研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第10回) 議事要旨

1.日時

平成19年11月8日(木曜日) 15時~17時30分

2.場所

学術総合センター中会議場3、4(学術総合センター2階)

3.出席者

委員

有川主査、伊井主査代理、潮田委員、上島委員、小谷委員、後藤委員、坂内委員、美濃委員、米澤委員

文部科学省

 伊藤振興企画課長、勝野情報課長、井深学術基盤整備室長、その他関係官
(科学官)
 西尾科学官
(学術調査官)
 逸村学術調査官

オブザーバー

(外部有識者)
 青山慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授、渡辺東京工業大学学術国際情報センター長

4.議事要旨

【有川主査】
 本日は、ヒアリングの第2回目としまして、学術情報ネットワークの今後のあり方、情報基盤センターのあり方等について、関係機関の代表の方及び有識者の方からのご意見を伺い、意見交換を行いたいと考えております。
 また、これまでに行ってきました情報基盤センターへの訪問の概要についてご報告をいただき、前回の報告で出されました主な意見を整理してもらっておりますので、それも含め、全般的な意見交換を行いたいと思います。

(1)資料1「学術情報ネットワークの在り方等について」に基づき、学術情報ネットワークの現状と課題及び今後の整備の在り方等について、坂内委員、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構の青山先生から、意見発表が行われ、その後、質疑及び意見交換が行われた。
 学術情報ネットワークの現状と課題及び今後の整備の在り方(国立情報学研究所長 坂内正夫)

【坂内委員】
 現状と課題及び今後の整備のあり方ということでお話をさせていただきます。
 まず、現状と課題についてですが、現在、学術情報ネットワークとコンテンツ、この大学学術コミュニティー中心の提供というのがメインのミッションで仕事をしておりますが、本日は、このネットワークの部分にフォーカスしてお話をさせていただきます。
 この後、青山先生からJGN2や今後の展開というお話があると思いますが、私どもとJGN2との役割分担、協力関係において、SINETは、できるだけ先端のネットワーク、商用で動くもので学術コミュニティーへインフラを提供し、情報通信研究機構、JGN2、あるいはその先のJGN2plusは、さらにその次を目指すような先端のネットワーク研究そのものの役割を担ってのインフラ網等です。
 昨年、この前身で、大学学術コミュニティーの研究としては、CSI(サイバー・サイエンス・インフラストラクチャ)、最先端学術情報基盤というのが必要だという強いメッセージと、それと並行して、ネットワークの上に、認証やグリッドを展開し、ネットワーク上で研究コミュニティーが機関・分野を超えて研究できるインフラ、次世代の学術研究基盤ということで推進してまいりました。
 推進するにあたっての体制ですが、非常に大きなことを計画しつつ、限られた予算の中でできるだけ早く推進していくという考えで、多くの大学の先生と一緒の連携本部を設置し、CSI構築に向けた運営体制の整備を図っています。学術情報ネットワーク運営連携本部と、学術コンテンツ運営連携本部の2つの本部をあわせて、約80人の先生方に併任していただいて、一緒に企画、運営するという体制です。この体制は3年ほど前から整備しており、非常にうまく機能しているという認識です。
 ネットワークの現状ということで、まず、SINET3を4月から運用し、学術コミュニティーの情報のライフラインとして、700の研究機関、利用者数200万人以上の今や学術コミュニティーに不可欠な基盤になっています。
 これからのネット上での学術研究や教育の推進に不可欠な最先端の基盤の提供ということで、その利用が進んでいます。
 また、これからの学術研究は国際連携というのが大きなキーワードであり、アジアやアメリカ、ヨーロッパとの連携も進んでいます。SINET3は、最大40Gbps(ギガビットパーセカンド)で、商用では世界最高速であり、ディレイの減少、あるいは安全性の面からも、メッシュ状の構造と新たな機能を具備させたものにしています。
 世界最新の学術コミュニティーに非常に有効なサービスとして、ネットワークのスピードだけでなく、新たなサービスを提供するということで現在、設計を進めています。その中で、VPNという、特定の研究拠点間で閉域性を確保したセキュアな通信環境を実現するネットワークを専用線レベルのL1、イーサレベルのL2、インターネットレベルのL3の各階層で様々なVPN機能を提供しております。現在、約30の研究コミュニティーが、このVPN上で研究をアクティブに推進しています。
 その例として、L2-VPN接続により、次世代全国地震データ流通システムの構築という全国の観測機関との共同事業が展開されており、多くの大学や気象庁が、観測データのみならず、既存のデータベースも結合し、お互いにデータを活用しながら、研究や、場合によっては緊急通報網として防災にも活用されております。これも新たなSINET3の機能を待ち望んで使っていただいている取組です。
 また、L3-VPN接続を利用し、核融合研を中心に多くの大学で双方型共同研究という新しい学術研究が、このネットワークを利用し行われています。
 また、天文分野では、L1-VPN接続により、オンデマンドで専用線帯域を確保して、観測網を構築し研究が進められています。
 このように、現状として、先端分野を含め、多くのユーザーに利用されていますが、民間のシンクタンクにニーズ調査を依頼し、次の課題を掘り出して、サービスをどう展開するか、その一助として調査を実施しております。評価の概要としましては、おおむね非常によいということですけれども、非ノード校からの技術的なサポートやメール等のホスティングニーズへの対応等に関する要望というのも結構あることが分かりました。
 課題として、CSI推進のための基盤構築、先端的なニーズに対応して、サービスを継続的に行っていく必要があると考えています。
 また、新たなネットワーク整備のニーズ、例えば、六ヶ所村に、ITER(イーター)のためのネットワーク整備の要望、あるいは新たな研究プロジェクトのためのネットワーク整備の要望など、これからの研究プロジェクトは先端の情報基盤なしではできないので、要望はあるのですが、国立情報学研究所も予算の問題もあり、どのように対応していくか、あるいは、産業界との連携、これにどう対応するかということも課題の一つです。
 さらに、情報基盤センターとの連携強化、国際活動の戦略的推進、ネットワーク運用連携の推進、ネットワーク利用のサポート体制の整備など様々な課題があります。
 これに対応して、今後の整備のあり方として、民間でできるものは民間で行うべきなど様々なご意見はあるところですが、国立情報学研究所が考えていることは、学術コミュニティーに必要であり、かつ、e-サイエンスなどと言われている欧米で推進しているような最先端機能を実現しながら、研究、学術、あるいは学術研究、教育をアクティベートしていくというミッションを実現していくためには、研究と事業の両輪体制が不可欠であると考えています。
 また、限られた予算の中で、開かれた運営体制のもと、先端的基盤と情報ライフラインを統合し、全国的に整備することは、個々の大学や通信事業者ではできないので、学術情報ネットワークの整備は、大学共同利用機関としての国立情報学研究所のミッションだと考えています。
 現在、ネットワークの回線経費等については、ネットワークのベンダーやいろいろな方に協力をいただいており、大幅なコストダウンを実現しています。これを各機関が、個別に契約すると、場合によっては6倍、8倍のコストがかかるということであり、国立情報学研究所の現体制、あるいはネットワーク連携本部というものが機能していることがおわかりいただけると思います。
 次に、当面の整備を基本的にどうしていくかということですが、現体制を強化して、情報ライフラインの整備、サイバー・サイエンス・インフラの強力な展開に向けて推進する必要があると考えています。また、アンケートを踏まえ、SINET利用推進室をこの10月からスタートさせていますが、ユーザーの運用に関する様々な質問や、きめ細かい運用サービスというものを加速する必要があるため、出来る範囲で支援を始めています。さらに、新たなニーズ等に対応し、学術ネットワークを発展させるためには、経費負担の在り方が課題であり、現在、国立情報学研究所では2段階のモデルを考えています。新たな接続ニーズについては、接続機関に応分の負担を得つつ整備を進めることが現実的であり、次世代スーパーコンピュータやITER(イーター)とは、そういう形で具体的に話を進めています。
 さらに、産業界ともそういうモデルで、コンテンツも有川先生をはじめ、様々な方のご指導をいただきながら、大学の機関リポジトリというものを行っていますが、同じように、大学とマッチングでという意見も出てきています。
 それから、もう1つは、現下の財政状況から考えると、必ずしも簡単ではないのですが、我が国が世界に伍して研究開発を進め、人材を育成していくためには、新学術システム、あるいはe-サイエンス、e-エンジニアリングということが不可欠であり、そういったものへの国としての投資の拡大というものを、我々の出来る範囲の中でエビデンスを見せつつ、取り組んでいかなければいけないと思っています。
 そのようなことから、サイバー・サイエンス・インフラが実現する学術連携の姿ですが、様々な研究リソースやスパコンをそれぞれの大学が持ちながら、それらをネットワークで結び、コストとクオリティーの両立を図っていくということ、それをもって国際連携、業界との連携を深める図式がこの情報基盤のミッションとして非常に大事だと思っています。
 最後に、国立情報学研究所が実作業を行っていますが、そのようなことはどこかにアウトソーシングすればいいのではないかというご意見も、効率化のサイドからは出るのですが、先程申し上げたように、研究とサービス展開というものは不可分なものだと思っています。SINET3でも研究成果を反映しながら最先端の学術情報ネットワークの構築に生かされているということです。
 学術情報ネットワークを運営している立場から、学術情報基盤の今後の在り方(報告)に従ってここまで展開をしてきております。以上で終わります。

【有川主査】
 ありがとうございました。
 ただいまの坂内所長のお話に対する質問から始めまして、その後で15分ほどの一般的な質疑応答の時間を取りたいと思います。

【逸村学術調査官】
 基本的な話ですけれども、配付資料3ページ目、画面で言うと5枚目のところで、大学における利用状況という四角で囲まれた部分がありますが、前回、国立大学の99パーセント、残りの1パーセントは奈良先端という話がございましたが、ほかの公立大学と私立大学でこのSINETに入っていないというのはどういうところ、あるいはどういう理由でしょうか。

【坂内委員】
 私立大学でも、短大などでは、例えば、ヤフーBBなどを選択されるところが、数の上では多く出ています。これはアメリカでも顕著に出ているものでして、アメリカも研究を推進する、いわゆるリサーチ大学は、独自のインターネットツール等のネットワークを持っているのですが、いわゆるエデュケーション大学などでは、ネットワークファンクションでやるというところもあります。
 この数値というのは、国立情報学研究所のサービスの1つの指標だと思っていまして、やはりコスト的な部分も大事ですし、主な私立大学は入っていただいています。

【逸村学術調査官】
 評価的にはこれで十分であると、そういう意味ですか。

【坂内委員】
 理想として、学術コミュニティーは、SINET3をということですが、国立情報学研究所に利用推進室というのを用意したのは、最近はセキュリティの問題等、個々の大学では対応できないようなネットワークの問題も増えてきて、それを提供しようとしているのですけれども、民間の電話1本で駆けつけるというサービスを選択される機関、あるいは当初からあまりネットワークは要らないという機関も結構ありますので、接続率の目標は100パーセントになることですけれども、現実問題としては、数年前からはこの数値はそれほど上がっていません。ただし、数年前までは下がり気味の傾向でしたが、現在は、持ち返してきています。

【逸村学術調査官】
 どうもありがとうございました。

【米澤委員】
 今のことに関係してですが、接続してほしいと言っているけど、何かの理由でつなげられないということはありますか。

【坂内委員】
 それはありません。ご要望がある限り接続します。ただし、非ノード校は、ノード校までの回線は自己負担しなければならないということですから、専用線を引いて接続するよりも、ヤフーBBや、フレッツのほうが良い場合もあり、SINETサービスもそういうことでBフレッツ等をアクセプトできるようにはしています。
 一方で、コンテンツについては、学術コミュニティーが一緒になって、必要なサービスをどれだけクオリティー高く提供できるかが、国立情報学研究所の指標の1つであり、私は二、三年前から強く意識して、サービスアップはなかなかできませんが、出来る限りのことはさせていただいているということです。

【西尾科学官】
 坂内先生がNIIの所長としていろいろとご尽力なされて、日本のサイエンスネットワークが現在のような形で運営されているのですが、大まかな話で結構ですけれども、今先生が考えられる質と規模の学術ネットワークを維持していこうとしたときに、毎年、概ねどの位の予算が要るのかというのは、わかるのでしょうか。

【坂内委員】
 あまり理想的なことを言ってもしようがないので、ネットワークのグレードアップは、利用率も50パーセントを超えると瞬時に100パーセントを超えることがあって、欠損が起こることがないよう、そこで増速するなど、ルールを持ってやらせていただいています。数年前まではネットワークのコストは大幅に下がっていたのですが、最近は、YouTubeなど、映像がジェネラルに発するようになって下がらなくなってきています。大学コミュニティが一丸になって、それでコストの交渉をする必要があるということです。
 それから同時に、同じコストを下げるということだけではなくて、例えば認証や、グリッドなどのベンダーが必要な課題を提起して、それから先生方のアイデアも提起すると。これは昔IBMが、なぜ大学に何分の一かのコストで提供するかということと似ているのですけれども、そこを僕らも努力をしてということで、連携本部はそういう意味では、非常に多くの先生、私どもだけではなくて、多くの大学の先生の知恵が反映して、クオリティーなものになっています。最近、ここで関わったネットワークやサーバーを提供していただいている会社の副社長など何人かお会いしたのですが、こういう挑戦的なことをこうやって一緒にやれるということは、非常に会社にとってもありがたいし、そういう意味での社会貢献というのを強く意識させてもらっているということを聞いています。

【西尾科学官】
 私は、日本の学術の維持発展をするために、毎年、学術ネットワークに関してこの位の予算は絶対要りますよという数値が出てきてもいいのではないかと思いますが。

【坂内委員】
 理想的なものは要求させていただいていますけど、現実となりますと、そこまで行くと周りの空気が読めないとか言われるものですから、現実的な数字でという状態です。

【西尾科学官】
 その見積もりの数値に対する予算的な措置がなされるかどうかは別として、必要な投資額に関する毎年度のモデルを策定して、その必要額をいかなる方法で実現していくかというグランドプランをきっちりつくっていくが重要であると考えます。また、そのようなプランをもって財務省に訴えていくことが大事ではないかと思います。

【坂内委員】
 おっしゃるとおりで、何かやりたいから金くれというのは通らない時代ですので、先ほどの連携や、最大限の交渉をしてクオリティーの高いものをということで、ここ数年はそれでやってきました。
 それから次には、やはり新たに接続するものについては、プロジェクトの中に、研究に必要なネットワークの経費を予め考慮していただく必要があります。それからコンテンツについてもアウトリーチを当初から入れていただく。こういうことが対ジェネラルに必要で、ネットワークは国立情報学研究所に頼めと言われる方はまだいるのですけれども、財政状況も厳しいということで、考え方としては、ネットワークのユーザー側にも努力いただくことで全体のスキルアップにつなげていきたということです。
 したがって、スパコンなども産業界に使っていただく際、ネットワークをどういう形で産業界に使っていただくかを考えるにあたって、応分の負担を求めることも大事だと思っています。

【西尾科学官】
 そういうことのコスト的なものがうまく算出できると、例えば、科学技術振興調整費とか科学研究費補助金の中に、間接経費とは別に情報インフラにかかわる必要経費をある程度上乗せしてとか、そういう議論が具体的にできていくのかなと思いましたもので。

【坂内委員】
 先生が言われるようなスキームにしていただくということは、非常に重要かと思うのですが、それで何をやるかということを提案しないといけない、自動的に何パーセントか転がり込んでくるというのも理解できるのかなという感じもしていますが、やっぱりいろいろな大学等のご意見では、ちょっとその前にやることがあるだろうということも聞いています。

【有川主査】
 経費負担モデルということで、新たな接続に対する1つの提案がなされておりますが、先ほど西尾先生からもございましたように、これ以外にも、実際に導入するかどうかは別として、いろいろ検討してみる必要はあるのではないでしょうか。
 それから間接経費という話がありましたが、学術情報基盤の整備ということからしますと、ネットワークや学術情報の発信に関しても、何か新しいモデルが考えられるのではないかと思います。これについてもおいおいこの作業部会等で議論していけばと思います。

【勝野情報課長】
 ただ今、将来の投資の話が出ましたので、我々行政にも非常にかかわる話だと思いますので、少し補足をさせていただきたいと思います。
 8月に優先的にご審議いただきたいということで、この学術情報ネットワークの整備のあり方についてお願いしたわけですけれども、そのときの私どもの問題意識としましても、1つやはり、今の大きな流れとして、ネットワークの高速化、あるいはサービスの拡充、それから強化ということが続いていくという中で、今後の整備についてどういう戦略性を持っていくのかということを、やはりある程度方向づけをしていく必要があるんだろうと。それとのかかわりにおいて、では、その整備にかかわる費用負担を、これから基本的なところでどういうふうに考えていくべきなのかというところを、まずきちんと押さえていく必要があるのだろうという問題意識からお願いしたわけです。
 そういう観点から、きょう坂内先生のほうからも、費用負担について1つのご提案があったと理解しておりますけれども、今、主査のほうからもお話がありましたように、これも1つの素材としながら、幅広い観点からこの費用負担の問題についてはお考えいただく必要があるのではないかと考えております。
 特に私ども、財政当局に対して予算要求等をする立場から申し上げると、最近は、非常に、今まで利用者負担が求められなかったような分野まで利用者負担を求められるということが1つありますし、もう一つは、特に研究開発の分野につきましては、その成果がどれだけ上がったのかというところを非常に問われるということがあるわけです。そういった中で、やはり将来にわたって、今の利用負担、費用負担のあり方が、将来にわたって永続的に続くということはなかなか現実に考えづらいのではないかと我々としては判断しているわけでございます。
 きょうの資料の中でも、いろんな新サービス、あるいはネットワークの構築ですとか、国際戦略ということで、これからの将来構想についてお示しいただいたわけですが、財政状況が厳しい中でこれもやる、あれもやる、すべてをやるということはなかなか難しいと思っています。やるのであれば、どういう戦略性を持たせて優先順位をつけるのか、そのために今までやっていた部分をどうやってリストラクションしていくのかというところを、やはりきちんとセットで考えていく必要があるのではないかと考えております。
 我々としても、情報インフラということで、重要性についてはもちろん共通認識を持っているわけでございますけれども、世の中的には、やはりインフライコール無料だという、そういう理屈というのは多分これから成り立たないんだろうと考えているわけでして、そういう観点も含めて、どういった戦略性を持たせる、そのためにどういう負担のあり方を考えるのかというところを、もう少し幅広い観点からぜひご審議をいただければと考えております。

【有川主査】
 ありがとうございました。この議論をこの場で始めますと、それだけで時間がなくなってしまいますので、この作業部会を通じて、そうしたことを意識しながら議論することにいたしましょう。
 それから、先ほど申し上げましたのは、結果的には負担することになる、「応分の負担」または「幅広い負担」ということになるのでしょうが、学術研究のためにネットワークを使い、その成果を発表するということに関して、そのための費用がどこからも措置されないというのはおかしいのではないかということです。西尾先生のお話もそういう意味ではないかと思います。
 もう少し具体的に言いますと、例えば、科研費の数パーセント分はそうしたネットワーク・インフラとか、研究成果をパブリッシュし流通させるために、例えば、機関リポジトリ等の整備に使うということです。このようなことができれば、健全に新しい時代を切り開いていくことができるだろうと思います。それから、インフラについての考え方には二通りあります。高速道路の例ですと、通行料を無料にして、そこを走るトラックなどが収益をあげて間接的に経費を負担するという考え方もあるし、基本中の基本だからちゃんと直接料金を頂くという考え方もあります。現在のSINETは前者だろうと思いますが、今後、後者のような方向も考えられるということでしょうか。
 こうした方法だけではなく、さっき申し上げましたように、この議論を通じて、どうしたら永続性のある体系ができるかということも視野に入れて議論をして欲しいというご指摘だと理解したいと思います。ありがとうございました。

【後藤委員】
 大所高所の議論になりました。私は坂内先生のお話に関連して少し細かいことを申し上げます。先ほど話題になりました私立大学の件ですが、坂内先生のご説明にもありましたように、やはり費用負担の問題というのがあります。例えば早稲田大学も、SINETに入れていただいたのは比較的新しいです。ただしSINETは大学だけではなくて、旧科学技術庁時代のIMnetという、国立研究所をカバーしていたネットワークをSINETのほうに吸収合併の形で引き取っていただきました。現在はSINETが大学以外の研究機関もカバーしていますから、まさに坂内先生がおっしゃったサイバー・サイエンスというもののインフラストラクチャーになっているのではないかなと。
 それから、坂内先生が言われたアウトソースの件です。確かに一番エンドのところ、つまりアクセス回線をBフレッツで実現すれば100メガの帯域が使えます。これはいろんな実例がありまして、単に接続するだけならばそれで良いと。もし大学でネットワークの管理をする人がいないような場合には、そうせざるを得ないのではないかと思います。一つのエピソードを申し上げます。私のところにある時、ドイツの人からメールが来て、うちのだれそれが日本の某大学に行っているのだけれども、テレビ会議ができないといって困っていると。テレビ会議の通信のためには、特定のポートを通過するように設定しなければなりません。これは慣れた管理者にとっては15分ぐらいやればいいんですが、運用管理を丸投げにしている場合は、それをやるのにも設定変更料金が数千円とか、VPNを設定するのに、坂内先生がおっしゃったように民間のプロバイダーで実施すると、VPNを1本張るごとに両端で追加料金を払わなきゃいけない。そういう話ですから、これはかなり研究環境が劣化してしまうのではないかなと。
 国別に見ても、アメリカで1995年にNSFNETを停止したときに、一度、民間活力で推進という方針を出したにもかかわらず、96年には、坂内先生がおっしゃったインターネット2という形で、100大学ぐらいからスタートする計画で巻き直しております。これまで私が見るところ、国別に見て学術ネットの基幹部分を全く民間にゆだねているという例は、おそらくマレーシアぐらいではないかなと思います。
 その結果、マレーシアでは、私などの分野では非常に停滞していると思います。理論的な論文はありますけれども、実践がなかなか伴わない。その周りの国を見ますと、シンガポールは学術ネットがあり、タイには2つあり、ベトナムにもインドネシアにもあります。カンボジア、ラオス、ミャンマーあたりは、国全体の力があまりありませんので、全国的な学術研究ネットワークの実現まで到達しておりませんが、韓国、中国には大きいネットワークがそれぞれ2つある。台湾も強力な2グループある。そういう状況ですから、全体のところを維持するという意義は、先ほど西尾先生が言われたように相当の議論が必要かと思いますけれども、全体をアウトソースで任せてしまうという戦略は、今のところ世界的に見ても、そのような例はごくごくまれなのではないかと思います。これは、坂内先生が説明された事項の補強材料ということで申し上げました。
 情報通信ネットワークの進展とそれに向けた研究開発(慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授 青山友紀)

【青山教授】
 私は、総務省が予算をとって運営しているJGN2の運営をしている幹事会の代表幹事ということでございますけれども、本日は、現在、情報通信ネットワークの研究でどんなことが問題になっているのか、それを実施するに当たって、ネットワークのテストベッドというのがいかに重要なのかということを中心にお話ししたいと思います。
 この辺はもうここにおられる皆さんは情報の専門家ですので、当然よく理解されていると思うのですが、一般の人々が世界の情報をワンクリックで容易に獲得すること、それから一般市民が世界に向けて容易に情報発信ができるようになったのは、人類歴史上、初めて実現されたことであります。これはどういうことを意味するかというと、いわゆる情報化社会が目指してきたことが今日ほとんど実現されるようになったわけです。すなわち、情報化社会が今頂点を迎えつつあるということです。そして、それはすなわち次の社会、情報化社会の次にくる脱情報化社会の入り口だろうと思います。
 それで今、お手元にお配りした資料があると思いますが、通信学会の会誌1,000号記念特集号に私が書いた脱情報化社会の曙という論説がありますので、後ほどお時間があればご覧いただければと思います。
 約40年前の1969年に林雄二郎が、工業化社会の次に情報化社会というものが到来することを喝破しましたが、まさにそれが実現され、今その頂点を迎えようとしているわけです。つまり情報そのものがコモディティ化しつつあるということだと思うのです。工業化社会では、工業製品、自動車や家電など、誰もが買えるコモディティになったわけですけれども、情報化社会の中でも、情報そのものがコモディティ化してきているわけです。これは、すなわち情報化社会の頂点を迎え、そろそろ次のアフター情報化社会、脱情報化社会の入り口にきているだろうというように考えられます。
 そういう社会にあって、情報社会でも重要であったネットワークというのがますます重要になると考えられます。現在、通信ネットワークというのは、電話網、携帯網、インターネットと3種類を我々は使いわけているわけですけれども、来年ぐらいから、次世代ネットワーク、NGNと呼ばれているものがスタートする予定になっております。このNGNというのは、従来の電話網、携帯網というものがだんだんレガシーになってきており、それを更改するためにインターネットと同じIPプロトコルを使って、電話網、携帯網を巻き取っていこうというものです。そのために現在通信業界は血眼になってNGNの開発を進めているわけでして、研究というよりは、デプロイメント、商用化の段階にあります。
 それに対して、新世代ネットワークというものの研究が始まっておりまして、まさに一昨日、これを推進する新世代ネットワーク推進フォーラムというものが発足しまして、その設立総会が行われ、総務省大臣が出席し、今後の展望について挨拶をされました。その新世代ネットワークというのは、2020年ごろから世の中に出てくるだろうと想定され、いずれはインターネット、及びこれから出て行こうとしているNGNを巻き取るつもりであり、いずれは新世代ネットワークに収れんしていくだろうということを想定してこれから研究開発をしていくということです。
 NGNというのは、いわゆる研究開発ではありませんので、IPパケット転送のネットワークで従来の電話や携帯電話のサービスを提供しようというものであります。標準化も進んでいます。電話網が古くなっており新しく更新しなくてはいけないのですが、新しくするのであれば、現在のインターネットで使われている経済的で高機能なIPシステムでやったほうがいいわけです。そしてそのネットワークで電話だけではなくて、映像、データサービス、それから携帯電話サービスも一緒に提供しようということです。
 インターネットはどんどん発展していますけれども、セキュリティの問題などを抱えているので、このNGNで解決しようと。また、電話サービスが持っている社会インフラとしての安全性、信頼性、こういうものはNGNになってもきちんと対応していきましょうということです。
 それで、新世代、すなわちNew Generation Networkでございますが、先ほど申したようにこれを推進するフォーラムができたばかりなのですけれども、頂点を迎えた高度情報化社会のインフラとしての役割を果たすものであり、かつ情報化社会のその次の脱情報化社会の幕開けを切り開くものであって、ネットワークのアーキテクチャというのは、現在のインターネットや、これから入ってくるNGNなどを改良していくのではなくて、白紙の状態から、英語ではクリーンスレートで、要するに一旦IPを忘れて白紙の状態から理想的なものを考えようということです。
 2015年ぐらいから実用プロトタイプシステムの実験が始まって、それ以前にいろんな研究開発が行われるわけですけれども、2020年ごろから導入が始まるのではないかということを想定しています。
 ご承知のとおり、米国のICT産業というのは現在世界を席巻しているわけでありますが、それはどうしてかというと、1969年ですから今からもう40年近く昔に、新しいパラダイムのネットワーク研究へ、まずDARPAが、そしてNSFが、20年、30年にわたって研究費を出し続けて学術ネットワークを提供し、それがARPANET、NSFNET、そして自然に商用インターネットに変わっていったということです。その新しいネットワークを用いて多くの研究者が研究に参画し、インターネット技術や、ウェブブラウザ、あるいは検索技術、こういうものの研究開発を行って、それが具体的なサービスになっていったということです。
 その中から、シスコや、ヤフー、グーグル、アマゾンなどのベンチャー企業が発足して、そういう産業はそれ以前にはなかったわけですけど、ARPANET、NSFNET、あるいは商用インターネットの中から生まれてきたわけです。そして新しいインターネット産業が勃興し、それがマーケットを支配する優良企業に成長した。その分野では、現在米国企業のひとり勝ちです。インターネットの標準化も、インターネットコミュニティー自身でやっていっております。こういうことを考えると、今こそ新世代、インターネットに変わる次の新世代ネットワーク全体を包含する国家的プロジェクトが絶対必要であると考えます。
 既に米国は、NSFを中心に、GENIプログラム、FINDプログラムという新世代ネットワークの研究開発プロジェクトを始めておりまして、その予算額も書いておりますけれども、かなりの研究予算を投じて、クリーンスレートで、インターネットの改良じゃない、全く新しいネットワークのアーキテクチャや、ネットワーク技術の研究開発にファンディングし、GENIプロジェクトというのは、実証実験のためのテストベッドですが、そういうものを構築していこうとしております。
 ヨーロッパも、EUのフレームワークプログラムセブンという研究助成が今年から始まりましたけれども、その中にこの新世代ネットワークに関連するプロジェクトが幾つか含まれております。
 それでは日本はどうするのか。我々はまたアメリカに一方的にやられるのかと。それは我々としては絶対避けるべきであって、幸い日本は技術的に強いところがあります。たとえばフォトニクネットワーク、ワイヤレスネットワーク、ユビキタスネットワーク、デジタル家電、こういうところが非常に強いわけでありまして、そういう強いシーズを生かすということと、それから日本の国民というのは一番高度なユーザーで、高度な携帯電話を使いこなし、またブログの発信数は日本語が英語を上回っているそうですが、非常に高度なユーザーです。そのようなユーザーを活用して、新しいサービスを実現していくことが可能であります。
 それから、オールジャパン型の研究開発を推進する必要があります。ばらばらじゃなくて、日本全体でまとまっていこうということです。この日本の強みに関して、お手元に配った資料にありますように、あの『ネーチャー』が日本の光技術は世界で最高だというふうに認めたということを随想で書きましたけれども、後ほどごらんいただければと思います。それで、オールジャパンでやっていこうというので、新世代ネットワーク推進フォーラムというのが一昨日発足したということです。会長は齊藤東大名誉教授で、副会長の一人に私がなっています。それから、キャリアやメーカーはNGNの商用化で手一杯であり、研究の余裕がない。したがって、情報通信研究機構がそういう新世代の研究開発を先導し、産学連携で新世代ネットワークの研究を推進していこうということで、情報通信研究機構の中に新世代ネットワーク研究開発戦略本部というのをつくりました。そこに産業界からも人が集結して、それで新世代の戦略をつくっていこうということで、阪大総長であった宮原新理事長が戦略本部長で、私は副本部長の一人になっております。
 それで、情報通信研究機構自身の自主研究と、昔TAOと呼ばれていた、ファンディング機能がありますけど、そこの研究と、それからJGNのテストベッド、こういうものを従来は、ばらばらだったのですが、一体として推進していく必要があるということです。
 次に、新世代ネットワークの要件でありますけど、この辺を言っていると時間に切りがないのですが、とにかく大規模であり、非常に多様な端末装置が接続され、極めて複雑であって、あるいは偏在していて、安全性もこれからますます重要になる。それから、脱情報化社会に向けた新しい機能、例えばロボットの機能だとか、そういうものもネットワークの中に取り込んでいく必要があるだろうということです。
 例えば、大容量の要求ですけど、今までの日本のインターネットのトラフィックの伸びを延長していくと、今から13年後、2020年ですか、その頃には今のトラフィックの1,000倍になるということは、いわゆるノード、インターネットで言えばルータの性能としてPb/s(ペタビットパーセカンド)の容量が必要となり、リンクについては10Tb/s(テラビットパーセカンド)ぐらいが必要で、アクセスネットワークは10ギガぐらいが必要いうことが出てまいります。したがって、これぐらいの容量を実現しなければいけないとか、消費電力を考えると、そのようなペタビット級のルータをつくろうとすると、今のエレクトロニクスの技術だと、消費電力が1万Kw(キロワット)ぐらいになってしまい、それが100台並べば原子力発電所が1基分要るような消費電力になってしまいます。したがって、そういうのを徹底的に省電力化する技術が必要です。
 あるいは、センサーから出てくるような非常に極小のデータから、デジタルテレビ、あるいはデジタルシネマ、あるいはスーパーハイビジョンと呼ばれているような超大容量のコンテンツ、テラバイト級のコンテンツがネットワークの中を一緒に流通するような、そういうネットワークをつくらなければいけないということで、新しいネットワークのアーキテクチャのあらゆるエレメントについて、このクリーンスレートで研究していかなければいけないということです。
 もう1つ重要なのは、アプリケーションからのリクワイアメントでありまして、ロングテイルという、ビジネスマーケティングで使われているあのロングテイルの考え方を研究開発用に私が勝手に適用いたしまして、ロングテイルアプリケーションと名付けております。縦軸はユーザー数で、マーケティングの場合には横軸は商品になるわけですけど、ここではスピードを横軸にとると、一般ユーザーは100メガぐらいの速度でユーザー数は膨大な数量になり、企業ユーザーは10Gb/s(ギガビットパーセカンド)から100Gb/s(ギガビットパーセカンド)ぐらいの速度を利用するが、その数は一般ユーザーに比べればずっと少ない。さらに、研究者とか科学者とか、きょう議論になっているようなスパコンだとか、そういうものを使う人たちというのは、めちゃくちゃな要求を出すわけです。しかし、ユーザー数はごく一握りです。しかし、そういうところのリクワイアメントから新しいイノベーションが生まれるのです。それは、インターネットもしかり、WWWもCERNの核融合研究所で開発されたものが今一般に普及したわけでありまして、こういうユーザー数は少ないがきわめて高度な要求をだすロングテイルから出てくるイノベーションが、いずれは一般ユーザーに広がっていくということになるので、ここのロングテイルのアプリケーションが重要であるということを言っています。
 ロングテイルアプリケーションの例として、科学研究の分野では、皆さんよくご存じのグリッド・コンピューティングがあります。
 それから、もう1つは、デジタルエンターテインメントで、デジタルシネマや、3Dの映像などです。これは米国のイリノイ大学で開発されたものですが、このシステム全体で何と1億画素の情報を持つシステムです。このタイル状のパネル1枚1枚に光ファイバーを接続して、高精細な画像を自由にコントロールして、スーパーコンピュータからのシミュレーションのビジュアルライゼーションだとか、科学研究用に用いるシステム、こういうのもロングテイルアプリケーションの1つと思っています。デジタルエンターテインメントの中心であるデジタルシネマもどんどん発展しつつあります。
 時間が無くなってきましたが、このJGN2というのが、情報通信研究機構が今まで提供してきたネットワークテストベッドでありますが、来年4月からこのJGN2plusと呼ばれるものにバージョンアップされます。JGN2plusと書いたように、現在のJGN2を抜本的に変えてしまうというよりは若干マイナーな改良となっています。
 それで、今から3年ぐらいかけて、新世代の研究のために何が必要なのかということを明らかにして、平成21年度、もしくは平成22年度から抜本的に新しいネットワーク・テストベッドをつくろうとしています。それはJGN3になるのか、あるいはテラビットのJTNになるのかわかりませんけど、そういうものを考えようということで、とりあえずはマイナーな変更で行こうということになっています。予算的な制約もいろいろあるようです。
 それで、JGN2plusの一番の改革は、従来丸投げにしていたネットワークのオペレーション、JGN2ではNTTコミュニケーションズや、KDDIなどにネットワークのオペレーションを任せていましたが、ネットワークの研究を行うには、やはりオペレーションからやっていかないとだめなのではないかということで、このJGN2plusも研究者がネットワークのオペレーションを一緒にやっていくというスキームを考えようということになっています。
 次に、光のネットワークが非常に重要になりまして、Global Lambda Integrated Facilityという、光のネットワークのコミュニティーでありますけど、そういうところに積極的に参画して、様々な高度なネットワークの実験をやっていこうということです。
 次に、学術研究用のネットワークの役割ですが、SINETは先ほど坂内先生がお話になりました。JGN2というのは、アクセスポイント間を高速ネットワークで接続して、主としてネットワーク技術、高度なアプリケーション技術の研究開発に利用するということで、ネットワーク自身をいじるということです。それで大学のみではなく、産学官が研究開発に利用できるネットワークであるという役割分担が考えられるのではないかと思います。
 本年度末でJGN2の期限が終了しますので、来年の1月17、18日には、その成果を示すのと、新世代ネットワーク推進フォーラムもできましたので、世界からそれに関連する研究者を呼んで大々的にシンポジウムを行う予定にしております。以上です。

【有川主査】
 先ほど、クリーンスレートという話がありましたけれども、それは、JGN2plusなどになるのでしょうか。その辺のつながり方にちょっとギャップといいますか、相入れないようなものがあるようにも感じますが。

【青山教授】
 そのとおりだと思います。それで、このクリーンスレートで新世代のネットワークのアーキテクチャなりプロトコルがどうなるのかというのは、世界的にまだ定説もありませんし、有力な方法もまだ提案されておりません。それは米国のGENI、FINDプログラムでも、ヨーロッパのFP7でも同様であります。
 ですから、クリーンスレートで考える場合、アイデアは幾つかあるのですが、それらのどういうものが有望なのかというのは、まだこれからの課題です。したがって、今すぐあるアイディアでネットワークのテストベッドを構築して、それに縛られるのはよくないということで、当面はローカルな規模で実験して、それで有力なものが出てきたらそれを全国展開するというスモールスタートの方針で行こうということです。
 米国のGENIも、まずは小規模でスタートして、しかるべき時期に大規模化し、その予算としては500億ぐらいが想定されているようですが、それぐらいの大金をかけて大規模なネットワーク・テストベッド、GENIネットワーク・テストベッドをつくるという計画になっております。

【有川主査】
 SINETとのすみ分けに関してですが、ここに坂内先生がいらっしゃいますけれども、SINETは、本当に実用に供され、先ほどは200万のユーザーということでしたけど、実際にはその倍ぐらいはいるのではないかと思いますが、極めて多くのユーザーを抱えながら、しかも、技術の進展の中でそれが維持されているわけです。そこから実は相当な研究的なデータや経験などが得られているのだと思います。そのような普通の大学等では得られないようなデータなり経験なりを共有できるようなシステムや役割をねらうとか、そういったことなどはないのでしょうか。

【青山教授】
 どちらかというとJGNのほうは、ネットワーク研究が主体で、アプリケーションの研究は、当然あるのですが、そこからネットワークに対する要求条件を引き出すことが主要な目的であり、たとえばグリッド・コンピューティングで言えば、グリッド・コンピューティングそのものよりも、コンピュータクラスタをどのようにネットワーキングすれば一番うまくいくのかというところに力点を置いて研究しようということでありまして、当然、SINETで培われた様々な経験、様々な情報、データなどは、こちらのほうも非常に役に立つと思いますので、坂内先生とはその辺をぜひ連携して、必要なときに相互に情報交換する、そういう場を設けるなどしていきたいと思っています。

【坂内委員】
 もう既に宮原先生とも会談を持って、踏み込んだ連携といいますか、我々もこの新世代ネットワークの一翼を担わせていただくような形で、次の、SINET3は、先ほどの青山先生のお話で言うと、IPプラスアルファぐらいのところまで何とか入れているんですけれども、その次というのは、やっぱりこういう新しい開発を、それぞれの経験を踏まえてつくっていかなければいけないということなので、あくまでも、この中には出ていないですけれども、我々はもうインフラとして今動くものをどれだけ学術に寄与するかということですし、JGN2、あるいは新しいミッションは、その次を見たネットワークの研究のテストベッドだと。そういうことで結構、役割分担は明確になってきていると思います。

【青山教授】
 例えば、SINETでネットワークの研究をやろうとすると、例えば光の波長パスを何度も切りかえたりせざるを得なくなってしまうのです。そうすると、実際に大学の先生方が使っているのが切れてしまったりするものですから、ネットワーク研究用のテストベッドと、いわゆる大学で文系の先生から理工系の先生が日常から教育・研究に使われるネットワークを分けて提供することが必須でありまして、両立させることは極めて困難です。

【坂内委員】
 だから我々も、特に私が連携本部になってからは、我々のミッションはインフラ提供で、我々のところも、車の両輪ということでネットワークの研究開発をやるのですが、むしろテストベットをやるのはJGN2ということで、そういうコラボレーションをとらせていただいています。

【西尾科学官】
 まず、本日の先生のお話しで、JGNとSINETのミッションの違いがよりクリアになりました。要は、今後JGNで開発された成果がSINETの方にテクノロジートランスファーされていく、それによってSINETそのものがより高機能になるということかと思います。そこで、JGNにおける新しい技術が、ある程度のコストパフォーマンスを持ってSINETの方にきっちりとテクノロジートランスファーされていくのは、二千何年ぐらいと考えたらよろしいのでしょうか。

【青山教授】
 それは、別に何年にという話ではなくて、随時ということになると思います。先ほどのVPNの話の中に出てきましたけれども、ネットワークをバーチャライゼーションするという、オーバーレイネットワークという技術が非常に注目されていまして、これによって様々な大学の、文系の先生、医学の先生などが、自分の目的のネットワークを自由につくる、論理的にカスタマイズされたネットワークをつくりたいという要求というのはたくさんあると思います。そのようなカスタマイズされたネットワークは、ネットワークの専門家でなくても、仮想化されたネットワークを設定して、自分の研究なり、教育なりに使いやすい形にできるような技術というのに力を入れようとしているのですけれども、それに用いるミドルウェアを構築してどんどん提供していけるのではないかと思っております。

【上島委員】
 JGNとか、総務省のネットワークの上でやるときは、今おっしゃったアプリケーションの対象というのは、やっぱり個人ベースのことを考えておられるのでしょうか。ここで書いてあるようなものは、非常に大規模プロジェクトがベースになっているように見受けられるのですが、ネットワーク、やはりワイヤレスも巻き取ってというようなことをいろいろおっしゃっていましたけれども、個人ベースのあたりもターゲットに入ってと考えてよろしいのでしょうか。

【青山教授】
 どちらかというと、個人ユーザーもないわけではないですけれども、JGNに参加しているのは、いろいろな大学が集まったグループや、大学と企業の連合、あるいは地域で遠隔講義をするようなコミュニティーなどが多いです。したがって、ほんとうに個人というのは、必ずしも多くありません。
 それから、SINETは大学にアクセスポイントがたくさんありますが、JGNのアクセスポイントは非常に限られており、そのアクセスポイントに接続するのはユーザー自身のコストで行う必要があり、結構大変です。したがって、個人の方が容易に利用できるような状況にはないと思います。

【後藤委員】
 ご質問はJGN、それとも新世代ですか。

【上島委員】
 新世代のつもりでした。

【青山教授】
 新世代は、もちろん個人が、今の自分の情報を自由に発信できるとか、あるいは世界中から様々な情報を非常に容易に集められるということが実現できつつあるわけですけれども、それがさらに一歩進んで、情報化社会の次の社会で個人がどういうことを要求してくるのか、そういうことも含めて考えていかないといけないと思っています。したがって、新世代は個人の要求条件も重要だと考えています。費用とか何とかではなくて、個人がどれぐらい新世代ネットワークでメリットを享受できるかで決まってくると思います。

【後藤委員】
 補足ですが、青山先生が要件と書かれた中に項目が出ているのですが、まさに個人を超えた、例えばアメリカのGENIの例、あるいは欧州やアジアの国を見ても、センサーネットワークというキーワードが入っています。そうなりますと個人どころではなくて、もう至るところ、物同士の通信というのまで一応カバーしているということになります。

【有川主査】
 坂内先生の方に、連携本部というおもしろい仕掛けがあり、それが相当効果を発揮しているというお話がありましたが、青山先生の方では、そのような仕掛けはないのでしょうか。これは、情報通信研究機構だけで閉じているのでしょうか。あるいはもう少し広がりを持っているのでしょうか。

【青山教授】
 情報通信研究機構だけでは何もできません。情報通信研究機構は小さな研究所ですから、それだけでは機能しません。したがって、大学の先生方と、そういうコミュニティーを形成して、学会も含めてやっていかないと、十分機能しないと思っています。ただし、例えば、政府に対して話をするようなときの戦略本部として、情報通信研究機構がいろいろ考えていきましょうということであり、研究自体は、情報通信研究機構もやりますが、研究者の数というのは知れておりますので、これはやっぱり大学、企業の基礎研究的なところなどと一緒にやっていかないとだめだと思います。
 米国も、FINDプロジェクトというのは、いわゆるアイデア、ネットワーク・テストベッドではなくて、アイデアを募るファンドです。現在、多数の応募の中から二十幾つのプロジェクトが選定されて、走り出していますけれども、科研費みたいな感じなのかもしれませんが、アイデアであるとか、要素技術だとか、そういうところにもっといろんなアイデアを出さないと、情報通信研究機構なり総務省なりが何か言っただけではだめと考えています。

【米澤委員】
 一般的過ぎるかもしれないですが、先ほどの坂内先生のお話でSINET、ネットワークがただだという常識はもう通じない。やっぱりある程度、今使っている方も少し消費税的にお金を払うということを考えたほうがいいと思います。それを新しい研究に回すようなことを考えたほうがいいんじゃないかという気がします。

【有川主査】
 坂内先生から、負担のモデルを1つ出していただきました。それに関連したことで、先ほど後藤先生のほうから、マレーシアを除いたら国家がちゃんとやっていますということだったのですが、その際の経費はどうなっていますか。

【後藤委員】
 例えばアメリカのインターネット2を坂内先生が引用されました。この運営は直接に政府から支援する形ではなく、大学が組織のメンバーとなり維持しています。良くみると、個別のプロジェクトには政府支援がありますので、全体としては間接的な支援ということになります。昔のNSFNETそのものではなく、そのかわりに、それぞれのプロジェクト、あるいはそれぞれの大学はかなりサポートされているので、NSFの人に言わせれば、全体としてはサポートしているはずだと、大学の人もそうだということです。この辺りの事情かなり国によって工夫をしているというところだと思います。カナダは、バックボーン部分はCAnetという形でずっと政府系で運用しています。エンドに近いところは州になりますので、これは政府・国ではないと。実際に、SINETの場合も大学のほうから接続しなきゃいけないところはその大学が持ち、バックボーンのところはNIIのほうで負担しているということになります。坂内先生が言われたように、ほかの国のやり方とか、あるいは日本の実情というのはいろいろな要素があろうかと思います。勝野課長が言われたように日本の中のロジック、説明の論理というものもクリアである必要があると思います。その都度検討していかなきゃいけないのではないかと思います。世界的に一律ではありません。

【坂内委員】
 全体を考えると、国立情報学研究所がサービスしているのは一部です。言われるように学内LANやアクセス系、あるいは最近はメールと、そのセキュリティ機能など、様々なベーシックな機能がそれぞれの大学の負担でやられている。一方で、このノードまでというのはずっと歴史的にあって、応分、大学も含めた投資が今の形で固定されている。そういう現状から、ここはクリーンスレートというわけにはいかないので、この歴史を踏まえてやっていかなければならない。一方でさっきも申し上げたように、アクセス網や学内サポートも国立情報学研究所の経費の中でということではないのですが、それぞれの大学が各ベンダーに対して交渉するとパワフルでないので、なるべくうまく組織化、コンソーシアム的にやって、いいものを安く提供するようなことに貢献していく、あるいは、その前段階として利用推進室みたいなので全国行脚をして回るなど、段階的にモデルを考えながら、最終的には応分負担していただくという、わかりやすい段階を踏んでいくことが大事なのかなと思っています。
 そのようなことから、米澤先生の指摘については、応分ということで大きなプロジェクトや産業界、新規のところから負担いただく。その先どうするのと言われると、ケース・バイ・ケースで応分の負担をしていただくような方向に行くしかない。一方で、研究プロジェクトの中で情報基盤やアウトリーチのところの必要性は理解いただきつつ、それを科研費の中でエクスプリストにやっていくのか、そうでないのかは別として、この作業部会の中でご議論をいただきながら、個別にはいろいろ工夫していかなければいけない。大きな流れはそういう方向です。それを込めて応分の負担で一応書かせていただいています。経費負担の在り方は結構大事なことです。

【美濃委員】
 ネットワークの話は、全ての大学で一様に考えるという話ですが、スパコンの話になると基盤センターが中心になって議論することになっています。ネットワークでも、地域といいますか、ローカリティーを出して、中層の局、何かそのようなネットワークサービスセンターみたいなのがつくれるような話というのはあるのかなと思い、先程から考えていました。そのネットワークのサービスに対して、例えば7大学の基盤センターがどんな役目を果たせるのだろうというようなことを考えているのですが、全部のネットワークサービスを国立情報学研究所が立ち上げるというのも1つのモデルだと思うのですが、やはりローカリティーがあるほうがいいというようなネットワークサービスがあり得るのではないかというような気もします。そのような意味でネットワークの分野における基盤センターの役割について再定義といいますか、何か出てきたらいいのではないかと思っています。

【有川主査】
 問題提起の1つだと思います。歴史的にはそうした役割を果たしてきたのですが、最近は、そうした意識が少し希薄になってきているのではないでしょうか。しかし、国立情報学研究所との連携に見られますように、法人になり大学がそうした側面を持ちながら活動できまるようになりました。

【坂内委員】
 私の意識は、美濃先生はよくそこのスパコンだけが今の基盤センターのミッションでとおっしゃるんですけど、今のネットワーク連携本部は、基盤センターとのアライアンスが中核でやっていて、もっとこういうものの企画や運営、ローカリティー、地方への貢献などは基盤センターの役割を果たしていただいているというのが僕の基本的な認識なんです。いや、全国共同利用と言ってくれるのはスパコンのところだけかもしれませんが。

【有川主査】
 現在、次世代スパコンに関しては教育面で連携して貢献しようという機運が出てきていると思います。ネットワークに関しても、もともと自発的な共同利用施設として機能してきたわけですから、同様な貢献への道があると思います。

【勝野情報課長】
 後藤先生からお話のあった諸外国における取り扱いというのは、ちょっと我々も直ちには把握しておりませんので、少し調べてみたいと思いますので、次回以降できれば資料としてお示しできればと思っています。

(2)資料2「東京工業大学学術国際情報センターGSICのご紹介」に基づき、情報基盤センターの今後の在り方等について、東京工業大学学術国際情報センター長の渡辺先生から、意見発表が行われ、その後、質疑及び意見交換が行われた。

 東京工業大学学術国際情報センターGSICのご紹介(東京工業大学学術国際情報センター長 渡辺 治)

【渡辺学術国際情報センター長】
 東工大のセンターの実情というところを最初にお話させていただいて、その後、スパコンの話をさせていただきたいと思います。
 まずGSIC、学術国際情報センターのご紹介をさせていただきます。沿革・概要は省略させていただきますが、ポイントとしては、専任の教員が助教も含めまして11人のセンターです。
 センターの事業、どのようなサービスを実施しているかを中心に、問題点も含め説明したいと思います。
 まず、センターのサービスの基本方針として、基本情報環境権というもの始めました。どのようなことかと申しますと、それまでいろんなサービスを受ける場合、その都度申請しなくてはならない。このため、東工大に所属する人はだれでもこういうサービスが受けられる権利をICカード、職員証・学生証を受けて、すぐにメールのサービス、無線LANが使え、スパコンのアカウントを持てることや、オフィスをダウンロードすることができる。このようなサービスを自動的に得るということを始めました。
 詳しくご説明しますと、スパコンの特徴等については後ほど説明いたしますが、基本情報環境権というのと同じような考え方でみんなのスパコンという事業を実施しています。科学技術計算だけでなく、大学全体の計算基盤として、だれでも使ってもらえるようなスパコンということで、計算資源を集約するというスローガンのもとに実施しております。
 次に、ICカード、職員証の関係ですが、一昨年から始めておりますが、キャンパス共通認証・認可システムというのを導入し、ICカードをもらうと、東工大ポータルというものに入ることができ、様々なアプリケーションを利用することができます。また、ICカードリーダーの無い環境からの利用についてもマトリクスコードから認証され、入退館や成績証明などを発行するときにも利用できるような環境を構築しています。いろいろな情報システムをこの東工大ポータルに入るとアクセスできるというサービスを展開しております。
 メールに関しても、全学のメールを1つのサーバーに集約しましてキャンパス共通メールというものを開始しました。参考資料にも添付しておりますが、共通メールへの移行が本格化した昨年の10月にトラブルが発生しました。1つの理由は、計算資源の集約化ということで、スパコンを使わなければいけないという強い要請があり、スパコンの一部をメールスプールサーバーにしたのですが、能力を超えてしまったことなどが原因で、トラブルをこうむったということがありました。
 ネットワークに関しては13年度に導入したものを利用していますが、更新の時期ということになり、全学的な理解を得て、積立金により、21年度までに更新しようと考えております。
 その他のサービスとしては、キャンパス公衆無線LAN、マイクロソフトと包括契約を結び、オフィスのダウンロード、アップグレードというサービスを実施しています。また、P2Pの問題が生じていますので、トラフィック検出、遮断により、著作権法違反等への対応も行っております。
 以上のようなサービスをやるために、基本情報環境権を実施していこうというで、サービスに合った認証認可システム係、ネットワークシステム係、コンピュータシステム係というように体制を整備し取り組んでいます。
 いろいろと苦しい面もありましたが、このようなサービスを展開して、便利になったことを実証したことにより、情報基盤統括室の設置を認めていただき、情報基盤に関する新たな体制を構築し、本格的に情報基盤を運営していこうということになりました。
 次に、課題ですが、いいサービスを実施するためには研究との連携が大事です。しかし、残念ながら、学内で多くの方々に理解頂くのはかなり難しく、それが問題を引き起こしています。具体的にはネットワークの管理・運営です。ネットワークの管理ぐらいは技術職員でできるでしょうということがあり、教員が削減されるということがずっとこれまで続いてきまして、その結果、非常に問題が起きている状況があります。これについては何とか打開しようということで検討を開始しています。
 次に、東工大のスーパーコンピューティングシステム、TSUBAMEの紹介、今後の展開についてご説明したいと思います。
 TSUBAMEについては、皆さん、よくご存じかと思いますが、グリッド計算を中心にやっていますが、今月、カタログ値でピーク100テラフロップスまで上げることができました。また、スーパーコンピューティングカンファレンスで発表になると思うのですが、4期連続アジアでナンバー1をキープすることを目標としております。
 機械的な構成について、少し特徴を申し上げさせていただきます。
 みんなのスパコンについては、当センターの松岡教授が提案しまして、シームレスな使い方ができるよう、新たな研究利用への展開をねらったスパコンの提供、スーパーコンピューティングパワーの提供というのを考えております。具体的には、普通のウィンドウズとかリナックスで動いているものがそのまま動かせ、スパコンのパワーを使えるようにできるということから、卒論などへのスパコンの利用など、様々な人が試みられるようなスパコンにしようということで実施しております。
 次に運用ですが、大きく分けまして2種類のキューをつくりました。1つ目はベストエフォート、これは定量制、定額制でノードはほかの人と共有する。2つ目は性能保証した従量制の形、その2つを使い分けて利用いただくということを考えています。1つの特徴としましては、特にこの従量制のほうですが、実行時間の上限はありません。例えば、1カ月以上超えているようなジョブも十分走っています。
 次に、産学連携として、特に新しい利用を拡大しようということで、先端研究施設共用イノベーション創出事業に申請し、採択され、外部利用ということも開始しています。
 次に、今後の展開ですが、基本方針としては、みんなのスパコンを引き続き実施していくことを考えています。これをさらに、事務にも教育にも使うということで考えています。もちろん事務や教育に使ってもほとんど影響はないということであり、科学技術計算としての使命を終えたスパコンでも十分使えるものがあります。これを事務に使うことにより、導入コストの節約ができる。また、次世代のスパコンを動かしていく人たちの教育にも使っていこうと思っています。
 もう一つは、学外との連携であり、産学連携、新規開拓ということを考えております。特に東工大として、先ほどのICカードを導入するというのも冒険的なことなのですが、比較的小さな大学ですので、新たな試みが考えられることが東工大の特徴ではないかと思いますので、このようなことを基本方針として考えています。
 次に、課題ですが、学内ネットワークは、基幹が1Gですので、スパコンを利用するという産学連携の要請からも太くしなくてはいけないと考えています。例えば、実際に動いている連携で、大きなデータは宅急便で送っていただいてやるというような使い方をしているものもありますので、強化しなければいけないと思っています。
 また、全体的に見た一般のスパコンの研究、開発ということに関しての私見ですが、第一に、低電力、省エネというのが重要になってくると思います。実はTSUBAMEの更新というのを視野に入れて色々と計画しております。大学とも予算の交渉をしておりますが、そのような時に言われるのは、予算はある程度確保できるが、消費電力はもうぎりぎりなので自助努力をしなさいということが言われます。このため、現在、TSUBAMEでは、28度での運用を可能としました。
 第二に、ソフトウェアライセンスについてですが、様々な人が使い始め、CPU数が増えるということによって、ソフトウェアライセンスが非常に問題になるので、これをどのような体制で新たな契約をしていくのか、業者との協議というのが重要になってくるのと思いますので、これを考えていかなければならないと思っております。
 以上で終わります。

【逸村学術調査官】
 16ページ目の先ほどのTSUBAMEの運用、課金システムの件です。左下の図ですが、この利用者とは学内、学外どちらを意味しているのでしょうか。あるいは一緒なのでしょうか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 今のところ学外は、先ほどの産学とのプロジェクトが中心ですが、学内共同利用施設ですので、学内が中心で、学外の方の使用は、個別に提携した非常に少ない方々です。企業が使うキューについても、考え始めています。

【逸村学術調査官】
 つまり、このデータは基本的には学内ということですか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 そうです。

【有川主査】
 「基本情報環境権」というのはすばらしいと思うのですが、その考えを実現するために相当お金もかかると思います。例えば、ICカードは大学が全部負担して、学生や教職員に持ってもらうということなのでしょうか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 そのとおりです。学生が1万人、大体職員関係が5千人、正規の職員が2千人で、非常勤も含め、おおよそ1万5千人ですが、やはりランニングコストがかかります。カードの加工費もかかります。カード代というのは昔から学生証や職員証を出していたということで全学的な負担になっていますが、その残りが情報基盤整備費という形でご支援いただいております。

【美濃委員】
 この認証認可システム係なのですが、これはどのくらいの人がかかるものなのでしょうか。多分ICカードの情報管理をかなり全学的にやらなきゃいけないというお話だとすると、そのあたりの人的負担というか、今までなかったので、新たに人員を配置しなければならないというような話になるのではないかと思います。どの程度の負担なのか、ちょっと教えていただけますか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 現在、認証認可システムでは、別部局の所属で、兼任で副センター長をやって頂いている方が献身的に尽力して下さっていて、その下に准教授の方1人と、技術職員の方が4人です。

【有川主査】
 「みんなのスパコン」ということで、さまざまな計算をスパコンでやるといったお話も含まれていたと思いますが、そう考えてよろしいでしょうか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 まだ宣伝も行き届いていないのでそこまでチャレンジする人はなかなかいないのですが、それを目指して企業の使い方にしても、研究の使い方にしても、新しい使い方を開拓したいと考えています。

【有川主査】
 こういったキャッチフレーズでやられて、何か新しい展開もあったのでしょうか。思わぬところにニーズがあったというような。

【渡辺学術国際情報センター長】
 まだそこまで完全にはないのですが、先ほどの企業の中では、やはり新規利用の方々が、特に銀行業の方で、こういう使い方があったんだということでかなり力を入れており、SINETも使いたいというような話も少し出ています。

【有川主査】
 ネットワークのスピードが非常に遅いような感じですが、改善の見通しはもうお持ちなのでしょうか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 見通しは厳しいです。というのは、かなり考えて頂いているのですが、ネットワークの運用は技術職員で十分、教員がやるべき仕事ではないという考え方が学内的に強くあります。それではとても回らないということを我々は思っているのですけれども、そこのところを歴代のセンター長が随分説明説得されたらしいのですが、ちょっと難しいようです。ただ、現在、必死で巻き返しをはかろうと思っています。

【潮田委員】
 北陸先端大でもそういう同じような問題があって、僕も学長として情報科学研究センターが全学の情報システムを掌握するように動きました。そこでいつも気になるのは、それはサービスセンターなのか、研究センターなのか、どっちをやるのかと。いわゆるファカルティー、教員をそこに配置すると、彼らの業績になるためには研究がないと困るというのがありますよね。だけど、全学的ニーズとしては、彼らが研究してもいいことはそれほどなくて、主に毎日メールが来ることのほうが大事なわけですよね。技術サービス職員と、研究をパートタイムとする教員と、その辺のすみ分けをどのようにするのか、そこはかなり難しいところだと思うのです。リクルートするときも難しいのです。どっちをやるのかと。どの程度サービス負担があるのかによって、どのレベルの人が来てくれるかとか、その辺は何か、解はないでしょうけど、工夫しておられることはありますか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 例えば、スパコンのほうは松岡先生が随分研究と一緒にやってくださっているのでよいのですが、先ほどのカードの認証ですけれども、准教授の方や、あるいは技術職員も含めて、なるべく業務だけじゃなくて、業務を研究として発展できるような土壌をつくりましょうということで連携ということでやっていきたいと思っており、なるべく研究と思われている部分を引き出してやりたいと思っています。

【潮田委員】
 もう一つの質問は、リソースをかなり集中しているわけですよね。まさにいろんなサーバーや認証システムなど、いろんなものをスパコンの大きなグリッドの中でやろうという企画だと理解しているのですが、そうしたときに何かトラブルがあったときに全部だめになってしまうということがあるのではないかと思うのですが、バックアップシステムは何かあるのですか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 実は集約といいましても、認証やメール、ネットワークの基幹など、それは別途システムが動いています。それぞれバックアップを考えています。ただし、例えば図書館データベースやリポジトリ、OCWなどはスパコンに集約されておりまして、それについては、様々な対策を考えています。ただし、場所的には同じところにあるので、例えば地震など何かあったときにはちょっと問題なので、どこか別のところを考えるということもあり得ると思います。

【米澤委員】
 例えば事務系の普通の大学の業務、教務とか財務とかたくさんありますけれども、そういう情報システムは東工大ではどうされているのでしょうか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 それもこれからの課題なのですが、財務、教務、特に教務は歴史があって、独自のやり方があるので、こういう集約という考え方が非常に難しいところです。今度副学長で企業の方が就任されたのですが、なぜ、自分たちで開発しているのですか、オーダーメードではなく、既製品を買ってきて使うのが普通ではないですか、というようなことをおっしゃるのですが、それを教務に説得するというのは非常に難しく、1センターがそれを言うというわけにいかないので、先程の基盤統括室というのはそういう意味で重要であり、大学全体のポリシーを決めるということもお願いしようと考えています。

【米澤委員】
 しかし、すぐに統一的なものができなくても、例えば認証などは既におやりになっている。認証という話は給料の話や学生の成績の話と即つながると思うので、その辺の事務システムには認証システムはまだ使われていないということでしょうか。

【渡辺学術国際情報センター長】
 はい。残念ながら成績の報告や何かはまだ紙でやっております。ただ物品購入、いわゆる予算の請求は全部シングルサインオンでICカードで認証してやる形になっております。ですから、事務系はかなり一緒に連携し始めているのですが、教務となると、ちょっと大変だと思います。

【有川主査】
 学務の問題は私も経験したのですが、なかなかうまくいかないというので調べてみたら、テーブルが300万件ぐらいあるというようなことがわかりました。そこで、専門の先生方にも協力してもらって、一生懸命頑張った結果、2万とか3万のオーダーまで落ちてきました。カリキュラムが変わったり、コースが変わったりしますと、すぐ卒業してくれればいいのですが、残っている学生がいたりするものですから、テーブルを展開しなければならないためにこういうことになっていたのです。人事のシステムもそうだろうと思います。非常に大きな仕掛けになってしまい、どこかで固まってしまうと、それは手作業で対応しなければならないという非常に情けない話もあります。ですので、全部外注したらいいのですが、どうもそういうことでもないみたいです。放っておくととんでもないことになる世界のようですね。ちょっと余計なことを申し上げましたが、スーパーコンピューティングというだけではなくて、業務に至るまで、幅広くお話をしていただきました。
 特にございませんようでしたら、大体予定している時間になっていますので、これで渡辺先生のお話に対する質疑応答というのを終わりたいと思います。

(3)資料3「作業部会委員による情報基盤センター訪問及び意見交換の概要」について、10月に行われた東北大学と名古屋大学の情報基盤センター等への訪問の概要を事務局から報告され、その後、訪問委員からの補足説明及び質疑応答がなされた。

【米澤委員】
 基本的にはここに書かれているとおりなのですが、東北大の特徴というのは、スーパーコンピュータ的に見ますとアーキテクチャの型としまして、いわゆるベクター型のスパコンをずっと使い続けている。今後もそういうところで特徴を発揮したいと東北大のセンターの先生方がおっしゃっていて、それはある意味でもっともなことで、ベクター型は今後どういう形で続くか、かなり不透明なところがありますけれども、いわゆる並列クラスター型のものと違うという意味では存続しますし、実際大学基盤センター群でキープしなければいけないと思います。
 こういうことを申しましたのは、今7大学、あるいは9大学のセンターのスパコンのことを考えますと、前回私がちょっと申し上げました、大学基盤センター群で、ある程度多様なアーキテクチャをキープする必要がある。その一環として東北大はこういう形で今までもベクター型を続けていて、いろいろなソフトが蓄積されており、かつ、ユーザーも、例えば東北大のスパコンでありながら阪大から大きなユーザー群がいるという状況を、理解したところです。
 また、自分の主張を展開するのは恐縮ですが、前回多少申し上げたように、様々なアーキテクチャのスパコンを7大学、9大学基盤センター群でキープする。それから導入時期もずらしながら、常に新しいものを入れていく。そういうことをやっていくときに、緩い、7センター、9センターをまたがる1つの仮想的な1組織、あるいは機構みたいなものが、あったらいいのではないかという気がしました。
 それは、日本におけるスパコンのニーズに対応することのみならず、個々の大学に対して、本部がセンターの基盤整備に対して何らかの影響を及ぼそうというとき、センターは全国的な組織の中に入っているから、センターはこうしていきたい主張する論拠として言いやすいのではないかと思いましたので、その場で発言したのを書いていただいたということです。

【小谷委員】
 当日は少し早目に会場の名古屋大学情報連携基盤センターに行きました。情報連携基盤センターの建物全体がネットで覆われていましたので、その理由をお聞きすると耐震工事中であるということでした。会議が始まる前に耐震工事についていろいろお聞きすると、耐震工事だけではなくて、コンピュータの電源の移動工事も行っているということでした。その理由は、今年の正月休み期間にコンピュータの電源室に水が入り、スーパーコンピュータが1日働かなかったとのことでした。地下室に電源を設置していたため、その部屋に水が入った場合、通常は2台のポンプで排水しますが、その時、1台が故障したために、電源が水に浸かり故障したとのことでした。現在、電源の設置場所の変更とポンプを4台設置する工事をしている最中でした。
 午後2時から会議に入り、最初に情報連携基盤センター長からご説明を受け、質疑応答の後、スーパーコンピュータの見学や研究成果を拝見しました。それにつきましては添付の資料の通りです。
 この添付資料には記載されていませんが、私は、「名古屋大学はスーパーコンピュータに年間15億円ほどの使用料を払っていますが、何名の方が使っていますか」と質問すると、「110名の方が登録している」というご返事でした。名古屋大学ほどの大きな大学でも申請している人数は少ないと思ったのですが、登録料が必要ですから申請者は110名だけど、学生たちは教授の名前で使っているから、実際に使っている人はもっと多いという話をされていました。
 何故に私がこのような質問をしたのかといいますと、実は、私が勤務している東京電機大学は、コンピュータにはかなり力を入れ、私学の中では最初だと思いますが、1989年にスーパーコンピュータを導入しています。そして、数回更新しましたが、最近、使用者が年々減少して、十数人になったので、ついに去年からスーパーコンピュータをやめて、ネットワークを通じて東京大学等のスーパーコンピュータを使わせていただいています。
 ただ、最近ネットワークの使用料がますます高くなっているので、私立大学にとっては大変です。私の大学でもネットワーク使用料だけで数億円も必要です。私立大学にとってはネットワークの使用料は非常に大変になっております。そのため、日本私立大学団体連合会は、文部科学省に私学助成とは別枠でネットワークの接続料の補助金をお願いしています。是非ご理解していただきたいと思っています。例えば、私の大学で1ギガのキャンパス間ネットワークでも、年間2億円近い使用料が必要です。名古屋大学にはSINETが接続されていますので、その使用料をお聞きすると、無料ということで大変うらやましく思いました。今後、ネットワークを充実し、しかも接続料金を安くしていただきたいというのが、全私立大学の願いです。是非ご理解を賜りたく思っています。
 次に、我が国に次世代スーパーコンピュータが構築されますが、そのとき名古屋大学は、SINETも無料で使用できるので、そちらを使うようにしたらいかがでしょうかと質問しますと、それに対して、名古屋大学にも特徴のある研究があるから、やはり名古屋大学も立派なスーパーコンピュータを持ち続けたいという話をされていました。
 私は、我が国に次世代スーパーコンピュータが設置された後は、各大学は高性能のコンピュータを持つことで競うのではなく、特徴のあるコンピュータを持ち、各大学のコンピュータはネットワークで結ばれており、誰でも自由に使えるようにすべきだと思います。

【有川主査】
 ユーザー数の問題は、どこでもそうだろうと思いますが、実際には、例えば、東北大学のところにあったかと思いますが、資源として目一杯利用されており、足りていないという状況と聞いています。それから一方で、国立大学では、研究所などの研究者単位で大きなスパコンを持っているところもあったりします。そういう意味ではユーザー数が少ないじゃないかという考え方は、必ずしも当てはまらないのかなという気もします。
 それからネットワークの料金については、坂内先生はいらっしゃらなくなったのですが、SINETにつないでおられますと、その部分に関してはただのはずだと思っているのですがどうでしょうか。

【井深学術基盤整備室長】
 ただ今のネットワーク料金について補足説明をさせていただきます。SINET3の場合、ノード(接続拠点)間はNIIが整備し、ノードまでの回線料金は加入機関がそれぞれ負担することとなっております。東京電機大学は、非ノード校ですので、SINETのノードに接続するまでの回線料金を大学が通信事業者に払っており、一方、名古屋大学はSINETのノード校ですので、SINETに関する大学の負担はありません。そういう意味で、名古屋大学から使用料は無料だという発言があつたものと理解いたします。

(4)資料4「学術情報基盤作業部会(第9回)で出された主な意見」について事務局より説明がなされ、特段の質問等はなかった。

(5)資料5「学術情報基盤整備に関する国立大学等の取組状況」について、事務局より説明がなされ、特段の質問等はなかった。

【有川主査】
 それでは、本日の会議はこの辺で終了させていただきたいと思います。

【逸村学術調査官】
 お手元の机上に配付させていただきましたが、「学協会様へのお願い」、これに関して説明させていただきます。これは先ほど坂内所長が触れられていましたCSI事業の一部として、筑波大学と千葉大学と神戸大学が2年ほど前から作業を続けているものです。内容は、日本国内の学協会の論文のリポジトリへの登録についてのポリシーを調べているものです。
 1ページ目の真ん中辺にありますとおり、同様の調査をイギリスのRoMEOプロジェクトもしております。諸外国のほうが右の円でして、簡単に言うと諸外国は査読前、査読後の差はありますが7割はリポジトリへの登録を認めて、3割は認めていないと。それに対して日本は52パーセント、半分以上が決めていない。登録可が4パーセント足す22パーセント足す1パーセントということで27パーセント、登録不可が21パーセントとなっています。この時点ではあまり学協会は機関リポジトリ登録に関して意識していないというのが実態としてあります。ただこれは継続プロジェクトで、いろいろな格好で、こういう調査をやることによって、多少はっきりするであろうと踏んでおります。
 裏面の一番下には日本機械学会の白鳥先生にも話をしていただきました。詳しくはこのURLのところを見ていただきますと、各学会個別のポリシーも出ておりますので、ご参照ください。

【有川主査】
 それでは、次回のことなどについて、小酒井補佐からお願いします。

【小酒井学術基盤整備室長補佐】
 次回の開催につきましては12月6日(木曜日)15時から17時を予定させていただいております。また詳細については追って開催通知等お送りさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また本日資料3でございました、学術情報基盤作業部会の委員の先生方によります、情報基盤センターの訪問及び意見交換会、あとは11月14日の北海道大学、11月19日の大阪大学、2つの大学が残っておりますので、また委員の先生方にはお忙しいところお手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

【有川主査】
 これで本日の作業部会を終了します。

─了─

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)