研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第14回) 議事要旨

1.日時

平成20年3月17日(月曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室(文部科学省東館3階)

3.出席者

委員

 有川主査、伊井主査代理、三宅委員、上島委員、潮田委員、小谷委員、後藤委員、土屋委員、美濃委員、米澤委員

文部科学省

 勝野情報課長、関根情報科学技術研究企画官、井深学術基盤整備室長、その他関係官
(学術調査官)
 逸村学術調査官

オブザーバー

(外部有識者)
 齋藤岩手大学理事・副学長、吉田岩手大学情報メディアセンター准教授、山岸鳥取大学総合メディア基盤センター長

4.議事要旨

【有川主査】
 本作業部会では、学術情報基盤の在り方についての議論を進めていく上で、比較的大規模な設備や計算機を持つ機関から意見を伺っておりましたが、前回の作業部会で、もう少し幅広く意見を伺うべきだということが了承されています。
 そこで本日は、各大学におけるコンピュータ及びネットワークを中心とした、学術情報基盤の現状及び今後の方向性、また、情報基盤センター及び学術情報ネットワークに対する期待等を含めた、我が国全体の学術情報基盤の在り方について、岩手大学と鳥取大学の情報基盤に関連する先生方にご意見を伺い、意見交換を行いたいと思います。
 その後、現在、審議が進められております次世代スーパーコンピュータ作業部会における審議状況等につきましても、事務局からご説明いただきたいと思います。資料1「国立大学関係者からの意見発表資料」に基づき、各大学におけるコンピュータ及びネットワークを中心とした学術情報基盤の現状、課題、今後の方向性及び、情報基盤センター、学術情報ネットワークに対する期待などを含めた、我が国全体の学術情報基盤の在り方について、岩手大学理事・副学長齋藤先生、同大学情報メディアセンター准教授吉田先生、及び鳥取大学総合メディア基盤センター長山岸先生から、意見発表が行われ、その後、質疑が行われた。岩手大学発表(岩手大学理事・副学長 齋藤 徳美 同大学情報メディアセンター准教授 吉田 等明)

【齋藤理事・副学長】
 本日は、小規模な大学が、今日の情報化社会の中、学術情報基盤についてどういう状態であるかと、実情を知っていただくという意味合いでお呼びいただいたと思っております。
 岩手大学でも、事務の最適化、情報セキュリティの構築、あるいは機関リポジトリの問題などに奮戦しています。しかし、専任が2人という体制で運営している状況ですので、なかなか整備が十分にできていないというのが実情です。

【吉田准教授】
 岩手大学は、4学部、22学科・課程、学部学生数5,313名、大学院数が5、大学院生数939名、教職員数801名という比較的小規模大学です。
 総合情報処理センターは、建物の面積は約663平方メートルの非常に小さいセンターです。情報メディアセンターの組織として、総合情報処理センターである情報処理部門、図書館部門、ミュージアム部門の3つからなっております。
 また、情報教育設備として、教育用PCが全学で573台あります。情報処理センターの端末室だけではなく各学部等に分散配置しています。
 ネットワーク・計算機システムについては、セキュリティポリシーは2008年3月に制定し、公開はまだしていません。ネットワーク保守は外注化、借り上げ通信回線は、TOPIC(東北学術研究インターネットコミュニティ)に参加し、東北大学との間を100Mbps(メガビットパーセカンド)で接続しております。そこからSINETに接続するという構成になっております。
 ネットワーク及び主要計算機システムの導入履歴ですが、ネットワークは普通の大学と同じような、ギガビットイーサネットワークのシステムが入っております。それから、計算機システムとしましては、高速計算サーバ、SGI Altix3700の64CPUというものを導入しています。
 次にネットワークの構成図についてですが、システムはギガビットイーサネットであり、総合情報処理センターを中心に、工学部と各学部がつながっている構成になっております。基幹の一番太いところが4Gbps(ギガビットパーセカンド)ほどになっています。
 続いて、岩手大学総合情報処理センターの使命ですが、岩手大学における高度化・多様化する情報処理の要求に応えること、また、地域と世界とのインターフェースとしての役割を担うべく、時間の経過とともに進化していくことです。使命の実現のために、日常業務として、研究・教育用情報システムの構築、運営管理、情報処理基礎教育の支援、遠隔教育の支援等の活動を行っています。
 次に研究面ですが、安全安心なICT環境の構築に関する研究、地域を豊かにする情報化のための研究等を地域とともに進めています。
 次に、活動状況について説明いたします。
 最初は学内に向けた活動状況ということで、セキュリティポリシー策定支援、迷惑メール対策等を行っておりますが、本日は、昨年行った大型計算ユーザを育てる取り組みをご紹介したいと思います。
 実は、平成18年度に計算サーバの平均稼働率が、32パーセントぐらいまで落ちて、計算サーバや大型計算は必要ないという意見が出ました。実際に学内の大型計算ユーザはCPUの単体性能が上がってきているパソコンのほうが、大型計算機よりも計算が速いのではないかと誤解していたようです。それから、ウィンドウズのようなGUI環境で使えないと思っていたり、使用するためにはすごくお金がかかるのではないか、日本語のマニュアルが無いのではないかといった誤解がありました。
 そのような誤解を解いて、あるいはマニュアルを自主的に作成しまして、環境を整えましたところ、平成19年度は稼働率が62.7パーセントにまで上昇し、ユーザ数も増加いたしました。また、我々のセンターでは、情報基盤センターと違って会話型も許しています。バッチ処理だけではなくて会話型の処理も行っていますので、70パーセント程度が稼働率としては理想になってきます。ですから、とりあえず目標は達成できたということになります。
 それから、安心安全な情報環境の構築に関する3つの研究についてご紹介したいと思います。
 (A)世界最高レベルの堅牢性、高速性を持つ暗号化装置の開発とセキュリティ保護装置の製品化、(B)世界に類を見ない未知ウイルス検出技術の開発でボット対策、そして、(C)ネット社会の脅威から子どもたちを守る取り組みです。
 まず、(A)ですが、これは我々が開発したもので、世界最高水準のメルセンヌツイスターをはるかに超える、優れた乱数を高速に発生させることが可能なシステムです。現在、ハードウェアにして数十Gbps(ギガビットパーセカンド)から数百Gbps(ギガビットパーセカンド)の暗号化を目指して開発を進めています。また、「J-crypt」という製品になりまして商用化にも成功しております。
 次に(B)の技術を用いたボットの検知・駆除について、ベイズ理論やハニーポット等の応用により、未知ウイルス検出手法を開発いたしました。ボットとは何かといいますと、攻撃者がリモートから情報を盗み出すために、攻撃対象のコンピュータを遠隔操作するためのウイルスです。ボットは、特定の企業や組織だけを狙いますので、非常に亜種が多く、現在3,000種類以上のボットが市販のウイルス対策ソフトで検出不可能と言われています。
 それから、(C)については、地域住民やサイバーポリスと連携した研究会活動を行っています。また、家庭向け啓蒙資料や、子ども向け啓蒙資料、日めくりカレンダーを、インターネットで無償公開しています。
 続いて、情報基盤に関する課題ですが、情報基盤の安全安心な運用が課題なのですけれども、非常に限られた人員しかおりません。そこへ情報セキュリティポリシーの運用や、支援が新たな仕事として入ってきまして、非常に困っているところです。
 また、他大学との連携の模索ということで、他大学と連携した遠隔講義等に利用する安定したネットワーク回線が必要なのですが、なかなかそれが得られない状況です。
 最後に、「我が国全体の学術基盤の在り方」への意見についてですが、岩手大学は伝統的に東北大学情報シナジーセンターと交流があり、スーパーコンピュータやネットワーク利用で交流しています。その経験から若干述べさせていただきます。
 1つはコンピュータ利用についてですが、情報基盤センターが何を行っているのか、センターを利用すると何ができるのかというのが、我々からは少し見えにくいと思います。そして、住み分けがなかなかうまくいかないということで、理想的に言えば、小規模な計算は学内の計算機を利用して、巨大計算になったら情報基盤センターの大型スーパーコンピュータを使わせていただくとか、スムーズな移行ができればいいと思います。また、現状では、情報系センターと情報基盤センターは、別々に集まって会議を行っていますが、相互に交流できればと思います。
 もう1つはコンピュータネットワークの利用面です。首都圏以外では最新情報の入手が非常に困難であり、スタッフが専門的知識を得るために、共同で研修会やセミナーの実施があると非常によいと思います。また、ネットワーク担当技術職員などの新人の教育が重要ですが、地方都市ではなかなか大変なので、できれば情報基盤センターで育てていただくなど、研修の機会をつくっていただきたいです。以上で発表を終わります。

【伊井主査代理】
 地域社会に対する取り組みですが、子ども向け啓蒙資料などの公開について、どういう状況にあるのでしょうか。

【吉田准教授】
 ダウンロードして使っている分は特に調べてはいませんが、使いましたという報告をしてくださる方はおります。これは岩手県向きにつくった資料なのですが、神奈川県でも1,200部ほど配付したという報告もいただきました。この資料は、実際に困ったことがあった場合にどういう窓口に行けばいいのかを、全部列挙してありますが、そこを神奈川県向けに全部直して使ったそうです。

【伊井主査代理】
 日めくりカレンダーというのは、具体的にどういうものなのでしょうか。

【吉田准教授】
 情報セキュリティというと、これをやっちゃいけない、あれをやっちゃいけないというように、説教になってしまうので、カレンダーのような形で、毎日、標語として覚えていただくものです。ネガティブなものだけだと覚えないので、「光と影の名言集」となっていますように、光のほうも必ず書いてあります。例えば、「パソコンは 居間でみんなで 使いましょう」などの標語になっています。ちょっとした解説も書いてあり、いろいろなバージョンがあり、例えばJavaScript版ですと、クリックするだけで毎日違ったカレンダーが出てくるようになっています。

【後藤委員】
 遠隔講義等に利用する安定したネットワーク回線が必要と、課題に書かれておりますが、これは、込み合っていないネットワークが必要と読めばよいのですか。

【吉田准教授】
 私どもは、10年ほど前から遠隔教育につきましては実験を重ねてきたのですけれども、大学で日常的に研究・教育に使っている回線を通すと、やはり時々バースト的なトラフィックといいますか、パケットが一気に流れたときに、テレビ会議のセッションが切れるときがあります。それを何とかしようと思ったのですが、どうしてもそれは避けられないので、やはり遠隔教育用の専用回線があったほうが安定してセッションを落とさないでできるということです。

【後藤委員】
 例えば、東北大学の先生方は、国立情報学研究所の学術情報ネットワーク運営・連携本部のメンバーでもいらっしゃいますし、SINETの設計あるいは、その利用についてどこに相談すればいいかという情報も持っていますので、ご相談いただいたらよいのではないかなと思います。そういうネットワークを設計した方は、現実にどれぐらいの需要があって、今どれぐらい困っていて、これからどういう見込みだということは十分知りたい情報なはずですので、そういったことに協力をするということで、設計する人と使う人の両方の共用ということで進めればいいかと思います。
 続いての質問ですが、ボットの検知・駆除については、どこかに発表されていらっしゃいますか。

【吉田准教授】
 発表はしております。特にボットに限って発表はしていないのですが、未知ウイルスの検出ということで発表はしております。

【土屋委員】
 資料の中にセンターの運営費として、利用者負担金と書いてあるのですが、総額だとどれぐらいになるのでしょうか。

【吉田准教授】
 大体30万円程度です。非常に校費等が減っていまして、使用料が多いとほとんど使われなくなってしまうので、ちょうどいい額をいろいろと探りました。

【土屋委員】
 学内に向けた活動で、大型計算ユーザを育てる取り組みについて、仕事時間としては、どのくらいの比率でしょうか。

【吉田准教授】
 パーセンテージにすれば15パーセント程度と思います。

【逸村学術調査官】
 ネットワーク担当技術職員は、今までのところ、どこから手配されてどのくらいの人数なのでしょうか。

【吉田准教授】
 これまで、新規採用した技術職員は2人いるのですが(内ネットワーク担当は1名)、2人とも採用した時点では全くの素人の状態で入ってきています。そのため工学部の情報システム工学科の授業を受けさせたり、私も実際に手をとって教えたりもしますけれども、それでも、ちゃんと独り立ちするには1年か2年くらいはかかります。外部の講習会にも出したりはするのですが、お金がかかるので非常に苦労しております。

【有川主査】
 「我が国全体の学術基盤の在り方」への意見ということで、例えばコンピュータ利用の住み分けが、なかなかうまくいかないということが書いてありますが、この考え方というのは、我が国のコンピュータ、あるいはネットワークのインフラを十分に活用する観点から、的を射た意見であると思います。
 また、情報技術系の職員研修の問題は、規模の大小とは関係なく、どの大学でも抱えている問題だと思います。岩手大学の場合、東北大学情報シナジーセンターからさまざまな教育プログラムや講習会などを、遠隔教育で受けられるようなことは考えられないのでしょうか。

【吉田准教授】
 遠隔教育もある程度は必要だと思いますけれども、ネットワーク技術は、座学で教えられてもなかなか覚えないので、実際に対面でコンピュータ操作をしてもらわないとなかなか覚えないと思います。

【齋藤理事・副学長】
 現在、学術情報基盤整備を行う中で、人が足りないという現実があります。岩手大学は技術職員が約百人おりまして、これまではかなり先生方に頼っていたのですが、7、8名の技術職員はもう先生につかないで、全学フォローの情報技術部という形で分離し、事務職員と技術職員が一緒に情報企画課という新しい課を立ち上げました。現状では1人でも研修に出ると業務に支障をきたすので、ある程度まとまった形の新人教育・研修を、4月から実施する予定にいたしております。

【土屋委員】
 資料の組織図のところで、情報メディアセンターの下に、情報処理部門、図書館部門とあるのですが、これは何をどのくらい一緒に行っているのでしょうか。

【吉田准教授】
 毎月、会議を行っております、お互いの活動報告をして、助け合える部分は助け合うようにしています。例えば図書館部門のほうで、「情報探索入門」という冊子を作成し、情報処理部門の方で全学必修の情報基礎教育として実施されるように、体制作りをしました。鳥取大学発表(鳥取大学総合メディア基盤センター長 山岸 正明)

【山岸センター長】
 鳥取大学は4学部から成り、地域学部4学科、医学部3学科、工学部8学科、農学部2学科、そして大学院です。特色があるのは、全国共同利用施設として乾燥地研究センターがあります。また、附属図書館と学内共同利用施設が8施設で、総合メディア基盤センターというのはこの中に入っております。
 地域学部と工学部、農学部は、鳥取市の湖山地区にあります。医学部はそこから100キロメートルほど離れた米子市にあります。
 学生職員数は、教員数が1,754名、学生・院生等の人数は、附属学校の児童生徒を入れて、7,294名であります。中規模の大学かと思っていますが、場合によると小規模な大学かもしれません。
 それから、鳥取大学における情報基盤の概要なのですが、大規模高速演算システム、IBM eServer Power5モデル578(243.2GFLOPS(ギガフロップス)、64GB(ギガバイト))を保有しております。学内での利用者は30~40名程度の利用状況です。
 また中規模演算システム4台、ドメイン管理サーバ4台、e-Learningシステム、教材コンテンツ作成システムが整備されています。
 さらに、教育支援システムとして学習用PCが、鳥取地区に86台、米子地区に67台あります。
 それ以外に、学生が自由に使えるサテライト端末PCは、附属図書館に配置しています。これは鳥取地区に32台、米子地区に11台あります。この32台と11台の中に、マルチリンガル、いわゆる留学生用のPCも一部用意しています。
 ネットワークについては、本学はノード校であり、SINETでは平成19年4月から1Gbps(ギガビットパーセカンド)で接続しています。それまでは100Mbps(メガビットパーセカンド)でした。
 学内には4つ、研究用、教育用、事務用、医療用のネットワークがあります。最後の医療用は、我々の総合メディア基盤センターの管轄ではなく、病院の医療情報部が管轄しております。
 そして、学内は補正予算で整備したギガイーサネットで構成しております。また、鳥取市の湖山地区と米子市のキャンパス間を鳥取県の鳥取情報ハイウェイのもと、1Gbps(ギガビットパーセカンド)で接続して、無料で使わせていただき、費用の面で非常に助かっております。
 情報管理の組織については、学長の下にIT担当の副学長、その下に総合メディア基盤センター長がおります。また、米子にサブセンターを設けています。
 総合メディア基盤センターは、国立大学法人化になりました平成16年4月に学内措置で設置されました。そして年度ごとに、技術職員が退職した後、センターのほうで技術職員を採用し、平成19年4月にやっと人員的には充足した形になっています。
 センターの業務については、本学の情報ネットワークに関すること、学術研究のための電子計算機システムの利用に関すること、情報処理教育のための電子計算機システムの利用に関すること、それから、情報処理システムの開発に関することです。その他、情報リテラシー教育を担当しています。
 予算は、当初予算が約1億6,000万円です。それから、計算機借料及び保守料等で約1億2,000万円です。また、光熱水料、故障対応等で1,500万円ほどかかっています。そして4年ほど前から、学内のウイルス対策ソフトを総合メディア基盤センターで一括購入し、それぞれの先生方のパソコンにインストールしております。
 それ以外に、この3年ほど、情報関連の戦略的経費5,000万円が、IT担当副学長のところに配分されており、その一部を総合メディア基盤センターで利用している状況です。
 人員については、教員6名で、技術職員5名、技術補佐員1名です。我々のセンターは技術職員が非常に若くて、実務経験を積ませるのにものすごく苦労しております。
 活動状況については、総合メディア基盤センターを中心にセキュリティポリシーの原案をつくりました。それに基づいて、教職員の研修を平成16年から行っております。また、スパムメールの状況分析と対策を行っております。
 特色ある活動は、鳥取県の情報政策課と緊密に連絡を取り、協力して県内の情報関係の研修会等を行ってきました。
 学術情報基盤に関する課題についてですが、先ほどお話ししましたように、補正予算で整備したギガイーサネット機器の更新経費、維持管理費に苦慮しております。毎年、経費を計上しながら更新しています。また、我々のところでは、コンピュータのインターネット接続への認証システム及び検疫システムが少し弱いので、対応を検討しているところです。さらに、大型高速計算機の維持が経費的に困難になっております。そして、他大学との遠隔講義・研究の増大によるSINET3のトラフィック増大の懸念があります。
 続きまして、情報基盤センターに対する期待ですが、スーパーコンピュータの利用支援をお願いしたい。鳥取大学では、次期リプレイスではもう大型計算機を保有できないため、京都大学とスーパーコンピュータの利用契約をさせていただくので、その利用支援を期待しています。
 それから、地方大学の技術職員の実務研修です。講義はいくらでもできますが、実際にルーターを設定するということはなかなかできない。そのため、現在は私どものセンターでは、費用がかかりますが、技術職員を企業での研修に出してきております。それでも、育てるのに2年ぐらいかかるため、情報基盤センターのほうで人事交流、実務研修をしていただけるとありがたいです。私どものセンターは、技術職員を平成19年11月から3カ月間、国立情報学研究所に長期研修ということで、出させていただきました。人事交流となると難しいところがあるかと思いますが、こういう長期研修の場を提供していただければと思います。
 また、鳥取大学は東京農工大学を中心とした連合大学院の遠隔講義システムの構築と、愛媛大学と結んでハイビジョン映像を使っての研究の準備を、平成20年末の稼動に向けて準備をしており、SINET3を用いた研究、あるいは講義、指導方法を、情報基盤センターのほうで研究していただいて、我々のほうに提供していただけるとありがたいです。
 続いて、学術情報ネットワーク(SINET)に対する期待ですが、先ほど話しましたように、鳥取大学ではSINET3を利用して他大学とハイビジョンでの遠隔講義や、研究を計画しているので、1Gbps(ギガビットパーセカンド)以上の回線速度のサービスを期待しているところです。
 また、昨年9月に岡山県と鳥取県が情報ハイウェイのネットワークを接続しました。岡山大学ではSINETの機器が何回かダウンしたようで、そのためダウンした時に、岡山大学から岡山県と鳥取県の情報ハイウェイ通して鳥取大学を通じてSINETに接続できるように冗長化したいという申し出がありましたので、SINETにおいてもネットワークの冗長化を推進していただきたいと思います。
 さらに、鳥取大学の乾燥地研究センターから、各国の乾燥地とハイビジョン映像での遠隔による研究や教育を行いたいという要望が出ているので、国際線の高速化も期待しています。
 また、SSL認証サービスの事業化や、帯域保証サービス、それに関連して遅延や、TCPとUDPの不整合の解消等を期待しています。
 最後に、IPv4からIPv6への移行が遅れているようなので、国立情報学研究所で研究を進めていただき、ぜひ地方大学がすぐに移行できるような形にしていただきたいと思っております。以上で発表を終わります。

【後藤委員】
 先ほどおっしゃった認証というのは、国立情報学研究所ネットワーク運営・連携本部の認証作業部会で進めているものですか。認証部会は、いわゆるUPKI、eduroamなど、各種国際的なものも含めて検討されていると思います。
 もう一つ、IPv6ですが、これは、移行するときに混乱がないようにという意味で承ればよろしいのでしょうか。実際のところは、全部一斉に切りかえるということは、おそらくできないだろうと思われます。IPv4というアドレスは42、3億ぐらいしかないので、国際的な割り振りをしているIANAのプールが、おそらく今の予測では2010年の春ぐらいになくなり、日本の中で割り振りをしているJPNICのプールも2010年か11年になくなるのではないかと思います。
 そうなったときに、SINETないし大学は困るかという話ですが、今、アドレスをお持ちの方は、それが止まるわけではないので、IPv4のまま使われれば、大きく困るということはないと思います。今後、どういう対策がとられるかは、まだはっきりしていませんが、SINETでも検討といったときに、SINETの骨格は比較的に新しい設計ですので、あまり困らないのではないかと思われます。大学において懸念やご提案があるという場合は、意見を集約していくような方向で対応する必要があると思います。

【有川主査】
 SINETに対する期待ということで、回線速度の格段の増強など、国立情報学研究所に頑張っていただいて、全国をしっかり高速ネットワークで覆っていただくことが、地方大学が国内、国外との連携を進める上で、非常に大事との指摘だと思います。
 それから、技術系職員等の教育、研修に関しまして、情報基盤センターへの期待を述べておりますが、少なくとも3カ月から半年くらいは研修を行わなければ、効果がでないという面もあると思います。そうした長期研修中、職員が1人、2人いなくなる中で、どうやってサービスを行うかという問題もでてきます。ですから、職員が長期研修に出ている時に、研修先機関の職員に来てもらうなど、さまざまな工夫が必要だろうと感じました。

【山岸センター長】
 今、重要なことをお話しいただいたのですが、技術職員がこちらから、3カ月、半年行くとしたら、情報基盤センターのほうからも、3カ月ほど来ていただいて、今度はそこに残っている技術職員の研修をしていただけると、地方大学としては非常にありがたいと思います。

【土屋委員】
 資料の予算項目に、情報関連整備の戦略的経費5,000万とありますが、実際に、どのような戦略的なプロジェクトに使われたか教えていただけますか。

【山岸センター長】
 鳥取大学では平成15年度から必携ノートPCといって、学生に講義室で使用するノートパソコンの購入を義務付けており、必携ノートPCが使える環境整備等に経費を用いました。

【逸村学術調査官】
 ソフトウェアのキャンパスサイトライセンスを取っていますか。

【山岸センター長】
 それは取らないです。

【美濃委員】
 遠隔講義について、京都大学でも一生懸命取り組んだのですが、結局、授業時間の違いや、学期の違いで、あまりうまくいかないと実感したのですが、そのあたり、何か相手側の大学と相談はされていますか。

【山岸センター長】
 連合大学院については、大学院ですので独自に時間調整をすると聞いております。学部については、他の大学との相談がなかなか進んでおりません。実際に学部の講義になると、ご指摘のことが起こってくるだろうと思います。そこをどうするかが、今後の課題です。

【土屋委員】
 SINETの機能向上とか、サービスの増大というのを期待するという話ですが、各大学、あるいは各大学グループの教育、研究の需要に基づくサービスが必要であれば、自分の費用で賄うべきであって、ただSINETに期待するというのは変ではないかという議論をされた場合には、どのように対処されますか。

【山岸センター長】
 地方大学では高速の回線が安く利用できるかというと、そうではありません。私がセンター長になった時、鳥取-米子間は4Mbps(メガビットパーセカンド)で、年間1,000万くらい払っていました。例えば、広島まで高速回線を整備するとしたら、とても大学としては払えない状況だと思います。

【土屋委員】
 SINET側でそういう環境が用意できなかったら、大学として計画した教育研究事業をしないのでしょうか。

【山岸センター長】
 その場合は、また別のことを模索しなければと思います。
 引き続き、発表いただいた有識者の発表に言及した質疑及び意見交換が行われた。

【小谷委員】
 両大学にお聞きしたいのですが、センターのコンピュータを使う場合は、当然登録して、使用料もある程度払わないといけないと思いますが、そのあたりの状況はいかがでしょうか。

【山岸センター長】
 鳥取大学では、大型高速計算機は無料で利用できます。以前は、1時間ごと、それから大型計算機の場合、CPU時間で計算をして、課金をしていましたが、無料にしたところ非常によく使ってくださいます。

【小谷委員】
 登録もしなくていいわけですか。

【山岸センター長】
 登録はします。それから、センターと附属図書館に端末がありますが、それを使うときには、必ずIDとパスワードが必要です。

【小谷委員】
 岩手大学はいかがですか。

【吉田准教授】
 180名が登録されており、そのうち学生が62名、職員、教員は118名です。

【小谷委員】
 使用料はどれぐらいですか。

【吉田准教授】
 使用料は30万円くらいですが、バッチ処理の中に無料のクラスを設けています。空いている時には無料のクラスをどんどん回せますが、混んでくると、そのクラスはプライオリティーが低いので待たされます。早く計算したい人は、お金を払って使ってくださいという仕組みになっております。

【土屋委員】
 鳥取大学の場合には、端末利用の認証が入るので、全員登録になっていると思うのですけれども、資料に書かれている高速計算機の実利用人数というのは、どのぐらいなのでしょうか。

【山岸センター長】
 工学部の先生がほとんどで、4名か5名くらいです。あとは、その下についている学生ですので、大体60名ぐらいが実際使っています。

【土屋委員】
 4名くらいの先生が使うのに、数千万円の計算機を全学で用意していることに対しては、学内で批判的な意見はありませんか。

【山岸センター長】
 次期のリプレイスでは、京都大学のスーパーコンピュータを使わせていただくということで、一部の人のために全学で用意しているという意見が、少し緩和されると考えています。ただ、大学としては大型高速計算機の利用を、学生にある程度教えないと、教育面で非常にマイナスではないかと私自身は思っています。一部の先生方だけではなく、実際はその下で何十人という学生が使っているわけですから、そういう目で見ていただき、教育にも積極的に活用してくださいということを言っております。今後、京都大学で使わせていただく時にも、教育にも活用できるようにお願いしますと言っております。

【潮田委員】
 スタッフィングに関してですが、北陸先端科学技術大学院大学の場合は、教授や准教授がいて、センターでは研究を進めるからアカデミックな人間が必要だという主張があり、情報科学研究センターを設置しています。小規模な大学の場合は、外部の大型汎用機をリモートで使うようになってくると、技術者だけでいいのではないかという気もするのですが、その方向は考えておられるのでしょうか。

【山岸センター長】
 情報教育という部分は、技術者だけではいけないと思います。センターとして教育面を充実させるため教員が必要です。
 ただ、教員がセンターに在籍すると、実際には業務に忙殺され、研究する時間がほとんどとれないので、我々のセンターでは、今年度、准教授までは業務を主に業績評価してもらえるようにしました。

【勝野情報課長】
 岩手大学にお伺いします。資料の「我が国全体の学術基盤の在り方への意見」で、情報基盤センターと情報系センターの交流が重要だということで、その住み分けがなかなかうまくいかないと指摘されていますが、具体的な話を聞かせていただきたいと思います。また、具体的に情報基盤センターに対して、どのような支援、あるいは活動を期待されているのか、伺いたいと思います。

【吉田准教授】
 昨年の例として、東北大学情報シナジーセンターと交流会を行いましたが、第1回ということで、まだ十分な内容ではなかったように思います。やはり情報基盤センターに行けば何ができるのか、何をしてもらえるのかという部分が、地方大学からすると見えづらいように思えます。「このようにスーパーコンピュータを使えば、もっと研究が発展しますよ」というアドバイスをしてもらわないと、どうしていいのかわからないのが実状です。

【有川主査】
 情報基盤センターのホームページを見ますと、昔に比べて、多くのきめ細かな講習会が企画されています。地方大学のセンターでは、そのような講習会を見つけて、参加するという利用の仕方もあるのではないでしょうか。情報基盤センターでは、周辺の大学にも十分な配慮をして、地域の協議会のような場で意見をくみ取って、反映させることも必要だと思います。

【潮田委員】
 今の問題で、情報基盤センターのほうが周囲にサービスを供給するためのインセンティブは何か組み込んであるのでしょうか。

【米澤委員】
 考えられるインセンティブは、今のところ、スーパーコンピュータのユーザになってもらうことがインセンティブではないかと思います。

【美濃委員】
 我々の情報基盤センターもスーパーコンピュータサービスの良さを近隣の大学に宣伝しており、サービスではなく業務として近隣の大学を助けていくという話をしています。スーパーコンピュータに関しては、比較的うまく話が進んでいますが、ネットワーク系や、その他の支援業務について話をすると、難しいところがあり、やはりこれも情報基盤センターの業務であるとして、地域貢献という1つの大きな柱を立てざるを得ないという流れを感じています。そういうことをインセンティブにして、センターの仕事を位置づけるのが、一つの手段ではないかと思っています。

【有川主査】
 情報基盤センターは、全国共同利用の趣旨で設置されておりますので、そういったことに関しては、十分に配慮しておられると思いますが、情報基盤センターの必要性をいろいろな機会にアピールし、理解を深めてもらうことも必要だと思います。

【土屋委員】
 一番末端にいるエンドユーザの立場で言わせていただくと、何かの計算をさせたいと思った時に、それが大規模な計算であった場合、ネットワーク等を通じて、大規模計算のできるセンターへと繋がることで、計算が行われ、その結果だけが貰えればよいと思っています。そういったことを一般ユーザは期待しているのですが、どうもそこの部分があまり議論にはならず、サービス提供サイドからの論理だけが、議論として出てきているような気がするので、そこに若干の危惧を感じています。

【有川主査】
 基本的には、ご発言のようなことができればいいのでしょうけれども、実際には上位のところに自動的に来るということには現時点ではなっていないと思います。ただ、物理的にはそういったことが可能にはなっていると思います。
 次に資料3「科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 情報科学技術委員会 次世代スーパーコンピュータ作業部会の審議状況等」に基づき、平成20年2月14日、3月12日に行われた第2回、3回の審議状況等について事務局から報告がなされ、特段の質問等はなかった。
 次に参考資料2「学術研究の推進体制に関するこれまでの審議経過の概要案」に基づき、研究環境基盤部会及び学術研究推進体制に関する作業部会合同会議の今後の予定等について報告がなされ、その後質疑応答が行われた。

【米澤委員】
 現在、全国共同利用の施設について、共同利用・共同研究拠点になりたい研究施設というのは、すべて申請をしなければいけないという方向なのでしょうか。

【井深学術基盤整備室長】
 はい。共同利用・共同研究拠点を設置しようという大学から、文部科学大臣に申請いただくような形を現在考えておりますので、希望がある場合は、申請していただくことになると思います。
 次に、事務局より、次回の開催は平成20年4月24日(木曜日)10時から12時を予定している旨説明があり、本日の作業部会を終了した。

―了―

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)