研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第7回) 議事要旨

1.日時

平成19年4月27日(金曜日) 13時~15時

2.場所

国立情報学研究所大会議室(学術総合センター22階)

3.出席者

委員

 有川主査、伊井主査代理、潮田委員、小谷委員、坂内委員、土屋委員、美濃委員、山口委員、米澤委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、勝野情報課長、井深学術基盤整備室長、小酒井学術基盤整備室室長補佐、膝舘情報研究推進専門官
(学術調査官)
 逸村学術調査官

4.議事要旨

(1)資料1に基づき、第4期委員の紹介が行われた。また、有川主査から研究環境基盤部会運営規則により、伊井委員が主査代理に指名された。

(2)事務局より、資料2から5に基づき、本作業部会の概要等と今期検討を予定する内容について説明が行われた。その後意見交換・質疑応答が行われた。

(○・・・委員、学術調査官、△・・・事務局。以下同じ)

○ 学術情報基盤の整備は、欧米各国も含めて今、非常に大きく動いているという意味で、スピード感が必要である。ミッションとして「対応方策等の検討」という言葉が使われているが、ここに「推進」を含め、「対応推進方策等の検討」と記述してはどうか。

○ 大学では、学生に対する支援が、大学が行う支援のかなりの量を占めていることは事実だと思う。次世代の研究者が利用するということを考える場合、その研究者は学生から必ず出てくるわけだから、ある程度、学生への支援ということを反映してほしい。大学あるいは高等教育、次世代の研究者の基礎づくり、というような感じの内容を検討事項に入れる必要があると感じる。

○ 教育ということも検討事項にうまく位置づけておく必要があるのではないか。

○ 教育用の計算機システム等の話についても、どこかの時点で議論したい。

○ 学術情報基盤について、現場の大学の先生方と議論した際、学術研究だけではなくて、学術研究・教育の基盤という位置づけとすることで共通認識をとったことがある。学術研究、教育の振興ということで両方議論してはどうか。ただし、おのずから限度はあると思うが。

△ 基本的に、学術情報基盤の在り方について検討することが、本作業部会の本来の役割と考えている。学術研究の振興を考える上では、次世代を担う人材育成という点も大きな課題の一つと考えているが、教育ということが前面に出ると、大学における高等教育全般を本作業部会において守備範囲に入れると誤解を与えかねない。そこで、学術研究の振興及びそのために必要な次世代の人材育成というような趣旨で、主査と相談の上、修正させていただきたい。

○ 教育全体にまで対象が広がると、当然大変であるが、資料4の学術情報基盤の今後の在り方についてのところでは「支える人材が重要」、またコンピュータ、ネットワークのところでは「人材の育成の重要性」、さらに大学図書館のところでは「人材の確保・育成、教育支援サービス」という言葉が出てきている。これらに表れているような育成とか、教育というようなことに関しては、関わりを持ちながら、議論していくことになると思うので、事務局からあったように、その辺を意識してまとめ、次回にその結果を改めてお示ししたい。

(3)事務局より資料6及び7に基づき、我が国の学術情報基盤等の現状について説明が行われた。続いて坂内委員より、資料8に基づき「最先端学術情報基盤形成の現状と展開」について説明が行われた。その後意見交換・質疑応答が行われた。

○ 平成19年度の経費措置について、国立のみでなく、私学助成における情報関係予算についても示してほしい。

○ 国公私立大学毎の平均を示しているが、大学によって規模や学部構成が全く違っているため、その平均をもって日本の大体の現状であると判断するのは結構危険ではないかと思うので、今後気をつける必要があると考える。

○ 日本の学問の質的な部分を支えているのは、多分学会組織だろうと思うので、学会の情報発信の状況については、考慮するほうが良いかもしれない。

○ 学会の件について、先程NII-ELSについて説明した際に数値についてだけ述べたが、NII-ELSと学会の関係についても述べたい。大学の先生方は、学会のサポートもしているし、学術コンテンツのコンシューマでもあるし、大学へ戻ってプロデューサーにもなる。よって基本的にこのレイヤを何とか発展させ、維持させなければならないと考える点においては、自然と理念が一致する。しかし、学会も今非常に財政が逼迫していて、論文の発刊についても経費的に大変な状態である。そこで、実費レベルの経費をどうするかということについて、大学とNIIと学会は、共生モデルをとっている。これはNII-ELSでアップロードした文献を、GeNiiというサービスで各大学に期間契約を結んでいただく形で提供する。学会には著作料として利用度に応じて還元金を支払う、という形でバランスをとっていく関係を共生モデルと言っている。ただし、学会の中にはもうオープンアクセスで良いというところもある。

○ 学協会の共生ということを考えると、前期の報告書「学術情報基盤の今後の在り方について」では、学術情報発信に関しては3部構成であるが、3部目の「今後の方向性」が前2部とは少し異なる。しかし3部目については、学協会についてまとめた最初のケースであり、そういう意味では非常に大変な仕事をしたと考える。別の言い方をすれば、多少積み残しや踏み込みが足りていないところもあるように思う。その辺を今期ここでフォローアップしなければならないのであれば、いずれ時間をとって議論することになろう。

○ 学術的な国際競争力の発揮という点で考えると、今まではいかに情報を受信するかという部分の方が多かった。一方国際的な観点から見ると、情報発信の方が大事である。日本は明治以来受信を一生懸命やってきたが、これからは発信しないと、勢力を保つこともできないし、既にルージングしている。どちらにしても、サイエンスは英語がスタンダードになってしまっているので、非英語国家は不利であるが、それを克服しないと競争もできないし、日本のサイエンティストが不利になり、評価も下がる。

○ NII-ELSとは別にSPARC Japanプロジェクトというものも4年くらい前から行っている。物理学会はビジネスモデルの成立を目指しているし、生物系は個々の学会でやるよりも大きくまとまろうということで、UniBio Pressというパッケージ化を行って世界で戦おうとしている。1つの完全なソルーションではないけれども、一歩前進しようという動きをしているので、またご報告したい。

○ 例えば研究費を獲得したときに、研究費の1パーセントとか2パーセントとかを学術情報基盤に使うというようなことを、この作業部会から非常に新しい提案として行い、それが何十年か後には世界標準になっている、というようなことを目指しても良いのではないか。そのくらいのスタンスで取り組まないといけないのではないか、と個人的には感じている。

○ 資料6に「情報戦略の策定状況」とあり、アンケート結果では情報戦略の策定をしている大学はかなりあるという話になっているが、どのような戦略を策定しているのだろうと思い、その後の運営面の部分を見ると、今後、必要なことが「情報戦略の確立」となっている。基本的に、大学で基盤を整備しようとする際、どういう方針で、どういうふうに大学は整備するかというようなことを、どこでも議論されずに、色々な提案に対応していると、大学の中のシステムがバラバラになってしまう、ということを基盤センターにいると強烈に感じる。

○ これらの「情報戦略」というのは何を指して聞いたのか明確にしてほしい。基盤というのはある意味、戦略を持ってやるべきだというのは明らかだが、もっと具体化してやっていく必要があるのではないか。また、前期の報告書の16ページにいろいろとサービスを改善しなさいと書いてある。そこで、これをもって学術情報基盤の整備の必要性について大学の財務に話しているが、今後の評価に影響があるのではないかとの理由によりなかなかとりあってくれず、報告に書いてあることができないことがある。だからここでいくら提言を行っても、なかなか動いてくれないところもあるので、そのあたりのフォローアップをぜひ行ってほしい。

△ 「情報戦略」について、今回の調査では、学術情報基盤が国際競争力の死命を制する極めて重要なものであるという観点から、各大学で、コンピュータやネットワークを整理する上で、その特色や、その学内ニーズに即して、全学的なシステムの一元化、集中化、業務改善、高度化の推進、人材確保、専門家養成、全学的なセキュリティの確保等、大学として定めているものがある場合には、情報戦略として挙げるように質問したものである。

○ 資料6にある情報関連組織の再編統合。これはかなり比重が大きい話だし、人材の確保と育成に関しても今期のうちにある程度、先を見越したものが出せるよう、継続的に議論してはどうか。

○ 色々な議論があるのは良いが、最終的なアウトプットとしては、この部会で何をプロデュースして、それがどういう影響を持つかということを教えてほしい。それによって、何を議論すべきかということがおのずと決まるのではないか。

○ 資料5で示したとおりであり、学術情報基盤の整備に関する課題等を整理し、対応推進方策等の検討をするということで、ある種のまとめを出すことになると思う。

○ 課題を整理しそれに対応する方策を検討するということであるが、検討してその結果をどうするのかということについては触れられていない。その後のことについてきちんと理解した上で活動すべきではないか。

○ 報告書の内容に沿って各大学が取り組んでいると思うが、一方で文部科学省としてもきちんと支援してほしいという意見もある。これを受けて本作業部会としてフォローアップや現状について調査する必要があるという思いで集まっていただいていると理解している。

○ 結論としては具体的な方策を提言することになるのか。

○ ある種の提言になるのではないか。情報科学技術の発展というのは非常に急速であるから、不断の見直しが必要だが、それを今、この作業部会で行っている最中だと理解いただければ良いのではないか。

△ 補足させていただくと、前期は報告書「学術情報基盤の今後の在り方」をまとめることで、平成18年3月における、学術情報基盤の現状、課題を分析して、今後の方向性についての網羅的な、その時点での提言をまとめたという認識である。前期においても、まとめた以上、それを受け取る側である各大学、それからまた大学の取り組みを支援する行政の役割、そういったことについて、提言との関係においてどういう具体的な取り組みが行われているのか。あるいは行う中で、どういう課題も出て来ているのか、というようなところをきちんと、出しっ放しではなくて、フォローアップしなければならないのではないかという意見が多数出された。そのような経緯もあり、今期は白地で何か新しい報告書をまとめるべく検討を行うということではなく、まずは昨年出たこの報告書の提言を踏まえ、大学あるいは行政の支援の現状がどうなっているのかというところについて、きちんとフォローアップをする。また課題の整理を行いつつ、必要があれば新たな対応推進方策について検討していただき、まとめていただくこともあり得るということで、ご理解いただければと考える。

○ 大きな方針を出してもらえると、それに沿って現場の執行ができる。新規に大きな金が用意されたプロジェクトで情報基盤のことも当初から考えてもらって、そこでウインウインモデルである程度、ディスカウントされたものを提供できる。その分の一部が今度は基礎になる大学の研究基盤の発展に投資ができる。それもひとつのささやかな発展モデルになる。

○ 機関リポジトリの話があったが、東大でも話をすることがある。その際、Googleを使うことに対して、賛成の人、反対の人がいろいろいる。Google自身が持つセキュリティというか秘守義務的なところが、何か変な流し方をしたのではないかとか、そういう多少疑いを持って、それで嫌がる先生がたくさんいて、話があまり先に進まなかったりするようなケースもある。もう1点は、人文系で、紀要についてリポジトリを出す際、この先、本にするというケースがあるらしく、そのようなものはリポジトリに出したくないと非常にはっきり言う先生がいる。

○ Googleに関しては、東大が抱えている問題と、NIIの問題とはちょっと違っている。NIIはGoogleが営業の窓口となっているが、アブストラクトまでしかオープンにしていない。GoogleからSINETにやって来て、そして各学会がそれぞれのポリシーで提供するそれぞれの本文にアクセスする。そのような形でそれぞれのやりたいことが両立できるモデルを考えている。

○ 東京工業大学の学術国際情報センターでは、これからの課題として、活動の「見える化」と、国際貢献とアジアを中心とした国際連携を視野に入れた大学キャンパスの情報管理システムの実現を行うために、スパコンを導入した。その基盤をいかに国際連携に応用していくかが大きな課題となっている。今年度から初めての共同利用として、タイのチュラロンコン大学とか、中国の精華大学とスパコンを外部から使用し、どのような共同研究が行っていけるかを探っている。実際に始めると解決すべき問題点がいろいろ出ているが、アジア最速のスパコンをうたっているので、アジアの国々の研究機関と一緒に使用していかない手はないと議論している。よって、国際連携の観点から共同利用というか、応用を課題の1つとして今後議論していければと考える。

○ 前期の報告書にも国際貢献は課題として挙げられている。どのようなモデルで行うかが課題である。

(4)議事の終わりにあたり、徳永研究振興局長より挨拶が行われた。

(5)今回の意見を事務局にてまとめ、後日委員に確認を依頼することとなった。

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研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)