研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第36回) 議事録

1.日時

平成22年10月29日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3. 出席者

委員

有川主査、上島委員、植松委員、倉田委員、土屋委員、羽入委員、山口委員、米澤委員

オブザーバー

緒方横浜市立大学医学部・大学院医学研究科教授

科学官

喜連川科学官

学術調査官

宇陀学術調査官

事務局

岩本情報課長、飯澤学術基盤整備室長、その他関係官

4. 議事録

(1)事務局より資料1「大学図書館の整備について(審議のまとめ)【案】」に基づき説明が行われ、その後、大学図書館の整備に関する意見交換が行われた。

【有川主査】
 それでは、議論していただきたいと思います。まず、全体的なことでご意見がありましたら承りまして、その後、個別的なことについて議論していくことにいたしましょうか。

【土屋委員】
 「図書館員」と「ライブラリアン」という言葉と両方記述されているのが、気になりました。

【倉田委員】
 基本的には、「ライブラリアン」という言葉に、ある種の専門性を込めていると思います。しかしながら、アメリカの「ライブラリアン」は、図書館長のような特殊な職を指すときに使われることがあるので、そこまでのニュアンスは、日本語の「ライブラリアン」では無理があります。現状に合わせるのであれば、「図書館員」で全部を通してしまった方が良いと思います。特に後半で「ライブラリアン」が頻出しますと、前半と離れてしまう感じがあるので、統一していただいた方がよろしいのではないかと思いました。

【有川主査】
 後半では、サブジェクト・ライブラリアン、リエゾン・ライブラリアンのサブジェクト、リエゾンを消したために、ライブラリアンだけが残りました。例えば、図書館長でも、「ディレクター」や「ライブラリアン」という使い方をされるところがあります。

【羽入委員】
 統一することは、少し抵抗があって、「ライブラリアン」と「図書館員」を分けて、用語解説することも可能性としてはあると思いますが、いかがでしょうか。

【有川主査】
 可能な限り使い分ける。例えば、図書館で働いている庶務や会計も含めて「図書館職員」と言うと思います。しかし、「図書館員」は、少なくとも司書の資格は持っていることが考えられます。また、「ライブラリアン」は、先程のような経緯もあって、もう少し高度な専門性を期待するところがあるという気がします。

 一方で、来年度の概算要求・要望に、リサーチ・アドミニストレーター(RA)を顕在化させる動きもあって、いわゆる教員と事務職員という区別だけではなく、その中間か、あるいは全く別なものを考える機運が出てきています。したがって、本作業部会で議論してきたようなこととも、ある意味で方向性が合っている感じもありました。

 そのような全体を通したお話を少ししていただければと思いますが、「はじめに」において、NIIのことについてかなり書いていただいています。本文ではあまり触れていません。それでよろしいですか。

【倉田委員】
 私もそれが気になりまして、目録、組織化という部分が本文で落ちているという感じがあります。本文では、5ページにNIIのNACSIS-CATという言葉が1回出てくるだけなので、「はじめに」で触れられている程度のことは、この5ページに書けるのではないかと思いますので、お考えいただければと思います。

【有川主査】
 5ページと10ページに少し記述されていますので、「はじめに」のようなことを加えるか、または、「はじめに」で、本文では触れないことを断った上で書いておくかでしょう。

【宇陀学術調査官】
 本文は少し記述が足りないと思いますので、本文を変える形で「はじめに」と対応をとるのがよろしいかと思います。

【土屋委員】
 学術情報センターの設立に当たっては、相当議論を重ねたという話を聞いています。本作業部会において、NIIの位置付けや役割について議論してきたのではないので、あくまで環境の変化という意味で書いて、本文は大学図書館のことだけに止める方が良いと思います。本文に書くには審議が不十分なのと、負担が大きいという印象を持ちます。

【倉田委員】
 NII自体について書くのは、無理があると思います。しかしながら、NIIのNACSISを前提に大学図書館は目録作業を行ってきたという言い方はきちんと書いておかないと、逆に良くないと思います。現在、既に大学図書館の目録作成業務は、全体の中では非常に小さくなってしまっており、NIIにある程度依存している現状の上で、今後さらに考えていかなければならないという言い方に、十分改められるレベルですので、一、二文入れさせていただけたらと思います。

【米澤委員】
 外形的な議論ですが、前書きのNII等に関係する部分はもっと軽くして、本文に記述した方が、レポートとしては良いのではないでしょうか。

【有川主査】
 「はじめに」を5、6行にして、そこに記述したことを本文に書いておく。また、2ページの一番下の表現も、これまでのことは当然しながら、進化、発展している面が多いことについて書き足しておかなければいけないと思います。

【植松委員】
 機関リポジトリの構築に対してのNIIの貢献も、相当大きなものがあると思うので、3ページの部分も本文に入れるなど、リポジトリという言葉が出るところで、NIIを強調した方がよろしいかと思います。

【有川主査】
 しっかり入れる場所も言っていただきましたので、そのように直していただこうと思います。

【羽入委員】
 10ページの「図書館サービス」の「サービス」という言葉は、例えば開館時間が長いことや、人がにこにこしているのがサービスと思われる向きもあるので、教育研究に関するサービスなど、サービスというものが何かという形容詞をつけておきたい感じがします。

 例えば、12ページの下の方に「開館時間」とありますが、それを書く必要があるのか疑問です。開館時間が長ければサービスがいいと言えるかどうかも少し疑問ですが、その上のパラグラフは幾つか多様なサービス、教職員に適切で多様なサービスと書いてあるのですが、15ページにも「サービス機能の改善」とあり、図書館のサービスとは何かがわからないまま使われると、少し危険だと思いますが、いかがでしょうか。

【倉田委員】
 サービスという言葉が幅広く使えてしまうというのは、そのとおりだと思います。開館時間が長ければいいということではありませんが、利用者へのある種の提供という意味で、それも1つのサービスであるということは、現状としては、皆がそう捉えてしまっているのではないかと思います。しかしながら、ここで強調したいのはそうではなく、教員との関係や、教育、研究の直接的な支援などで、言葉を足していくことで対処させることがまず考えられます。サービスを使えなくなってしまうと少し無理という感じがします。

【羽入委員】
 使わないのは少し難しいと思います。

【有川主査】
 他でも、例えば、九州大学では「研究協力」が「支援」となり、最近では、「推進」となっていまして、それと似たようなことがあるのではないかと思います。一面では、サービスというのは大事ですが、それが変化して高度化していると思います。

【山口委員】
 それに関連して、5ページ目の2の「大学を巡る環境の変化」において、の定義が不明確だと思います。2パラグラフ目の2行目の、「大学図書館にもその支援の場やサービスを提供することが期待されている」の「サービス」をもう少し注意して定義することで、のちのちそれがどういう意味のサービスなのか、その多様なサービスというのはどういうものであるべきかを議論しやすくなるのではないでしょうか。

【有川主査】
 学生たちが自発的な学習や実践をする空間と、それに対して、いわゆる図書館が普通に行っているサービスというようなことでしょうが、わかりにくいといえばわかりにくいですね。

【土屋委員】
 「サービス」は、可能な限り言葉として減らして、他の似たような意味として「機能」という言葉があるので、できるだけそれを使います。「サービス」の日本語的なコノテーション(潜在的な意味)には結構、奉仕の精神があると思います。我々が、図書館の脈絡だと気軽に「サービス」と言ってしまいますが、そういう誤解を生じやすい印象があるので、避ける方向でご検討いただきたいと思います。

【有川主査】
 「機能」などの言葉に置きかえられるところは、置きかえていけばいいと思います。

【喜連川科学官】
 IT全般の動きからいいますと、むしろサービスという言葉は、今、非常にタイムリーな言葉になっておりまして、キーワードと言えます。したがいまして、電子化というようなトーンの新しい方向感を議論しているときに、サービスという言葉、無形の役務というものをどう考えていくのかということは、例えばJISA(情報サービス産業協会)のように、非常に多くの人々がそういうことを考えているのが現況ですので、サービスという言葉を無くするのは、ややもったいないような気が致します。

【土屋委員】
 サービスの最近の語感に関してはよくわかりますが、図書館の脈絡では、サービスという言葉がどうしても、奉仕か、コストのない仕事のように捉えている脈絡、歴史、経緯があるので、そういう誤解は避ける努力はしてもいいと思います。したがって、ディスカバリーサービスは、そのまま残しておけばいいと思います。

【喜連川科学官】
 無報酬か報酬かということは難しいですね。情報システム全体をサービスという視点で全部考え直して、プログラムという機能からサービスに上げましょうというのが今の流れです、少し逆戻りしているような印象があります。

【有川主査】
 この辺は統一した方がいいと思います。機能という言葉で使える部分と、そうでないところがあるようですが、確かにサービスというのは、サービス科学、サービス工学など非常に大事な分野も出てきている状況もありますし、羽入先生おっしゃったような面もあります。

【喜連川科学官】
 人に近い側での価値観を表出するためにサービスという言葉を使っています。機能というのは、必ずしも人に近い便益のところまで考慮しなかった。必ずしもある種の機能は誰にもうれしいと言わないことがあることから、より評価される機能を実現するために、ネーミングを変えサービスという言葉を使うようになってきています。したがって、良い側面をうまく利用すると、文章的には良い感じになってくる気が致しますが、確かに今、端境期で難しいところかと思います。

【有川主査】
 方向を示していただいたと思いますので、全部変えるということではなく、本日の議論を踏まえて「サービス」を残すところは残し、他の言葉が適切なところは変えていくという作業をしましょう。

【岩本情報課長】
 一律には言葉を言いかえることは難しいと思います。ある程度「サービス」についての価値観も入れてお書きになっていると思いますので、その文章を変えたときに、文脈が変わってくる可能性もあります。具体的に個々の文言について、「サービス」がいろいろな使い方をされていますので、個々に支障があって、誤解を招くという部分がありましたらご指摘いただければ、それを検討したいと思います。

【有川主査】
 それぞれについて、きちんと見ながら作業しなければならないと思います。

【羽入委員】
 15ページの「サービス機能の改善を図りつつ外部委託」では、サービスの向上が外部委託によるものであると捉えかねない表現にもなっていることは少し気になります。

【岩本情報課長】
 その辺は業務の質を落とさず効率化を図るなどという文脈で行政的には言われることが多いので、そういう言葉に置きかえられる部分は考えてみたいと思います。

【上島委員】
 「サービスと機能」について、12ページの「学習・教育・研究に関する機能」の機能と、「開館時間、リファレンス等サービス」を機能と置きかえると、同じ機能でも少し異なっている。しかもこれはかなり上のレイヤーのことや、下のレイヤーのことですね。したがって、その辺、いい案が私もありませんが、お考えいただくと同時に、もう少しここの表現を書き加えたいと思っております。

【倉田委員】
 12ページの「開館時間」はレベルが違うので、ここにあってはいけないと思います。むしろ定量化できる楽な指標として使われているので、対利用者への研究教育のサービスは逆に残したほうがむしろいいところではないかと思います。

【有川主査】
 この「開館時間」は多少気になります。評価としては楽ですが、それでも、それがあることによって、ある程度、開館時間を確保することにもつながっていきます。

 大分、サービスをめぐって議論できましたので、全体を見ながら修正等していただこうと思います。

【緒方横浜市立大学医学部・大学院医学研究科教授】
 6ページからそれ以降のところで、利用者への学習支援、研究支援、コレクション構築、適切なナビゲーションとありますが、これらに関しては、重要な意味を持たせるためには、利用者と密な連携をとっていくことが大前提だと思います。学習支援や研究支援というのは、密に連携をとれないとできませんが、例えば、コレクション構築とか適切なナビゲーションなども、利用者からのニーズの把握と密な連携をとることがもう少し強調されてもいいのではないかという印象は持ちました。

【有川主査】
 そのような意味では、いわゆる利用者、特に学生や研究者と一体となってという表現が出てきていますが、どこかでそれは書いておくことにしましょう。

 「はじめに」については、かなり議論していただきましたが、1ページの「近年」の段落の3行目で「これまで以上に関心を持たざるを得なくなった」という表現が気になっています。もう少し能動的な表現が良いのではないでしょうか。

【土屋委員】
 「持つようになった」ではいかがですか。

【有川主査】
 その方がいいでしょう。また、2ページの「第二に」の段落に機関リポジトリについて書いてありますが、ここは少し注意したほうがいいと思います。4行目、5行目に「これらの要請に応えるための基盤を提供するものとして、一層の推進」とありますが、簡単な修正としては、「ものとしても、一層の推進が」にしておいた方がいいと思います。機関リポジトリを中心にしたオープンアクセスを推奨しようとしていますが、それで評価をしようとしていると少し変に解釈される可能性がありますので、「も」と入れておいたほうがいいのではないかと思います。

【土屋委員】
 2ページの下から6行目に、「現在の国立情報学研究所となっても」となっていますが、何か嫌々という感じがするので、取ったほうがいいと思います。

【植松委員】
 (1)の下4行の「機関の一つとして捉えることができる」という表現は、捉えることをしないと、全部違ってしまうこともありますので、我々としては、「担う機関の一つである」と言い切るほうがよろしいかと思います。

 また、5ページの2の上の段落の「印刷物も重要な」は「印刷物は」の方が良いと思います。「も」と「は」では相当重みが違うように思います。

【有川主査】
 「当分の間」は削っているので、「は」より「が」の方がいいと思いますので、「が」にしておきましょう。

【土屋委員】
 5ページの上から2つ目の段落「大学図書館では、従来OPACで組織化してきたが」について、確かにこの段落の記述はそのとおりですが、日本の脈絡では、単に組織化するときに、既にNIIのNACSIS-CATに依存していて、自館にないものは、NACSIS-CATに誘導してきたと思います。したがって、ここ二十数年間のことが、非常に古いことのような感じがします。共同構築しているということを入れればいいと思います。

【有川主査】
 これまでの学術情報センターからの実績をもう少しポジティブに位置付けて、全国の大学図書館が共同構築をしてきたデータベースという面から見ても特徴のあるもので、1つの方向を出していると思います。これについてもNIIのことなどを書いておくのがいいのではないでしょうか。

【緒方横浜市立大学医学部・大学院医学研究科教授】
 5ページの2の上に「紙媒体として、人文社会科学分野」とありますが、自然科学、医学系も十分重要ですので、限定しない方がいいように思います。特に、医学系は、生体組織の写真などはPDF化されると劣悪化して、資料にならない場合が多々ありますので、この点は非常に重要だと思います。

【喜連川科学官】
 医学系は色の保証をするために、紙媒体しか買わないと非常に強く主張されるところもありますので、事情はよくわかります。

【土屋委員】
 人文系の者としては、人文系中心に考えてほしいと思ってしまいます。

【緒方横浜市立大学医学部・大学院医学研究科教授】
 そうであれば、医学系もぜひ加えていただきたいと思います。

【有川主査】
 では、医学系も加えましょう。色の問題は確かにあります。

【米澤委員】
 質問ですが、「コレクション構築」や「蔵書構築」とは、どのようなことをすることですか。

【有川主査】
 蔵書の集書や廃棄などを含めて行います。日本では集書と言っていたと思いますが、集めるだけではないので、コレクション・ディベロプメントとしています。蔵書構築という訳を使っていたと思いますが、蔵書では、印刷物だけを指しているように捉えられるので、コレクションとしたと思っています。

【米澤委員】
 このパラグラフでは、何か新しい方向性を言おうとしているようですが、「Web環境を含めたコレクションの構築」は、Web環境が強調されているのですか。

【土屋委員】
 新しい動向としては、今までの蔵書構築と、その後の図書館間協力のお互いに融通し合うような形態が、Web、オンラインリソースを使うようになって非常に大きく変わったことは間違いありません。その中で、自分に集められる、お金を出して使えるものはどういうものにするかを考えないといけないということです。

【植松委員】
 この「Web環境」は、例えば、電子的情報を含めたという言葉に置きかえてはいけませんか。

【有川主査】
 例えば、国会図書館などでは、ネットワーク上にある学術情報や自治体等の情報を定期的に収集して確保することを考えておられます。

【倉田委員】
 元来、コレクション構築自体は自分の大学図書館にどのような本を揃えるかが問題だったのが、今や、ネットワーク上の必ずしも自館で所蔵していない資料も含めて、大学図書館として所属の研究者や学生たちに、いかにアクセスを提供していくかが課題となっています。

 Webが大変広がっており、無料のものや非常に高額なお金を出して買わないといけないものもあるという複雑な状況を鑑みて、今後のコレクションはどうあるべきかを考えないといけないという意味だと思いますが、それをここだけから読みとるのは、なかなか難しいと思います。

【土屋委員】
 8ページから9ページの「大学出版局と連携して、大学で使われる教科書をオープンアクセスとして提供する」については、リアリティーがないような気がします。これを実施するために、お金をどこから持ってくるのかよくわからないので、多分、大学の補助で行うしかない。オープンアクセスにするという以上は、ユーザーから対価徴収しないが、現状の日本の大学出版会のビジネスモデルは、基本的にユーザーからの対価徴収で行っているので、イメージが湧きません。つまり、「次のような方策が考えられる」と、この報告書で言わなくてもいいような気はします。

【有川主査】
 少し踏み込み過ぎているのは、具体的に「大学出版局と連携して」と言っているからです。大学で使う教科書をオープンアクセスとして提供するということであれば、いろいろな工夫があります。

【倉田委員】
 別に大学出版局に限らないので、教科書のオープンアクセス化というのは1つの方向性としてあるということでよろしいのではないでしょうか。

【土屋委員】
 10ページの「Resource Discovery Taskforce」のJISCを名指しする必要はない気がします。

【倉田委員】
 確かにJISCだけが突然出てくるという違和感はあると思います。MLA連携も、他にいろいろ例はあるというのは、そのとおりという感じはします。

【有川主査】
 少し具体的なものが書いてあった方がイメージが涌きやすいと思います。

【土屋委員】
 モデルとしてこれがよいかという吟味はしていません。アメリカにもたくさんありますので、国際的にもこの動きが活発になっているということを指摘すればいいと思います。

【有川主査】
 では、そうしましょう。類縁機関との連携のことを述べています。

【山口委員】
 10ページの「4 他機関・地域等との連携並びに国際対応」に関連して、海外での図書館事情についても調査し、日本の図書館は今後、国際的にも競争力を有するような図書館サービスの構築が必要であるという議論をしたと思いますが、それがあまり反映されていない気がします。「大学の国際競争力の向上の観点から、大学図書館もコレクション構築や館内表示」、「英語、中国語、韓国語の留学生に対応する」と、小さくまとまってしまっているので、例えば、ARLの調査報告などを基に議論したことを反映して、もう少し詳細に加筆する必要があると思います。

 また、メッセージとして、今後もさらに海外の大学図書館がどのように発展していくかということに注目しつつ、方向性を示すべきではないかという文言を入れるのもよろしいかと思います。

 「はじめに」においても、国際に関しては、3ページに、「一方では、国際的に急速に変貌しつつある学術情報流通の状況に対応することも課題となっている」と、簡単にまとめられてしまっているので、海外の状況・流れも見ていく中で、日本の図書館の国際的な競争力をどのように強めていくかという、メッセージ性のある文言にできるとよいと思いました。

【羽入委員】
 私も同感で、「はじめに」にもっと国際性について書くべきではないかと思ったのと、10ページから11ページにかけてもそのように書いておいた方がいいと思います。

【土屋委員】
 書いた方がいいと思いますが、第二と第三の間に、日本の大学が今求められている問題として、国際化の問題がある。それに応じた対応を大学の目的を考えて、図書館もしかるべき対応をすべきであるということを前書きに入れるのは簡単だと思います。実際は、コレクションに使うお金の大半は外国雑誌の整備なので、国際的であるといえます。

【羽入委員】
 多分、国際対応で書かれていることはそういうことではないように思うので、ここに何を書くかということになれば、山口先生がさっきおっしゃったようなメッセージを書くことではないでしょうか。

【土屋委員】
 書くとすると、これもご検討いただかないと多分書けないと思いますが、図書館間協力の国際連携が重要になってくる。つまり、NIIの器の中だけで行っていてよろしいのかという問題ですが、その議論は波及効果が大きそうなので、少し議論していただかないといけないと思います。

【有川主査】
 少し書いてもいいと思います。外国の図書館との連携では、韓国や中国など、あまり時差のないところとはうまくいきますが、欧米は時差があるため、共同作業がなかなか難しい実態があります。同時に一緒にしなければいけないことだけでない協力、連携は十分考えられると思います。

 また、電子ジャーナル関係は、大学にもよりますが、図書資料費で、相当な額を占めており、そのような点では、大変国際化していることになるのかもしれません。

【倉田委員】
 グローバルになっていて、かつては米国と日本の大学図書館が同じ課題を持つということは非常に考えにくい状況でしたが、例えば、電子ジャーナルの問題は共通である状況が出てきているので、実際に作業や業務を完全に海外と一緒にということは難しいとしても、広い意味で、政策や方針において、海外の動向も念頭に置きながら、できれば海外とも連携していくことはあり得るし、そういう書き方であればよろしいかと思います。

【有川主査】
 連携、協力のことを書き加えておくことにしましょう。先程のような問題はありますが、図書館職員が相互に半年滞在して研修を行うことがかなり定着してきている面もありますので、書けると思います。

【植松委員】
 現実のサービスとして、例えば、大学で、外国人教員の採用を増やす、又は、イングリッシュプログラムで、簡単に言うと英語だけで単位が取れて、修了していくコースを設けても、ほとんどの大学図書館で、いわゆるリザーブド・ブック・サービス(システム)というのを採用していません。したがって、授業に向けて指定された本を読んできて、対話型の授業をすることには耐えられません。それをここで書く必要はないと思いますが、これから国際化すると、図書館としてはそのようなことに直面することになると、私は考えています。

【土屋委員】
 一方で、歴史的には日本でも幾つかの試みがあったが、失敗したという経緯があるので、その整理をして克服しなければいけません。

【植松委員】
 日本でのこれまでの授業の方法が、一方的に教員が話す形だったところが大きな理由ではないかと思います。

【有川主査】
 書店でも売っていないものもありますので、かなりのものを揃えておく必要が出てきます。

【植松委員】
 「外部委託」について、現実に外部委託を進めてきたために、緒方先生からもお話があったように、一部の図書館では、例えば目録業務が遂行できないというようなことがあります。業務委託をしてきたことによるサービスの改善という方向のニュアンスがありますが、負の面についても少し触れる必要があるように思います。

【土屋委員】
 目録業務などが駄目になっているという話に関しては、図書館の仕事のスタイルを印刷媒体の受入から目録をつくるというフローを変えないで、実態としては電子資源が多くなってしまっていることも結構あるのではないでしょうか。したがって、単純に負の面の責任を全部業務委託にしていいのかという問題は、少し議論しなければいけないと思います。

【有川主査】
 外部委託は、必要なことはしなければいけませんが、それによって、そうした仕事ができる人がいなくなってしまうという面は出てくるので、その辺は避けなければいけません。

【土屋委員】
 15ページの「少数でも」は削除した方がいいような気がします。端的に「配置すべきである」と書けばいいので、少なくしろといっている気がします。

【緒方横浜市立大学医学部・大学院医学研究科教授】
 今のところに関連して、16ページの3行目からもこれに関連することが書いてあると思います。したがって、ここがしっかり強調された方が良いかと思います。

【山口委員】
 16ページから、図書館職員に関する「スキル」と「能力」が混在しています。例えば、16ページの「図書館業務全般に係るスキルの継承」、および一番最後のパラグラフに「協働・連携を具体化・実現化するためのスキルの開発」とあるのに比べて、18ページの、「図書館全体のマネジメントができる能力」はマネジメントスキルのことで、この辺を分けて考えられているのか、または、統一しなくてもいいのか。「スキル」と「能力」の使い分けを明確にする必要があると思います。

【有川主査】
 16ページの一番上などは「スキル」という感じですね。

【山口委員】
 16ページの下の、「協働・連携を具体化・実現化するためのスキルの開発及び向上」というのは、どういう意味でしょうか。

【有川主査】
 そうですね。16ページの一番下の「スキル」については少し考えましょう。また、18ページの「マネジメントができる能力」は「能力」でしょう。

【土屋委員】
 18ページの「図書館職員としての専門性」について、いろいろ機能分化し、分業していくという記述が一方でありますが、「それらの推進に対応できる人材の確保」では、1人の人が全部できなければいけないようにも読めてしまうのは、やや過大な要求を出している気がして、不安です。このような方を育てられるという何か保証があるということなのでしょうか。

【喜連川科学官】
 すべての分野において、最終的に人材確保と人材育成というのは、どんな議論をしていてもそこに詰まりますので、ここはエンドレスな議論となり、この程度にしておくしかないのではないかと感じます。

【有川主査】
 1人ができなくても、グループとしては実現できているということであればいいのではないでしょうか。

【倉田委員】
 20ページで、ロー・ライブラリアンの記述がありますが、これまでの日本の現状を考えるならば、主題を生かした図書館員としてのサービスをしてきたのは、むしろ医学図書館員だと思うので、例としてはそちらを加えていただいた方がよろしいかと考えました。

【有川主査】
 このロー・ライブラリアンの記述の前後に、医学のことを加えましょう。全体も医学図書館がリードしてきたところがあります。

【植松委員】
 21ページの2つ目のパラグラフの「当該大学の図書館職員が社会人学生として入ることも」については、既に筑波大学の図書館職員が筑波大学の研究科で博士号を取得している例もありますので、この部分は、何か異なる九州大学の特徴を抽出して書いていただけるとよろしいのではないかと思います。

【有川主査】
 私も少し気になっていたところで、慶應義塾大学もそうだと思います。「その際」以下が特徴といえば特徴だと思います。これはこれからしようとしていることですので、それを残していただくか、全部とっていただいても構わないと思います。

【上島委員】
 22ページの「機関リポジトリの学内への周知のために」以下「外で懇談会をもったり意見交換会を行うといったことを実施することで周知する」について、意味がわかりにくいのですが、外で会合をもって、意見交換して、機関リポジトリを周知するという意味ですか。

【植松委員】
 そうではなく、環境づくりの例としてということでしょう。

【有川主査】
 「機関リポジトリを周知させるために研究室を訪問する」ということで、機関リポジトリについては、「訪問したり」というところで終わっています。

【山口委員】
 少し細かくないですか。図書館員が機関リポジトリの学内の周知のために研究室を訪問するべきという意味ですか。

【土屋委員】
 基本的には従来の図書館のスタイルとしては、図書館に来る人を相手にしていた。非常に多くの人が図書館に来なかったし、これからますますオンライン化で、本を求めて来る人は減っていく。そのときに図書館機能が大学の中で十全に発揮されるためにはどういう行動が必要かというと、自分の方から出ていかなければいけないという例示として、この研究室訪問などが書いてあると思います。

【羽入委員】
 例示の順序を少し考えればいいのではないかと思います。教員との意見交換や、学生との意見交換があって、その1つの例として、例えば機関リポジトリの周知もあるだろうということです。最初から機関リポジトリだと、それが頭に残ってしまう。

【有川主査】
 外に出て行ってすることがたくさんあることが伝わればいいので、少し具体性を持たせたほうがいいと思います。多少細か過ぎるというのは、私も感じたのですが、このぐらい書かないと伝わらないかもしれません。

【土屋委員】
 23ページの第1段落に関しては、「法学分野」を「医学、法学などを中心に」とした方がよろしいのではないでしょうか。第2段落で、「かつては助手は」については、助手、助教の定員削減があったからではなく、多くの場合には、大学院を重点化した大学において、助手定員を教授に振りかえるなどの結果、助手がいなくなったということも多々あって、あまり人のせいにはできない部分があるので、教員との行き来という論点は残しつつも、助手の話はしない方がいいような気がしますが、いかがでしょうか。あるいは、助手がサブジェクト・ライブラリアンの役割を果たしていたことがあった大学というのは、多分十指に満たないと思います。

【有川主査】
 これはサブジェクト・ライブラリアンがなぜ根付いてこなかったかという議論をしたときに出てきた話でした。「教員が」として、少し抽象化しておきましょう。

【土屋委員】
 はい。それで結構だと思います。

【有川主査】
 「教員が図書館職員になったりする」について、文書館などの先生方は、研究者であると同時にアーキビストであるという意識があります。その両方が必要だという感覚が図書館においてもあったのではないかと思います。

 働き方が非常に多様化してきて、ある種のことについて大変詳しい人がいます。教員は辞めるが、図書館職員として、専門的な資料についてきちんと仕事して、指導もするという生き方をされる人が出てくるのではないかと私は思っています。

【土屋委員】
 ここで行ったり来たりするというのは、結局、雇用形態をまたいで移動するので、中途採用などの仕組みがどうしても必要になってくる。それに対して、大学レベルである程度訓練をして、図書館員になって、その後どうするかという発想との全体のバランスを少し書いておかないといけないような気がします。

【有川主査】
 働き方は極めて多様性があって、例えば、教員を定年前に辞めて、再雇用により図書館で働くというのは非常に気分のいい働き方だと思いますので、「教員が図書館職員になったりする」は残していただくことにします。

【土屋委員】
 「おわりに」の下から4つ目の段落で、「大学図書館協会等」と書かれていますが、「大学図書館協会」という団体はありませんので、「大学図書館団体」など、一般名詞にすることは考えられると思います。

【有川主査】
 はい。団体にしましょう。また、その下の「また、各大学においては」について、前にも少し議論した気がしますが、大学は規模や目的も含めて、非常に多様化していますので、「各大学の理念、目標に従って先進的な取り組みを参考としつつ」と、それぞれの大学の理念、目標に従うということがあったほうがいいのではないかと思います。

 最後まで見てきましたが、よろしいでしょうか。

 それでは、事務局の方で、本日いただいたご意見を再度整理して、整合させながらチェックをすることを当然しなければいけないと思います。そして、最終版としてそれを取りまとめたいのですが、一度また皆様方にメールを差し上げまして、確認をしていただいて、最後のものにしたいと思います。実際の作業部会において議論するのは本日が最後でいいのではないかと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。

 その後、本作業部会の親委員会である研究環境基盤部会へ報告をして、公表することになると思います。その時期については、改めてご案内を差し上げるということにしたいと思います。この作業部会においての大学図書館の整備に関する審議は、ひとまずこれで終了ということにしたいと思います。

 次回については、改めて事務局から連絡がありますが、これで休会になるということではなくて、まだ次々に課題はございますので、作業部会は適当な頻度で開かれると思います。

(2) 事務局より、次回の開催は後日連絡する旨案内があり、本日の作業部会を終了した。 

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

井上、首東、新妻
電話番号:03-6734-4080
ファクシミリ番号:03-6734-4077

(研究振興局情報課学術基盤整備室)