研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第41回) 議事録

1.日時

平成23年7月1日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

科学技術振興機構麹町スクエア研究開発戦略センター2階大会議室

3.出席者

委員

有川主査、三宅主査代理、倉田委員、田村委員、土屋委員、中村委員、羽入委員、松浦委員、山口委員

文部科学省

(科学官)喜連川科学官
(学術調査官)阿部学術調査官、宇陀学術調査官
(事務局)戸渡大臣官房審議官(研究振興局担当)、岩本情報課長、鈴木学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

【有川主査】 それでは、定刻になりましたので、始めたいと思います。学術情報基盤作業部会第41回でございます。第6期の第4回でございます。

 お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は、関連機関による学術情報発信の取り組み等について御説明を頂きまして、その後で意見交換を行いたいと思っております。

 それでは、出席いただいている方の紹介を事務局からお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】 本日は説明者として、お三方にお越しいただいております。

 科学技術振興機構、大倉知識基盤情報部長でございます。

 国立情報学研究所、安達情報基盤推進部長でございます。

 国立国会図書館、相原科学技術・経済課長でございます。

 また、前回までに御説明を頂きました、日本化学会の林課長、日本物理学会の瀧川東京大学教授、電子情報通信学会の今井東京大学教授、日本言語学会の庄垣内京都大学名誉教授、日本学術振興会の小山内研究事業部長にも有識者として引き続き審議に御参加を頂いております。

 なお、日本経済学会の三野京都大学教授、日本植物生理学会の渡辺東北大学教授は、所用のため今回は御欠席です。

 以上でございます。

【有川主査】 よろしくお願いいたします。

 それでは、配付資料の確認と傍聴者について事務局から報告をお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】 机上に資料を配付してございますが、一番頭に議事次第がございます。本日の配付資料は、その中段でございますが資料1から資料6、それから参考資料といたしまして、前回の主な意見を整理したペーパーを御用意しております。そのほか手狭でございますが、机上にこれまで3回の会議資料をドッチファイルにとじてございますので、必要に応じて御参照いただければと思います。

 本日の傍聴登録でございますけれども、19名となっております。

 事前撮影、録画、録音の登録は本日はございません。

 以上でございます。

【有川主査】 ありがとうございました。

 それでは、今日の進め方ですけれども、全部で4人の方に御報告を頂きます。最初のお三方に15分ずつお話を頂きまして、その後で5分ほど簡単な質疑応答を行います。そして、4人の方が終わった後に時間を少しとってございますので、そこで議論していただければと思います。

 それでは初めにJSTの大倉部長に御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【大倉科学技術振興機構(JST)知識基盤情報部長】 科学技術振興機構、JSTの大倉でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は私どもの電子ジャーナル事業の現況や、今後の計画についてお話しさせていただければと思っております。

 スライド2が本日の私のプレゼンの内容です。まずは「電子ジャーナル事業の現況」として、(1)から(8)まで、登載のジャーナル数や外部からのアクセス数の推移について、お話しさせていただきます。次の項目が「海外プロモーションによる閲覧性の向上」でして、私ども、J-STAGEのジャーナルが海外の研究者の方に閲覧されて初めて事業としての意味を持つと思っておりますので、閲覧される機会を伸ばすために、どのようなことを行っているかということについてお話しさせていただきたいと思います。

 その次の項目が「利用学協会の連携・スキル共有の促進、情報提供」で、J-STAGEにジャーナルを登載している学協会の方々と、セミナーや意見交換会を通じてコミュニケーションを行っている状況についてお話しさせていただきます。その次の二つにつきましては「インパクト」という大げさな末尾がついていますが、一つめはJ-STAGE3でして、来年の4月からJ-STAGEを大幅に刷新して、新しいバージョンをリリースする予定ですので、そのお話をいたします。二つめが「ジャパンリンクセンターのインパクト」であり、新たにジャパンリンクセンターというものをJ-STAGE3と並行して開発しております。国内の電子ジャーナル、それから検索サイトをどうつないでいくか、閲覧性の向上のために日本の流通をどうしていくかということについて、このジャパンリンクセンターというもので実現していきたいと思っております。J-STAGE3と同じく来年の4月にリリースする予定でして、このお話をさせていただきたいと思います。

 最後に付録としまして、「各種委員会」を付けております。

 それでは、まず「電子ジャーナル事業の現況」です。スライド3が「全体機能の概要」ですが、スライドの中央にJ-STAGEがございます。J-STAGEは4月末現在で725ジャーナルを登載しています。その隣にJournal@rchiveがあります。J-STAGEは平成11年に開始しましたので、たかだか12年分のジャーナルが入っている、つまり当初から登載しているジャーナルでも12年分の蓄積です。それ以前のバックナンバーを電子化する必要があるので、遅れてこのJournal@rchiveをスタートさせて、創刊号にさかのぼってアーカイブを進めているという状況です。実はこの2つがばらばらであることが問題であるわけですけれども、開発のタイミングが違ったということで、後ほど御説明いたしますJ-STAGE3では、この二つを一体化することについてお話しさせていただきたいと思います。

 この二つで国際的な、標準的な電子ジャーナルの発信を実現しているわけですけれども、機能としましては、全文の検索機能や、早期公開、冊子体よりも先に公開するであるとか、もろもろの機能をそろえています。また、国際標準でのCOUNTER準拠の利用統計ですとか、閲覧されるお客様には直接関係のない話ですが、内部的にこのような国際標準のいろいろな機能をそろえておりまして、もう一つが、剽窃検知サービスです。これは残念ながら、私どもが自前で開発したものではございませんで、CrossRefというところが開発したcross checkというサービスを提供しています。お伝え忘れましたが、J-STAGEは公開するだけではなく、論文の投稿審査システムもサービスしておりますので、投稿審査サービスを利用される方は同時に、今話題になっております論文の剽窃検知のサービスを使いたい場合は使っていただく、というようなサービスも付加的に行っております。

 J-STAGEも、Journal@rchiveも、それぞれのサイトのトップ画面からアクセスしていただくのが標準ですが、あるいは、各ジャーナルのトップ画面からアクセスしていただくというのが標準ですが、実際にはGoogleからの検索で論文にたどり着くというアクセスが一番多くなっています。

 一般の方々からの利用という意味ではそれでいいのかも知れませんが、海外の研究者にJ-STAGEの全文を閲覧していただくという観点では、研究者の方が日常的に使っている外国のデータベース群、例えばPubMedや米国化学会のデータベースであるとか、いろいろな抄録の検索サイトから、その抄録を検索した結果、J-STAGEの全文を閲覧するというアクセスルートのためにリンク関係を張る必要が当然ございますので、こういったリンク関係を広げることに注力しています。

 国内についても同様で、例えばNIIのCiNiiであるとか、NDLのPORTAであるとか、そのようなところで検索した結果からJ-STAGEの電子ジャーナル論文にたどり着くという、こういうアクセスを拡張していく必要があります。このような内外のデータベースとJ-STAGEのリンクを実現させる「リンク機能」というものを持っています。

 この三つ、J-STAGE、Journal@rchive、リンク機能が大きな機能でして、その結果、これも電子ジャーナルとしては当然ですけれども、海外のジャーナルで引用されたJ-STAGEの論文であるとか、それがクリック関係で閲覧できる。あるいは逆の、この論文が引用されている論文は何かというような関係がJ-STAGEの閲覧の中で表示されてくるということをこのリンク機能で実現している。これが機能の全体概要です。

 続きまして、スライド4が事業成果です。J-STAGEの参加学会数が毎年数十は増加しているということと、海外から年間1,600万件程度のダウンロード数があること、その内訳が左の円グラフで、半分程度は日本からのダウンロード、その次が中国、アメリカと、半分は海外からのダウンロードという状況です。

 成果の三つ目に掲げているのは海外からの投稿が増加している状況ですが、これがJ-STAGEとの直接の因果関係があるかどうかは分かりませんけれども、電子ジャーナルとして発信していけば、当然こういう状況が起きてきて、これは良いことであろうと思っています。

 それから、実際に使われている方のアンケートの結果ですが、約9割の学協会の方から、J-STAGEを使うことによって海外発信力の強化に役立っているという回答を頂いていまして、その内訳が右の円グラフになっています。役に立っている、多少役に立っている理由を記載しておりますし、反対に役に立っていないとおっしゃっている方々の理由につきましては、和文誌のみを登載している方もおられるので、そういう方は当然海外の発信力ということではどうかなというような、そういった理由もありまして、役に立ってないという回答も頂いている状況です。

 続きましてスライド5です。これは事業を開始しました平成11年から平成22年度までのジャーナル登載数の伸び、並びに利用されている学協会の数の伸びです。平成22年度の末の現在ですと、J-STAGEを利用しているのが748ジャーナル、学協会数では681です。

 スライド6ではJ-STAGEで公開されているジャーナル、平成23年4月末現在では725誌ですけれども、分野別の内訳は円グラフで示されたようになっております。135誌が、学際や人文社会科学の分野の登載ジャーナル数です。

 スライド7は、横軸に毎月をとりまして、アクセスがどのように変化しているかというグラフです。棒グラフが登載論文数の累積ですので、毎月伸びていくのは当たり前でありまして、折れ線がアクセスの数、論文数は左のメジャーになります。アクセスの数は右のメジャーでして、大体毎月600万件くらいのアクセスページ数です。これは抄録だけのページ等も含んでおりますので、実際に全文がダウンロードされた数が一番下の折れ線になっていて、毎月、150万件ほどです。

 スライド8からがJournal@rchiveの状況です。平成17年度から日本学術会議の代表の方に集まっていただきまして、どの学会のジャーナルをアーカイブするということを選定していただいております。毎年選定していただきまして、平成21年度を終えたところで644誌をアーカイブしているという状況です。

 スライド9がアーカイブの分野別の雑誌数で、人文・社会分野については119誌という状況です。

 スライド10がJournal@rchiveの毎月のアクセス数であり、アクセス数はJ-STAGE側の約半分程度です。

 続いてスライド11が、海外プロモーションというテーマです。国内外での抄録データベース等で検索した結果からJ-STAGEのジャーナルを見ていただく、論文を見ていただくというアクセスルートを広げるということと、引用文献間、海外の商業出版誌のジャーナルの引用文献にJ-STAGEの登載論文があったときに、クリックするとJ-STAGEの論文が見られるという閲覧機会を増やすこと、国内外のいろいろなサイトからのアクセスルートを増やしていくということが大事なことだと思っておりまして、スライドにもPubMedを始めMathSciNetでありますとか、米国化学会であるとか、例えば取次店のswetsであるとか、今、EBSCOとも交渉していますが、これらを拡大していくということは重要なことであろうと思っております。

 スライド12は利用学協会との連携・スキル共有の促進等、このような活動も日常的に行っていることの御紹介です。左上がJ-STAGEセミナーです。これは年に一回行っておりますけれども、講師の方をお招きして、実際に役に立つような、例えばジャーナルの地位を高めるというのでしょうか、ジャーナルの質を高めていくためにはどういったことに留意したらいいか、などということを講義していただいたり、右は意見交換会という名称で東京と大阪で年二回開催していますので、合わせて年四回、このような活動を行っております。利用されている学協会の編集に携わっている方々と意見交換して、事例報告でありますとか、こんなことを行ったらうまくいっただとか、そのようなことをお互いに意見交換できるような場を作っている。こういった活動を行っております。それから、J-STAGE Newsというものを、年に四回発刊しております。さらに、右下にある著作権に関する相談コーナーを設けるというようなことも行っております。

 スライド13が、来年4月からスタートする新しいJ-STAGE3についてです。大事な点は、遅ればせながらですけれども、今、二つに分かれておりますJ-STAGEとJournal@rchiveを統合して、最新号から創刊号まで一つのサイトで検索できて、閲覧できる。これは当たり前のことですが、遅ればせながらもしっかり実現することが大事だと思っています。

 J-STAGE3は、右上に書いてありますが世界標準形式のXMLベースで全面的に構築します。海外の商業出版誌の発刊する商業出版誌もXMLベースで進んでおりまして、HTMLベースのハイパーリンク的な機能のジャーナルが、J-STAGE登載のジャーナルにもできるようになるということに加えて、左上にあるような互換性・流通性の向上など、これらは私ども運用している者にとっても重要なことでありますし、内外のいろいろなジャーナルの機関とのデータのやりとり、それからジャーナルを高度化していくときに、こういった世界標準のXMLベースでシステム自体をつくり上げるということが大事ですので、そこを実現します。利便性につきましては、モバイル端末で見られるようになることですとか、右側にあるのは投稿審査システムですけれども、これは今まで自前で作っておりました。けれども、研究者の方々にとっては、あるジャーナルを投稿するときはこの投稿システム、J-STAGEの雑誌のときにはこの投稿システム、というようなことよりは、投稿審査システムについては、海外で標準的に使われているものをJ-STAGE側でも用意して使っていただこうというように、方針を変更しています。

 右下にあるのは、学会の方々、出版業の方々、印刷業の方々がJ-STAGEにデータをアップロードするときに、運用の手間を省いて安くできるようにということを心掛けるつもりで開発しているものでございます。そのような点を重視しながら、J-STAGE3を現在開発中でございます。

 同じく並行して開発しておりますのが、スライド14のジャパンリンクセンターというものでして、我が国の電子ジャーナルがJ-STAGEだけではなくて各所で作成されていて、それらの電子ジャーナル群、あるいは大学の機関リポジトリや、研究独法であるとか、様々なところでアーカイブされたり、発刊されたりしているということが日本中で幸いなことに起きてきています。これらの電子的なデータについて、その所在を管理しようというのがジャパンリンクセンターでして、所在を管理するためには、各論文やオブジェクトにIdentifierを付ける必要がある。それについては世界標準のDOIという形式でのIdentifierを各論文やオブジェクトに付与して、そのDOIと、その所在のアドレスであるURL、これをペアリングしておくことを確実に行う機能が日本の中に必要なわけですので、こういったものを作って、実際にはこちら側に日本の中の電子ジャーナル、J-STAGEだけではなくNIIやNDL、それから農水省等、いろいろ各所で作っているものについて共同でここで管理する、各々がデータを持ち寄って、ここで共同に管理をしましょうということです。

 その結果、スライド14の左側にある国内のデータベースですとか、海外のデータベース、右側にある海外のジャーナルの引用文献からもそうですけれども、そうしたものがこのリンクセンターを経由して実際の全文の在りかにたどり着いていく、そのようなパスをここで管理して、みんなで担保していく。一緒にオールジャパンでやっていきましょうという考え方のジャパンリンクセンターというものを構築しています。

 来年の4月オープンですので、是非リポジトリを大学で行っている方々や、データベース、全文データベースを作っている機関の方々に参画いただいて、どんどんこれを発展させて、日本の科学技術情報の流通の促進に寄与していきたいと思っております。

 最終スライドですけれども、今まで述べてきましたような活動は、全て委員会制度で方針を検討していただいたり、チェックしていただいたりという形をとっております。左上にありますのが、推進委員会で、これが一番上部にあります。この委員会は、日本学術会議の一部、二部、三部の方に出ていただいて、事業を大所高所から見ていただこうという委員会です。

 右にありますのが、実際のジャーナルを編集されている先生方や、学会事務局で編集に携わっている方に集まっていただいて、現場的ないろいろな意見交換をしていただくため、アドバイスいただくための委員会です。

 左下にありますのは、先ほど御説明しましたジャパンリンクセンターについて御検討いただいている委員会のメンバーです。

 このような形・枠組みで、私どもはいろいろ検討をし、事業を進めているところでございます。

 私の説明は以上でございます。どうもありがとうございます。

【有川主査】 ありがとうございました。簡単な質問があればお聞きしたいと思いますが、何かございますでしょうか。よろしいですか。

【土屋委員】 変な質問で申し訳ないのですが、ここ2、3年、J-STAGE に載っていた優秀な雑誌が海外の出版社との契約で販売され、利用の仕方が変わっているというようなことがあると思うのですが、ほんのわずかですけれども、どれもいい雑誌なので、その辺りについて、J-STAGE側としてはそういった動向について、どのような評価をされているのかということを教えていただきたいのですが。

【大倉JST知識基盤情報部長】  評価をするというか、そういう見方というか。私どもとしては、是非J-STAGE等を通じて日本の学協会のジャーナルを、国内の発信基地から発信していただきたいと思っております。国内の学協会の活動の一つの大きな柱はやはりジャーナルの発刊だと思っておりますので、発刊する力、また投稿審査を国内で行うという力ですとか、私どもの立場としては、日本の学協会のジャーナルが全て、J-STAGEだけとは申しませんけれども、是非国内から発信していただきたいというのが願いであるわけです。

 ところが、それにはいろいろ現実やビジネスの問題等があり、考え方は学会の方々の自由でありますので、ここ数年、例えばJ-STAGEで登載されていたジャーナルが海外の商業出版誌に移るような例が進んできています。ここ数年で、J-STAGE等で発刊されていたものが、海外の商業出版社に移ったものが10から20あるのではないかと思っています。結構有力なジャーナルもあり、非常に寂しいという気持ちはあるのですけれども、逆に、海外の商業出版社で発刊していた雑誌が、諸事情によりJ-STAGE側に戻ってきたという例もございます。そのようなことも繰り返されながら、いずれかの方向に向かっていくのだろう、そんなような感想は持っております。

【土屋委員】 事実として認識されているということですね。

【大倉JST知識基盤情報部長】 私は余り好ましくないというか、ゆゆしきことかなと思っておりますけれども。

【有川主査】 7ページや10ページにあるグラフの読み方ですが、論文数は増えているけれども、アクセス数などについては余り影響を受けてない。これはどのように解釈するのでしょうか。

【大倉JST知識基盤情報部長】 グラフをそのまま見ると、その通りの解釈になると思います。論文数は徐々に増えてきているが、アクセス数は必ずしもそれに比例するものではなくて、ここ何年かは横ばい状態というように数字から見れるということでございますが、このアクセス数というのは、非常に水ものだと思っています。Googleがどういうふうにクローリングするかとか、インデックスするかというところにも結構依存はしていて、このグラフでは見えないのですが、先ほど申しました例えばPubMedからのリンクであるとか、そういうところは着実な伸びをしていますので、ほとんどのこの揺れはGoogleに起因するところも大きいとは思っています。

【土屋委員】 よろしいですか。それについては、私は余り問題視する必要はないのだと思うのです。要するに、論文は寿命が短い。その年に出た論文をそのときに読むという機会が多ければ、載っている論文が幾ら増えても、古い論文がアクセスされなくなっていくだけです。出た論文を見るということであれば、余り大きく、正比例して伸びるということはまずあり得ないだろうということなので、余り気にしないでいいのではないか、とこのグラフは見ていました。

【有川主査】 なるほど。あるいは、契約者数が一定のところまで来ていて、論文数が増えても、見る人が変わらないということもあるのかもしれません。いずれにしても、非常に面白い表ではないかと思います。

 どうぞ。

【中村委員】 ジャーナルの国際化の問題、つまり、国際発信ということですよね、趣旨としては。ジャーナルの国際化というのは、10年くらい前までは、外国で読んでもらうとか、外国から投稿してもらうということで、国際化が進んだと考えたわけですけれども、現時点では、審査員も国際的で、エディターも国際的というのでないと、もう国際的ではないのです。というのは、少し考えてみたら分かりますけれども、日本人だけがエディターで、日本人だけがレフリーになっているジャーナルに、アメリカ人や中国人が喜んで投稿するわけがない。何のメリットもありませんから。アメリカの雑誌も、ヨーロッパの雑誌も、国際誌は今やみんな、エディターも、レフリーも国際的になっていますよね。ただし、もちろん概して、投稿者も、エディターも、レフリーも自分の国の人が多い。その地域というか、ヨーロッパはヨーロッパ、アメリカはアメリカで動いている。日本のJ-STAGEが本当に国際化しようとすると、外国の審査員と、外国のエディターや審査員を自由自在に使えるようなシステムにしないと、今、起きている国際化には対応できないと思いますが、それを実現されるのはいつごろになるでしょう。

【大倉JST知識基盤情報部長】 J-STAGEは、プラットフォームの事業と言われているのですが、共同プラットフォームを作って、どんどん利用してくださいという形の事業がメインでして、各ジャーナルの編集や、査読の体制は各学会がどうするかと。国際的にしていくにはどうするかということに対して、私たちが何か具体的な支援をできるという枠組みは今ありません。ですから、私たち自身が何かそこに手を出せるということはないですが、海外の審査員の方々を使って、国際化していくことは必要でしょう。ただ、そういうことも含めて、またプラットフォームをどこから提供するかということを含めて、海外の商業出版誌に、学会誌を発刊する力を全て委ねてしまうということはどうなのだろうか、と考えているところはあるわけです。

【中村委員】 ですが具体的には、私たちの分野だと、アメリカもイギリスも投稿原稿のハンドリングにはScholarOneを使っているのですけれども、国際誌の仕事は英語で、かつウェブ上で行いますから、別にどこの国の会社でも構わないわけですよね。世界中で最も強力な会社で、よいサービスを提供してもらう会社と契約する。商業出版社かどうかとはまた別の話ですね。つまり、ジャーナル、論文の発行を手助けしてくれるところというのは別にもありますから、そこと競争しないと、要はビジネスにならない。日本の学術雑誌が、日本のJ-STAGEを使う必然性は全くないと考えてもおかしくない。それはいかがでしょうか。

【大倉JST知識基盤情報部長】 それはもちろんのことですし、学会自身が決定していくことだと思っております。ある意味では競争の社会でもあるし、J-STAGEだけが全てではなく、ということも承知の上でいろいろ申し上げているわけです。全部委ねてしまうと、何かきっと弊害があるのだろうと思っているものですから、いろいろ申し上げさせていただきました。

【有川主査】 それでは、また後ほどお伺いしたいと思います。NIIの安達先生、お願いします。

【安達国立情報学研究所(NII)学術基盤推進部長】 国立情報学研究所の安達でございます。本日は私どもの事業について御紹介する機会を頂きまして、ありがとうございます。

 今日お話ししようと思っていますのは、資料2の内容ですが、スライドは随分多く用意いたしましたが、資料的な意味もあり、たくさん用意しました。適宜スキップして参りたいと思います。

 まず初めに、情報発信が今日のトピックですけれども、私どもとしましては、最先端学術情報基盤、CSIと申しますが、その中で、大学等の教育研究基盤を充実するということが大学共同利用機関としてのNIIの目的でございます。私どもの行いたいことは、大学の教育研究で必要な情報をいかに確保するかということで、スライド4ページのようなことをいろいろ行っておりますが、今日は余りお話ししない一番左のNII-REOは、海外の電子ジャーナルのライトアーカイブです。Springerですとか、IEEEのジャーナルを400万件近く蓄積しております。私どものネットワーク、SINETは今回の大震災の際も途切れずに動いていたわけですが、ライトアーカイブで国内に外国の電子ジャーナルがあるということの価値がこうした震災時に分かったということで、改めてこういったものの意義も考えなければいけないと思っているところでございます。

 いずれにせよ、確保をどうするかという中での発信を考えております。

 発信に関しましては、既に今までに出ました当作業部会の審議のまとめで指摘されたことに沿って、活動を続けてきております。第一番目に御紹介するのは、学会誌・紀要論文の情報発信でございますが、CiNiiという、先ほど大倉部長の御説明でも出てきましたポータルで提供しております。私どものCiNiiは、学協会のつくるいろいろな雑誌や、大学の機関リポジトリ、紀要、それから国立国会図書館のつくるデータベース、J-STAGEの情報などを全部、とにかく集められるメタデータを全部集めて、それを同定、きれいにして、全文にとにかくアクセスできるようにしようというのがこのシステムの目的です。

 統計的なことはスライドの8ページに載っておりますが、現在このようないろいろなデータベース、国立国会図書館、J-STAGE、Journal@rchiveからのメタデータなど1,400万件を集めまして、可能なものはフルテキストでのリンクをきちんと行っていくという趣旨です。この中で、同じメタデータが色んなデータベースに入っていますので、それをきれいにして閲覧しやすくするというのがこのデータベースの特徴です。

 スライド10ページが統計ですが、第一には、人文社会系のものを積極的に入れております。それから、初号からの電子化もしており、これは73%。この中の幾つかの部分は、先ほど大倉部長が説明されたJournal@rchiveにも移しているところです。それから無料一般公開が63%ということで、これは、私どものこのシステムはビジネスモデルを持っております。サイトライセンスなど、そういったことを行っておりまして、例えば一番著作権料のお支払が多いのは、電子情報通信学会で、数百万円をお返ししております。一番人気のあるところです。技術報告など、そういったグレーリテラチャー、つまり普通のルートではなかなか入手しにくいものが見られるというところが、このシステムです。

 次の事業は、スライド12の長い日本語のものですが、略してSPARC Japanと言っております。平成15年から行っておりますが、我が国の優れた英文の学術雑誌をいかにして国際発信していくかということで始めた事業です。平成15年からの第一期、そして第二期でいろいろなことを行いましたが、45の優れた雑誌を選びまして、パートナー誌として様々なコラボレーションを行ってきました。先ほど出て参りました編集・査読システムのScholarOneを導入するなど、そのようなことで、国際的なジャーナルとして育っていくことを支援してまいりました。調査活動、アドボカシー活動というようなことを継続して行っております。SPARC Japanは、アメリカの研究図書館協会(ARL)のもとにSPARC US、そしてヨーロッパにSPARC EUがあり、それらと連携して活動しているということであります。

 二期行って参りまして、私どもの認識は、クオリティーの良い電子ジャーナルについては、電子化の技術的問題はおおむね解決されているということです。例えば編集・査読システムではScholarOneを使えばいいとか、マニュスクリプトセントラル、そうしたものがあります。それから、ポータルとしてはいろいろなソフトウェアができております。あとは、学会がそれをいかに自らに導入し、活動していくかということが残されている問題だと私どもは認識しております。

 少し見直し期間をおいて、現在は第三期ですが、ビジネスモデルの構築、プロモーション活動、そしてアドボカシー活動などということで、いろいろなことを進めております。

 具体的な成果として、何を行ってきたかと申しますと、電子投稿査読システムの導入や、ジャーナルパッケージをつくりました。生物系のUniBio Pressですとか、通信学会の英文誌、それから金属学会の英文誌などをパッケージ化し、大学図書館とコンソーシアム契約を行っていくというようなことに至っております。外国のサイトとの連携や、プロモーション活動、アドボカシー活動として、例えば既に話題になっておりますオープンアクセスジャーナルの編集方法や、様々なインパクトファクターのことなど、いろいろなことについて外国のこの分野の識者を呼んで、学会誌の編集者などとのフォーラムをずっと行って参りました。こうしたことが、具体的なアドボカシー活動です。

 次の話題は機関リポジトリです。大学のリポジトリから、大学の情報をいかに発信するかというのがもう一つの課題であります。これは平成17年から取り組んでおりまして、お陰様で現在のところ、実質では世界第2位の数のリポジトリが大学にあるということになっております。数的にはそれなりの成果を収めたと思います。クオリティーなどが、次の課題だと思っております。

 大学が機関リポジトリに入れたものをハーベスティングして、私どもJAIROというポータル、ここに情報が蓄積されております。大学のリポジトリにあるフルテキストなどに、先ほどのCiNiiからつながっていくというような形で、いろいろな文献に、可能な限り本文につながっていくというようなことを作っております。

 第一期、第二期、第三期ということで、コンテンツ生成など、いろいろな研究開発的なプロジェクトを行って参りました。現在、205件のリポジトリが全国の大学にあります。国立大学はおおむね大部分のところにありますが、多数ある私立大学にどうやって裾野を広げていくかということが現在の課題です。そのために、この間の補正予算でお陰様で予算を得ることができましたので、共用リポジトリという形で、クラウド型のリポジトリサービスを今年度中に進めようと、今、鋭意準備を進めているところです。これでロングテールのところの研究機関をすくっていけるのではないかと思います。

 それでは、今後どうするかということについて少し御紹介したいと思いますが、まず日本学術会議から出た提言がございます。その中の一つの重要な部分が、学会誌へのアクセスに関する課題の解決ということで、私どもは大学図書館との間で昨年度協定を結びました。これは国立大学だけではなくて、国公私の全ての大学図書館との協定になっております。その内容は、スライドの23ページにありますように、広範な課題をカバーしているのですが、当面の喫緊の課題は電子ジャーナルをいかに確保するかということで、JUSTICEという名前のコンソーシアム連合をつくりまして、今年の4月から私どものオフィスに国立大学や私立大学の図書館からの出向の方が来て、ElsevierやSpringerなど、そういった会社との価格交渉を連日行っているという状況です。いかに日本の大学、国公私の大学が価格高騰に抗して電子ジャーナルを確保するかということで、現在、努力しているところであります。

 CiNiiにつきましては、サービス連携やデータ連携拡充、電子化の継続などを続けていこうと考えております。

 次に、SPARC Japanの展開ですが、私どもとしては、日本の環境に合ったオープンアクセスを検討していきたいと考えております。一つには、機関リポジトリにどんどんセルフアーカイブで研究者の成果を蓄積していくということ。それからアドボカシー活動、パイロットの事業などを現在検討しているところであります。

 次の重要な課題は、国際連携であります。オープンアクセスに関しては、既に国際的な活動としてSCOPE3や、コーネルで行っておりますarXivがあります。私どもとしては、こうした国際的な活動をするときの日本の窓口として、大学図書館や関係機関と密な連絡を取りながら進めているところです。もちろん、こうしたことを進めるためにはUSのSPARC、ヨーロッパのSPARCとの情報交換、そうしたことが極めて重要であります。

 最後に、機関リポジトリについては、オープンアクセスポリシーというのが重要だと私どもは考えております。具体的に申し上げますと、例えば科研費で出た成果論文を機関リポジトリにセルフアーカイブする。関連したデータベースとかソフトウェアをアーカイブして公開していくというようなことを、今は非常に緩い形で科研費の報告書の執筆要領には書いてありますけれども、そうしたことで、国としてオープンアクセスを推進していくというポリシーを、具体的に検討していくということも重要ではないかと思っております。

 また、学位論文も機関リポジトリで公開することが段々普通になってきていると思いますけれども、こういったことも国立国会図書館ともお話をしながら進めているところです。

 研究者の理解を得るというのは、一番大切でして、これをどうするかということが積年の課題です。

 それから、コンテンツの長期保存や、災害時にどうするかというようなことも重要なこととして私どもは認識しております。

 先ほど申し上げました、国公私立大学図書館のコンソーシアム連合との深い強い連携が、私どもが活動していく方向であります。その中で、最初に申しましたように、NII-REOというライトアーカイブ、こういったものが電子ジャーナル高騰に対するセーフティーネットとしても重要かと思います。

 また、スタンフォード大学で行っておりますCLOCKSSという分散型の電子ジャーナルアーカイブのプロジェクトがありまして、私どもが日本の窓口として、日本の大学図書館がこれに加わるということを行っております。日本で災害が起こった際に、そのジャーナルが外国のサーバーでサービスを始めるというようなことを行うような分散システムです。こうしたものも進めていくというのが、現在のターゲットになっています。

 最後のスライド28ページですが、私どもは、JUSTICE、新しいコンソーシアムで行っているサブスクリプションモデル、それから機関リポジトリのセルフアーカイビングモデル、SPARCで取り組んでおりますオープンアクセスモデル、この3つのモデルの融合により電子ジャーナルへのアクセスを保証し、オープンアクセスを推進していく。そうしたことを推進していきたいと思っております。

 どうもありがとうございました。

【有川主査】 ありがとうございました。それでは、簡単な質問などありましたらお願いします。

【羽入委員】 大変分かりやすい御説明をありがとうございました。機関リポジトリに関して、NIIの大変な支援を頂いたことのある大学として少し御質問したいのですが、この機関リポジトリの事業によってオープンアクセスは非常に進んだように私は理解しておりますが、その際に問題になるというか、クリアすべき課題が何かありますでしょうか。先ほど小さい大学の共同リポジトリということをおっしゃいましたが、その他に何かありましたら教えていただけますか。

【安達NII学術基盤推進部長】 機関リポジトリには二つの意義がありまして、一つは、大学が作っているいろいろな情報の発信です。学位論文や、様々な報告書、ソフトウェア、データベースなど、それらを発信するためのメカニズムとしては、それなりに随分定着してきたと思うのですが、オープンアクセスの観点で、きちんとした雑誌に掲載された論文をセルフアーカイブして公開するという形で、研究者が論文を投稿する、入れていくということがなかなか進まない。図書館までは私どももアプローチできるのですが、先生方までアプローチし、それを継続的に行うには、何らかのインセンティブないしは制度化のようなことが必要で、先ほど科研費について少し申しましたけれども、アメリカ、NIHに関しては、国の法律として、公開しなさいというのが制度化されています。そうしたようなことを我が国でも行うことによって、加速するのではないかと思っております。

【羽入委員】 ありがとうございます。

【有川主査】 鈴木室長、何かございますか。よろしいですか。

 ほかにございましたらどうぞ。

【土屋委員】 先ほどSPARCの御説明の中で、専ら学術雑誌の発信についての御紹介が多かったと思うのですが、最後のスライドで、SPARCについて、オープンアクセスという形でまとめられていますが、本論の紹介のときに余りオープンアクセスの話としてSPARCを御紹介いただけなかったような気がしますので、その辺りの関係を教えていただけたらと思います。

【安達NII学術基盤推進部長】 SPARCも長く行っておりまして、内容が変質しております。最初は、非常に高額な雑誌に対抗する良い雑誌を発行するということで始まりました。幾つかの成功例はあったのですが、なかなかそれではいかないということで、別の方策として、オープンアクセス、セルフアーカイブなど、色んな方策を併用して取り組んでいこうということになりました。例えばアメリカのSPARCでは、現在、NIHのポリシーを制度化するということに相当の力を注いでおります。そのように、オープンアクセスについてはいろいろな困難な面がありますので、そういうことについて試行錯誤しながら取り組んでいくというのが、先ほどの御説明にもあらわれているとお考えいただければと思います。

【有川主査】 よろしいでしょうか。どうぞ。

【山口委員】 大変興味深い内容の発表をありがとうございました。国際情報発信力の強化についてですが、「国際連携の推進」の重要性が強調されています。例えばSPARC USやSPARC Europeとの連携を強化した後のステップ、及び利用者側から見た利点というのはどのようなものでしょうか。また、アメリカ、ヨーロッパなど多様な研究環境を持つ国々と連携していく中での課題はどのようなものが挙げられますか。

【安達NII学術基盤推進部長】 連携するときの利点ですが、例えばSCOPE3にしろ、アーカイブにしろ、連携するときの利点は、向こうがリアルに出版社と行っている交渉や、具体的に幾らで買っているというような情報にまで、参加することによって接近することができるということです。そういうことによって、国際的な圧力を出版社にかけるということになると思います。そうした形で、出版社との緊張関係を維持するために国際連携は極めて重要です。大変なのは、そのために電話会合を行ったり、いろいろな形でお付き合いしなければいけないというのは大変負荷が大きいです。

【有川主査】 よろしいでしょうか。

【中村委員】 例えばドクター論文の公開にしろ、大学の中の情報の公開なのですが、何から何までウェブ公開したらいいというわけでもないような気も最近しています。というのは、ドクター論文というのは学生個人が書きますから、この中に細かいノウハウその他がたくさん書かれていますよね。今まではそれを大学の図書館に入れるなり、どこか限られた場所だけで閲覧できただけだったのだけれども、これがウェブで国際的にすぐさま公開されるとなると、版権の問題とか、共同研究者の権利、そういった問題が生じてくる可能性があるのですが、そのような点はどう考えられますか。

【安達NII学術基盤推進部長】 私どもも、機関リポジトリについては、そういう大学内としての制度化と一緒になって、きちんと作っていきなさいということをやっております。ですから、そういった博士論文について、共同研究者からのサインをもらうというようなことも含めて、きちんとした制度を大学の中でオーソライズしていくというメカニズムも含めて作ってください、というのが私どものプロジェクトです。

 その中でいろいろな大学、東京工業大学などは随分その辺りに意欲的に取り組んでおられると思いますけれども、大学の差は出てきております。それを横で情報交換することによって全体のレベル、先行して取り組んでいる大学の経験をうまく普及させるというような形でやっております。

【有川主査】 松浦先生、お願いします。

【松浦委員】 中村先生の延長なのですが、日本でその問題が言われていることはよく存じています。しかし、この問題は別に日本に限るわけではなくて、電子化された博士論文を公表するとなると、どの国でも全てこの問題が絡むはずです。そうするとアメリカあるいはヨーロッパの大学の公表方針がどうなっているのかという情報が必要です。ところが案外とその話は入ってきてないように思います。そこで、この点について情報をお持ちだったらお教えください。

【安達NII学術基盤推進部長】 アメリカに関してはUMI、ユニバーシティー・マイクロフィルムというのが昔からマイクロフィルム化して行っていました。それがそのまま電子化に移行しております。

【松浦委員】 ですから、もしそうだとすれば、ノウハウとかアイデアが入っているから公表に慎重であるべきだという議論は、なぜ日本だけで目立っているのか気になります。私は図書館の責任者で、電子化された博士論文の公表を推進しようとすると、必ず理科系からこの話が出ます。ところが、案外、外国の大学のポリシーはどうなのだという話は余り聞かないのです。ですから、きちんと調べた方がいいと考えています。

【安達NII学術基盤推進部長】 それは、学術雑誌の電子化のときにも同じ問題が起こりまして、医学系ですと、個人情報に関わるようなものが昔の雑誌には載っていたりします。それから、昔の大学院の論文には著作権処理がいい加減なまま、写真など引用が載っていて、それをそのまま電子化すると具合が悪いというケースがあるので、その点に注意すると、いろいろ問題が出てくる。そこをきちんとしなければいけないということです。

【松浦委員】 NIIではその辺りの情報を、どの程度持っていらっしゃいますか。

【安達NII学術基盤推進部長】 博士論文に関しては、そういうものは持っておりません。しかし、機関リポジトリで扱う雑誌の著作権については、プロジェクトで、どの雑誌はどのような形で公開できるかというデータベースを作って、図書館の人が機関リポジトリで電子化するときには、そういうデータベースを見ながら、きちんと権利の条件を把握して電子化しています。ですから、似たようなことをいろいろなコンテンツで進めればよいということと受け止めました。

【松浦委員】 分かりました。ではこの問題は、ある程度きちんとした調査が必要なのですね。

【有川主査】 我々がここで議論するかどうかという問題はあると思いますが、かなり一般的な問題だろうと思います。それから、学位論文については、公表を義務付けられているはずです。公表の仕方が、印刷物として、ある程度の部数、あるいはかなり限定的な部数で公表されて、国立国会図書館などに行かなければ見られないものと、ネット上に掲載されているものとの違いは、実は結構あるということが分かってきているのだと思います。それは安達先生がおっしゃったことですが、少し昔のデータですと、差別的なことなどがその時代は許されていたかもしれない。しかし、今はネット上に掲載したら問題になるなど、古い地図一つにしてもそういうことがあります。その辺りをどうしていくかというのは、別なところで確かに議論しておかなければいけないことだろうと思います。

【土屋委員】 よろしいですか。学位論文の公表のタイミングに関しての議論というのは、既にイギリスのEThlOSというところや、NDLTDというグループのETDs(Electronic Theses and Dissertations)に関連してかなり調査しています。基本的には、学位論文の発表というときに権利関係はクリアされているというのが前提だということなので、それを電子化するかどうかということについて、特に改めて問題が起きているということではないということです。

【中村委員】 私が関わっているアメリカの有力誌の現場では、現実に問題が起きています。なぜかというと、ディサテーションで全文が公開されて、その内容が今、投稿されている論文とかなり似ている。あり得ますよね。すると二重投稿ということになります。つまり、先に論文をばっと出してから、1年くらいたってディサテーションが出る分にはいいのですけれども、逆に、先に学生と誰かが共同研究した研究についての博士論文がウェブに一旦出てしまうと、その内容を学術雑誌に出そうとしたときに「おまえ、二重投稿だろう」となる。その学生以外の共同研究者の権利が損なわれる。更にいえば、博士論文と学術論文が文章まで同じだと、これは二重投稿と見なされるのは当然として、研究内容が同じでも、後で出した学術論文は少なくとも速報としては認められなくなる。ジャーナルとの間でコンフリクトは現実に起きています。

【土屋委員】 もちろん。ですから、そういった事情が、そういったことが実際に起きていることは事実ですけれども、建前論としては、そこは著者側がきちんと権利処理してコントロールするというのは、建前なのです。

【中村委員】 そうなってくると、リポジトリをウェブ上で公開する時期を、その研究に関わった人全員の同意を得てから決めないといけないことになる。ディサテーションがそのまま自動的に公開されるのは非常に困るということだけは確かなのです。

【土屋委員】 ただ、自動的にということではなくて、公開するというのは著者が公開するということです。著者というのは、その場合には学位取得者が公開するわけですから、その方が共著者なり、その他の権利関係で侵害の可能性があるような人との間の関係を処理しないで、自分で自分のリポジトリに載せるということはあり得ないという原則です。無理やり引きはがしてきて載せるという話ではないのですから。

【中村委員】 これ以上細かく話してもしようがないのですけれども、現実はなかなかそう簡単ではないということは確かです。

【有川主査】 特に電子的にネット上に掲載する場合だけではなくて、本当は印刷物のときも同じ問題が起こっていたはずです。深入りをしますと終わらない気がしますので、とにかく最後まで進めてみましょう。

 それでは、NDLの相原課長、お願いいたします。

【相原国立国会図書館(NDL)主題情報部科学技術・経済課長】 国立国会図書館の相原と申します。どうぞよろしくお願いします。

 今日は、当館が行っています事業のうち、特に学術情報に関わるもの、主にデジタルアーカイブに関係する事業について簡単に御紹介させていただきます。

 初めに組織の御紹介ですが、当館は御存じのとおり、国会に所属する機関になっております。

 現在、東京と関西、それから上野に子ども図書館があり、三館の体制になっております。

 所蔵資料は、東京と関西で分け持つような形になっておりまして、主に外国雑誌、科学技術関係資料については、ほとんどが関西館にあるという状況です。

 所蔵資料数は御覧いただいているとおり、図書と雑誌がそれぞれ大体1,000万弱くらいの所蔵です。

 この所蔵資料を別の観点で切り取ってみますと、科学技術関係資料としてスライド4のように、テクニカルレポートや、欧文の会議録、海外の学協会ペーパー、博士論文、科研費の報告書、規格資料などを所蔵しております。

 電子ジャーナルも、スライド5のようなものを導入しております。

 予算は、全体で195億円弱ということで、そのうち資料費がおよそ24億円となっています。この資料費の中ですが、国内資料については、納本制度によって資料を収集しており、実費相当分を出版者の方にお支払いしています。そのための予算がこの納入出版物代償金です。先ほど科学技術関係資料の概要を御紹介しましたけれども、24億円の資料費の中で11億円程度のかなり大きな予算が科学技術関係資料費としてついております。こちらの図書館資料購入費というのは、科学技術関係以外の海外の出版物の購入であるとか、あるいは、納本分だけでは足らないので、追加で購入する国内の出版物などに使っているお金がこの金額ということになります。

 情報システムの経費は、この195億のうち、41億円です。

 学術情報流通におけるNDLの役割として、スライド7に四点挙げました。

 国内出版物に関しては、納本制度に基づいて網羅的に収集しており、収集したものは長期的に保存し、将来にわたる利用を保証するというのが大きな役割になっています。日本国内の学協会の出版物も、この納本制度の枠組みで納入いただいています。学会の論文集や、会議資料などがこの中に含まれます。

 二つめの外国出版物については、先ほどの資料購入費を使いまして買うものと、国際交換で集めている資料がかなりございます。国際交換とは、主に政府機関等の官庁出版物が該当しますが、各国の国立図書館、あるいは国際機関との間で行っており、当館の側から日本の官庁資料を渡して、海外の機関からは先方の刊行物を頂くという形で資料を集めています。外国出版物については、国内出版物とは異なり、選択的に集めているというものです。

 それから、科学技術関係資料ということで、先ほど予算のところで見ていただいたとおり、かなり大きな別枠の予算がついており、国全体の科学技術情報基盤の整備の一環として、先ほどスライド4、5で御説明しました海外の出版物を重点的に、10億円少しのお金を使って収集しております。主に海外の学術雑誌と電子ジャーナルがかなりの大部分を占めております。

 そのほか、去年度行われた国の第四期科学技術基本計画の議論があり、知識インフラという構想が出てきたわけですけれども、これを踏まえまして、NDLでも今後いろいろと取り組みをしていかなければいけない、ということが求められているところです。

 スライド8が、今日これからお話しする内容の目次です。

 この間、当館は紙媒体を中心に図書館の業務を行ってきたわけですが、最近になってボーンデジタルの情報がたくさん出てきた。これを保存し、将来にわたり提供できるようにしなければならない。

 それから、既存の媒体、紙の資料についても、保存の問題が大きいです。劣化が非常に進んできて、このままいくと、将来的な利用が損なわれるという状態がありまして、以前であれば、マイクロ化ということでその対処を行ってきましたが、最近はデジタル化でこの対処を行っています。またデジタル化を行うことで、ボーンデジタルの資料などとも合わせて、より有効な活用が図られるということもあります。

 媒体には紙があったり、電子があったり、ネット空間の中のいろいろな場所に情報が散在しているという状態ですので、情報の媒体と所在場所を問わないような形で利用者を適切な情報源に案内する、という仕組みをつくる必要があるという課題があります。

 こういった課題について、この三つのアンダーラインの取り組みを行っています。

 まず一つ目の電子情報資源の収集、保存、提供です。ボーンデジタルの資料ですが、まず初めに、平成12年にパッケージ系の電子出版物の収集が国立国会図書館法の中で規定されまして、収集の制度化がなされました。紙と同じように、網羅的に集めることが平成12年10月から開始されました。

 この時点で、いわゆるネットワーク系と言われていたネット上で提供される情報については、この時点で一旦、まだ時期は熟していないということで、今後の検討ということになったのですが、平成14年の6月からは、法的な制度化はなされていませんが、インターネット情報選択的収集事業、WARPと略称していたプロジェクトを開始しまして、発信者、サイトの運営者などから個別に許諾を行って、許諾が得られたウェブサイトをハーベストする、収集するという取り組みを行っています。

 その後、去年の4月から、国立国会図書館法の改正を行い、国等の機関のインターネット資料を網羅的に収集するという仕事が始まっています。これに伴いまして、従来選択的蓄積事業という名前だったのですけれども、「インターネット資料収集保存事業」と名前を変えまして、ネット上の情報資源の収集事業を進めております。

 この事業の概要ですが、収集提供対象については、国立国会図書館法で定められている公的機関等につきましては、一々許諾を得ることなく全て収集する、ということです。

 提供についてですが、館内の提供については、これは紙に準じるということもありまして、原則として収集したものは利用者に館内の端末で閲覧してもらう、またプリントアウトをする、そういったことを行いますが、インターネットでの提供につきましては、個別に許諾が得られたものだけ行うということになっています。公的機関以外のものについては、先ほどのWARPの事業と同じように、個別に発信者から許諾を得たもののみ収集して、提供もその許諾に従って行うという形になっています。

 6月24日現在の収集サイト数、これはカテゴリーごとのURLの数ですけれども、スライド10の数字になっております。ここに電子雑誌というカテゴリーがありますが、機関のサイト単位とは別に、電子雑誌という固まりで把握できるようなものについては、こちらのカテゴリーで収集するというようになっています。

 この中には当然、学協会がネット上で提供しているような雑誌も含まれています。ただ、こちらで収集していますのは、あくまでも、スライド11にありますとおり、クローラによる自動収集ですので、例えばログインしないと使えないとか、データベースに入っているものについては収集しておりません。

 国等の機関については、クローラによる自動収集ができない場合は、発信者の方にファイルを送信、送付していただくということができるような法的な枠組みになっております。ただし、例えばNIIやJSTも国等の機関の中に入るわけですが、NII、JSTが持っているいろいろなコンテンツは、当然ずっと蓄積して、サービスを提供すること自体を目的にしておりますので、それを重ねて我々で収集するということはいたしておりません。ですので、サイトの性格によって、ものによっては集めないというものもございます。

 収集頻度ですが、国等の機関は月に一回、地方公共団体等は四半期ごととなっています。ウェブサイト別、これは、アメリカのインターネットアーカイブのような提供の仕方ですが、収集したウェブサイトをそのまま見せるものと、あとは、著作単位で切り出して保存して、著作単位のメタデータをつけて提供するというものと、二つの見せ方で提供しております。

 去年6月に、民間で刊行されている電子書籍、電子雑誌等に該当するものの収集制度化についても納本制度審議会から答申を頂いておりまして、現在、出版団体や著作者の団体などと個別にいろいろと御相談しながら、収集の法制化の中身を検討しているところです。

 それから二つ目は、蔵書のデジタル化ということですが、今までお話ししましたのは、ボーンデジタルについてですが、こちらは既存の媒体、紙の資料の電子化についてです。

 こちらについては、近代デジタルライブラリーというプロジェクトで、明治期以降の図書のデジタル化を10年ほど前から進めております。スライド13の件数ですが、訂正があります。6月末、今週にデータが投入されまして、現在54万冊分のデータがシステムの上に載っていまして、インターネットに提供しているものが24万冊分というのが正しい数字です。

 平成13年度から始めたこの事業では、著作権調査を実施して、既に保護期間が切れていることが確認できたもの、許諾が得られたもの、文化庁長官の裁定を受けたものを電子化していったわけですが、平成21年6月公布、平成22年1月施行で著作権法の改正がありまして、保存を目的とした電子化が許諾なしに可能になりました。加えて予算的にも、平成21年度に景気対策の大きな補正予算がつきまして、127億円のデジタル化予算がつきました。制度的な条件が整い、なおかつ予算もついたということで、平成21年度から平成22年度の二か年をかけて、大規模デジタル化事業を実施しております。

 平成23年3月時点での状況ですが、当館の所蔵資料の4分の1がデジタル化されている状況です。図書ですと昭和43(1968)年くらいまでの90万冊、雑誌は劣化しているものや、雑誌記事索引の採録雑誌を中心とした114万冊がデジタル化されています。

 また、先ほど安達先生のお話の中で出ていました博士論文についても、平成12(2000)年度以前の部分を当館が責任を持ってデジタル化するということで、今、平成3(1991)年くらいまで遡及し、デジタル化が完了している状況になっています。

 この学位論文のデジタル化については、大学と協力しまして、いろいろな仕事を行っており、先ほど申し上げたデジタル化の分担ということで、スライド15にある年限で、前後に区切って当館が分担しております。

 許諾に関しても、共通許諾と言っておりますが、去年6月からスライド15にあります三点について、著者に対して許諾を求めるということを大学と共同して行っているところです。

 それから、デジタル化に際しては、出版関係の方との協議を行って進めてきたところです。協議会をつくり、スライド16に挙げられているような事項について相談しながら進めてきているところです。

 デジタル化した資料の提供ですが、先ほどのボーンデジタルの資料と同じように、館内閲覧と、複写、プリントアウトを通常の紙媒体の資料と同じような範囲で行います。それと、許諾が得られたものについてはインターネット提供も行うということになります。

 それから三点目ですが、ナビゲーションサービスの提供ということで、紙媒体の資料、電子化されたもの――電子化されたものも、ボーンデジタルのものや、当館がデジタル化したものなどいろいろあるわけですが、当館の所蔵資料の中でも多様なものがありますし、他機関、図書館の所蔵情報や、デジタル情報資源を横断的に検索できるような、「国立国会図書館サーチ」「NDLサーチ」というサービスを始めています。

 平成22年7月からプロトタイプ、開発版ということで、全部の機能はまだそろっていませんが、公開をしました。平成24年1月から正式運用を開始予定です。平成24年1月に向けて順次機能を拡張したり、あるいはデータの移行作業などを現在行っている状況です。

 このNDLサーチですが、当館の所蔵資料のメタデータであったり、あるいは総合目録の参加館のメタデータなどを集めて利用者に提供したり、いろいろなAPIを持っていて、例えばいろんな機関のサービスの中にNDLサーチのサービスを組み込んで使っていただけるようにしたりとか、あと、Googleなどのサーチエンジンでハーベストされたデータを通じて、Googleから利用者を誘導するといったようなことを行っています。

 多様な情報源を検索するサービスになっているのですが、学術関係では、スライド19にあるような機関のデータを現在NDLサーチで検索できるようになっています。CiNiiとJAIROに連携させていただいています。

 この他、リサーチナビというレファレンス情報のデータベースであるとか、公共図書館や大学図書館と協同して進めていますレファレンス協同データベース事業などがあり、この中でも、いろいろな主題に関係するコンテンツを蓄積して、様々な情報源に利用者を案内できるような仕組みを作っています。

 最後に、一番初めに御紹介しました国の第四期科学技術基本計画の議論で、知識インフラということが出てきたわけですが、当館に科学技術関係資料整備審議会という委員会があり、当作業部会主査の有川先生に委員長をお願いしておりますが、昨年度、提言を頂戴しました。従来、国立国会図書館は文献情報に閉じた形での仕事が中心だったわけですが、それを生かした上で、更に多様な知識インフラの実現につながるような取り組みを今後行う必要がある、という提言を受けまして、今年の3月に第三期科学技術関係情報整備基本計画というものを策定いたしました。

 スライド22の真ん中に、項目がいろいろと並んでいます。今まで取り組んできたことも当然この中にあるわけですが、今後、NII、JSTや、その他いろいろな関係する機関とも協議しながら、当館が持っているリソースを様々な形で活用していただける、そういったインフラを構築していくための仕事を国立国会図書館では予定しております。

 以上で終わります。どうもありがとうございます。

【有川主査】 ありがとうございました。何か質問ございますでしょうか。どうぞ。

【土屋委員】 二点ほどまず伺いたいのですが、一つは、デジタルのものの長期保存について、NDLの場合には長期的な保存ということを恐らく非常に重要と考えると思うのですが、長期保存自体は決して簡単なことでもない思います。その辺り、どのような構想をお持ちなのかということを教えていただきたい。特に、非常に細かいことになりますけれども、確か数年前のNDLの報告書で、90年代から2000年代にかけて集めたCD-ROM、フロッピーディスク等の資料を見ようと思ったら、70%が見られなかったというサンプル調査があったと思うのですが、例えばそのようなパッケージ系の収集に関しての利用の、持続的な可能性について最近はどのような方策をとられているのか、その辺りをまず一点伺いたいと思います。

【相原NDL主題情報部科学技術・経済課長】 残念ながら、具体的な取り組みは、まだ行っておらず、研究段階です。マイグレーションですとか、そういった研究を今まだ続けている段階でして、本当に業務としてそういった資料を将来も使えるような形にしていくというところまでは、残念ながらまだ至っていない状況です。ただ、重要な課題であるということはもちろん認識しております。

【土屋委員】 大体そのようなことかと了解しました。もう一つは、最後にナビゲーションサービスの提供というところでお話になったのは、あくまでこれは、こういうような情報がありますよ、ということを教えてくれるサービスだということだと思うのですが、最近Googleなどを見ていると、レファレンス協同データベースの項目が上がってきて、面倒なのですけれども、それを見ていくと結局、図書館に来て見なさいということにしかほとんどの場合ならなくて、オンラインの資料には到達できない形になっている場合が非常に多いのではないかと思います。

 他方で、電子情報資源の収集・提供とか、蔵書のデジタル化というのは、元の情報そのものを電子化しているということなので、なぜこの二つのことを取り組まれながら、その間には全く関係がつかないのか、つまり、サーチした結果をクリックしたら元のコンテンツが見られるというのが世の常識だと思うのですけれども、それをあえて拒む理由は国立国会図書館の場合にはどこにあるのか、ということを教えていただきたい。

【相原NDL主題情報部科学技術・経済課長】 やはりこの十数年の間、全体の大きな絵を描いて、そこに向けてそれぞれのシステムをつくり上げてきたと必ずしも言えない部分がございまして、現在いろいろなシステムの統合を裏側で行っております。そういったシステムの見直しの中で、これまでばらばらであったいろいろなコンテンツを統合的に扱えるようにしていこうということを、今、行っているところです。先ほどのNDLサーチもそうした取り組みの中の一つと考えております。

【有川主査】 電子化のやり方にも関係しているのでしょう。どこかに整理してあったと思いますが、許諾を得ているものや館内だけであれば構わないということなどです。電子化については、本格的な動きというのは比較的最近出てきたと思いますので、今後期待できるのではないかと思います。今のナビゲーションに関しましては、JSTもNIIも同じような感覚で、また、各図書館でもいろいろ工夫はしているところですけれども、当然最終的にはコンテンツに到達できた方がいいと思いますが、若干の制約などがあるだろうと思います。

 ほかに何かございますか。

【相原NDL主題情報部科学技術・経済課長】 今の御質問の補足なのですが、有川主査がおっしゃったように、館内でしか見られないというコンテンツが非常に多いので、館内ですと割とコンテンツ間がつながっており、検索して、リンクをたどれる状態なのですが、インターネット上ではそのようになってないというところもあります。

【田村委員】 二点お伺いします。一つは、16ページのところで、著作権情報の活用ということを書いておられます。大学図書館などにとって、著作権問題は非常に重要で、著作権情報、例えばNDLの調べられた著作権調査の結果、そういったものが利用できるというのは非常にありがたいと思うのですが、その辺り、どのようにしておられるかというのが一点です。

【相原NDL主題情報部科学技術・経済課長】 先ほど機関リポジトリのお話が出たときに、大学でもそういう権利情報を持っているというお話がありましたが、当館でももちろん今回のデジタル化プロジェクトの中で作っていまして、その利用に関しても、関係者協議会で検討したのですが、具体的な動きは確かまだないように思います。申し訳ありませんが、私はこの件についてきちんとお答えできませんので、改めて状況を確認しまして、きちんと正確なところをお答えしたいと思います。

【田村委員】 お願いいたします。皆がいろいろなところで同じような調査を一生懸命行っているというのは、いかにも無駄だという気がいたします。

 もう一点ですが、知識インフラに関連して、インターネット情報を収集していらっしゃって、基本はサイト単位だろうと理解しているのですが、我々が欲しいのは、例えばそこにある統計情報とか、具体的な、そこから取り出された情報だと思うのです。そうした収集データの組織化については、どの辺りまでがNDLの責任範囲で、ここから先は図書館や研究機関などがやるべきである、とお考えかというところはいかがでしょうか。

【相原NDL主題情報部科学技術・経済課長】 今、田村先生がおっしゃられたのは、あくまでも欲しいのは著作物であって、バルクのサイト情報などではないというお話だと思うのですが、現在、必ずしも業務として量あるものを順調に処理できている状況になっていません。今、著作単位で提供させていただいている情報というのは、ウェブサイトをそのまま収集した中から、人手で切り出し、メタデータも付けるという作業を行っております。ですので、非常に負荷が高い作業になっております。ただ、これをきちんと行わないとなかなか使える状態にならないというのは、先生のおっしゃるとおりと思います。こちらについては、我々の中でも課題になっていまして、本当は何らかの枠組みによってそういった著作を識別できるようになっていればありがたいのですが、今はそのようになっておりませんので、人手で行っているという状況です。

【有川主査】 よろしいでしょうか。

 松浦先生、お願いします。

【松浦委員】 先ほどの蔵書のデジタル化のお話で、特に日本語の書物については昭和43(1968)年まで、ほぼデジタル化されたと伺いました。しかし遠隔地からの利用は、著作権等ために不可能です。東京まで来て、デジタル情報を利用してくださいというのは、変だと思います。それは、デジタルデバイドを深めることになるからです。莫大な予算を投入する以上、デジタル化が完了したときに、一般の利用を図るかは、事前に十分検討すべきことかと考えます。その点についてはどの程度の検討がされているのかを、基本的な方針だけでも教えていただきたいと存じます。

【有川主査】 私が答えることではないのですが、デジタル化というのは、どこからでも見えるようにするということもありますが、とにかくデジタル化しておくことに意味があるということも十分考えられるわけです。それで、いきなり見せるということになりますと、越えなければいけないことが実は山ほどあるのです。それは大学の図書館などと違った大きな問題を抱えているわけです。しかし、デジタル化することによって、例えば非常に貴重な資料で、余り頻繁に開けて触ってみるわけにはいかないものなどを一度デジタル化しておくと、その保存に関しては非常にいいわけです。うまく言えませんけれども、そのような側面もありますので、デジタル化したものが外から見られないのであれば駄目だということも言えないのではないかと思います。

【松浦委員】 デジタル化が様々な目的で行われることに異議はありません。しかし、この作業部会のテーマは、学術情報の発信・流通ですから、そこから考えると、デジタル化された情報について、確かな利用策はあるのかが気になります。やはりいろいろな格好で議論をしておくことには意味があると思います。

【有川主査】 もちろんそうです。それで、今日はそれぞれの立場をお持ちの三つの機関からお話を伺いまして、今まさに松浦先生がまとめていただいたようなことを議論するための、我々の共通認識にしたいということでございました。

【相原NDL主題情報部科学技術・経済課長】 ほとんど有川主査にお答えいただいたのですが、パワーポイントの16枚目のスライドを御覧ください。デジタル化したものを利用するために、関係者の方とお話しながら、そこで合意できたところで前に進めていくという進め方をこれまで行ってきました。これは、私どもの仕事自体が出版者の方々の御協力なしには全く成り立たない、お互いの信頼関係があって今までも納本制度が成り立っていたというところがありますので、松浦先生から御覧になって非常にもどかしいかも知れませんが、見守っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【有川主査】 あともう一方、化学会の林課長から、資料4についての御説明を10分ほどお聞きしたいと思います。日本学術会議における学術誌に関する調査等を踏まえて、学協会における情報発信に関わる取り組み事例と課題について取りまとめていただいております。よろしくお願いいたします。

【林日本化学会課長】 それでは、日本学術会議-文部科学省協同による学術誌に関する予備調査について、御報告させていただきます。

 そもそもこの予備調査はどのような経緯で始まったかと申しますと、本作業部会の第6期の一番初回に、私から話題提供させていただいた、日本学術会議の包括的学術誌コンソーシアの提言や、それにまつわる学協会等の学術情報発信に関する諸問題の議論を関係者と行う中で、日本にどれだけの学術誌があり、どれだけの発行規模であって、各学会が抱える課題や将来に向けたビジョンに関して、定量的な調査がないことに気づきました。こういう感じで、こういう感じでという形、あくまで定性的な議論しか行われていないという認識が生まれました。

 そこで、いきなり大上段に構えて、学協会学術誌白書というようなものをつくるという訳にもいきませんので、とにかくできることから始めてみようということになりました。資料4の調査準備という項目に目を移していただきたいのですが、Googleを使うと今、簡単にアンケートが作成できますので、簡単に答えられるアンケートを作成し、実際に日本学術会議に加盟している団体、1,800程度に送付をしたところ600ほど返ってくるという、ある程度の反応を受けました。この結果を受け、もう少し予備調査を続けることが可能ではないかということになり、文部科学省から少々の援助を頂きながら、以下に記載してあります予備調査1ないし予備調査2というものを行っております。

 まず予備調査1は、代表的学協会によるインタビュー調査をさせていただいておりまして、先ほどのGoogleアンケートで反応が良かった学会と、それから代表的な学会についてインタビューを行いました。代表的な学会というのは何をもってというのは、これは極めて主観的でございまして、学協会の規模、インパクトファクター、分野、この三つの総合評価を関係者で行い、都合30程度の学協会を選択して、1時間から2時間にわたるインタビューを行いました。

 このインタビューにつきましては、資料4の5ページを見ていただきますと、具体的に実際にインタビューが終わった学会名が記述されています。一部正式名称となっていない点があるところは御了承ください。医薬生物、人文社会、理工分野に大別させていただきましたが、その三分野でそれぞれの一定の量のインタビューを行いまして、その学協会ないし学術誌がどのような規模で、どのような方向で、どこを目標に向かっているか等々をインタビューさせていただきました。

 それと合わせまして、基礎的な情報を得て定量化するために、資料4の1ページ目に戻っていただきたいのですが、予備調査2として、学術会議加盟団体に向けたウェブアンケート調査を行いました。これは、先ほどほとんど御説明してないのですが、Googleアンケートを更に拡張化しました。Googleアンケートの際は、とにかく返答数を増やしたかったということで、匿名でお答えいただいたので、実際どの学会がどのように答えたかというのは分かりません。あえてそうすることで回収率を上げる戦略だったのですが、今回はきっちり学協会名を押さえ、どれくらい反応があるか見てみようということにしました。

 ところが、アンケートを始めたのが3月の初めで、2週間もしないうちに震災が発生しましたため、まだ現在もアンケートを回収している最中でございます。そのため、6月27日までのデータを、本日のために簡単に解析して御報告させていただきます。解析したものが、机上配付資料になっております「学術誌動向調査アンケート結果」であります。こちらは、中に全ての質問項目が分かるようになっております。また基本的にイエス、ノー形式にして、簡単に答えられるようにしております。学協会全体で見ると、やはりいろいろぼやけることが分かりましたので、詳しい御説明は時間の関係で割愛させていただきますが、学協会全体で結果を見るのと、サイエンス・サイテーション・インデックス採録誌、つまりインパクトファクターが付いているジャーナルを持つ学協会でフィルタリングを行ったもの、それから機関誌(会誌)の和文誌のみを発行している学協会でフィルタリングを行った結果、この二つが非常に対照的な結果を表すということが分かりましたので、今回は御参考までに、この三つのデータを席上配付させていただいております。

 本格的な解析はもう少ししっかり回収率を上げてからということになりますが、残り時間も限られておりますので、結論的なものとして御紹介したいのは、インタビューと、アンケートの結果も踏まえまして、今回の作業部会の議論に役立つようなキーワード群を引き抜く作業を文部科学省と共同で行った結果で、資料4のページ2の「学協会による情報発信に係る取組事例と課題について(案)」になります。

 特に施策の立案のために参考になる既存の事例ということで、1とさせていただいております。これも一つ一つは御紹介できないと思うのですが、最初に一つ気をつけていただきたいのは、これらを全ての学会に当てはめればよいというものではなくて、こういった取り組みを各学協会が行っているということを紹介するものです。当然、それぞれの学協会に役立つもの、役立たないものがあることが推察され、とにかく複数の学協会に聞いた結果として、このような取り組みが日本の学協会でも行われているということを示したことになります。

 1の最初のところの「編集・出版体制(編集委員会、エディターの活用、査読)」、やはりここが一番皆さん御努力されておりまして、海外エディターや専任エディターの雇用、活用はもう既に行っている学協会もありますし、アジアを意識した活動を行っているところもございます。

 それから、和文誌の方も力を入れているところもあれば、研究者の人脈を生かした原稿依頼を行うなど、また、よい査読者へ謝礼を支払っているという、新しい取り組みを行っている学協会があることが分かっております。

 一方、「電子出版プラットフォーム」の項目につきましては、やはりどこかのプラットフォームを使っているという学協会が多いですので、学協会に直接聞いてたくさん事例が出るわけではございませんが、それでも、該当論文の被引用先の表示、スマートフォン向けのサービス、電子付録の多様化、例えばパワーポイント形式での図表のダウンロードなどの例が、実際に行われていることとして挙がっております。

 一方、「オープンアクセス」に関しましても、既に様々な取り組みが行われていまして、電子版別刷を無料配布することで研究者間には無料で見せるようにするという試み、また、ディレイドオープンアクセスと呼ばれますが、出版後1年経過したらオープンアクセスにするということも行われています。さらに、日本物理学会などでは、この作業部会でも御発表いただきましたように、PTEPの発刊においてオープンアクセス化することを決定されておりますし、電子情報通信学会でも、オープンアクセス誌の創刊を二つ行っております。

 オープンアクセスを進める背景として、インパクトファクターを上げるためのオープンアクセス化を意識されている学協会もあるということになります。

 最後にページ3にありますが、ビジネスモデルとしても、各種の取り組みを見ることができました。著者アンケートの実施、シンポジウムの開催、投稿セミナー、査読セミナー、プレス発信、また表紙に力を入れることによって著者を引きつけるなど、あるいは、論文賞などや、合同プロモーション、NIIの安達先生から御紹介ありましたように、学協会系をまとめて合同プロモートしている例なども既にございます。

 このような項目を並べているときに強く感じたのは、編集委員長及び編集委員の熱意が非常に高いジャーナルというのは、良い施策や良い結果を生んでいるということが分かりました。一昨日出ましたインパクトファクターの最新値を見ましても、ここでインタビューをさせていただいた中で、編集委員の方々が非常に熱心だなと思ったジャーナルのインパクトファクターを確認したところ、そうした熱心なジャーナルは上がっているということを確認させていただきました。

 具体的な施策としては以上を紹介させていただき、それ以外に、施策には直接関係しない、あるいはこの場での議論には必ずしも結びつかないかも知れませんが、参考となる課題や関連情報を、ページ3の2「考慮されるべき学術誌の課題、及び関連情報」にまとめさせていただいております。

 本作業部会でも既に議論ありましたが、インパクトファクター以外の指標の意識を非常にたくさんの学会が持っておりますし、日本経済学会としては、研究成果の質を客観的に保証する装置としての学術誌の意識をもっておられる。つまり、書いた時点で自分のウェブサイトで公開するが、2年かけても学術誌にて発表する。出版にそのような意義があると考える学協会もある、というお話もございました。

 また、編集委員レベル、事業レベル、事務レベルでの情報の共有の場を持つことの重要性、これは一部SPARC Japanで実現しておりますが、まだまだ足りていないというような感触を受けております。

 オープンアクセス化のための初期支援要望もありましたし、次々と現れる新しい電子ジャーナルサービスへの対応への意識、それから電子情報通信学会の今井先生からは、学術誌だけが問題でなく、学会からの情報発信としてのウェブの充実を考えているというお話もございました。

 また前回議論がありました、科研費研究成果公開促進費の電子ジャーナル対応や和文誌中の英文誌割合の制限緩和についてという話もございました。

 加えて、よく言われましたのが、学術誌の育成は地道に長く続けるものであって、短期的な視点で行っても、そう簡単には変わらないという御意見でした。それから、やはり日本が強い研究分野を持つ学術誌が活きがよい。これは、先ほど申し上げた熱意のある編集委員の方々がいるということとほとんど同じで、日本のジャーナルで、その分野が世界において非常に強みを持っている、そうした分野のジャーナルを国として押すということは、日本としても非常に大事なのではないかと、インタビューの感触として思いました。

 時間も過ぎそうですので、あとは急がせていただきますが、学術誌を定量分析することによるコンサルテーションに関しては、一定の理解を得られました。これは分野を問わず、あるいは分野間を比較するためにも必要であるだろうと考えております。

 最後に、4ページに移らせていただきまして、以上の施策例や重要な観点を踏まえつつ、今回行われた議論の中で、一つのキーワードがありましたのは、学協会は自主的に活動しているのでその自主性に任せれば良い、そのような考え方がありました。調査を行いながら、やはり自分たちで頑張っている学協会は、例えば国の支援はもう要らないとはっきり明言されたところも正直ございます。それでもやはり日本の学術誌として、たとえ自助努力や関連領域との連携があっても、更に必要だと感じたものは、例えば持続性です。日本の学協会は、世界から見ると小さい学会が多いので、単独機関によって努力や改革をし続けていくにはやはり限界があります。また技術力をとっても、持続性と絡めてとなりますが、急速に進むIT化にこらからも対応させ続けていくというのは、なかなか難しい状況にあります。

 それから情報力に関しても、学術情報流通について知っているようで知らないことがたくさんあるということが分かっています。つまり、学協会間の学術出版に関する情報リテラシーの向上と平準化がされていないことが考えられます。

 ということで、以上の課題を解決するためにはどのような人材が想定されるかを考察しますと、電子出版、電子出版ライセンシング、国際活動における渉外活動あるいはPR活動、そしてそれらをコーディネートする、このような人材がやはり必要なのではないかという考察をここでの議論と絡めまして、最後に御報告させていただきたいと思います。

 以上です。

【有川主査】 ありがとうございました。非常に貴重な調査をしていただいていると思いますが、何かございますでしょうか。

 時間がなくなってしまいましたが、最初のJSTの大倉部長のところに使った時間が一番少なかったような気がいたしますので、最初の発表に対しての御質問、御意見もいただけたらと思います。

【中村委員】 林課長に質問なのですが、大分たくさんアンケートを送られたのですよね。この学協会の数というのは、例えばアメリカとかヨーロッパの人口比で比べると、多いものなのですか、少ないものなのですか。日本には随分たくさんあるような感じがしたのですが、日本の数から想像すると、アメリカだと何千もの学会があるというようなことなのですか。

【林日本化学会課長】 すみません、今は定量的な数字は一切持ち合わせていないので、お答えできないのですが、関連して一つだけ言えるのは、よく言われることでもありますが、欧米はアンブレラソサエティーの形式を持つことです。よく一神教、多神教というように例えるのですが、一つの基幹学会の下にディビジョンとして部会、ディビジョンがぶら下がるのが欧米によく見られる学会形式でありますが、日本ではよく言えばオープンフラットの形で、欧米でいう傘下の部会が全部横に独立した学協会として並びますので、やはり日本の学協会の数は定性的には多いと言わざるを得ないと思います。

【松浦委員】 感じとしてですか。

【林日本化学会課長】 定量調査がないままですので、感じとしてという、非常にあいまいな表現になってしまうことを御容赦ください。あとは、今回のアンケートを行って分かったことが、国際的な学術情報発信のためにある学会と、そうでない学会というのが混在していることです。ですので、これはアンケートの生データを見ていただくとすぐ分かりますが、我々の議論に沿わないような答えが出てくる場合もあります。サイエンス・サイテーション・インデックスに採録されている雑誌を持つ学協会でフィルタリングしたのは、国際発信力を高めようとしている学協会で結果が見たいという動機だったのですが、他にも教育のためとか、産業のためにある学協会もありますので、そこは分けて議論しなければいけない。更に加えてまとめると、まずは分野と学会の規模というマトリックスによる分析が必要で、その上で、その学会が持つ目的、使命が国際情報発信に関連するのか、しないかの分類も本作業部会の議論のためには必要だということが、アンケートの結果ではっきりしております。

 少々話がずれてしまいましたが、このようなクラスタリングによる解析を念頭に、アメリカの学協会の数などと比較するならば、同等の、例えばサイエンティフィックな雑誌を持っているジャーナルを持つ学協会の数を母集団とし、欧米と比較してみるのが正しいと考えております。

【土屋委員】 このインタビュー調査をされた「協力的な反応」を頂いた学会という意味を聞きたいと思ったのですが、それはいいとして、インタビュー調査でなくてもいいのですが、この中で、J-STAGE登載というフィルターをかけると、どれくらいのものになる感じなのでしょうか。

【林日本化学会課長】 J-STAGEによるフィルターはまだ調査が間に合っておりませんので、お答えできない状態です。あと、英文誌を出している学協会からの回収率が必ずしも良くないという状況がありまして、土屋先生の質問にお答えするために、まずより多くの学協会から回答を頂かないといけないという段階にあることを申し上げます。

 また、協力的な学会というのは実は極めて簡単でして、準備段階のGoogleのアンケートのときに「このような調査を進めていくときに御協力いただけますか」という質問があり、それに「はい」と答えていただいた中を中心に選んでいるという、単純な話でございます。

【有川主査】 ほかに何かございますでしょうか。

 あともう一つ、その他としてお手元に資料5があります。科学技術・学術審議会決定としまして、平成23年5月31日に取りまとめられました「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点」という資料について事務局から説明をお願いしたいと思います。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】 お時間もないものですから、ごく簡単に御説明申し上げたいと思います。資料の5を御覧ください。この資料は、今、有川主査からも御説明がありましたように、東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点、という資料です。冒頭のリード文がございますが、こちらの第2パラグラフ目にありますように、「こうした考えのもと」ということの後ろでございますが、科学技術・学術審議会で、震災の現状を踏まえて、科学技術・学術の観点から検証を行いたいということで、その際の視点が、5月31日に開催されました総会において議論されております。

 今後、科学技術・学術の総合的な発展を図るために議論を進めていくということですが、その際に、第3パラグラフ目にありますように、総会以下、各分科会、部会、委員会等においても、社会のための、社会の中の科学技術、そうした観点を踏まえながら、以下の視点に留意しながら、是非検討を頂きたいという依頼が来ております。

 検討の視点としては、以下に示されておりますけれども、それぞれにクエスチョネアが表記されております。一つ目は、東日本大震災についての科学技術・学術の観点からの検証ということ、めくっていただきまして、裏のページでございますが、2.、3.、4.、5.と、それぞれの観点があらわしてございます。

 本作業部会との関連で言えば、3.あるいは4.あたりが中心になろうかと存じますが、この作業部会の所掌にとらわれずに、幅広い観点から御意見をいただければということを考えております。

 ただ、本日はもうお時間もございませんので、本来であれば少し御議論いただいてからということでありましたが、大変僣越ではございますけれども、後ほど御覧いただきまして、御意見等ございましたら、可能であれば来週中、7月8日くらいまでに事務局までメール等でお知らせいただければ、大変ありがたいと感じております。

 大変お忙しい中とは存じますが、御協力方、よろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

【有川主査】 我々の議論の中でも、資料5の冒頭3つ目の段落にありますように、こうしたことを意識しながら議論していかなければいけないだろうと思います。

 それでは、次回ですけれども、これまで非常に多くの方々に御意見等を発表していただき、それをお聞きして議論する中で、いろいろなことが分かってきました。そして、発表していただいた機関等に関しましては、現時点で考えられる一番大事な機関、あるいは学協会から話をしていただいたのではないかと思っております。今まで頂きました御意見等を踏まえながら、次回あたりに一定の整理をしなければいけないと思います。

 事務局から今後の予定なども含めまして、お願いいたします。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】 本日の会議の議事録でございますが、各委員に御確認いただいた上で、公開をさせていただきます。

 次回の開催は、7月26日の火曜日、14時から16時で、場所がまた変わりまして、大変恐縮でございますが、国立情報学研究所の22階の会議室を予定しております。

 それ以降の当面の予定については、資料6に御用意しております。その中で、現在予備日としております8月4日の取扱いでございますが、大変恐縮でございますが、今しばらく日程の確保をいただければありがたいと思います。有川主査と御相談申し上げ、この日の取扱いについては、御案内を申し上げたいと思います。

 本日の資料につきましては、机上にそのままお残しいただけましたら、事務局より郵送させていただきます。

 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

【有川主査】 それでは、本日は4人の方の発表を中心にして議論させていただきました。

 時間になりましたので、本日の作業部会はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。

―― 了 ――

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