的にやっているわけではないのですが、研究者の協力を得ながらやっています。論文を書いたり、どこかに出したりするときに、必ずそこに置いておくというように習慣化するとか、研究者もまともな活動をしている人はほとんどの人がホームページを持っているわけですから、その中に置いておく、あるいはアクセスできるようにしておくなど、研究者をうまく位置づけて、そういう活動の中から、全体としてかなりのものになっているという状況をつくっていくのがいいのではないかという気もいたしますが、これをまとめた側からしますといかがでしょうか。

【岩本情報課長】  最初の点につきましては、これまでの議論を振り返ってみると、恐らく機関リポジトリの現状は、先ほど土屋先生は定義とおっしゃられましたけれども、そこで上げられているようなマル1、マル2、マル3というのを本来、実質的に持った機関リポジトリを構築するということになると、やはり研究能力、研究推進力が強い、アクティビティーの高い大学を中心とした対応になってくるのではないかという議論があったんだと思います。

 そういう意味において、そういった大学がどの程度あるのかということを考えるのは、またこれも非常に難しい問題ではございますが、200というのは、それなりに数は出てきているという評価が一般的にはあると認識しておりますが、先ほど主査がおっしゃられたように、これから機関リポジトリにどういうものが期待されていくのかということで考えたときに、それによって、数についてもまた考え方が、いろいろな御議論があろうかと思っております。

 それから、後者につきましては、いわゆるセルフアーカイブということでございますけれども、これも、どの程度大学として、機関リポジトリの運営としまして組織性を持って、一つの戦略といいますか、ビジョンを持ってやられるかという、そこのところで期待の大きさといいますか、セルフアーカイブも非常に重要なことではあるけれども、そういう視点も持っていただくとありがたいのではないかという御意見があるのも事実でございまして、そこを率直にお書きしたということでございます。

 以上でございます。

【有川主査】  そういう点では、研究者のセルフアーカイブ的なところからスタートしているのですが、このぐらいの時期になりますと、例えば、大学によっては、うちの大学のすべての研究者は、きちんとそこに論文は置いてありますというようなことを言う、あるいはそういったところに誘導するようなところも出てくるのではないかと思います。

 松浦先生、どうぞ。

【松浦委員】  さっき土屋委員がおっしゃったこととも重なるのですが、せっかく最初のところに機関リポジトリの定義があるのに、後の検討の部分では、その3つが必ずしもきちんと分けて論じられていません。議論の出発点での現時点では、これでもよいと思うのですが、まとめるときには、やっぱりこの3つの面について、現状はどうなっているか確認することが望ましいと思います。

 以上です。

【有川主査】  ありがとうございます。それは当然やるべきですね。わりとわかりやすい作業だと思いますが。

 田村先生。

【田村委員】  全く同じ意見です。どうしても今回の議論が、学術情報の発信とオープンアクセスというところから機関リポジトリを論じてしまっていますので、そちらの方に重点が行くというのはわかるんですけれども、有川先生がおっしゃっているように、機関リポジトリというのは多分、それをもっと超えて、大学全体のアーカイビングとかそちらの方向に広がってきているし、そこに可能性があるんじゃないかと思うんですね。それが1点。

 それから、マル1、マル2、マル3とは別の切り口で、大学独自にやるか、共用リポジトリにやるかということもあるんだと思うんですけれども、そこのところは今まで論じられてきていないのかなと思います。そこはどう考えればいいのかというのも、私、よくわからないので、できれば論じていただければいいかなと思っています。

【有川主査】  3つ目のところに共用リポジトリというものがありますが、これは試行的にやっているところですけれども、ここもいろいろな考え方が出てくると思います。前回なども少し話題になっていたと思うのですが、ある種のオープンアクセスを義務づけるということを少し考えてみますと、これも関係者がいらっしゃるのですが、いきなりこのようなことを言うのも乱暴な話ですけれども、例えばファンディングエージェンシーがあって、そこで助成しているからということで、終わったときに報告書の提出は求められるわけです。そこの共用リポジトリみたいなところに刻々と研究成果を置いて、いつでも見ることができるというような意味での共用リポジトリみたいなこともあり得るのだろうと思います。

 それから、そういうことと関係なく、NII等がやっていただいているようなものももちろんありますが、今言いましたような側面も、今後は、場合によっては、例えばJSPS、あるいはJSTからお金をもらうのであったら、研究報告じゃなくて、刻々と、論文を出したのであれば、きちんとそれを電子媒体で届けるようにということを言われるようになるかもしれない。そうすると、自動的に共用リポジトリみたいなものができてしまうということはあるだろうと思います。

【土屋委員】  今の共用リポジトリに関してですが、現状認識として、言わなければいけない、指摘しておくべきだと思うのは、NIIの共用リポジトリというものに先立って、既に数年前から各地域で、それぞれの大学が中心になって、その県域の国立大学、私立大学、公立大学を含めた共用リポジトリを独自に構築するといったようなことは実際行われて、かなりの県で成功している。典型的には広島とか、山形とか、結構あるわけですね。

 ですから、それは大学全体の環境からいっても、国立、公立、私立という設置形態を超えた協力関係ができているという意味でも、非常に重要な成果だと思うので、単に国の方で大きなものをぼんと提供するというだけではなくて、大学自身がボトムアップでちゃんとつくってきたという実績もあるということは、現状認識としてやっておかなければいけないかなという感じはします。

【有川主査】  ありがとうございます。他にもたくさんありますね。

 山口先生。

【山口委員】  現状の部分で1点、意見があるのですけれども、2点目で第4期科学技術基本計画のことに言及されていまして、3ページを開きますと、第4期科学技術基本計画の大きなかなめが国際水準の研究環境、それから基盤の整備となっていて、この国際水準というのが、特に機関リポジトリに関してはどういうものなのかというのを、現状のところで整理しておくべきではないかなと思います。

 オープンアクセスに関しては、たしか英国、米国、ドイツの例で比較して、日本がどれだけ、少し遅れているかという議論があったと思うのですが、それと同様に、機関リポジトリについても、国際水準の基盤というのをきちんとした形で共有するために、ある程度の情報が必要なのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

【岩本情報課長】  ここで科学技術基本計画のことを書いたのですが、実は私どもの重要なキーワードを入れ忘れているところがございまして、知識インフラの形成ということ、それが科学技術基本計画できちっと打ち出されております。そういった観点で考えたときに、アカデミックな分野においても、どれほどそういうもので貢献できるのかということで、実際は国立国会図書館なりJST、NIIとか、関係機関がそれぞれそれなりの努力をされております。関係省庁も取り組まれております。

 その中で、アカデミックな分野で知識インフラの形成というものに果たす役割というのは非常に大きく、また、今後、知識インフラの形成、連携活用、そして、それらを処理していく、例えばデータ科学の振興とかそういったものが、一つの大きな科学技術政策上のテーマになると思っておりまして、その中で、今、山口先生がおっしゃったような、国際的に見たときどうか。今、私が申し上げたようなことは大事だという話を申し上げましたが、国際的に見て日本は、国際競争力ということも念頭に置いて、どうなのか、一度見ておく必要があるのではないかと思っております。

 田村先生がおっしゃった、機関リポジトリについては、単純な話だけではなくて、深いものがあるというお話がございましたが、それは、今、私が申し上げたようなことに通ずるのかなと思っております。

 以上でございます。

【有川主査】  それでは、次に議論を少し進めて、最後まで行ってから、最後にもう一度全体の議論をしたいと思います。

 それでは、2.機関リポジトリの構築における論点ということで、最初、機関リポジトリの構築に当たって留意すべき点ということでまとめてありますが、そのところについて、御意見を頂きたいと思います。

 中村先生、どうぞ。

【中村委員】  これは田村委員が最初におっしゃったこととも関係あるんですけれども、タイトルにあるように、機関リポジトリによる情報発信についてのみ議論するんですか。機関リポジトリというのは、機関というのが例えば大学だとすると、大学にとっての意義というのは当然いろいろとありますね。そのうちの我々が見る観点は、情報発信についてのみ 、それでよろしいですか。

 そういう意味では、機関リポジトリの現状の、上の方のところで、学習・教育のための基盤、これは全く無関係である、それでよろしいわけですね。

【有川主査】  一応、機関リポジトリというのはこのようなものだということを押さえた上で、その中で、当面はここでは学術研究、学術情報というようなことで議論するということだろうと思います。

 その議論する中で、以前にも御指摘いただいたように、学習・教育というのもあるでしょう。それから、ほかのこと、機関のいろいろな情報のアーカイブといった側面もあるのだと思いますが、ここでは、主に学術情報の発信とかそういった観点から議論していけばいいのだろうと思います。

【土屋委員】  そのタイトルが非常に気に入らなくて、「機関リポジトリの構築における論点」というんですけれども、要するに構築は、ある意味、200もあるものについて、構築についての論点と言われたって、余計なおせっかいだとしか言いようがないわけですよね。もう既にできているわけです。

 だから、それを今、中村先生おっしゃったように、研究成果の発信という観点から、どう増強するかといったような議論はよくわかる。だけれども、機関リポジトリをこうつくりなさいという話は、どう見たって余計なお世話で、しかも、ここまで言うのも嫌ですけれども、要するに、別にお金をくれたからやったわけじゃなくて、各大学、みんな自分のお金でやってきたわけですね。途中でNIIからの御支援というのがあった部分もありますけれども、基本的には自分が最終的に面倒を見るという覚悟でつくってきたものですから、お金を出さないで、こんな余計なおせっかいな、しかも、何もわからないくせに何を書いているんだというような内容をずらずら並べるというのは、非常識としか思えないですね。

【有川主査】  200は先行しているじゃないかというのもあるのでしょうけれども、先ほどから出ていますように、780分の200で、まだやっていないところがたくさんあるわけです。先行しているところとはちゃんと整合していて、こういった方向ですということをやるというのは、通常のやり方であると思います。

【土屋委員】  ですから、そうであれば、やはり先行してやったところの経験をもう少し整理しておく必要があるだろうと思います。現実に、今までのこちらでやった聞き取りは名古屋大学のケース、個別大学に関して、それしかないと思うので、名古屋大学が機関リポジトリ業界におけるトップランナーかというと、全然そうじゃないので、と言っちゃいけないんですが、実際にはもっとほかにも一生懸命頑張っているところもあるので、その辺のところの状況認識がどうも反映していないなという感じがいたします。

 ですから、それでただ、どこかで読んできたような話を書かれても困るというふうに、多分、僕が言うんじゃなくて、現場で仕事をされる方はおっしゃるに違いないと思います。

【岩本情報課長】  もとより機関リポジトリの数だけを議論するつもりはございません。最初に申し上げたように、実質的に機関リポジトリが世の中に貢献するという観点から論じてまいりますので、そういう意味からしますと、土屋先生のおっしゃったようなことは、時間があれば、本当はそこまでやらなければならない問題だと思っております。

 以上でございます。

【有川主査】  お話しいただいたのは名古屋大学だけでしたけれども、別なところで、ほかの大学の状況というのはかなり知っているという前提があるんだと思います。

 喜連川先生、どうぞ。

【喜連川教授】  卒業できなかった喜連川ですけれども、私は土屋先生ほど怒り心頭には至っていないのですが、先ほど有川先生がおっしゃったような、どんどん論文をプッシュしていくというのは、多くの大きなプロジェクトのようなものですと、ある意味で言うと、当たり前になっていますので、しかも、それが機関をまたがっているものも普通になっていますので、同じコンテンツが重層的にあっちこっちにあるというのが現状ではないかなという気がするのです。

 そういう中で、機関リポジトリというものは一体どういう位置づけにするのかというと、それは機関としての一種の責任行為のようなものとして、自分のところで発信したものはきっちりと自分で管理しなさいという、中村先生がおっしゃられたのは、情報発信のステークホルダーをどこに置くかだと思うんですけれども、研究グループの主体側に置くのか、それとも、組織の運営母体側に置くのかという議論なのかなという気がいたします。

 それは両方とも必要ですが、それよりも何よりも一番必要なのは、先ほど課長からのお話にもありました、いわゆる知識インフラとして、横断検索をどうやるのかというところの方がはるかに重要で、各機関リポジトリがいろいろなフォーマットでおつくりになっていただくのは結構なんだと思うんですけれども、これは学術のところと微妙なところがあるんですけれども、例えばIEEEのエクスプローラーのリコメンデーションエンジンというのは非常にうまく機能していますね。つまり、本来アクセスするものではなくて、そこから示唆されたものへのアクセスというのが、非常にたくさんアクセスされている。それは全然自分のものじゃないものをいっぱいリファーするわけですね。

 つまり、自分の機関じゃないものを見ることをいかに効率的に、あるいはフレキシブルにできるかというのが知識インフラとしての一番大きなファンクションで、自分のところの機関のやつだけを丁寧に見るということよりも、よそのものを見られるということの方が今後重要になってくる。そういうところに対して、機関リポジトリは今後どういうふうに考えていくかというのは、結構大きなポイントではないかなと感じました。

 以上でございます。

【有川主査】  その辺は、大学によっては、他のところにも飛べるようにしてあって、そういう工夫は既になされていると思います。

 ですから、単にそこに論文等を置くだけではなくて、研究者情報システムみたいなものを見ると、その人が書いたものが、機関リポジトリであったり、他のオープンアクセスできるところであったり、あるいは直接コンテンツを見られなくても、そこにアブストラクトを見に行けるというようなやり方というのは、かなり進んできております。

【喜連川教授】  それは多分、グローバルアグリゲーターがやっぱり必要なんですね。今は機関、機関なのですけれども、結局、その解析をしようと思うと、全部を集めたアナリティクスを動かすエンジンをどこかが持つということの方が重要で、これは学術の日本全体の動向をきっちり把握することが、少なくともできるわけですね。

 こういうサービスというのは、各商業出版社が延々とやっていることで、それを我が国に対して適用できる基盤というものも、機関1個1個がやるのと同時に、並行してそういうファンクションを、アグリゲーターとしてセントラライズされたものもつくっておくことが国益にとっては非常に重要なのではないかなという意味で申し上げました。

【有川主査】  そういう意味では、少なくともメタデータなどは、ある程度コントロールされている方がいいだろうと思います。

【土屋委員】  その点に関しては、機関リポジトリの中に入っているものがまだ貧弱であるという状況で、それを見られたからどうなるという議論は早いという人もいますけれども、基本的には多分、NIIが今整備しているJAIROには、メタデータレベルでは機関リポジトリに載っているものは全部入っている状況で、幾つかの分析データも出していると思うんですけれども、その辺を少し安達先生に……。

【安達副所長】  少なくとも日本の機関リポジトリに関するものは、私どものJAIROというサービスですべてクローリングして、各機関リポジトリのフルテキストにメタデータの検索から飛ぶようにしています。同様のリンク付けを、私どもはJSPSの科研の報告書を頂いていますので、科研の成果論文リストで行い、機関リポジトリにある著者版のものに到達するようになっております。

 しかし、そこで努力しても、日本の機関リポジトリ、すなわち日本の研究者の活動を網羅するだけで、喜連川先生がおっしゃったように、世界中のアクティビティーを網羅することにはならず、そのためにはいろいろなアグリゲーターとうまくつながっていかなければできない話になります。

 ただ、現状では、日本の活動についてはそこまでできております。

【喜連川教授】  先ほど項番1のところで約200云々の話があったときも、ちょっと申し上げなかったんですけれども、コンテンツサイドの議論と並行して必ずやる必要があるのは、ユーセージサイドです。ですから、どういうリファーアクセスがあるのかというのを完全にJAIROさんが把握できていればいいんですけれども、多分それは不可能で、これは相当大きな、いわゆる基盤が必要になってきます。

 このデータこそが、実は宝の山になっておりまして、ここから先はいろいろアナリティクスで複雑な部分ですので、ここの議論とは外れるかもしれませんけれども、もっとエンパワーメントする部分というのは、これに加えていっぱいあるのではないかと思います。

【土屋委員】  それに関しても、必ずしも十分とは言えないのですが、利用データの統合といったようなことに関しては、JAIROに今年度か、今年度後半ぐらいからは組み込まれるはずだと聞いています。形の上では、機関別にみんなばらばらにあるので、それぞれのサイトの情報を集めるという形にしかならないんですけれども、一応その統合的な分析はやるということになっているはずです。

【喜連川教授】  相当大変ですね。

【土屋委員】  ええ、相当大変というか、今のところ、まだ40機関ぐらいの分析しかできていないと思いますけれども。

【有川主査】  その辺りは、そういった技術、あるいはシステムの開発というようなことで、この議論から惹起された新しい方向というようなことになるのだろうと思います。

 その辺りをむしろ国でサポートしていただくということだろうと思いますが、先ほど、お金も出さないのにというお話が土屋先生の方からございましたけれども、そういったことは世の中にたくさんあるわけです。例えば教育関係ですと、いろいろなことを言われていますけれども、一々それに対して国がお金を出してサポートしているということではなくて、こういうことが大事だということを議論して方向として出していただくということは、相当意味があるのだと思います。

 お金が出ないのであれば黙っているべきというようなことではないのだろうと思います。

【土屋委員】  ですから、それは最初に申し上げたのと同じ趣旨で、つまり、今まで各大学が努力してやってきたところを、まず評価するところから始めなければいけないだろうということです。別に、お金も出さないなら何も言うなと言っているわけではありません。

【有川主査】  200もの大学が各大学でここまでやってきたから、それを受けて、こういうふうになってきている。だから、評価されているのだということで、余り心配されなくてもいいと思います。

【土屋委員】  いやいや、ただ、ここの書き方は何か、評価しているように思えないという感じがあるので、そこは書き方の問題だということで、よろしくお願いします。

【有川主査】  羽入先生。

【羽入委員】  私も、土屋先生と同じような感想は持ちました。ここでは機関リポジトリというのが必須事項であり、その方向性とか、国の知的財産にとって重要なのかというようなことは説明されていない感じを持ちました。

 したがって、ここの機関リポジトリの構築に当たって留意すべき点を考えるときに、その下のかぎ括弧で、意義・役割というのが書いてありますけれども、例えば先ほど課長がおっしゃった、知識インフラを考えたときに、機関リポジトリがどういう位置づけにあるのかということをある程度明確にしておいた方がよいように思います。国の方針の中で、機関リポジトリがどういう機能を持っていて、特に学術情報発信はその中にどう位置づけられるのかが見えると、担当者には、わかりやすい気がいたしました。

【有川主査】  ありがとうございます。先ほど課長からもございましたけれども、第4期科学技術基本計画の中で、知識インフラというのが入っています。知識インフラで扱おうとしているものというのは、非常に多岐にわたっていまして、研究のために使ったデータなども含めて対象にしていると思います。そういう意味では、そことの絡みで、機関リポジトリというものを考えるというのは大事なことだと思います。

 ほかに何かございますか。松浦先生。

【松浦委員】  機関リポジトリに関する大学の戦略についても分析が必要だと思います。リポジトリが必要だというレベルでは、大学間で一致はあると思われますが、何のために機関リポジトリを活用するのかという部分は、まだ十分明らかにはなっていないと思います。

 特に、先ほど名古屋大学の話が出ましたけれども、情報の蓄積に関するプロジェクトをしようとするときに、図書館が担当するのか、それとも情報基盤センターが担当するのかというような選択があります。図書館に担当を求める場合には、図書館は物を長期的に保管するところだから、適任だというくらいの考慮で決められることが少なくありません。単なる情報の蓄積を超えた方針をもってプロジェクトを進めるには、役員会などできちんと戦略を立てていただかないとうまくいきません。

 そういう観点からしますと、リポジトリが本当に社会的な意義をもつには、これからどうしたらいいのかについての明確な構想が不可欠です。ですから、この会議では、方針が必要だという以上に踏み込んでより具体的な目標を示すことができるような議論をして、それを多くの大学と共有することが重要だと思います。

【有川主査】  そういう意味では、ある種の方向を出していただきますと、大学の方も動きやすくなるだろうと思います。お金と関係なく、こういう方向がありますといったことを出せば、それは大事にしてやるわけです。それから、健全に維持するために、ある種の開発や投資をしなければいけないということが見えてきた段階で、国が出ていけばいいだろうと思います。最初から、お金を出すからやりなさいとやっても、お金がなくなったら必ず終わります。

 そうではなくて、方向のようなものを示していただきますと、それをきっかけにして議論が進んでいくんだろうと思います。

 それから、情報だから情報基盤センターがやるといったことがありますけれども、私は、センター長を経験して、図書館長も経験していますがこれ一回きりのものじゃなくて、ずっとやらなければいけないというようなものは、図書館の人たちが圧倒的に得意です。情報の人は立ち上げるときは非常に元気がいいのですが、定着したら余り関心がない。

【松浦委員】  もちろん継続は力なりということではあるのですが、私が申し上げたいのは、それなりに大学としてのポリシーを持っていなかったら、仕事としての意味は薄れるので、それは明確にしたらどうかというのが1つです。

 もう一つは、図書館長の仕事をしていたときに、これからの大学の図書館が生き残る道の一つは、それぞれの図書館がユニークな情報を持つということだと感じました。データベースの仲介業をやっているだけでは、図書館の意味はどんどん小さくなっていきます。先日、台湾を訪問したときには、台湾統治のときの日本の総督府の持っていた判決は全部、台湾大学が電子データにして公開していることを知りました。それは、台湾大学にしかないユニークな情報として発信できる価値をもっています。

 その種のプロジェクトをするとなれば、ただ一つの図書館が何かするとかというのではなくて、大学や大学の連合がユニークな情報を集めるというようなポリシーがなければ、リポジトリの価値は上がらないと思います。

【有川主査】  まさに大事な点でございまして、その辺りが大学の特色を出すということになるだろうと思います。既にそういった例は、国内の大学でもあると思います。

【土屋委員】  そうすると、今までのお話を伺っていると、要するに、ここまでできてきている機関リポジトリを、今後、日本の知識インフラに対する大学側の貢献の最も重要なツールの一つと位置づけるとかというのがないと、先が進まないという印象を持ったのですが、そんな理解でよろしいですかね。

【有川主査】  そういったことになっていくだろうと思います。そのために、もう少し議論しておいた方がよかろうということだと思います。

【森本大臣官房審議官】  まさに今、土屋先生がおっしゃったとおりで、情報戦略ということを考えたときに、国際的な日本の存在感をますます強化していかなければいけない。情報はツールであり、武器であると思いますので、その知識インフラを活用して世界に対抗していくというときに、ここまで発展してきた機関リポジトリというものを、関係者の御努力のたまものだと思いますけれども、これを更に発展させて、そういう基盤にしていきたいというつもりでございますので、書きぶりにはもちろん気をつけていきたいと思いますけれども、この努力を更に発展させていくという、ある意味で、新しい息吹を吹き込み、そして政策的な位置づけを与えるということではないかと思います。

【有川主査】  ありがとうございます。

 田村先生。

【田村委員】  余り根拠となるデータのない、直観的なお話なので、ややためらわれるところがあるんですけれども、人文社会系を中心とする大学が圧倒的に多い私立大学にとっての機関リポジトリというのは、これまで発行してきた研究紀要類を電子化して発信する、非常に重要なツールになっているということは、できれば取り上げていただければと思います。

 学内的には多分、印刷したり何だりする手間というのが省かれ、経費も節約できて、情報発信がしやすくなったということであり、対外的には、今まで大学が発信する情報の中で、流通の悪かった部分というのが、大変よく見えるようになってくるという効果があるんだと思います。それは間接的には、大学が発信する情報の底上げにもつながる。つまり、余り恥ずかしいものは出せなくなってくるわけですね。そのような効果もあるんじゃないかと思います。

【有川主査】  紀要関係につきましては、2ページの上から2つ目の矢印のところの2番目ぐらいに書いてありまして、当初、機関リポジトリといったときには、理工系の人が飛びつくかなと思ったら、実際そうではなくて、人社系の人たちがものすごくこれに乗ってきました。うちの大学でもそうですけれども、北大もそうでしたね。慶応の場合でも、こういうことを言う前から、スペースリダクションといいますか、そういった意味で電子化をやって、結果的には機関リポジトリの考え方にもなじんでいるだろうと思います。そこは少し、これまでのことを評価するというようなことで書くときも、それから、方向性の重要なものとして、今後書いていけばいいのだろうと思います。

 時間が来てしまいましたので、2つ目に行きますが、「機関リポジトリの充実・利活用の推進に当たって、改善及び留意すべき点」という最後のところですけれども、これはある程度、もう既に議論してきたことになっているかと思いますが、どうぞ。

【土屋委員】  細かい点、数点なのですが、第1の矢印にある2行目のところに、機関リポジトリを活用して発信を行う際、学術雑誌の出版社に支払う経費等が発生する場合ということなのですが、このようなものは、僕が知っているケースとしては、初期には幾つかありましたけれども、現在は、こういう形の経費発生というのはほとんどないと思うので、具体的に何をお考えになっているか、伺いたいと思います。

 それから、3番目の矢印で、2番目、3番目セットなのかもしれないですけれども、大学による情報発信の取り組み、特に評価との絡みということでは、現在の所属先では、大学機関別認証評価というのをやっている中で、昨年度ないし今年度から始まっている、いわゆる第2サイクルの認証評価の中では、教育情報の公表、発信がどのぐらいできているかということについての評価を、基準とか、観点とか、いろいろな言い方をしていますけれども、どの認証評価機関も、評価の重要なポイントに入れるという方向で動いていると思いますので、今更留意しろと言われても、留意済みですということになると思います。確認は必要だと思いますけれども、既にそういう方向で進んでいることは事実です。

 ただ、機関リポジトリという形のものが取り上げられているかどうかは微妙なので、そこは、ここでアンダーラインしていただく必要はあるかなという印象を持ちました。

 それから、2ページ目の最後の矢印のところの、出版元のポリシーに基づいた公開後、データの提供を受けて、スムーズに機関リポジトリ、システムが構築できないかというのは、これは既に幾つかの実験がヨーロッパで行われていて、SWORDと呼ばれるプロトコールも開発されていて、動くということは確認済みなので、あとはやればいいということだと思います。

 とりあえず以上です。

【有川主査】  ありがとうございました。最初のところは、オープンアクセスのことを少し引いてきたかもしれませんね。

 長澤室長。

【長澤学術基盤整備室長】  全文を載せる場合は、やはり買い取らないといけない状況もあるということもございますので、こういった機関リポジトリの……。

【土屋委員】  今、売るところはほとんどないでしょう。

【長澤学術基盤整備室長】  まあ、そういう……。

【土屋委員】  基本的には、買取りでやったのは、2003年か2004年にミシガン大学が、自分の大学の所属研究者の書いている、エルゼビアの論文を全部買い取るという暴挙に出たのですけれども、そのときは、bona fideな利用ということでお金を払って済ませたそうです。

 その後、要するに出版社は、自分のところから出すというのを原則にするということを基本的な考え方としており、基本的にそれでお金を払って買い取ってくれれば、機関リポジトリに載せてくださいというスタイルの交渉をやっているところは、まずないだろうという感じがあります。

【岩本情報課長】  恐らく現況の状態においては、それほど意味のない矢印かもしれません。それで、公的助成を受けたオープンアクセスの議論も先般ございましたけれども、そういう新たな事柄が出てきたときに、大学なり所属機関がこういう形で支援をするという考え方もあり得るのかどうか、それは一つの論点かと思いまして、今後のこととしまして、書かせていただいた。

 そうでない、これはあくまでも論点ですので、構想すべきだということではなくて、上げさせていただいたということでございます。

【有川主査】  評価の方は、土屋先生のおっしゃることは非常に大事なことですが、こういうこともきちんと項目としてあげていただきますと、促進されるのではないかと思います。

 ほかに何かございますか。喜連川先生。

【喜連川教授】  全然関係ない視点なんですが、我が電子情報通信学会は、イミディエートにオープンアクセスをすることを許諾しておりまして、出版した瞬間にフリーにします。しかしながら、ビジネスモデルは全然へこたれない。それはどうしてかといいますと、ICT系は会員のモアザンハーフが原則企業なんですね。そうしますと、企業は今、こんな機関リポジトリみたいなことって、全然やる気がない。そうすると、そこの部分の論文のアクセスというのがやや、ややこしくなっているというのも事実だと思います。

 つまり、学としての機関リポジトリというのはここでの議論の対象ですので、そこから外れてしまうのかもしれないのですけれども、知識インフラのリソースとして見ますと、企業が出した論文というのは結構重要なもので、それをどういうふうに使いこなすかというのが重要になってくるのではないかという視点が1つあります。

 それから、先ほど森本審議官がまさにおっしゃいましたように、結局は、有川先生的には、IT屋さんはつくるだけで、あとは興味ないとおっしゃるのですが、そんなことはないと思うのですが、ITパワーを活用するというときに、やっぱりつくったときの効果というものを、可観測なシステムというものに必ずしておくことが必要だというのが非常に重要で、エクスプローラーの場合は、本当に不思議なぐらいに、無料だった雑誌を有料にまでしてIEEEに入れたにもかかわらず、べらぼうにアクセスレートが増えたので、すごく喜んでおられるという事例がございます。

 これはどうしてかというと、アクセスのメカニズムのレイヤー、つまりITパワーの部分が実は、それも重要だ。つまりコンテンツ、プラス、コンテンツへのリーチャビリティーをサポートするファンクションをいかにつくるか、それがどれぐらいのユーセージなのか、その辺のトータルパッケージをうまくつくっていくということが重要じゃないかと。

【有川主査】  ありがとうございます。私はもう少しポジティブに言ったつもりだったのですが、当然、それも含めて考えなければいけない。

 それから、特に知識インフラを進めていく上で、大学関係は機関リポジトリをやっておけば、知識インフラに対して、少なくともファーストステップは踏み出せるということになると思うのですけれども、企業に対してどうするか。IT分野では企業が半分以上ということですけれども、特に工学関係ですと、他の分野でも同じような状況だろうと思いますので、ここは少し考えなければいけません。

 この場で考えるのか、あるいは、少なくとも言及はしておいて、ある種の方向性、サジェスチョン的なことはやっておくべきではないかと思います。ありがとうございました。

 三宅先生。

【三宅主査代理】  今、ユーセジデータの話が出ましたので、一緒に考えておきたいことがございます。量としてとることはできるだろうと思うのですけれども、これを出すことのメリットとして、研究者が、どんな研究があるか見ているだけではなくて、うまくいけばですけれども、学校の先生とか、学んでいる人たちとか、一般の社会の中で、こういう情報があるなら使えるという方たちがいるはずで、そういう方の使い方をデータとして捉えて活用する、という方向も大切だと思います。これが増えるということになっていくと、認知度だけでなくメリットもものすごく上がると思うんですけれども、多分、置いておくだけでは、そういうところのアクセスというのはそうは伸びてこない。ですが、このメリットを生かす方向での機能が何らかの形で付け加えられると、相乗効果によって使われ方も増えるし、メリットも出てくるので、機関もどんどんやりたくなるというような話があるといいなと思いました。

【土屋委員】  現状において、他人の力に頼っているということでいいのかどうか、わからないですけれども、基本的にはオープンアクセスになっているために、ほとんどのものはGoogleがクロールしているということですので、機関リポジトリのコンテンツは簡単にヒットしてくるというのが現状です。なので、それでいいかというふうに考えるか、もっとエンハンスした機能をどこかで提供すべきかというのは、議論すべき点だろうなというのはあります。

 もう1点ほど、言うかどうか迷って、結局、やっぱり言いたくなってしまったのですけれども、最後の3ページの下の一番最後の矢印は、観光庁による東北観光博サイトの閉鎖事件がつい最近起きたことが想起されます。これは、機械翻訳が信用できなかったということにつきるので、ちょっと冗談に過ぎるのでやめた方がいいのではないかという感じがするのです。

【有川主査】  翻訳のところですね。

 岩本課長、何かございますか。

【岩本情報課長】  まさしくそういう、もっと付加価値をつけていく。それも国内の企業なり、研究機関なり、国として育てていくということが必要かなと。完全にグーグル頼みということではなくて、どのように戦略的に連携していくのかということが必要かと思っています。それはもう少し大きな場で、本日、いろいろな観点からお話がありましたけれども、非常に貴重なお話が多くて、是非ほかの場でも、本格的に議論を一つ一つしていきたいと思っております。

 そして、それは特に知識インフラ、先ほど先生がおっしゃったように、単に研究者の方で使う、学術活動で使うということのみならず、最近は、政策のための科学ということも言われておりまして、ここで出てきた知識インフラについて、社会の側で、もちろんいろいろな関係省庁の政策にも使っていくし、企業とかいろいろなセクターの一つの経営戦略とか、いろいろなものの戦略、事業展開にも活用していくことができると思っていまして、特にアカデミックな世界においては、相当いろいろな情報が、連携させるという収れんの場になりますので、そこがまた、ほかのところも展開していくだろうと思っているものですから、そこは重視していきたいと思っている点でありまして、またいろいろ御指導賜れればと思います。

 以上です。

【有川主査】  それでは、全般的なことで、11時半ぐらいまでの時間を使って、御意見等ございましたらお願いします。先ほど山口先生にも待っていただきましたが、どうぞ。

【山口委員】  先ほどの議論にあった科研費の対象機関は1,000件程度あると思われるが、そのうち約二百数十件しか機関リポジトリを有していない。でも、逆に200機関が機関リポジトリを運営しているという事実は重要で、それを整理して情報発信していくのは大変意味があることだと思います。

 例えば、大学における機関リポジトリの位置づけや、実際、どういうコンテンツが中心になっているか、又は活発にやっているところはどのように促進しているのかというような、整理プラス分析が必要なのではないかと思います。分析をすることによって、フィージブルで、プラクティカルな方向性が出てくるかと思います。

 例えば東工大の場合は、機関リポジトリは大学ウェブのトップページに位置付けられています。OCWと並んで機関リポジトリがあるので、論文及び情報をアップデートするのは必要であるとの理解があると思います。情報センターとしてもそのような位置づけで促進しているので、各大学の中で機関リポジトリをどのように活用・推進しているのかとの情報も含めて、スタディーをする必要があると思います。

【有川主査】  それは、これから調査をかけるということはやっていいのだろうと思います。毎年、情報課の方で組織的な調査をされていますので、そういった中に位置づけるということも、考えられるのだと思います。

【岩本情報課長】  ありがとうございます。まさしくそういう点が、私どもの方では足りないことだと感じておりました。いろいろな政策を今まで私どもやってまいりましたけれども、実際に動かされているところがどういう感覚で、どういうやり方でやられているかというのを、きちんとヒアリングなりを――調査だけではなくて――して、その知恵を生かしていくとか、問題意識を生かしていくということは欠かせないことでありますので、そこまでキャパシティーが伴っていなかったところがございまして、できておりませんでしたが、是非またそこは、この議論にどの程度間に合うかは、ちょっとありますけれども、できるだけ今後はさせていただきたいと思っております。

 それから、土屋先生から予算の話がございましたけれども、予算がないということに関しては、これはむしろ、なぜ機関リポジトリについてこれだけ推進しているのに、予算措置なり、何も考えていないんだというのは、実は昨日、部内で議論していましたときにそう感じまして、おかしいねという話はしておりました。

 ですから、もちろんお金ありきではないと思っているのは当然のことでございまして、財政事情も厳しいことですし、どこまでできるかということはいろいろありますので、有川先生がおっしゃったように、政策論で詰めていった上で、もちろんそういうものも忘れないで、必ず考えていくということはしたいと思っております。

 以上です。

【有川主査】  ありがとうございました。土屋先生に感謝しなければいけないのかもしれません。

 他にございませんか。先ほどの一番最後の矢印のところの翻訳のことに関して、土屋先生から意見がありましたけれども、これなどは、クオリティーの問題はあるのですけれども、どういったことが話題にされているかぐらいのことは、機械翻訳なんかでもかなりわかるようになってきていますよね。

 これは美濃先生がお詳しいだろうと思うのですが。

【美濃科学官】  機械翻訳は、言語分野というか、専門分野の対訳の辞書が必須なのです。これを、京大の石田先生が言語グリッドという形で、世界的に整備しようとされていますので、連携しないといけない。専門用語を勝手に対訳したり、論文を勝手に翻訳すると、多分、著者の先生方は怒ると思うんですね、内容が違うとか、ニュアンスが違うと。

 したがって、検索エンジンにひっかかるようなキーワードレベルの辺だけでも、例えば自動でやるとか、英語のキーワードをつけるとか、そういうのが現実的でないかなと。翻訳まで自動でやるとかなり意味が変わるので、検索というところを重点に置いて、英語でとりあえずひっかかる。アメリカ人は、日本語の論文でもひっかかったら、日本語を翻訳してくれる人間がいるから読めるんだというようなことをよく言うので、とりあえず、まず検索にひっかかるということが大事かなという気がいたします。

【有川主査】  ありがとうございます。

 ほかにございませんか。どうぞ。

【喜連川教授】  2ページ目のマル4の上から2つ目の矢印ですけれども、機関リポジトリに登載すべきコンテンツには、「研究成果報告書、研究データ」と書いてあるんですけれども、研究データというのは、このレベルの取り上げ方ではかわいそうでして、大体、論文とか文字で書いてあるのは、何だかんだいって読めるんですけれども、データだけは読めないんですね。ですから、相当、過去惨たんたる状況が続いてきました。

 最近になりまして、ICSUがWDCからWDSに変えて、日本がそこの事務局をやるというような状況にもなってきましたので、ここは、やるのであればかなり根性が必要です。並大抵のことではないというところで、上げるのであれば、もっとしっかりとお取り上げになられる方がいいかと存じます。

【有川主査】  ここは私も少し感じていたのですが、研究データをどこまで考えるかということですけれども、観測機器から自動的に収集されるようなものというのは、けたたましい量があるわけですね。そういったものも一方でありますので、境目がないと思うんですね。ですから、ここは少し検討する必要があるのかもしれません。機関リポジトリみたいな枠組みじゃなくて、もうちょっと別な、多分、知識インフラの方はそういったことも対象にするという話だったと思うんですけれども、もうちょっと別な組織立った議論が必要なのではないのかなという気がいたします。

 何かございますか。

【土屋委員】  ちょっとだけ。ここに関しては、議論し始めるとすごい長い話になるかと思うんですが、ちゃんと議論していただきたいなということで、例えばもっと表現上、今の「研究データ」を「研究成果報告書」と並べてしまうなんていうのはひどいという話は、たしかにひどいと思います。

 ただ、「教育教材」とかというのは一体、教えるという字が2回出てくるというのは何を考えているのかというので、非常に思いつきで並べただけだと思うので、根拠がないリストになっていると思うので、ここはもう一回、完全に見直していただきたいと思います。

【有川主査】  ここは例示がしてあるわけですので、今みたいな議論が出てくれば、それでいいのだろうと思います。そういう意味では、例えばこの中に、昔のテクニカルレポートみたいなものが入っていた方がいいのだろうと思います。もちろんそういうことで、ここは注意していただきますと、よりいいものになっていくと思います。

 ほかにないようでしたら、御用意いただきました、機関リポジトリによる情報発信に関する議論の観点(案)(たたき台)については、議論していただいたということにしたいと思います。

 今日はもう一つ、冒頭で申し上げましたように、前回議論したことに関係した部分が多いのではないかと思いますけれども、公的助成を受けた研究成果のオープンアクセス等についてということで、倉田先生から提案をしていただいておりますので、まず、倉田先生から10分程度、資料3について御説明を頂きたいと思います。お願いします。

【倉田委員】  これは前回、主として御議論いただいてきた科研費等の競争的資金による研究成果のオープンアクセスの活用という部分に関しまして、もう少し取りまとめてはいかがかということで、私の方で全体の流れを中心にまとめさせていただいたものです。文章表現その他に関しては、まだ十分なところまで行っておりませんけれども、こういう項目ではいかがかということで、一度提案させていただきたいということでございます。

 1枚目のところは、私自身も大分、いろいろなことをばらばらに議論してきたという感じがございまして、話の全体のイメージといいますか、報告書のイメージというものをつけさせていただいた方がわかりやすいかなと思った次第です。

 最初の部分は、全体的な現状認識と目的というようなものが来るのだろうということで、1つは、オープンアクセス化の推進ということが重要なポイントになるということと同時に、ここに、マルが抜けておりますけれども、大学の役割としての機関リポジトリというものをここで位置づけるというのが、2番目の目的として入ってくるだろうと推測しております。

 2番目に関しましては、もう既に学術定期刊行物の制度改善という形で、一つの提案をしているので、それはそこで、話としては一応終わっている。

 としますと、その次のところには、科研費等の競争的資金による研究成果の問題が出てくる。

 その後で、先ほどの議論いただいた機関リポジトリの話が入って、最後に、今後の課題という感じになるのかなというイメージでいるということです。

 その中の3番の部分だけをまとめさせていただいたということになります。当然、他の部分との重複その他に関しては、あえてそのままにしてございます。

 競争的資金を使った研究成果のオープンアクセスの活用ということの目的は何かということですけれども、いろいろと議論がございましたけれども、これは人類の知識の増進だという、それだけを言った方が話としてはよろしいのではないかと、そこだけになっております。

 特に、とりわけ競争的資金の場合には、やはり税金を使わせていただいているということで、その成果を利用できるようにするのが基本的に必要だということです。

 とりわけインターネット、ウェブ等の技術をうまく使った方がよろしいのではないかということになります。

 また、第4期科学技術基本計画においても、先ほどの資料にもございましたように、オープンアクセスの推進ということが既にうたわれておりますので、研究基盤の整備という観点からも、それは重要な課題と認識すべきではないかということです。

 では、その研究成果をオープンアクセスにする方法としては何があるかといいますと、大きく分ければ、オープンアクセスジャーナルというものと、研究者が自らインターネットを使って公表する、いわゆるセルフアーカイビングと言われるものになるという話です。

 3番目として、オープンアクセスジャーナルというのをいかに活用していくかということで、まず1つ、日本における雑誌をオープンアクセス雑誌にして、国際的な発信機能を強化する。これに関しては、既に項目2で制度改善の提案をしているので、そちらに任せる。

 一方、そうではなくて、研究者自身がオープンアクセスジャーナルに投稿するということをどのような形で支援できるのかということですが、ここに関しては、既に科研費の直接経費で支払うことは認められておりますけれども、プラス、ここまでやれるのかという問題はございますけれども、間接経費とか大学の校公費で支払うような措置まで踏み込めるのであれば、考え方としてはあり得るのではないかということです。

 もう一つは、オープンアクセスジャーナルだけに現在すべてを頼るわけにはいかないということで、全体をバランスとったような形が望ましいのではないかということです。

 一方で、先ほどの2番目の、インターネットを通じて研究者自身が成果を公表する方法というのはいろいろあるということで、公表を行う場所として、1つは、研究助成機関が用意するアーカイブウェブサイトが当然あるだろう。もう一つが、いわゆる機関リポジトリがあるだろう。それから、もちろん個人で、ウェブサイトで公表したっていいだろう。

 それから、公表のタイミングとしては、成果が出た直後ということが基本的には求められていますけれども、それをすべて認めるということはなかなか難しいという現状を考えますと、いわゆるエンバーゴがあるオープンアクセスというところで、そこをうまく使って、多少遅れてでもいいから、成果は公表されていくという道筋をつくった方がいいのではないか。

 それから、ここが、前回の議論のところにも書いてありましたように、皆様の意見が分かれているところで、出版社版だけでいいのではないかというか、それだけを中心とすべきだというお考えと、そうではなくて、いわゆる著者最終稿のようなものもあっても仕方がないのではないかという、両方の考え方があり得るだろうということです。

 そこのところで、現状の日本の政策としてどう考えるかといったときに、研究助成機関であるJSTとか文科省が、ウェブサイトでそういうものを用意するということももちろん考えられますが、現在、機関リポジトリが200機関で構築されていることを考えれば、オープンアクセスへの取り組みにおいても、機関リポジトリは1つ位置づけていいのではないかということです。現在200機関ですが、そこにございますように、NIIのJAIRO Cloud等を使えば、これよりももっと多くの機関に所属する研究者が、機関リポジトリを通じて成果を公表することは十分可能ではないかと考えております。

 次のページに行っていただきまして、そのためには、各学協会及び出版社の著作権ポリシー等を、これは確認しておく必要があるので、現在、既に国際的にはSHERPA/RoMEOプロジェクトがございますし、日本の国内に関しましてはSCPJが作成されておりますので、この辺りをもう少し活用していってはどうかということでございます。

 最後に、直接、オープンアクセスジャーナル及び機関リポジトリ等を使ったインターネットでの公表という話だけではなく、重要なのは、そういうことが推進できるような全体的な環境整備をするところにこそ、国の政策として言うべきことがあるのではないかということで、そこの部分を別途まとめさせていただきました。

 研究助成機関としては、もちろん研究者が著名な購読誌を中心として発信したいということは当然のことですので、それは認めざるを得ない。ただ、お金を助成しているからには、どこに出ているのかということに関しては最低限きちんと把握して、それを更に公表していくということが必要なのではないか。

 もちろん現在、NIIのKAKENデータベースなどがございますが、ここでは助成された研究のすべての成果が提出されているわけでは、もちろんございませんので、この辺りのところをもう少し拡充するといいますか、こういう成果をここに出しました、本文はオープンアクセスです,若しくはここからアクセスできますというように、成果が十二分に反映できるような制度上の整備ということが必要ではないかと考えています。

 それから、もう既に何度も喜連川先生等からございますように、オープンアクセス化されていればそれで十分だという考え方はもちろんあると思うのですけれども、可視性を高める、検索可能性を向上させるということは、基本的に非常に重要なことでして、日本語であるとか日本の論文というものが、果たしてグーグルにかかったときに、きちんと上位で出てくるかということに関しては、私は疑問な点が多々ございます。

 その意味でも、メタデータの標準化、それから論文の識別、同定機能をより標準化させること、さらには、できれば著者の同定の標準化というところまで話を進めていくことによって、可視性や検索可能性は格段に上がっていくだろうと考えております。

 もちろんこれに関しては、もう既に各種関連機関のもとでいろいろと活動がなされておりますし、特に、例えば論文識別方法としてはDOIの付与が重要だということで、科研の実績報告書などにもDOIの記載ということが盛り込まれてございますけれども、実際に日本の論文なんかですと、これが付与されていないという残念な結果にもなりますし、今後、機関リポジトリが自ら情報を発信していくとなりますと、このDOIの付与ということも考えていく必要があると考えられます。

 さらに、研究者データベースe-Radその他とで、著者同定に関しては、日本はそれなりに標準化を進めるいろいろな方策、方法は持っていますので、その辺をうまく連携させるということが重要ではないかと考えております。

 いずれの施策も既に始まっておりますが、大学の関係者の中でも、なかなかここに関して十分な御理解を頂いているとは言えない部分がございますので、その辺の理解をより一層進めるべきではないかと考えております。

 今後の課題のところは、今日の議論でも随分この辺は出ておりましたけれども、ここまで十分に議論できるかどうかは別ですけれども、当然考えていかなくてはいけない話として、先ほどの利用データ等も含めまして統計類の整備、もちろんそれをうまいシステムとして活用していくということが必要だと思われますし、いわゆる知識インフラとの連携ということ、さらには、電子ジャーナルや研究成果公表の形式が今後どんどん変わっていく。更に研究データの公開というような話まで出てきますので、方向性としてはそういうものがかかわってくるというところまで言及してはいかがかと思います。ただ、本格的な議論は少し難しいであろうということで、この後はまだどういう位置づけになるかわかりませんけれども、3の話の中で出てきた御意見を、そこにメモとして一応入れさせていただきました。

 以上でございます。

【有川主査】  最初のページでいいますと、3のところを中心にして報告をしていただきました。前回の議論の整理と、議論していないようなところも含めまして、非常に体系化していただいたのかなと思います。ありがとうございます。

 御質問などございましたら、お願いいたします。

【石川委員】  昨年度ほとんど出ていなくて、いま一つ、どういう議論をされてきたのかもよくわからないところでの質問なのですが、先ほどの資料2のところで、現状で問題点、唯一書いてあったのが、4番目の矢印の研究者のインセンティブは高くないという、しかもそこだけが課題になっているんですけれども、それがこの中でどういうふうに取り組むのかというのは、このまとめの中では範囲外の話なのでしょうか。

 結局、幾らいろいろな整備をしても、研究者自身がやらない限りは何も情報は入ってこないと思ったので、気になったんですけれども。

【倉田委員】  私の理解としましては当然、課題はもっとたくさんあって、機関リポジトリに関しましては、確かに一つの課題として、研究者のインセンティブが直接的にはなかなか喚起できないというのは非常に大きな課題だということは、確かに出ていると思います。

 ただ、話が非常に錯綜しているなと私も思っているのですけれども、科研費等の競争的資金を使うという話の方は、主目的が、機関リポジトリ全体を発展させていきましょうというのとは少し違う視点で、科研費等でお金を頂いたものに関しては、その成果はオープンアクセスを活用していきましょうという話の流れのものでして、それは逆を言えば、どういう形でもいいということです。

 ただ、現在それが強く推進もされていないし、義務化もされていないという流れの中で、なかなかそれがオープンアクセスという形では手に入る状態になっていないというのが基本的な課題認識です。もちろん、それが機関リポジトリの話とも絡むので、機関リポジトリに研究者が入れるようなインセンティブを持たせないといけないというのは、もちろん一方ではあるのですけれども、こちらの方は、そこのところで、競争的資金に関しては、義務化とは言い難い、そこまで言うのはなかなか難しいと思うのですけれども、少なくともそれを強く推奨するというような形をとれば、当然、研究者の方もオープンアクセスへの意識を高め、インセンティブが少しは上がるのではないかという意味で位置づけさせていただいているということです。

 ですので、3番の話の議論と、4番で機関リポジトリ全体を大学の中で、若しくは知識インフラの一部として、大学が学術情報基盤の一機関としてどのように機関リポジトリを位置づけるかというような大きな話と、少なくとも補助金を頂いた研究成果はオープンアクセスにしましょうという議論は、非常に絡み合っているのですけれども、話としては、完全に両方が同じ話の文脈に立っていないというのが、少し誤解といいますか、混乱を招いているのではないかなと今、思いました。

【有川主査】  確かにそういう側面はありますね。

【石川委員】  私は、一番手っ取り早いのは、義務づければそれでおしまいだと思ったのですけれども、それが不可能、できないというのであれば、まず必要なのは、いかにそういう状況において、競争的資金とかそういったもので研究した人に対してインセンティブを与えるかという方策がないと、結局のところはいけないのではないかと思うわけですね。そこと実際の仕組みというのは、分けて考えないといけないのかなと思いました。

【土屋委員】  多分、基本的には、公的助成による研究成果を社会還元するということは、別に手段はどうであれ、なすべきであるというのが多分、公的助成というものの精神としては求められていると考えられます。それにはインセンティブも何もあったもんじゃなくて、そうしなければいけないと言うしかないんだろうということです。

 でも、一方で、機関リポジトリのようなものも既にある。すべての機関にあるわけではないけれども、ともかくある。だから、これを利用することはできるのではないかというのは、最低限の提案としてはできるのだろうという感じがするので、今ここで、インセンティブが高くないという話を余り強く出すのは、提案としてはどうかなという感じがします。少なくとも、現状認識としてはまずいなということがあります。

 ただ、関係することとしては、セルフアーカイブという仕組みであれば、実際には、そのような機関リポジトリを利用してオープンアクセスが実現できるというのは、通常、非常に多くの場合に、学会、それから商業出版社が、研究者から著作権譲渡を受けるときに、個人のウェブサイトないし機関のウェブサイトに載せるということについては、許すという条件つきで権利譲渡するという形に今、変わってきて、かなりのものがそうなったと言えると思うので、そうであれば、研究者個人には権利があるので、それ以上許諾を取る必要なしに、研究者が載せれば別に何の問題もない、自分の権利行使にすぎないということ

なので、それはそれでできるということになります。

 それは、理屈の上でそうであればいいので、実際にだれがボタンを押すかということに関しては、秘書の人がやってもいいし、図書館員がやってもいいという、それだけのことだろうと思います。

 ただ、義務づけてしまうと、権利行使になるかどうかというところは微妙な問題になるので、実際にイギリスとスウェーデンであったケースですけれども、エルゼビアは、義務づけられた場合には、この権利譲渡の留保事項を適用しないと言い出している経緯もあるので、義務づけると権利の行使にならないという、非常に不思議な状況になってしまうということだそうなので、そこは松浦先生あたりで整理していただかないといけないと思うんですけれども、結構ややこしい話が残ります。

 ただ、セルフアーカイブということをあえて言わなければいけないのはなぜかというと、本当に自分でボタンを押して、あるいはアップロードするという作業をするかどうかという以上に、権利関係をクリアするためには、セルフアーカイブ原則というのは非常に重要な要素だということは指摘したいと思います。

【有川主査】  資料2に戻ったようなところがありますが、ここに関しましては、研究者側からしますと、他のいろいろな情報発信ということには日常、非常に気を配っているわけでありまして、そういった活動の中に位置づけるということは、それほど大変なことではないだろうという見方ができるだろうと思います。

 もう一つ、自分をいかにアピールするかということは、今、相当いろいろな形でやっているわけですから、その重要な手段だということになれば、人に任せたりはしないで自分でやろうということになっていくのだろうと思います。

 過去のものをずっとということになると少し大変ですが、現在から未来にかけてということですとそれほど問題はない。過去のことに関しましては、先ほども言いましたけれども、図書館の人たちが非常に理解してくれますので、図書館を活用するというのは極めて現実的な有効性が、ある意味で証明されたやり方だと思いますが。

 松浦先生、どうぞ。

【松浦委員】  この資料の2ページのところに、納税者への説明責任という話が出てまいりますね。国立大学の教員は、納税された資金で仕事をしています。競争的資金であろうとなかろうと、この点は基本的に変わりません。

 けれども、納税者への責任という議論をどこまで使うかには、注意が必要です。たしかに、特別な競争的資金を与えられて、その資金を得るときの条件として公開を義務づけるというのは、わかるのですが、私学助成を受けている私立大学は、どこまで公開すべきなのかというような議論は方向が奇妙に思えます。

 研究者は、自分がやったことは私的なものではなくて、社会に還元して共有するのだというところまでは何の異論もなく認めるでしょうが、特定の納税者との関係の話をし始めると、話が違うところへ行くかもしれないと危惧します。

【土屋委員】  納税しない他国の人には見せちゃいけないの。

【松浦委員】  その辺は、法律上の義務のような形で一刀両断に処理するよりも、基本的な研究者の姿勢という形で議論をした方が生産的ではないかなと思います。

【有川主査】  これはもう少し広いところで議論されるのだろうと思いますが、税金でやっているのだからということはいろいろなところで言われていますよね。それを受けた格好になっているのだろうと思います。

【松浦委員】  なっているのですが、ですから、公務員の方々がつくられる文書についての著作権というのは、普通はないですよね。

【土屋委員】  いやいや、公的……。

【松浦委員】  公的業務の一環として作業をしている場合を前提にした場合の話ですが。

【土屋委員】  著作権は全部国が持つのではないですか、日本では。

【松浦委員】  基本的な姿勢はそうでしょう。しかし、こういう方向の話に引っ張られるのは、余り生産的ではないと思います。

【有川主査】  そこは、専門家の人に少し研究していただいた方がいいのでしょう。

 他にございませんか。

 それでは、どうもありがとうございました。前回の議論がかなり多面性があったものですから、そのうちの大事なところを抜き出して、倉田先生にまとめていただいたということでございます。

 それでは、今日予定していましたことは大体終わったと思いますが、今日頂きました御意見等、今日はわりと組織的にやれたと思っていますので、まとめも整理もしやすいのではないかと思います。以後、注意して、そうなるようにしたいと思います。御協力いただきましてありがとうございます。

 今後の進め方ですけれども、次回は、引き続きまして学術情報の発信・流通(促進)に関する施策の在り方としまして、JSPS、JST、NII、NDL等の連携等を含めた全般的な議論を行うとともに、JSPSからは、4月16日の研究費部会に報告されました科研費研究成果公開促進費の改善案につきましても御説明いただきたいと思っております。これは我々の作業部会でまとめたものを研究費部会に対して提案していただいたということで、最終的にはJSPSでどうするかということでございます。その改善案についてお考えいただいているようでございますので、それについて5月24日に説明していただきたいと思います。

 そのほかの報告等があるようでございますので、先ほど少し言いました、アカデミッククラウドのことなども入っているかと思いますが、岩本課長からお願いいたします。

【岩本情報課長】  参考1をごらんになってください。前回、この作業部会と情報科学技術委員会という、情報科学技術の研究開発の在り方を議論する委員会との共同で議論をいたしました。その際に、いわゆるアカデミッククラウドという、特に学術機関におけるクラウドの在り方というものは、いろいろな観点から見て、一度議論をして、最も適正なものを生み出していくということが必要なのではないかという御議論がございました。

 そこで、検討会を設けまして、今後、夏の概算要求ぐらいまでの時点で、ある程度、施策の方向性というものを検討しまして、その上で、仮にその後、いろいろな予算措置等で、研究開発プロジェクトとかシステム研究のような施策がもし展開できれば、そちらの方で具体的にプロジェクトなり、展開していったらいいのではないかという考え方で、とりあえず政策の持っていき方について検討していただくための会議を設けさせていただきました。まだ第1回目は開催されておりませんが、来週の末、金曜日に開催を目指して、今、やっているところでございます。

 背景としましては、簡単に申し上げると、先ほど来からお話し申し上げましたような知識インフラの形成ということが一方であり、かつ、それを戦略的に連携させ、活用していくということもあり、その上で、アカデミックな世界の上で、例えばハイパフォーマンスコンピューティングなどにおけますシミュレーションだと、国家基幹技術ということになっておりますが、データ科学に関しても、これは第4の科学的手法ということで、今後、国の枢要たる基幹的な技術として育てたいという意味もあるものですから、それはまた別途、施策を検討したいと思っておりますけれども、その際にも、アカデミックな環境の中で、どううまく機能するクラウドを考えるのかということは、是非この場でやっておくことが必要であろうという観点でございます。

 そのほかにも、学術活動の観点から、アカデミッククラウドというものを、一度整理をきちっとしていただきたいと思っております。

 それから、クラウドに関しては、様々なクラウドが今、検討されたり、考案されたりしておりますが、アカデミックな世界におきますクラウドというものを、一度こういう視点できちっと整理して、あるいは独自の研究開発ということを手がけることによりまして、次の世代のクラウドというものを考える、一つのクラウド技術という点においても、これはアカデミックな世界で、アカデミッククラウドというものを考える中で、また新しい発想なり技術として育っていくだろうという意図もあるものですから、そういう点も加味して、施策として進めたいということで、この検討会を設けております。

 委員数は、必ずしも、余り数が多くなりますと、検討会もなかなか機能しない面もあるものですから、少し限定的に絞っておりますが、いろいろな方面で御指導賜れればということで、西尾先生ともお話をしておりますので、いろいろな点で御意見等ございましたら、是非お話しいただきまして、うまくサポートも頂きまして、この作業部会の先生方のサポートも頂きまして、いいものをつくっていきたいという思いでやってまいりたいと思っております。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございます。

 それでは、本日の会議はこれぐらいにしたいと思いますが、吉田局長、何かございますでしょうか。

【吉田研究振興局長】  今日はどうもありがとうございました。機関リポジトリの話、様々な辛口な御意見もございましたけれども、そのあたりは十分踏まえていきたいと思いますけれども、今、文科省の中では、大学改革をどう進めていくかという議論がいろいろと起こっております。これは多角的に様々な視点からアプローチしていかなくてはいけないのですけれども、先ほど審議官も申し上げましたとおり、情報発信力をどう高めていくかということ、これは大学改革の中では大きなポイントだろうと思っております。

 そういう中で、機関リポジトリをどう位置づけていくことができるのかという話、それからもう一つは、科学技術基本計画の中でも、日本の科学技術力を国際競争力の高いものにしていくという観点から、知識インフラの話、情報発信力の話という、大学改革と科学技術の振興という両面から、情報発信力の議論というのが今、起こっておりますので、今回のテーマについても、この委員会の結論を私どもとしてうまく受けとめて、次の施策に何とか結びつけていけたらいいなと思っておりますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

【有川主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室長補佐】  どうもありがとうございました。毎度でございますけれども、本日の議事録でございますが、各委員に御確認を頂いた上で、主査の御了承を得て公開とさせていただきたいと思います。

 次回でございますが、5月24日木曜日でございます。時間は、今度は午後でございますが、15時から17時、場所は、本日と同じ16F特別会議室を予定しております。

 それ以降の当面の予定は、資料4のとおりになっております。日程の確保に御配慮いただきますよう、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 本日の配付資料につきましては、机上にそのままお残しいただけましたら、事務局より郵送させていただきます。

 以上でございます。

【有川主査】  それでは、本日はこれで閉会にしたいと思います。ありがとうございました。

―― 了 ――

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