研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第9回) 議事要旨

1.日時

平成19年10月11日(木曜日) 15時~17時30分

2.場所

国立情報学研究所12階会議室(学術総合センター12階)

3.出席者

委員

 有川主査、伊井主査代理、三宅委員、上島委員、小谷委員、後藤委員、土屋委員、美濃委員、山口委員、米澤委員

文部科学省

 藤木研究振興局担当審議官、勝野情報課長、井深学術基盤整備室長、その他関係官
(科学官)
 西尾科学官
(学術調査官)
 逸村学術調査官

オブザーバー

(外部有識者)
 佐藤筑波大学計算科学研究センター長

4.議事要旨

(1)議事に先立ち、議事録の作成方針に関する変更について説明があった。

【井深学術基盤整備室長】
 本作業部会の議事内容については、これまで、各委員の皆様に事前に確認いただいた後、主査の確認を得て公開しているところです。その際、発言者の氏名は伏せて、また発言内容を要約した、いわゆる議事要旨的なものを議事録として公開してきましたが、科学技術・学術審議会より、透明性を高める観点から、原則として発言者の氏名を明記し、発言内容もできる限り要約せず記録するという方針が出されていることから、本日以降の本作業部会においては、議事録に発言者の氏名を記載させていただくこととしますのでよろしくお願いします。

(2)資料1-1「平成20年度概算要求における特別教育研究経費(学術情報基盤関連)の状況」、資料1-2「平成20年度概算要求における私立大学等に対する助成の概要」について、事務局より報告がなされ、特段の質問等はなかった。

(3)資料2「次世代スーパーコンピュータプロジェクトの開発・利用-平成20年度概算要求とプロジェクトの進捗状況について-」について、事務局より報告がなされ、次のような質疑応答がなされた。

【有川主査】
 5ページの参考にある総合科学技術会議における評価ということで、トータルシステムソフトウェアの開発状況を随時フォローしつつ、研究開発を推進すべきとなっていますが、先ほどの説明であれば、少し遅れ気味なのでしょうか。

【勝野情報課長】
 今回の総合科学技術会議の評価は、5ページの一番上のところにも記載がありますが、文部科学省が行った評価結果を受けて、総合科学技術会議が文部科学省の評価に対して、代表評価という観点から妥当性等の評価を行ったという構造になっています。
 3月から6月にかけて、文部科学省が情報科学技術委員会の作業部会で行った事前評価においても、結論的には研究開発を進めるということで、理研のシステム構成案を妥当としたわけですが、一方でトータルシステムソフトウェアについては非常にチャレンジングな課題であるけれども、ここの部分の成否がこのプロジェクトを左右する非常に重要な部分であるということで、今後、詳細設計の中でもきちんと進捗状況等を文部科学省としても見ていくようにという評価を受けました。

【有川主査】
 文部科学省に対するコメントということですか。

【勝野情報課長】
 基本的には文部科学省が評価を受けたということです。

【有川主査】
 その留意事項のところに、例えば3文部科学省の強力な指導のもと、実効ある推進体制とか、あるいは4の人材育成、運用・サポートとか、こういったようなところなどは、多分これから議論する中でも大事なこととしてかかわってくるのではないかと思いますが、そういう理解でよろしいですか。

【勝野情報課長】
 はい、結構です。

(4)資料3-1「学術情報基盤作業部会における意見聴取及び意見交換について」、資料3-2「学術情報基盤作業部会における情報基盤センターへの訪問及び意見交換について」、資料3-3「学術情報基盤作業部会の当面の日程」について事務局より説明がなされ、資料3-3の当面の日程のとおり、進めることで了承された。

(5)資料4「情報基盤センターの在り方等について」に基づき、情報基盤センター等の現状、課題及び今後の方向性等について、米澤、美濃の両委員のほか、筑波大学計算科学研究センターの佐藤先生から、意見発表が行われ、その後、質疑及び意見交換が行われた。
 情報基盤センター(群)の在り方について(東京大学情報基盤センター長 米澤明憲)

【米澤委員】
 東大の情報基盤センター特有の話と、それから7大学、9大学のスパコンセンター共通の話と、織り交ぜてお話ししたいと思います。
 まず、東京大学のセンターは基本的に、情報メディア教育研究部門、図書館電子化部門、キャンパスネットワーキング研究部門、スーパーコンピューティング研究部門の4つの研究部門があり、これは教員組織で、これに対応した形で事務組織が設置されています。
 情報メディア教育研究部門は、学内向け教育用計算機システム、講義管理システム、小組織用WEB、Mail管理を実施しており、ユーザーは2万人、WEBサーバーやMailサーバーは700~800のグループに支援しています。
 図書館電子化研究部門は、図書検索の研究の実施、図書館/学術DBの教材作成、図書案内システムサービスを実施しています。
 キャンパスネットワーキング研究部門は、キャンパス内の基幹ネットの管理運営、学内のセキュリティ対応、ソフトウェアライセンスの運用、管理を実施しています。
 スーパーコンピューティング研究部門は、スパコンの全国共同利用サービス、ユーザーサポートを実施しています。
 組織として、教員数は20名(教授4 准教授5 講師2 助教9)、特任・兼任教員が4名、技術職員が25名、事務職員が24名です。
 年間の運営経費は、約36億円で、うち30億円がスパコン及び教育用システムのレンタル料です。
 学生数は、指導教員所属の研究科に分属されており、4月時点で、博士課程が10名、修士課程の学生が27名です。
 東京大学の今後の方向性として、情報基盤センターのサービスというのは、全国共同利用はもちろんですが、学内に対するサービスの度合いについては現在40パーセントぐらいですが、最初に用意したスライドのとおり、学内の理工系の研究室でPCクラスターを持っている研究室がたくさんあるのですが、もう少し高度な計算をしたいという方々を、情報基盤センターの次期スパコンのユーザーに取り込んでいきたいと考えており、平成22年までに50パーセントぐらいまでにしたいという計画を持っています。
 さらに、スパコンのプログラミング技術を学部レベル、大学院レベルで教育をしていくべきと考えています。今年から工学部とか工学系研究科で講義、演習を実施しています。
 それから、先ほど申し上げましたメールサーバー、WEBサーバーのホスティングの強化を実施していきたいと考えています。
 次に、今までの情報基盤センターというのは、既製品のスパコンを購入し、それをユーザーに使ってもらうということに徹したわけで、いわば箱物サービスをしていましたが、現在この箱物サービスから脱却するために様々なことを考えています。
 基盤センターの中でスパコン用のシステム、ソフトウェアシステム、次世代スーパーコンピュータを利用者向けのツールの開発、もう少しその下のレベルのPCクラスター利用者が基盤センターのマシンに移行できるようないろんなツールを用意して、計算機科学や計算機工学、あるいは企業の人も含め、センターを中心に一体で研究開発、システム開発を行っていきたいと考えています。
 また、計算結果等を蓄積し、共用可能にするVO(Virtual Organization)や、ドメインごとのユーザーのグループを組織する。それはマシンリソースや、データリソースを中心にコミュニティをつくっていきたいと考えています。
 さらに、国際性及び研究・開発力をより高めていきたいと考えています。
 情報基盤センター全体の将来像としては、先ほど申し上げましたが、これまでの情報基盤センターは、箱物サービスであった。それをどう脱却するかを考えるとき、自らスパコンを設計するなど市場に対して強い意志と影響力を持った形で調達していくべきではないかと考えています。
 また、現在はスパコン用のシステムツールはメーカーのお仕着せであり、多くの場合、事故とかトラブルがあると、センター自身ではあまり対応できずメーカーに話をし、メーカーが回答を返して、それをユーザーに回答していた。それを自らできる限り自分達でやってゆければと考えています。
 アプリケーションもベンダーが持ってくるものだけにとどまらず、新しい方向として、大学でつくったアプリケーションを集めるなどして積極的に提供する。ユーザーにより高度な貢献をするために、より広いアプリケーションをセンターで使えるようにする方向でいくのがあるべき姿ではないかと思っています。
 既に文科省の先端研究施設共用イノベーションプログラムにより、7大学でつくったアプリケーションをセンターで集めて、それを民間に使ってもらうという形で話が進んでいます。
 これからのセンターの在り方に非常に関連すると思いますが、単体のセンターは先ほどのような形で、スパコンに関しては自分たちでシステム開発するとか、アプリケーションを集めてくるとか、よりよいサービスを展開することが重要です。教育もやっていくという形ですが、それをもっと進めて、情報基盤センターが教育と研究の拠点となり、ハイパフォーマンスコンピューティングの教育、スパコンのプログラムの教育、関連する実際の研究そのものがあるわけですけれども、それの拠点になっていくべきではないかと思っています。
 センターは大学に附置されており、そこには教育されるべき学生、大学院で研究をしている学生もいます。また、計算によっていろんな問題を解こうとしている研究者はたくさんいるわけで、そういう方々のそばに情報基盤センターがあるというのは非常に大きな利点ではないかと思っています。特にユーザーを育てる、教育する、育成するという立場から考えると大学の中にあるというのは、非常に強いことではないかと思っています。
 情報基盤センターは、主要大学に地理的に分散している、かつ大学によってそれぞれユーザーのニーズが違うと思いますし、大学の学生や先生方は日本中を頻繁に動き回るわけにもいきませんから、センターというものは大学の中にあるというのは必須のことではないかと思います。しかし、その中で、全部同じ構造になるのではなくて、各大学でそれぞれ特徴と、ニーズの違いもあるし、マシンの特徴も出てくるだろうというふうに考えています。
 今度の次期スーパーコンピュータシステムも2種類系統のアーキテクチャになっていますが、これからは、多様なスーパーコンピュータのアーキテクチャがあり、この多様性をこの7大学、9大学のセンター群の総体で確保し、日本のユーザーに提供するという大きな使命があると考えています。
 非常に限定したアーキテクチャだけを基盤センター群が保持しておけばそれで済むということでは、これは科学技術の発展の阻害になると思います。
 それからもう1つは、スパコンの陳腐化は速いので、どういう時期に更新をするという問題があります。現在の情報基盤センターが、ある程度自然な形で、うまくシンクロナイズすることによってこれが担保できるわけであり、少数のセンターだけでスパコンを持つというのは、こういう多様性を担保する中では非常に阻害になると思います。
 では、どこにマシンを置くかということですが、現在は各大学情報基盤センターそれぞれ自分のマシンを自分のセンターに置いているわけですが、アーキテクチャ上の多様性と、更新時期の多様性というものが担保されるのであれば、これを日本で4~5カ所に分散させて、まとめてマシンを置いて、ネットワークを介して使うということも考えられるのではないかと思っています。
 次世代スーパーコンピュータがどんな形で使われるであろうか、については次の様に考えます。非常に多数のCPUを一括して同時に使う、そういうような使い方をするアプリケーションが実行できるということが次世代スパコンの存在意義と考えています。それを前提とすると、それに対して我々の情報基盤センター群のスパコンというのは、より多様なアーキテクチャを維持するという必要があると考えます。また、マシンのスケールのレベルとして、次世代スーパーコンピュータは非常に大きいため、普通の研究室のPCクラスターで実行されているものを簡単に次世代スーパーコンピュータに持っていくことはできないので、大多数のユーザーは情報基盤センターレベルのスパコンを第一ステップとして使っていかざるを得ないでしょうし、こうすることによって、スパコンのニーズをより増やし、育てていけるので、このことは非常に重要ではないかと思っています。
 次世代スーパーコンピュータと共生するのは当たり前であり、センター群は次期スパコンとは違う形で特徴が出るので、うまく共生できるのではないかと思っています。
 次世代スーパーコンピュータの運営センターを計画されていると思いますが、情報基盤センターのところに分散的に配置するのが、大学のもつ人材リソースや地理的なリソースを活用する上から良いのではないかと思われます。次期スパコンのセンターを集中型にするよりは、分散クラスター的にあったほうがよいようにと思います。以上で終わりとします。

【美濃委員】
 マシンはどこでもいいという話はありますが、計算機のアーキテクチャそのものを研究する研究者を育てようとすると、マシンがそばにないといけないんじゃないかと思います。アーキテクチャそのものを研究する、それを大学が育てないと、どこからその人材がでてくるのか。そのあたり、先生のお考えは如何でしょうか。

【米澤委員】
 各大学の情報学研究科において、アーキテクチャを研究されている先生方はたくさんいます。それはそれで続けられていいと思います。ですが、基盤センターレベルのスパコンが手元にないと研究できないかというと、それはそういう話ではないと考えています。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 私のところは、マシンを実際につくって使っているところですが、このようなアプローチがこれから続けられるかどうかというのは結構疑問なところがあって、今、米澤先生が言ったように、研究者レベルでつくる、施設として運用するということについては、5年くらい経ったら少し考えないといけないかもしれないと思います。

【有川主査】
 非常に高性能な計算資源を必要とするような研究テーマを顕在化させることが必要なのではないでしょうか。
 研究の展開上どうしてもこのくらいの性能のものが必要だということが、様々な分野から出てきてもいいのではないか。そういった需要と要請があれば、自然に技術が対応していくのだろうという気もします。

【西尾科学官】
 米澤先生の話でのセンターの役割ということで、今まで果たしてきたセンターの役割は今後とも継続的に重要かどうかということを伺いたい。私はこれから述べる理由で重要だと考えています。大型計算機センターが日本における学術の分野で萌芽的な研究からビッグサイエンスまで、国公私立を問わずある一定の利用料金を払えば使えるという環境、しかも現在の7大学のセンターは日本を7つの地区に分けて非常に多くの連絡所網を設けてサービスをしてきたことは、米国のスパコンセンター群と比べても非常に卓越したものだと思っています。今までは、以上のような意味で日本の学術の分野を進展させる上で非常に貢献してきたと私は思っていますが、今後も地域にある程度密着しながら、そのような機能の果していくセンターの役割は重要だと、先生も考えておられるという判断でよいでしょうか。

【米澤委員】
 先ほど大学の中に密着しているという言い方だけしましたが、地域の中でいろんな形で中心になる、社会貢献的になるのは当然だと思っています。

【西尾科学官】
 私もセンターの世代論というのを考えたときに、最初、カードとかテープなどを持ってセンターに行きました。それから、ネットワーク的にジョブを入れるような時期になり、一時期センターから人がいなくなってしまった。今後また、計算科学をやるとか、そういう意味のプラザとしてそこにみんな人が集まるようなコアになるというふうにも一方では思っています。

【米澤委員】
 そのとおりだと思います。先週、次世代スパコンというシンポジウムのパネルがありましたが、そこで企業の方も非常に、研修やスパコンの使い方、プログラミングの仕方を教えてほしいなど、いろんなニーズがありました。そういう意味で社会というか、産業界の中心的なプラザに十分なり得る。むしろそういう役目ができそうなところは情報基盤センター以外にないのではないかと思っています。情報基盤センターの現状、課題、今後の方向(京都大学学術情報メディアセンター長 美濃導彦)

【美濃委員】
 現状として、京都大学には情報環境機構というのができました。これの最大のポイントは、基本的には現業のサービス、実際の日常の維持管理を情報環境部へ移そうということで、センターは基本的に教員だけの組織にしました。それで、事務も含め、全部情報環境部というところへ移し、基本的にはサービスは環境部がやる。センターの教員は運営会議というところでサービスの方針を決めたり、いろいろ助言をしたりというような形に持っていきたいということで、こういう組織にしました。
 ただ、現実的には技術職員だけでサービスは動かないので、先生がかなりサービスにかかわりながらやっています。ただし、将来的には、この組織図にありますように、先生のほうは研究を中心にやって、サービスに関連した研究をやりたいということの意思のあらわれでこういう組織になっています。
 京都大学はフィールドワークが有名なので、メディアセンターは大規模、リアルな情報メディアに関するフィールドワークを大学で行う、そういう研究をしながらサービスを高めていくという、研究とサービスに関連した研究をしながら大学に貢献し、サービスを学内に提供していくということを、ビジョンとしてやりましょうということを概算要求時に総長に話をしたところです。
 組織は、ネットワークに関しては、ネットワーク研究部門、スパコンに関しては、コンピューティング研究部門、教育支援は教育支援システム研究部門、コンテンツ作成はデジタルコンテンツ研究部門で実施しています。今後、情報基盤というのは箱物だけではだめだという発想があり、その上の情報もある程度扱うようなコンテンツの管理をちゃんとやらなきゃいけないということで、情報知財のところまで活用室を作りやっていこうとしています。
 人員は教授9名、准教授7名、助教11名、の27名体制。技術職員が21名。この中に課長をつくったというのが1つのポイントです。
 センター予算の大半は、基本的には計算機の借料でありますが、残りの運営経費の約80パーセントがシステムの維持管理、運用費であり、教育研究にはその中の20パーセントだけ使っています。あとは外部資金という状況です。
 全国共同利用については、計算サービスだけでなく、計算機利用の共同研究企画を立ち上げています。
 計算機利用の共同研究は、若手利用枠として、若い人にスパコンを利用してもらおうということで、利用料金はセンターが負担し、様々な研究を公募し、使ってくださいという形で進めています。
 それから、大口利用枠は、大口ユーザーが毎年研究費をとれないということがあり、研究費が無い間スパコンを使えないという状況を避けるために、いわゆる指名公募により、支援をしています。
 また、スパコンのサービスだけではなく、大学の特徴を出そうということで、コンテンツ作成支援サービスというのを全国共同利用として実施しています。
 コンテンツ作成は、学内でのパンフレット作成や、デジタルコンテンツの作成支援を学部、研究科と組んで活動しています。
 コンテンツ作成は、バーチャルスタジオを有し、デザイナーもいるので、映像作成、グラフィックス、WEB作成の支援サービスをしています。
 コンテンツ作成共同研究については、学内にある様々な先進的なコンテンツというか、研究成果をできるだけ外に発表するのを手伝おうということで、コンテンツ作成共同研究企画委員会をつくり、医学研究科と一緒に胎児の三次元モデルをつくったり、湯川博士の学問の系譜というシンポジウムの映像コンテンツをつくったりして、できるだけ京都大学として特徴のあるようなものを外に発信するお手伝いをしています。
 情報環境機構の大きな特色ですが、1つはネットワークの利用に対して負担金をとることを始めたということで、その結果、派遣企業の技術者によって管理を助けてもらっており、KUINSネットワークの運用はこの制度をつくってからかなり楽に動くようになっています。ただ、機器の更新のお金が出てこなくて、どうするんだという議論をしています。
 京都大学は、うちのセンターだけではなくて、研究目的を含めかなりたくさん計算機レンタルをしています。それを全学的に効率的に運用しようという方向を目指しています。ただし、議論する場まではできましたが、なかなかそれぞれ握っているお金を離してくれないというのが現状です。
 それから、知財、特にソフトウェアのライセンスや、コンテンツの著作権等を管理するような知財環境をきっちりして、外に使ってもらう体制を作っています。
 情報環境機構という組織をつくったのだから、技術職員をきちんと教育しなければいけないので、教育をしています。なかなか難しい問題がありますが、とりあえずキャリアパスとして課長までのポストをつくろうということで、内部で何とかつくってもらいました。これらが、情報環境機構の特色です。
 学内向けにはネットワークの提供をしています。また、セキュリティ監視を一生懸命行っており、外部からの攻撃、内部からの不正アクセスを監視しています。これは週1回ぐらい必ずどこかで何かが起こっているほど、大変な状況であります。
 それから、ホームページのホスティングサービスということをやっています。これはホームページやメールは研究室で持たないようにということを周知し、情報環境機構で全部提供しようとしています。
 これは学生用の端末ですが、27カ所1,200台。附属図書館とも連携して、電子ジャーナル等の認証もやっています。
 語学教育の様々なコンテンツづくりも基盤センターはやっていかなければいけないということで、CALLなども基本的には情報処理教室と一緒だから、基盤の部分は我々が整備するということでやっています。
 それから、遠隔講義は国際交流機構で、10年間で京大の全講義の30パーセントを多言語で行うという目標を立てており、国外とつないで遠隔講義をやるという計画です。これもしっかり支援しようということで、現状は国内外すべて含めて遠隔講義だけで年間200回ぐらい支援しています。
 地域活動は、NCA5(第5地区ネットワークコミュニティ)というところでネットワークに関する情報交換をして、京都内のネットワーク、あるいは京都地区のネットワークはどうなっているかという情報交換をしています。それから、京都には大学コンソーシアム京都というのがあるので、ここに遠隔講義を提供して、できるだけ近隣の大学との遠隔講義も一緒にやろう、あるいは共同して海外と遠隔講義をしようという話はしています。
 それから、行政がつくっているネットワークへの助言、大学のネットワークとどうつなぐかという話をして、地域活動に貢献しているという現状です。
 課題ですが、全国共同利用の計算サービスの課題は、これは米澤先生がおっしゃっているので、それ以外の問題として利用者をもっと増やさなければいけないと思っています。民間から利用者を増やそうだとか、料金体系を定額化にしないとダメだという意見があるので、今、定額の料金体系をつくって、研究科の学生、先生全部まとめて面倒見るから、年間これだけ払えというような活動をしています。こういう形にして、センターのマシンを、自分たちの研究室のマシンとして使えるような体制をつくろうということです。それから、利用支援をもっと強化しなければいけないとも考えています。
 あとは情報学研究科と連携して得意な分野をつくっていこうだとか、コンテンツ作成を更に推進しようかとか、そういうことをやっていかなければいけない。地域活動もいろいろと課題を抱えております。
 それで今後ですが、私は基盤センターも情報学の1つの研究部門であるというふうに考えていて、特にアーキテクチャだとか、計算機の関連等は情報学研究科にそんな分野は要らないから、基盤センターで持つという話を主張しています。そういう形で情報の分野というのはどんどん広がるのだから、こういう実業のあるところは基盤センターに専任講座を持ってきて、やってくれという話を今しています。
 情報学というのは実は物づくりであって、つくったものが見えないというのが一番問題であり、そこのところをもう少し明確にして、その辺の方法論だとかなんかをしっかりやっていく。それを実践するのが基盤センターであり、大学の情報環境であるというスタンスです。結局、基盤センターは情報学の実践研究センターだと。医学部の附属病院と一緒だというスタンスで、サービスを社会に提供していくのだという話です。最近、サービスサイエンスみたいな話があるので、そういうことも含めてサービスそのものを研究の分野にのせていく。それは今、サービスをやっている基盤センターでしかできないのではないかという話をしています。
 また、これは京大に限らず、情報学の研究者が利用者支援教育を行うということ。これは最先端の研究者がいろいろと教育しないと意味がないというスタンスに立つものです。
 それから、大学院教育をもっと主体的に行っていって、もっとたくさん学生をとって、もっと実践的な話をどんどんやらなければいけないという話をしていて、もう少し大学院教育を主体的に行うような体制ができないかと考えています。ここで育てるのは大学に残る研究者ではなくて、企業へ就職して、もっと社会に出て本当に活躍するような人をどんどん育てていかないと、日本の情報産業は危ないという話をしています。
 この辺で出てきた研究成果というのは、当然、それを利用して情報環境を構築していくわけであり、そのような研究活動とこのようなサービス活動を一体化して持っていけないかと。また、持っていける体制はどうすればいいのかということを今後考えていかなければいけないのではないかと思っています。
 それで、スパコンだけではなくて、今後、大学内の情報基盤システムというのはどんどん広がり、文系を含むいろいろなところからいろいろな相談が来ると思われます。例えば、文系でも地域研究をしているところがデータベースを持ちたいということで、昨日も会議をしていたのですが、そういう話も支援してあげないといけないという話で、要するに大学の情報基盤の上でいろいろな研究がなされるのだと。その上でいろいろな研究のためのシステムが必要なのだと。だから、そういうことで大学全体を見ながら維持管理することが重要で、スパコンの計算サービスだけで今後やっていこうというのは、多分、限界だろうという気がします。教育支援もして、事務も支援して、情報基盤を一貫して構築するという話をやっていかなければいけないのではないかという気がします。
 大学全体の情報システムを構築しようと。そういうことに対しても情報的な研究要素がいっぱいあって、そういうことをしっかりやっていかなければいけないのではないかということです。
 ただし、すべてのサービスを基盤センターがやる必要はないと思っており、基本的にはその中で精査して、自分たちでやらなければならないところだけ、その中で研究分野として積極的に活動している分野、その業務というのは残していかなければいけないし、それ以外のところは外注なり何なりして持っていったらいいのではないかというように考えており、大学全体でどんな業務があって、その中でどういうところは外注に出せて、どういうところは学内でやらなければいけないかということを精査して、その上で人材育成と絡めて、どこを残して、どういう形でやっていくかということを切り分けていく必要があるのではないかと思っています。
 そういうスタンスでやっていくのですが、スパコンのところは絶対我々は持たないといけないと今思っています。
 情報システムの維持、管理は全部基盤センターが持つのですが、その上の情報の管理などの仕事はそれぞれの学部、研究科、いろいろなところでやってもらわなければいけないという気がします。
 それで、基盤からコンテンツへという動きをしていく必要があるのではないかということで、これからどのような情報を持っているかとか、どのような情報が発信できるかが大学の競争力みたいなものになるので、その辺をいかに支援していくかというあたりは、外注してはいけないだろうという話で、このあたりは我々がやって、研究能力の向上というか、大学の研究機能の支援をしっかりやっていかなければいけないのではないかというわけです。
 それから、あとは地域の核として大きな大学は活躍しなければいけない。基本的にはハードウェア系、物理的なものはそれぞれ大学でやらなければいけないが、基本的なサービスは核となるセンターから提供できるのではないか。海外では、グーグル、シスコ、サンマイクロが大学の情報システムを丸々提供しますという支援サービスをやっています。そんな話を見ていると、やはりこれは持たなくてもいいのかもしれないので、その種の簡単なサービスで、我々が一生懸命築いたものは近隣の大学にできるだけ提供していったらいいのではないか。何で近隣だ、何で全国でやらないのだというわけですけれども、問題が生じた際には飛んでいく必要があるので、近隣しかだめだろうと思います。
 それと、大学が核になり、産業を振興するような体制というのをぜひつくっていかなければいけないので、そういう意味ではスタンフォード大学がシリコンバレーをつくったり、卒業生が周りに残って、どんどん産業をつくれるような仕組みをつくっていかなければいけない。そういうことを考えると、先ほど言ったように、基盤センターが人をどんどん育てて、そういう人を周りに残せるような体制をつくることが必要ではないかというのが今後のビジョンです。
 それでは、そのような大学は基盤センター1つでやれるのかというと、決してそうではなくて、情報基盤提供はユニバーサルで、世界的にユニバーサルだから、いつでもどこでも誰でもというネットワークの運用拠点なんかが必要で、このサービスはあるレベルでは全世界共通でないといけない、連携しなければいけない。その上、研究組織というのは全国というか、全世界的レベル、そういう話なので、Virtual Organizationだとか、研究者が自由に移動できて環境が持ち運べるとか、そういうことを考えますと、基本的には連携は必要であるということです。
 その中で特に基本的な連携が必要なのは、計算サービスと認証サービスだろうという話で、ペタコンセンターといかに連携していくかとか、あるいは認証なんかで、これは学内だけではなくて、世界の大学とどう連携していくかを考えていく必要があります。最初から連携を考えて何かをつくっても仕方がないので、センターそのものをしっかり独立した形にして、その上で連携していくというモデルが今後いいのではないかと思っています。以上で終わりとします。

【有川主査】
 基盤センターだけを単独で考えるのではなく、情報学研究科等での情報学の研究教育、さらに、産業界のことも考慮した上での基盤センターを位置づけるといったことだったと思います。

【西尾科学官】
 2つだけ教えてください。1つは、多分IPアドレスごとに料金を徴収していると思いますが、もし可能であれば1IPアドレス当たりの負担額、さらに、その負担額の総計が年間でどのぐらいあり、それが何に使われるのかというのが1点。
 2つ目は、私も美濃先生が考えられたように、学問全体の中で、大学で実践の場を持つのは大学病院だけだと思います。その強みというのは非常に大きく、今言われたように、基盤センターを実践の場にしていくということは、大変アトラクティブだと思います。その場合に大学病院だったら患者さんがおられ、それをいかに治療するかという目的をもった実践の場なのですが、センターを実践の場としたときに、患者に相当するものは何と考えたらよいのか。産業界からのデマンドと考えたら良いのか。
 例えば、大学のキャンパスネットワークというのは、1つの大きな実践の場である。それを実験の場としていろいろな実践教育ができるのだが、その実践の場を形成するときに、何か目的のようなものがはっきりあると余計いいと思うのですが、例えば、それは産業界からの産学連携的な要求なのだろうか。それだけではないようにも思っているのだが。その2点を教えていただきたい。

【美濃委員】
 難しい質問ですが、最初のほうが簡単なので回答すると、教室のコンセントあたりは月300円。いわゆるKUINS3というネットワークの入り口のコンセントを1つ部屋につけると、月300円となっている。全学で年間大体2,000万円程度入ってくる。それをすべて技術者の派遣雇用費用に充てていて、トラブルがあったときに対応してくれるという話になっています。もちろんネットワークの設定変更だとかもすべてそういう技術者にやってもらいます。大体運営経費は4,000万円ちょっとかかっていて、その約40パーセントぐらいがそういう形で入ってきているという形になっています。
 それと、あと実践の場にするということについては、今言ったようにお金をとっていてサービスが止まったりなんかすると、すごいクレームが出てくるという話になり、クレーム対応で間違うと、いっぱい問題が起こってきます。まず、その辺から技術職員を教育しなければいけないというところから始め、システムをつくってサービスを提供しようということになると、それを使ってくれる人がお客なので、その人たちがいかに満足するかということが一番大事だと思います。実は、大学の中にいっぱいそういうお客さんがいるのだと、その先生方は一生懸命研究しているのだと、その研究がうまく進むようにきちんとサポートするのだというのが、まずプライマリーだと思います。
 実は、産学連携なんかをもっと進めながら、本当はもう少し会社とそういう形ができないかということを模索しているのですが、基本的にはそういう形でいけないかと思っています。

【土屋委員】
 同じような質問になるかもしれませんが、実際問題、お客さんがいなくなってしまったというか、これから増やさなければいけないというようなお話になっているけれども、普通の組織だと、お客さんがいなくなるともうおしまいになっているはずなので、これから増やなければいけないとかという議論そのものは非常に本末転倒という感じがします。
 いい例かどうかわからないが、今の課金の問題にしても、多分、そういうことを言ってやれるのは7大学のほうで、要するに我々のところのように、いわゆる中堅大学以下になったら、学内からお金を集めなきゃネットワークを維持できないのは当たり前なので、そんなことを言われる大学は、もうちょっとほかのところにもいろいろなものを提供してほしいというふうに言わざるを得ないと思います。
 2つ目は、課題のところの24ページ、25ページの全国共同利用の課題と書かれているところですが、ここの内容のどこが全国共同利用の課題というべき課題なのかがよくわからないので、ここにあるテーマのどこの部分が全国共同利用の課題なのかということを、もう少し説明してほしいと思います。

【美濃委員】
 最初のほうは学内の事情があり、ネットワーク等は基盤なのだから、大学からまず金をくれと言っても、なかなかもらえません。学部に分けてしまおうという話になるので、結局分けた金をどうとるかということで、利用者負担を考えないといけない。基盤のお金をそういう形で、今後とも利用者負担で集めていかないと、情報基盤には維持にお金がかかるわけだから、その費用を捻出しようとしているというふうに理解してほしいと思います。

【土屋委員】
 議論しているということだが、それはほかのところにとっては当たり前のことであると思います。

【美濃委員】
 全国共同利用としてどうしていくかということについては、京都大学として研究を強力に進め、それを周りの大学に何らかの形で使ってもらうような体制をつくろうというのが、ここに書いているところのポイントです。つまり情報学研究科と連携して、とにかく京大へ行ったらこんなことはすごくいい環境があるから、そこで使おうというようなものをつくらないと利用者は増えないというのが基本な考えです。

【土屋委員】
 だから、今まで増えなかった実績というのはどう評価すればよいのでしょうか。

【美濃委員】
 今までは、使わすだけであったということで、研究をその周りでしてこなかったというのが我々の反省です。したがって、魅力的なセンターになってなくて、計算機があるだけのセンターであったということです。だから、今後、そういう研究を周りに育てて、そういうところへ行けばこの分野はかなり魅力的だというふうな形に持っていって、利用者を増やしたい。それが1つ目の計算サービスの趣旨です。
 コンテンツ作成のほうは始めたばかりで、いろいろ取り組んでいますが、学内にすごくいい研究成果があるのだけれども、全然知られてない、見えてない、あるいは情報の技術を使えばもっと発信できるのにやってないというのを掘り出して、もう少し発信していけるような形を支援できないかというのが今後の課題で、これは学内だけではなくて、近隣の大学にいっぱいあるのではないかという発想です。

【山口委員】
 最後の発言にかかわることですが、情報基盤からコンテンツへというビジョンは大変おもしろいと思います。例えばOCW、オープンコースウェアのコンテンツ作成を事例として挙げておられましたが、学内のOCWへの情報基盤成果のかかわりというのは、今どのぐらいの規模になっているのでしょうか。質問の意図は、例えばMITは、90パーセントの講義がOCWにのっているので、そのコンテンツ作成をする専門家が20名から30名の規模でおり、人もコストもかけて構築しています。京都大学はどのぐらい基盤センターのほうでOCWにかかわっているのかが知りたいと思います。

【美濃委員】
 OCWに関しては、基本的には基盤センターのプロジェクトという位置づけではなく、全学共通教育のプロジェクトという位置づけになります。ただ、システムの管理運用に関しては基盤センターが面倒を見なければいけないだろうというのが1つで、管理運用を基盤センターがやっています。それで今、OCWのシステムを次どうしようかという話の相談に乗って、システム開発しようかという話をしている状況です。
 OCWの一番難しいのは著作権処理であり、その処理は知財活用室というのを持っているので、そのあたりか弁護士を雇ってくれて、京都大学全体として危なくないような措置をしてもらっています。しかし今100コースぐらいであり、京大全体で1万コースある上でのまだ1パーセントという小規模なものです。

【逸村学術調査官】
 今の話の続きみたいなところですが、例えばコンテンツ作成の中で15枚目の画面だったか、総合博物館への展示に関しての支援のようなことが書いてありましたけれども、京大は当然いろいろお持ちだと思うのですが、そこら辺の物理的なものとバーチャルというか、こういったWEBを中心とした作成だと思いますが、そこら辺の関係とそれに関してのアーカイブと、それと先ほど情報発信という言い方をしていましたが、メタデータの付与等々に関してはどのようなことを実際しているのでしょうか。

【美濃委員】
 メタデータに関しては、今、実はあまりアーカイブと言えるものが京都にないのでこれからつくろうとしています。昨日もちょっとその話が出て、京都大学にデジタルアーカイブをつくろうという話があり、文系の所長がいっぱい集まりどうしようかという議論をしました。そのときにやっぱりメタデータは大事だと我々は言うのですが、とりあえず彼らは物を整理してくれることがまず第一だと言って、全然話がかみ合わない。それでアーキビストが来て何が大事かというと、まず物理的には物をきっちり整理してほしいというのがアーカイブらしい。そうではないだろうと、デジタルアーカイブだからと大分言っているのですが、なかなかそういうところの議論ができていません。
 それでも何とかデジタル化しようというあたりは合意を得ているので、それから先は多分、メタデータをつけてどう検索するかというあたりがないと、アーカイブをつくっても仕方がないというのは我々はよくわかっているのですが、彼らはそれをデジタル化して保存すれば、それでオーケーだというような発想で、そのあたりをいかに今後やっていくかというのが多分一番大事な問題かなと思っています。

【逸村学術調査官】
 博物館系だとメタデータもいろいろあって、今のお話は大変よくわかるのですが、そのあとアーカイブというか、長期的に利用するマイグレーション等々に関してもぜひ美濃先生のほうで頑張ってほしい。特に京大は大きいと思うので。東大もそうなんだと思うけれども、ぜひお願いしたいと思います。

【有川主査】
 多分まだ話はあると思いますが、3つ目の説明の後で時間があれば、また続きをやりたいと思います。
 筑波大学計算科学研究センターの現状、課題および課題に対する方向性(筑波大学計算科学研究センター長 佐藤三久)

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 今日の前半は計算科学研究センターの紹介と将来ビジョンも少し話させてもらい、後半は一般的な全国の計算リソースに関する提言をしたいと考えています。
 これはいつも一番最初にうちのセンターの紹介に使っているスライドで、計算科学というのはシミュレーションを中心とするような計算科学の研究であって、今や理論、実験・観測と並ぶような位置にある方法論です。
 筑波大学はこういった意味において、並列計算機を使って計算科学の研究をやるのにかなり歴史があります。PACSシリーズと呼んでいますが、20あるいは30数年前から自分のところで科学の研究に必要な計算機をつくって、そこで科学の研究をやるというスタイルでずっとやってきました。
 わりとエポックメイキングなのは、CP-PACSというマシンがあり、これは1996年にいわゆる世界一、TOP500で1位をとったマシンです。今、学長の岩崎洋一先生がリーダーとなり、このマシンをつくりQCD関係の研究を行いました。現在、我々がつくった計算機でPACS-CSというクラスターがあり、後で簡単に紹介します。
 このように計算科学研究センターは全国共同利用施設でありますけれども、赤で囲っているところが強調しておきたいところであり、先ほど申し上げたとおり、計算科学をやっている科学者と計算機工学、計算機科学をやっている科学者が一緒のところにいて、アプリケーションドリブンな形で計算機をつくり、そこで計算パワーを集中的に投入して、計算科学をやるというようなスタイルでやってきました。
 そもそも始まりは物理学研究センターということだったけれども、法人化後もう少し範囲を広げて、ナノあるいは気象の部門を加えて、今現在31名の教員を擁するような計算科学研究センターになっています。
 こちらが大体の構成図で、前に2つ基盤センターの紹介がありましたが、私のセンターはいわゆる応用の人たちがきちんとそこにいるセンターであり、科学の研究を行っているところです。物質生命というのは物理、あるいは生命科学は生命とか気象のほうですが、筑波大学のスタイルとして研究科に属して、センターに勤務するというスタイルになっていて、あとはシステム情報工学研究科はコンピュータのほうですが、こういう形で研究センターができてます。
 これまでの代表的な活動エリアについては、まず先ほど話したように、CP-PACSというマシンがあり、それに引き続き、今はアクセレレーターとかという話がありますけれども、融合型の計算機を使った研究を10年くらい前にやっていて、これが今、宇宙用のシミュレーター、宇宙用の計算機に発展しています。それで、3年ぐらい前から特別教育研究経費、拠点形成の予算をもらい、今、計算機をつくるとクラスターなので、PACS-CSという計算機をつくっています。
 また、計算機だけではなくて、インターネットの時代ですので、データグリッドのアクティビティとかということもあります。これだけではなくて、各研究員、教員の方は科研費、あるいはCREST等の研究予算を持って研究をしています。
 これが今、現有するメインのマシンなのですが、今、14.34テラフロップスということで、我々が強調しておきたいのは、私は計算機部門なのですが、我々が設計して、メーカーにつくってもらったという計算機です。これを使って実際に計算を始めているわけで、ここにざっと並べたように、QCD、あるいはナノ、気象といったようなシミュレーションを実際にやって、研究成果を出しているところです。
 計算科学研究センターの、全国的な我が国の中での位置づけとしては、計算科学を推進するためというのが第一の目的であり、計算機と計算科学の学際的な融合体制をつくって、それで計算科学をやる。ここにあるNIA、あるいは先程美濃先生、あるいは米澤先生からご紹介があった基盤センターとはちょっと一味違うような組織になっています。
 大学における位置づけとしては、先ほど話したように、研究科から実際に応用をやっている人たちが集まってきています。
 関連としては、筑波大学には学術情報メディアセンターというのがあり、ここが先程のお2人の先生がおっしゃっていたような学内サービスをやっているところになります。それが今年になって情報環境機構という形になり、ここが学内の情報インフラを見ると。計算科学研究センターのほうはいわゆるスーパーコンピューティング、計算科学をやるというスタイルになっています。
 実は、学術情報メディアセンターでもスパコンを持っていたのですが、HPCに関しては主体的に計算科学研究センターが見たほうがいいということで、次期スパコンから、京大と東大と一緒になって仕様を定めている、いわゆるT2Kプロジェクトと我々は言っていますけれども、それで次のスパコンは我々がマネジメントするということになっています。
 全国利用に関しては、我々がつくったCP-PACS、あるいは今のPACS-CSを全国共同利用施設として使ってもらうという形で、次期スパコンに関しても同様の形で運用することになっています。基本的に特別教育研究経費をもらい開発したマシンなので、利用課金はなしで、資源を集中的に配分するというスタイルで運営しています。
 そのほかとしては、拠点性を持たせるということで、計算科学分野のセンターシンポジウムの開催、あるいはデータベースとして、私のところは素粒子物理学が非常に強いので、素粒子物理に関するデータグリッド、あるいは気象のデータを公開しています。最近になって人材育成も重要だということで、セミナーもやっています。
 最後にどういう形でやるかということで、全国共同利用をPACS-CSのほうで始めていますが、下のほうが従来やっていたもので、実際にこの計算をやりたいから、使わせてくれという形でプロポーザルを受けて使ってもらうことなのですが、もう1つ我々のセンターでやっているようなアクティビティをきちっと全国で展開していきたいということで、学際開拓プログラムということで違う分野の、例えば典型的には計算機側と、例えばこういうプログラムを並列化したいと。こういうアプリケーションを持っている人たちが来て、計算機の人たちと一緒にやりたいというプロポーザルを受けて、それを支援するというプロジェクトを始めたいということで、学際的な取り組みを支援するようなプロジェクトを今始めています。まだ実体はなかなかなくて、これから盛り上げていかなくてはいけないところなのですけれども、こういう方向に向かってやっていこうと考えています。
 センターの方向については、前半はうちのセンターの話をし、後半は全国的な話をしたいと思います。
 ビジョンとしては4つ挙げてありますけれども、研究、人材育成、基盤、国際化あるいは連携ということで、研究に関しては学際的な計算機と計算科学をきちんとマッチングさせて、コーディネートするということをきちんとやっていきたいということで、先ほど紹介した学際共同利用プログラムをやっていく。
 もう1つ、今、計算科学というとシミュレーションサイエンスを思い出す方もいらっしゃいますけれども、もっと多様な展開を見せております。例えばセンシンググリッドと言われていますが、センサーを直にいろんなところから集めてきて、そのデータをリアルタイムで使って、いろんな計算科学をやるだとか、美濃先生と一緒にやらせてもらっていますが、いろいろなビジョンをいろいろなところから集めてきて、例えばデータマイニングするとかということもあるので、そういった広がりを持つ次の計算科学をやりたい。
 それで、次に人材育成ですが、これは最後に資料をつけさせてもらっていますが、Dual degreeのプログラムがセンター主体となっているとか、大学院の共通科目というのが今年筑波大学で始まったので、それをやるとかということを考えています。
 基盤に関しては、計算科学のコミュニティにとっては、ペタフロックスのコンピュータというのは非常に重要なことなので、センターとして理研に、私も含めて客員として位置づけてもらって、実際に共同研究をやって、どういうマシンをつくるかということについて主体的にかかわらせてもらっています。
 ネットワークに関しては、グリッド技術をきちんと計算科学の中に入れる、あるいは先程話したように、京大と東大と連携するとかという活動。あと、筑波という特殊性から考えれば、筑波にはいろいろな国立研究所があるので、そこといろいろなことをやるということを今センターを中心に進めていこうと考えています。
 学際計算科学というふうに言っていますけれども、これまでの計算科学というのは何々の計算科学、例えば物性の計算科学というのがあって、その計算科学は、こう言っては悪いけれども、基盤センターの計算機を課金を出して使って計算をやるという話でしたけれども、我々はそれではだめだというふうに考えていて、もっと計算機をやっている側ときちんとコラボレーションするような体制、あるいは計算科学の中には分野は違っていても同じようなモデルを持つようなものがあります。例えば気象の中の雲のシミュレーション、例えば輻射を扱うようなシミュレーションは、ちょうど宇宙の輻射を扱うようなシミュレーションと大体同じようなものがあって、それをコラボレーションできるところがあり、そういうところで計算科学を軸に連携していくということを推進していかないといけないと考えています。
 それで、ここからは一般的な話になりますけれども、実は一番最初のスパコンのペタフロップスの開発のところを見てもらえればわかるのですが、筑波大学の我々はスパコンの開発について結構コミットさせてもらっています。
 それで、先日あったスパコンのシンポジウムにもパネリストとして参加し、その中の物性のところで話をしましたが、まず一番最初に普通のアプリケーションの人たちはスパコンが来れば速くなると思っている。実はこれは計算機の専門家から言えば全然違うことであり、むしろ1個1個のプログラムは遅くなります。そこで大切なのはきちんと並列化する。高速化するには並列化する必要があり、そういうことを考えると、アプリケーションの人たちがアプリケーションの中で速い計算機を待ってやっているというスタイルはもう終わって、きちんと計算機科学のほうと一緒にやるような体制をつくらなくてはいけないという話をしました。
 それでもう1つは、これはいわゆる基盤センターとの関係なのですが、資源の有効利用という観点からいえば、次期スパコンというのは、次期スパコンでしかやれないことをまず考えるべきだと。せっかくあのくらいの大きなマシンなので、それで日常の計算をやってしまうと、それは何のためのスパコンなのかわからなくなる。逆に基盤センターのほうから見れば、全部お客さんがペタコンにいってしまうと、基盤センターがつぶれてしまうということになるので、それはきちんと位置づけて使ってもらわないといけない。それで、大学のセンターは資源というよりも、もっと人材育成に力を入れてもらってやるべきだというふうに考えます。研究室の計算機からセンターマシン、あるいはペタコンまでを全部連携できるような使い方を考えるべきだというふうに思っています。
 これからのセンターへの在り方として4点ほど指摘させていただきますけれども、まず1つは、前のお話にもありましたが、計算リソースを提供するという話については、もうそういうふうな話ではなくて、センター自身でもきちんと研究をやらないといけない。我々のセンターでいうと、きちんと計算科学をやるような体制をつくる。例えば美濃先生あるいは米澤先生のセンターの場合、もう少しソフトウェアをきちんとそこで開発するというスタイルにしないと、なかなかセンターとして独自の色を出していけないのではないかと考えています。
 同じようなことを言っていますけれども、計算資源から人材資源へということで、計算機の本質はやっぱりユビキタスだということで、今やネットワークさえあれば全国どこでもいいわけで、箱物からの脱却というふうな話もありましたけれども、だんだん相対的にハードウェアの値段は安くなって、どんどん大きい計算機を買えるようにはなっておりますが、例えばペタコンを持つような話というのはなかなか難しくなっている。この辺りは何らかの意味で集約、あるいは自分のところで持つという発想からは脱却しないといけないんじゃないかと考えています。
 ただし、やっぱりこのような計算をやりたいということであれば、きちんと計算機の運用、あるいはどのような計算機が必要だということについては、きちんとコミットしていかないといけないと。ただ買ってきて、どこかにやるという話ではないということです。
 最後に、持っているから使いこなせると。持っていることが重要なのではなくて、使いこなせるノウハウを持っていることがセンターにとって重要だというふうに考えています。
 VOというお話もありましたが、これからはネットワークの時代なので、サイバーインフラストラクチャーの教育・研究を支えるような基盤になるべきだと考えます。例えば私のセンターでは、計算科学のコミュニティをコーディネートできるような組織を目指してやりたいというふうに考えています。このような取り組みというのは次のスパコンではなくて、次の次のスパコンあたりではこのような連携の中で組織をつくって、開発していけるような体制までつくらないといけないと考えています。これはアメリカのNSFが最近出したドキュメントで、我々のコミュニティではあちら側の10ペタをつくるための根拠を示したベーシックプランです。でも、そこには全然そういうことは書いてなくて、むしろそれを含めたような教育・研究体制をどうすればいいかということが書いてあって、非常に参考になるようなドキュメントだと思っています。ぜひこのような議論をしている方にはご一読いただきたいと考えています。
 最後に利用に関して戦略的にコミットするべきというのは、実はこれは課金の話でして、事実として、最近、物性のコミュニティの人たちと話しをするのですが、あまり基盤センターの話が出てきません。彼らは分子研だとか物性研のスーパーコンピュータを使っていて、なぜあちらを使うのかというと、課金がないからです。もう1つの事実として、最近、センター長になってから、例えばヨーロッパのスパコンセンターの話を、スパコンをやっている友達といろいろと話しをするのですが、センターを維持していくためには電気代が大変だよと。それで、センターを運営している皆さんにとって利用負担金というのは、大抵は電気代をどうやって出すかというふうな話です。
 でも、1つ思うのは、結局、利用負担金を払えばユーザーが自由に使えるという体制になってないということです。ヨーロッパの例えばブレスラーのコンピュータのオペレーションをしている人に聞くと、もちろんただで使わせるけれども、そのかわりその使うことについてはきちっとコミットさせるというふうな体制になっていて、科学の研究としてやるべきことについては、利用負担金を払ったから自由という話ではなくて、きちんとやってもらうために、ただというか、それを使って研究をやってもらうようなことを運営側としてきちっとコミットしていくべきではないかなと思います。以上で終わりとします。

【有川主査】
 最初の2つのいわゆる全国共同利用の大型計算機センターからスタートした情報基盤センターとは大分変わった取り組みであり、多分、計算科学という言葉が生まれる前からそのような視点からの取り組みをしてきたのだと思います。また、非常に新しい視点も見えてくる話をしてもらいましたが、まず佐藤先生に対する質問をいただき、残り約30分程度の時間をうまく活用しながらディスカッションができればと思います。ただいまの発表に対し質問があればお願いします。
 最後のところの、成果に対するコミットメントを求めるというのは、もう少し具体的に言うとどういうことなのでしょうか。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 一例としては、今現在の基盤センター側の運用を、T2Kという形で連携して調達をしてもらっていて、下の人たちと話しをすると、一番の問題点は運営経費をどうやって集めてくるかという話になります。だから、それはセンター的に見れば、電気代をどういうふうにして捻出するかという話になりますが、1つはユーザー側の立場から見れば、利用負担金を払っているということが、自分たちがいいかげんにというか、こちらがきちんと使ってほしいのに、きちんと使わなくてもいい、あるいはいい理由になってないかということです。
 だから、ただという話ではないのですが、例えばうちのリソースだと、基本的にフリーで使ってもらっているけれども、そのかわりうちのセンターとしてきちんと成果を出してもらうということを我々が強くコミットします。こうやってもらわないと、皆さんスパコンというのはどのくらいお金がかかるものなのかというのは、なかなかピンとこないと思うのですけれども、例えばPACS-CSの場合だと、1日の経費が大体200万円になる。うちのセンターの人たちに強く言っているのは、200万円で2,000CPUなのですが、それの10分の1でも使えば20万円になる。1日20万円使っている重みをきちんと考えて使えということを言っているのです。逆にお金を払って、もちろん、だから科研費をとってきて、100万円とか200万円を払うのは結構研究者にとっては大変ですけれども、払ったからいいかげんな計算をしているわけではないと思いますが、普通のパソコンでもやれるような計算はやってないかということです。
 せっかくスパコンを入れて、スパコンで計算をやるので、特にペタフロップスのコンピュータ等だと、そういうところにきちんと運用する側から口を出して強制させるようなことをやらないと、せっかく大枚をかけて設置するようなコンピュータがもったいないというふうに思うわけで、そこら辺は逆に運用側できちんとやれるような体制にするべきだと思います。

【土屋委員】
 今の質問と同じなのですが、今、先生が最後で言った、課金なしにしたかわりに戦略的に成果に対するコミットメントを求めるべきということは、課金を無しにして、要するにお金を払わない人に対してコミットメントを求めるべきということですか。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 お金を払わないのではなくて、あなたはこのくらいの、つまりお金のかわりに計算機の代金をもらっているということです。

【土屋委員】
 だから、コミットメントを求めるべきというときのコミットメントというのは、具体的に何をしろと言っているのでしょうか。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 その価格のスパコンを使った分だけの研究をしてほしいということです。論文をきちんと書いて、世界的な成果を上げてほしいということです。

【有川主査】
 それでよろしいわけですか。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 この研究は筑波大学のコンピュータを使って初めてできたことだというような、そういった成果を出してほしいということです。

【有川主査】
 もちろんそうでしょうが、そういったことを求めるという、単に気持ちの問題でよいのでしょうか。

【山口委員】
 それに関して評価はセンターがやるのでしょうか。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 センターがやります。最後のシンポジウムなり、そのようなところにそのコミュニティの人たちに集まってもらい、評価というか、成果発表はきちんとやってもらいます。

【米澤委員】
 今のことに関係して言えば、現在の各情報基盤センターというのは、箱物的で、センター内にはあまり研究者を抱えておらず、共同研究をしたり、課題を審査するような形態にはなっていません。
 筑波センターの共同研究では、マシン使用料に課金することはあるのですか。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 やっています。

【米澤委員】
 そこで何で課金をただにしろという精神論が出てくるのかあまりわかりませんでした。誤解しているのかもしれませんが。

【有川主査】
 審査は、大型計算機センターでは初期のころやっていました。そのころは大型計算機センターのものが、計算資源としてはほとんど唯一であり、センターにしかみんなが使えるものはないという状況だったので、課題を審査して利用させていました。

【土屋委員】
 今の有川先生のお話は非常に参考になると思います。つまり今基盤センターとかを考えているとき、要するに教育と研究、両方にとってのインフラストラクチャーという観点で見ていると。最初の基盤センターをお話になったお二人も、基本的にインフラストラクチャーをどうやって維持するかという観点があって、僕もさっきから皆さんに聞きたいと思っていたところです。
 それともう1つは、情報学という情報学、情報科学というところのいわば1つの核となるような、しかし単に座学を教室で教えるような話ではなくて、きちんとユーザーのいる実践の場として考えているという意味で情報学、情報科学に対しての重要な位置づけだというのがあって、それで今筑波の話で、インフラストラクチャーといっても、ある意味では将来のすべての科学が計算科学になるということはあるのかもしれないけれども、そういう意味でのインフラストラクチャーという観点で、我々が普通に考えるようなインフラストラクチャーとちょっと違うというのがありました。
 つまり、今日の話を聞いていると、少なくともその3つの筋があるように思うのですが、その辺をどういうバランスでそれぞれのセンターで、大体わかることはわかるけれども、もし今みたいな分け方をしたときに、どういうバランスになっているかという形で説明してもらえれば、わかりやすくなると思います。

【米澤委員】
 私が最初、箱物と言ったのは、要するにインフラストラクチャーであることは変わりませんが、インフラストラクチャーのあるべき姿が変わってきた。もっとツールとか、ソフトウェアシステムとか、そういうものをきちんと基盤センターに用意しないと、単なる箱になってしまい、本当のインフラにならないのではないか?そこの理解が足らないと、ユーザーがいなくなってしまう危険がある。現在ではポテンシャルのユーザーは幾らでもいるのに、まともなインフラになっていないと潜在需要を逃してしまうことになるのではないでしょうか。

【土屋委員】
 東大の4部門というのは10年ぐらい前に改組したままだと思いますが。

【米澤委員】
 それは7~8年前のことですが、その部門の改組というのは大したことではありません。

【土屋委員】
 多分、それは形式的なことですけど。

【米澤委員】
 形式というか、その構造を変える必要がないと考えたのかもしれません。

【美濃委員】
 今の質問はすごくよくて、我々は大学内の情報基盤はもちろんネットワークと、ネットワークサービスにしても最近の要求は線を部屋まで引くだけではだめだという話を聞き、その後、つないだときに動かなかったら、サービスに来てくれというところから始まって、おかしなことが起こったら問題を解決してくれというところまで情報基盤というのはなってきています。つまり最近はネットワークなどは水道の蛇口だという議論がなされていて、蛇口をひねったら水は出るのだから、電源を入れたらつながって当たり前で、それがダメになったら、基盤センターは飛んで来いとかというような話まで出てきつつあります。
 それで、先ほどの料金の話ではないのですが、我々はどこまでのサービスをしたらどれだけ金がかかるというリストをつくり延々と議論してもらい、結局、300円ぐらいでいいという話になったのですが、それはネットワークの接続口までの責任プラス問題切り分けぐらいまでにしようという話で、料金を決めさせてもらったというところがあります。
 だから、ユーザーからしてみたら、それはもちろん蛇口をひねったらすぐ水が出るから、それでオーケーだというぐらいのレベルを期待されているというのはよくわかるのですが、限られた人員とお金でそこまでのサービスはできないというのが現状です。
 それで、基盤のところはどうなんだと。基盤のところはできるだけ技術職員でできるように我々は技術職員にきちんと教育する、あるいはそういう体制をつくるということでいきたいというのが、将来の話で、今そうできているというのではないのですが、そういうことに持っていきたいというのがその最終の目的です。
 我々がメインに活動するのが真ん中のところで、情報学のコアとして、実践の場としてサービスまで全部やるところを中心にやりたいのですが、プラス、今の佐藤先生の話もすごくよくわかっていて、我々のところの大口のユーザーがちょうど気象のシミュレーションをしているのですが、そういうところに入っていって一緒に研究しようという話はしています。ただ、プログラムの技術だけではなかなか共同研究はできないというのも事実です。したがって、そのあたりになってくると、ちょっとすぐには辛いというのが印象で、だから我々としては情報学の本当の本場のところで実践研究をちゃんとして、人材を育てていくというのが、基盤センターの現場の大きな役割かなと考えています。
 だから、比率いくらかと言われると、ちょっと答えにくい。真ん中が一番中心で、右と左をちょっとずつやるという形かなと思っています。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 うちのセンターはわりとネットワークインフラその他のインフラ、学内インフラに関しては情報環境機構というところがやっているので、主に計算科学、つまり科学の研究をやるのに主体があります。それで、もちろん彼らにとってはインフラなわけですけれども、まさに米澤先生が話したように、あれは彼らにとっては装置なわけで、それがないと研究していけないということなので、そういうコミュニティをきちんと維持していくのがうちのセンター、あるいは全国的な使命だというふうに考えています。
 それで、美濃先生が話したように、連れてきてどうこうとかいっても確かに難しいところがあります。実はうちのセンターでさえも、なかなか一緒にやるというところについては苦労しているところもありますけれども、もともと一番最初にあった計算物理学、いわゆる素粒子の計算というのは今や計算機がないと生きていけないような世界なので、あそこのコミュニティは我々計算機プロパーの人よりも知識を持っているくらいです。だから、そういう風土みたいなカルチャーを育てていく、そういうふうな分野を維持していくというのがセンター、特にうちのセンターの重要なミッションではないかなというふうに考えています。

【後藤委員】
 佐藤先生が発表する前に質疑応答のところで、今までみたいに自分たちで設計してつくっていくというのから少し変わっていくというふうな趣旨の発言があったかと思いますが、それがこの発表の中にあったT2Kというものだと理解してよいでしょうか。
 それで、質問したいのは、共通仕様ということは十分理解でき、運用のほうも連携されるということがちょっと出ていたかと思うのですが、その場合の運用というときに、今ちょうど話題になっていたような、お互いに少しずつ工夫があって、現状は違っているかと思います。そういったあたりは何か既に話がされているようなところはあるのでしょうか。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 つくっていくのが難しくなるという話については、特に私の言っている意味はペタコン対応です。つまり今までうちは世界一の計算機を持っているんだから、一番偉いセンターだというふうなことを言っていたわけですけれども、例えば地球シミュレーターなり、今度神戸にできる次世代スパコンのようなものを考えれば、もうそういう言いわけは多分言えなくなってしまう。それでも特徴のある計算機をつくっていくようなアプローチはありますが、長期的にいえば今ペタコンをつくるのに1,000億円かかりますけれども、その1,000億円の予算を1大学でつくるなんていう話はもはやあり得ません。
 ですので、さきほど説明しましたけれども、将来的には何大学、あるいは基盤センターで大学としてつくるのであれば、このような基盤センターのネットワーク、あるいは集まりを利用して我々というか、コミュニティで必要な計算機を自分たちで設計していくというアプローチがあるかなと思います。でも、これは夢物語ですが。

【後藤委員】
 先程もちょっと言われたコンセントは物理的なコンセントでということだと思いますが、発表の中ではオーバーロードであるとか、仕事がどんどん増えるというふうなことがあったかと思いますが、それの度合いと先ほど工夫されたあたりというのは、大体今のやり方で、例えば300円というのを改定すれば、これは極論かもしれないが、しばらくのところはいけるのか、そういうものではちょっと対処できないようにどんどん仕事が増えている状態なのか、その辺の実感のあたりを教えていただきたい。

【美濃委員】
 現状のシステムを維持管理するだけなら、今ぐらいの金額で大体できます。ただ、機器は老朽化するので、それを置きかえていったり、建物をどんどん建てていくので、変えていったりという費用は今のところ全くないということです。
 ネットワークも認証系が入ってきたり、多分、認証が入ったらもうパンクだなと私は思っているのですが、データベースの更新だとか、そのあたりを誰がするのだという話があって、事務から本当に人は来てくれるのかというような話をもうそろそろ交渉しなければいけない。そういうところも含めパンクだなと。それと、あとセキュリティ対策の例のスパムのチェックだとか、ICの監視だとか、そういう話がどんどん増えてくる。
 今のところそういう話は教員のボランティアでやっているという形になっていて、組織として対応しているかというと、一応委員会だけはつくってやっているが、ほとんど教員が働いているという状況です。それをもう少し今後は組織としてつくっていかないといけない。そうでないと、教員がいなくなったらどうするのかとかいう話も含めて組織的対応ができない。そのような組織づくりの必要性はつくづく感じています。
 だから、そういう意味で先程の夢物語みたいに、先生は運営委員会でアドバイスとかという話では全然なくて、ほんとうに泥沼に浸かって仕事をしているという状況です。この前、教育システムの監査というのを行って、どれくらいシステム運用がなされているかというのを、外部から来てもらって監査したのですけれども、完全に人が足りないと言われました。このような体制では担当している人に知識がたまっていて、教員がサポートしているからかろうじて動いていると。だから、ITマネジメントをもっと考えるなら、人ももっと増やさなければいけないという報告書をもらったのでもう少し進めていきたいと思っています。

【伊井主査代理】
 筑波大学には8月の末に、研究環境基盤部会委員による附置研究所等の訪問で実際に現場も立ち合わせてもらいました。ほかとはすこし違った組織形態になっており、それぞれの研究科に所属した先生方が集まって構成されています。人材養成の観点からそれぞれ所属している研究科で教育しながら、このセンターでのトータルの部門としての人材養成というものをどのようにしているのだろうかということが1つ。
 もう1つは、先程初めにもありましたコミットメントするという場合、収入の方途というか、方法をどのようにこれからお考えになっているのか、その2つを教えていただきたいと思います。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 最初のお話は人材育成という話ですけれども、もちろん何とかの計算科学という形では、その分野の中で教育をされていて、例えば素粒子であればもちろん物理学の知識がきちんとあるということが前提となるわけで、我々のセンターで行うべきことはプラスアルファの部分だと思います。
 そのプラスアルファというのは何かというと、例えば物理というか、応用の人たちだと、いわゆる計算機をどうやって使うのか、並列化をどうやってやるのか、ハイパフォーマンスにするためにどうすればいいかということを教育するということで、それについてはセンターでセミナー等をやっていますし、そういったコラボレーションを大学院生の人たちも含めてセンター内でやっているという雰囲気をつくるということが、プラスアルファになっているのではないかと思います。
 実際の形としては、例えば来年から始めようとしていますが、物理学がプロパーで計算機側がサブという、マスターという形のDual degreeのプログラムを動かして、形にしていこうということを今計画しているところです。
 次に、コミットメントの話についてですが、せっかく大枚をかけて準備しているリソースなので、それをやっぱりきちんと使ってもらうということを利用者の方たちにはきちんと言って、それをどういう形で確認するか、あるいはエバリュエーションするかということについては、きちんとその分野のコミュニティというか、外部の審査員の方も含めて、例えば計算物理学のコミュニティの人たちに集まってもらって審査するという形で、クォリティについてはコミットメントというか、確認しているという運営をしています。

【山口委員】
 佐藤先生と米澤先生お2人に少々違った切り口からの質問をしたいのですが、今後の情報基盤の在り方、情報基盤センターの在り方を考えていく上で、将来ビジョンとか、今後のサービスの議論が必要だと思います。お2人ともご説明の中で、国際性を高めるという点と、それから国際化またはその連携の強化ということがありましたが、具体的にどのような連携とか、共同研究と情報基盤を使った形で行う計画があるのか。
 東工大の学術国際情報センターは、2つのセンターが一緒になって5~6年前に改組してできたのですが、国際部門というのがあり、今3本柱で、例えば国際機関と連携した上での情報技術の発展途上国への導入や、スパコンを国際共同研究として使い、自然災害プリベンションのための研究など、これはアジアの国々の政府と一緒にやっています。今までの経験からすると、国際連携の在り方も多様性を持ってきていて、人材もコストもかかるというのがわかってきているので、2つの大学ではどのような取り組みを計画しているのでしょうか。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 基本的には各分野分野のコミュニティで人的な関係を発展させて、共同研究に対するファンディングを獲得していくというやり方を積み上げていくしかないと思います。
 あと、リソース的には例えば3大学が連携しているT2Kの取り組みくらい大きくなれば、例えばアメリカのNSF傘下の研究所とコラボレーションしたり、あるいはリソースの貸し借りをしたりとかという発展性も考えられると思いますが、そこら辺は手探りの状態です。
 具体的な計画としては、特別教育研究経費で予算要求をさせていただいていますが、来年から重点的な課題をCP-PASCでやるという計画を持っており、その中に必ず海外から3カ月とか、そのくらいの招聘をするという制度をつくり、ペアペアでまずは関係をつくっていかないといけないかなというふうに考えています。

【有川主査】
 国際連携に関しては他の二人も触れておりましたが、特に何か発言があれば簡単にお願します。米澤先生、美濃先生。

【米澤委員】
 基本的には人的な交流です。だから、マシンを外国の人に使わせていいのかどうかという問題が結構あります。それは昔のココムの問題もあるので、それで簡単にグリッドで結ぶというわけにはゆかず、そういう後ろ向きの要素もあるので、慎重にやっています。人的な交流はもちろん先生方とか、向こうから人を呼んだりということはやっています。

【有川主査】
 計算機の国際利用に関しては、もう十数年前の話でありますが、私も大型計算機センター長をしていた時期があり、ちょうど日本が昼のときにヨーロッパは夜だということで、計算資源の国際共同利用による国際協力を考えたことがありました。夜間の運転経費を何とかしたいというのが本音でしたが、人が外国にでかけるのではない、国際交流が、コンピュータをネットワーク経由で使うことによって可能になると訴え、スウェーデンの理論物理系の研究者との共同研究が進展しました。ココムの問題があったので、当時の文部省にも相談しながら実施しました。

【美濃委員】
 基本的には、計算利用というのはなかなか難しいので、研究は個人的なつながりでやろうという話でした。我々は教育支援もしているので、今一番議論しているのは国際遠隔講義、つまり外国と一緒に講義しようという話を、大学としてプロモートできないかという話。そういう組織をつくれないかというのを何で我々が言いに行くのだろうという話はあるのですが、今までいろいろやってきて、かなり効果的だということが実証されましたので、ぜひそういう組織をつくってほしいという話を今言いに行っています。たまたま慶応大学と今度包括的協定を結んで、慶応大学もいろいろそういうことをやっているので、その辺で連携しながらそういうことができないかなというのを考えているところです。

【上島委員】
 やっぱり人材育成のところなのですが、Dual degreeというと、筑波の場合は物理のイメージが非常に強かったので、そちらのDual degreeという形で展開していると思いますが、こういういろいろな分野で、大学における共通科目の研究科への展開とか、特にグローバルCOEとか、そういったことでその辺の整理というか、援助が大分求められているような部分もあると思いますが、それはこの3センターでそういった方向の動きを持っておられるのかということを質問させていただきたいと思います。

【有川主査】
 3センターということですが、もう時間がないので、どこか代表して1つ。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 グローバルCOEについては、出しているけれども、まだ努力しなくてはいけないようなところです。特にグローバルCOEについては、研究というよりも人材育成を重点としないと、いわゆるCOEの拠点性がないということになるので、私がセンター長になってからはむしろ教育側で何をやれるかという、いろんなことを考えて、Dual degreeあるいは大学院共通科目もその一環として考えて、人材育成をやろうと考えています。

【西尾科学官】
 人材育成の重要さを佐藤先生が言われ、非常に大事なことだと思いますが、計算科学分野の人材育成ということになった場合に、例えば今のお話だと、物理分野のバックグラウンドナレッジを持った方に計算機に関する知識をさらに教えていくことが考えられます。しかし、計算科学のバックグラウンドとしては、ナノあり、バイオあり、さらに、例えば自動車製造分野もシミュレーションを駆使した機械設計をしている昨今では、機械工学的なバックグランドまでも必要になってきています。そこで、真の計算科学者の人材育成をどうやって行うのか、コアのカリキュラムは何なのか、さらには、既にバックグラウンドの知識を有していないと計算科学者になれないのか、というような疑問が出てきます。特に、バックグラウンドナレッジを有していないニュートラルな状態から出発して計算科学者を育てていけるのか、という議論は、そのための教育カリキュラムの内容等とも関連して、今後、非常に大事な問題です。
 このような問題に対して、どのようにお考えなのかをお伺いしたい。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 日本ではなかなかそういうカリキュラムを持つところはまだないというか、名古屋で数値計算を強くやっている21世紀COEのところでは、そういう取り組みをやっているというふうに聞いていますけれども、私のところではむしろ計算機寄りのほうなので、まだそこまでいってないところです。アメリカではサイアムが中心となってカリキュラムをつくっている。それがすごく参考になると思います。

【西尾科学官】
 僕は先ほど先生がお話しになられた中で、2つの異なる分野で本質的なところを考察したら共通している概念があったとかおっしゃられた事項などは、計算科学のコアとなる概念として生き残ると思います。今後、そのような計算科学のコアとして生き残るもの、使えるものを見つけていくことが非常に大事なのではないかと思っています。

【佐藤筑波大学計算科学研究センター長】
 そのとおりだと思います。

【有川主査】
 特に佐藤先生が最後言われた教育というか、Dual degreeとか、大学における共通科目というようなところで、この計算科学あるいはコンピュータの利用ということに関して、そうした取り組み方をするというのは非常に大事なことだと思います。
 私自身もまだたくさん聞きたいことがありますが、時間が来てしまったので、本日の議論はこのくらいにしたいと思います。本日ご発言いただいたことは後ほど事務局で整理し、若干の修正などはしてもらい、名前を付して公表することになります。
 後で事務連絡がありますが、その前に勝野課長、もし今日のところで何か特に発言があればお願いします。

【勝野情報課長】
 本日は非常に時間も短く、十分ご発言いただけなかった先生方がいるかと思われますが、また先生方にはそれぞれ情報基盤センターのほうにご視察いただくことになりますので、その際に各センターの特色等もできるだけ発表していただくように事務局のほうでお願いしたいと思っています。また、その機会にいろいろと意見交換していただくとともに、その結果についても次回以降この部会に持ち寄っていただき、全体として議論を深めていただくという形で進めさせていただきたいと思います。

【有川主査】
 今日は、情報基盤センター等からの発表という初めてのことを行いましたが、実りある議論ができたと思います。特に、ご発表いただいた先生方には本音の話をしていただいたと思っています。今後また何回かこういったことを続けることによって、方向が見えてくるのではないかと思っています。
 それでは、次回以降のことなどについて、事務局からお願いします。

【小酒井学術基盤整備室室長補佐】
 次回の開催は11月8日(木曜日)15時から17時半、会場はこの建物と同じ、2階の中会議室を予定しています。また、詳細については追って開催通知等を先生方に送らせていただきます。
 また、情報基盤センターへの訪問に係る詳細についても、訪問委員の先生方に別途メール等で事務局からご連絡をさせていただきます。

【有川主査】
 これで本日の委員会を終了とします。

─了─

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