研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第40回) 議事録

1.日時

平成23年6月2日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

有川主査、三宅主査代理、倉田委員、田村委員、土屋委員、羽入委員、松浦委員、山口委員

文部科学省

(科学官)喜連川科学官
(学術調査官)宇陀学術調査官
(事務局)倉持研究振興局長、戸渡大臣官房審議官(研究振興局担当)、岩本情報課長、鈴木学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

 【有川主査】  時間になりましたので、ただいまから第6期の 3回目でございますが第40回学術情報基盤作業部会を開催いたします。お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

 本日は、前回、前々回に続きまして学協会からお話を頂きます。まず、人社系及び生物系の学協会から学術情報発信の現状と課題、その後に科学研究費補助金の研究成果公開促進費の現状等について説明を頂いた後で、まとめて意見交換をしたいと思っております。

それでは、御出席いただいております先生方の紹介を事務局からお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】  本日は、御説明を頂く方として、四人の方にお越しいただいてございます。

 まず、日本言語学会、庄垣内京都大学名誉教授でございます。

 それから、日本経済学会、三野京都大学経済研究所教授でございます。

 さらに、日本植物生理学会、渡辺東北大学生命科学研究科教授でございます。

 それから、日本学術振興会、小山内研究事業部長でございます。

 また、前回までに御説明いただきました日本化学会の林課長、日本物理学会の瀧川東大教授、電子情報通信学会の今井東大教授にも有識者として引き続き審議に参加いただいております。

 それから、このほか、本日は学術情報流通・発信に係る関連機関から、科学技術振興機構の大倉知識基盤情報部長、国立情報学研究所の安達学術基盤推進部長、国立国会図書館の相原科学技術・経済課長にも審議に参加を頂いてございます。

 それから、本日、お手元のマイクの調子が悪いということでございまして、担当者がマイクをお持ちするかと思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 続きまして、事務局より配付資料の確認と傍聴登録について報告をお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】  お手元に配付資料をお配りしてございます。一番頭に議事次第が乗っておりまして、そちらの中段に配付資料ということで、資料 1から6まで6種類御用意しています。そのほか、参考資料として前回の主な意見を整理してございます。ちょっとお手狭でございますが、ドッチファイルが置かれておりまして、 1回目、2回目の資料がファイリングされておりますので、必要に応じて御参照いただければと思います。

 それから、本日の傍聴登録でございますけれども、16名、事前の撮影、録音、録画の登録はございません。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 本日は、先ほども申し上げましたように、三つの学協会からお話を頂きます。学協会から15分ずつ、科研費の研究成果公開促進費について 5分程度説明いただき、その後にまとめて意見交換をします。そして、今後の議論の進め方、あるいは科研費の研究成果公開促進費などについてまとめて議論していただこうと思っております。

 それでは、初めに、日本言語学会の情報発信の取り組み事例等につきまして、庄垣内先生から御説明を頂きたいと思います。お願いいたします。

【庄垣内名誉教授】  本来、パワーポイントは非常に好きなのですが、こういうときは使わないことに決めております。

 資料1に日本言語学会の学術情報の発信というものがあります。そこに私の名前と影山太郎という言語学会会長の名前がついておりますのは、私が言語学会会長を務めていたのはもう数年前でございますので、現会長と相談して作ったのです。今日は、傍聴席に会長の影山さんが来ておられます。何か私が分からないときは影山さんに聞くことになっております。

 それでは、早速始めさせていただきます。

 1938年(昭和13年) 2月に東京神田の学士会館におきまして日本言語学会の設立が決議されて、それから広辞苑で有名な新村出先生を会長として、そして同年 5月に創立大会が東京帝国大学で開かれ、柳田国男らの講演をもって日本言語学会が開かれました。

 現会員数がそこに書かれておりますけれども、個人会員が2,083名、団体会員が 100団体、そのほかが3でございます。内訳は、通常会員が書かれておるとおりでございます。学生会員、維持会員、団体会員、賛助会員。維持会員と通常会員の差というのは、維持会員の会費が 3,000円高い、それだけのことです。

 学会の基本姿勢というのがあります。これは学会誌が1939年に「言語研究」という題目のもとに創刊号が発行されましたけれども、そのときの新村会長の言がそこにありますように、「実践的顧慮によって論述の体をゆがめられることなく、一学派一運動の宣伝誌に傾くことなく、あくまでもその学問的価値に基準をおくところの論作を収載する雑誌である」、全く陳腐でございますけれども、しばしばこういう学術雑誌というのは陳腐なところを逸脱するところがあります。それで、新村初代会長以来、この学術性の重視、客観性の重視、こういう姿勢は現在の日本言語学会にもそのまま受け継がれております。

 欧米の言語学会との違いはどういうものかといいますと、普通、言語学会と言えば、一般言語学理論を中心に成り立つわけでございますが、日本の場合には、そこに歴史言語学とか社会言語学、心理言語学、人類言語学、文献言語学など、それ自身が独立して学会を構成できるものでありますけれども、そういうものはすべて日本言語学会の中に含まれるということになっております。それから、もう一つは、言語ごとに日本語学会とか、日本英語学会、日本中国語学会、会員数の大きな学会でございますけれども、その各言語ごとの学会の会員というのは、ほとんどとは言いませんけれども、多くはまた日本言語学会の会員でもあります。

 学会の組織と運営。そこに並べてありますが、役員といたしましては、会長、これは会員の直接選挙によって選出されます。それから、重要なところでは評議員というのがあります。これも会員の直接選挙で決められます。それと、もう一つ重要なのが編集委員長、これも重要な役割でございまして、会長に次ぐ重責でございます。会計監査員 2名、これももちろん選挙によって決められます。

 委員会制度を採っておりまして、委員会は6委員会あります。そこにあります評議員会、これが最高決議機関に当たります。それから、編集委員会、これは「言語研究」を編集・刊行する委員会でございますけれども、編集委員が現在 8名おります。それ以外に特別編集委員というのを設けております。これは外国人編集委員でございまして、現在 51名おります。大体は欧米の人が多いのですけれども、アジアの人も2名ほど入っておられます。それから、大会運営委員会、広報委員会があります。ちょっと面白いところは、夏季講座委員会というのがありまして、これは会員・非会員を問わず一般向けに言語学の講習会を隔年に開催しております。大勢の人々がこれに参加してくださって、言語学会にとりましては、現在では収入源の大きな一つになっております。

 大会は、春季と秋季の年2回開催されます。 2011年春季大会は日本大学で行われますが、これは今月末のあたりでございます。第142回になります。会員による個別の研究発表が主でありますけれども、他にワークショップとかポスター発表などが行われます。また、これは 2日間にわたりますが、2日目には決まって公開講演とか、あるいは公開シンポジウムなどが催されて、それは一般に開かれます。

 ここで大事なのが4番の「言語研究」、これは言語学会の機関誌でございますが、 1939年の創刊号から現在は139号まで発行されております。

 刊行の目的というのは六つございまして、言語学の最新のすぐれた研究の公刊と永久保存──これが一番重要なものです。それから、言語学各分野における研究の紹介と批判、普及、奨励。会員の言語研究に必要な情報の交換。言語学会大会における研究発表、ワークショップ、ポスター発表、講演、シンポジウム等の要旨の掲載。それから、日本の言語学の海外への紹介、又は海外の言語学会との研究協力、情報交換を雑誌を通して行います。最後は会員への学会運営上の情報の交換というのが行われます。

 年間2回、すなわち2冊発行され、会員には無償配布されます。そして、少し余分に刷ってありまして、残りは過去の在庫と併せて市販いたしております。 1,200円から4,000円。不思議なことに、古いほど安いです。

 6)の体裁、これは重要でございまして、日本学術振興会の研究成果公開促進費の定めるところの「欧文抄録を有する和文誌」に登録されております。論文、書評論文、フォーラムの使用言語は、日本語のほかに英語、フランス語、ドイツ語を認めておりますが、和文論文には欧文要旨が、欧文論文には和文要旨が各義務づけられております。目次、あるいは投稿規程、執筆要項などは日本語と英語の両方を併記してあります。

 最近の発行状況でございますが、発行部数は2,300部の 2回でございますから4,600部。年間総ページ数─これは年度によって若干変わりますが、平成 22年度でございましたら合計約500ページ、原著論文が約 350ページ、研究抄録、大会発表要旨などが含まれていますが、これが50ページ、そのほか会員への連絡や、会員の動向のようなものに 100ページ使われております。論文の欧文数でございますが、22年度は 37%。和文が11編で英文が5編。

 それから、投稿規程でございますが、投稿は会員に限る。ただし、共著の場合は筆頭著者が会員であればよいということになっています。投稿は随時受け付ける。投稿は未公刊の完全原稿に限る。投稿料は払わない。

 採否でございますが、原稿の採否は編集委員会が決定します。編集委員会は複数の査読者を選定し、ピアレビューによって客観的に審査いたします。

 著作権でございますが、著作権は基本的には原著者に帰属しますが、ウェブサイトに公開するために 2006年11月に「日本言語学会著作物取扱規程」を定めました。これによって、以下のことが起こってきます。 a.「言語研究」掲載の論文等の著作物を複製・刊行する権利、それらをインターネットを通じて公開する権利が、著者から本学会に許諾されていることを明確にしている。 b.本学会は、著者から託されたこれらの権利を、著者を含む会員の利益のために行使する。c.著者が自らの著作物の複製等を作成する場合は、事前に本学会に通知し出典を明記すれば、本学会は許諾を受けていることを理由に異議を唱えることはしない。 d.この規程は、制定された期日以前に「言語研究」に掲載された著作物に対しても、遡って適用される。現会員に文書で知らせるとともに、日本言語学会のホームページを通じて呼びかけた結果、異議は 1件も寄せられていません。

 11)の電子ジャーナル化ですが、現在、紙冊子と電子版を並行して刊行しております。紙冊子は会員のみに配布し、電子版は制限を設けず公開しております。ただし、電子版は、会員の権利を守るという目的のために、刊行から 1年を経たものを公開しております。「言語研究」のバックナンバーに関しては、2006年に JSTの電子アーカイブ事業のアーカイブ化対象雑誌となって、第1号から 100号(2005年)までがjournal@rchiveから公開されております。その後 101号以降は言語学会独自の企画として電子化し、現在137号までの論文が PDFで学会のホームページから無償でダウンロードできるようになっております。また、全号の目次、あるいは論文要旨も閲覧可能です。

 5.の学会連合ですが、言語系学会連合が日本言語学会を中心として 2010年4月1日に発足し、現在 33学会が加入しております。

 最後に、今後の課題でございますが、まず、日本学術振興会の研究成果公開促進費への要望ということでございまして、この日本学術振興会の科学研究費補助金の規程によると、欧文抄録を有する和文誌は、仕上がりにおいて欧文のページ数が 50%を超えてはならないという制約があります。この制約は、学会の国際的な発展に支障となるものであり、改善していただきたい。

 2番目に、海外での評価の向上とグローバル化に向けて。 European Science FoundationがまとめているEuropean Reference Index for the Humanitiesは、世界諸国で刊行されている人文学関係雑誌を高度な学術水準と広範な国際性を元に分類しており、言語学の分野ではアメリカ言語学会の機関誌である Language を初め、言語学の諸分野で主導的な役割を果たしている国際的ジャーナルが Aランクとして位置づけられております。しかし、日本国内で刊行されている学会誌でこのReference Indexに掲載されているのは、日本言語学会の「言語研究」と日本英語学会の English Linguistics の2誌だけです。しかし、いずれも Bランクにとどまっております。Aランクに入るためには、常に諸外国からの投稿論文が掲載されていることと、真に国際的な体制でピアレビューが行われていることが必要です。そのためには、次の 3と4について前向きな検討が必要であると現在考えております。

 3番目、論文の使用言語でございます。海外への研究成果発信のために基本的に英文で書くよう義務づけるのが好ましい。ただし、漢字文化圏の言語を対象とする場合などに筆者や読者にとって英文使用が不都合な場合があります。そういう場合の特例を残す必要があります。例えば、日本で言えば万葉集の日本語の研究とか、あるいは中国音韻学の手法を用いたところの中国語の研究というものは、漢字を多く含みますし、読み手も書き手もアジアに集中している。そういうことがありますので、そういうものを残しておく必要があるのではないかと考えております。

 それから、投稿資格についてでございますが、この件については、学会として方向性を模索中であります。なかなか難しい問題であります。英語の使用が言語学論文の世界標準となっている今日、ヨーロッパ系言語はもとより日本語やアジアの言語を扱った研究でも英語で発信することが求められております。英語論文を増やすための一つの方策といたしまして、現在は会員だけに限定されている論文投稿の枠を取り外し、とりわけ海外からの投稿数の増加を図ることが考えられます。しかしながら、非会員の投稿も自由に認めることには、現会員から異論の出ることも十分に予想されます。割と抵抗があります。一つの解決策、非常に現実的な解決策でございますけれども、これは現在刊行している和文号とは別に、英文号を年 1回電子ジャーナルのみで発行し、これに関しては投稿の制約を設けないということが考えられます。電子ジャーナルですから、印刷経費はかからない。英文電子ジャーナル専用の助成金を日本学術振興会で用意してくだされば、財政的な問題は生じないはずです。

 もう一つ、文献資料の電子化。日本国内で出版された言語学関係の文献資料の電子化が遅れております。これには著作権の問題も絡みますが、早急に推進する必要があります。

 最後に、言語系学会連合を更に有機的に結合し、各学会が研究情報を交換し合うシステムに発展させる必要があると考えております。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。冒頭で申し上げましたように、御質問などは後ほどまとめてさせていただきたいと思います。

 続きまして、日本経済学会の情報発信の取り組み事例等につきまして、三野教授から御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【三野教授】  京都大学経済研究所の三野と申します。よろしくお願いいたします。15分程度ということなので、少し内容をはしょって御報告させていただきます。

 最初に、日本経済学会の成り立ち、それから機関誌の Japanese Economic Review の背景をごく簡単に説明させていただきまして、以下 JERと略称しますけれども、JERの現状と国際的な評価について説明させていただきます。それから、経済学全般に国際的な情報発信が今どうなっていて、どういう課題が残っているのかということを最後にお話ししたいと思います。

 御存じの方も多いかも知れませんけれども、日本の経済学というのは、戦前はドイツからの影響が大きくて、マルクス経済学が支配的でした。しかし比較的少数のいわゆる近代経済学者と言われる方々もおられまして、 1934年に日本経済学会という非マルクス系の学会が設立されました。戦時中は実質的な活動をしていなかったようですが、 1949年に理論経済学会という名前で再出発しました。1950年に今の JERの前身の「季刊理論経済学」という機関誌が創刊されました。戦後になってアメリカが経済学の中心になってからは、英語で論文を国際誌に出すというのが国際的な研究の中心的なスタイルになり、日本の機関誌も日本語で出している以上は日本でしか通用しないということで、英文化の方向が進みました。 1986年に誌名を Economic studies Quarterly に変えて 8割ぐらいの論文が英語になりましたが、日本の出版社から出でいることもあって国際的な流通がほとんどできませんでした。 1995年に Japanese Economic Review と名前を変えまして、出版社を東洋経済新報社から Blackwell、今のWiley-Blackwellに変更しました。また 1997年に日本経済学会という設立当初の名前に戻りました。

 現在、日本経済学会の会員は約3,400名です。 1968年に理論・計量経済学会になったときから約5倍になりましたから、順調に会員は増えてきました。ただ、先ほど申しましたように、マルクス主義経済学の人たちの経済理論学会という学会が別にありますし、それ以外にも幾つかの大きな分野別の学会がありまして、必ずしも日本の経済学者全員が日本経済学会に入っているわけではありません。そこが少し理科系の大きな学会などと違うところです。

 現在のJERですが、資料にありますように、年間約 600ページ分を出版し、完全に英文化しています。掲載論文数は、一年に35本程度です。エディターとコ・エディターを含めて 6名が編集の中心になっており、全員が日本経済学会の会員です。それに加え二十数名のアソシエート・エディターがいますが、ここには外国の非会員の方も含まれています。

JERの出版費は基本的に学会費で賄っており、会員に無料配布をしています。大学・研究機関の購読、販売ですが、現在二百三十数機関に販売しています。日本が 6割で4割が海外ですが、この海外での流通がなかなか進まないというのが一つの課題になっています。

 投稿は会員に限らず誰からも受け付けており、投稿料は無料です。数年前から電子ジャーナルの利用が可能になってからは、海外からの投稿が随分増えてきました。現在、 6割から7割近くが海外からの投稿になっています。

 ただ、非会員の海外の人たちの論文が掲載数に占める、大体3割程度です。どうしても日本からの投稿と違って質にむらがありまして、レフェリーに回す前に断った方がいいというような論文も投稿されます。しかし、最近はそれでも大分良くなってきました。掲載論文数が余り多くないので、採択率は毎年 15%から25%であり、それほど高くありません。

 JERの国際的な評価ですが、日本語で出しているときには国内で一番権威のあるジャーナルということで通ったわけですけれども、完全英文化してからは、既に先行している伝統のある雑誌がたくさんあるところに出ていきましたから、当然のことながらそれらのジャーナルとの競争があります。日本の研究者にとっても、 JERになる前は、日本語で論文を発表するなら「季刊理論経済学」が一番だということになっていましたが、国際舞台へ出ますと、ほかにも良いジャーナルが多数あるので、良い論文は JERに送る前にまずほかへ送ってみようということにどうしてもなりがちです。社会科学の分野では Social Sciences Citation Index(SSCI)というインデックスのついたジャーナルが二千数百あって、その中で経済学の雑誌は二百五十ぐらいあります。ここへまず入らないと国際的なジャーナルとしては余り評価されないというようになっており、この二百五十ほどに入っていない雑誌というのは、我々が見てもほとんど知らないものが多いわけです。 JERは数年前にSSCIのグループに入り、それからは徐々に国際的な評価は高まっています。ただ、インパクトファクター等の指標で見ますと、既に 100年以上の歴史のあるアメリカ経済学会とかイギリスの経済学会の雑誌などと比べてまだ差が大きいです。 JERの創刊当初は、カナダ経済学会の Canadian Journal of Economics 、これも結構伝統があり良いジャーナルですが、このジャーナルが当面の目標であったと聞いています。しかし現在のところ、まだ追いついたとは言えません。伝統のあるジャーナルと比べ、掲載論文の質に指標の差ほどの違いがあるとは思えないので、やはり認知度の違いが大きな原因になっているように思います。ただ、 JERは創刊後まだ16年目であり、国際的な認知度を更に高める努力を、これからも続ける必要があると思います。

 図書館の購買数は余り増えていませんけれども、電子版が利用できるようになったおかげで、ダウンロードの数は随分増えてきました。出版社の報告によると、フルペーパーがアクセスされる件数は年間 10%から15%の割合で伸びています。去年は 1万8,000回ほどダウンロードされ、その7割ぐらいが海外からのアクセスになっています。

 JERは経済学系の学会機関誌としては日本で唯一の国際的なジャーナルですが、 JER以外に日本人が深くかかわっている国際的なジャーナルは次の四つです。最初の    International Economic Review というのは、森嶋通夫先生が創刊に関わられた50年近い歴史のあるジャーナルであり、理論・計量経済学の分野で定評があります。創刊当初からペンシルバニア大学経済学部と大阪大学の社会経済研究所のメンバーが編集の中心になっています。次の Journal of the Japanese and International Economies と Japan and the World Economy は、いずれも80年代に日本経済や日本の経営が世界的に関心を集めていたころに日本人の研究者が創刊した学術誌ですが、両誌とも当該分野で既に定評を得ています。また International Journal of Economic Theory は、7年ほど前に京都大学経済研究所の西村和雄先生と矢野誠先生が創刊された理論経済学と数理経済学のジャーナルで、これも最近、 SSCIのジャーナルに加わりました。

 ジャーナルを含めて、最近の経済学の情報発信の変化としては、やはりインターネットの影響というのは大変大きい。話を経済学に限りますと、最近では、研究の一線にいる学者の大半は自分のホームページ、あるいは機関のホームページで最新の論文をダウンロードできるようにしています。したがって、仮にジャーナルにアクセスできなくても、論文名を Googleに貼りつけて検索しますと、投稿前のPDFファイルがどこかから出てくるわけです。ですから、必ずしも最新の情報はジャーナルには載っていないということがあります。それから、経済学の場合、理科系と違って論文の掲載数が少ないこともあって、投稿から掲載されるまでに一般に長い時間がかかります。 JERででも、最初の投稿から実際に論文が掲載されるまでに平均して2年以上かかりますし、更にラグが大きいジャーナルもあります。したがって経済学の分野では、査読誌というのは、最新の情報を発信する場というより、研究の質を保証する装置のような感じになりつつあります。この点は、恐らく理科系の査読誌とはかなり事情が違うのではないかと思います。

 インターネットの普及がもたらしたもう一つの変化に、オープンアクセス・ジャーナルがあります。これは理科系の学会がよくやっているような、著者自身がお金を払って自分の論文へのアクセスをオープンにするというのではなく、文字通り誰もが無料でアクセスできるジャーナルという意味です。経済学の場合、大手の Elsevier、Wiley-Blackwellと Springerの三社が主要なジャーナルの大半を出版しています。それに対抗して全く無料のジャーナルをつくるという試みがアメリカで行われています。ただ、全体的には、オープンアクセス・ジャーナルに論文を掲載することへの評価は、既存の定評のあるジャーナルに論文を載せるほどには高くありません。しかし御存じのように、大手出版社の学術誌はここのところ購読料が毎年 5%ほど上がっており、世界中の大学の図書館の予算を圧迫しています。そのため、学術的な権威が保証されるようなシステムが確立できれば、オープンアクセス・ジャーナルの試みは今後定着していくかも知れません。ただ、現在のところは、近いうちに既存のジャーナルを脅かすような存在になるようには思えません。

 次にジャーナルを離れて、経済学の国際的な情報発信に関する全般的な状況についてお話します。まず最近の大きな改善点は、日本の若い人たちの国際的情報発信能力が大変上がってきたことです。これまでは、海外の査読誌に論文を載せるには、アメリカの大学に行って Ph.D.を取らないと難しいと思われてきましたが、この20年ほどの間に、日本の大学にとどまったままで、国際的な査読誌に論文が載る若手研究者や大学院生が非常に増えてきました。この理由は、大学院の重点化以後、経済学の主要な大学院ではアメリカ流にコアコースを設けて1年目の基礎教育をきっちり行うようになったこと、また COE、GCOE、大学院教育支援などによって、大学院生が海外に行って報告する際の資金援助や、英語で論文を書くための校正費用の援助ができるようになり、大学院生が英語で論文を書く垣根が随分低くなりました。また主要な大学では就職の際に、英文査読誌に掲載された、あるいは掲載の決まった論文があるということが大変重視されるようになりました。この効果は非常に大きいと思います。またインターネットのおかげで、海外との情報の格差がほとんどなくなったことも、若手が躍進している理由のひとつだと思います。

 一方、日本の現状が抱える問題点は次の2つではないかと思います。今申しましたように、日本の経済学者の国際的な情報発信能力は全般的に上がっていますし、国際的に活躍する研究者の数も明らかに増えています。ただし、欧米、特にアメリカの学界に比べると、世界の研究動向をけん引するような研究は、残念ながらそう多くはありません。これは先に触れましたように、日本の経済学界が必ずしも一枚岩になっていないなどの幾つかの条件がありますが、何よりもアメリカの経済学界の影響力が余りにも大きいことに原因があると思います。アメリカ経済学会は会員が約 1万8,000人です。機関誌の American Economic Review というのは、誰が挙げても間違いなく経済学全分野のトップスリーに入るジャーナルですし、それ以外に五つのジャーナルを自前で刊行しています。世界中の大学図書館などへの機関誌の販売数が全然違いますから、その収入も随分あるはずです。アメリカ経済学会の会員は、これまで七十数名いるノーベル経済学者の 8割を占めていますし、主要な国際学会のフェローや、理事、AER以外の主要な学術誌の編集委員など、要するに重要なポジションを全部押さえているわけです。その結果、アメリカの経済学者の研究が世界に影響するような形になってしまっているので、そこに食い込むのがなかなか難しい状態になっています。

 これは世界的な問題で、アメリカ以外のどの国にとっても状況は同じですが、もう少し身近で深刻な問題かと思うのは、アジアにおける日本の立ち位置です。これまで日本は、アジアおいて経済学の研究・教育の最先端にいました。しかし、ここ二十年ぐらいの間に、香港、韓国、台湾、シンガポールにある一部の大学や研究機関の国際的な情報発信能力が大変上がってきました。これらの国のトップ校になりますと、経済学部のファカルティーの大半がアメリカの上位校の Ph.D.を持っていまして、完全にアメリカのスタイルで研究をしています。日本では東大の経済学研究科、京大の経済研究所、阪大の社会経済研究所などが経済学の研究業績ではトップにいますが、香港の大学の中にはそれらを抜くようなところが既に現れています。それから、アメリカには大量の中国系の留学生がいますから、当然優秀な人も多く、アメリカの大学にも随分たくさん残っていて、大抵の大学の経済学部に一人や二人は中国人の若手の学者がいるわけです。その人たちがアメリカで中国系の学者の集まりをつくっており、強いネットワークを形成しています。そのため、このままでいきますと、アジアでの主導権も中国系の人たちにとられる可能性は十分にあると思います。

 以上を踏まえまして、今後なすべき取り組みとしては、まずJERの国際的認知度を更に上げる必要があります。審査プロセスをもっとスピードアップなどして、投稿したいと思わせる魅力を増やさねばなりません。それから、出版社も随分努力はしていますが、宣伝活動を続け認知度を更に上げていく。また研究体制については、せっかく若手の国際情報発信能力が上がってきているので、これを更に伸ばす方向で努力をしたいと思います。

 次に、諸外国との研究上の競争についてですが、いずれにしてもアメリカが大変強いので、アメリカに日本一国で対抗するのは無理です。ヨーロッパの諸国もそれを感じているはずです。ヨーロッパは経済学発祥の地ですけれども、戦後、アメリカに研究の主導権をとられてしまいました。そこで各国が合同してヨーロッパ経済学会をつくって、その活動を通じて、ヨーロッパ全体としてアメリカに対抗するような形にしようとしています。アジアも、今述べましたように日本以外でも研究の活動水準が随分上がっていますから、アジアを一つにまとめて北米やヨーロッパと並ぶような研究のセンターにするというのが一つの現実的な方向だろうと思います。

 アジアでも幾つか学会誌、国際誌が出ていますけれども、JERは今のところその中ではトップジャーナルなので、この利点を生かして、日本が中心になれるようなシステムを何とか構築したい。ヨーロッパ経済学会では、各国の大学院生や若手研究者を集めてワークショップを開いたり、サマースクールを開いたりして、優秀な院生がアメリカに逃げないようなシステムを一生懸命つくっているわけですけれども、そのような取り組みは、アジアの各国にとっても学ぶべき点ではないかと思います。実際例としましては、京大の研究所などアジアの4つの機関が年1回行っております Asia Joint Workshop があります。こういう活動をもっと広げることによって交流の輪を拡大し、その中で日本が中心になれるような状況を保ちたいと思います。

 最後に、元学会長や理事の先生方から一言言っておいてほしいと言われことを述べさせていただきます。 Japanese Economic Review は数年前まで科学研究費補助金の出版助成を受けていましたが、科研費の使用を厳正にするということで、出版社との契約を 4年に限り、4年ごとに入札をして出版社を選び直さねばならないことになりました。しかし、学術出版というのは出版社との間に信頼関係がないと続きません。いかに欧米の出版社がビジネスライクだといっても、実験機器とかコンピューターを業者から買うのとは根本的に違うわけです。規則の変更は大変に困るので、当時の学会長や常任理事の先生が日本学術振興会に交渉に行かれましたが、例外は認められないということで、結局、出版助成の申請をあきらめることになりました。科研費の使用が厳正に行われるべきだという点には全く異存がありませんが、補助がいただけるなら、やはり現実に即したフレキシブルな対応をしていただきたいと思います。

学問の性格の違いがあるとはいえ、理科系の分野と比べますと、経済学の国際情報発信はまだまだ不十分という見方もできるかと思います。しかし、日本経済学会は情報発信の国際化に関して、長年真剣に取り組んできたほぼ唯一の経済学系の学会であり、 JERは国際的に認知された我が国で唯一の経済学系の学会機関誌です。社会科学の国際情報発信を強化するためにも、日本経済学会と JERの活動を積極的に御支援いただけると幸いです。

 簡単ですが、以上です。

【有川主査】  ありがとうございました。

 続きまして、日本植物生理学会から御説明いただきたいと思います。渡辺先生、よろしくお願いいたします。

【渡辺教授】  日本植物生理学会、我々のジャーナルは Plant and Cell Physiology ということで、略称 PCPと申しておりますが、そこで編集実行委員を行っております渡辺でございます。本来であれば編集委員長の名古屋大学の松岡が御説明申し上げるところなのですが、本日、所用で私がかわりに御説明申し上げます。

 最初に、学会の成り立ちを簡単に御説明申し上げまして、我々が取り組んでまいりました国際化、あるいはよく言われますインパクトファクター等をどのようにしてあげるかという活動について御説明申し上げたいと思います。

 設立は比較的浅くて、1959年になります。国際的な植物生理学の研究交流を目標として、国際植物生理学連合の一翼を担うということで、現在の会員数が約 6,000名弱、その半数以上が国外の会員であるところが我々の学会の特徴だと思っております。昨今の国際化ということがございますので、学会内に国際委員会を設置しまして、年会という年に一度皆さんが集まる場を用意しておりますが、そこで国際公用語である英語で学会を行う、あるいは英語のホームページをつくるなどの活動を行っております。

 活動内容としましては、一番メインの点は、我々の雑誌でございます Plant and Cell Physiology 、以降PCPと申し上げますが、これを刊行すること。学会を春に一度行い、約 1,500名に毎回参加いただいております。それ以外には、様々な国際学会との共催、学会からの学会賞を出してございます。また、もちろんホームページ、電子メールでの情報発信を会員に対して行っております。

 このPCPというのは、植物というのはこのように緑を持っている、つまり光合成を行うことが特徴だと思われると思うのですが、微生物の中にも光合成を行うものがございますので、植物・微生物の生理学、生化学を扱う国際誌として発展してまいりました。発刊当時は京都にございます中西印刷様でハンドリングを頂いておりまして、 2000年からオックスフォード大学出版局、以降OUPと申し上げますが、 OUPに出版の部分、出版というよりは後でスキームをお見せしますが、と提携いたしまして、2001年にオンラインジャーナル化を行いました。 2002年にはオンライン統合ができ、オンラインでレビューができるシステムを導入、2007年に、論文が月一回ですので年に 12冊出ますが、その中でどれが一番よかったかをチーフ・エディターがチョイスし、その論文に対してフリーアクセス権を付与するというようなことを開始しました。また、 2008年から著者アンケートなどを実施し、また、カラー印刷、特に生物系の場合はカラー写真の色の具合によってジャーナルが選ばれないこともございますので、そういったことを向上するとともに、カラー印刷の費用を無料化しました。また、表紙のデザインに専門のデザイナーの方を登用する形で、海外からも高い評価を得ております。購読機関につきましては、約 8,000へと増加を見ております。

 植物科学では世界でもトップクラスのジャーナルとなっております。レビュー誌を除きますとJCR全体で植物科学関係ですと 172誌ございますが、その中で12位に入るインパクトファクターになっております。一番トップが 9で、我々のところが少しだんご状ですが、この位置をキープしてございます。

 では、日本国内でということになりますと、200誌ぐらいございますが、 2008年、2009年ですが、その中で上位 5位に入っております。 DNA RESEARCH というのが植物・動物にかかわらず DNAの情報、 CANCER SCIENCE というのは動物系ですけれども、植物系ではもちろん日本の中ではトップのジャーナルという立場をとっております。

 先ほどもお話ししましたが、編集委員長は現在1名おりまして、編集実行委員、いわゆるエディターというものが 19名おりますが、海外のエディターは現在6名しかおりません。この点が少し少ないのではないかということで、現在、委員会で検討いたしまして、外国のエディターを多くすることを考えております。編集をサポートいただくボードメンバーが 40名。この編集体制をサポートしてくれるのがOUPという海外の出版社でございまして、編集室の業務、編集サポート、組版、オンライン出版、マーケティング、販売までを行っていて、印刷の部分だけ従来からお付き合いがございます京都の中西印刷さんにお願いしております。つまり、著者が投稿いたしまして、そこを OUPが受ける。エディター・イン・チーフである編集委員長がどのエディターかを選びます。エディターはレビューワーをそこで決定し、最終的に採録をエディターが決定いたします。それを通知し、最終的にオンライン化し、紙媒体としての印刷、頒布を中西印刷さんに行っていただいている状況です。

 これは投稿数の推移でございますが、オンラインの投稿を行ってから急速に増加しております。これは先ほどの経済学関連の雑誌とも同様ですが、特にアジア等からの投稿が多くなっております。それに対して日本の投稿数がさほど多くなくて、ほぼ飽和しているような状態になっております。海外が非常に増えているわけですね。このような状況で質をある程度担保するために、我々の取り組みとして、特集号という論文を設けております。例えば、植物肥料学という、あるいは土壌にあるミネラル分をどういうふうにして植物は取り入れてそれを栄養に生かしているか、あるいは、昨今問題になっておりますような放射性セシウム、そういったものをどうやって植物がアップテイクできるかというようなことをまとめた形で特集することによって、実際に読んでいただく方が、あ、これは面白いということで、その三つなら三つ、五つなら五つを一貫して読んでいただけるんじゃないかというようなことを念頭に置いて企画いたしました。

 こちらはアクセプト率とインパクトファクターの推移を示しております。全体のインパクトファクターは、若干下がっている点も多少ありますけれども、基本的にこのように右上がりになっております。もちろん、それに反比例する形でアクセプト率が下がっておりますが、こういうことを言うと怒られるかもしれませんが、日本の中だけでのアクセプト率を考えるとさほど変化はない状況で、諸外国からの、特に中国、韓国から非常に多く論文が投稿されますが、まだ余り質が良くないというのが編集をしていての実感でございます。

 このPCPの強みというのは、編集において、我々エディターと OUPとの間で様々なコミュニケーションを行い、OUPをシンクタンク的な要素として使っていることではないかと思います。つまり、出版社を含めた定期的な戦略会議を行い、現状としてどういうことが起きているか。例えば、これは先日会議で持ち出されたものですが、我々のジャーナルが赤で示されておりますけれども、競合する他誌はどのようにインパクトが高いか。例えば Plant Cell などはインパクトファクターが10近くございますが、どんな論文でも全く引用されない論文は存在して、数回しか引用されない論文が非常に高くなるのがほとんどだと。ところが、 Plant Cell のようにインパクトファクターが高いものはそういうところが下がっていて、減衰していくのに時間がかかって、インパクトファクターが 50とかを超えるものが出てくる。それに対して我々のジャーナルはもうすぐに減衰してしまうというような特徴を出版社から我々に対して提供していただいて、我々がどういう行動をとらなければならないかを瞬時に出していただいている、そういう状況でございます。

 また、やはり学会員とのつながりがないと非常に独善に陥りがちですので、エディター・イン・チョイスでこの論文が非常に面白かったという場合には、先ほど申しましたように、それにオープンアクセスの権利を付与しまして、皆さんに広く読んでいただく。さらには、これは昨年スペインから投稿された論文とその写真でございますが、トマトの突然変異体でございまして、皆さんふだん食べている部分はここの部分ですけれども、捨てているへたの部分まですべて食べることができるという面白いトマトの変異体を見つけて、この遺伝子を解析しましたということで、この絵が諸外国の先生方、もちろん国内の先生方にも非常に面白いものであるということで、講義の際にこの表紙を使って、最近こういう面白いものがございますということで紹介いただいているような諸外国の先生もいるという報告を受けております。

 また、今年度から開始しておりますが、PCPがスポンサーとなることによって負担を── OUPがスポンサー料を負担するわけですが、国際化に伴いまして、諸外国から先生をお呼びして年に 1回のシンポジウムの際にすべて英語で話していただき、その方に特集号のような形で、先ほどのように、例えば、今、トピック的な内容がどのシンポジウムであり、どのように引用されるかを戦略会議で考えるという形で、シンポジウムを行っております。

 また、編集委員長自らが投稿セミナーということ、あるいはMeat the Editorということで、エディターと会議をして、このような広い場ですが、実際に投稿したい大学院生、あるいは若手の研究者の方が、自分の論文はこんなふうになるんだけれども、これは PCPで採択できるでしょうかというような相談会のような形で、エディターと直接話ができる。諸外国ではかなり行われているようですが、なかなか日本人はシャイでございますので、今、日本でやってもなかなかうまくいかないところがありますけれども、もう少しこのようなことが広く定着すればと思っております。編集長による投稿セミナーでは、インパクトファクターというのは自分たちで何もしなくても上がるんだと思っているような学生さんがいらっしゃいますので、そうではなくて、自分たちが積極的に様々な論文を引用することがインパクトファクターに対して影響しているという実態の部分をお伝えする、あるいは、昨今はインパクトファクターというのはジャーナルのファクターであって、研究者評価はもっと違うファクターを使うというような、 h-indexのようなものがございますので、そういったことも含めて学会員にお知らせすることで、学会員とジャーナルとの Win-Winの関係を築くことを目指しております。

 また、一般読者・著者に向けた活動として、先ほど申しました競合誌で出版している著者をターゲットとしたメールを配信する。例えば、こういう特集号が出ましたよというようなことで、これはデータベースに関する特集号でございますが、そういう植物のデータベースを扱っているような方々のリストを特集号を編んだ先生にお願いいたしまして、それをどこにお知らせするのがいいかというような形で国内外、特に国外に対して発信するということを行っております。

 また、ホームページ上でも積極的に情報発信を行っておりまして、先ほどのこのトマトの表紙でございますが、これは年に一度、学会の折に行いますが、 PCP Cover Design Contestをオンラインと学会の会場で行いまして、どの表紙が昨年 1年間でよかったかを皆さんに御投票いただきます。昨年はもちろんこれが断トツで1位でございまして、スペインの方に日本のちょっとした粗品をお送りしたんですが、スペインではそのようなものは手に入らなくて非常に喜んでいただいて、是非また PCPに投稿したいという、ある種のリピーターになっていただけるようなものを用意したということがございます。

 ちなみに、過去3年ぐらいこのCover Design Contestを行っておりますが、毎年1件は必ず海外の方が入るというぐらい、海外の方の表紙が非常にすぐれているという、逆に言うと日本の方にはもう少し頑張っていただきたいというところはあると思っています。

 我々のジャーナルの非常な強みとしましては、迅速な出版というところがございます。競合他誌で、例えば Plant Cell はインパクトファクターが10ぐらいございますが、投稿から採択までが非常に長い、 20週とかかかりますが、我々はこのように非常に短い期間で採択まで行う場合がございますし、ほかのジャーナルにはないものとして、 Rapid Reportというものを我々は用意してございます。例えば、日本あるいは諸外国の方々と競合的な研究を行っている先生方は随分たくさんいらっしゃると思います。そういう方々で、あの先生の論文が Nature に載るかもしれないということがどこかから耳に入ったような場合に、通常であれば3週間の査読期間を 1週間に短縮しまして、早ければ投稿した翌月のジャーナルにその論文が載るという形、もしかすると Nature よりも先にパブリッシュされる場合があるという例も伺っております。そういう点が評価されて、 Rapid Reportというセクションが非常に好評となっておりまして、通常のインパクトファクターは我々 3.幾つしか持っておりませんが、Rapid Reportだけですと 6.4、つまり Nature に投稿される論文と── Nature はもっとずっと上ですけれども、それと変わらない非常に高い評価を受けていると思っております。

 何よりも、オーサー・チャージが低いということ。やはり皆さんどの論文誌に投稿しましょうかと悩むわけですが、我々の場合はカラー図版をこれだけ使ってもかからないという利点を持っております。

 あともう一つ、OUPでやっていただくこととして、電子版別刷りの無料配布を行っております。つまり、ある論文を我々に投稿して採択されます。そうしますと、通常ですと PDFというのはホームページに行きましてお金を払わないとフリーの形では見られません。ところが、そうではなくて、オーサーの先生のところにこういうメールがまいりまして、このメールの PDFの部分にアクセスしますと、最初はまだ完全に版組みされていないものにアクセスできて、そのものを見ることができます。そのうち、 PDFに版組みされたものに自動的にリンクがシフトする形ですが、これはいわゆる我々が購入します別刷りと同じ機能を持っているものをフリーで知っている先生にお送りすることができるようなフォーマットを持っております。

 電子ジャーナルの機能強化としまして、今年からですが、出版して1年たったものはすべてオープンアクセス化する。ページが増えることによって印刷のコストがかかりますので、データベースのような論文がもちろん我々にもございますが、それは紙の媒体として見る必要が余りないという意見もございまして、オンラインのみ行うというようなことを行っております。また、最近はスマートフォンなどで見られる方も多いこともあるようですので、そういうようなものでも見られるような工夫をとり行っております。

 オープンアクセスへの取り組みということで、先ほどもお話ししましたが、オープンアクセスにしない理由というのはどういうことかというと、やはりお金がないということなんですね。オープンアクセスになれば広く皆さんに読んでいただけますし引用も上がるのだと思っておりますが、お金がないというのが一番問題だと思っております。では、幾らでしたらやっていただけますかということを調査したのがこれになります。これは我々ではなくて他ですが、そうしますと、我々の OUPがどこかにあるのですが、余りいいポジションではなくて、もっと下げなくてはいけないとは思っております。

 最後になりますが、何度かその言葉を使わせていただきましたが、学会という日本植物生理学会── JSPPと我々は呼んでおりますが、ここと著者であり読者である方々、そして出版をサポートいただく出版社の方々すべてが勝つというか Win-Winの関係にならないと、お互いに発展がないのだと我々は思っております。そのために、 OUPをシンクタンク的機能としてどれだけ活用するかということがこれからの大きな発展の方向性としてあるのではないかと思っております。

 どうもありがとうございました。

【有川主査】  どうもありがとうございました。

 続きまして、日本学術振興会の小山内研究事業部長から、科学研究費補助金の研究成果公開促進費について説明いただきたいと思います。お願いいたします。

【小山内日本学術振興会(JSPS)研究事業部長】  それでは、お手元の資料 4に基づきまして、科研費補助金の中に研究成果公開促進費というカテゴリーがございまして、また、その中に学術定期刊行物というカテゴリーがございます。その御説明をさせていただきます。

 まず、1ページ目を御覧いただきたいと思います。 1.経緯でございますが、昭和22年度、かなり早い時期に学会誌の出版費補助金という形でスタートしておりまして、それが昭和 40年度に科学研究費補助金の一つという形になったものでございます。昭和61年度には現在の学術定期刊行物、それから学術図書、データベース等、研究成果公開発表という、ほぼ現在の形に近い整理がなされまして、また、平成 11年度ではございますが、そのうち3種目につきまして、学術定期刊行物の補助を含め、日本学術振興会にその業務が移管されたということでございます。

 目的・性格は飛ばしまして、公募内容について申し上げますと、この制度の対象となるジャーナルでございますけれども、一応、電子媒体でも応募は可能でございますが、ただ、後ほど御説明申し上げますとおり、応募対象経費が、紙媒体を原則として考えております。その対象にならないものとして1から6まで掲げてございますけれども、出版社の企画によって刊行するもの、それから、毎年度の補助要求額が 100万円未満のもの、それから、購読者数が極めて少数のもの、それから、購読者が一地方若しくは特定の研究機関の関係者が中心になっているもの、あるいは、刊行経費に充当できる財源が 50%未満であるもの、それから、過去3年間、外国人又は海外の研究機関に所属の研究者からの投稿論文の掲載実績がない、なおかつ海外での有償頒布が行われていないものは対象にならないという形になっております。

 そして、応募区分でございますが、現在、欧文誌、特定欧文総合誌、欧文抄録を有する和文誌というカテゴリーになっておりまして、欧文誌につきましては、条件としては、年間総ページ中、欧文ページの占める割合が 50%以上であれば欧文誌とみなしましょうという形になっております。そして、特定欧文総合誌というカテゴリーがございます。これは複数の学会等が協力体制をとって刊行するものであって、年 4回以上発行しており、欧文ページが100%等々の条件を設けたものでございます。そして、欧文抄録を有する和文誌というものは、これは先ほど言語学会の要望としてございましたとおり、 50%未満のもので原則として人文社会科学を対象とする分野のものに限るということになっておりまして、これにつきましては、資料 5に平成11年8月、これは学術審議会の時代でございますが、このときに科研費分科会の企画・評価部会の中のワーキンググループの報告として出されておるものでございますけれども、この資料 5の3ページの上に3番として和文誌の必要性ということで、それまでは基本的には和文誌も全面的に対象になっていたわけですけれども、自然科学系の分野については、この段階で補助は必要ないだろうと。そして、人文社会系については引き続き補助を行うことが必要だろうということで、この3の和文誌については人文社会系を原則とすることになっております。

 そして、その次のページを見ていただきますと、応募対象経費というものがございまして、この対象経費の中で基本はこの1で、直接出版費として、組版代、製版代等々並んでおりますけれども、これは電子媒体については組版代に当たる部分も対象となり、それ以外については原則紙媒体ということをイメージしてできた制度でございます。それが今に至っている状況でございます。それから、欧文校閲費と海外のレフェリーへ依頼する際の往復の郵送料というのが2、3として入っております。これにつきましても、先ほどごらんいただきました資料 5の同じ3ページ目の大きな4の( 2)で提言がなされたのを受けてこの2、3が入っておりまして、ここで補助対象経費の範囲拡大についてということで、欧文の校閲経費の補助だとか、あるいは海外への郵送代というのも入れることが適当であるという提言を頂いてここに入っていると理解しております。

 それから、事業期間は基本的に毎年毎年の1年限りなのでありますけれども、ここには 1年から4年間とあります。4年間まで補助の予約みたいなことが可能となっておりまして、それにつきましても先ほど御覧いただきました資料 5の3ページ目の一番下の(3)にありますけれども、複数年度にわたる継続補助という提言を受けて、継続予約という形でできた制度になっております。

 ちなみに、この応募対象経費につきましては、平成19年度に予算を減ったことがございますけれども、そのときに併せてジャーナルが出版社を選定する場合には、事前に競争入札を行うか、又は複数の出版社等からの見積書を取ってくださいという条件が加わりまして、直接出版費ベースで 1件について250万円を超える契約については入札にしてくださいという条件が入りました。これは財政当局からの強い要望で、基本的には随意契約というのは税金が無駄になるという、恐らくそのようなことで大きな金額の契約については入札が義務づけられておりますので、先ほど三野先生からお話があったようなことになったと理解しております。

 資料4に戻りまして、2ページ目の 4.の現在の交付状況でございますが、現在の採択率は79.7%、 1課題当たりの配分額平均が320万円という形になっております。

 そして、5.で過去10年間の交付状況の推移がございます。今申し上げましたように、平成 19年度にトータルの配分額が6億円を切るということがございまして、そのときに採択率も、 2ページ目の一番下の表にございますとおり、それまで60%台だったものが一度 53.3%に落ちるということがございました。また、このときに採択率が下がったのと、先ほど申しましたように、若干いろいろ条件が付いたことがございまして、その翌年度から応募件数がそれまで 200件以上あったものが100件台に落ちたということになって、その状況が現在に至るまで続いているということでございます。

 3ページ目以降は、応募採択件数と、それから配分額のデータを表なりグラフにいたしております。

 3ページ目には分野別の応募・採択件数でございますが、これにつきましても各分野ともほぼ同じ傾向をたどっております。平成 19年度以降、応募件数がいずれの分野も減少傾向にございまして、採択件数も同じように減少傾向。ただし、採択率については、先ほど全体で見ていただきましたとおり 70%台、8割近いところを保っております。

 そして、4ページ目をごらんいただきますと、各分野別の平均配分額がございまして、大きく分けますと理工系、生物系については配分額が多くなっておりますし、また、最高配分額も 2,000万円台、3,000万円台、ものによっては 4,000万円台というような事例もございます。他方、人文・社会につきましては、平均額で100万円台ということでずっと推移しております。最高でも近年は 200万円台という形でございます。

 次に、5ページ目の区分別の応募・採択件数を御覧いただきますと、欧文誌、和文誌ともやはり同じ傾向になっておりまして、近年は若干減っております。欧文誌については約 100件。そして、特定欧文総合誌については、複数の学会が協力する等様々な条件がついておりますこともございまして、 1桁で推移しております。採択につきましては、1件ないし 4件という状況が続いております。

 そして、最後のページには、欧文誌、特定欧文総合誌、和文誌別の最高配分額と平均配分額のグラフをつけてございます。特定欧文総合誌につきましては、特殊なジャンルでございますので、配分額は高いようにしておりますけれども、和文誌につきましては、人文・社会に限られることもございまして、平均額は 100万円台になっております。

 そして、現在の状況ですが、この応募対象経費等につきまして、電子化に伴う検討、様々な御意見を頂いているところでございます。資料 5の4ページの大きな5番、将来の学術誌の在り方というところでも、これは 12年前の提言でございますけれども、既に電子出版への対応について早急に検討する必要があるという御提言を頂いているところでございまして、また、この部会等におきます御議論を御期待申し上げるところでございます。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 三つの学会とJSPSからお話を頂きました。これから 20分程度時間をとりまして意見交換をしたいと思います。御意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。

【倉田委員】  日本経済学会の取り組みのところで幾つかお聞きしたいことがございます。経済学の論文の場合、もう既にほとんどの論文はジャーナルに出る前にウェブで手に入れることができるというお話があったと思うんですが、これはいわゆるワーキングペーパーとかそういうのではなくて、個人的に原稿をお出しになることが多いということでよろしいのでしょうか。

【三野教授】  各所属機関のワーキングペーパー、ディスカッションペーパーの形もありますし、そうではなくて、未定稿をそのまま出す人もたくさんおられます。未定稿といいますか、要するに投稿中か投稿前の論文をすぐに出すという感じです。一昔前までは、アイデアをとられるのではないかという心配から学会などでも論文を配らない人かもおられましたが、最近は全くそれがなくなって、ウェブに出た段階で優先権はわかりますから、書いてはすぐネット上で発表する人が多いです。日本の若い人たちも、今はそういうスタイルになっていますので、ジャーナルに載る二、三年前に大半の論文がネット上に出回っているという状況です。特に研究が活発に行われている流行のトピックに関する論文は、その傾向が強いです。

【倉田委員】  そのことに対して、何か学会側とか雑誌側が特に問題視することはなくて、それはもう全然問題ないという。

【三野教授】  それは全くないです。ただ、ネット上の論文は質が保証されていないので、評価は読む側の判断になります。ですから、ジャーナルに載るということは、ある意味でお墨つきといいますか、ジャーナルに載った論文はそれだけの質が保証されていると客観的に見られます。最近は、ジャーナルはそういった役割としての方が大きくなってきているような感じがします。

【倉田委員】  つまり役割といいますか、機能の分担がもうできているという。

【三野教授】  ええ。完全にはできていないと思いますけれども、かなり進んでいると。

【倉田委員】  ある程度。

【三野教授】  ええ。

【有川主査】  ほかにございますでしょうか。

【土屋委員】   やはりJERにお伺いしたいのですが、会費収入で出版費を賄うという記述が 7ページのところにあるのですが、日本言語学会さんの場合には会費は幾ら、出版が幾らというお話を伺っているので、同様の大体の数字を教えていただけますか。

【三野教授】  会費は現在、正会員が1万 3,000円、学生会員が6,000円です。出版費用の高騰のために、出版費は全収入の 5割以上を占めています。JERに加えて「現代経済学の潮流」という日本語の年報を東洋経済新報社から出していますが、その両方を合わせて出版費は年間 2,500万円近くになっています。

【土屋委員】  そうすると、その学会費を払っている人としては、このJERとその年報を受け取って大体割が合うと。

【三野教授】  割りが合うかどうかは会員の主観にも依存しますが、もしJERを単体で購入しようとしますと高額になるので、それを考えれば割には合っていると言えます。

【土屋委員】  もう一つ、似たような話なんですけれども、大学・研究機関の購読というのは233機関とありますが、それはプリントの購読数ということですか。

【三野教授】  そうです、プリントです。もちろん、オンラインと両方セットになっているケースが大半ですが。

【土屋委員】  そうすると、Wiley Onlineからの収入というのは、どういう感じで受け取られているわけですか。

【三野教授】  収入は、そうですね、大体全費用の1割程度になっていると。

【土屋委員】  今の2,000万円の。

【三野教授】  そうですね、大体百五、六十万円程度でしょうか。

【土屋委員】  百五、六十万円が出版社から戻ってきていると。

【三野教授】  そうですね。

【土屋委員】  それともう一つ、たしか2009年で JCRの245経済誌中226位ということだそうですけれども、これは上がって 226位にきたのですか。それとも落ちたのですか。

【三野教授】  150位くらいから200位台の間を上下しています。というのは、この辺になるとインパクト指数というのは、よく引用される論文が二つ三つあるかどうかで随分違ってきますから。先ほど申しましたように、 Citation Indexに入ったのがまだ5年か6年前ですので、それを考えると下から出発するのは仕方がないと思います。全体から見たらもちろん低いと思いますが、先ほども申しましたように、このインパクト指数と、掲載されている論文のクオリティーは、これはひいき目ではなくて、比例はしていないというように考えます。やはり海外にまだ十分流通していないという面が大きい。特に   Japanese Economic Review という名前もあって、初期のころは日本経済の雑誌じゃないかと海外で誤解されていたこともあったようです。「季刊理論経済学」のころから数えると 60年近い歴史がありますが、国際舞台に出たのはまだ15、 6年ですから、それを考えると最近は状況が随分改善はされてきたと思います。

【土屋委員】  それから、最後に一つ、PCPのお話のスライドの 8ページのところでワークフローが書いてあるんですけれども、日本経済学会の場合にも大体同じということですか。

【三野教授】  同じです。

【有川主査】  どうぞ。

【田村委員】   渡辺先生にお伺いいたします。最後のまとめのところで OUP のシンクタンク機能を活用したいというようなお話があったわけですけれども、少し具体的にその辺り、どんなことを考えていらっしゃるかお話しいただけますでしょうか。

【渡辺教授】  もう実際に行っている部分としまして、皆さんのお手元の資料でグラフをたくさんお見せしましたが、例えば 9ページから始まりますような投稿数の推移であるとか、その後の、特に11ページのような他誌との比較というような点については、我々編集委員であるとか編集実行委員がこういう作業をするのは非常に困難ですので、そういう部分は全部こういうことを出してほしいということで、将来計画戦略会議のメンバー、あるいはエディターから、こういう数値があると我々として考えたい、あるいは他誌、特に中国などの場合、我々のようなエディターではなくて、事務的なことをやるエディターが 3名雇われることによって、中国で新しく出た雑誌があっという間にインパクトファクターが我々のところまできたとか、そういうような情報を随時入れていただく。その戦略会議については、例えば年に数回行って、常に新しい情報を向こう側からも提供いただけますし、その情報を得てこちらとして次にどういう情報が欲しいということをしております。

【田村委員】  ありがとうございます。そうすると、やっぱりシンクタンク機能というのは、基本的にはデータとか情報の提供、分析という……。

【渡辺教授】  分析ですね。

【田村委員】  分析もあるわけですね。

【渡辺教授】  分析もしていただきます。

【田村委員】  そうすると、やはり多くの雑誌を手がけている大規模な出版社の方が、そういう意味ではいいということにはなるわけでしょうか。

【渡辺教授】  その点に関しては、なぜ我々がOUPを選んだかということについては、当時の学会長でないとちょっと分からない部分もございまして、我々は正確には存じ上げていないのですが、今にして思いますと、 OUPさんという比較的小さな出版社ですが、非常に小回りがきいて、植物系について言うと、我々との競合になりますが、トータルで 4誌か5誌をハンドリングされておりますので、そこからの内部情報と言ったらおかしいのですけれども、そういう点もある程度入ってくる部分もありますので、その点についてはさほどディスアドバンテージにはなっていないのではないかとは思っております。

【田村委員】  分かりました。必ずしも規模は関係しないということですね。ありがとうございました。

【有川主査】  ありがとうございました。三野先生のところでは、Wiley-Blackwellと関連して今の問題はございませんでしょうか。

【三野教授】  今おっしゃったような、そこまで細かいフォローはありませんが、インパクトファクターとか、毎月のダウンロードの状況とか、細かいデータは年に2回ぐらい出版社の人がやってきて説明があり、改善するための方策を相談はしています。それと出版社は、外部に向けての宣伝活動はかなり熱心にやっています。先ほど少しありましたけれども、よく読まれそうな論文が載っている号を丸々フリーにしてアクセスさせるとか、アメリカ経済学会などの大きな学会でブースをつくって JERの宣伝活動を行ったり、カクテル・パーティを開いたりなど、結構、活動はやっています。もっとも、即効性のあるいいアイデアはなかなか出てきませんが、このような地道な活動を続けていくことが必要であろうと考えています。

【有川主査】  ありがとうございました。

 あともう一つ、日本言語学会から今後の課題ということで、JSPSに対する要望が出ております。これは欧文抄録誌を有する和文誌ということで、そこからくる制約が 50%というところがあるわけですけれども、欧文誌に切替えを進めることは考えてはいらっしゃらないのでしょうか。

【庄垣内名誉教授】  個人的には私は欧文誌にかえるべきだと思います。ただ、先ほど言いましたように、日本言語学会というか日本の言語学というものが、少しヨーロッパのものともアメリカのものとも違って、その両方を含んでいるという。細かく言えば、ヨーロッパの文献学、あるいは地域学とかいうようなものまで日本の言語学というのは含んでいるわけです。含まざるを得なかったという日本全体の学問体系の中で、別に押しやられたわけではなく、反対にそれは一般言語学理論というものをベースにした独自のそういう分野での活躍といいますか、そこの部分は割と世界に誇れる部分なんですが、そういうところも含んでいるというのがあって、にもかかわらず私は全部英語にした方がいいと思うんですね。そういうところを見ると、皆さんいろいろおっしゃいますけれども、それはアメリカの方を向いているという。日本の言語学も、恐らく言語学会の会員の 70%から80%はアメリカを向いていると思いますね。でも、別にアメリカのようにするわけではないのですけれども、アメリカにないような部分も全部含めて英語にしてしまえば私はいいと思っていますけれども、そのようになっていくのではないかと。

 影山さん、よろしいですか。現会長なのです、影山さんは。私はもう3代ぐらい前の会長ですから。

【有川主査】  傍聴席にいらっしゃいますが、一緒においでいただいたということで、コメントがございましたらどうぞ。

【影山日本言語学会会長】  もし欧文誌に切りかえた場合、今度は50%以上のページ数が欧文でないといけないという制約、今度はそちらがかかってきまして、今、実際に働いておる者としては不安があります。そこまでいけるのかどうか。ちょっと過渡期なので、是非日本学術振興会の方も少し融通を持って見ていただきたいなと思います。

【有川主査】  わかりました。小山内部長、この時点で何かございますか。

【小山内JSPS研究事業部長】  欧文誌というふうに出されて、やはり和文が大半でしたというのでは若干問題があるので、その逆であれば、実質的な問題は少ないのではないかと思っておりますので、そこはまた御相談させていただきたいなと思います。

【有川主査】  それから、先ほど先生からもございましたけれども、例えば源氏物語などの国際会議というと公用語は日本語だと思いますが、それを英語にするわけにもいかないところもあるかと思います。

【庄垣内名誉教授】  現実にはそういうものはないのです。ないといいますか、例えば、誰かが源氏物語か万葉集の言語について論文を書いた、非常に優秀な論文である。それを全部英語に直すことはできます。できますけれども、漢字がたくさん入ってきて、読み手の多くは日本人であるというようなこと。あるいは、先ほどの中国音韻学というもの、向こうは独自の音韻に関する考えを持っています。そういう方法を使って新しい知見を出しますね。それを全部英語にしたら、今度は中国の人は読めないわけでございまして、日本語にしておく方がまだ読みやすいというようなことがあるんですけれども、私は構わず、それでも英語にすべきだと思っているのです。もちろん、全てのものは表現できます。それが回りくどいかどうかということでございますから。

【有川主査】  貴重な御意見をありがとうございました。

【松浦委員】  言語学会についてお伺いします。大学院の方々がお書きになる論文の使用言語が一体どの程度英語になっているのか教えていただきたいというのが一つです。もう一つは、日本のことを研究するのに基本的には日本語でやるのが筋だろうという考えもあると思います。そうすると、外国の方が日本のことについて書かれる場合に、日本語で書いていただいて日本側でエディトリアルサービスを提供するという可能性もあるわけですね。研究成果の発表の言語を英語にするという大きな流れはあるのですが、他方で、それぞれの国の持っている言語の特性を生かした研究も残るべきでしょう。日本に関する研究を外国の方に日本語で書いていただくというのも一つの国際化だと思います。その方向の議論について、お考えをお聞かせください。

【庄垣内名誉教授】  大学院生のことに関しましては、私が以前所属しておりました京都大学の院生、今もよく来ますけれども、やはりほとんど英語で書くようになっております。

 それから、もう一つですけれども、例えば日本語を対象にした言語学の研究というのは、これは英語でそのまま書けます。そして欧米にも、特にアメリカにもそういう研究者もおられます。本当に日本語でしか書けないというのは、私はないと思うのですね。

【松浦委員】  もしそれが現状だとすれば、学会誌の過半数のページが日本語で書かれているというのはどういうことなのでしょうか。読者は、専ら日本人と想定しているからでしょうか。会員の多くの方が英語で執筆できるというのでしたら、広く外国の方々に読ませるつもりで、編集方針を少し変えるという方向もありそうです。いかがでしょうか。

【庄垣内名誉教授】  非常に痛いところを突かれましたけれども、やはり若い人は英語で書くんですけれども、年を重ねた研究者がどうも日本語で書いて、そして査読で勝負して若い者は負けてしまうというような、それが現状だと思いますけれども。

 それにいたしましても、私たちが望むところは、投稿者は会員でなくてもいいという方向で持っていきたいのです。そうした場合には、どうしても皆さん英語で書くようになると思いますので。ただ、会長は怒っておられるかわかりませんけれども、私はそのように全部英語にすべきだと思っているわけです。

【松浦委員】  一点、渡辺先生にお伺いしたいことがあります。資料の17ページにオーサー・チャージの話が出ております。著者が支払う投稿料というのは、資料には、柱がそれぞれ二本立っていることからすると、この二つのトータルが総支払額ということになるわけでしょうか。

【渡辺教授】  そうなります。

【松浦委員】  そうすると、 Plant Cell のような場合ですと、オーサー・チャージは、恐らく 1,600ドルかもう少し高いということですね。

【渡辺教授】  はい、非常に高いです。これはアメリカのジャーナルですけれども。

【松浦委員】  誰が出版費用を負担するのかという観点から、日本人の学会員の方は学会費をどのぐらいお払いになっているのか教えていただけないでしょうか。理科系の場合はしばしばこういうような格好でオーサー・チャージでもって、まだ 1,600ドル、2,000ドルというのは普通の金額かもしれないのですが、文科系のものを見るとほとんど学会費という格好で払っているようです。その辺りのことをはっきりさせるために、学会費についてお話しいただきたいと思います。

【渡辺教授】  学会費については、私は学会の運営に直接関与しておりませんので正確ではないかもしれないのですが、一般会員が 1万2,000円、学生会員が8,000円ぐらいだったように記憶しておりますので、あと一部、もちろん出版に関しましては、 JSPSさんから補助を頂いております。ですので、この程度におさまっていると理解しております。

【松浦委員】  ありがとうございました。

【有川主査】  では、山口先生。

【山口委員】  松浦先生の質問に追加させていただきます。日本言語学会の論文の使用言語を英語化するということで、大変強い御意見をお持ちのようですが、正会員や学生会員も含め、今の学会内での議論はどのように発展してきましたか。

【庄垣内名誉教授】  それは評議員会とか、あるいは編集委員会でぽつぽつとたまに出るぐらいでございまして、ただ、編集委員会は代々ここ 3代ぐらいはなるべく英語にしようと思っているのですけれども、私はもう顧問ですからね、余り大きな顔はできないんですけれども、現会長がどういうふうに考えられるかということであると思います。

【山口委員】  JERに関して質問ですが、電子ジャーナル化されて、英文化されたことで、海外からの投稿数も増えて、 Citation Indexも上がってきた反面、国内の日本人の研究者にしてみると、以前は最も権威のあるジャーナルであったのが、今は選択肢の一つになっているとの御説明でした。ある程度矛盾があると思うのですが、それに関しては学会内でどのような議論があるのかをお聞かせいただけますか。この質問の意図というのは、今後、アジアにおけるリーダーシップを構築していく上で、やはり言語、それから電子ジャーナル化というのは大きなインパクトを持つことになると思います。その上で日本人の研究者が少し消極的になっているという事実を踏まえた上で、今後どのようにアジアの中で主導権をとっていく体制を確立するのかというところをお聞かせいただけますか。

【三野教授】  機関誌が英文化するまでは、日本語で論文を書いて日本人だけに読ませるという立場でいたわけですけれども、英文化しますと、今度は全世界を相手にすることになります。先ほども申しましたように、 JERと同じいわゆるゼネラル・オーディエンス・ジャーナルには定評のあるものが既にたくさんありますから、どうしてもそれらと比較されることになります。先ほどの一番最初の御質問にもありましたように、 Citationのランクづけみたいなものが既にあちこちで発表されていて、投稿する人も当然それを見て投稿先を選択します。一番いい論文をとにかく JERにまず出すんだ、という愛国心のある人がいればいいのですけれども、やはりなかなかそうはならない。それは仕方がなく、競争というのはそういうものでしょう。その中で改善していくには、編集をタイトにするとか、それから少しでもいい論文を掲載して魅力のあるような誌面をつくるという工夫をしなければなりません。小手先でインパクトファクターを上げたりすることはある程度は可能でしょうが、余り意味があるとも思えないので、正攻法でいきますと、どうしても今申し上げたような地道な努力しかない。

 一方、最近、中国や韓国からの投稿が非常に増えていて、その人たちの多くは、アジアで編集されているジャーナルでは JERが一番いいと思って投稿してきていると思われます。ですから、アジアの経済学者の人たちがまず JERに投稿してみようと思うような誌面づくりも必要だと思います。これをヨーロッパやアメリカまで広げられたら良いのですが、急には難しい。アジアの研究レベルも随分も上がってきていますから、まずアジアの中心的な学術誌になるというのが、現実的かつ有効な方法ではないかと考えています。これは私だけではなくて、学会の学会誌担当の理事の先生なども同じような御意見だろうと思います。

【有川主査】  ありがとうございました。まだまだいろいろお聞きしたいことがあると思いますが、そろそろ予定の時間でございます。

【土屋委員】  少し事実関係だけいいですか。

【有川主査】  では、1点簡単にお願いします。

【土屋委員】   小山内部長に伺いたいのですが、先ほど御指摘になった審議会答申の 4ページのところで「学術誌の発行が電子化され、インターネット等により流通することが予想される。電子化出版への対応について早急に検討する必要がある」と平成 11年に出ているのですけれども、早急にいつ検討されたのでしょうか。

【有川主査】  それは平成11年ということで、かなり古いわけですが、電子ジャーナルの動きが最初に出てきたのは平成 8年ぐらいで相当時間が経過しております。簡単に御説明いただけますか。

【小山内JSPS研究事業部長】  これはむしろこの十一、二年の間、いろいろな御意見があったやに聞いております。結果的にはやはりこちらを通じて、あるいはもう一つ、研究費部会というのが学術分科会の中にございます。そちらを通して文科省の施策としてこれをやれという形で日本学術振興会におっしゃっていただかないと反映されないという、残念ながらそういうシステムになっていますので。

【有川主査】  岩本課長。

【岩本情報課長】  検討されなかった理由というのはもう少し整理する必要があるかと思いますけれども、結果的には文部科学省の方ではこの 10年来、検討されていないというのが事実でございまして、そこはちょっときちっと受けとめて今後考える必要があると思っています。

【有川主査】  私は、つい最近まで研究費部会長をしていまして、その中で少し議論に入りかけたことがありました。そのときの中心的な議題として、今日の三つのものもありました。図書出版経費のサポートの充実に関しては、研究費部会でもいろいろなことを議論しなければならなかったので、その問題が扱えずにきていたと思います。今日は平成 11年のものを出していただいたので、これまでの議論などを通じてそこに踏み込んでくれないかという意図があるのだと思います。今後、我々の作業部会で検討して、恐らく研究費部会等に検討を依頼することになるのではないかと思います。

 三宅先生、何かございますか。

【三宅主査代理】  今日は英文化ということが焦点と伺ったので、大急ぎで三つの学会に現状を伺いたいと思います。英文誌ではきちんとした英文にして出すことがとても大事だと思うのですが、そのときのテクニカル・エディティングのサポートというのは、基本的には本人の責任でやるのでしょうか、学会がある程度サポートしていらっしゃるのかを伺わせていただけますでしょうか。

 皆さんに教えていただいた上で、本当はそういうところはJSTなどがサポートできますでしょうかというあたりを、併せてお願いします。

【庄垣内名誉教授】  日本言語学会では全く個人の責任でございまして、言語学をやっている者はみんな英語が上手です。

【三野教授】  JERの場合も本人の責任ですけれども、原則として、非ネイティブの人は必ずネイティブのチェックを受けることということが、採択の条件になっています。ただ、それをしないで提出する人がいますから、レフェリーや編集者が読んで英文に問題があると判断した場合は、英文校正にかけるまで最終稿を受け取らないようにしています。しかし、学会として英文校正の補助はしていません。

【渡辺教授】  植物生理学会、PCPの場合は、もちろん基本的には本人の責任ですけれども、エディター、あるいはレビューワーから明らかにこの英語はおかしいという場合には、最終的にプロビジョナル・アクセプトという形で、英文校閲をしなさいという形で、その経費は一定程度まで学会で持てるような仕組みをとっております。そのかわり、一定の予算を超えてしまった時点ではオーサーの方にチャージしていただく形をとらざるを得ないんですが、そういう形でサポートはしております。

【有川主査】  物理学会は少し進んだことをやっていらっしゃるのではないかと思うのですが、瀧川先生ございますか。

【瀧川教授】  英文校閲は閲読、査読が終わった時点で著者の希望によっては行うと。場合によってはレフェリーがこれを強く進めるというようなことでやっております。それは組織的に業者に委託してやっております。

【有川主査】  もう本当に時間がなくなってしまいましたが、様々な御意見を頂きましてありがとうございました。これまで計六つの学協会からお話を頂きまして、私どもとしましても現状をしっかり把握できたのではないかと思います。また、本日は研究成果公開促進費の現状についても御説明いただきました。今後、本作業部会での議論にしっかり生かすことができると思っております。御協力いただきましてありがとうございました。

 今後の本作業部会での議論の進め方の方向性につきまして、机上資料としてたたき台(案)というものを配付しているかと思います。これにつきまして鈴木室長から説明を頂きました後で若干議論したいと思います。お願いいたします。

【鈴木学術基盤整備室長】  机上配付資料でお配りいたしております学術情報基盤作業部会の今後の議論の進め方(たたき台)(案)というものを御用意いただければと思います。

 今後の進め方でございますが、まず第1点目の学術誌による情報流通・発信の在り方の検討でございます。今、有川主査から御説明ありましたとおり、これまでの学協会からのヒアリングを踏まえまして、夏までにはその論点を整理したいと考えてございます。この論点整理を踏まえまして、秋以降に学術誌による情報流通・発信について方向性を検討した上で、事業スキームの在り方を検討する、このようなスケジュールで考えてはどうかということでございます。

 そして、学術情報流通・発信に係る環境づくりの検討でございますが、次回7月 1日の本学術情報基盤作業部会で予定しております科学技術振興機構、国立情報学研究所、それから国立国会図書館等からのヒアリングを踏まえまして、この科学技術振興機構及び国立情報学研究所におけるプラットフォーム提供等の支援事業の充実という部分に関しまして検討を進めていきたいと思います。本作業部会でその内容を検討した上で、夏の審議の整理においてその推進方策を盛り込む。更に取り組みを求めたい点等を本作業部会で継続して検討する必要がある事項につきましては、年内を目途に取りまとめる。

 本日も、それから今までの各学会さんからのヒアリングの際にも出ていました科研費の研究成果公開促進費の活用方策等でございますが、先ほど有川主査からありましたように、科学研究費補助金の一部であります研究成果公開促進費につきましては、その改善等につきましては、同じ学術分科会ではありますが、研究費部会の担当ということになってございます。それでございますけれども、学協会等を通じた国際情報発信の強化という観点から、本学術情報基盤作業部会での意見交換、本日この後、時間が許す限りということで御検討いただき、また引き続き御検討いただいた上で、一部の改善策、早急に対応可能な部分等を含めまして、それにつきましては夏の審議の整理に盛り込むと。夏までの論点整理を踏まえまして、秋以降に改善策について十分な審議を行った上で、研究費部会にその検討を要請するというようなことで進めさせていただいてはどうかと考えているところでございます。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。今後の進め方の方向性について説明していただきました。御意見等がございましたらお願いいたします。

 その中で、先ほどからの研究成果公開促進費の扱いについてや、これまで学術誌を中心に議論してきた情報流通発信の在り方以外のことまで含めて、大所高所から整理する必要もあると思います。一方では、急いで方向を示しておくことができることについては、なるべく早くやっておくのがよいと思います。今日言語学会からございましたことなどは、比較的短時間で結論を出せるのではないかと思います。今、鈴木室長からございましたことについて何かございますか。

【土屋委員】   ちょっと印象なのですけれども、この「学術誌による情報流通・発信の在り方の検討」というテーマは分かるのですが、それが直ちに「学協会による学術情報発信の強化」につながるというのは、今まで何回かの話をいろいろなところから伺ってくると理解できません。一言で言ってしまうと、出版事業としてちゃんとやっているところはちゃんとやっているし、こういう場ですから言ってしまえば、例えば今日伺ったような日本言語学会のように、旧態依然たる長老支配が──長老の方が支配していないとおっしゃっているから何とも言えないのですけれども──いわば古典的なレジームが存続している学会は、やっぱりどんどんひどい雑誌しか出てこないという状況になっているのではないかなと思います。現に先ほどお話にもありましたように、若い人たちはちゃんと英語で書いてどんどん海外の雑誌に投稿するわけです。それはもう十分に発信としては行われているし、とても日本のそんな旧態依然たる言語学会の雑誌なんかには期待していないところだって非常に大きいのではないかと。そうすると、例えば日本の言語学会の雑誌を強化することは、学術誌による情報流通・発信、特に日本の若い人たちのこれからの情報発信の在り方には全く貢献しないということが、極論ですが、示唆された部分もあるのではないでしょうか。すべてがそうだとは申しませんけれども。

やはり学術誌の問題を考える中で、「学協会による情報発信の強化」に落ち着かせるという枠組み自体が非常に大きな問題をはらんでいるのではないかと思います。度々そういう枠組みで今まで議論してきて、例えば科研費などを通じて何度も何度も強化を図ったけれども、うまくいっていない。強化を図っているにもかかわらず科研費の金額は減っていますけれども、いずれにせよ、うまくいっていないということなので、もう少し踏み込んだ議論が必要なんじゃないかなという感じがいたします。例えば極端なことを言ってしまえば、今まで海外の出版社と組まれてある程度プラスになったというのであれば、海外の出版社を全部呼んでどのようなサービスを提供するかプロポーザルを取るとか、それを NII、JSTと比較してどちらがいいかということをやらないと意味がないのではないかなという感じがします。やや極論ではありますけれども、ちょっと今までの議論の枠組みをそのまま踏襲しているだけなのではないかなという印象を持ちますので、その枠組みの考え方自体についてもう一回議論していただきたいと思います。

【有川主査】  これは非常に大きな問題ですので、もう少し時間をかけてやりたいということで、鈴木室長から当面の方向として提案していただいたわけでございます。

 ずっと深く考えていきますと、そういった中で日本の学協会は何を目指すのかということになります。我々はいわゆる学術論文の流通について議論してきており、それも非常に大事な目標、目的ではありますが、もっと大事なことが実はあるのだと思います。研究者を育て上げる場になっている面がありますので、簡単には不要だという話にはなかなかならないのだと思います。そもそも私どもはそこまでは踏み込むことが許されているとは思っておりませんし、そういう意味で、それの成果物である学術情報についてどう考えていくか。

 それから、例えば先ほどの三野先生のお話の中にもあったと思いますが、新しい学術情報の発信の仕方については、ホームページ等を使って新しい形で出されています。そして学術誌がその研究論文の質をオーソライズするという新しい方向性が出てきている。あるいは、これはまた別のところで今後議論しなければいけないと思いますが、例えば今かなり浸透してきています機関リポジトリのようなものが、ちょうど三野先生の関連で言いますと、その中間に位置すると思います。これも深く関係していますので、新しい学術情報発信・流通の媒体としてしっかり位置づけなければいけないのだろうと思っております。

 そういうこともございまして、この学術情報の流通・発信につきましては少し時間をかけて議論したいと思います。一つの区切りとしましては、一応予算のこともありますので、概算要求になじむ内容については要求しておいて、ある種の方向だけは付けておいてよいのではないかということが背景にあるのだと思います。

【庄垣内名誉教授】  ちょっと誤解を解いておいておきたいと思うのですけれども、日本言語学会は長老支配などはございません。多分誤解されたのは、若い人が英語で書いた論文と年を重ねた人が日本語で書いた論文で、若い人が負けると言ったのは、内容で負けるわけなのです。年を重ねているから勝つわけではないのです。あのような言われ方をしたら非常に腹が立ちます。不愉快です。取り消してください。

【土屋委員】  表現が極端に走ったことについては取消しさせていただきます。

【有川主査】  今日お話を伺いまして、私は非常に進んだ取り組みを3学協会ともされているというのが偽らざる印象でございます。前回までに三件の非常に大きな学会からの説明を頂き、今日の三件とあわせて、六つの学協会のお話を聞くことができました。今後の議論の方向性に対する非常に大きな示唆を頂いたと思っております。そういう意味では非常に感謝しております。この作業部会で学会の在り方などまで踏み込むことは決してございませんので、御理解いただきたいと思います。

 それでは、時間が来てしまいました。これからの進め方と科学研究費補助金に関する意見なども伺いたかったところですが、これはお三方の発表や JSPSからの発表の後で既にある程度の意見は頂いております。それらを意識しながら今後の議論をしていけばいいのではないかと思います。

 次回は7月1日に、学協会等の情報発信・流通・循環の促進に関して例えば NIIやJST、NDL等にお願いしてお話を聞くことになるのではないかと思います。その辺のことにつきましては、私と事務局で相談して決めさせていただきたいと思います。

 それでは、事務局からお知らせ等お願いいたします。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】  本日はどうもありがとうございました。本日の会合の議事録につきましては、各委員に御確認させていただいた上で公開させていただきたいと思います。

 次回の開催は7月1日木曜日、 15時から17時、場所は変わりまして、科学技術振興機構麹町スクエア研究開発戦略センターの 2階大会議室を予定してございます。また御案内を差し上げたいと思います。

 それ以降の当面の予定につきましては、資料5で御用意してございます。大変お忙しいさなかと存じますけれども、日程の確保等、御配慮いただければ大変ありがたく存じます。

 なお、本日の配付資料につきましては、机上にそのままお残しいただけましたら事務局より郵送させていただきます。

 本日はマイクの設備の不手際もございまして、審議にお手間をとらせましたことをおわび申し上げたいと思います。

 以上でございます。

【有川主査】  それでは、本日の作業部会はこれで終わります。ありがとうございました。

―― 了 ――

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井上、政田
電話番号:03-6734-4080
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