研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第15回) 議事要旨

1.日時

平成20年4月24日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室(文部科学省東館3階)

3.出席者

委員

 有川主査、伊井主査代理、上島委員、潮田委員、小谷委員、後藤委員、坂内委員、美濃委員、山口委員、米澤委員

文部科学省

 伊藤振興企画課長、勝野情報課長、関根情報科学技術研究企画官、飯澤学術基盤整備室長 その他関係官
(科学官)
 喜連川科学官
(学術調査官)
 阿部学術調査官、阪口学術調査官

オブザーバー

(外部有識者)
 川越立命館情報化推進機構副機構長、北村金沢工業大学理事

4.議事要旨

【有川主査】
 本日は、前回に引き続き、学術情報基盤の在り方について、情報基盤センターを有しない大学からのご意見を伺うということで、今回は私立大学の関係者からご意見を伺い、意見交換を行いたいと思います。
 また、現在審議が進められております次世代スーパーコンピュータ作業部会における、これまでの審議状況等につきましても、事務局からご説明いただきたいと思っております。
 議事に先立ち、事務局より新たに科学官、学術調査官に就任された、喜連川科学官、阿部学術調査官、阪口学術調査官の紹介が行われた。
 次に資料1「私立大学関係者からの意見発表資料」に基づき、各大学におけるコンピュータ及びネットワークを中心とした学術情報基盤の現状、課題、今後の方向性及び、情報基盤センター、学術情報ネットワークに対する期待などを含めた、我が国全体の学術情報基盤の在り方について、立命館情報化推進機構副機構長川越先生及び金沢工業大学理事北村先生から、意見発表が行われ、その後、質疑が行われた。

1.立命館大学発表(立命館情報化推進機構副機構長 川越 恭二)

【川越先生】
 立命館大学の概要についてですが、4月から新たに2学部を設置しまして、現在は12学部となっています。2つのキャンパスで合計3万2,000名以上の学部生が学んでいます。衣笠キャンパス、びわこ・くさつキャンパスの2キャンパスに、約2分の1ずつ学生がいることが大きな特徴かと思います。
 大学院生に関しましては、現在3,000人が在籍しています。
 立命館大学には、もう1つ朱雀キャンパスがありますが、一部の大学院と学園の本部機能が、ここの中に入っています。
 教員数は合計980名です。理系に関しては271名で3分の1弱という割合です。職員は教員とほぼ同数ですが、専任職員は472名(附属校の職員は除く)で、残りは契約職員、助手になります。その他、立命館学園の中には、立命館アジア太平洋大学があり、7,000名以上の学生が九州の別府市で学んでいます。附属校としては、1小学校、4中学校、4高校で合計6,000名以上という生徒が在籍しています。
 次に、学術情報基盤の現状についてですが、ネットワークに関しましては、インターネットとの接続は2カ所で行っております。1つは情報基盤センターとの関係でSINETと接続しており、回線速度はまだ100Mbps(メガビットパーセカンド)ですので、今後速度の増強を図りたいと思っています。もう1つは商用サービスプロバイダと70メガの専用線で結んでいます。この2つの専用線を出入り口に設置しています。そのほか、当然キャンパスネットワークの中にはファイアウォールを設置し、学内サーバはその中に設置しています。
 キャンパス間は100Mbps(メガビットパーセカンド)の専用線2本で接続しています。
 キャンパス内に関しては、ギガビットのイーサを使ったり、あるいは建物間ではもう少しスピードの遅い回線で接続したり、様々な経路でつながる形で、1つの回線にトラブルがあったとしても、バックアップできるような形態で運用しています。このような構成が現在のネットワークの状況です。
 無線LANに関しては、約600台のアクセスポイントがキャンパス内に設置してあります。また、情報リテラシーを勉強するために、コンピュータが設置してある情報教室が、キャンパス全体で約40室あります。その内、英語学習のためにマイクロフォンやヘッドフォンを設置した情報語学教室もあります。これを含めますと3,000台程度のパソコンが設置されています。そして、学生が自由に使えるマルチメディアルームにパソコンが約1,000台設置してあるので、学生がパソコンを利用したいときに、自由に利用できる環境が用意されています。
 このほか、キャンパス内には、事務職員が使うパソコンが2,000台、全て合計しますと、キャンパス内に約1万台のパソコンがネットワークに接続されて使用されています。情報教室とマルチメディアルームに関しては、ネットワークブートシステムを導入しまして、同じ環境で使えるような工夫を行っています。さらに、びわこ・くさつキャンパスには理系学部が多いので、ウィンドウズだけでなくてリナックスが動かせるように、デュアルブートで切りかえできる仕組みも導入しています。
 サーバは、UNIX系とウィンドウズ系があり、それぞれ約190台と約120台、合計約310台をキャンパス内のマシン室に設置しています。特にキャンパスサーバ(UNIX)は、メールサーバが約20台、ウェブサーバは学外用と学内用、あわせて10台ありますし、ウェブコースツールのサーバを大量に導入し、15台で動かしています。ウェブコースツールサーバを、このぐらいの規模で動かしている大学はあまりないのではないかと思いますけれども、私どもは、まだまだ必要だと感じています。それから事務システムサーバは、受講登録や成績管理、経理関係を含め、約50台あります。学生が使うストレージサーバも5台用意しています。
 ウィンドウズ系サーバは120台で、うち100台が、ネットワークブートするためのサーバであるというのが現状です。この310台規模の機械を管理するのは、非常に大変で、効率的な管理というものが課題になっています。
 アプリケーションシステムですが、資料に記載のとおり、様々なアプリケーションを導入、あるいはシステム開発を行い運用しています。
 次に情報化推進機構の組織概要ですが、その前身は総合情報センターという、いわゆる計算機センターが基本になっている組織です。一時期、電子図書館、あるいは蔵書の管理・検索をするシステムの導入であるとか、図書館との接点が非常に強くなりました。そのために総合情報センターは、図書館機能と統合しました。それが一区切りついたので、2004年に、次のステップとして教育の情報化、いわゆるeラーニング推進にも関連し、現在の情報化推進機構に組織改正しました。
 学校法人として、立命館学園の位置づけで情報化推進機構が設置されていますが、実質上、立命館大学の中の組織として、立命館学園における教育、研究、管理運営のIT化業務を行っています。e-ラーニングの推進、あるいはITを活用した学生へのサービス提供、情報発信、研究分野のIT化等々、情報に関係した業務を行っている組織です。
 役職者は機構長がおりますが、現在は「常務理事(教学担当)」が務めております。副機構長は現在2名おり、私が情報理工学部、もう1名は国際関係学部の教員です。実質的には、この副機構長2名で運営している状況です。いずれの3名とも兼任です。それから、事務関係のトップは次長がおり、この4名が役職者になります。
 事務部門ですが、少し変則的な構造を持っています。ネットワークやサーバ、システムの運用管理を行う情報システム課があり、それ以外に教育の情報化を推進するために共通教務課や教育開発支援課などの体制が教学部にもあります。組織間の連携が必要だろうということから、情報化推進室を教学部内に置き、連携して業務を実施しています。
 情報システム課のメンバーは専任が23名います。契約の職員が16名です。また、業務委託として、約50名が働いています。
 教員は私を含めて3名しかおりませんけれども、実際にはワーキンググループによる運営を行っています。必要に応じて、目的に適した先生に来ていただき、議論をしていただいて、その結果を実施していくという体制をとっています。例えばビデオ・オン・デマンド、外国語学習、学生・教員へのサービスのIT化等の運営です。
 情報化推進機構が活動する上で、最近一番注意しているのは、セキュリティ対策です。もちろんセキュリティ・ポリシーや規定を作り、スパムメール対策サービスとしてソフトを導入しています。ちなみに、実際に私どものメールサーバに到着したメールは月単位で約3,000万件です。正常なメールはその内の10パーセントから15パーセントの規模で、残りの排除されたメールが約1,000万件あります。また、{spam}と標題に付加されるメールが、約1,500万件です。対策ソフトを導入したのですが、毎月スパムメールが増えており、3月はメールサーバがパンク寸前にまでになるといった状況であり、大きな課題になっています。
 立命館大学では、学生が学生に対してサービスをサポートしていくことを強く打ち出しています。この一環でレインボースタッフという制度を作り、ここ10年以上運営しています。学生からの利用相談に対して、学生自身がサポート、施設の利用に対する案内等々を実施しています。また、高度な技術を持つ技術アシスタントが10名程度います。技術アシスタントは、厳しい競争率を勝ち抜いた学生が従事しており、非常に前向きに、積極的に活躍しています。
 そのほか、オンラインの受講登録システムの運用が難しい問題です。短期間に3万人の学生が受講登録を行うため、アクセスが集中して、サーバが耐えきれない状態にならないように、運用には非常に注意しています。また、e-ラーニングの推進ということで、昨年、推進検討チームを作り、検討してまいりました。1つの例としましては、コースツールが挙げられます。先ほどご紹介しました15台で動かしているものを全学に導入して、ほぼ5年が経ちます。1万3,000科目という規模で運用しており、少しずつですが、着実に実績が上がってきていると考えています。
 情報施設関係の改善に関しても、毎年様々な教室の改善を行っています。資料に紹介してありますが、この大教室は、約500人規模の教室なのですけれども、場所によってディスプレイが見えない、あるいは小さ過ぎて見えにくいという問題がありました。どこにいても、ディスプレイが見えるようにレイアウトを工夫し、また、操作卓についても、先生方の操作性を向上させる工夫等に取り組んでいます。
 次に、学術情報基盤に関する課題ですが、310台規模のサーバを、24時間365日サービス提供したいのですが、残念なことに法定点検のために、計画的に停電があり、これによりメールの配信等、ネットワークサービスが停止します。あるいは電源関係の機器が故障すると、数時間サービスが止まってしまうという問題もありまして、こういった大量のサーバや、数千台規模のPCの運用保守を、どのように効率化するかが大きな課題になっています。
 セキュリティについても一生懸命取り組んでいますが、最近の個人情報保護の問題を絡めると、非常に悩ましい問題が起こります。つまり個人情報保護を厳密に適用して、厳しいセキュリティを適用すると、教員は何もできなくなる。今後は、教員の方々の協力を得て、教育上必要な情報の活用と管理方法について考えていきたいと思っています。
 また、情報基盤を導入に伴い、どれだけ教育効果が上がったかを検証することが課題です。もちろんハードだけを入れても、効果は上がらないわけで、教員の工夫とか、運用の工夫等で教育効果が検証できるとは思いますが、どの程度教育効果があったのかを、検証する仕組みや、評価尺度を考えることは非常に難しい問題です。また、どのように教育効果の結果を可視化するのかも、まだ不明な状態です。もちろん当大学だけで解決できる問題ではないので、他の私立大学とも相談しながら検討していきたいと考えています。その際には、行政評価、自治体の評価も同じような課題があるのではないかと思いますので、そのあたりの成果も見ながら、大学における情報基盤導入効果を考えていかなければならないと思います。
 最後に、SINETと情報基盤センターへの期待についてですが、「SINETには通信速度の高速化」とさらに高機能サービスを提供するということを期待しています。サービスに関しましては、アプリケーションレベルのサービスに関心があって、モデルケースや短期間の実証プロジェクトではなく、継続的な運用サポートや、利用を促進するサービスを期待しています。例えばテレビ会議システムで様々な大学の先生と会議を行うわけですが、必ず先生方に、TV会議システムを用意する必要があり、非常に高価なTV会議システムを借りなければならない等、運用には非常に難しい問題を抱えています。
 またセンサーネットも、統一した形のアプリケーションレイヤで、あるいは基盤レベルで提供いただければ、先生方が利用しやすい環境になるのではないかと思っています。
 SINETは1つのキャンパスからのみ、対外線として接続していますが、複数のキャンパスやオフィスを接続し、キャンパス間ネットワークとして安価に広帯域接続できるサービスとして利用したいと考えています。
 そのほか、24時間365日ということを目指して、学生に対してサービスの提供をしています。サービスが昼間に停止になりますと、授業や教育、研究にも支障が出ますので、安定したサービスを提供していただきたいという希望を持っています。
 次に、情報基盤センターへの期待ですが、本学の状況を調べたところ、情報基盤センターの利用者は、大学全体で数名の規模でした。PCクラスターを大学内で保有していますので、それを利用している方が多いと聞いています。本学の場合、980名の教員がおりますが、そのうち数名しか利用していないということは、やはり、もっと違った形でのサービスが必要ではないかと感じました。例えばスーパーコンピュータやグリッドシステムというような箱や基盤的ソフトウェアだけでなく、e-サイエンス全体を支援するようなサービス提供が求められているのではないかと思います。例えば生命科学、地球科学など、各分野の特色に応じたデータ管理機能や可視化機能、情報交換機能等のサービスを提供していただけるのであれば、この分野の研究者の利用促進が進み、本学の利用者も数名ではなくて、数十名になるのではないかと思って期待しています。
 また計算パワー提供以外のサービスについて、本学は人文社会系の教員が600名程度おりますので、その600名に対しての情報基盤サービスにも期待したいと思っています。例えば、人文社会系の教員はフィールドワークをしており、その際、スケッチやビデオ撮影、音声録音、メモを取る等々されています。その作業をサポートするようなインフラがあれば、人文社会系の教員に対して、非常に有用なサービスになっていくと思います。また理系教員についても、計算パワー以外の先ほど申し上げた、e-サイエンスのレベルのサービスも非常に大切ではないかと思います。以上で説明を終わります。

【坂内委員】
 情報基盤導入による教育効果の検証について伺います。私もぜひ教育効果、あるいは研究効果が見えるようにしていきたいと日々苦闘しているわけですが、先生が感じられることで、具体的な方法等がありましたら教えていただければと思います。

【川越先生】
 この課題については、研究的な要素ではなくて、いろいろな方々と相談しながら軸を決めていきたいと思っています。そのために例えばシンクタンクを交えることを計画しているのですけれども、1大学で解決できるものではないので、ぜひ大学間連携で具体化させていただきたいと思っています。

【山口委員】
 情報化推進機構の活動状況の、e-ラーニング推進について、ウェブコースツールの学生の使用度、また自学自習を中心とするウェブベースのe-ラーニングについて、これを用いた入学前教育が、どのくらいの効果を得ているのか教えていただければと思います。

【川越先生】
 まずウェブコースツールの現状ですが、1万3,000科目の全ての科目に対して、トップページを用意しています。1回アクセスしたという学生数は8割です。科目ごとにどの程度というのは、現在このツールはそのような統計データが出ないので何とも言えません。
 ちなみに、教員によってツールの使い方が違っており、一概に全部が同じような機能を使っているわけではありません。1割、2割の教員が非常に高度な使い方をされているとお考えいただければと思います。
 入学前教育については、推薦入学等、事前に入学が決まっている学生に対して、大学側から入学前の勉強ということで、英語や情報系の課題に取り組ませるようにしています。人数はあまり多くないので、100名程度の運用だと思います。

【有川主査】
 ウェブコースツールは、今のところ1万3,000科目で運用しているとの説明でしたが、全体の科目数としてはどのぐらいありますか。

【川越先生】
 1万3,000科目というのは、全ての科目だと考えていただければと思います。大学の科目を全て登録しています。それに対して受講登録も反映させています。

【伊井主査代理】
 e-ラーニングについては、今後さらに発展していくだろうと思いますが、利用するに当たり、授業内容をどのように作成していくのか、また、資料に記載している、英語、国語の入学前教育は、どのような内容であるのかをお教えいただければと思います。

【川越先生】
 最初のご質問は、どのようにe-ラーニングを実現しようとしているのかというお話だと思います。これに関しては、ビデオを使って配信するということを考えているわけではなく、例えば掲示板を使ったり、あるいは小テストをさせたり、ウェブを使って課題を提出させたり、e-ラーニングといっても、ツールとして位置づけています。
 また英語、国語というのは1つの例でございまして、ウェブを使って英語、日本語の文章理解を行っています。

【有川主査】
 情報化推進機構の活動状況でご紹介された、学生スタッフはいわゆるボランティアですか。TAのように大学側で給料が支給されるのですか。

【川越先生】
 ボランティアでは運用が難しいので、代金は払っています。学生にとっては、他のアルバイトよりもこのような仕事のほうが成長すると思っています。

2.金沢工業大学発表(金沢工業大学理事・情報処理サービスセンター所長 北村 彰)

【北村先生】
 金沢工業大学の構成についてですが、昨年は3学部15学科体制でしたが、今年からバイオ・化学部を新設し、4学部14学科の体制でスタートを切りました。本学で特殊なのは、大学院・心理科学研究科です。最近の風潮を踏まえ、以前からカウンセリングセンターを設けていたものですから、臨床心理士を輩出しようということで、工業大学の中に研究科を創設しており、一般の方の診察も行っていますので、第1種の指定大学院ということになっています。
 昨年の5月1日現在で、教員数396名、職員数231名で627名、学生数は金沢工業高等専門学校を併設していますので、高専が600名、学部が約7,000名、大学院が約400名ということで、8,000名程度です。
 情報処理サービスセンターですが、昭和56年竣工の建物の2階を使っています。
 また、センターの名称ですが、「情報処理」と「センター」の間に「サービス」をつけています。これは、我々の使命はあくまでも、学生や教員にサービスするためのセンターであるということからこのような名称としています。
 資料の平面図のとおり、計算機室を中心にいろいろな部屋を配置しています。面積は約1,100平米です。我々のセンターはパソコン室を持っておりません。パソコン室は全て講義棟、実習棟の方にありますので、センター内で、ユーザが使う設備は特殊機器室のみになります。
 センターの現行業務ですが、現在、平日は8時半から19時まで、土曜日は8時半から13時まで窓口を開いています。昨年までは21時、土曜日は17時まで開いていたのですが、職員の負担がかからないように短縮をいたしました。
 また、学生アパートへ光ファイバーを引き込むFTTHサービスを平成13年から開始しています。他には、e-ラーニング教材の開発、運用や視聴覚設備の運営管理、またコンピュータ利用技術の研究開発、コンピュータ教育の実施と学術研究の支援、資格取得講座の開講等を行っています。
 情報処理サービスセンターの沿革ですが、昭和40年開学で、41年に本学で新しいコンピュータを開発しています。43年に情報処理センターが開設、46年に全学生必修の電算機プログラミングを開講、48年には、東芝からIBMにメーンフレームを変更しています。その年に、学事関係と研究用のオンラインシステムを稼動しています。61年にBITNETを東京理科大学と接続させました。その後金沢大学や富山県立大学等を受け入れています。平成7年には新入生全員にラップトップパソコン所持を義務化しています。
 次に、センターの位置づけですが、本センターは理事会の直轄機関です。資料の組織図に幾つかのセンターがありますが、これを教育支援機構という名称で括っています。このセンター間の調整をするのが企画調整部です。実体のある機関ではなく、月に1回集まって、業務の進捗や問題点があれば、それについて打ち合わせをしています。
 情報処理サービスセンターの組織は、システム部とAV室があり、システム部が主にコンピュータ関係、AV室が視聴覚教材関係の業務を行っています。組織内では私だけが教員です。
 本年度の予算については、合計で9億3,000万円弱です。人件費、電気・水道料などは除いています。ハードウエアの保守料が突出しています。9億3,000万円という金額は本学の消費支出の7パーセント弱ですので、何とかもう少し効率的に使っていきたいと思っています。
 ネットワークの構成についてですが、SINETは2系統で利用しています。本学と東京の研究所関係の2カ所です。
 本学の情報環境ということで、図中に学生アパート約260棟(4,100室)とありますが、これが先ほど申し上げた学生アパートへの光ファイバーです。また、7,800名ほどの学生がラップトップパソコンを持っていますので、当然、操作のアドバイスカウンターも常設していますし、また、情報コンセントは約7,000個あります。
 サーバについては、それぞれUNIX、AIX、Linux、ウィンドウズで143台、アプライアンスサーバが42台ありますので、合計186台を運用しています。
 また、センターではPKI認証を行っていますので、ICカードの作成もセンターで行っており、ICカードは2つのICチップを積んで、学内の入館管理に使っています。これは平成9年に運用を開始し、現在160カ所の入館システムが稼動していますが、図書の自動貸出・返却用カードにも利用しています。さらに、ウェブシステムのアクセス制御用個人認証カードとしても平成14年から運用しています。
 学内にあるデスクトップパソコンですが、学生がいくら全員パソコンを持っているといっても、最低限必要な範囲でデスクトップパソコンの教室を用意しています。
 次に、ラップトップパソコンを貸与についてですが、現在1,900台くらいを貸し出しています。貸し出す時にはソフトのインストール、返ってきた時にはクリーンアップして元に戻すような作業も行っています。
 次に、センターが担当しているリテラシー教育ですが、平成7年に入学時のラップトップパソコンの所持を義務化しましたので、コンピュータ基礎演習とコンピュータ演習という科目をセンターで担当しています。1クラス100名弱のクラスで54コマです。講義の目的はスキルの平準化と、セットアップの統一性です。
 次に、情報基盤に関する課題ですが、管理運営上の課題として、パソコンの台数が増えてくると、ソフトウェアメンテナンスが大変だということで、今年はSoftGrid(仮想化アプリケーション)を導入したいと思っています。また、レガシーシステムへの対応として、メインフレームのデータとフロント側のデータベースのやりとりが大変なことから昨年コンサルタントを入れたのですが、なかなかうまくいかないことが、問題になっています。
 次に、学術情報基盤に対する期待ですが、SINETへの期待については、今後、回線の需要は益々高まっていくと思います。本学も遠隔授業等で回線の利用が増大していくと考えております。ネットワークは地方大学にとっては生命線であることから、適切な回線速度の提供と、運用の保障をお願いしたいと思います。
 情報基盤センターへの期待については、計算サービスの提供も重要ですが、他大学のシステム構築への積極的な技術支援を期待しています。そして、国や企業の研究所とのコラボレーションを強化したシステム・技術開発、また、各センターが独自の特色を発揮しつつ、センター間の連携を強化、補完した運用が望まれます。さらに、地域社会(地方公共団体、企業や中小規模の学校)を対象としたソフトウェアの機能をネットワーク経由で利用するSaaSの導入を期待したいと思います。
 また、本学では大規模なプログラムを作成・実行するユーザがどんどん減少し、目的・機能に特化した、CAE系のソフトを利用するケースが多くなっています。導入されるソフトというのは、ほとんどがアメリカ製です。その背景には、日本の教育システムの現状が影響しているのではないかと思われるので、自らがプログラムを作成しうる人材を育成するためのカリキュラム開発の研究をお願いできればと思っています。

【美濃委員】
 「情報基盤センターへの期待」について、「他大学のシステム構築に積極的な技術支援を期待」と記載されていますが、具体的には大学内のシステムの構築方法や連携方法について述べられているのでしょうか。

【北村先生】
 具体的な方法論ということではないのですが、各大学が同様のシステムを構築し、同様の業務を行っていることから、経費削減のためにも何かひな形のようなものがあって、小規模な大学への支援をしていただけたらありがたいと思っています。

【美濃委員】
 それは、例えば教務情報システムなら教務情報システムのひな形があって、それをどこかで作って、各大学が使えるようにしようという発想だと思いますが、私は単にシステムだけではなく、システム間の連携なども含めて考えないと、大学内のシステムづくりに対して、設計コストだけがますます上がっていくのではないかという懸念を持っています。このため、システムの構築と連携を併せて考えないといけないと思っているのですが、このような考えに繋がるものかどうか教えていただきたいと思います。

【北村先生】
 現在のシステムというのは、独立したものとなっていると思いますので、例えば情報基盤センターなどにおいては、それぞれが持つ特徴あるアプリケーションをサービスしながら、シームレスに繋がるようなシステムを作っていただければと思います。

【有川主査】
 非常に重要なご提言だろうと思います。例えば図書館のシステムは、標準的なものが幾つかありまして、全国的にあまり大きなトラブルもなく運用しているようです。その一方で、国立情報学研究所が構築している、目録データベースのように標準化されたものが存在していることも背景にあると思います。今後、サービスに関しましては安定期に入るだろうと思っておりますので、そういった時代にふさわしい、共同開発、運用についても考えていかなければならないと思います。
 それでは、外部委託についてお伺いします。先ほどの予算のデータを見ますと、業務委託料が2億円弱。業務を請け負っているのが22人程度ですと、1人当たり約900万円ぐらいかかっているという計算をしてよろしいのでしょうか。

【北村先生】
 この外部委託の中で、ネットワーク担当3名、システム開発担当4名、教材作成担当3名、パソコン教室運営管理者2名に関しては支払いをしています。業務委託料は基本的にこれらの方々についてですが、請け負って貰っている業務の全てを常駐の方々だけでは賄いきれておりませんので、業務量に応じて多くの非常駐の方に支援を貰っております。コンピュータ教育担当の4名は人事課で執行していまして、アドバイスカウンターの常駐6名に関しては支払っておりません。

【有川主査】
 自分のところで職員を抱え込むよりは、外部委託した方がいいということがよく言われて、立命館大学でも非常に先進的に取り入れていると思うのですけれども、一方では、自前で職員を抱えたほうが予算を軽減できるという意見もあり、非常に気になる点です。

【北村先生】
 職員を配置するとなると教育も必要であり、また、コンピュータ関連業務に携わる職員というのは、ローテーションが難しい部分がありますので、その点、業者に外部委託をしておけば、常に相応の人たちが働いてくれるという利点があります。
 引き続き、発表いただいた有識者の発表に言及した質疑及び意見交換が行われた。

【有川主査】
 立命館大学は、図書館と情報処理センターのような組織を、一元的に運営した最初の大学だと理解していますが、それが必ずしもうまくいかなかったということを以前伺いました。その辺のことを教えていただければと思います。

【川越先生】
 本学の職員は、いわゆる総合職的な職員であるため、いろいろな仕事を勉強して、ローテーションしながら成長していくという形で採用しています。情報系に関しても総合職的な職員で運営しており、例えば5年ないし10年ぐらい情報システム関係に携わっている方がいるわけですけれども、一般的には大学全体の仕事を経験していただくということになります。情報系に関しては、専門職的な方のほうが良いのかもしれませんが、大学の方針もあり専門職的な人材の採用が非常に難しくなっており、それを補うために、業務委託、あるいはそれを管理するような力を持つ総合職の方々を育成するという方針になっています。したがって3分の1ぐらいしか専任職員がいないという状況です。

【有川主査】
 専任職員はほぼ総合職ということですね。

【川越先生】
 はい、全体的にそういうことです。いつかの時点で、他のポジションに移るという前提で働いています。

【有川主査】
 学部の方が情報システム課で、ITの技術を身につけてお帰りになるということで、有効に機能しているというお話を、別な機会に伺ったのですが、そういったことが実際に行われているのでしょうか。

【川越先生】
 総合職ですので、いろいろな方が情報システム課に異動になって、また学部の事務室に戻るということは多々あります。

【美濃委員】
 教育の情報化について、全国共同利用の情報基盤センターがやるべきことがあるとすればどのようなことかについて何かお考えはありますか。

【川越先生】
 情報化による教育効果の検証はどこの大学でも必要なことだと思いますので、どのように測定し、可視化するかなどの検証方法について、共通化していただくことも必要かと思っています。

【米澤委員】
 大学の教務や事務、財務についての情報化というのは、どのように進めていますか。

【川越先生】
 立命館大学の場合には、専任職員の半数が事務システム関係に携わっています。しかも、予算的にも事務システムは自前でつくり上げているため、かなりのウエートが事務システムにあると思います。

【北村先生】
 金沢工業大学も、ほとんどのシステム開発が事務関係のものです。

【米澤委員】
 事務システムの情報化と教育の情報化を比較すると、どちらの方が進んでいると考えますか。e-ラーニングなどの教育の情報化のほうが遅れているのでしょうか。

【北村先生】
 これは少し特殊な事情なのかもしれませんけれども、金沢工業大学では、ものづくり、手づくりなど、技術者は手を動かさなければいけないという考え方があり、e-ラーニングにはあまり積極的には取り組んでいません。また、e-ラーニングの教材というのは、文系科目の方がつくりやすいという側面もあるかと思います。

【川越先生】
 事務システムについてですが、昨年、はしか騒ぎの時に、大学の開講状況について、システムにより学生に対してアナウンスをした経緯があります。また、最近では、戦略情報システム、つまり、学生がどのような形で入学し、どのように卒業したか、その相関関係を分析して、教科に反映させていくということも、事務システムの大切な機能であり、このような利用も増えています。

【山口委員】
 立命館情報化推進機構の活動として、研究分野のIT化に関することという項目がありますが、具体的にどういうものなのでしょうか。
 もう1つは、大学内における情報基盤の位置づけというのは、教育を重視しているとのことですが、今後、研究も推進していく方向にありますか。例えば、GIS(地理情報システム)を導入した研究などに関しては、立命館大学はかなり外部との交流も活発で、研究分野の情報基盤利用が盛んであるという印象を受けましたので、お伺いしたいと思います。

【川越先生】
 研究分野のIT化に関して、情報化推進機構がサポートできる範囲は限られております。研究を担当している部門として、リサーチオフィスという組織があり研究に関するサポート、あるいは支援を行っていますので、その組織と連携しながらIT化、具体的には様々な研究に関する情報を共有化するための仕組みを用意しています。

【有川主査】
 どちらの大学も教育に関して、かなり力点が置かれているという印象を受けました。7つの国立大学に設置されている情報基盤センターは、改組の際に学内の教育センターなども取り込んできたわけです。その部分については、各大学のための施設なのですけれども、本日のご発表からもわかりますように、教育面での全国共同利用のような機能が考えられるのではないかなということを感じました。
 次に資料2「科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 情報科学技術委員会 次世代スーパーコンピュータ作業部会の審議状況等」に基づき、平成20年4月22日に行われた作業部会第4回の審議状況等について事務局から報告がなされ、特段の質問等はなかった。
 次に参考資料1「平成18年度「学術情報基盤実態調査」について」に基づき、調査概要について、事務局から報告がなされ、特段の質問等はなかった。
 次に、事務局より、次回の開催は平成20年5月14日(水曜日)15時から17時を予定している旨説明があり、本日の作業部会を終了した。

─了─

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)