研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第16回) 議事要旨

1.日時

平成20年5月14日(水曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室(文部科学省東館3階)

3.出席者

委員

 有川主査、伊井主査代理、三宅委員、上島委員、潮田委員、小谷委員、後藤委員、坂内委員、土屋委員、美濃委員、山口委員、米澤委員

文部科学省

 伊藤振興企画課長、勝野情報課長、飯澤学術基盤整備室長、その他関係官
(科学官)
 喜連川科学官
(学術調査官)
 阿部学術調査官、阪口学術調査官

オブザーバー

(外部有識者)
 永井首都大学東京基礎教育センター教授、半谷東京理科大学情報科学教育センター長

4.議事要旨

【有川主査】
 本日は、前回に引き続きまして学術情報基盤の在り方について、公立大学及び私立大学の関係者からご意見を伺い、意見交換を行いたいと思います。また、現在、研究環境基盤部会/学術研究の推進体制に関する作業部会において審議が進められている『学術研究の推進体制に関する審議のまとめ(案)』について、事務局からご説明いただきたいと思います。
 資料1「公立大学及び私立大学関係者からの意見発表資料」に基づき、各大学におけるコンピュータ及びネットワークを中心とした学術情報基盤の現状、課題、今後の方向性及び情報基盤センター、学術情報ネットワークに対する期待などを含めた、我が国全体の学術情報基盤の在り方について、永井首都大学東京基礎教育センター教授及び半谷東京理科大学情報科学教育センター長から意見発表が行われ、その後、質疑が行われた。

1.首都大学東京発表(首都大学東京基礎教育センター教授 永井 正洋)

【永井先生】
 本日の発表ですが、最初に本学における情報基盤の概要をお話ししたいと思います。続きまして、情報関連組織の概要、3番目といたしまして、情報関連組織の活動状況、そして4番目といたしまして、情報基盤に関する本学としての課題、そして最後に、SINET及び共同利用の情報基盤センターへの期待ということでお話をさせていただきたいと思います。
 平成17年4月1日に4つの東京都下の都立大学が統合しまして、首都大学東京が開学しました。学部の構成ですが、都市教養学部、都市環境学部が従前の東京都立大学からの学部です。そして、システムデザイン学部は日野にキャンパスがあった、都立科学技術大学が前身です。健康福祉学部は荒川にキャンパスがありました、都立保健科学大学が前身になっています。
 資料に開学の理念を記載していますが、大都市東京ならではの都市に立脚した教育研究に取り組むということが、その理念です。ただ、統合はしたものの、果たして本当の意味での統合になっているかが、学内でも議論のあるところで、そういったところがこれからお話しするネットワークにも係わってきます。
 まだ開学して間もない大学ですので、コンピュータネットワーク及びシステムに関しての統合がしっかり行われて開学に至ったわけではありません。分散型のキャンパスになりましたので、それに対応したシステムの実現、また、学生、教員の教育研究環境整備の一層の推進を行わなければいけません。さらに、情報セキュリティーの問題もあります。そして、ばらばらに、様々な機器が散在していますと、効率がよくありません。そういった観点の下、ようやくシステム系の統合が行われたのが平成19年の4月です。
 具体的には、今までは他のキャンパスの先生が、本拠地の南大沢キャンパスにいらしたときに、コンピュータにログオンしようと思っても、ログインできないという状況があったのですが、統合認証システムを取り入れ、どこのキャンパスにいても先生方が任意に使えるようにしています。また、メールシステムもドメインが各キャンパスでばらばらになっていたため、「tmu.ac.jp」のドメインを全学展開しました。
 研究システムも分散されていたのですが、性能向上を目指し集中配置を行い、Webシステムもメールと同様にドメインを統合しました。
 また、ネットワークシステム、ネットワークが図られ、南大沢、荒川キャンパスへのVPNの新規導入が行われました。無線LAN環境の充実、セキュリティー強化についても考えられました。
 資料のネットワーク構成図ですが、それまでは統合前の各大学が存在していましたが、各大学間の専用線によるネットワークは整備されていなかったので、一般のインターネット回線に依存していたという現状がありました。しかし1つの大学に統合したので、専用線を引いたネットワークを構築しようという意図の下、改善が図られ、100Mbps(メガビットパーセカンド)から1Gbps(ギガビットパーセカンド)にネットワーク速度向上が実現いたしました。
 SINETに接続しているのは日野キャンパスの回線、そして荒川キャンパスの回線です。本拠地の南大沢キャンパスの対外接続なのですが、KDDI、一般のプロバイダに接続しています。
 研究システム用の計算機の統合についてご説明します。資料に書かれている統合の計算機サーバAとB群の2つが、新たに導入された統合計算機です。これは先生方が研究用に利用するために設置されたものです。統合以前は各大学で、それぞれがセンターマシンというサーバを置いて、計算を行っておりましたが、1つのキャンパス、特に本拠地の南大沢キャンパスのサーバが故障してしまった時に、他のキャンパスで不便にならないように、各キャンパスで従前のサーバに残す形になっています。
 次にWebシステムでございます。ここで特に述べたいことは、VPNをどのキャンパスにおいても取り入れたという点です。また、セキュリティ対策の一環として、大学全体としてウイルス対策ソフトを購入して、ユーザーに無償で提供しています。
 次に本学の情報関連の体制についてですが、資料の体制図に最高セキュリティ責任者がいますが、これは情報担当理事ではありません。実質的に情報システムを運営しているのは、各キャンパスのシステム管理者で、情報システム委員会にも入っています。各キャンパスのシステム管理者は教員で、事務方、SEの支援を受けて運営しています。情報システム委員会については、各キャンパスのシステム部会を統括する位置付けであり、主管者は総務部長ですが、実質的には教員のシステム管理者が活動しています。その下に南大沢情報システム部会、日野情報システム部会、荒川情報システム部会、そして適宜ワーキンググループが構成されています。
 情報システム委員会の活動内容については、マルチキャンパスに対応した教育研究用情報システムの再構築、また、トラブルが起こった際の検討が行われています。各キャンパスのシステム部会があったわけですが、ここでは情報基礎教室、ワークステーション教室、学生に貸出しをしているパソコンの管理、更新を行っています。
 また情報教育の立場として、教務委員会の下に基礎教育をまとめる基礎教育部会あり、その下に、情報教育検討部会とAV施設運営部会があります。
 情報教育検討部会では、高等学校で教科「情報」が始まっており、それにあわせて大学でどのような情報教育を施すべきかの検討を行っています。大学入学時に学生のレディネス調査や、FD委員会とタイアップして授業評価アンケートの実施と評価を行っています。
 次に本学の情報基盤に関する課題を述べさせていただきます。本学では国立大学に設置されているような、情報基盤センターがありません。そして、システムやネットワークに専念できる教員がいない状況です。
 また、統合前の各大学のシステムを引き継ぐ形で、運用していますので、キャンパス間での運用・利用ルールの違いがあり、少し困っているところです。
 そして、事務方の問題なのですが、東京都の場合大体二、三年で職員が異動してしまうため、情報や知識がうまく蓄積されないという問題があり、大変苦慮しています。
 また、様々なシステムが林立しており、まだ統合されていない部分があり、使い勝手が悪いという状況があります。
 次に全国共同利用の情報基盤センター及びSINETについての期待、要望について、数名の先生から伺ってきて、まとめさせていただきました。
 本学のコンピュータネットワークの利用者のほとんどは、インターネットのメール、ファイルの転送、Webの検索が中心であろうという話でした。大型計算機の利用については、使っている先生方が特定された人になってきますので、情報の共有が大変限られてしまう。そのため、トラブル事例の共有や公開をして欲しいという話を伺いました。そして、情報基盤センターには、技術職員の実務研修機会の提供を期待しています。
 本学の教育研究用のセンターマシンですけれども、大体5年で更新しています。後半になってくると大分古くなり、利用価値が下がってくるため、やはり共同利用の高性能計算機の活用が考えられますが、本学では、現在、計算機のCPU時間に対する課金を行っていませんので、共同利用の計算機を利用する際の課金は考えるべき課題の一つと思っています。
 最後に、本学でも化学系、物理系分野では、スーパーコンピュータの利用が若干あります。ただし、本学で高性能スパコンを調達するのはかなり厳しい。その際は、全国共同利用の情報基盤センターのスパコンの活用をお願いすることが多くなろうかと思います。以上で終わります。

【阿部学術調査官】
 キャンパス間ネットワークですが、商用ネットワークで整備しているのでしょうか。

【永井先生】
 専用線を引いています。

【阿部学術調査官】
 SINETでキャンパス間を接続できるようになっていますので、ぜひ今後検討いただければと思います。

【土屋委員】
 90年代頃の話を伺っていた限りでは、東京都立大学の頃の情報センターはほとんど丸々外注で、とてもうらやましかった記憶があります。つまり、教員が全然係ることがなくて、いわばインフラということで外注して、結構な金額を使われていたのではと思います。統合すれば、当然、節約効果が現れると思うのですが、わかる範囲で構わないので、事務系の職員が何人ぐらいで済むようになったとか、外注費用がいくらに減少したかなどを教えていただければと思います。

【永井先生】
 先ほど申し上げた、統合された部分以外のもの、例えばキャンパスに置いたアプリケーションサーバなどをレベルの低いもの、安価なものに入れ替えています。その辺りは、予算がかなり削減されたのではないかと考えます。
 事務職員については、現在、南大沢キャンパスの総務部総務課情報係が情報関連業務の全てを取り仕切っていますが、キャンパスごとには情報関連の専門の事務方がいません。そういうところでは予算の節減になっているかもしれませんが、その反面教員にとっては、自分たちのやるべき業務が増えたという感覚です。

【土屋委員】
 日野、荒川キャンパスにもSEが常駐しているということなので、かなり予算を使っているのではないかと思いましたが、それでも教員の業務量は増えているのでしょうか。

【永井先生】
 確かにそのような側面はあると思うのですが、先生方の意見を伺うと十分ではないという回答が返ってきます。

【有川主査】
 情報関連の組織がかなり複雑に見えます。例えばCIOが置かれていますが、実際には、中心的な活動をしていないとすると、意思決定にも時間がかかり、相当な重層構造になっているように思います。この辺は再編される計画はあるのでしょうか。

【永井先生】
 確かにそのような側面はあります。どの範囲まで教員が意思決定できるのかという問題があります。例えば、情報セキュリティーポリシーなどに関しても遅れており、本年度にそういったところも、しっかり活動しようという動きがあります。組織についても見直さなければいけないところが多々あろうかと思っています。

【有川主査】
 首都大学東京の学部等組織について、情報やネットワークに係っている先生方や学生が在籍しているのは、システムデザイン学部と考えてよろしいですか。

【永井先生】
 主としてそうです。システムデザイン学部には情報通信のコースがあります。それから、都市教養学部です。都市教養学部の理工学系の中に電気電子学コースがあります。

【有川主査】
 それらのコースの先生方は、ネットワークや、システムの維持管理、情報処理教育等に携わっているのでしょうか。

【永井先生】
 はい。先ほどご説明した情報システム委員会の場合ですと、定数が決まっていまして、学部等の代表の方が出席し、全学の情報システム等について検討をしています。

【土屋委員】
 教育が非常に重視された形になっていると思うのですけれども、例えばキャンパス間の遠隔教育とか、あるいは学外の方に対する遠隔教育、それから、コンピュータを使った自習システムや、Webコースマネジメントシステム等に関し、ご発表の中で言及が無かったと思いますが、その辺の状況を概括的に教えていただけますか。

【永井先生】
 私自身、情報教育検討部会に所属していますが、そこでの課題の一つがe-learningです。2年前に私が本学に着任した時に、競争的に得られる研究費として、傾斜的研究費をいただいて、e-learningシステムの導入を行いました。現在本学では、「情報リテラシー実践1」という、1年次で行われる情報教育の授業支援、そして自宅学習の促進、そういった意味での利用をしています。
 遠隔教育については、キャンパスが分散しているため、システムデザイン学部や健康福祉学部のほうからは、積極的に導入し、授業支援、単位取得に用いたらいいという話があるのですが、学内の意思統一が難しい状況です。e-learningに対しても、賛成もあれば、反対もあり、少しずつ広がりつつありますが、障害も多いと認識しています。

2.東京理科大学発表(東京理科大学情報科学教育センター長 半谷 精一郎)

【半谷先生】
 本学は、昨年ちょうど125周年を迎え、今年126年目に入りました。現在、法人は東京理科大学ですが、大学は3つあります。東京理科大学、山口東京理科大学、そして諏訪東京理科大学という3カ所の大学拠点を持っています。東京理科大学はキャンパスがさらに幾つか分散しており、本部は神楽坂キャンパスにあります。神楽坂キャンパスと対をなして、教員数、学生数がほぼ同数在籍しているのが野田キャンパスです。この2カ所が大きな拠点になっていますけれども、それ以外に1年次に3学科だけですが、北海道長万部で全寮制教育を行っている長万部キャンパスがあります。
 さらに、理系の大学ながら、経営学部が久喜キャンパスにあります。以上4キャンパスが東京理科大学ということになります。
 その下に具体的な学部、学科数が書いていまして、東京理科大学は学部数が8、学科数が33、大学院の専攻数が28です。山口東京理科大学には学部数が1、学科数が2、大学院の専攻数は1、同じく諏訪東京理科大学には学部数が2、学科数が3、大学院の専攻科は1という形で運営しています。
 職員に関しては、今年5月1日現在で、教員が799名、事務系職員が457名、合わせて1,256名が常勤として働いています。学生数は、学部生が東京理科大学、山口東京理科大学、諏訪東京理科大学、合わせて1万9,243名、大学院生の数が3,143名。合計して約2万2,300名の学生が本学に在籍しているという状況です。
 学術情報基盤の現状と課題と今後の方向性についてお話させていただきますが、本学の学内サーバは、教育用サーバとしてUNIX系が127台、Windows系が45台あります。その他にネットワーク関連として46台用意されています。また、ルータ・スイッチ関係は、事務系のサーバ等も全部含めて383台です。
 学生が使用するパソコン類の整備状況については、研究室にあるパソコン類や、ワークステーション等については、把握が大変困難であり、資料には、学校法人そのものが直接把握できる数のコンピュータの台数を記載しました。主なところでは、神楽坂キャンパスに約600台、野田キャンパスに約500台を整備しています。
 ネットワークの回線速度は、基本は100Mbps(メガビットパーセカンド)です。昨今100Mbps(メガビットパーセカンド)では厳しくなりつつある現状ですけれども、今のところ何とか耐えています。また、SINETは使わず、商用プロバイダを使って運用しています。神楽坂と野田間、及び神楽坂と諏訪間は100Mbps(メガビットパーセカンド)で接続しています。
 資料をごらんいただければわかりますが、神楽坂がキーキャンパスになっており、そこから全てにネットワークが構成されているということになります。
 学内の幹線は1Gbps(ギガビットパーセカンド)以上で、学外との接続が最大100Mbps(メガビットパーセカンド)です。研究室・教室は100Mbps(メガビットパーセカンド)の回線速度で、利用目的に応じてネットワークを多重化しています。無線LANのアクセスポイントは82カ所ですが、本学の学生数に対して82カ所は、少ないと認識しています。このため、今年度より、3年計画で全教室、廊下、キャンパスの講堂部分にネットワーククラウドという形で、無線LANのアクセスポイントを設置する計画がスタートしました。
 また、野田キャンパスと神楽坂キャンパスの間は大変トラフィックが多くて、時々飽和状態になりつつあるというのが現状です。学生数が、野田が約9,000名、神楽坂は1万名います。資料に具体的なネットワークのトラフィックが、1年間でどの程度あったかを調べたデータが記載されていますが、神楽坂キャンパスと商用プロバイダで一番トラフィックが増える部分で、平均60、70Mbps(メガビットパーセカンド)ぐらいで、相当トラフィックが多い時でも問題はありません。
 また、1日の5分平均で取ったトラフィック量のデータでございますけれども、ピークでどうしても100Mbps(メガビットパーセカンド)まで到達してしまう時間帯があります。
 次に、情報関連組織ついてですが、情報戦略会議という理事会と直結している会議があり、本学のおよそ5年間の基本的な計画を策定しています。一方、情報基盤整備委員会というのがあり、ここでは、HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)、ネットワークに関連する整備の審議を行っています。この情報基盤整備委員会は、基本的には学長の下に置かれた委員会ですが、ここの構成メンバーには、情報戦略会議に出席している人も多くいますので、その意味では情報戦略会議と基盤整備委員会の間では、意思疎通がきちんと図られていると考えています。
 一方、システムの運用等を行うのが、総合情報システム部です。こちらは、大学の運営管理その他ですので、教育に直接携わる部ではなく、むしろ、理事会と直結している部です。この中には情報企画課、情報技術課、開発課、事務システム課があり、裏方を全て担っていることになります。様々な教員からの意見に関しては、地区委員会があり、野田、久喜、それから、長万部キャンパスを含めて、地区委員会の委員長が各地区から出席しています。各地区の委員長は各学部、学科の意見を吸い上げ、地区委員会に上げるという役割を担っていますので、学部、学科でこういうような教育を翌年実施したいと決めますと、それをこの地区委員会に上げて、他の地区とのバランスをとりながら、具体的にこの上の情報科学教育センターで審議し、了承が得られれば機構から、学長を介し情報戦略会議で審議してもらうという流れをとっています。FDや、e-learning等に関しましては、あくまでも教員ベースでいろいろなことを考えていますので、この会議が中心になっています。
 地区委員会の他に教育部門があり、ここでは今後のe-learningも含めた、情報を活用した教育について検討しています。各年度の予算等については、地区委員会と教育部門が、教育関係のほぼ全ての予算について提案し、上げていくという構造になっています。
 予算については、年間10億円を上限とするということを大学として決定しており、出来る限り前年度比マイナス5パーセントを目標にすることになっています。少しずつではありますが、右肩下がりにはなっています。ネットワークの回線については、おおよそ、年間に8,000万円程度支払っている状況です。
 情報関連組織の活動状況については、特色ある活動として、高速並列計算機を有効利用するために、外部業者委託による運用サービスを行っています。平日の常駐支援、ハード・ソフトの障害対応、講習会開催をなども含めた契約を行っています。
 また、毎年1回ですが、ハード、ソフト、ネットワークに関する、学科レベルの要求を地区委員会で吸い上げ、翌年度の予算措置に充てています。その他、e-learning教育の推進を行うための教育部門が、毎年4月に各先生方の授業のためのコンテンツ作成支援の要望を聞き、要望があった場合には、なるべく予算措置をするようにしています。これは主に学生のアルバイト代ということで、1科目大体15万円弱です。
 また、CCNAというシスコのネットワークアカデミーを本学でも開催しており、ネットワーク技術者育成のため、本学学生と、一般の社会人の方でも受講できるような生涯学習教育システムを構築しています。
 次に情報基盤に関する課題についてですが、一つは、高速並列計算機を昨年から稼働しましたが、まだ授業利用は行っていません。100名、150名が一斉に利用した時のスループットが大幅に低下する問題を抱えており、並列アルゴリズムに関する教育を行いたいのですが、利用するには問題があるというジレンマがあります。
 また、ネットワークの回線容量を増やさなければいけないという課題があり、画像データが圧倒的に多くなったための対応が必要になっています。
 さらに、停電障害等の対応策ですが、神楽坂キャンパスがネットワーク拠点のため、神楽坂キャンパスの機器のトラブルにより、全学のネットワークが一気に利用不可能になるというような状況ですので、本年度中にデータセンターへの移行ということを検討しています。
 その他、メールシステムのセキュリティについても今後対策を施さないといけません。そして、私立大学はどこでもそうだと思いますが、情報技術を扱える職員の不足です。
 次に、情報基盤センター及び学術情報ネットワークに対する期待等ですが、本学は80年代に東京大学の大型計算機を利用していましたが、インターネットが利用可能になり、95年4月にリモートステーションが停止されてから、利用度については把握できないとのことでした。95年の神楽坂キャンパス並列計算機設置以降、並列からベクトル型に移って、その後また並列型に戻っています。昨年4月にはIBMの並列型高速コンピュータを設置しました。主に研究で使われていますが、研究を通して学生教育を行うということで導入されています。建築、化学、生命科学、薬学といった分野が中心に利用しています。また、教員から、スーパーコンピュータを利用する上で、従来使ってきたアプリケーションを、そのまま使える環境が欲しいという要望が出ており、アプリケーションが起動するか、何度もチェックした上で導入しています。
 一私立大学としてスーパーコンピュータを導入することの前提として、情報基盤センターで提供されるものが、どうしても使えないという場合に、本学のスーパーコンピュータを使おうというポリシーで購入をしています。全国共同利用情報基盤センターとの間で、どのような問題があるかといいますと、商用ソフトを利用したいが、それをインストールして利用させてもらえないこと、また、テラバイト級の巨大データを格納するディスク領域が必要な場合に、対応がほぼ不可能であるということの2点が今のところ、本学にスーパーコンピュータを導入した理由になっています。
 ただ、懸念事項としましては、将来的に、やはり計算機パワーが減ってきた場合、どうするかという問題と、商用ソフトのライセンス料の高額化に対して大学としてどう対応していくかという問題点が出ています。また先ほど申し上げたように、並列処理、並列計算を授業で教えたいけれども、困難であることが懸念事項として挙がっています。
 一方、SINETですけれども、本学はもともとBITNETという、IBM系のネットワークを使っていた関係で、JOINが中心でした。本学はSINETとJOINのちょうど橋渡し部分の役割を担っていたわけですが、2006年3月にJOINは役割を終え、それに伴いSINET、JOINの回線を停止したという経緯があります。
 当初、SINETを利用することも検討されたようなのですが、その際、商用プロバイダに比べて回線費用が安いということが、SINETのメリットとして挙げられていました。また、当然、SINET加入大学との通信が非常に速いということも挙げられていました。そして、加入機関のみのプロジェクトに参加できること。これだけメリットがあったのですが、それでもやはり商用のプロバイダを選んだのは、回線障害の回数が非常に少ないということと、それに伴う復旧時間が非常に短いということが挙げられました。保守作業による停止がとにかく少ないということです。また、商用プロバイダの場合は、保守作業を平日や休日の昼間に実施することはありませんが、SINETの場合は行われることがあります。そして、営利目的での利用を制限していない。学内にベンチャー系の会社を起業した場合、SINETを利用することができなくなるということで、利用目的に制限がないことと、当時SINET向けのトラフィックよりも、商用プロバイダ向けのトラフィックのほうが多かったなどの理由により、現在の商用プロバイダに移行したということです。
 学術情報ネットワークへの期待としましては、災害時の回線確保や、低価格であっても商用プロバイダと同等以上のサービスを提供していただくこと、さらに、費用対回線速度のより一層の改善はぜひお願いしたいところです。
 最後に、我が国の学術情報基盤のあり方ということで、やはり日本の国力を向上させるためには、国立、公立、私立大学の研究ネットワークの戦略が明確に出されるべきであろうと思います。ハイパフォーマンスのコンピュータの並列化に対応したような高性能なソフト開発なども、今後必要になってくると思いますし、それから、大規模なデータベースの構築についても、当然考えなければなりません。
 ただ、全ての大学が同じ分野で競うということではなくて、各大学の独自性を支援するような仕組みがあったらいいのではないかと、一私立大学としては思っています。
 また、学術情報基盤のインフラとしての重要性として、やはり災害に強いネットワークということ、さらに、高速かつトラブルのないネットワーク、セキュアなネットワークがあればと思います。以上で終わります。
 引き続き、発表いただいた有識者に対する質疑及び意見交換が行われた。

【有川主査】
 東京理科大学のご発表で、我が国全体の学術情報基盤の在り方に関して、大規模データベースの構築が必要とありましたが、具体的にはどのようなことでしょうか。生命科学系で統合データベースセンターがありますが、そのようなことを考えているのでしょうか。

【半谷先生】
 その通りで、薬学のデータベースなどの生命科学に関連するデータベースであるとか、一大学ではとても構築できないデータベースが今後、日本にとって、大変重要な意味を持ってくるだろうと思います。特に生命科学の場合、日本人固有の問題など、様々な点で日本が持たなければいけないようなデータベースというのが存在するのではないでしょうか。そういうものをぜひ国を挙げて構築できるような体制、仕組みを作っていただければと思っています。

【有川主査】
 以前、国立情報学研究所の前身の学術情報センターにおいて、それぞれのグループ、あるいは先生方が公開を目的に、データベースを構築するというプログラムがありましたが、データベースの規模が非常に大きくなってきたということもあり、現在また、そのような体制を整える必要があると感じました。
 それから、東京理科大学は昨年、SINETの回線を停止されています。本作業部会にSINET運営関係者もいらっしゃいますが、何かご意見はありませんか。

【阿部学術調査官】
 最近はSINETの回線障害もかなり少なくなっていますので、非常に信頼は上がっています。そして、保守作業に関しては、保守業者に任せる形になりますので、かなり柔軟に対応できるのではないかと思っています。
 営利目的の利用に関しては、なかなか難しいと思いますが、回線障害や信頼性に関しては、SINES3になり、改善されていますので、ご検討いただければと思います。

【半谷先生】
 事務方にその旨を伝えておきたいと思います。

【小谷委員】
 東京理科大学では情報関連の予算が年間10億円を上限にしていると伺いましたが、そのうちネットワークにはどれくらいの費用をかけておられるのでしょうか。

【半谷先生】
 約8,000万円です。

【小谷委員】
 私の所属は東京電機大学ですが、神田、千葉、鳩山の3キャンパスを接続し、e-learningを行おうと思い、回線速度を1Gbps(ギガビットパーセカンド)と計画したところ、使用料が年間2億円近くかかるとのことでした。現在、e-learningは、キャンパス間のプライベート網300Mbps(メガビットパーセカンド)のネットワークで行っています。ただし、SINETだと非常に安いため、そちらを活用できる方策も考えてもよいかと思っています。
 現在は、東京電機大学は神田から東京大学に接続して、それからSINETを使用しています。

【土屋委員】
 東京理科大学のキャンパス間トラフィックについて、学生の利用と、研究利用と分けた場合、どのくらいの割合になっているのでしょうか。
 また、情報科学教育・研究機構内の組織について、情報科学教育センターとバイオインフォマティクス教育センターのように、両方とも「教育センター」と名称にあるのですが、研究機構の「研究」の部分は、具体的には何を表しているのでしょうか。

【半谷先生】
 最初のご質問ですが、きちんとした統計があるわけではありませんが、圧倒的に学生のインターネット閲覧等の利用率が高くなっているようです。ただ、比率ついてはどの程度か現時点でもわかりませんし、事務システム課に問い合わせても、それを調査するのは相当厳しいと思います。
 それから、次のご質問ですが、総合研究機構という組織が本学に立ち上がっておりまして、今後は総合科学教育・研究機構は総合科学教育機構に、つまり、名称から「研究」を取る方向で検討されています。

【有川主査】
 東京理科大学の資料で、ネットワークトラフィック量について、かなり詳細なデータを示していただきましたが、後藤先生、何かご意見はありませんか。

【後藤委員】
 資料を拝見しますと、やはり神楽坂キャンパスと商用プロバイダ間はやや混んでいる期間があるという感じがします。
 各大学でも学外の接続先の選択は迷われるところだと思います。商用ネットワークの料金体系はトラフィックが一定量を越えると急激に高くなる場合があります。ご指摘のあったSINETの弱点については、数年前の状況と比べると相当に改善されたように思います。国立情報学研究所は、最近の状況を実績ベースでわかりやすく説明するよう工夫した方がよいかと思います。

【山口委員】
 東京理科大学の情報関連施設の特色ある活動状況で、e-learning教育の推進とあります。コンテンツ作成支援の要望を聞き、予算措置をしていると説明されていますが、どのぐらいの先生がこのような要望を出されているのか、予算は全学的なものなのか、また、情報科学教育・研究機構が措置しているものなのかどうかお聞きしたいと思います。
 また、予算措置以外、例えばコンテンツ作成そのものをサポートするような仕組みはできているのでしょうか。

【半谷先生】
 毎年4月に教員に対して、授業でe-learningコンテンツを作成するのだったら、支援は翌年度行うということで、計画を提出していただき、それに対して翌年度予算措置をするという形をとっています。1科目について約15万円、作成を手伝う学生の時間給を900円で計算しまして、15万円弱を配っています。
 毎年、大体15名から20名ぐらいの先生から、その要望は出ています。それから、コンテンツ作成支援に関しましては、当初はいろいろな選択肢を持たせておりました。いわゆる学生を使うためのTAの補助、そして必要なソフトウエアを購入するための支援、場合によっては、センターの職員に作成をさせるという支援の3つを準備していました。ソフトウエアに関する支援については、結局、先生ご自身がe-learningのソフトについて勉強しなければいけないので、ほとんど要望はありませんでした。3番目の、コンテンツ作成のいわゆる丸投げですが、丸投げしようにも、どういうコンテンツを作成するか、頻繁に打ち合わせをしていただかないといけない。そうすると、なかなか時間的な調整が取れないので、結局のところ、一番いいのが研究室の所属学生に手伝ってもらうことでした。その先生の授業を聞いた学生が、むしろ、内容をよく理解している。結局、アルバイトとして学生にお金を払って、その学生がコンテンツを作成するのが最も効率がいいということでした。

【有川主査】
 首都大学東京については、大学を統合されて、相当苦労されていると思います。今後、情報技術に基づき、大学の業務を効率化するということも含めて、情報化が進んでいくという印象を持ちましたが、そういうプロセスにあると考えてよいでしょうか。

【永井先生】
 そういうご認識で結構だと思います。なお、先ほどの東京理科大学のe-learningに関連いたしまして、本学はどうなっているかというと、この2年間は緊急避難的に、私がいただいている全学的な競争的研究費で賄っておりましたが、今後は東京都から教育費という形で、少し充てていただけるようになるところです。
 また、コンテンツ作成等の体制、組織ですが、先ほどの東京理科大学同様、実質的には学生のアルバイトに頼るところが多くなっています。専門科目の先生方も段々とe-learningに興味、関心を持たれまして、利用したいという話がありますが、やはり研究室内で大学院生等を使って作成している様子です。10名程度の先生方が主体的に、興味、関心を持って専門科目等でe-learningを利用しているようです。
 次に資料2「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ(案)」に基づき、科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会/学術研究の推進体制に関する作業部会の審議状況等について事務局より報告がなされ、その後質疑が行われた。

【土屋委員】
 共同研究拠点と学術研究の大型プロジェクトはどういう関係になるのですか。

【中野学術機関課専門官】
 研究拠点については、様々な分野で全国の研究者が集まる必要があるものについては、拠点を整備していくという考えです。学術研究の大型プロジェクトの推進は、大型の加速器や大型の望遠鏡など、かなりの費用を要し、さらに人的資源の投入が必要となってくるようなものについては、とりわけ慎重な合意形成が必要であるということで、別途、審議をまとめていただいているところです。

【土屋委員】
 研究者コミュニティに丸投げしているように見えるのですけれども、それは現実的なのでしょうか。

【中野学術機関課専門官】
 研究環境基盤部会でも、研究者コミュニティというのは誰が責任をとるのかというような議論もありましたが、最初の基本的な考え方に沿って、ボトムアップの学術研究拠点を形成する時には、研究者サイドからの必要に基づいて形成されるものだという考え方があります。

【土屋委員】
 研究者コミュニティがなければ理論上、成り立たないというのはよくわかるのですけれども、具体的なイメージがつかみにくかったので伺いました。

【有川主査】
 私も研究環境基盤部会の委員ですが、丸投げというような考えではなく、ボトムアップという言葉につながっているわけでして、研究者の自発的な、自由な発想に基づいてコミュニティが形成されるという部分が非常に大事という視点からまとめあげられていると思っています。

【潮田委員】
 学術研究の大型プロジェクトの推進に興味があります。これは日本学術会議の物理学委員会でも、一生懸命議論していますが、予算化する際に、どこで審議し、どうやってプライオリティーを決めるなど、その辺りについては研究環境基盤部会では踏み込まないのでしょうか。

【中野学術機関課専門官】
 元々この議論をしなければいけないという出発点は、新たな学術研究の大型プロジェクトを推進するための手続きが定まっていないという問題意識でした。日本学術会議がおまとめになったものについてもご発表いただいたのですが、まずは新たなプロジェクト推進の道があるということを示したということに意義があるのではないかと思います。実際には、学術分科会で審議していきます。

【潮田委員】
 プライオリティーについては、総合科学技術会議との関係もあると思いますが、その辺をどう整理して、国としての体制を作るかという点が一番大事なところだと思うのですが調整は行っているのでしょうか。

【中野学術機関課専門官】
 総合科学技術会議は、科学技術全体を俯瞰する重要政策に関する会議ではありますが、最初の意思決定の部分は、学術サイドで議論するという形ではないかと考えます。総合科学技術会議との具体的な調整については、これからというところです。
 次に、事務局より、次回の開催は平成20年6月18日(水曜日)15時から17時を予定している旨説明があり、本日の作業部会を終了した。

―了―

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