研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第39回) 議事録

1.日時

平成23年4月28日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省7F1会議室

3.出席者

委員

有川主査、三宅主査代理、石川委員、上島委員、倉田委員、坂内委員、田村委員、土屋委員、中村委員、羽入委員、山口委員

文部科学省

(科学官)喜連川科学官
(学術調査官)阿部学術調査官、宇陀学術調査官
(事務局)倉持研究振興局長、戸渡大臣官房審議官(研究振興局担当)、鈴木学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

 【有川主査】  それでは、時間になりましたので、ただいまから第39回学術情報基盤作業部会、第6期の2回目でございますが、開催いたします。お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。

 本日は、前回に引き続きまして、先進的取り組みを行っている学協会による学術情報発信の現状等について御説明いただきまして、意見交換を行いたいと思います。

 出席していただいております方につきまして、事務局から紹介をしていただきたいと思います。お願いいたします。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】  おはようございます。

 本日は、御説明を頂く方として、お二人の方にお越しいただいております。

 まず、日本物理学会より、東京大学物性研究所、瀧川仁教授でございます。

【瀧川教授】  どうも。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】  それから電子情報通信学会より、東京大学情報理工学系研究科、今井浩教授でございます。

 それから、前回御説明をいただきました日本化学会の林課長でございますけれども、少し遅れてございますが、有識者として引き続き審議に御参加いただきたいと考えております。

 このほか、本日は、学術情報流通・発信に係る関連機関から、国立情報学研究所の青木利根夫学術基盤推進部次長、科学技術振興機構から大倉克美知識基盤情報部長、国立国会図書館から相原信也主題情報部科学技術・経済課長にも審議に御参加をしていただいております。よろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

【有川主査】  それでは、まず配付資料の確認と傍聴登録について、事務局から御報告をお願いいたします。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】  本日の資料でございますけれども、お手元の資料の一番上に議事次第がございますが、そちらの中段に配付資料とございます。資料1から3までの3種類、それから参考資料として、前回の御意見をまとめたものをお付けしてございます。そのほか、ちょっと手狭でございますけれども、お手元に前回の会議の資料ということで、ドッチファイルにとじてありますけれども、議論の中で必要があれば御参照いただければと考えております。

 本日の傍聴者は30名でございます。それから、事前の録音の登録が1名ございますので、御留意いただければと存じます。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 それでは、初めに、日本物理学会の情報発信の取り組み事例等につきまして、瀧川教授に御説明をお願いしておりますので、よろしくお願いいたします。

【瀧川教授】  どうもありがとうございます。御紹介にあずかりました瀧川です。物理学会の刊行委員長を2年ほど前から務めております。今日は、申し訳ありません、地下鉄が途中でとまっておりまして、遅れてしまいましたことをおわび申し上げます。

 まず、今日は、物理学会の学術誌の取り組みを紹介させていただく機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 これが、今日の私の話の内容をまとめましたものです。

 学会が出版する学術誌といっても、状況は千差万別であろうと思います。特に、学術誌を学会が出す意義、あるいは何を期待するかということは、コミュニティによって違っていると思いますので、物理学コミュニティの場合、日本の学術誌がどういう役割を担ってきたか、我々は何を期待するかということを述べたいと思います。これは、理念的ななお話です。

 それから、物理学会の場合、実際の学術誌の刊行の実務を、応用物理学会と共同で刊行センターという実務組織をつくって、そこで実際的な運営というか、編集、制作の一部をやっております。その実態をお話しして、我々がどういう課題を持っているかということをお話ししたいと思います。

 ここまでが前半で、具体的には我々の雑誌の一つであります Journal of the Physical Society of Japan 、JPSJと呼んでいる雑誌についてのお話です。

 後半は、実は日本の物理学誌としては、もう一つ Progress of Theoretical Physics というものがございます。これは、従来、京都大学の基礎物理学研究室の湯川先生を中心にして創設されたわけですが、そこで刊行していたものが、2年後の2013年に物理学会に刊行が移ります。その際に実験の論文も取り込めるようTheoreticalの代わりに Theoretical and Experimental  と名前を変えて新しい雑誌を創設しようという計画が、今、進んでおります。それは、いわゆるオープンアクセス誌という形態を考えておりますので、後半ではその計画についてお話ししたい。

 それから、最後にまとめと課題ということです。

 お手元に資料がありますが、多少変更しているところもあります。

 まず、物理学の学術誌がどういう役割を担ってきたかということを、少し歴史的な経緯を交えてお話ししますと、実は英文物理学誌の歴史というのは大変古くて、明治時代から始まっています。そのとき、 Physico-Mathematical Society of Japan として、数学と物理と共同でやっていたわけですが、ここには既に湯川先生の中間子論をはじめとして、長岡半太郎や、本多光太郎という、明治時代に日本の科学の基礎をつくったような方たちの論文が発表されております。

 これが、数学と物理に分かれまして、Journal of the Physical Society of Japan というものが戦後すぐ立ち上がりました。

 もう一つは、先ほどちょっとお話ししました Progress of Theoretical Physics 、これは理論物理だけの雑誌であります。これも戦後すぐ、京都のYukawa Instituteで立ち上がりました。

 応用物理の関係は少し歴史が新しくて、 Japanese Journal of Applied Physics (JJAP)というものが1962年に立ち上がり、つい最近、この中のレター部門だけが独立して、  Applied Physics Express (APEX)という名前で始まったということです。こちらは歴史が浅いんですが、実はボリューム、購読者ともに、現在はJPSJに比べてJJAPの方が3倍程度に規模が膨れ上がっております。

 もう一つ、応用物理学会の一組織であります日本光学会が出している Optical Reviewというものがあります。

 物理学におけるJPSJとかPTPがどういう役割をしてきたかということですけれども、物理学の場合、伝統的に非常に指導的な学者が我が国の学術誌を支えてきたという側面があります。皆さん御存じのように、物理学で日本人が関係したノーベル賞というのは、今まで六つの仕事に対して与えられているわけですが、そのうち三つが日本の雑誌に載っているということであります。これは有名な湯川先生の中間子論の論文で、これは朝永先生の論文、これは皆さん御記憶に新しい小林、益川の論文であります。残りの3つは、アメリカの物理学会から出ているというわけです。

 ノーベル賞に至らなかったんですが、実は非常にインパクトの大きい、その後、何十年かの学問の基礎をつくるような、例えば久保亮五先生の「線形応答理論」ですとか、近藤先生の「Kondo Effect」という名前がついた大問題の引き金になった論文など、こういうものもやはり日本の雑誌から出ているというわけです。

 朝永先生の書かれた『スピンはめぐる』という本がありますが、その中では湯川理論の解説があって、その後に朝永先生御自身の回想録というものがあります。1930年ごろ、朝永先生はドイツのゲッチンゲンに留学されておりました。そのころ、日本の雑誌というのは、外国の大学に届くんですが、だれも読む者がなくて倉庫の片隅にしまわれていた。ところが、湯川先生の「中間子論」が出るようになってから、図書室の中央に堂々と飾られて、皆さん、それを読むようになった。特に、湯川論文のページはみんなが読むものですから、手あかがついて黒くなっているという回想録がありました。やはりこの時代から、自分たちの研究成果を自分たちの手でという機運があったわけです。

 このような気風はその後、こういう偉い諸先輩の先生方のお弟子さんたちに受け継がれて、今、JPSJを支えているのは、自分たちの研究の一番いい成果を、何としてでも自分たちの雑誌から出したいという愛着心というものに支えられていると言ってもよろしいかと思います。

 物理学の場合、日本で雑誌を刊行する意義は何かと考えてみますと、一つは、やはり日本の学術研究、広く言えば文化をあらわす顔になることがあるかと思います。今の例のように、新しい分野を切り開くような日本発のオリジナルな研究成果というものがあって、それがJPSJから発信され、それに続くいろいろな研究が諸外国からも日本の雑誌に来るようになる。そうすると、その雑誌がその学術分野の発展の受皿となり、また次のオリジナルなものが出る。これはある種、明日へのフィードバックといいますか、こういう循環がうまくいけば雑誌も発展するし、何よりもその雑誌を見ることによって、日本でどういう研究が盛んであるか、日本がどういう学問分野で貢献しているかがわかる。そういう意義が非常に大きいと思います。

 JPSJの場合、最近は特に超伝導の物質開発ですとか、一般的に基礎的な磁性、量子磁性と呼んでおりますが、そういう分野の非常にオリジナルな研究に関しては確かにサイクルがうまくいっていると考えます。

 もう一つは、これも最近、いろいろなところで言われていることですが、日本の雑誌がなければ査読プロセスを外国の組織に任さざるを得ない。それは、やはりいろいろな危険性があるということがわかりました。最近の非常に印象的な例としては、東工大の細野先生が発見された鉄を含む新しい超電導体があります。これは、物性物理学では非常に大きな事件です。

 細野先生は、最初、この論文を nature に投稿されたんですが、いろいろレフェリーで問題があって、なかなかうまく進まない。結局、アメリカの Journal of the American Chemical Society (JACS)に出して、それはすぐ通ったわけですが、数日置いて、同じような仕事がどんどんといろいろな国から、特に中国などから出ている。

 細野先生は、やはり論文を早く出したいということで、その後の鉄系超電導体論文はほとんどJPSJに投稿していただいています。やはり安心して論文を投稿できる雑誌が日本にあることのありがたさを非常に感じると、いろいろなところで言っておられます。これは無視できない、非常に大きな要因だと思います。

 そういうわけで、JPSJの編集、あるいは刊行としても、迅速、公正な査読を維持するようにいろいろ努めているわけです。

 JPSJのジャーナルの顔でありますホームページの状況ですけれども、こういうようなものでやっております。ここに最近のいろいろなニュースがあるわけですが、特筆すべきことは、2004年、今から10年近く前から専任編集長制というものをひいております。主に大学をリタイアされた方が専門でフルタイムで編集長をやって、といっても週3日ぐらいですけれども、論文の査読だけではなくて、いい論文を呼びかけるとか、企画とか、そういうことをやっていただいております。このときのキャッチフレーズは、「投稿論文を待つ」から「より良い論文を集める」ということへの変換だったわけです。

 最近は、オンラインで公開してから1か月はすべての論文がオープンとなって、誰でも読めるというサービスをやっています。いろいろなサービスを書きましたので、それぞれ詳しくは申し上げませんが、例えば先ほどの鉄系超電導体に対しましては、それだけのコレクションを集めてみたり、よく引用されるような論文、あるいは編集委員会で特に注目される論文を選んで、それをプレス発表する。

 あるいは、年に1回、物理学会の論文賞というものがあります。これはJPSJとPTPの論文が対象です。こういうことをすることによって、若い人たちの投稿意欲をそそる。特に若い人たちはやはり有名にならなくてはいけないわけで、そのために nature  Science  などに投稿しようとする気風があるわけですが、こういう仕掛けをつくれば、そうでなくても十分評価ができるというわけです。

 それから、オープンセレクトといって、著者が負担して論文をオープン化するという試みもやっています。

 そういうある程度の努力のかいがありまして、物理関係のトップジャーナルを見ますと、IF、TC、EigenFactorで見ますと、PTPはここですけれども、JPSJは物理学にとってある程度なくてはならない雑誌とみなされているということが言えると思います。これをどう見るか、もっと努力する余地があると見るべきかもしれませんが、こういうところにいるというわけです。

 応用物理関係ですと、 Japanese Journal of Applied Physics (JJAP)は、インパクトファクターこそ余り高くないですが、TCとかEigenFactorは非常によろしい。それから、先ほどちょっと言いました、レターだけを集めました「APEX」という雑誌ですが、これはかなりいいインパクトファクターで、今年はもう少しよくなると期待されております。

 今のところ、何とか順調に行っているという感じもするのですが、やはり最大の問題は投稿が伸び悩んでいる。これは、過去30年ぐらいのJPSJ、PTPの投稿です。青がJPSJの投稿です。これは、ほとんど変わっていません。論文数も変わっていません。一方、アメリカ物理学会の Physical Review に日本人が関係した仕事で投稿された数は、やはりどんどん上っています。ある程度飽和する傾向にありますが、なかなか伸びない。

 これは、先ほど言いましたように、JPSJに非常に愛着を持って育てようとしている研究者がやはり比較的少数で、なかなか数が伸びない。それから、分野が限られていて、物理学全分野で発展することがない。ここが編集にとっては一番大きな課題になっているわけです。

 PTPに至りましては、過去は非常に隆盛を誇ったんですが、ここ何年か非常に投稿が落ちていまして、これがPTEPとして再出発しようという決心をする引き金になっています。

 今までは理念的な話ですけれども、では実際、我々、刊行の実務をどうやっているかということですが、応用物理学会と共同で学術誌刊行センターというものをつくりました。組織としては、両学会に共有されている下部組織ということができます。

 何をやっているかといいますと、それぞれの雑誌の編集委員会と共同して編集の手伝い、あるいは論文の受付、査読プロセスの管理、あるいは、実際、ウェブページを作ったり、印刷会社との折衝、要するに刊行事務にかかわるありとあらゆることをここでやっているわけです。

 こういう体制で10年以上やっております。ここには、後で示しますが、一定以上の従業員がおります。日本の中では、比較的大規模に、組織的に刊行をやっていると言えるかと思います。PTPは先ほど言いましたように、PTEPとして2013年から統合することになりました。

 ざっと雑誌の現状を見ますと、こういう体系になっております。編集委員長、編集体制、応用物理関係、JPSJ、PTPとあります。

 JPSJに関しますと、年間500論文、3,000ページぐらい、購読機関が600ぐらいです。購読機関というのは、例えばアメリカの物理学会の有名な雑誌であります physical Review  のシリーズなんかに比べますと、恐らく1桁ぐらい少ない。ここを何とか伸ばさないといけないというわけです。

 応用物理学会の方は、もう少し購読機関が多くて、規模も大きいですが、これもインパクトファクターというか、そういうものを伸ばす課題があるわけです。

 先ほど言いました刊行センターは、正職員8名、非常勤5名というわりと大がかりな組織でありまして、そこで編集から刊行にかかわるいろいろなことをやっているわけです。この刊行センターは、実は今から10年以上前、最初にジャーナルが世界的に電子化されるという機運があったときに、これを何とか国内でなし遂げなければいけないということで、こういうプロフェッショナルな職員を対象に、オンラインの公開システムとか、電子投稿審査システムとかを立ち上げてきたわけです。

 それが一段落して、一応、落ちついている現在、次の課題は何かといいますと、大きく分けて2つあります。1つは、次期オンラインシステムと書きましたが、電子ジャーナルの世界というのは日進月歩でありまして、一つのものが完成したからといって、そこでとどまっているわけにはいかない。例えば、いろいろな検索機能ですとか、そういうものが進歩しておりますし、最近ですと、コンピューターだけではなくて携帯端末でも読めるとか、アプリケーションの開発とかあります。こういうものをどうやるかということが問題です。今まで応用物理学会と一緒にと、そのころは何もなかったので独自のシステムを開発したわけですが、もう一度開発し直すには非常にコストがかかって、なかなか効率が悪いという面があります。ただ、自前のものがあるというのはそれなりの意味がある。

 それから、J-STAGEが次の段階に入っておりまして、ここで非常によいものができれば非常にありがたいことだと思います。

 ただ、プラットフォームに関しましては、標準的なシステムが幾つかつくられておりまして、ほとんど外国製ですけれども、そういうものを使用するということは、今後、視野に入れる必要があるかもしれません。

 もう一つは、後で言います販売に関して、販売をもっとちゃんと系統的に強くしようと思うと、やはり日本の中のこういう小さな組織ではいかんともし難いという面もあります。そうしますと、プラットフォームが自動的に提携相手の出版社のものになってしまうという事情があります。

 2番目、日本の中ではよく読まれているのですが、海外での購読を増やそうと努力しますとやはり限界がある。最近、海外ではコンソーシア(図書館連合)が非常に強くて、コンソーシアと交渉しようとしますと、1個や2個の雑誌ではなかなかうまくいかない。特に、ここ一、二年ぐらい、欧米の非営利系の出版機関と販売提携をする道があるかということも探っております。実は、JPSJは非常にIFもいいので、放っておいても、いろいろなところから販売を提携しましょうという話がありまして、これも視野に入れています。

 こうしますと、プラットフォームというものが自動的に決まってしまいますので、実はこの2つの問題というのは、独立の問題のように見えるんですけれども、ほとんど一心同体と言ってもいいという面もあります。

 はっきり言いまして、私はこの方面のテクニカルな知識はほとんどないんですが、プラットフォーム自体は標準化されているので、それをどこで使おうと、やはり元になるデータをきちんと日本で持っていれば、それほど心配することはないのではないか。むしろ、ただプラットフォームに載せればだれかが読んでくれる、オープンアクセス誌の場合にはいいんですけれども、購読誌の場合にはやはり販売をどうするかということが鍵でありまして、そういう意味ではこの2つはリンクしていると考えられます。

 では、どこまで提携するか、どこまで自前でやるかというのは、やはり学会の事情でそれぞれ違うと思いますので、それぞれの事情に合った選択肢があると思います。

 ここまでが前半のお話でありまして、後半、PTEPの創刊計画をお話ししたいと思います。

 先ほど言いましたように、今まで京都でやっていた刊行を物理学会に2013年から移します。これは、主に素粒子、原子核、宇宙物理という分野の雑誌なんですが、この分野の最大の問題は、理論物理の雑誌があるわけですけれども、実験論文の受皿がないということでありました。そこで、この機会に、名前を Progress of Theoretical and Experimental Physics (PTEP)と改名してやりましょうということになったわけです。それ以外の分野はJPSJへということで、住み分けをしようと。

 過去2年ぐらい、どういうふうに立ち上げるか議論しましたが、その際に明らかになってきたことは、理論家のコミュニティと実験家のコミュニティで主張が非常に違う。理論家の方は、たくさん論文を書くし、研究費は非常に限られていますので、掲載料をただにしてほしいと。例えば、アメリカの物理学会誌は基本的に掲載料はただになっておりますし、こういうものがあるとなかなか競争に勝てない。一方、実験は、こういう分野というのは非常に大型施設を使っていて、それにかかる費用に比べますと、掲載料はほとんど無視できる費用でありますので、むしろオープンアクセスを主張している。これを両方やろうとしますと、結局、経費の出どころがなくなってしまいますので、だれが経費を負担するかという問題が起こってくるということです。

 しかし、我々はいろいろ議論して、やはり何としても両方を実質的に満たしたいというわけで、基本的にオープンアクセス誌として2012年に創刊することを決めました。ですから、原則としては掲載料を払わなくてはいけないんですが、その後、いろいろな研究機関、全国共同利用機関、例えば高エネルギー加速器研究機構がありますけれども、そういうところが支援して、なるべく実質的な負担を軽くする。これは非常に冒険で、こんなことうまくいくかという気もするんですけれども、やってみる価値はある。もし、うまくいけば非常に発展性があると考えております。

 このオープンアクセス化が主張される裏には、素粒子物理学固有のSCOAP3というプロジェクトがある程度背景になっておりますので、ちょっとそれについて御説明いたします。

 CERN(欧州原子核研究機構)というのは、LHCといいます世界で最大の加速器を動かしている機関ですけれども、そこが提案して、Sponsoring Consortium for Open Access Publishing in Particle Physicsというプロジェクトが立ち上がりつつあります。

 どういうものかといいますと、普通のいわゆる購読モデルというのは著者が出版社に論文を送って、出版して、それを図書館が買う。ですから、お金は図書館から出版社に来るというシステムなわけです。こういうシステムが定常化しますと、雑誌の値段がどんどん上がっていって、図書館の負担が非常に大きい。これを何とかしたいというわけです。

 一方、オープンアクセスにすればどうなるかといいますと、これは雑誌はただで見られますから、図書館は何も払わないんですけれども、そのかわり著者が掲載料を払う。そうしますと、全体的に値段は、出費という意味では抑えられるわけですが、しかし、今、ただで投稿できる雑誌がたくさんある中で、こういう道を選ぶ著者はほとんどいない。

 その一つの解決策としては、本来、購読であったら図書館が払うべきお金をこの組織に集める。この組織では、いわば入札のようなことをやりまして、幾らで出版するかということで雑誌のクオリティーなど比較して、ここから出版社に渡す。こういうことを提案しているわけです。

 担当者は、今、7割方資金の目途が立ったと言っているわけですが、これを世界中で共用してやらなくてはいけないわけで、うまくいくかどうかというのはそれほど自明ではない。要するに、本来、図書館が出版社に払う費用を、リダイレクトしてここを経由するというシステムなわけです。

 ともあれ、SCOAP3がうまくいくかどうかなかなかわかりませんが、物理系としては、最近、オープンアクセス誌への動きが非常に強くなっているという印象を受けます。

 これは、イギリスのIOP Publishingが出しています New Journal of Physics ですが、実際はイギリスとドイツの物理学会の共同運営ということであります。もう10年以上やっていまして、IFが3と、そういう意味では非常に成功をおさめている雑誌の一つです。掲載料は1,000ドルぐらいかかります。

 あと、生物系でもオープンアクセスというのは非常に強い動きになっておりますので、そういうことに刺激されて、一番規模の大きいアメリカ物理学会が秋から Physical Review X  というシリーズを出すことが決まりました。これはオープンアクセス誌で、掲載料は1,500ドルです。

 アメリカには、もう一つ物理の協会、AIP(The American Institute of Physics)がありまして、そこでも4月から新しいオープン誌を始めているということです。

 こうやって見ますと、物理系ジャーナルでは、今、オープン誌が盛んになっているということであります。これは、いろいろなところで言えていることかもしれません。その場合、著作権は著者に残るという仕組みがあります。

 では、日本の場合はどうか、PTEPが本当に成功するか。IOPP、APS、AIPというのは、ほかに何十という雑誌を出しておりまして、そこの購読者の収入で十分潤っているので、こういうものをやる余裕があるということが言えます。では、PTEPは財政的にどう自立できるかということですが、これを最後、ちょっと考えていただきたいと思います。

 ここに出版社A、Bとありまして、ここは購読誌を出している、ここはオープン誌を出している。図書館は、オープン誌にはお金を払わないけれども、講読誌にはお金を払う。著者は、講読誌にはただで投稿できるけれども、オープン誌にはお金を払う。そうして見ますと、著者の選択としてはどうしても講読誌になってしまう。図書館は、やはりずっとお金を払い続けることになるわけですが、元をたどってみれば両方とも、図書館にしても研究者にしてもほとんどは公的資金、いわば税金で研究費なり運営費は賄われているわけですから、何とかしてここの購読費をこちらに回すことができれば、それで著者を支援することができれば、この動きがスムーズに行くはずである。そういうアイデアは、いろいろなところで出されています。こういうリダイレクションがスムーズにいけば、オープン誌は非常に自立できると思います。

 ただ、放っておいても、なかなかこの動きはできないので、何か特別にやってやらないと、外から仕掛けてやらないといけない。オープン誌に対しては、やはり今の段階では何か特別に支援が必要というわけです。

 オープン化ということでよく議論されるのは、オープン化の推進には機関リポジトリがあるというわけですが、ちょっと考えてみますと、実は機関リポジトリというのは、これは皆さんよく御理解いただいていることだと思うんですが、学術誌にかわるものでは決してない。特に物理学の場合は、大学なり研究機関が自分たちの成果はこうですよと世に示すための広報活動という意味はあっても、一番本質的なものであるピアレビューというか、査読のプロセスがないので学術誌には代われない。購読誌の場合、これを極端に進めますと、だれも無料で読めるようになってしまいますと、出版そのものが成り立たなくなってしまうということで、いわばもろ刃の剣という性質があるわけです。ですから、これとは別に、やはり目的が別なので、機関リポジトリと別にリダイレクションはちゃんと考えないといけないと思います。

 これは、まだいろいろ議論の余地があって、かなり試案の段階ですが、購読モデルから著者負担モデルでスムーズに転換を図る、今ではほとんどこれなわけで、やはりこれを少しずつ増やしていかなくてはいけないと思うんですが、どうすれば転換できるか。例えば、今、科研費の制度がありますが、現在の規則ではオープンアクセスの体制に適応できない規則になっておりますので、そういうものを改めていただきたい。これは我々、今、学振などに要望書を出す準備をしているところです。

 もう一つは、やはり著者に対して、オープン誌にちゃんと投稿するようなインセンティブを与えないといけないわけで、オープンアクセス誌に投稿する著者ですとか、購読誌でもその論文をオープンセレクトにしようとすると費用が要るわけで、そういうものに対して財政的支援をする。例えば、今、科研費には間接経費というものがありますけれども、それを一定の割合で、オープン誌のみ請求できるような公開費を研究者にも付与することが考えられます。

 実際は似たようなことをやっているわけで、先ほど言った New Journal of Physics の場合でも、ドイツのMax Planck Instituteがすべての論文の経費を肩がわりすると宣言しております。御存じのように、マックス・プランクというのはドイツの大きな研究所をほとんど傘下におさめているわけで、それはある意味で公的に支援していると言ってもよろしいかと思います。

 それから、もう少し一般的には、いろいろな研究機関や大きな大学に対して、オープンアクセス誌へ投稿支援する。つまり、自分のところのメンバーなり研究者がオープンアクセス誌に投稿する場合には、掲載料を支援する基金をつくる。

 いずれにしろ、何かしらの「はずみ」がなければ持続的刊行は難しいというのが実情です。

 先ほど言った海外の例ですけれども、研究機関が自分の抱えているメンバーに対して支援するというのは、ハーバードの方が2009年に提案したわけです。これは非常に抽象的で、現象論的な提案だけなんですけれども、どうやって具体的化されるかが問題だったわけです。そうはいっても、ここ2年ぐらいの間にいろいろな実例がもう出てきている。

 例えば、先ほどの New Journal of Physics 、オープン誌ですけれども、これらは先ほどの声明に従って、基金を用意している大学の、そのファンドを使ってくださいというようなことが書いてあるわけです。実際、こういう大学がそういうものを用意している。ここにはちょっと掲載しませんでしたが、Max Planck Instituteが全額負担しますというようなことが書いてあるわけです。やはりこういうことを日本でもやっていかないと、オープンアクセス誌はなかなか増えないのではないかと考えております。

 もう時間になりましたのでまとめますと、これから物理学会では、購読誌とオープンアクセス誌を両方やっていく。これは、かなり実験的な試みでもありますし、はっきり言って非常に不安があるわけですけれども、やろうと決意したわけです。

 やはりそれぞれに固有の課題を抱えておりまして、JPSJは、サポートする分野を拡大して、物理学の全分野から論文が出てくることを目指す必要がありますし、購読機関数(visibility)をよくするということが最大の課題である。PTEPに関しては、先ほど言いました、財政的に自立してちゃんと刊行できるかどうか。著者への支援という運動を起こして、それが成功するかどうかが課題になっていると思います。

 これは、私のある程度個人的な意見でもあるんですが、やはり将来、今よりももっと多くの雑誌がオープン化することが望ましい。先ほどの絵の説明ですが、購読モデルも著者負担モデルも、元をたどれば公的資金から出ているわけで、雑誌のオープン化を促進するような、同じ資金の設計制度を少し考えていくことが必要ではないかと考えます。

 実は、オープンアクセス誌の経営モデルというのは、そういう意味ではまだ確立されていないわけで、どうやってオープン化するかというのも、やはり財政によって異なってくるだろうと思います。JPSJの場合は、なかなか一気にできないので、段階的にいろいろな、サイテーションの多い論文とか、そういうものをどんどんオープン化していく。あるいは、著者負担のオープンセレクトを進めていく。PTEPのように、一気にオープン化しようとするよりは、やはり今の段階では、何らかの組織的な支援がないとやっていけないということです。

 それから、これはちょっと最初の話題に戻るんですが、実務に関していいますと、先ほど課題の中で何を自前でやるかということをちょっとお話ししましたが、どこまで自前で賄うか。最終的には編集、査読は自前でやる、これは一番本質的なところだと思うんですが、実務をどこまで自前でやるか。極端な話、経済的な効率で考えれば、すべてアウトソーシングしてしまうことはもちろんあるわけで、前回作業部会での日本化学会のお話、Chemistry-An Asian Journalというのはそういう例かもしれないのですが、やはりコミュニティの歴史に依存する。我々はここ10年、刊行センターというところで実際に実務をやってきたわけで、こういうものがなくなってしまうと、将来、日本で雑誌を刊行するテクノロジーがなくなってしまうことになるので、それもやはりまずいのではないかと考えております。少なくとも、我々にとってこういうものが今のところ財産となっているので、こういうものを継続していきたいと思っております。

 御清聴、どうもありがとうございました。

【有川主査】  ありがとうございました。

 いろいろな新しい取り組み、それから提案も生まれていたと思いますが、今日はもう1件、電子情報通信学会から事例の報告を頂きますので、それが終わった後で、少し時間をかけて議論していただこうと思います。ただいまの瀧川先生からの説明に対しまして、御質問がございましたらお願いいたします。5分程度その時間をとりまして、後で両方を合わせまして、時間の許す限り議論していきたいと思います。

【土屋委員】  よろしいですか。

【有川主査】  はい。

【土屋委員】  資料の8ページなのですが、掲載論文の数が書かれているのですけれども、投稿数は教えていただけるのでしょうか。あるいは、平均のリジェクションレートとか。

【瀧川教授】  大体ですが、2~3割リジェクトされると思ってよろしいかと思います。

 川畑先生、そんなものですよね。

【川畑(JPSJ)】  掲載率は62~63%です。

【瀧川教授】  じゃ、もうちょっとですね。

【土屋委員】  それは現段階?

【川畑(JPSJ)】  ええ、最近1年ぐらいです。

【有川主査】  ほかにありますか。はい。

【倉田委員】  受理から、実際に電子ジャーナルで見られるまでの平均的な期間は、どれぐらいと考えてよろしいんでしょうか。

【瀧川教授】  今のところ、2か月ちょっとかかります。

 川畑先生、正確な数字は。

【川畑(JPSJ)】  早ければ2か月です。遅いと3か月。それは、レフリーが長引くものもありますから、長い方はいろいろありますけれども、早ければ2か月です。

【瀧川教授】  例えば、同じジャーナルのレターと、それからフィジカルレビューレター、アメリカのものを比べますとジャーナルの方が随分短い。その点は機動的にやっていると。

【有川主査】  ほかにございませんでしょうか。

【林課長】  よろしいですか。

【有川主査】  はい、どうぞ。

【林課長】  自前でプラットフォームを運営する場合、どんどんプラットフォームを大きくしていかないと海外と伍していけないと考えますが、日本の物理としての、マーケットとして最大規模、ジャーナル数とか、ジャーナルの金額というものを見積もられたことはありますでしょうか。

【瀧川教授】  物理だけですと、ジャーナルの数はこれ以上増えないと思いますので、そこはテクニカルの問題ではなく、むしろいろいろな主導権で、これ以上ジャーナルの数を増やすことはないと思います。例えば、レターだけを独立させるというようなことはあるにしても、そんなにたくさん増えるとは思っていません。ですから、そういう意味でいうと、キャパシティーとしては余り問題ないんですが、やはり新しい機能、先ほど言いました携帯端末とかをどうやって機動的に入れるかという方が問題だと思います。

【林課長】  そうすると、今の事業規模として、そういう新しいことをやっていくにも、何とかクリティカルマスは超えていると御判断されていると。

【瀧川教授】  そうですね。今までやっとやってきたというところ、だけど、そろそろ抜本的に次期システムを考えないといけないと検討を始めているところです。そこは、長期的にこれから、2年か3年の間にどうするかということを議論しているところです。

【土屋委員】  もう一つよろしいですか。

【有川主査】  はい。

【土屋委員】  PTPの投稿促進のために、大型研究機関や共同利用機関を通じて受皿をという作戦を考えられていますが、これは国内の機関に対してはできるわけですけれども、海外については、特にこの雑誌として何かするということですか。それとも、先ほどのコンパクト(Compact for OA Publishing Equity)とか、あの辺のところを使うということでしょうか。

【瀧川教授】  海外は、既にそういうものは少しはありますので、もちろんそれに働きかけて、ちゃんとPTPを認識してもらうということはありますが、今のところ、ちょっとまだ制度を考えている段階で、海外からの投稿にも同じように、例えば国籍で差別するのはよくないと思いますので、何か同じ公平な制度をつくらなくてはいけないと思います。実態としては、先ほど申しましたように、物理の場合、やはり一番は日本の研究成果をちゃんと載せる、それがあれば自動的に海外からも来ると、そういう意識でやっております。

【有川主査】  ありがとうございました。今井先生のお話を聞いた後で、また一緒にお伺いすることにいたしましょう。

 それでは、今井先生、電子情報通信学会の状況につきまして、お願いいたします。

【今井教授】  電子情報通信学会の編集担当理事をしております今井でございます。本日は、電子情報通信学会からの国際学術情報発信ということで説明をさせていただきます。

 先ほどの物理系のジャーナルと比べまして、私どもでは、分野によると思うのですけれども、学会というものを論文誌を通して、いかに国際的に情報発信をして、日本として正しい位置を確保していくのか。そういったことで、今、取り組んでいるところで、そのあたりを中心に説明をさせていただければと思います。

 私自身、電子情報通信学会でここ十数年、編集関係で仕事をしてまいりました。そういった者といたしまして、学会というのは論文誌を出すところととらえております。もちろん、これは人により違いまして、大会、研究会を開催するところでもございますし、あるいは国際会議を開催するところでもございます。あと、日本でも支部活動というのは非常に大切でございます。東京だけがいいわけではございません。北海道から九州までの支部がきっちり学術的に活動するところということで、いろいろな立場がございます。ただ、今日、この作業部会で説明をさせていただきたいのは、論文誌というものを、もちろん出すことを目的ともしているわけですけれども、手段としていかに世界の中でどう位置を確保するか、そういったことをお話しさせていただければと思います。

 以降のスライドで更に説明させていただきますけれども、電子情報通信学会には複数のソサエティーという組織、実際には4ソサエティーございます。このソサエティーを電子情報通信学会の中で構成する要件といたしましては、ソサエティーをつくること=ジャーナルを出すことである、ジャーナルを出せる単位がソサエティーであるということで展開をしているわけです。

 説明に入らせていただきます前に、前回の化学会でも定款の話が出ておりました。今、定款をお見せしましても、恐らく余り情報がございませんので、これは現在検討中の学会理念でございます。まだ文言、ちょっといろいろとコメントいただいておりますので、これが確定案ではございませんが、電子情報通信学会の理念として、短いものですけれども、今、是非世に示したいということで、もちろん英文のものもございます。ここでは日本語のものですけれども、ちょっと読ませていただきます。

 本会は、電子情報通信及び関連する分野の国際学会として、すなわち学会理念において、少し太文字にさせていただいているんですが、「国際学会として」とうたうというのが、今、かなり検討が進んだ段階での案でございます。そして、学術の発展、産業の興隆並びに人材の育成を促進することにより、健全なコミュニケーション社会の形成と豊かな地球環境の維持向上に貢献する。[i1]

 今のが学会としての取り組みなんですけれども、とにかく「国際学会として」ということを理念としてうたっているところでございます。この「国際学会として」ということを実際に活動しているところは、論文誌による国際的学術情報発信、それこそがまさしく手段ということです。

 今回、公開データを持ってまいりました。会員数でございます。簡単に言いますと、電気通信学会は3万5,000人の会員からなっております。現時点で、ほぼ1割が海外会員で、オーバーシーズとも呼びますけれども、もちろん国籍による差別は全くございませんで、正員、学生員共々日本の方と同じ権利を有している方が1割、既にこの学会にはいらっしゃいます。

 この中で、本日の作業部会で特に関係いたしますサイトライセンス等、日本の大学及び企業の図書館の皆様に論文誌を買い支えていただいているところは、ほぼ、ここで特殊員と呼ばせていただいているところで、これが国内でのサイトライセンスの数となります。もちろん、国際的に活動するということをうたっておりますので海外販売もしておりますが、海外販売に関しましては、冊子体及びライトライセンスについて、丸善より英文論文誌(J-STAGE)のプラットフォームの上で展開をさせていただいているところです。大まかに言いますと、全体で500程度のサイトライセンスを持っているということです。

 このような学会で活動をしておりまして、既にもう1割が海外会員であるという現状です。こうなるに至った理由、もちろんこうしていくというリーダーシップを発揮していくことになるんですけれども、その大もとは、私ども分野の電子情報通信学会(The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers)に対して、全世界レベルでIEEEという学会がございます。The Institute of Electrical and Electronics Engineers、電気電子学会と呼べばよろしいものです。

 これは、本来はアメリカの学会でございます。物理の分野と違いますのは、このアメリカの学会がそのまま国際学会としては発展をして、従いましてヘッドクオーターとかはすべてアメリカで、もともとアメリカの法律に基づいてということです。この学会は、現在、40万人のメンバを有しております。電子情報通信学会は、ほぼ1桁少ないサイズになります。この学会はアメリカ発なんですけれども、アメリカ発ではなく国際学会として活動しており、全世界をリージョンというものに、例えば日本はリージョン10というアジア地域に属しておりますけれども、そういったことで国際活動をしているわけです。

 物理学会の場合、存じ上げないところを申し上げて申し訳ないですけれども、例えばアメリカ物理学会が日本での支部活動をするということは、恐らく余りないのではないか。そのあたりは、また後で教えていただければと思います。

【瀧川教授】  やっている国もあります。

【今井教授】  実は、IEEEはJapan Councilという組織も持っております。IEEEの傘下で、現状、日本で1万人以上のIEEEメンバーがいます。この1万人というのは、この3万5,000人とほとんど共通しています。もちろん、Japan CouncilのWebのところを見ていただければ、IEEEの傘下にあるんだけれども、日本発の、日本として世界での地歩を築くんだとうたっていらっしゃるんですけれども、こちらはやはり傘下になります。私ども学会は、海外、主にアジアですけれども、アジア地域を含めたこういった会員の皆様と一緒に意思決定をして、進めていくということです。

 ですので、物理とはここのところが若干違いまして、学会の存在理由というときに、私にしますと反対意見なんですけれども、IEEE傘下の活動をやって、例えばIEEEの電子ジャーナルプラットフォームであるエクスプローラー(IEEE Xplorer)に全て載せてしまう、それだけで事が済むのではないかと言わんばかりの暴論を吐く方もいらっしゃいます。先ほどの物理系統のところでも、リーダーシップを発揮するということに関して非常に力点を置いていたと思いますけれども、IEEEが1桁サイズが大きいアメリカ発で世界の学会として活動しているということに対して、日本からの対抗軸を出していくということが宿命になっているんだと思います。

 このような状況で、ジャーナル等に関しましては、電子情報通信学会はこのようなものを出させていただいております。英文論文集は1976年から発行しておりまして、90年の段階でこのように4分冊化しております。これが基礎・境界に関する雑誌、これが通信、ここがエレクトロニクス、ここが情報システムに関するもので、2010年度、基礎・境界、通信、情報システムが3,000ページ、エレクトロニクスが1,700ページ程度ということで、それぞれが3,000ページ、4,000に迫るページ数のものを出しています。

 他にも、会誌及び和文論文誌も出版し、ただ見ていただくとわかりますけれども、もはや和文論文誌のページ数は、情報分野はちょっと比較可能ですけれども、どんどん、どんどん縮小していっているというのも見ていただけると思います。

 一方、後ほどまた説明させていただきますけれども、2004年からNIIのSPARC/JAPANというプロジェクトの支援も得まして、オープンアクセスの電子ジャーナルELEXという英文レタージャーナルもエレクトロニクス分野で刊行しております。ここのエレクトロニクス分野のページ数が少ないというのは、こういったレター論文誌で、オープンアクセスのものを2004年から発行しているということの現れでもございます。

 さらに、最近では2010年にNOLTA、非線形理論とその応用に関する新しい電子ジャーナル、オープンアクセスのものを出しております。

 電子情報通信学会は、このようなことで様々な活動をしているわけですけれども、論文誌と車の両輪になっておりますものに研究専門委員会という単位がございます。基礎・境界、コミュニケーション、エレクトロニクス、情報システムでそれぞれ持っておりまして、計72分野・研究専門委員会ございます。

 先ほどIEEEと申しましたけれども、IEEEは100を超えるジャーナルを出しております。それに対しまして、私どもは今、この4英部論文誌と、オープンアクセスの電子ジャーナルということで6つなんですけれども、実際には72の研究専門委員会というのは日本のよき伝統でございまして、国内の産官学のメンバーが集まって、ものすごくホットなトピック・研究成果を共有するという活動を昔からしているわけです。これが将来的にどこまでジャーナルを出していけるかということが、今の電子情報通信学会の課題でございます。他に解説に関する会誌論文誌等もたくさん出しているわけです。

 現在、電子情報通信学会のジャーナルの公開状況ですけれども、このようになっております。大きく囲っているところは、すべて学会の自前サーバでまず公開をさせていただいております。和文論文誌に関しましては、やはり技術系というところがございますので、引き続き情報移転等でそれなりの役割を果たしているということで、加えてNIIのCiNii、電子図書館の部分で引き続き公開をさせていただいております。CiNiiですと、日本の各大学はサイトライセンスを持っておりますので、そういったところでも読んでいただけるようになっております。

 あと、Ciniiでは、先ほど申しました72のテクニカルコミッティー、研究専門委員会をテクニカルソサエティーと呼びたいのですけれども、そこの技報、技術報告という一番ホットな情報も、こちらで公開させていただいているということになります。

 これら英文論文誌につきましては、海外販売のためにJ-STAGEを活用させていただいております。また、IEICE Electronics Express (ELEX)は2004年に刊行し、SPARC/JAPANの支援を得まして、電子ジャーナルのみでビジネスモデルを確立して、世界に先駆けて速報誌を刊行してきました。これと、昨年刊行いたしました非線形理論とその応用に関するNonlinear Theory and Its Applications (NOLTA)というものは、J-STAGEのプラットフォームを活用させていただいて初めて、ビジネスモデルとして成り立っているところでございます。

 国際学会を目指していることを掲げている者として、例えば論文誌の著者の割合を見ていただければ、今、私どもの学会がいるステージを見ていただけると思います。若干、表示が暗くなっているところでございますけれども、通信に関しますトランザクションですけれども、これは最終的に掲載された論文で、著者の所属組織がある国を各論文で1とカウントします。例えば、日本人3人、韓国人1人で書きましたら、日本1、韓国1と勘定いたします。ですから、和をとると論文数よりも多くなるわけですけれども、それに関する率を書かせていただいています。

 通信の英文論文誌の場合には、日本は4割です。国際学会を目指しているところは、既に日本からの論文は4割になっている。韓国32%、中国14%、台湾6%、その他これらの国から投稿がございます。

 これに対しまして、投稿についてはちょっと古いデータで申し訳ございませんが、既に完全に公開されているもののみ、今回、持ってこさせていただいています。2007年の時点では、1,200件の投稿が、私ども電子情報通信学会(IEICE)の通信トランザクションにございました。実は、サブミッションの割合というのは韓国がトップです。韓国35%、日本から25%、中国から13%、アメリカから10%で、Acceptance Ratioは非常に厳しゅうございまして、3割を切っております。10投稿されたうち、たかだか3ぐらいしか採択されない査読、編集を行っております。

 現在、率で実は日本は2番からも落ちておりまして、3番、4番となっているトランザクションもございます。まだ検討中のものですけれども、学会の理念ということでお示しさせていただいたのは、実はこういったところに一つあらわれているということです。

 ELEXは、2004年に刊行させていただいて、NIIのSPARC/JAPANというプロジェクトで、やはりキックオフのときに御支援を頂いたものですけれども、先ほどと同じように2010年の論文当たり著者国別の割合を書きますと、今度はいよいよ韓国がトップになっております。これは、掲載論文のレベルでということになります。掲載論文のうち、30%は韓国からの論文である。日本は25%です。イランというのは、エレクトロニクスのLSIのシミュレーション関係のテーマに非常に強い分野でございまして、3番目に入り、中国、あとマレーシアも次に入ってくる。こういった国別割合になっているわけです。

 もちろん、これに関しましてはいろいろな御意見があると思います。日本の学会でやっているものが、日本が既にこのように、日本発のジャーナルで2番の率であるということをどう見ているのか。私ども、決して日本の研究者にとって魅力が薄いとは思っておりません。それだけ海外の方から投稿をいただけるということが、国際学会を目指しているところの一つの過程であると思っております。

 なお、ここが一つポイントなのですけれども、私どもはやはり学会でございますので、会員を大切にしております。公開に関しましては完全にオープンアクセスなのですけれども、投稿に際しては、著者のうち少なくとも1名は本会会員であることという要件を入れております。ですので、先ほどの1割がオーバーシーズの海外会員であるというところは、実はこのような施策によって入会しており、それを通して国際学会として確立していく。別にIEEEの対抗軸になるというのではなくて、日本も位置をきちんと占めるということでございますけれども、そのための目的としているところは、今現在、このような意味で達成できている部分もあると解釈いただければと思います。

 ちなみに、会員費というのは投稿掲載料に比べますと非常に安うございますので、会員になっていただいて、あとで様々な会員サービスを、日本発の国際学会として電子情報通信学会がサービスをしていく。このように見ていただきますとわかりますように、特にアジア地域でできていければということでございます。

 現在、論文誌の発行体制ですけれども、学会全体では編集長、2編集理事のもとに、これだけたくさんのものを出しておりますので、合計いたしますと400名超の編集委員が活動しております。査読委員は、けたが違うくらい多くの方がいらっしゃいます。この出版事業を学会事務局では、6.5名とでも申せばよろしいでしょうか、パートタイムの方がいらっしゃいますので6.5名で支えております。この他に会誌等の編集で、機動的に連携をしていただける計10名強の出版事業部というものも持っております。これで編集、電子ジャーナル出版・印刷、著者等支援を、学術情報流通を支える専門家ということで、しっかりと支えていただいているというのが現状でございます。

 これは、国際学会を目指したことの一つの成果でございますけれども、例えばIEEEが日本にJapan Councilを持っているのと同様に、電気通信情報学会も日本の各地域での支部活動を行うと同時に、海外セクションというものを持っております。見ていただきますとわかりますように、私どもの施策として、アジアに軸足を持って展開をしているということで、韓国は、通信、エレクトロニクス、情報それぞれの分野でセクションを持っております。バンコク、北京、上海、シンガポール、台北とございます。これは、セクション長が集まったところの写真でございます。

 以降は、私どものビジネスモデルの話、これまで様々な国の施策によりまして、例えばELEXという速報電子ジャーナルの新しいものを立ち上げることができたこと等に関して、まとめさせていただきます。

 まず、機関論文誌のトランザクションでございますけれども、これは会員等にオンラインアクセスをしていただくサービスとして提供しております。電子情報通信学会の場合、実は会費の中に所属ソサエティーのオンラインアクセス権を含むとなっておりますので、私どもの今の定款に従う限り、このサービスをさせていただかないといけない。もちろん、会員に読んでいただきたいということでございます。

 この論文誌は、実はページ当たりの重みが非線形に増加する別刷り費によって運営されています。また、これを自前のサーバ、及びJ-STAGE等も活用させていただて公開し、もちろん機関リポジトリはしていただいて結構ですというスタンスのもと、ビジネスモデルとしては経費的にほぼとんとんに近いものになってきております。これは、個人会員の皆様にはソサエティーというものに属するということで会費の一部をサービスの相当分としていただき、また特殊員の皆様の国内の図書館の方々に300以上買い支えていただいているということで、一つのビジネスモデルとしてはなっております。学会に戻りますと、会計担当の理事から、論文誌でページ数が増えるほど赤字を垂れ流すようでは困ると言われますが、今、そういうことはございませんということが編集担当理事として言える状況になっております。

 もちろん課題はございまして、海外販売がまだ弱うございます。IEEEというところがある中で、私どもアジアに軸足を置く国際学会として、どのように活動していくのかが課題でございます。

 一方、電子ジャーナルのみのJ-STAGEをプラットフォームにさせていただいていますELEXとNOLTAという、エレクトロニクスと、非線形理論とその応用に関するものについてです。ELEXというのは投稿後1週間で掲載されたものもございます。今でも、2か月以内にはほとんど掲載をしているものでございます。オープンアクセスにしているところにつきましては、定額の掲載料、こちらは少額のものを著者に頂きまして、あとはJ-STAGEというプラットフォームを使わせていただいて、今、それぞれの担当、出版をしている母体のソサエティーが若干の補てんをすることによって、ビジネスモデルとしてはそれなりに確立ができていると認識をしております。

 このように、機関論文誌のトランザクション方はすべて、アクセスに関しましてはきちんとお金を払っていただいた方に、あるいはこのように買い支えていただいた方にサービスをさせていただくということでのビジネスモデル。ELEX, NOLTAのこちらの2誌に関しましては、ELEXは特に2004年からで共にオープンアクセスということで、国際学会を目指す電子情報通信学会としてきちんと原動力になっていきながら、著者の定額掲載料とソサエティーの若干の補てん、及び国の施策によって提供されているプラットフォームを活用することによって、ほぼビジネスモデルとして成り立っていると認識をしております。

 ここからは、様々な情報システムの話を若干させていただければと思います。現在、英文論文誌が核となって、このように国際学術情報発信をしているわけです。もちろん、すべては英文電子ジャーナルが核なわけですけれども、ウェブによる情報発信が非常に重要でございます。ところが、日本の学会のウェブページにしてもそうですし、さらにはウェブによるサービスという話をしますと、私どもも含めまして、まだまだ課題が多い状況になっております。

 例えば、IEEEのホームページに行きますと、3月の地震等があった際には、それに関するトップニュースが着実に、サイエンティフィック、テクノロジカルな記事で出ていく。それに対して、日本の学協会のウェブページというのは、もちろん被災された皆様への様々なコメント、あるいは、その地域の方の会費免除等、随時ちゃんとタイムリーに載っているのですけれども、社会への情報発信という意味では、私は見ていて、はっきり言ってまだまだと感じました。このウェブサービスというのは、これから電子情報通信学会として、ウェブページによる社会への広報に是非力を入れさせていただきたいと思っています。これは、英文論文誌等が核になった上で初めて成り立つものです。

 ちなみに、今、NII、大学等の活動では、学術認証フェデレーション、UPKIということで、パブリックキー(公開鍵)インフラストラクチャーが作られていますけれども、私ども電子情報通信学会では、ウェブサービス拡充へ向けたシングルサインオンを現在実現しておりまして、5月に本格実施をさせていただくつもりです。

 学会のページというのは、社会に向けた情報発信をさせていただくものとして、この機能とウェブサービスを用いて、会員に対しては更に充実したサービスを提供していく。このシングルサインオンという機能の中に、ウェブ論文誌等のアクセス権利等が組まれる。また、その認証機能を用いて日本の情報基盤の様々な機構と連携をして、将来、研究をしていければということを目指しております。こういったことまで含めまして、日本の学会等で様々な施策が必要だと思っております。

 もうここまででかなり時間を使っておりますので、このページ、本来、一番重要なところかもしれませんが、簡潔に進めさせていただきますけれども、私ども、これまで学会間の学術情報出版に関する情報連携ということでは、NIIのSPARC/JAPAN事業に参加させていただきまして、非常に恩恵を受けております。出版に関する事務局のレベルも非常にアップいたしました。また、先ほどのELEXというのは、ここの活動でNIIがSPARCのアメリカ、SPARCのヨーロッパ等と共同して進めて、商業学術出版社に対抗する軸というものを出している活動の中で、電子ジャーナルプラットフォームのみの日本学会発のオープンアクセス誌というものを、2004年から発行させていただいております。

 もちろん、そういったもののベースになっておりますのは、電子ジャーナルのプラットフォームがきちんと整備されているからで、NIIのCiNiiもそうでございますし、またELEXというオープンアクセスのジャーナルも、J-STAGEをプラットフォームにさせていただいております。将来的には、ジャパンリンクセンターということで、DOI(The Digital Object Identifier)などといったウェブサービスに関する非常に基本的なものが、日本全体でサービスが行われていくということですけれども、そのさらなる充実ということが非常に大切なことだと思います。

 なお、科研費について、これは単に本会のスタンスでございますけれども、科学研究費の学術情報刊行に関する補助に関しましては、現在、電子情報通信学会は意図的に申請をしておりません。理由は単純でございまして、おかげさまをもちまして、何とかここまでの段階で国の施策等によってビジネスモデルとしてある程度確立できたと思っております。私どもが学会で会計理事から、活発になるのはいいけれども、赤字を垂れ流していていいのかなどということを10年前は言われたわけですが、今は言われない状況にでき、今、このようなことでさせていただいております。

 ただ、新しい試み、先ほどの物理の分野とまさしく同感なのですけれども、新しい分野でのものについて、またSPARC/JAPAN等の活動を通して学会の出版の皆様、ただこれは残念ながら全学協会ではなく20論文誌のみとですけれども、活動させていただき、その際からも林課長ともいろいろな場面でお会いさせていただきましたけれども、そういったものを広げれば日本全体としてのレベルアップにつながる。こういった意味での支援というのは、非常に充実をさせていただきたいということでございます。

 そういった中で、今回、国の施策として、日本学術会議の提言ということで、包括的学術誌コンソーシアムというものがでておりますけれども、恐らく物理学会、また電子情報通信学会を大規模学会ということで認識いただけるとよろしいかと思うんですけれども、小規模から大規模学会までの連携、学会が強制されることなく自主性に基づいてコンソーシアム活動をすることというのは、実は日本全体のレベルを底上げすることでもございますし、望むらくは、私どももその一員となったトップランナーを育成いただくことだと思っております。

 特に、こういった電子ジャーナル等に関しましては、専門家を育成していくことが必要でございます。前回も林課長から御発表ございましたけれども、日本化学会の場合にはXML対応をしているのでiPadにもすぐ対応ができる。そういうことは、電子ジャーナルの出版を担当している事務局員が、ビジネスとして当たり前にわからないといけないわけでございますので、そういった育成が必要です。

 また、電子出版プラットフォーム、その機能の構築、提供というのは、ここまで繰り返し述べさせていただきましたように、実は電子情報通信学会としてそれら基盤に様々な面で恩恵をこうむっているところで、学術情報基盤への御支援というのは、是非この中でも御検討いただきたいということです。

 また、図書館からの支援に関しましては、大学図書館コンソーシアム連合等で、もちろん学会の自助努力を必要とするわけですが、是非とも日本発の世界への学術情報発信に際しまして、買い支えをしていただく等、そのような意味でのお金の有効な回り方をお願いさせていただければと思います。

 これは最後のスライドでございます。学会の学術情報発信は、別に論文を出すことが目的ではございません。電子情報通信学会では、こういった英文論文誌を出すことによって、世界に学会として情報を発信して、それによって貢献をする。そういった意味で、実は論文というのを手段ともしてでございまして、世界でのリーダーシップ、アジアに軸足を置いたリーダーシップを発揮するための手段としているわけです。

 これは、私どもの分野特有のことですけれども、40万対3万5,000というアメリカ発世界学会のIEEEに対抗していく機軸を出していく。そういった中で、このような学術情報発信がまさしく重要になっております。

 また、これは、最終的には日本の産業の国際展開につながるものだと思っておりまして、これこそが電子情報通信学会の存在理由でございますし、実は日本の学会が学術論文誌を出していくということは、2010年、2011年になりまして世界レベルで目指していく時代になっているのだと存じます。

 こういった文部科学分野の振興というのは、研究者は成果を出すわけですけれども、実は成果を出した後、学術情報の発信を通して、更に学会の国際活動につながりますし、それが最終的に社会貢献につながる。その奨励について、この作業部会で様々な御検討を頂きまして、是非推進していただければ幸いでございます。

 少し長くなりまして申し訳ございません。以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 日本発の学会の国際化へ向けた取り組みについて、かなり成功されているという印象も言われました。そして、当然、技術的なことが押さえられているということもあるんでしょうけれども、実に様々なところで、成功例、あるいは、それに近いものを示していただいているのではないかと思いました。ありがとうございました。

 まず、5分程度、今井先生の御発表に対しまして御質問を受けまして、その後で瀧川先生の御発表も含めまして議論していただきたいと思います。

【羽入委員】  大変魅力的な御発表を頂き、そして大変啓発されるところがありまして、ありがとうございました。

 2つ伺いたいのですけれども、日本発ということと、それからアジアを軸にしてということをとても強調していらっしゃいまして、私はそれに同感なのですが、何ゆえに日本発とお考えなのか、教えていただけたら大変ありがたいと思います。

 もう一点は、最後におっしゃったことに対して少し反論になってしまうかもしれないんですけれども、日本の研究者の場合、評価ということを言われると思いますが、その際に、インパクトファクターが非常に大きな要素を占めている。これについては、今井先生はどういうふうにお考えなのか。2つ教えていただけたらありがたいです。

【今井教授】  まず、どうして電子情報通信学会がアジアを軸足に展開することになったか。これは、まさしく最後のスライドでお示ししたようなことで、産業と直接関係するからだと思います。電子情報通信学会では、1976年から英文論文誌を刊行しているのですけれども、それまでは和文論文誌、和文の会誌及び国内での研究会ということで、非常に熱心な活動をしておりました。例えば、大規模集積回路(LSI)ですとか、そういったものは1980年から90年にかけて、日本がまさしく世界をリードしておりました。現在では、台湾、韓国等が追いついてきまして、あるところでは追い抜かれている分野もございます。ただ、システム化等の点で、相変わらず日本が引き続き優位を保っているところがございます。

 そういった意味で、私ども電子情報通信の分野において、特にエレクトロニクス及び通信に関係したところにおいて、従来から世界の中でアジア地域がシェアを持って重要な地位を占めてきた。その中で、日本がリーダーシップを発揮していたことの継続として、その次の世代として、もちろん韓国にいたしましても、台湾にいたしましても、中国にいたしましても十二分に発展をしておられます。そういったことで、別に日本が上に立ってなどということは申してございません。会員に関しましては、既に1割の方がアジア地域を中心とした方々で、全く同等でございます。評議員とか、そういったものなどもいろいろ出ていただいております。また、編集レベルでも、1割程度は海外の方に参加していただいております。

 そういった中で、別に仲間意識でやっているわけではございませんけれども、アジアということで、アジアの一員としての日本、その中でリーダーシップを発揮していく。それによって、また世界に打って出る。例えば、今、IEEEは様々な支部活動をしているんですけれども、アジア地域が草刈り場なんていう話をされる先生もいらっしゃるわけで、そこをいかに私ども日本発で、アジア地域で、更に世界の中でどういった地歩を築いていくか。そういうことに注力していくことが、実は学会が活動していく中で、今、日本だけで成り立つ世界では絶対にございませんので、これまでの経緯も含めて、それが今、電子ジャーナル出版の中で、アジアを軸にした国際学会を目指していることにつながっていると認識をしております。

 2点目、インパクトファクターに関しては非常に重要なことだと思っております。これに関しましては、実は私、学会に戻りましたら常に皮肉を申しております。例えば、今、インパクトファクターと同時に、アイゲンファクターという新しい指標が出ております。先日の御発表でも、林課長の初回の発表では、アイゲンファクターのみを出されておりました。

 アイゲンファクターというのは、思い起こしてみれば、Googleの検索エンジンが順番をつけるためのページランクというものを、学術情報に戻してきたものです。ただ、Googleのページランクそのものも、実は学術情報のインパクトファクター等の論文を参照して作っており、情報分野で相乗効果で出てきたものです。

 電子情報通信学会で昨年刊行されましたNOLTA以外は、もちろんウェブ・オブ・サイエンスに登録されておりまして、データベースで検索できます。数値に関しましては今回お示ししておりませんが、決して高いものではございませんが、登録をして、世界の中で認められている。また、それが、アジア他国の著者が会員になって投稿してくださる理由にもなっております。例えば韓国等は、数値目標化をいたしますと、さっとやるものですから、ウェブ・オブ・サイエンスにちゃんと載っているものに出すことが非常にステータスになってくるわけです。

 そういった中で、学術情報発信と言いながら、IT、ICT(Information and Communication Technology)を推進している電子情報通信学会が、論文誌を評価する等の評価尺度みたいなものを提案できないのが課題でございます。もちろん、何か一つだけの尺度でいいということは絶対に申しません。インパクトファクターだけの信仰というのは私どもの学会では思っておりませんが、実際、Googleのページランク等の施策を見ておりますと、電子情報通信学会としてはそういったものを、逆に本来、研究成果として出すべきところであると思います。

申し訳ありません、回答になっているかどうかわからないですが。

【羽入委員】  ありがとうございました。

【有川主査】  ありがとうございました。

 では、もう一点。

【坂内委員】  分野が近いので、ちょっと意地の悪い質問になるかもしれません。通信学会には、ある意味、この分野のリーダーとしてということで、世界対日本ということなんですけれども、この分野の最大の課題は、やはり同じ分野に多くの学会があって、言ってみればそれぞれが発展をするという努力をされていて、IEEE、ACM、大きな方向にIEEEのソサエティー性みたいな形で、もう通信学会は10年ぐらい前からその課題に、学会自身のアライアンス、さらには統合という問題が、これは今、コンテンツ系の話ですけれども、やはり研究基盤として経営、コンテンツ系の発信力等々を含めて、やはり学会そのものが強くならないと、なかなか根本的治療にならない。私が学術会議の会員だったときも、電気系5学会の方々とディスカッションをして、もう一回と言ったんですけれども、その後、たしか通信学会はこれに関して多少前向き、推進派だと思うんですけれども、どういう状況ですか。何が課題、もちろん課題はわかるんですが。

【今井教授】  日本学術会議でございますと、電気電子工学部会、あと情報の部会等を通して、是非いろいろな活動をさせていただこうと。例えば、電気学会等とは今も、関連5学会で日本学術会議の夢ロードマップ作成等で、早速、協働させていただいているところです。

 電子情報通信学会といたしましては、実は中の方で、今は小さな単位になってしまっている研究母体の研究専門委員会というものをソサエティー的に活用していく。これは先生のお答えになっていなくて大変恐縮ですけれども、そういったことを多様化させることをしております。そういったものがどんどんジャーナルを出していく。

 そういうことをやっておりますと、電子情報通信学会で、ここ1年で一つ大きなイベントは、先生が言われた5学会ではないのですけれども、情報理論とその応用学会という……。

【坂内委員】  5学会は一例で、要するにこの分野がIEEEのような大きなアライアンスを、1980年代、この分野が非常に右肩上がりで、成長係数も大きいときにはそれぞれあったんですけれども、やはりある意味で世界とコンピートしなきゃいけない状況の中では、国内で幾つか分かれていてもしようがないのではないか。それに関して、個別のアクティビティーはわかるんですけれども、その根本的なところはどうですか。

【今井教授】  先生のおっしゃっていただいたことに関しては、電子情報通信学会としては非常に前向きに取り組んでいるつもりでございます。今は、単に一例といたしまして、情報理論とその応用学会という組織が、既に電子情報通信学会に、ソサエティーとして参加をしていただいています。あちらを解散していただいて、こちらに入っていただいております。そこは、今から、新しくジャーナルを出すことを検討していただけるほど非常に強いところでございますので。

そういうことで、別に電子情報通信学会に吸収をさせていただくとか、そういうことを申し上げているわけではございません。ちょうどいいサイズのものについては、ここ1年で一つ新しく外から入っていただいて、そうしますと、例えば著作権ですとか、そういったことにきちんとした事務局で対応することができるようになるわけです。是非とも先生にいろいろとアドバイスを頂きまして、御提言を頂きまして、電気系の5学会……。

【坂内委員】  やはりちゃんと責任を持ってやらないと。

【今井教授】  いえ……。

【有川主査】  はい、どうぞ。

【喜連川科学官】  坂内先生の御質問は、私が理解している限りですと、今回のはコミュニティ側が動いたんですね。学会がスティミュレートしたわけではないんですね。つまり、学会がそこのリーダーシップをとれるかどうかというポイントだと思います。

【今井教授】  そういった意味では、情報理論とその応用学会に関しましては、まさしく今、おっしゃられたとおりです。今、少なくとも学会でやっておりますことは、そういう仕組みをつくっていこうと。申し訳ありません、よく御存じの方に説明するのが一番つらいんですけれども……。

【喜連川科学官】  いやいや、よく存じておりません。

【今井教授】  今、本会の中ではソサエティーというものが一つジャーナルを出すという機能をとっているんですけれども、紙の時代は逆にそれが障壁になりまして、流動化することができなかったんです。おかげさまで電子ジャーナルの時代になりましたので、非常に機動的に、もし最初のスタートアップ等で御支援をいただければということもございますけれども、していただければ枠を変えることが可能になってきていて、今、そういったことがキックオフしており、まずそのためには規程を変更しないといけません。この規程を次の1年で改定していくことが、申し訳ありません、先生にも是非御一緒いただいて……。

【喜連川科学官】  ちょっと発言を撤回します。

【有川主査】  本日は学術情報発信ということにフォーカスを当てながら議論しようと思っていますが、話が少し広がりましたけれども、今おっしゃいましたようなことは、当然、深く関係するわけでございます。そういうことで、ここで、先ほどいただきました物理学会の瀧川先生の御発表も含めまして、12時近くまで、30分程度、議論をしていただければと思います。

【土屋委員】  ちょっといいですか。

【有川主査】  はい、どうぞ。

【土屋委員】  今井先生に一つだけ伺っておきたいことがあったんですが、お話はどちらかというとサクセスストーリーで、要するに将来に対する危惧とか懸念とか、それを項目立てしていただくとどういうことになるのか、ちょっと教えていただきたい。

【今井教授】  ここまで出てきていない学会の課題に関しましては、今、企業からの会員に関して、若干、減少傾向が続いていることが一番の懸念でございます。もともと電子情報通信分野でございますので、産官学が連携をして活動していくところが、企業からのところに関して、いかに魅力を上げていくかが課題でございます。別の言い方をすると、それに失敗すると、まさしくこのような懸念から、何かに関して厳しくなっていく要因になり得るということでございます。

 国際化に関しましては、やはり今、アジアで活動している中で、別に競争をしているわけではございません。一方で、これだけ日本で占める地位が大きくなってきた中で、いかにアジアの中での連携を学会として取り組んでいくか、それをまた論文誌を軸にして取り組んでいくかということだと思います。ここ10年は、例えば先ほどお示ししたようなことで、とあるジャーナルでは日本ではない国からの投稿論文が一番大きな割合を占めていることになりました。次の10年がそうであるとは限らないと思っております。それについては、定常的な改革をしていくことが必要であると思っております。

 そのためにも、やはりウェブのシステムですとか、日本からの情報発信に関しましてウェブのサービス、例えば日本発のGoogleというわけではございませんけれども、学会というのは社会に貢献するためにあるわけでございますので、電子ジャーナルを軸にした情報発信、今のICT(Information and Communication Technology)の推進をしている学会として、世界に訴えていくことがまさしく課題だと思っております。

【田村委員】  よろしいですか。

【有川主査】  はい。

【田村委員】  私も今井先生に伺いたいことがございます。アジアへの働きかけというのは大変印象深く伺いました。海外セクションをお持ちということなんですけれども、具体的に海外セクションでどのような活動をしていらっしゃるかということと、海外セクション等を通じて、どのような形でアジアに働きかけをしていらっしゃるか。その辺のところをちょっとお聞かせいただければ。

【今井教授】  ありがとうございます。まず、今日の学術情報発信の中では、将来的には、現時点で75あります研究専門委員会、研究会というものがソサエティーになりまして、ジャーナルを発行すればいいと思っています。そういったソサエティー発も多くありまして、まず国際会議等でアジアの方々と連携をさせていただいたという経緯がございます。そういった中で、時宜を得て海外から会員になっていただいた皆様に、先ほどお示ししたような海外セクションを担当していただいております。

 海外セクションの皆様には、IEICE、電子情報通信学会の活動資金を定額お渡しすると同時に、これは別にオリジナリティーがあるわけではなくて大変恐縮なんですけれども、IEEEもACMもしているんですが、例えばディスティングイッシュトレクチャラーという制度を御提示させていただいて、日本及びアジアの方々に自分たちの中でのそのような講師で社会貢献、学術貢献をする方等の講演会をやっていただきたい。そのような活動を通して、連携をして、アジア発で世界に情報発信する。そういった活動を行っております。

【有川主査】  はい、どうぞ。中村先生。

【中村委員】  最近、「想定内」「想定外」というのがいろいろ話題になっていますけれども、この分野では10年、我々の次の世代のライフタイムのうちに、世界中でアジアの人口が3分の2を占めることはほぼ事実ですね。現状の外挿をしても、サイエンス、テクノロジーの分野で、アジアが日本をはるかに超すということはもう事実です。例えば、現実に、10年たった時点で、中国を中心としたアジアの学術研究が質、量ともに日本をはるかに追い越すということも事実だと思います。特許その他では事実ですし、サムソンなんかアフリカでも大展開しています。10年後に日本が世界の片隅に追いやられるということも、このままいくと事実ですよね。それを想定したときに、このジャーナルはどういうふうになると、今井先生の学会ではお考えになっていますか。

【今井教授】  まず、先行者利益というものはまだ残っている段階だと思っております。1976年から英文論文誌を出してきたことによって、現時点、2011年の段階では、学術情報誌に関しては先行者利益を日本は持っている。

 例えば、インパクトファクター信仰という言葉を使わせていただきますけれども、韓国はそういったものが非常に高うございます。それが故に、韓国でインパクトファクターがつく論文誌の刊行を10年前からしてきた経緯がございます。ただ、現状では、先ほども示させていただきましたように、韓国の場合は必ずしも成功しているわけではない。そこは、やはり先行者利益というものがございまして、きちんと築き上げてきたもののうちに発展しているというのは、今はまだ利得は得られている時点だと思っています。

 中国に関しましては、今、すごいスピードでジャーナルの改革が行われているというのは、もちろん皆様御存じのとおりでございます。これからのつき合い方に関しましては、非常に多様なアプローチをしていかないといけないと思っております。ただ、単に日本vs中国などというような枠組みではございませんで、日本はこれまで、例えば文部科学省の国費留学生を含めまして、様々な交流をアジアの地域、先ほどのセクションの中で台湾もございましたし、バンコクもございました、シンガポールもございました。やはりアジアと広くつきあっていくということが、日本にとって、電子情報通信学会にとって、少なくとも次の10年の活動をより活発にしていく、更に即していくために必要な事項ということです。単に2国間ではなくて、やはりネットワークをつくって活動していくことを次の10年、今のターゲットにしているということだと思っています。

 余りお答えになっていなくて申し訳ありません。最終的に質、量とも、今、例えばIEEEという学会が中国で盛んに活動しておりますが、逆に言えばIEEE分野の中国の研究者がIEEEのトランザクションを乗っ取るぐらいの割合を占めるかもしれない。それは、ある程度見えてきつつある、実態にもなりつつあるわけですけれども、その中で今のようなネットワークで、日本の学会として活動していくというのが現在の指針であるということです。

【中村委員】  今のコメントで、既に皆さんお気づきでしょうけれども、インパクトファクターへの信仰が強いので、多分、この会議の一つの結論は、日本でインパクトファクターが高いジャーナルを出せれば、それでおしまい、ということになるのではないでしょうか。何としてでもインパクトファクターの10のジャーナルをつくれば勝てると、そういう簡単な見方もあるわけです。少なくとも4、3を超すといい論文は自動的に集まってくると思っています。

【今井教授】  それに関しましては、先ほどの議論の繰り返しになりますけれども、別にインパクト信仰がいいと言っている学会ではございません。私どもに関しましては、それ自体が実は研究対象でございます。その中で、私どもとしてきちんと、決して日本に閉じこもることなく活動していっているというのが現状でございます。そういったあたりは、一方で学会間の連携がいろいろなところでかかわってくるということも認識をしております。電子情報通信だけでやっておりますと、IEEEは電気系も含んでおりまして、電気系も含めて、そこだけに限ってですとなかなか難しい。オールジャパンとでも申しますか、そういった横の連携が非常に重要で、それを少なくとも次の10年の軸にして、今、取り組んでいると思っています。

【中村委員】  ありがとうございます。

【有川主査】  はい、どうぞ。

【山口委員】  大変興味深い発表、ありがとうございました。オープンアクセスについて質問したいと思います。物理学会の発表で、20ページに「Compact for Open-Access Publishing Equity」がありましたが、理念として大変興味深いものだと思いました。内容としては、2パラグラフ目に「Therefore, each of the undersigned universities commits to the timely establishment」、それから「signed」となっていますが、実際のところ大学の専門分野によって、オープンアクセスに対する理解度・活用度にかなり差があると思います。このコンパクトは、大学レベルでオープンアクセスを提唱しようとしているものなのか、それとも学部レベルなのか、専攻レベルなのか。その辺の議論は、どのように行われていますか。

 もう1点は、今井先生の御発表の、「電子ジャーナル化の恩恵」、「ビジネスモデル」の部分で、会員のオンラインアクセスの事例と、オープンアクセスの事例とがあげられていました。オンラインアクセスとオープンアクセスに関して、ユーザーからのリアクションの違いというものは、どのようにお感じになっておられますか。

【瀧川教授】  これに関しましては、むしろ私より御存じの方がいらっしゃるかもしれないんですが、このイクイティーはわりと抽象的な話なので、ここで見る限り、大学とか研究機関が主体となって、そういうものの仕組みをつくるように読めますが、具体的にどうするということまでは何も立ち入っていないので、どう具体化するかというのは、それぞれの機関が考えているということが実態ではないかと思います。ほかにもっとよく御存じの方がおられましたら、お願いいたします。

【土屋委員】  これに関しては、今のところ、先ほど先生がおっしゃったように理念的なものであるというのが現状で、基本的には大学単位でお金を用意する形になっています。デパートメント単位でやっているところもあったような気がするんですけれども、基本的には大学単位です。ただ、実際、2009年、2010年の実績ですと、たしか各大学で用意した金の10%も使われてないということで、正直に言うと、怒られてしまうんですけれども、動いてないというのが実態だろうと思います。

【有川主査】  倉田先生、よろしいですか。

【倉田委員】  いえ、ほぼ同じことなので。はい。

【有川主査】  今井先生は。

【今井教授】  オープンアクセスと、きちんとアクセス管理をしたところとの違いですけれども、現状では、ELEXが2004年に新たにオープンアクセスで刊行ということで、これまでいろいろ調べてきております。IEICE Electronics Express(ELEX)というレター、電子ジャーナルのみのオープンアクセスの論文誌に関しまして、アンケートの結果等をいろいろ見ているところですけれども、それまでのアクセス管理しているオープンアクセスでないジャーナルと違うジャーナルを発刊すると、違う結果が出てくるということは感じております。それに関しましては、投稿している国で違いが見えてきているところでございます。そういったことで、申し訳ありません、今、既にもう6年強、勉強してきたところですけれども、更にこれからもそのような違う点に着目してやっていきたいと思っています。

 ちなみに一つ、先ほどからインパクトファクター信仰という話が出ておりますけれども、ELEXでも最初の2年は地道にちゃんと活動しまして、データベース化できるようになったところからインパクトファクター対象として登録はされております。登録された途端に増えた国というのは、もちろん皆様が御存じの国でございまして、そういった経緯はちゃんと把握をしております。施策による差異に関しましては、今、学会としては、様々なモデルをトライさせていただいているということでございます。そのあたりの解析に、是非引き続き注力させていただければと思っております。

【有川主査】  はい、どうぞ。

【三宅主査代理】  分野が融合というか人文なものですから、少し違った角度から伺わせていただきたいことがあります。今、学習など人間研究の小さなジャーナルでやりたい機運が高まってきていることというのは、紙におさまらないコンテンツをどう配信するか、ということです。実験であれば手順が書いてあるだけでなく、実際実験協力者に配った課題の用紙まで載っていると追試しやすくなります。あるいはエスノグラフィックな研究ですと、雑誌に写真が載せられるだけでなく、できればビデオデータそのものを共有したいなどの要望があります。そういう方向に新しくジャーナルが変わっていかなくてはいけないのではないかという議論は始まっているのですが、容量の問題ですとか、個人情報の問題など難しさも見えてきています。先進大学会としては、そういうところはどういうふうにやっていらっしゃるのが現実的で、将来、どうなりそうでしょうか。

【有川主査】  では、瀧川先生から。

【瀧川教授】  もちろんそういうことはありまして、我々のジャーナルでは、つい最近、ビデオをサプリメンタリーマテリアルとして載せることを始めました。ビデオは、欧米の雑誌でもしばらく前から載っております。それから、普通、速報性を要するレターとして4ページという制限がありますから、それにおさまらないローデータとか、数値程度のようなものをサプリメンタリーマテリアルとして出しているところもあります。我々は、ちょっとそこはまだやっておりませんで、余りそれを無制限でやりますと、本当にコンパクトなものだけ4ページに載せて、本当にエッセンシャルなところをみんなサプリメンタリーインフォメーションというような弊害も、そういう雑誌も見られますので、そこはまだやっていません。ビデオに関しては、例えばコンピューターシミュレーションの結果ですとか、そういうものは非常に役に立ちますので、これから大いに使われると思います。

【有川主査】  今井先生。

【今井教授】  電子情報通信学会では、先ほどから申し上げているように、2004年に刊行しました電子ジャーナルのみ、J-STAGEの上のものに関しまして、やり過ぎだというコメントもございましたけれども、PDFの中にビデオを組み込んで配信することも最初からさせていただいております。そのかわり、PDFが重くなるので反対もございます。電子情報通信学会は、まさにメディア関係の研究、さらには標準化等をしているところでございますので、引き続き是非力を、もっといろいろな新しい面での力を入れて、様々な情報提供をさせていただけるようになればと思っております。

【有川主査】  ありがとうございました。

 ほかにありませんか。

【土屋委員】  今井先生に、細かいことで申し訳ないんですが、ELEX、NOLTAの刊行に関してはJ-STAGEを御利用になっているということで、大体とんとんだということですが、J-STAGEがなくなってしまうというか、今、J-STAGEを利用しているというのは、原理的には一応無料というところに載っているということで、伺いたいのは、なくなってしまったらビジネスとして続き得るのかということなんですが。

【今井教授】  そういう可能性はなく、更に拡充する方向で是非検討いただければと思っておりますが、一方で、学会としてはもちろん常に考えて、それが今、学会でマルチプラットフォームになっているかなりの理由になっております。ですから、最終的には学会で自前でやることができる状態を現時点では担保して、それだけのテクノロジーと、ウェブのサービスまで展開することに力を入れながら、対応しています。

 ただ、やはり一番最初に立ち上げるときからいろいろとやっていく、特にELEXの場合はそうだったんですけれども、立ち上げのところでやはり初期費用、初期投資というものがかかりますので、それに関しては、本当にJ-STAGEがあること、それが活用できること、また、その際にSPARC/JAPANから御支援を頂いたことは、本当にありがたいことだと思っております。そのような立ち上げ時のことは是非、本当に政府から支援いただければよろしいんですが。

【土屋委員】  IEEEなどは、多分、パブリッシングの収益が、学会活動を支えている部分があるだろう。数字をお示しくださいとは申しませんので、電子情報通信学会の場合にはそういう意味でもうかっているのか。学会活動を支えるだけの収益が上がっているという意味で、ビジネスモデルとして確立しているのか。ともかく学会からの支援があれば、刊行は続けられるという意味でビジネスモデルが確立しているとおっしゃったのか。それをちょっとはっきりしていただけると。

【今井教授】  今、財政状況はもちろんすべては公開されておりますし、実は新法人化の過程で非営利の一般法人を目指しているところです。出版事業は税金が関係するところですけれども、一方で事業報告書を見ていただけばわかるんですけれども、学会の今の機関英文論文誌の出版に関しましては、ほぼ収支3億円でとんとんでございます。

【土屋委員】  出版は、自分で賄っている状態だと。

【今井教授】  現時点では、会員様の会費の中に和英論文誌のアクセス権が含まれているという認識を内部的にどう処理をするかですけれども、そのレベルとしてはとんとんになっています。

【土屋委員】  つまり、会費の中に購読料を含めて、それをどう考えるかがあると。

【今井教授】  やはり、まず図書館に買い支えていただいているというのは、非常にありがたいところです。ただ、各分科会の活動をするための会費を全部論文誌で使っていいわけはございませんので、論文誌のみでほぼ3億円でとんとんと言う状況です。ほかのジャーナルを入れましても3億5,000万円とか、それぐらいだったと思います。収益が上がって、それによって他の活動をしているというわけではございません。足は出していない状況になっています。

【土屋委員】  どうも。

【有川主査】  ほかにいらっしゃいますか。林課長。

【林課長】  今井先生に、以前インタビューさせていただいたときと同じ話になって恐縮ですが、要するにインパクトファクター信仰、それは避けられないものとして一つの評価手法としては使えますが、日本の研究、日本人の研究者が正当に評価されるような指標をつくれないかということを、前回のプレゼンでも提案させていただきました。ここで電子情報通信学会は、英文誌を出し、和文誌を出し、研究技法を出し、アジアの中で日本の国際性を出そうとされており、しかも電子情報通信学会ですので、日本に合った評価指標を積極的に開発していただけないかなと、どうしても期待してしまいます。この点に関してコメントいただくことは可能でしょうか。

【今井教授】  様々な経緯がございまして、例えば和文論文誌というのは、技術移転等も含めましてやはり必要であるということです。そういった意味で、今、和文から英文まで多様なアプローチをしているところでございます。例えば、和英論文誌のサイテーションを集めるとどうなるのか。そのあたりは、NIIの研究事業の中でも、若干予備的に評価も頂いているということは伺っております。

 そういった中で、まず学会として評価について新たなことに取り組んでいかないといけません。今もよく学会の事務局でウェブサービス等の話が出ましても、Information and Communication Technologyを推進している学会として、ウェブサービスのとあることに関して、ちょっとお金の関係でスペックダウンとかしますと、この学会がそれでいいのかということになりますので、是非そういうことのないように心がけていきながら、やはり学会として指標に関して、評価に関するところについて、実際には個別の研究がございますので、それをまとめていく活動を是非一つさせていただければと思います。今日も6時から、学会で論文の公開の仕方に関するワーキンググループがございまして、是非評価の話とかも持って帰らせていただければと思います。単に持って帰るという回答で、大変申し訳ございません。

【有川主査】  今の点ですけれども、論文の出し方が本当に変わってきてしまっているわけですけれども、評価の仕方は、紙媒体のときのやり方をそのまま踏襲しています。具体的に言いますと、査読をすることは、当然のことと思われているわけですけれども、恐らく、それは避けられないのかもしれませんが、もっと、この時代にふさわしい評価の仕方などもあり得るのではないかという気もします。その辺についてはお考えになっているのでしょうか。お二方にお聞きします。

【瀧川教授】  我々のところでは、そういう議論はまだ余り進んでいません。ただ、先ほどちょっとお話ししましたAIP(The American Institute of Physics)の新しい雑誌というのは査読に関しても、例えば査読してからオープンにして、それにだれでもコメントするというプロセスも入れるというふうに、たしかうたっていたと思います。

【有川主査】  先ほどの採択率が六十何%ということは、査読に代わるような違ったものがあり得るということにもつながるのかなと感じました。

 それから、昔でいいますと、いわゆる紀要のようなものや今日の最初のお話でもあった理論物理系のものについては査読など余り言わなかったはずなのです。その辺で、いいものはいいという評価が出てきていたわけですけれども、今は、状況ががらっと変わってしまっていますから、そんな悠長なことは言っておられないと思います。インターネットなどの手段を持ってしまっているわけですから、この時代にふさわしい何かがあり得るのではないか。そうすると、オープンアクセスも含めて、学術情報発信のやり方はすべて変わってくる可能性があると思います。そのようなことは、絶えず気にしておかなければいけないだろうと思います。

【土屋委員】  一つよろしいですか。

【有川主査】  はい。

【土屋委員】  今の件に関係して、普通、一般的な傾向としては、リジェクションレートが上がるとインパクトファクターが上がるということになっておりまして、物理学会の話と電子情報通信学会の話を伺うと何か逆な感じがするんですけれども、これはどういうふうに分析したらよろしいのでしょうか。

【瀧川教授】  逆とおっしゃいますと……。

【土屋委員】  要するに、リジェクションレートが上がる、高いものほどいい論文が選ばれているはずだから、いい論文は引用がたくさんされるはずだから、インパクトファクターは上がるはずだというのが一般的なんですが。

【瀧川教授】  同じカテゴリーの中では大体そうです。

【土屋委員】  ですから、分野の違いで説明すべきなのか。例えば、電子情報通信学会の場合には、リジェクションレートが高いというのは、投稿論文の質が全般的に低いという可能性もあり得るし、その辺の分析がどういうふうにされているのかをちょっと教えていただけたらと思うんですが。今申し上げたことは例えですが。

【瀧川教授】  ジャーナルの中の事情でいいますと、実際、リジェクションが多いのは、やはり国外からの投稿の方が多いです。だから、国内は、いいものを選んで出してくれる著者がいるということが支えになっています。そういう意味では、母集団が違うので、そこは少し例外的な状況だと思います。

【有川主査】  これは大学入試などでもそうですが、競争率が高いからいいかというとそうでもなくて、健全なところに落ちついているというようなこともあるかと思います。

 それから、これは今井先生のところや、情報処理学会等に考えていただいた方がいいと思うんですけれども、インパクトファクターなどにかわるようなものを考えていくということも、やはり学会に期待されていることであろうかと思います。

 それから、物理学会から経営モデルについて、例えば18ページあたりにあるような整理をしていただいております。この辺は、大学の場合、図書館が負担するといっても、皆さんの公費的なところから図書館に行くわけです。ですから、ある意味では、全体として¥がついているところをいかに少なくしていけるかということに尽きるのだろうと思いますが、その辺はいかがでしょうか。¥が3個ついていますが、前は$で、$が3個であったり、1個であったりするのですが、これは何か意図されているのでしょうか。

【瀧川教授】  あくまでこれは原理原則論ですが、やはり講読モデルは少数の出版社が、いわば独占的に価格をつけるのに対して、著者負担モデル(オープンアクセス)は著者がどこでも選べて、ここではかなり競争原理が働くわけなので、もし、こういうことが行われれば、相対としては、やはり著者負担モデル(オープンアクセス)の方が絶対エコノミカルにはいいと、私は思うんです。ただ、放っておいても進まないので、何らかの仕掛けが必要である。これがある以上は、図書館はずっと払い続けざるを得ないという状況があると思います。

【有川主査】  それから、その次のページの1.のところに、科研費の研究成果公開促進費のことに触れてあります。一方で、今井先生の学会は、こういったものには頼らずに自分でやるということですが、ここは際立ったところを示していると思います。物理学会の方は、歴史的に、主に英文誌対応ということで、研究成果公開促進費をうまく使ってこられたのだろうと思います。こういった制度も、そういう意味では紙媒体を想定しているわけですけれども、オープンアクセス誌、あるいはIRなどもそうかもしれませんが、この時代にふさわしい支援の仕方、あるいは助成の在り方が考えられるのではないかと思っております。例えばここに占める、研究成果公開促進費が日本物理学会で果たしている役割といいますか、その辺についていかがでしょうか。

【瀧川教授】  正直言いまして、JPSJの場合、雑誌を購読で売っていますので、本来、自立採算があるべき姿だと思います。ただ、現状では、これがないと経常的に少し赤字が出る。残念ながら、科研費を頂いて収支がとれているという状態で、それを克服しようと思うと、やはり購読を伸ばさないといけない。今、コンソーシアムとか、パッケージで売られている状況で、やはりジャーナル1個だけの売上げを伸ばすというのは非常に難しい。先ほど言った海外提携とかを考えて克服しようというのが、一つの将来の課題になっています。

 一方、オープンアクセス誌についてはこれからですけれども、やはりそれに対して何らか、科研費とは限りませんけれども、先ほどから言っていますように、何らかの組織的な支援がないと、なかなか難しいという気がしています。

【林課長】  化学会としての立場を離れますが、学術情報流通を勉強している身としてコメントさせていただきますと、今から、特に日本独自で新刊の購読費モデルのジャーナルを出すというのは極めて難しい状況です。なぜならば、規模が小さくて、少タイトルのものを出して世界の図書コンソーシアムに売るというのは、ほぼ不可能と思っていいと思うからです。したがって、日本から情報発信を新規に行うには、オープンアクセスジャーナルを前提として考えざるを得ないという側面があると見てよいと、個人的には思っております。そのときに、国、行政としての支援というのは、あっていいのではないかと思っています。

 今井先生のお話も、科研費ではありませんでしたが、オープンアクセスジャーナルを創刊するに当たって、SPARC/JAPANとJ-STAGEの支援を得てキックオフができた。本当は、購読費モデルの論文誌から利潤を得て、それを投資する形としてオープンアクセスジャーナルを立ち上げる、実は、欧米の大手のモデルというのはすべからくそうです。購読費モデルで稼いで、その余剰金を使ってオープンアクセスジャーナルを試験的に立ち上げて様子を見ているというのが一般的ですが、日本の学協会出版はその余剰金が出るほど稼げていないので、立ち上げるに当たっての国の支援が考えられます。

 もう一つの視点も御紹介すると、オープンアクセスジャーナルで成功事例の一つとされているPLoS(Public Library of Science)のジャーナル群も、最初はアンドゥルー・メロン(Andrew W. Mellon)などの財団からの寄附、ドネーションで事業のほとんど賄っていたので、当初そのサステナビリティーが疑われていました。それを何とか投稿費モデルに何年かかけて変えて事業を回せるようになりました。ここで、今度は出版活動に対してドネーションを得て新規事業に回す仕組みも日本には育っていないという事情もありますので、日本としてのオープンアクセス出版活動をサポートするビジョンとしては、科研費等の出版支援にオープンアクセス支援を入れるという、日本物理学会の提案に戻ってくるのではないでしょうか。出版活動支援に対して、オープンアクセス誌のカテゴリーの創設を含む、何らかの組織的支援に持ってくるという考え方が出てくるのではないかと思います。

【土屋委員】  それは、永久に支援し続けなければいけないでしょう。

【林課長】  そこがまさに肝腎な御指摘であって、要するに恒常的な支援にしてしまうとその支援に依存することになりますので、新規企画に対して、キックオフに対して時限の支援をする形にされるのがやはりよろしいのではないかと思います。

【有川主査】  時間がなくなりましたので、今日はそろそろ終わりにしないといけません。いずれにしましても学術情報発信というのはお金がかかるわけでして、そのモデルをどうしていくかということはこれから議論しなければいけないと思います。今日は、二学会から、その点に関してサジェスチョンを頂いたと思います。それから、前回、林課長から頂いたものもございます。これから、例えば人社系等についてのお話なども伺いながら、あるべき姿を考えていかなくてはいけないと思います。

 それから、今日、非常に興味深く聞かせていただきましたことの一つとして、電子情報通信学会が、アジア中心とはいえ、ここまで国際化が進んでいるというのは、表現された以上の学ぶべきことが含まれているような気がしておりまして、我々の作業部会の中で意識しながら議論していきたいと思います。

 今日は、物理学会と電子情報通信学会から、それぞれ体系的なお話をしていただきまして、私どもの作業部会の今後の議論に非常に役に立ったと思っております。これから、またいろいろお聞きすることもあろうかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 今、申し上げましたけれども、これから人社系の学会にもおいでいただき、お話を聞かせていただこうと思っております。学協会につきましては、私と事務局に御一任いただければと思います。

それでは、事務局より何かございましたら、お願いいたします。

【丸山学術基盤整備室室長補佐】  最後に、連絡事項を申し上げたいと思います。

 本日の会議の議事録につきましては、改めまして各委員に御確認を頂いた上で、公開の手続をとらせていただきます。

 本日は大変狭い部屋になりまして、大変失礼を申し上げました。次回でございますけれども、6月2日の木曜日を予定してございます。10時から12時まで、場所は文部科学省の3階、3F2特別会議室でございます。よろしくお願い申し上げます。

 それから、資料3にそれ以降の予定についても記してございますので、日程の確保について特段の御配慮いただきますようお願い申し上げます。

 本日の資料につきましては、机上にそのままお残しいただきましたら、事務局から郵送させていただきます。

 以上でございます。

【有川主査】  ありがとうございました。

 それでは、本日の作業部会、これで終わります。ありがとうございました。

                                                             ―― 了 ――

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