研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第43回) 議事録

1.日時

平成23年8月4日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.出席者

委員

有川主査、三宅主査代理、倉田委員、田村委員、土屋委員、中村委員、羽入委員、松浦委員

文部科学省

(学術調査官)阿部学術調査官、宇陀学術調査官
(事務局)倉持研究振興局長、戸渡大臣官房審議官(研究振興局担当)、岩本情報課長、鈴木学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

【有川主査】  それでは、時間になりましたので第43回学術情報基盤作業部会を始めたいと思います。

 お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

 本日は、学術情報流通・発信に関するこれまで頂きました議論を整理したいと思います。

 まず事務局より、御出席いただいています有識者の方々の紹介をしていただくとともに、配付資料の確認、それから傍聴登録等について報告をお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室長補佐】  前回までに御説明を頂きました学協会及び関連機関の方々には、有識者として引き続き審議に御参加いただいております。なお、日本化学会の林課長、国立情報学研究所の安達部長におかれましては、少々遅れるとの御連絡を頂いております。また、日本植物生理学会の渡辺教授、日本経済学会の三野教授は、本日は御欠席です。

 配付資料ですが、お手元の資料の一番上に議事次第がございます。その中ごろに記載しておりますが、資料1から3までの三種類、それに参考資料を御用意しております。また、手狭ではございますが、これまでの本作業部会の資料をドッチファイルでとじてお手元に御用意しておりますので、必要に応じて御参照いただければと存じます。

 本日の傍聴者は17名で、事前の撮影、録画、録音の登録はありません。

 【有川主査】  ありがとうございました。

 それでは、これまでの議論の整理を検討するに先立ちまして、今後の審議の進め方を確認するために、学術情報基盤作業部会の審議内容、スケジュール等について鈴木室長から説明を頂きたいと思います。

【鈴木学術基盤整備室長】  資料1を御覧いただければと思います。各委員の先生方に御協力いただきまして、年度内の今後の学術情報基盤作業部会の日程等を調整し、来年3月までの日程を決めさせていただいているところでございます。それにつきまして、これまでの開催状況及び今後の予定につきまして、私から説明をさせていただきたいと思います。

 これまで4回にわたりまして関係学会、関係機関からヒアリングを実施し、前回、7月26日に、ヒアリングを踏まえて各委員の意見交換等をしていただいたところです。これにつきまして、前回の委員の先生方の意見交換を踏まえ、学術情報流通・発信に関するこれまでの議論の整理ということで、ヒアリング結果を踏まえた議論を本日整理していただければと考えているところでございます。

 今後の予定ですが、まず、前回の会議の際にも御説明させていただきましたが、ここまでの議論の中で、科学研究補助金研究成果公開促進費の学術定期刊行物が、かなり長期にわたって制度が改善されていないということを踏まえ、学術定期刊行物に関して抜本的、かつ具体的な改善策を御検討いただければと考えているところでございます。

 これにつきましては、関係する部会として、当作業部会の他に科学研究補助金制度を議論する研究費部会がございます。また科研費については、例年、前年度の9月に公募が行われます。公募の際には、当然、審査の方針や審査要綱等の制定が必要になる関係上、当作業部会の他に研究費部会での議論、また日本学術振興会での議論が必要になるかと存じます。そのために、年内を目途に科研費の具体的な制度改善策を検討する、実際に、そのまま議論の結果を踏まえて科研費の公募要領や審査要綱等ができるくらいまでの具体的な御検討をいただければと考えているところでございます。

 今まで、年内と申し上げて参りました関係で、今後の予定として、第44回から第46回まで、10月7日、26日、12月6日と3回を科研費の制度改善の検討に充てさせていただいておりますが、既に今までの議論で方向性等が出ているかと思いますので、焦点を絞って具体的なところを御議論いただければ、2回で、10月26日までで、前倒しで科研費改善の議論が終えられればと考えているところです。

 以上のように、他の部会と関係がある内容を先に議論させていただいた上で、残る学術情報流通・発信全般について、特に機関リポジトリによる情報流通・発信の強化や、公的研究資金による研究成果のオープンアクセスの対応、さらには学術情報流通・発信を促進するための新たなシステムの検討を含めて、総合的な審議を年度内を目途にお願いできればと考えているところでございます。

 【有川主査】  これまでの開催状況と今後の予定ということですが、よろしいでしょうか。今後の予定を御覧いただきますとお分かりのように、今日これから議論するところで頭出しされているような、あるいはかなり議論したようなこともあります。そのうちの大事な固まりを基本的には二つに分けて、年内と年度内ということで議論していこうということで御理解いただけるかと思います。

 従いまして、その点を意識しますと、本日はどの程度の議論をしておけばいいかということも御理解いただけるのではないかと思います。

 続きまして、資料2や参考資料などを使いながら、学術情報流通・発信についてのこれまでの議論を事務局に整理していただいておりますので、鈴木室長から説明をお願いします。

【鈴木学術基盤整備室長】  資料2でございます。「学術情報流通・発信に関するこれまでの議論の整理(案)」ということで、ヒアリング等で出されました意見、更に前回の御議論等を踏まえて、整理させていただきましたものが資料2でございます。

 もう一つ、参考資料を御覧いただきたいと思います。前回御議論の際に資料として事務局で用意させていただきました「各回で出された主な意見」ですが、これを基に前回御議論いただきました。その意見を反映し、前回の資料からの見え消し版として、この参考資料を御用意しております。説明につきましては、前回の議論を踏まえてということもありますので、参考資料の方で内容等を説明させていただければと思います。

 参考資料ですが、前回との修正点が赤字で記載されております。御覧いただけばお分かりのとおり、赤の部分が非常に多くなっております。これは、前回の御議論で項目を追加したところはもちろんですが、その他に、各回の御議論で出された意見ということで、各委員の先生方等の発言になるべく近い形での整理をさせていただいております。更に今回、議論の整理としてまとめさせていただくという観点から、言葉等について統一を図らせていただいております。例えば、ジャーナルや学会誌、学協会誌、学術雑誌等、委員の先生方によって言い方が違っておりました内容、これを今回はジャーナルという言葉で統一させていただいております。基本的に、査読等のピアレビューを経て論文を掲載する論文誌という意味で、ジャーナルで統一できるのではないかということであります。電子ジャーナル等の議論もございますので、そうした形で統一させていただいております。同様に、学協会や学会という文言に関しても統一させていただいております。また、発言内容等についても、意味が分かりやすくなるようにということで、言葉等を付け加えさせていただいた部分もありますので、かなりの部分が赤になっているということでございます。そうした点で整理させていただきました。

 それでは、順に簡単に説明させていただきたいと思います。まず一つ目の項目として、学術情報流通・発信と国際化の進展であります。この項目については、前回の御議論におきまして、新たに二つの点を御指摘いただいております。その御指摘を、冒頭つけ加えさせていただいております。第一点目が、学術情報基盤は、学生に対する教育活動はもとより、研究者間における研究資源及び研究成果の共有、研究活動の効率的展開、さらには社会に対する研究成果の発信、普及並びに次世代への継承等に資するものであり、極めて重要な役割を担っている。一方、状況の変化により、この学術情報流通発信の状況が変化してきているということであります。

 それから、二点目といたしまして、近年、大学における機関リポジトリの整備が進むなど、学術情報発信力の強化が進められている。学協会等が刊行するジャーナルの在り方も含め、学術情報流通の新たな方向性としてのオープンアクセスの推進などに関する様々な議論がコミュニティにおいて行われるようになってきているということでございます。

 他に1ページ目に追加した項目ですが、下から二番目でございます。我が国が真に国際競争力を有するためには、積極的に学術情報を発信し、世界各国から優れた研究成果に係る情報が集中するような状況を作り出すことが必要であるということでございます。

 2ページ目に参ります。全面的に赤字になっておりますのが、上から三つ目の丸ですが、人文系の学問分野での日本研究やアジア研究など、日本語で書かれている情報には、それ自体として高い価値があるにもかかわらず、他国と共有されていないため、国際的に評価されていないという問題もある。少なくとも英語等にすれば、海外にも広く流通するようになるということを伺っております。

 二つ目の項目でございます。学協会等による学術情報流通・発信ですが、一つ目の丸として、学協会等の発行するジャーナル、これにつきまして、我が国の学協会が刊行するジャーナルの位置付けが重要である。ただ、学協会ごとに電子化、国際化の状況が異なるため、学協会の実態を踏まえた検討が求められるということでございます。

 他の部分に関しましては、細かな言葉等の修正です。

 3ページ目に参りまして、学協会の刊行するジャーナルのオープンアクセス化ということです。一つ目といたしまして、我が国の学協会の国際的な情報発信力を強化するためには、オープンアクセスを一つの契機として、我が国の学協会が刊行するジャーナルの電子化を更に推進することが重要であるということでございます。

 同じ項目ですが、4ページ目に入りまして一番最後の丸でございますが、学協会においては、国際情報発信の強化の観点から、電子化・国際化の進展や各学協会のビジネスモデルを踏まえつつ、従来からある購読誌だけでなく、オープンアクセス誌の検討についても進めることが望まれる、という項目を追加させていただいております。

 四つ目の項目の、学協会自身による国際発信力の強化でございますが、一つ目の丸であります。現状において、我が国には、ジャーナルに関して海外出版社に対抗できるような国内大手の出版社は存在せず、また、多くの学協会は、海外の出版社が展開する国際市場において、ジャーナルの流通に向けた様々な対応が遅れている。一方、電子化への対応の必要性等とも相まって、海外の出版社との様々な契約によりジャーナルを刊行する動きも進んでいる、という状況の御指摘を追加させていただいております。

 5ページ目の次の丸が見え消しで消されておりますが、これについては、五つ目の丸へ場所を移動しまして、若干、言葉を変更してございます。内容的には、基本的な内容は変わりませんので、場所を移動した関係で見え消しになっております。

 追加の部分は、5ページ目の下二つの丸でございます。「また」のところでございますが、我が国の学術情報発信力を強化する観点からは、エディトリアルボードに外国人を入れる、さらにはエディトリアルサービスやマーケティングを行うなど、電子ジャーナルのコンセプトの部分を拡張するような方策が考えられる、ということであります。

 それから、ジャーナルのプラットフォームについては、国内外に多様なプラットフォームが存在する中で、各分野の国際標準の状況や利用者に十分配慮して、学協会自身が自らのビジネスモデルを考慮しつつ選択すべきである、ということでございます。

 6ページ目でございますが、上から二つめの丸、編集・出版等に係る人材養成・確保についても学協会等が取り組むべき重要な課題の一つである、ということで、その後に続く人材育成や人材養成についての一番上のところということで、一つ丸を追加させていただいております。

 6ページの五番目の丸でございますが、「更に」のところで、学協会自身がジャーナルの刊行に際して実施している先進的・効果的な取組を、他の学協会に広めていくことが重要である。そのためには、各分野で国際競争力をもつジャーナルを更に強化していくことが考えられる、ということであります。

 五つ目の項目ですが、科学技術振興機構(JST)及び国立情報学研究所(NII)事業の強化・拡充でございます。一つ目の丸といたしまして、学協会等による学術情報流通・発信の強化については、まずは個別の学協会の自助努力や学協会間の取組が求められるが、我が国全体で学協会等による学術情報流通・発信を促進する方策として、JST及びNIIにおいて実施されている事業の強化・拡充が求められる、という文章を追加させていただいております。

 8ページへ参りまして、科研費の項目でございます。科研費研究成果公開促進費の学術定期刊行物の制度改善でございますが、ここについても、一番上の丸を追加させていただいております。研究費部会においては、科研費全般に係る制度改善に向けた検討が進められているが、とりわけ当該補助金の研究成果公開促進費については、学協会等からの国際発信力強化のための電子化・オープンアクセス化を踏まえた、具体的かつ抜本的な改善方策の検討が必要である。本学術情報基盤作業部会においては、今後の研究費部会における検討に資するべく、鋭意検討を行うことが必要である、ということで、先ほどスケジュールで説明させていただきましたような内容を、この部分に入れさせていただいております。

 二つ目の丸といたしまして、科研費の制度改善を検討する具体的な観点としてということで、紙媒体主体から電子媒体主体への助成への移行、ジャーナルの刊行に必要な経費の助成、ジャーナルの国際発信力強化のための取組内容の評価、新たにオープンアクセス誌のスタートアップ支援のための区分の新設、これらが考えられるということで記載しております。

 その後のそれぞれの部分に関して赤字になっておりますが、これは9ページの7の上にあります部分の三つの丸が見え消しになっているかと思いますが、それを場所を移動した関係で赤字になっているものでございます。

 8ページの一番下の赤字の丸も同じでございまして、9ページの二つの見え消しの部分をまとめてこちらの方に移動させていただいたということで、見え消しや赤字になっているということでございます。

 9ページの七番目の項目ですが、前回、その他ということで記載させていただいていた部分ですが、オープンアクセス等に関する中長期的課題という表題で載せておりますけれども、先ほどもスケジュールのところで説明させていただきましたとおり、できましたら年内12月くらいの会議から、この項目も更に深く議論をしていただければと考えているところです。一方、こちらの表題が中長期的になっているということもありますので、この「中長期的」は削除していただきまして、「オープンアクセス等に関する課題」というように読みかえていただければと思います。

 一つ目の丸といたしまして、以下の観点については、今後、さらに、オープンアクセスの進展及び大学図書館等における学術情報流通・発信の在り方の検討を踏まえつつ慎重に議論を重ねる必要がある、ということで、一つ目として、機関リポジトリ等大学図書館による情報流通発信の強化。二つ目として、公的研究資金による研究成果のオープンアクセスの義務化に向けた検討、ということでございます。

 そして、9ページの一番下の丸におきまして、機関リポジトリにおいてはということで、テクニカルレポートなど、いわゆるグレイリテラチャーが、アクセス・ダウンロードされ参照とされる例が多数ある。また、紀要のような学術情報が活発に流通するようになると、大学図書館からの学術情報流通・発信が変わってくる可能性がある、ということであります。

 10ページの丸で「更に」ということで、電子化の進展により、現在のジャーナルがそのままの状態で維持されるかどうか分からない状況にもなってきており、電子ブックと同様に学術論文自体がマルチメディア化し、ジャーナルの在り方が変化していくことを考慮した検討が必要である、という前回の御議論の内容を追加させていただいております。

 最後の丸は、公的資金による研究成果のオープンアクセス推進について具体的に検討していくことも必要ではないか、という御意見でございます。

 説明は以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 それでは、ただ今説明いただきました学術情報流通・発信に関するこれまでの議論の整理(案)についての意見交換を行いたいと思います。この位置付けですが、先ほど資料1で説明していただきましたので、今後の予定などとの関係でその位置付けが少し分かります。それから一つは、今後の審議に生かしていくということがあるのですが、もう一つは、当然、適当なときに、私どもの作業部会の上位の部会、あるいは学術分科会等に審議の状況について報告をする必要がありますので、その際にはこの段階のものを報告させていただくということになると思います。

 今日議論していただきますものに関しましては、議論の整理ということになりますが、位置付けについては、今、申しました二つの側面があるということを御理解いただいた上で、御議論いただければと思います。

 そして、特にこれまで頂いた意見等に基づいて整理をしていただいているわけですが、抜けているもの、あるいは今後の課題などを含めまして御発言をいただければと思います。項目につきましては、先ほどもありましたように、大きな見出しは、最後のところで「その他」となっていたところを除いて前回から変わっておりません。七番目のオープンアクセス等に関する「中長期」というのは取りまして、課題ということでございます。七つありますけれども、全体を大体1時間半程度かけて御議論いただければと思います。

 それでは、御意見を頂きたいと思います。どうぞ。

【倉田委員】  全体を整理していただいたので、よく見えてきた部分もあるのですけれども、こうした形の構成ですと、やはりかなり重複と、それからあと逆に、こうした形では論理がうまく通らないということが見えてきたような気がしています。一番目の全体的な話は、細かいところは別として、方向性として、まず学術情報流通・発信が全体として変わってきている。それで、基盤が重要だという話はよろしいかと思います。しかし、その次の学協会等による学術情報流通・発信という項目ですが、これは現状を書こうとしているのかどうかというところが少しよく分からなくて、4で学協会自身による国際発信力の強化という項目で、ある意味では似たような話が出てくるというのは、論理展開として非常に分かりにくいというように思います。

 この二番目と四番目はもう少し整理して、現状と、課題若しくは新しい工夫というような、先進的な取り組みと課題というような形でむしろ明確に分けていった方がよりいいのではないかと思いました。

 三番目の項目ですが、これは学協会が刊行するという、その表現が必要なのかということを少し疑問に思いました。これは、日本から発信する学術情報発信全てにおいて今後はまずは電子化であり、プラスその電子化をしていく際に、現状ではオープンアクセスということを一つのきっかけとすべきではないかというように読めば、もう少し広い話になるのではないかと思います。ここを、日本の学協会が刊行するという話だけに狭めてしまうと、話がよく分からなくなるというか、どうしてここでだけオープンアクセスの話だけを取り上げて、わざわざ項目立てしているのかがよく分かりません。そうではなくて、2と4をむしろくっつけて、学協会の現状と新しい工夫及び課題として、それ以外のものも含めて、広い意味で日本における学術情報流通・発信のオープンアクセスを基準とするような電子化、及びその拡大などという形にしていただいた方が分かりやすいのではないかと思いました。

 また4の後ろの方に書かれている、編集・出版の人材養成や、電子出版、電子出版ライセンシング以降の話は、これもまた4にあるのが少しよく分からなくて、これも学協会の話に限らず、日本において情報発信をしていく際に当然、人材育成というのは一つの大きなポイントになっていくわけですので、その辺りも少しまとめ方がよく分からないというところがございました。

 そのように少し広げた形で、その後を受けて、NII、JSTで取り組んでいる事業がそれを更にサポートするんだという方が分かりやすいですし、そこから更に科研費でもっとより広い意味のサポートをするんだというのであれば、流れとしてはよいのではないかと思いました。

 また、科研費についてはまだ少しいろいろな話が出ていて、かなり重複があります。ここは今日恐らく議論になるのだと思いますけれども、その中でもう少し検討していけばいいのではないかというように考えました。

 あともう一つは、ジャーナルという言葉に査読制つきの雑誌という意味は、少なくとも研究者の間ではないと思いますので、そうした意味で使うのであれば、ここではそうした意味であるというように最初に明言していただかないと、かなりの誤解を生むのではないかと思いました。

 以上です。

【有川主査】  ありがとうございました。全体の構造の整理をかなり見通しよくなるように御指摘いただいたと思います。

 そういった点で言いますと、2と4を一緒に、それから、恐らく3と7は同じところで述べた方がいいということになるでしょうか。オープンアクセス化ということで共通しておりますので。人材育成等につきましては4ではないだろうという御指摘もございましたが、それはもしかしたら、本作業部会とは別なところで議論する方がいいのかも知れません。それから、重複がかなりあるということでした。

 全体の構造につきまして、非常に分かりやすくなるだろうという印象ですが、何かご意見ございますか。

 羽入先生、どうぞ。

【羽入委員】  今、倉田先生がおっしゃったことに関連するのですが、この構造として、一番目の部分には、恐らく様々な問題がどうあるかということを書くべきだと思いまして、一番目の項目の丸をずっと拝見していきますと、学術情報の流通がどのようになってきたかということと、あとは内容の問題、専門の分野の問題が書かれていますが、ここにオープンアクセスをどう構築していくかということが更に問題だということを書いておくと、最後の七番目の項目のオープンアクセスの課題につながると思います。一番目の項目の位置付けが、いわば序論のようなものでしたら、そうしたことを付け加える必要があるのではないかと思いました。

【有川主査】  つまり、3を1のところに入れてはどうかということでしょうか。

【羽入委員】  そうですね。「学協会」ということは取れた条件でですね。

【有川主査】  ありがとうございました。

 鈴木室長、どうぞ。

【鈴木学術基盤整備室長】  追加で補足の説明をさせていただければと思います。

 いろいろと御意見を頂いているところでございますが、これまでの議論の整理ということで、このペーパーの案をお示しさせていただいておりますが、この時点で作業部会としての何らかの報告という形でこのペーパーをまとめるという意味合いではございませんで、あくまで、今までの議論をこうした形で整理したということで、今後の10月以降の議論の前提としての整理ということであります。最終的には全体を踏まえまして、作業部会としての報告を改めてまとめる形で御議論いただけばと考えております。

 ですから、今、頂いている議論に関しましては、年度内か年度を超えるかは少し分かりませんが、全体の議論を整理する際に構成等を考えさせていただくというようにさせていただければと思いますが、今回は、この形でどちらかへの報告という形でまとめるという性格の資料というわけではございません。それは少し誤解がありましたら、私の御説明が不十分だったということで、御容赦いただければと思います。

【有川主査】  私の方で、先ほど今後の議論のための整理と少し踏み込んだことを申しました。すなわち、当然、親委員会等がありますので、審議の状況について説明する際には、これに基づいて説明させていただくという趣旨であります。

 土屋先生、どうぞ。

【土屋委員】  倉田先生の御指摘は、これでは整理になっていないのでは、ということなのではないかと思います。

【有川主査】  そこまではないと思うのですが、意見の構成を大抵の場合は整理しているので、それよりもっと構造的にしようということが入っているわけです。もし可能ならば、そういうまとめ方にしておきますと、本来の趣旨に合うわけです。構造がはっきりしている方が、これを使いながら次の議論を深めていくことができます。もしそれでよろしければ、それほど手間はかからないのではないかと思います。よろしいでしょうか。

【鈴木学術基盤整備室長】  御意見をお伺いして、事務局にて整理させていただきたいと思いますが、少し御議論が、この段階での中間報告をまとめるような御議論だったものですから、念のため補足させていただいたということでございます。

【有川主査】  今回は2、3、4と学協会関係の柱がたくさんあるように見えていますのは、今回主に学協会等からの御意見をいろいろなところから頂いておりますので、それをなるべく多く書いたからだと思います。ただ、全体をまとめますと、先ほどの御指摘ように整理しますと分かりやすくなりますので、そうした方がいいと思います。

【中村委員】  私も全体像のことについて申し上げます。

 先ほど、10月の末くらいまでに科研費の今の出版補助をどうするか検討を、とのお話がありました。かなり具体的な問題ですが、そうした具体的な考え方について我々が何か決定しなければいけないとすると、全体の戦略性、戦術性とビジョンをもう今回か次回に作らないと、科研費の今のような重大な問題を議論して決定するに至らないと思うのです。

 つまり、例えば科研費の問題でも、全体として10年後にこういった方向に持っていくためにはこうするべきだとか、オープンアクセスもそうですね。現状で、例えば商業出版社三社が寡占体制を敷いているので、その中で日本の出版はどのようにしてそこに一矢報いるのかとか、オープンアクセスはそのような議論にならざるを得ないし、さもないと先へ進みませんよね。

 今のまとめを拝見しても、戦略性やビジョンがおよそ見えません。我々もそのように余り議論しなかったようにも思いますが、やはり戦略性の話をまとめなければいけない。10月に何か決定するのだとしたら、本当に今の時点で、我々が何らかの戦略をここに書き込む。その戦略でよいかということを上の委員会に打診するというか、そのようにしないと、科研費を増額するか減額するのか分かりませんけれども、10月の末にそういった重大決定には至らないのではないかと懸念します。

【有川主査】  科研費関係については、前回かなり議論をしたと思うのですが、ここは研究成果公開促進費の学術定期刊行物のことを主に対象にしています。これにつきましては、学術情報基盤という中でこうあるべきではないか、ということを、我々の作業部会から研究費部会へ提案することになります。それで、研究費部会において議論していただいて、そういうことであればこうしましょう、というようなことになっていくのだと思います。

 ですから、この定期刊行物関係で言いますと、科研費全体についての議論ではなくて、研究成果公開促進費の学術定期刊行物のところだけの話になります。

【中村委員】  はい。もちろん、そのように申し上げたのです。

【有川主査】  オープンアクセスその他、あるいは公的研究資金による云々というところについては、科研費の使途やその報告の仕方などについて、かなり深入りすることになります。これまでも断片的には議論してきましたが、研究費部会に提案するということであると、少し時間をかけて議論しなければいけない。そういう意味で来年度まで、あるいはまとめの中では中長期的と書いておられましたが、そういった課題ということになるのだと思います。

【羽入委員】  今、中村先生がおっしゃったことは、恐らく、全体のこの図の中で、研究成果の刊行費をどう位置付けるか、あるいは刊行物をどのような位置付けにするかということが、ここに既に書かれていないといけないのではないかという御発言だと思います。私が先ほど「序論のような」というように申し上げたのが誤解を招いたのではないかと思いますが、問題意識がどうあって、その中で今、議論すべきことがどういう位置付けにあるかということがここで見えますと、今後、議論が進めやすいのではないかということだと思っておりました。

【有川主査】  そういう意味では、ある種の方向性のようなことは既に言っていることになっていると思います。

 他にございますか。どうぞ、松浦先生。

【松浦委員】  私もこの資料は、今までの議論でどういった意見が出たかを分かりやすく整理してあると理解すればよいと思います。そうすると、次に必要な作業は、今からどうすべきかという政策論です。恐らく、今日の作業部会では、アジェンダの整理、つまり重要な議題をどれにして、どれから検討するかというようなことを大体決めればいいのではないでしょうか。

【鈴木学術基盤整備室長】  これはあくまで事務局としてでございますが、科研費に関して、来年度、平成24年度の改善にはもう時間的に間に合いませんが、平成25年度の改善にこの作業部会での議論を反映することを考えますと、科研費の研究成果公開促進費の議論に関しては、年内というのが一つの目途でございます。これも事務局からの希望でございますが、科研費の学術定期刊行物に関して、幾つかの、このように制度を変えた方がいいのではないか、という御意見は今までの議論で出てきている。それに対して、中村先生からもございましたように、学術情報発信の強化という観点から、このような理由でこういった形に制度を変えるべきだ、ということを年内を目途にまとめていただき、研究費部会での検討ということで、つないではいかがかということでございます。

【中村委員】  今の科研費の学術定期刊行物は、私が日本学術振興会にいるときに、現場で、どうすべきかということを文言まで考えましたけれども、結局は大所高所の全体像の下に決定していただくしかないという結論です。結局、全体戦略がないとやはり現場では決定のしようがないと思うのです。それを今年中にすぐ決定を、と言われてみても、なかなかそれは難しいのではないかとは感じます。

 それから、私もよくヨーロッパ系大手出版社の編集会議などに出席しますが、会議というのは必ず雑誌の経営戦略から入ります。我々の作業部会においても、日本国の学術出版の経営戦略を議論するというところから入らないで、各論から入ってしまうと、結果として現場での議論と同じレベルの話に陥ってしまうのではないかと懸念します。個別論にならないかという、それが懸念材料です。

【土屋委員】  懸念は共有するものではありますが、しかし、それを議論していてもう1年遅らせてみても、余り意味がないということも事実です。ですから、やはり方向性を示す議論というのは行わないといけませんが、やはり並行作業として具体的な検討もせざるを得ないということになります。そのスケジュールの問題というのは否定できないのではないでしょうか。そこは有川主査に議事進行していただけばよろしいかと思います。

【有川主査】  我々はただ議論しているわけでは決してないわけでして、ある種の意図を当然持ちながら進めているわけです。その一つは概算要求といいますか、今回のことでしたら科研費からの補助に対する提言ということ。それに関しては研究費部会の方の都合もありますので、そこから来るタイムリミットはあります。ただ、今期だけではなくて、実は今までも平成18年からこの学術情報基盤作業部会において三つの柱、すなわち図書館であったり、電子ジャーナルであったり、あるいは学術情報発信であったり、そういったことを議論してきました。その中で、例えば電子化やオープンアクセス、機関リポジトリなどについてはかなり議論されてきているわけです。

 今回はその中で、日本の状況を考えた場合に、学協会が学術情報の発信に関して果たしている役割は量的にも非常に多いということで、まず今期の作業部会の冒頭から、代表的な学協会の方にプレゼンをしていただいて、議論を深めてきたわけであります。それを中心にして議論する中で、いろいろなことが見えてきました。その議論をまとめていただいて、それを基に関係ある他の委員会、我々の場合ですと一番近いのは研究費部会ですけれども、そちらに対して何らかのことを提言していかなければいけない。同時に、我々の作業部会でこういったことを議論しています、ということを伝えておく必要もある。それについては、7月の初めに鈴木室長が研究費部会に行っていただいて、そうした発言もしていただいているわけです。

 今回そういう点では、構造的な問題あるいは粗削りなところもあるかも知れませんけれども、これから議論していく方向性やどういったことが大事であるかについては、顕在化できたと思っています。あと、それをスケジュール的に考えていきますと、当然、鈴木室長が説明されましたように、年内と年度内ということで、それを一つのゴールにして進めていけばいいのではないかということであります。

【土屋委員】  少し個別的なことに触れてよろしいでしょうか。

 1の「学術情報流通・発信と国際化の進展」の部分ですが、恐らく、この部分で基本的な事実認識が示されていると思うのですが、これを拝見する限りでは、そうした事実認識を前提としてこれから議論を進めることについて、むしろ非常に危惧を感じると申し上げなければいけないと思います。

 第一点は、学術情報発信の強化が進められているということですが、実際問題としては、日本の学術情報発信力というのは少なくとも20年前に比べて、10年前は非常に強化されていたことは事実なわけですね。2000年代初頭の段階ですと、海外の有力雑誌数千誌に掲載されている雑誌論文で日本発と言われるものは10パーセント弱くらいにはなっていて、目安として1割は日本から出ているという状況であり、日本の研究者が国際学術情報発信力が弱いとは言えないということは、事実だと思います。そこをきちんと認識しておくことは重要なのではないかと思います。つまり、日本の研究者の国際的な学術情報発信は強いので、弱いのは日本の学協会の学術情報発信力である、それを明確にしておかないといけないのであろうと思います。

 その上で、日本の学協会の出すジャーナルの学術情報発信力を強化する必要があるのかないのかということを、議論しなければいけないのだろうと思います。その事実認識は、つまり、日本の学会を構成する研究者の方がそれだけの力を持ちながら、なぜ日本の学会誌の学術情報発信力が弱いのかという問題を、やはり考えておかないといけないのではないかということです。日本の人文・社会系、やや、余り大きなことを言えないのですけれども、自然科学、その他STM関係の研究者の方々がこれを何十年間努力して、それだけの発信力をつけた、研究の力をつけたということに関しては、敬意を表すべき表現がなければいけないのではないかというように思います。その上で、弱いのは学会誌の学術情報発信力だということを、明確に書かないといけないのではないかということが第一点です。

 第二点としては、1ページの下から二つ目と三つ目の丸が、論文はどこに投稿してもいいけれども、日本発の雑誌がなければいけないということを述べている部分だと思うのですが、少なくともこの場で、この議論が本当に成り立つかどうかということについては、確認する必要があるのではないかという気はします。つまり、日本の雑誌が独自に刊行されることは、文化をあらわす顔になるという点で意義があるというのですが、文化をあらわす顔になるということはどういうことなのか、その後の説明をいろいろ読んでみても、私にはよく分かりません。これがどなたの発言だったかよく分かりませんが、少し説明を伺いたいと思っています。恐らく、ここでまとめられているところでは、それが意義とされているようなのですけれども、本当にそうなのかということが、少し気になります。

 それから三点目としては、少し弱いのです。細かい点なのですが、1ページ目から2ページにかけて「日本発のジャーナルがなければ、査読プロセスを外国の組織に任さざるを得ず」と記載されていますが、実際には外国出版社の名前で刊行されているけれども、日本の学会が査読の主体を担っているものというのは、恐らく、非常に多いわけですね。外国の出版社とパートナーシップや契約関係を持って出している雑誌というのは、実態については細かく存じ上げませんが、了解としては査読のプロセスに関しては、日本の学会が担うという前提になっていると思いますので、この「外国の組織に任さざるを得ず」というのは、理屈の上では端的に相違しているのではないかと思うのです。これは直せれば直していただきたいと思います。リスクというのは何パーセントでもリスクであり、それでは何にでもリスクはあるでしょうということになるかと思いますから、この論理というのは、日本から雑誌を出さなければいけないことの理由になるのか、ということをきちんと考えなければいけないのではないかという感じがします。

 後ろの方は人文系の話ですので少し別にしまして、最初の丸六つ分くらいのところで、今の三点ほど気になりましたので、一応申し上げておきたいと思います。

【中村委員】  第一点に関して私が少し補足したいのは、日本では民間の出版力が全く弱い。そこが実は問題で、別に学協会だけの問題ではないのです。やはりそこを書いておかないといけない。学協会及び日本の出版社の力が弱過ぎるのですね。日本にWileyぐらいの出版社があれば、一緒に取り組めばいいわけです。学協会及び日本の出版業の国際的実力が弱いのは事実ですが、余りに周知なので議論されなかった。これは皆さんの共通認識ですよね。この点は絶対に書かなければいけないと思いました。

 それから、最後の三番目についてですが、私も1ページの最後は少し気にはなることがあります。なぜ日本主体で雑誌を出さなければいけないかというのは、アジアが世界の出版の3分の1寄与をしている、ないしはするようになるので、出版でも応分の寄与をする必要があるということなのです。つまり、日本の研究者がアメリカやヨーロッパの雑誌に頼んで、あちらに掲載してもらうということ自体が望ましくない。論文を審査して掲載すること自体、学会構成員には結構負担ですから、お互いが応分の負担をする必要があるということが、まず全体の議論の根幹だと思うのです。私は大分前にもこれは申し上げたのですが、出版においてもやはり日本の実力に見合った世界的な寄与をする必要があるということがあった上で、例えば、査読のプロセスを外国の組織に任せるというような議論が出てくるのかもしれない、そういうことではないでしょうか。

 最後の1ページ目の下の文章は、確かに非常に気になる文章ではあります。書き方が今ひとつ露骨と言いましょうか。

【有川主査】  ありがとうございました。

 もう一つは、力はあるけれども、というところですね。そこにつきましては、いずれも学協会の問題だと思います。

【瀧川教授】  今、土屋先生がおっしゃった資料1ページ目の下から三番目の丸、文化をあらわす顔になるというのは、これは恐らく私がお話したときの資料からとらえたのだと思いますので少し御説明いたしますと、確かに、世界中にたくさんジャーナルがある中で、日本の研究者がなぜ自国のジャーナルに出すか、あるいは出すべきかというのは、非常に難しい問題で、別にそういった必要は全くないという場合もあると思うのです。これは、学問分野によって非常に違うと思いますが、物理学の場合に私が申し上げましたのは、例えば、最近の例ですと、鉄系の超伝導体が日本で発見されて、それによってかなりの多くの論文が日本のジャーナルに載った。そうしたものが、日本で行われている研究を広く世界に紹介する核になっている。ジャーナルが一つの分野をあらわす母体になっている。そうしたことが自発的に起こっており、それにより外国からもその分野の非常にいい論文が入ってくる。そういった自発的な発展ということが行われているのが重要で、それがいわば文化をあらわす土台になっている。

 そこはやはり我々は非常に重要だと思っているわけでして、そうでないと、やはり別に外国の雑誌に出してもいいということになってしまう。もちろんいいのですが、求心力は全くなくなってしまうと思うのです。求心力はやはりそういったところにあるというのが、これは日本物理学会の場合の考えで、やはり学問分野によっていろいろ違うと思うのです。ですから、そこがいろいろな学会の個性があらわれているところだというように思いますけれども、ただ、そこは非常に大事なところで、そうした精神的な求心力がないと、やはりジャーナルは育たないと思います。

【土屋委員】  今、中村先生、瀧川先生がおっしゃっていることは、私にはかなり同じことのように聞こえるわけです。つまり、一つは、全てが階層化されているわけではなく、いろいろな多様性、この学会の人たちはこの分野が得意だとか、この分野に関心があるということが、様々に文化的なのかも知れませんし、教育上の伝統かも知れませんから、そうしたことが当然出てくる。それが将来、どこが大事になっていくかということが、また分からないわけです。そのときの社会的情勢によって、どの分野にファンディングが集中するかということは、またどんどん変わっていきます。ですから、やはり多様性を保障するためには、日本の学会が国際的な中でそれぞれの個性を持っていなければならないのだろうというのが一方で、他方、そうであるならば、学会が論文を出して外国出版社に流れてしまうというような話をするのではなくて、そうしたものに対するプラットフォームを世界に対して提供するというくらいの形で、少し頑張りすぎかもしれないけれども、そのくらいの気持ちで取り組まないと、理念としては打ち出せないのではないかという感じはするのですね。

 ですから、やはり科学的な研究における多様性の確保というのは極めて重要で、その一翼を日本の各学会が担っている。だから日本の学会誌に出さないで、どこかのその専門の雑誌にどんどん出す人がいても別にかまわない。しかし、日本の学会がこういう分野をサポートしているのであれば、そこに海外からどんどん集まってくるというのは非常に健全な姿だと思います。そうした意味で、中村先生がおっしゃったように、学術コミュニケーションにおける日本の貢献というのは、そういった形であらねばならないとすれば、もしかしたら学会誌を出す意味があるかもしれないと思います。最後は少し弱気ですけれども。

【瀧川教授】  もう一点よろしいですか。資料1ページ目の最後の「日本発のジャーナルがなければ、査読プロセスを外国の組織に任せざるを得ない」ということがいかがか、というお話でしたが、私の理解では、当然、編集のコアを日本の学会が行っていて、外国の出版社と組んでいるというのは、これは日本発とみなされると思うのです。ですから、そうした意味で、もちろんそうしたことを含めて日本で編集をコントロールするものがなければということだと思いますので、これ自体は別に問題ないのでないかと思うのです。

【有川主査】  一番最後のところですね。少し書き方が露骨な感じがするかも知れませんけれども、最初のところを除いて「研究のプライオリティーの確保の点からも」という言い方でもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【土屋委員】  この表現に関しては、ですから、先ほど申し上げたことの続きとしては、「我が国の研究者にとっても」ではなくて、やはり「世界の研究者にとって」ということでなければいけないのだと思います。

【三宅主査代理】  前回出席していなかったこともあって、少し話を混乱させると申し訳ありませんが、学会の事情というものはかなり多様であるということ、こうした中でどう反映させていくのかというような話もあるのかと考えておりました。日本が査読プロセスを含めたプライオリティーを確保するという意味で、日本発のジャーナルというのを確保するべきだというレベルの話と、それから、日本と海外の査読のレベルが明らかに違うレベルのものがあって、出せる人は海外のジャーナルに出すという状況もありそうです。そうした中でどう国際化するかというと、そうした分野ではもう少し実質的に国際化する部分を支援すべきだという分野もあると思います。

 例えば海外で出されているようなジャーナルに対してと、日本の学会を一つのチャプター化して、大きなインターナショナルな学会誌を出すというようなことは、ここで考えている日本の学協会の発信力を強化するという方針には合っていると思うのですが、科研費の中でそうした動きをどのようにサポートするのかというようなこと、そういった方向で頑張っているところへはどのような支援が可能なのかというようなことを考えておりました。

【有川主査】  学協会がどうあるべきかという議論までいきますと、前回もそうした議論になりかけたのですが、これは当然収拾がつかなくなります。また、我々がそこまでやれるはずはないし、ジャーナルにしても、大きなものを一つか二つということで押さえられるようなものではないと思います。そして、大きさも分野も様々ではありますけれども、幾つかの代表的な学会、学協会のお話をお聞きした上で、現状認識をして、更に国として、学協会の情報発信に対するサポートは、研究成果公開促進費というやり方で行っている。それがそのままでいいのか、というようなことをまず議論したつもりでいると思います。

 私たちが「学協会とは」ということで大上段に振りかざして議論する場合は、一定の時間内に収拾をつけて、我々が期待されているようなことに対する答えまで持っていくには、相当難しいのではないかと思います。それは意識しながらも、当面の課題に対して応えていかなければいけないのだろうと思います。

【中村委員】  そろそろ科研費のことを、念頭に置きながら議論を。

【有川主査】  もう少し、私の方から述べさせていただきますと、今、あるいはこれまでに議論を頂いたようなことで、個性的なことなども考えて、また学術論文に対する評価の文化ということもありますが、この時代に、本当にそれだけでいいのか、もっと違ったことがやれるのではないかということも、絶えず意識しながら考えているわけです。もしかしたら、そうしたことを考えていく方が手っ取り早いかもしれないし、インパクトもあるかも知れません。その辺りは考えてみてもいいだろうと思うわけです。その辺りの意識が、来年になってから議論するようなところに少しあるということが言えると思います。

【中村委員】  今、参考資料の二番目の項目でしょうか、学協会等による学術情報流通・発信を念頭に置きながら発言しています。日本化学会の定款をいつか見たことがあるのですが、やはり会員のためのサービスということが定款でうたわれていて、外国に向かって情報発信をするというようなことは一言も書かれていないのです。恐らく、どこの学協会もそうなのではないかと思うのですが。

【有川主査】  確かに、会員のためですね。

【中村委員】  ええ。恐らく国との約束でそのようになっているのかなと思ったりするのですけれども、学協会が、特に外国に向かって情報発信するなどということが、そもそも設立目的に書かれていない可能性が十分にあるのではないかと。そうなってくると、ここで学協会が外国に向かって情報発信すべきだというような議論を幾らしてみても、要は定款に書かれておりませんということになります。何を申し上げているかといいますと、会員から反対が出る可能性があるということですね。つまり、海外への情報発信にお金がかからない分には構わないですけれども、お金がかかるのであれば、会員のためにならないというような反対は必ず出るのではないか。

 ですから、いろいろなセレクションをするにおいても、やはり積極的に海外情報発信するということを明文化しているような学協会のみが、例えば我々の議論の対象であって、そういうことを明文化していない学協会は、我々の議論の対象にならないということをまず決めないと、先に進まないのではないでしょうか。そうしないと、時々出てくるように、この分野では外国発信は要らないという話が出てきて、混乱します。ですから、定款など根幹に立ち戻った考察が、学協会そのものに関する議論を行うときに必要ではないかと思います。

【有川主査】  そのことにつきましては、前回の資料で、科研費の研究成果公開促進費学術定期刊行物についてどのように記載されているかといいますと、「学会又は複数の学会の協力体制による団体等が、学術の国際交流に資するために定期的に刊行する学術誌」ということで、そこでは「国際」ということが書いてあるわけです。そうした意味では、中村先生がおっしゃった、我々はここのところを検討しようとしているわけですので、国際化を進めているところだけを対象にするということでいいのだと思います。

【松浦委員】  教えていただきたいことがあります。それは、日本からの情報発信といったときに、編集委員会に着目して、日本人が多数を占めているか、日本人の研究者がリーダーシップを握っているかに注目するのかという点です。外国のジャーナルの場合だと、日本人が多数を占める編集委員会ではないけれども、日本人の研究成果を多数発信していることがあります。日本人の編集委員会あるいは日本人編集者のリーダーシップに重点を置きすぎると、検討のスタンスがどうしても国内向けになる恐れがあります。その辺りのところを、国際発信しておられる学会がどのように考えておられるかをお聞かせいただければと思います。

 私の分野は、法学ですから、余りそういったことは意識しないのですが、論文を出す方からすれば、一流の人たちが編集者として見てくれるということが魅力であって、それが日本人かどうかは、それほど重要ではないように見えます。将来の助成のことを考えたときも、日本からの発信の定義の問題になるので、その点についてどなたかから教えていただけるとありがたいと思います。

【有川主査】  例えば、今井先生のところの電子情報通信学会は、もう既に外国人の投稿の方が日本人よりも多くなっているというような話でございますね。

【今井教授】  掲載が多いといったことは、一つございます。

【松浦委員】  編集者の方はいかがですか。

【今井教授】  電子情報通信学会は、創立された方々の御見識で名称に「日本」が入っておりませんで、定款においても「国際学会」という理念をうたうべく現在検討しており、国際的に活動を展開することに関しては、全く問題がないと思っております。また現地点で、1割弱が海外の方の成員ですが、海外の方と日本の方の成員の違いは、単に日本語の会誌を配るか配らないかだけです。投票権なども全く同じでございます。これらは私どもではなく、学会を創立された方々の御見識によるものなのだと思っております。

 国際性に関しては、基本的には日本発ですけれども、日本の中でのみ査読を行うことも実は厳しいので、ターゲットを絞った戦略的な分野で新しいオープンアクセスのジャーナル等を立ち上げながら、海外の査読パワーを導入しつつある、現在進行形で増やしつつある段階でございます。

【林日本化学会課長】  恐らく、本日の出席者の中で一番編集の現場に近い者として、私が知る限りで、編集の現場について松浦先生の御質問にお答えしますと、見かけ上、原理的にはエディターが論文を通すか通さないかという権限を持っていますので、その学会や人の国、国籍が、事実上編集権をリードする国ということになるのです。ただし、実際はもう少し複雑でして、雑誌によってはその裏にマネージングエディターと呼ばれるポジションの人材があったり、あるいは文字通り編集事務局があり、結局、そこがコントロールする場合があります。簡単に言えば、事実上、編集委員会を開いて、その議事をコントロールするのはどこかというと、事務局になることも多いので、そこが編集権をコントロールするという面がございます。

 大体、エディターと事務局は共に同じ国がコントロールしている場合が多いので、その国の色が出るのですけれども、私どもが出しているある一つのジャーナルは、編集事務局はドイツにあるんですけれども、編集委員はほとんど日本人というジャーナルがあり、我々、日本化学会のオフィシャルジャーナルになっておりますが、編集権のコントローリングが非常に難しいというか、気を付けてやっているのが現状です。

【有川主査】  その程度でよろしいでしょうか。

【松浦委員】  はい。

【有川主査】  他にございますか。

【土屋委員】  今のお話を伺っていますと、結局、日本ということにこだわらない学会の方が、日本発という機能を果たしている状況だということですので、これをどう考えるかという問題だと思うのです。

【有川主査】  学術定期刊行物助成の性格付けから、一つは国際という言葉を取るべきだという、反対のこともあり得るのかも知れません。あるいは、もう少し強化するということもあるのだと思うのですが、そうしたことを含めて、ここは本作業部会から提言をすればいいのだろうと思います。

【土屋委員】  もう一つよろしいですか。前回も少し伺いましたが、「定期刊行物に対する助成」というタイトル自体について検討の余地があるのかということについて、余地があるというお答えだったと思うのですけれども、やはり電子ジャーナルになって以降は、定期刊行物という概念が非常に際どいのだと思います。特に、プリントされるのが実は2年くらいあとだけれども、early releaseなどがもう出るという、そのような時代に、定期的という、そういう仕組みというのを前提にした表現が適切かどうかというのは、今の段階においては検討すべきことではないかと思います。

 私自身は「外せばいい」という意見です。端的に、意味のないことは外せばいいというだけなのですが、そこまで言えるかどうかについては、最終的には自信がありませんので、御意見を伺えればと思います。

【有川主査】  確かにそうした問題は出てきていますね。

【中村委員】  刊行とは、印刷するという意味にはならないでしょうか。

【土屋委員】  ならないと思いますが。

【中村委員】  何か、電子ジャーナルでパブリッシュというのがウェブサイトに載ったということに定義されているので、今回、この刊行というのをウェブサイトにも適用する。刊行は公開、ということでしょうか。

【土屋委員】  公表、公開、刊行は大体同じ、みんなパブリッシュではないでしょうか。

【中村委員】  この刊行という言葉は、公表されるということで、必ずしも印刷を意味しないというように我々が理解すれば、よろしいのでしょうか。

【有川主査】  そうしますと、問題は「定期」というものをいつでも出せるのではないか、ということでしょうか。毎月でも毎日でも、好きなときに出せる状況になっている。昔はある程度まとめて一分冊なりにして出すということで「定期」でしたが、今はそういうことを言わなくても済む。そうしたことで言いますと、定期刊行物といわゆる単行本的なものは、昔はそういった言い方で区別していましたが、今は非常に区別しにくくなってきていますね。ですから、新しい言葉を少し工夫しなければいけないですね。

【瀧川教授】  補足しますと、確かに今、オンラインで公開する時点でパブリッシュされたということになっていますから、その日付を見ると、ほとんど連続的に1年中続いているわけですね。ただ、ほとんどの雑誌が何らかの意味でイシューというのをきちんと区切って発行していますので、恐らくここで「定期」というのは、非常にまれにしか出さないということではなくて、きちんと連続的にずっと論文を出しているということが重要になるのだと思います。例えば、ISIなどで最終的にそこが重要なクライテリアになっていると聞いております。

【有川主査】  ジャーナルという形をとっている場合にはそういうことになると思いますが、そうでないようなものも出てきているのだと。

【三宅主査代理】  私が国際的に関係している学会誌は、融合系の学会のものが多いのですが、そうしたところの傾向として、いわゆる昔ながらの投稿論文を査読して出していくジャーナルの他に、あるいは先ほどの出版社の話に関係してくると思いますが、常任運営委員会的が主導になって、今、この話を早めにきちんと読みやすい短い形で集めて出しておいた方が、うちの学会でこんなことをやっていますというようなパブリシティが取れるということで、準学会誌というか、宣伝誌のようなものもいろいろ混在させています。その先端にウェブにしか出ないものが出てきているという感じがするのですが、日本の学会もそうなると考えると、定期刊行物とかジャーナルなど、一種類のものを指す言葉の定義だけでは、話がうまく通じなくなるような懸念が少しあります。

【田村委員】  将来の変化も考慮して雑誌の条件を考えますと、一つは査読制をきちんととっているということですよね。論文について、RSSでの配信のように、査読を通ったものから順次出していくという発行方法もあるのかも知れませんけれども、その場合でも査読制をとっているということと、刊行物としてのアイデンティティというのがきちんとあることなど、定義はそれなりにできるのではないかというようには思います。

 それからもう一つ、先ほど中村先生がおっしゃった戦略性ということが少し気になるのですけれども、その話でいくと、やはりインターナショナルなものを目指すということでよろしいのでしょうか。要するに、元々は日本で始まった雑誌ではあるけれども、終局的には国際誌であると。出版社も別に日本である必要はないというような、そういった方向を目指すというのが、一つの戦略だということでよろしいのでしょうか。その辺りを少しはっきりさせた上で、次を考えたいと思っているものですから。

【土屋委員】  学術雑誌に関して言えば、学問は本質的に国際的なものですので、それは目指す方向ではなくて前提だと思います。

【三宅主査代理】  査読がないわけではなく、査読の方針が少しずつ違う編集委員会を作って、ジャーナルを2、3本出すというところが出てきているようです。

【有川主査】  科研費で言いますと、現行では、査読という表現がされています。しかしもう一つは、今までのような査読ということでいいのかという問題があるのだと思っています。それをずっと引きずってしまっていると、今、印刷物あるいは世界的に話題になっているようなことから抜け出せないのですが、そこから抜け出すことができるかもしれないのです。昔のことを考えますと、外国のジャーナルなどを余り使わないころ、物理学会などでもそうだったと思いますが、いわゆる紀要論文のようなものが大変評価されて、それで大層な賞を受けられたりしていました。それは印刷物のときもあったわけですけれども、今、そういったものがいとも簡単に実は流通できるような状況になっているわけです。そうすると、査読に代わるような、もっと強烈な、より透明性、公平性の高いような評価のシステムというものが、実は考えられる状況にあるのかもしれないのです。

 ですから、私は個人的には、査読ということに余り引きずられなくても、それを超えるような学術情報の発信の仕方というのは、読者とともにつくり上げていくような考え方があり得るのではないかという気がしてならないのです。

【土屋委員】  第40回作業部会の日本学術振興会の資料を読みますと、「レフェリー制等により質の保証された原著論文の発信」ということになっています。「等」の部分の例をもう少し広げていただくなどすれば、質保証をどのようにして担保していくかということ自体も、これからの課題として十分あり得るという御指摘だと思いますので、これは「レフェリー制等」という「等」の例示の部分を少し変更して、幅を広くしていくだけで、十分、今のまま持っていけるのではないかと。

 先ほど申し上げましたのは、その後に、目的として「定期的に刊行する」の「定期的」というのは、結構厳しいのではないかなという感じがしているところです。

【林日本化学会課長】  私は簡単に「定期」と書いてしまうと、定期の定義というか、何をもって定期というのか、ウェブ発信の時代には非常に決めにくい状態になっているので、「定期」という文言は外された方がよろしいのではないかと思います。

【有川主査】  先ほどイシューという言葉がありましたね。そのような整理の仕方はあるのでしょうが、それは「定期」かというと、そうではないかも知れません。

【瀧川教授】  今、回数上は「定期」ですが、いつまでそうなるかということは分からないです。

【有川主査】  到着順に論文が10個たまるまでは、同じナンバーならそのナンバーを使うということすらあり得るわけです。

【瀧川教授】  ほとんどは今、公開されたもの、例えばこの1月に公開されたものを一つのイシューとまとめる。それは非常に便宜的なので、大体ほとんど形式的にそのようになっていると思いますけれども、今後どうなるか分かりません。

【土屋委員】  具体的な数字を持っているわけではありませんが、一つは、プリントが間に合わないものが徐々に出始めている。つまり、オンライン版は出たけれども、実際にはプリントはその2年先になるかもしれない、というようなのも出ているということですね。今、引用するものに2013年など書くわけには、さすがにいかないわけですから。こういったことで、やはりこの辺りについては、丁寧に検討して表現を考えていただければと思います。

【松浦委員】  先ほどの現状認識のところで、外国の出版社は非常に強くて、日本の出版社はとても頼りにはならないという御指摘がありました。それが正しい現状認識だとすると、ではどのように対応するのかという対策が必要になります。先ほどの議論の中で指摘されたように、いろいろなパブリケーションのスタイルがあるわけです。例えば、いわゆる機関リポジトリのようなものを考えたときに、パブリケーションについてきちんとした品質管理の仕組みがあり、定期刊行の要件を満たしていれば、そうしたものの中で国際的な発信ができるものについては補助をするというようなやり方も成立します。そうすると、外国の出版社に委ねなくても、国際発信は実現します。単に、外国の出版社がいいからそこに任せればよろしいという結論にするのは、少し行き過ぎかもしれないと思いました。

【有川主査】  出版とは何か、ということをきちんと整理しておこうということですね。その辺りはどうでしょう。ここで取り上げていいことでしょうか。

 では、それはすることにしましょう。

【倉田委員】  私も、今、松浦先生がおっしゃるとおりだと思いました。要するに、定期的とか、そういった印刷版を前提にしたような言い方を全てやめてしまう。ただ、システムとして一定の量をずっと継続的に発信するシステムであるということの保証はないと、一回出して終わるというようなところに、幾ら何でも助成するわけにはいきませんので、そのシステムが継続的にある程度保証されているということを、何らかの形で申請のときに書いてもらうというような形なら、何とかなるのではないかと思いました。

【土屋委員】  つまり、継続性の保証は必要であるが、継続的なファンディングを出すのはいかがか、ということですよね。ですから、要するに一回きりでもいいのではないですか。つまり、ウェブでその後ずっと見続けられるのであれば、それでいい。印刷物、定期刊行物の場合、一度刊行すれば、次の号が出たときにはそれは古いものになって、論文全体の複製が可能ということになるわけですね。ですが、そうではなく、一回きりで出して、その後、人類の共有財産としてみんながずっと使えると。単にある意味で議論しているだけかも知れませんが、科研費というファンディングの性質を考えたときには、継続的規制のあるものに助成したら、ずっと助成するという仕組みではあり得ないと思いますので、そこは非常に工夫が要る。工夫というか、注意がいるのだと思います。

【倉田委員】  工夫というか、注意は絶対必要だと思います。ただ、1年のものでいいのかというのは、やはりさすがに。この時代、10年出版を続けるなどというような保証もできないわけですが、では1年でいいのだ、などというのも、一つの極論だとは思うのです。けれども1年なら1年で、その1年で出した出版物がコレクションとして、やはりそれなりのものだという何かないと、助成するからにはやはり一定の何か枠がないと、何でもいいというのは。少しよく分からないですね。そういったものでも申請があり、これはすばらしいということになれば、その枠の中で助成すればもちろんいいと思いますので、継続性ということに非常にこだわるわけではないのですが、何らかのシステムを取っているところに助成できるような、単に今までのジャーナルということではなくて、もう少し広げた言い方ができたら、いいのではないかというようには思った次第です。

【中村委員】  少し出版のことが出てきましたので、そろそろお話ししますけれども、いわゆる印刷して出版する時代から、ウェブで公開する時代になってきて、そうしたものを科研費で調整するというような方向性だと思うのです。ですが、ウェブ出版しているところの責任というのは、どのように考えればよいか。今回の地震のような災害が起きたときでも、未来永劫、電子ファイルの保存を保証できない会社は、出版社としては認められないですよね。大手の会社は皆二つ、例えば違う国にサーバを置いたりしてセキュリティーを確保していますから。やはり今回、基準として「1年でやめてもかまわないけれども、1年でやめたのであれば、これは未来永劫そのファイルをどこかにデポジットしてあるという保証をする」というところ以外は認めない、とする必要があるのではないでしょうか。例えばですね。そうしないと無責任ですから。紙の場合は、いったん出版すれば図書館に物が残りますが、電子出版はなくなったら何も残らない。

 やはりそのような、日本の中にきっちりした電子出版の基盤が形作られるような仕組みを出版社と一緒に行っている学協会が採択されるなど、そうしたことによって産業育成もできるような視点が必要でしょう。今まで、科研費の研究成果公開費は産業育成という観点は全くありませんでしたけれども、電子出版が成長しだした今、産業育成の観点も入れて審査基準を作れば、今、お話に出ていたような問題も、自然と解決するのではないかと思うのですけれども。

【有川主査】  相原課長、何かございませんか。NDLは少し取り組まれていると思いますが。

【相原科学技術・経済課長】  以前、本作業部会のプレゼンテーションでお話ししましたとおり、国等の機関については既に制度化されて行っています。今、民間の機関、学協会等ももちろんこの中に含まれるわけなのですけれども、こちらの収集と保存について、制度化を準備中です。例えば、出版社が消えてなくなった場合でも、最終的にはその出版社、あるいはそのサーバで提供していた形と全く同じ形というわけにはいかないかも知れませんけれども、何らかの形で保存して提供するということを可能にしようということで、現在、準備をしているところであります。

【有川主査】  それも一つあるのですが、例えば大学あるいは学会で出しているが、ずっと続いているわけではないので、学会がなくなるということもある。そうしたら、そのサーバはどうするか。せっかく蓄積されたものが消えてしまう。それはいけないということで、国立国会図書館が最後のとりでで、国が存在する限りは国立国会図書館も存在するだろうというように思うわけです。大学ですらなくなってしまうかもしれないので、大学が出したようなものもアーカイブしてもらえばいいという、そういったようなことです。

【安達学術基盤推進部長】  御参考までに、今、問題になっているようなことについては、SPARC Japanでは、既にCLOCKSSという国際的なアーカイブ活動に参加し、日本の大学図書館も二十幾つ参加しております。つい先日も、HighWirePressからアメリカの小さな学会が出版している雑誌が、もう発行が維持できなくなったということで、緊急理事会があり、その雑誌をオープンアクセスでCLOCKSSでずっと保存するというような決定が行われました。

 他にも、出版社が大きくなるために他の会社を買ったりするわけですね。すると、あるはざまで、権利関係上、公開できない巻号が生じたりするのです。そのようなものをアーカイブとして公開するという活動を行っております。アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港などに分散サーバを置き、そこから出版社との契約によって、もう出版できなくなったときには、その雑誌をオープンアクセスでずっと公開していくというようなやり方です。

 現在、CLOCKSSからは、電子情報通信学会に、是非その中に英文誌を入れてほしいというリクエストが来ておりまして、そのようなことでも、今、動いているところです。

【有川主査】  そうした動きはあるのですが、中村先生がおっしゃったのは、例えばこの間の津波の被害のように、本当になくなってしまったらどうしようもない。学会としては残っていても、サーバごとなくなってしまうようなことも現実には起こり得るのだということです。そういったことに対して、どこかにミラーサーバのようなものを常に置いておくなどということを、一つの条件にしたらどうかということだったと思います。

【松浦委員】  先ほど、編集権の話が出たときに、編集委員会には国際的な広がりがある方がいいということを申し上げました。ただ、別の考慮も必要です。産業の育成を考えると、車にしてもコンピューターにしても、日本は後発組ながらきちんと育成してきました。国際的なジャーナルについても、そのような観点があると思います。

 新しい学術領域をつくるときに、ジャーナルの刊行というのは重要な戦略手段です。19世紀の法思想史を見ていますと、ドイツで新しい法思想が成立する場合には、必ずジャーナルとタイアップして、自分たちの考え方を広めるということをやっています。そうすると、日本発で科研費などでも特別推進研究などでいろいろな領域に取り組んでおられ、そういった領域で、特に日本のユニークな研究成果の国際発信を戦略的に行う必要があるのなら、日本主導のジャーナルを戦略的に作るという面も考えていいと思います。研究費についても戦略を考えるのですから、研究成果の公開費についても、特に重点的なところで付けるといったようなことを考える余地はありそうです。

【有川主査】  ありがとうございました。

【土屋委員】  細かくなりますが、6の二つ目の丸の二つ目のポツ「ジャーナルの刊行に必要な経費の助成」というのは、非常に不適切ではないかという感じがするわけです。アーカイブ、保存にしても、プロジェクトを作って行っていく。その立ち上げについては支援するけれども、その後のことについて、どのように持続可能にするかということを計画に書いて考えようというものでなければ、助成するのはやはり具合が悪いでしょう。また、今、松浦先生がおっしゃったような、研究プロジェクトとタイアップしたようなものというのは、それを審査する人がどう見るかは別にしても、そうした取り組みに対する助成を可能にするようにしていくということであると、単純に「刊行に必要な経費の助成」という言い方は極めて不適切ではないかと思います。

 もう少し興味深い取り組みに助成すべきであって、毎年やるようなことに助成するのはいかがか、ということだと思います。しかしながら、現在、学術定期刊行物の応募対象経費は組版代、製版代、刷版代、印刷代、用紙代、製本代というようになっていますので、これは幾ら何でも、と思います。「電子媒体の場合は、組版代のみが該当」というのは、これは取り払うべきではないかと単純に思います。恐らく、これが刊行に必要な経費の助成ということの実情であるとすると、この項目自体が不要ではないかと思います。

【有川主査】  その辺はいずれ、今年中に議論をいたします。

【土屋委員】  10月。

【有川主査】  10月までにです。

【鈴木学術基盤整備室長】  年内にその辺りも御検討いただければと思います。

【有川主査】  どちらかと言いますと、年内に、次の10月から議論するようなところに集中しているきらいがあるのですが。

【土屋委員】  では、全体のまとめを含めて、もう一点だけよろしいですか。

【有川主査】  そうですね。前回かなり議論していただいて、こういった議論は大体まとまってきますと、かなり論点がはっきりするものですから、そこから再度議論が発散していきますが、二回ほど進めていきますと大体まとまっていくと思っています。

 それで、この整理の位置付けは、先ほど鈴木室長から何度か御説明いただきましたが、冒頭で倉田先生から、もう少し構造的に分かりやすく整理できるのではないかということがありました。それはそういうことでまとめていけばいいと思いますし、今日は新たな、また深い議論もできたと思っています。その辺りもうまく、重複も余りないようにして、10月からの議論につなげていき、一方、必要なところではメッセージを出すことができるようにしたいと思っております。そうした方向で、少し議論をしていただきたいと思います。一応、10月からと、それから1月から議論することがございますので、そこはそのときに取り上げることにしまして、本日は議論の整理ということで、まとめるに当たっての観点から御意見をいただければと思います。

【土屋委員】  7の「オープンアクセス等に関する中長期的課題」ということですが、中身を見る限りでは、中長期的課題というのは、ややのんびりし過ぎているのではないかという印象を持ちます。というのは、ここに挙げられているのは、機関リポジトリ、オープンアクセスの義務化といったことなのですが、これらはある意味で、どちらも既に起きている事実です。単に今までの政策に反映していなかったというだけで、オープンアクセスというのは、それをどう捉えるかよく分かりませんけれども、既にいろいろな試みが行われている分野ですから、これは今から検討しているうちに、ほとんど前提とすべき事実が変わってしまうこともあり得るのではないかと思います。むしろ提案としては、これを中長期的課題にするのではなく、科研費の組みかえの中で、具体的なことはよく分かりませんけれども、こうした試みも評価できるような枠組みを検討する。それから、学協会ではなく、あるいは定期刊行物ということでもない、機関リポジトリのような仕組みで学術情報発信するような取組についても、十分評価ができるような枠組みも、やはり科研費レベルで考えていただきたいと思います。

【有川主査】  ありがとうございます。

 ここは冒頭でありましたように、中長期的という、そうした気長なことではなくて、課題ということで、すぐにでも議論しますよということにはしていました。「中長期的な」という言葉が入ってしまっているのは、例えば、最初の丸の二つ目のポツのところに義務化とあったり、制度化しようということに関して、そんなに急にはできないようなところもあるだろうという、そういった認識だと思います。

【土屋委員】  もう一つよろしいですか。

 この中で公開の義務化の点について、もう一つだけ申し上げなければいけないのは、これは本当に具体的な事情なのですけれども、博士論文の公開の義務化ということに関わる問題を、是非とも御検討いただきたいと思います。

 具体的な事実としては、国立国会図書館が平成21年度、22年度の補正予算で、1990年代に出された約14万件の博士論文を電子化するということで、その著者に対して許諾の依頼を行ったわけですが、第一には、約14万件のうち許諾を依頼する手紙を出すことができたのが約5万7,000件で、半分以上の人が、どこに行ったか分からない。更に学位授与大学、若しくは国立国会図書館から公開することを許諾した方が、それぞれ8,000件ないし9,000件ということで、1万件以下という状況でした。これは学位論文が出る段階で把握し、きちんと公開することを保証しないと、具合が悪いのではないかと思います。それは非常に制度的な話ですし、大学も十分協力できる体制だと思いますので、きちんと行えばいいだけです。実際は、公開できなかった別の理由もあるようなのですが、それは別としても、本質的には制度的な問題だろうと思いますので、中長期的課題として取り上げていただきたいと思います。

【有川主査】  後でお伺いしたいと思いますが、恐らく、今の問題は遡及といいますか、昔のことをやろうとすると大変だと思います。ですから「今後」とすると、それほどハードルは高くない。若干のテクニカルな問題はあります。それで、途上に置くわけにいかないという仕事がないわけではないのですが。

【小山内研究事業部長】  最後の問題ですけれども、最近の大学はいかがですか。博士論文を提出された方にはみんな、公開の可否をオートマチックに問うていないのでしょうか

【土屋委員】  まだオートマチックにはなっていません。

【小山内研究事業部長】  なっていないのですね。

 先ほどの研究成果公開促進費の話に戻りますと、資料の6のところなのですが、確かに御議論の中で、電子媒体主体の助成への移行、必要な経費、応募対象経費の緩和、これらについて御議論のあったところですし、オープンアクセスのスタートアップ支援というのも新たにここに今日御提案いただいておりますが、6の二番目の丸の三番目のポツですね。「ジャーナルの国際発信力強化のための取組内容の評価」という部分ですが、これは恐らく、国際発信力そのものを、例えばインパクトファクターのようなものを評価するのではなくて、国際発信力強化のための取り組みということだと思うのですが、この辺りについて、ちょっとどのような御議論があったのかということと、もう一つは、その三つ下の丸のところで、「英語論文を増やすための方策として、学協会が新たに英文電子ジャーナルを立ち上げるための支援が必要であるほか」ということがございます。これは生まれたてのジャーナルに対する支援だと思うのですが、これについてはまた別物ということでございますよね。この二つの確認でございます。

 もう一つ、「学術定期刊行物」という表題については、先ほど、「定期」をどう捉えるかというお話もございましたが、これについてはまた別途御議論いただけるということでよろしいでしょうか。

 以上、確認をお願いいたします。

【有川主査】  その辺りの議論は、恐らく、10月以降何回か費やして行うことになると思います。今回は少し頭出しのような感じだと御理解いただければと思います。

 それで、見え消し版の8ページですが、6の二つ目の丸から、今度は最後の丸との関係のところですが、そういう意味では重複感があるかも知れません。この辺りは最後にまとめるときには少し整理をしていく必要があると思うのですが、現在はそういった意見が出てきているということでいいのではないかと思います。

 発言された方、記憶されているならば、少しコメントしていただけますか。

 よろしいですか。それでは瀧川先生、どうぞ。

【瀧川教授】  これはもしかしたら10月に議論するべきことなのかも知れませんが、ちょうどいろいろ話題が出ましたので、科研費のことですが、オープンアクセスというのが一つ、キーワードになっております。資料にはオープンアクセス誌のスタートアップ支援とありますが、期限付の助成となっていて、これはオープンアクセス誌だけ期限付というように少し読めるのですが、そこは私は気になっております。歴史的に申しますと、オープン誌がなかなか財政的に立ち行きませんので、むしろオープン誌こそ、ある程度継続的な支援が必要だと考えております。全ての雑誌を最初だけ支援する、というようにするのであれば話は別なのですが、新しいオープン誌はスタートアップの支援だけで、他の従来あるものはずっと支援を継続するというというのは、これは少し理念に合わないというような気がします。

 少し私が知っている現状を申しますと、やはり理念から言うと、オープンアクセス誌を立ち上げるというのは最近非常に多いのですが、何年かしてやはり財政的に立ち行かなくなり、購読誌に戻るというケースがたくさんあります。どういうわけか、生物、医学関係は非常に長続きしておりまして、研究者がそれだけきちんとお金を出すという文化があるようですが、物理の方で言いますと、なかなか著者が掲載料を出すということが根づかなくて、何年かして購読誌に戻ってしまう。外国の非常にインパクトファクターが高かった雑誌でもそういったことがありますので、やはりこれはどちらかと言いますと、オープンアクセス誌の方こそ、ある程度継続的な支援が必要ではないかと思います。それはまた後で御議論いただければと思いますけれども。

【有川主査】  鈴木室長、どうぞ。

【鈴木学術基盤整備室長】  スタートアップの支援、期限付の助成と、ここだけ二重に強調しているのは少し行き過ぎかと思うのですが、そもそもそういった形で学術定期刊行物に助成するのがいいのかという議論はありますけれども、科研費は元々競争的資金で、期限が付いているということでございますので、既存の欧文誌、和文誌への支援、それからここで提案されておりますオープンアクセス誌の支援、いずれも期限は付いているということです。ただ期限について、どのくらいの期間、支援すれば有効なのか。1年ごとの支援がいいのか、もう少し、5年というような期間をまとめて支援して、その間に努力していただく必要があるというような観点が必要なのかということは、もちろん議論があるかと思いますが、科研費の性格上、ここはどうしても期限が付いた支援ということにならざるを得ない。

 ただその上で、10月以降の御議論かと思いますが、どのくらいの期間、まとまって支援するのが最も有効であるかということは、御議論いただければと思っております。

【中村委員】  10月からというともうすぐですが、議論する前に、一つ確認しておいていただきたいことがあるのです。それは科研費のこの枠というのは、金額を動かすつもりなのか、総額を動かさないつもりなのか。もし、例えば減らしたりした場合には、その科研費は他の科研費の枠に生かされるのか、ただ単に減らされてしまうのか。それから、実際上、増やすことはそもそも可能なのか。こうした問題は先に言っておいていただかないと、金額は全く同じままやりましょうということになると、これはやはり今のままどんどん続けるという結論にしかならないし、金額はだんだん減っていって、例えば5年の事業でターミネートしたらどうなるか。それでもいいのかどうか。そういった具体的な問題を10月までに少し考えておいていただかないと、本当の議論ができないのではないかと思うのですが。

【鈴木学術基盤整備室長】  平成25年度を目指して科研費の制度改善をという話ですし、来年度の予算すらどうなるかも分からない状況で先のことをお話しするのは何ですが、基本的に御議論を頂いた結果、必要があれば研究成果公開促進費の学術定期刊行物に関して増額というような形、若しくは新たなカテゴリーが必要であるならば、それに関する所要経費について、要求の希望は出したいと思っております。

 一方、国の財政が厳しい状況でありますので、議論の結果、既存のもののスクラップアンドビルドで取り組めるということであれば、そうした選択肢もあり得るかと思いますが、科研費全体で、研究費の方の予算はここまで相当伸びてきているのに、一方、研究で出た成果を発信していく経費というのが非常に薄く、結果的にこの学術定期刊行物もここ数年で、年々減ってきているという現状にあります。ここにつきましては委員の先生方の御議論を踏まえてということですが、逆に増額の方向に持っていければと考えております。

【有川主査】  御意見ございますか。今の件で何か。

【土屋委員】  今の件で言いますと、ともかくこの数字はやはり認識すべきです。平成13年度でおよそ8億円あったものが、今、3億5,000万円である。一番多くなったときは9億円を超えていたものが、今、3億5,000万円ということですから、きちんとした枠組みが作れたら、きちんと金額を積み上げる努力を我々としてはすべきであろうと思います。

【有川主査】  科研費は、今、鈴木室長からございましたように、最近、財政的に厳しい中で例外的に伸びているわけです。間接経費も大分ありましたし、基金化という新しい取り組みもスタートしているわけです。私の気持ちとしては、きちんと議論して、根拠のある大事なことであったら、日本は立派な国ですから、認められるのだろうと思っています。ですから、迫力のある大事な提案をしていけばいいかと思いますし、少なくとも、現状は維持できるだろうと思っているところです。

【松浦委員】  情報の発信の話をすると、すぐ発信のところに注目が集まるのですが、よく考えてみると、ある種のパブリケーションのビジネスを始めるということは、先ほど中村先生が言われた、最後のアーカイビングまでどうするのか、というところまで考慮した全体のモデルがなかったら、結局長続きはしないでしょう。この会議の報告書をまとめるときには、パブリッシュする人たちが全体を設計して援助を求めてほしいという明確なメッセージを入れておくべきです。これが第一点です。

 第二点は、資料の5.のところで、JST及びNIIの話は出ているのに、どうしてNDLの話は出ていないのかという疑問です。それぞれの機関で、それなりに適切なアーカイビングその他の作業が安定して行われているということは、パブリッシュする人たちが考慮しなければいけない重要なことなのではないでしょうか。JSTなどの試みを意識すると、国際発信の段階で、最初のサーバを買って5年間はもつけれども、そこから後は分からないというような出版計画は少なくなると思われます。ですから、出版計画を立てる場合の考慮要素に関する情報提供が望ましいと思います。

【中村委員】  それについてコメントがあります。

 今、いろいろと斬新なアイデアが出てきそうですが、学術定期刊行物の審査体制というのは、普通の科研費の審査体制と全く同じですから、我々のような大学の先生方が審査するのですよね。そうなるとサーバの何とか、かんとかと言われても分からないので、やはり斬新な提案をされるのであれば、別に審査体制もどうするのかというところまで考えておかないと、日本学術振興会の現場としては審査できませんということになってしまう。御存じのように、2月の2週間で審査をお願いしたいというわけですから、そこまで考えないと、現実的には動かないということは我々は考えておくべきだと思います。

【三宅主査代理】  査読の質保証の審査は難しそうですね。

【有川主査】  それはきちんとした体制を作りながらやらなければいけないということと、ビジネスとしてのモデルについては当然、明確にしておかなければいけないですね。それは三宅先生が御指摘のことを、今回のまとめの中に書いておいた方がいいと思いますし、その辺りが一つのスタートアップのような言い方がされていますけれども、そういった表現の中に実は入っているという気もしております。きちんと見通しを立てていなければならないということにはなるのだと思います。

【中村委員】  事業補助であれば、かなり多額のお金が要るので、ある意味ではもちろん、何十億円か用意しないといけないという話になってくると思うのですね。ですから、やはり、今回10月からの議論で、何を検討するのかということです。夢の多いものを議論して、そのかわりもっと大きくする。そうしたら、具体的に審査をどうするかというところまで踏み込まないといけないかと思うのですけれども。

【有川主査】  それから、恐らくはそうしたことを行うのに、国の方で補助すべきなのかという議論もきっとあるでしょう。

【土屋委員】  3の「学協会の刊行するジャーナルのオープンアクセス化」という整理の部分なのですが、特に二つ目の丸の「日本からの新規に情報発信を行うには、オープンアクセス誌を前提として考えざるを得ない」というのは、かなり強い前提になっている思いますので、これは御検討いただく必要がある点だと思います。つまり、本当にできないのかということについては、きちんと考えなければいけないだろうと思います。

 それから、三つ目以降の丸なのですが、ここの部分は、細かく言い出すときりがありませんが、少し事実認識において一般的とは思われないことがあります。例えば「購読誌では少数の出版社が独占的に価格をつける」ということですけれども、価格をつけているのは各出版社で、別に少数の出版社がつけているのではなく、各出版社がみんな価格はつけているわけです。例えば、エルゼビアが日本物理学会の雑誌の価格をつけているわけではありません。

 また、「オープンアクセス誌が経済的」かどうかについても、これはまだスタートしていないので分かりません。例えば最近、PLoS ONEという、オープンアクセスの雑誌と申し上げてよろしいかどうか分かりませんが、それが伸びていますけれども、依然として財政的にはドネーションに依存している部分が多い。インパクトファクターが大きいので、惑いますけれども、財政問題については全然解決していないという認識でいいのではないかと思います。

 それから「大手出版社のジャーナルは、ビックディール契約を中心に毎年購読料が上がっており」となっておりますが、ビックディール契約がなければもっと購読料が上がるので、これも相違した認識だと思います。

 また、「購読誌モデルが定常化すると、ジャーナルの値段が上がり、図書館の負担が非常に大きい」とありますが、本当にジャーナルの値段が上がったのは1980年代後半から1990年代です。今よりも弱い円高だったという気もするのですが、たまたま日本の場合には円高の時代だったのでしのげたという部分はありますが、アメリカの大学図書館などは十分、毎年10パーセント、20パーセント値段が上がっても軽くこなしてきたので、図書館は大丈夫ということです。

【田村委員】  ちょっとそれは。反論を。

 土屋先生への反論は置いておいて、先ほどの松浦先生の話の補足で、ここに確かに国立国会図書館のことが全く出てこないのは、やや問題だと思います。今回の博士論文のことが非常にいいケースだと思うのですが、実は国立国会図書館は、これまでは主に公共図書館とずっと関係していらして、大学図書館や学術コミュニティとの関係は余り強くなかったのだと思うのですね。それが、大規模デジタル化によって、学術コミュニティとも非常に関連が深くなってきています。ところが、そういった今までの経緯で、我々も何かデジタル化を考えるときに余り国立国会図書館のことを考えないし、逆に、国立国会図書館が学術出版物のデジタル化を考えるときにも、日頃のコミュニケーション不足からお互いに調整の仕方が分からず、非常に時間がかかるのですね。デジタル化について協調した行動を取ろうとするときに、ものすごく時間がかかる。ですからその辺りのことは、是非今回の報告の中に入れるべきだと思っております。

【有川主査】  ありがとうございます。国立国会図書館に関しては、少し微妙なところもないわけではないですね。

【田村委員】  ですので、こちらから国立国会図書館のデジタル化について何かサジェストするというようなことではなく、学術文献のデジタル化について、国立国会図書館と連携を進める必要があることを指摘すると良いのではないかと思います。

【有川主査】  明らかな違いは、本日こうして相原課長においでいただいているように少しずつ変わってはきています。ただ、国立国会図書館が持っている使命などを考えますと、そんなに簡単にいかないところがあるのではないかと思っておりまして、そこは少し考えさせていただきたいと思います。

 時間がなくなりました。たくさんの御意見を頂きまして、まとまらずに発散してしまったようなところがあるかも知れませんが、冒頭で御指摘いただきましたような構造に沿って、今後の議論の糧になるように整理をしていきたいと思います。

 今後、この整理したものをどう扱うかにつきましては、何回も繰り返して申しましたようにさせていただきます。

 私からは以上ですが、事務局から何か連絡はございますか。

【丸山学術基盤整備室長補佐】  本日はありがとうございました。この議事録につきましては、各委員の先生方に御確認の上で、公開とさせていただきたいと思います。

 次回ですが、10月7日の金曜日を予定しております。10時から12時、場所は本日と同じ16F特別会議室、この会議室になります。

 それ以降の日程につきましては、先生方のお手元の資料3でもお示ししておりますが、日程を調整させていただきました結果を整理しております。お忙しいところ恐縮でございますが、日程の確保等、最大限御努力をいただければ大変ありがたく存じます。

 本日の配付資料につきましては、机上にそのままお残しいただければ、事務局より郵送させていただきます。

【有川主査】  それでは、どうもありがとうございました。本日はこれで終わりたいと思います。

── 了 ──

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