令和7年10月9日(木曜日)13時00分~15時00分
文部科学省内会議室及びオンライン
(部会長)千葉一裕委員
(部会長代理)大野英男委員
(委員)浅井清文委員、荒金久美子委員、飯田香緒里委員、小野悠委員、梶原ゆみ子委員、片田江舞子委員、河原林健一委員、木部暢子委員、新福洋子委員、関谷毅委員、那須保友委員、西村訓弘委員、野口義文委員、山崎光悦委員
(事務局) 柿田文部科学審議官、西條科学技術・学術政策局長、淵上研究振興局長、松浦大臣官房審議官(高等教育局及び研究振興政策連携担当)、井上科学技術・学術総括官、豊田国際研究開発政策課長、国分産業連携・地域振興課長、俵大学研究基盤整備課長、小川大学研究力強化室長 他
【小川室長】それでは、定刻となりましたので、ただいまより第2回科学技術・学術審議会大学研究力強化部会を開催いたします。
本日は御多忙の中、御参画いただきましてありがとうございます。
配付資料の確認をまずさせていただきたいと思います。議事次第を御覧ください。資料につきましては、議事次第の配付資料一覧にある資料を事前にメールにてお送りしておりますけれども、欠落等ございましたら申し出ていただければ幸いでございます。
本日は、文部科学省会議室とオンラインのハイブリッドでの開催としております。委員の皆様におかれましては、音声をミュートに、映像は可能な限りオンにしていただきまして、質疑応答の際は、御発言いただく際に挙手ボタンを押すか、あるいは画面内で確認できるように挙手いただきまして、部会長に指名していただいてから、当てられた方のみミュートを解除し、発言をお願いいたします。また、会議中、事務局から事務的なメッセージをチャット欄からお送りする場合がございます。
なお、本部会は原則として公開で行うこととしております。本日は、事前に登録いただいた方に動画を配信していますので、御承知おきいただければ幸いでございます。
本日の委員の出欠状況としましては、吉田委員から御欠席の御連絡をいただいております。
また、7月15日付で事務局に人事異動がありましたので、紹介させていただきます。柿田文部科学審議官、淵上局長の順番で、どうぞよろしくお願いいたします。
【柿田審議官】 7月の人事異動で文部科学審議官を拝命しました柿田でございます。7月までは、内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局で働いておりました。大学の研究力強化は極めて大事な政策課題でありますので、ぜひ精力的な御審議、また御指導をいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
【淵上局長】 研究振興局の淵上でございます。どうぞよろしくお願いします。
今週に入りましてノーベル賞の受賞が続いてきておりますけれども、引き続きこうした動きがこれからも若手の研究者を含めてできていけるような環境をどうつくるかというのは大きな課題だと思います。その中でも、ここの会議で大学の研究力を高めていくということが必要な条件になると思いますので、どうぞ御審議よろしくお願いいたします。
【小川室長】 事務局からは、以上でございます。
【千葉部会長】 ありがとうございました。
それでは、議事に入ります。本日の議題は、大学研究力強化に向けた取組についてです。
まずは事務局より、本日の進め方について御説明をお願いします。
【小川室長】 よろしくお願いいたします。本日でございますけれども、まず事務局から御説明させていただいた後に、東北大学様、また岡山大学様から取組について御紹介いただいて、その後で御議論いただくという流れを考えております。
まず、事務局から御説明いたします。資料1を御覧ください。2ページ目でございます。2ページ目、3ページ目におきましては、研究大学群への支援の在り方に係る検討課題ということで、前回の会議でもお示しをさせていただいたものを、黄色のマーカーの部分、特に前回いただいた御意見としてアップデートさせていただいているところでございます。我が国全体で多様で厚みのある研究大学群の形成を行うということで、4つの大きな検討課題を挙げさせていただいております。
まず1つ目、大学・領域・セクターを超えた連携の拡大、学術の多様性の確保ということで、大学同士に互いにメリットを生み出す大学間連携ですとか、共同利用・共同研究体制の強化・充実、また、前回の会議で御報告などさせていただきましたけれども、AIをいかにして科学研究に使っていくか、こういった新たな論点があるかと思います。
2つ目は、先端知を切り開く優秀な人材の集積・国際頭脳循環ということでございます。日本人研究者の育成、また、国際頭脳循環をどのようにしていくか。前回関谷委員からも、海外の学術誌のエディターをされているという御経験から、日本人研究者の国際的にインパクトのあるプラットフォームへのより積極的な参加、こういった論点も挙げさせていただいているかと思います。
次のページを御覧ください。3ページ目でございます。本日はこの2つの論点を中心に御議論いただくことになるかと思います。
まず1つ目、世界最高水準の研究大学をどのようにして実現していくかという点。世界と伍する要件としまして、例えば前回の会議では、脱縦割り学部ですとか、大学教員人事の抜本的改革、エビデンスベースの戦略策定などについても御意見いただきましたので、追記させていただいているところでございます。また、文部科学省側としても入学定員等の規制緩和も必要ではないかといった議論もございましたので、挙げさせていただいております。さらに、研究力の可視化、論文の質や量に偏重しない社会インパクト評価の仕組みも今後考えていく必要があるのではないかという御議論もいただいております。
もう一つの点としましては、地域中核・特色ある研究大学の振興ということでございまして、大学ごとのビジョンに応じた各大学の機能強化、また、前回特に地域単位で人口が減少していく中で、地域単位でどのように知の拠点を各大学が連携しながら進めるか。こういった観点についても御指摘いただきましたので、追加させていただいているところでございます。
4ページ目、5ページ目、6ページ目は本日の論点ということで、事務局から提示させていただいているところでございます。
まず、人口減少下におきましても、大学こそが社会変革の原動力となるということを中段に書かせていただいております。中でも研究大学につきましては、世界最高水準の研究の展開とイノベーションの牽引が期待されるということ。
一番下でございますけれども、国際卓越研究大学ですとかJ-PEAKSの採択大学におきまして、それぞれ具体の計画が今開始されたところでございますので、本日御説明させていただくところでございます。また、現在国際卓越研究大学の2期公募を通じて、各申請大学が自らの課題を認識・分析し、まさに改革の機運が醸成されているところでございますので、次のページの論点を扱うこととしてはどうかということでございます。
5ページ目でございます。我が国の大学におきましては、前回の会議でもこういった御発言ありましたけれども、限られた日本国内での組織間の競争から、連携・協働による全体のレベルアップへ転換することが重要であるという点。また、その際に、我が国の強みをどのように伸長させていくかといった観点で御議論いただくのがよいのではないかとい御発言ありましたので、こういった論点とさせていただいております。
また、国際卓越研究大学ですとかJ-PEAKS採択大学での改革の進展に対して、ほかの研究大学に対して研究大学として必要なシステム改革をどのように促進していくか、波及させていくか。また、各大学が改革に取り組みつつあるところ、これまで議論されながらもなかなか解決しない課題の真因は何かというところでございます。
具体につきましては、例えば日本の研究大学にとっての強みは何かということで、様々あるかと思います。例として、キャンパスの安全性とかアクセスのよさ、また次のページ、参考としてつけさせていただいておりますけれども、例えば初等中等教育段階におきましては、世界トップレベルの数学的リテラシーですとか科学的リテラシーを学生の方々は持っておりますので、こういった点も勘案しながら御議論いただく。
また、特にどのような観点で改革を促進していくべきか、特にどのような大学の改革を支援すべきか、また、国際卓越研究大学の第2期公募を通じて自らの課題を分析し、改革機運を醸成する中でありますけれども、それらの改革を進めるようどのように働きかけるべきか。こういったところを論点の案として掲げさせていただいております。
最後に、7ページ目以降でございます。本日、この後、東北大学様と岡山大学様から御説明をいただくところでございますけれども、我が国としてどのような意図で施策を展開しているかというところを、改めて御説明いたします。
8ページ目でございます。大学研究力強化に向けた施策の全体像についてでございまして、一番上の青枠囲み、研究大学への全学的な支援を行う取組でございます。世界最高水準の研究大学を実現するというための支援策、魅力ある拠点形成による大学の特色化、地域の中核・特色ある研究大学をつくっていこうといった取組。こういった取組がそれぞれ連携しながら、共に発展できる関係を構築していくということでございます。
その下、オレンジ色でございますけれども、拠点支援としましては、例えば世界トップレベルの研究力を持つ拠点をつくる。WPIや産学官の共創を行う、そういった共創の場の支援。こういった目的ごとに各大学の強みを生かしていく、そういった拠点づくりを行っていく取組。
さらに、組織・分野を越えた連携の強化・拡大としましては、例えば大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点といった組織・分野の枠を超えた取組を支援する。さらに、緑枠囲みでございますけれども、例えば科研費、創発など研究者個人への研究活動を支援すること。さらに、SPRINGなど博士課程の学生の支援や、若手の研究者をいかにして伸ばしていくかということ、特に昨今のアメリカの政策の動きにも対応した形で、海外の優秀な若手研究者を獲得するという意味では、新たにグローバル卓越人材招へい研究大学強化事業も開始されたところでございますので、本日、この後、少し触れさせていただきたいと思います。
9ページ目でございます。こうした施策の背景でございますが、我が国の研究大学群の現状として挙げております。こちらのNISTEPの整理としまして、論文シェアごとに第1グループから第4グループまで分けて、第1グループというのはいわゆる論文のシェアが大きい大学で、第2、第3、第4はそれに続くということでございます。
これを見ていただくと、国際卓越研究大学や申請大学、またJ-PEAKS、こういった大学の論文のシェアを足し上げますと、大体6割ぐらい、研究者で言えば5割ぐらい、研究設備や拠点になると、中型の研究設備で9割ほど占めているということですので、これらの大学に蓄積された研究設備・拠点のストックを最大限に当然活用していく必要があるということでございます。
一方で、競争的研究費の部分を見ていただきますと、そういった大学以外も競争的研究費を獲得する意欲・能力ある研究者が在籍しているので、これらの研究者全体の生産性をどのように最大化するかという観点が重要かと思ってございます。
10ページ目以降は本日御説明いただくところでございますけれども、国際卓越研究大学制度とJ-PEAKSのそれぞれの理念として、改めて触れさせていただきます。
10ページ目でございます。右下に黄色囲いで、国際卓越研究大学制度とございます。世界から先導的モデルとみなされる世界最高水準の研究大学の実現を目指すということで、人材・知恵の循環、また資金の循環を通じて成長し続ける大学を目指すということでございます。具体的には年3%の事業規模の成長ですとか、大学独自基金の拡充、こういったところを求めております。その意味で、研究力、事業財務戦略、ガバナンス体制の観点から、変革への意思、コミットメントの提示に基づいて確認をしているところでございます。
14ページ目以降でございますけれども、こちらは地域中核・特色ある研究大学強化促進事業、J-PEAKSの考え方でございます。
こちらは分かりやすいところで、17ページ目を御覧ください。地域中核・特色ある研究大学強化促進事業に参画する大学につきましては、強み・特色ある研究を核にした経営戦略によるシステム改革、大学間での効率的な連携を図っていただくということでございます。
その目的は、強みを持つ特定の学術領域の卓越性を発展させる機能、また地球規模の課題解決や社会変革につながるイノベーションを創出する機能、研究力を生かして地域課題解決をリードする機能、こういったことをさらに強化していただくために、各大学が戦略的に取組を進めることを支援するということでございます。その下に、それぞれの学術的卓越性の発展や、地球規模のイノベーションの創出、地域課題の解決を各大学がどのような観点で進めていくかを少し触れさせていただいているところでございます。
この後は、これまでの基礎科学力の強化と目指すべき大学群に関するこれまでの議論ですとか、関係するデータについても参考としてつけさせていただいております。
私のほうからの御説明は以上でございます。【千葉部会長】 ありがとうございました。
本日は、研究大学群への支援を議論する観点から、グローバル卓越人材招へい研究大学評価推進事業(EXPERT-J)について御説明いただきつつ、国際卓越研究大学やJ-PEAKSの取組を実際に進めておられる東北大学、岡山大学からその状況を伺い、大学の研究力強化に向けた意見交換をさせていただきます。また、最後に、政策評価に係る検討として、事務局の説明の後に委員の皆様の御意見を伺えればと思います。質疑等については、岡山大学の発表の後に一度まとめて時間を設け、その後、政策評価に関する説明、意見交換とさせていただきます。
それでは、事務局より、②グローバル卓越人材招へい研究大学強化事業(EXPERT-J)について、御説明をお願いします。
【豊田課長】 国際研究開発政策課長の豊田です。どうぞよろしくお願いいたします。資料2に基づいて御説明いたします。これは先ほども御説明ありましたけれども、海外からの研究者の招へい事業でございまして、我々EXPERT-Jと言っております。その公募の結果が出ましたので、御報告いたします。
まず、背景ですけど、先ほどもありましたけど、米国含めた昨今の国際情勢を踏まえて、内閣府のほうで、まず6月にJ-RISE Initiativeというものを発表してございます。その中で赤字のところでございますけれども、優秀な海外研究者の戦略的な招へいを、秋の新学期等も見据え可能な限り早期に拡大ということで、1,000億円規模の、これは既存の予算がほとんどなんですけれども、それらを総動員して研究者の獲得をしていこうということを発表してございます。赤囲みの中に書いてございますが、今回のEXPERT-Jはこの部分でございます。緊急的に大学ファンドの活用を行うとしてございます。
次のページをお願いします。具体的には、中ほどに事業規模・期間と書いていますけれども、大学ファンドを活用した緊急的な措置として、令和7年度からの3年間で総額33億円を大学に助成いたします。まさにこの緊急的なというところがポイントでして、普通の予算のプロセスですと、早くても執行が年度内ぐらい、もしかしたら年度明けとかになってしまうんですが、この大学ファンドを活用することで、7月から公募を開始して、8月締めで採択まで持っていっている。この迅速さがポイントでございます。
公募については、支援対象のところに書いていますけれども、大学からの手挙げ方式にしておりまして、評価の観点を書いてございます通り、その大学がきちんとトップ研究者を獲得して、定着させて、活躍させられるか。そういう環境をもう既に整えている、あるいはすぐにでも整えられるという大学について、今回採択をさせていただいております。
次のページお願いします。それで、申請13大学に対して、ここにある11大学を今回採択させていただいております。33億円しかないという言い方はちょっとおかしいかもしれませんけど、今回はそれをもって、年内に招へい可能な若手研究者について措置をしており、約40名を想定してございます。それを9月30日に発表したということでございます。
最後のページ、お願いします。まだ対象が年内に招へい可能な研究者だけでして、年明け以降のところについてはまだ財源がないということで、我々概算要求もしっかりしておりまして、今後、財政措置をしっかりしていくということにしております。
ちょっと一点言い忘れましたけれども、具体の研究者については、まだ各大学でまさに交渉中でございまして、獲得次第、JSTのホームページで発表していくということを想定しております。ただ、我々いろいろ報告を受けていますのは、個人だけじゃなくてチームごと招へいするケースがあったり、あるいは今回のこの事業を使って、いわゆる海外のトップ大学と獲得競争して競り勝っているような事例も報告を受けてございますので、かなりこの迅速性というところがうまく機能していると思っております。
【千葉部会長】 ありがとうございました。
それでは、続いて③ですね。世界最高水準の研究大学の実現に向けて、東北大学から、国際卓越研究大学としての取組・進捗等について御説明をお願いいたします。
【東北大学(冨永)】 東北大学の冨永でございます。本日は発表の機会をいただきまして、ありがとうございます。
本学は、昨年11月に国際卓越研究大学の第1号に認定され、体制強化計画に基づき、その取組を進めています。本日は、その体制強化計画の進捗状況の概要を説明させていただきます。
まず、本学の歴史と理念です。本学は1907年に民間及び自治体からの寄附を受けて創設され、以来、研究第一、門戸開放、実学尊重の理念の下、社会とともに歴史を築いてきました。現在は10学部、15研究科、3専門職大学院、6附置研究所を有する総合研究大学として発展をしております。
こちらは体制強化計画の全体像になっております。この体制強化計画では3つの公約を掲げておりまして、まず1つ目のImpactは、未来を変革する社会価値の創造であります。2番目のTalentは、多彩な才能を開花させ未来を拓く。3つ目がChange、変革と挑戦を加速するガバナンスであります。Impactは建学の理念である研究第一、実学尊重を受け継ぎ、門戸開放の理念はTalentに続きます。
この表は、先ほどお話しした3つの公約を達成するための6つの目標、19の戦略を構造として示しております。
ここからは改革の進捗状況を説明いたします。まずは研究についてですが、本学では研究のインパクトを生み出すために、多様性・戦略性の観点から独自の3階層の研究力強化パッケージをつくりました。ワールドクラスのトップレベル研究強化では、5つのコアリサーチクラスター、すなわち災害科学、材料科学、スピントロニクス、未来型医療、環境・地球科学を重点強化するということにしており、第2階層の分野融合研究強化では、次世代のリサーチコアを目指して日本学をはじめ、ここに示す様々な分野でのリサーチクラスターを形成、また、半導体・AI・量子などを研究所機構、研究共創体として強化しております。一番下の基盤的研究強化、これが非常に重要でありまして、そのために、PIによる自由な発想による研究活動の促進、国際卓越人事トラックの整備、若手が自由な発想で活躍できる研究環境を整備しているところです。
学術的インパクトから社会的インパクトへとありますが、知的価値創造を社会価値とするということがミッションの一つでありまして、本学では、様々な先端的なファシリティを持っており、これらをプラットフォームとして、社会との共創の中で社会的価値をつくりながら、その好循環を形成したいと考えております。
こちらは本学のキャンパスでありますが、仙台市街中心部に330万平米ございます。歴史的に100万都市仙台市のまちづくりと呼応して市街中心部に形成されてきました。5つのキャンパスがありますが、それを全て共創空間・イノベーションの場としていきたいと考えております。左下に青葉山新キャンパスとございますが、ここには次世代放射光施設NanoTerasuが建造されました。そして、仙台市との連携により、地下鉄が延伸され、仙台駅から青葉山駅まで10分足らずと利便性が向上しております。この青葉山新キャンパスに、現在サイエンスパークの整備を進めています。
こちらは青葉山新キャンパスに既に設置されたNanoTerasuであり、昨年4月に稼働を開始しました。このNanoTerasuは地域の産業にも大きな貢献が期待されるものであり、試算では10年で1兆9,000億円の経済波及効果、約2万人の雇用創出効果があると聞いております。
本学では研究人材のマネジメントを行う組織として、このHCM(Human Capital Management)室を昨年10月に新たに設置しました。これまで国立大学では研究者の人事を行う組織はなく、本学が国立大学で初めて設置した組織ではないかなと考えております。通常、研究者は当該分野での選考委員会と教授会の承認により採用を進めてきましたが、このHCM室では、大学全体及び分野を俯瞰する役割として、部局長の経験を持つ副理事複数人を配置しまして、部局の戦略に応じて助言をするなど、研究力強化に向けた戦略と人事計画を確認しています。人を資源ではなく資本と捉えて、投資をして伸ばしていく対象であるということが重要なポイントと考えています。そのための組織として、このHCM室を設置いたしました。
そして、これは研究体制ですが、従来は、教授を頂点とするピラミッド型の組織とされてきましたが、これをフラットな体制にしたい、そして若手の研究力を伸ばしていきたいと考えています。
新たに採用する卓越した研究者を獲得するため、大学ファンド助成金300億円を活用して、今後5年間で500名を採用していくことを6月6日に記者発表いたしました。今年度は80名の採用計画のうち、86名が内定しました。そのうち、米国機関からの採用は22名を予定しています。現在でも、毎月人事計画の提案と確認・協議を進めておりますので、今後も継続的に増えていく見込みです。
PIユニットの研究体制というのは若手研究者の活躍を促すものですが、本学では既に学際科学フロンティア研究所(FRIS)という組織を10年以上前に設置しまして、若手研究者の活躍を経験しております。FRISでは、国際公募した50名規模の若手研究者に独立研究環境を与えて支援することにより、ここに示すような卓越した研究成果を得ています。この経験を基に、これを全学展開することにより、研究ユニット制を推進したいと考えています。
これを医療分野のほうに拡大したものが、この医学イノベーション研究所であります。医学・医療の分野におきましても、トップクラスのフィジシャンサイエンティストを育成することを目的としまして、このSiRIUS(医学イノベーション研究所)を今年4月に創設いたしました。課題の多い医療アカデミアでありますが、医療・医学の分野におきましても、やはり大学がそのイノベーションプラットフォームとしての機能を強化すべきだと考えています。
診療領域の課題を熟知した研究志向が高い臨床医が、独立研究環境の下で5年から6年研究に専念する環境を提供してイノベーションの創出を目指しております。既に国際公募によりまして、高い競争倍率から非常に優秀な5名のフィジシャンサイエンティストが着任しており、現在は第2期の公募と選考を進めているところです。将来的には30人から50人の体制にしていきたいと考えています。
PIとして独立した研究を進められるよう、各キャンパスにコアファシリティの整備を進めており、先ほど御紹介した学際科学フロンティア研究所でのコアファシリティを先行して整備をした経験を基に、新規採用者の研究者ができるだけ着任後速やかに研究に着手できるよう、共通のファシリティの整備を今後も進めていきたいと考えています。
続いて、産学共創についてであります。本学では、企業のR&Dや人材育成の機能を大学に設置してもらうため、2021年度より共創研究所制度を設けています。これは企業の活動拠点をキャンパス内に設置していただき、設置企業出身者が運営総括責任者となって、共同研究等の活動を主体的に実施していただくものです。
大学に拠点を置くことで、各部局へのリーチが可能になるほか、企業の人材育成の面にも寄与しておりまして、このスライドにあるとおり、既に44の企業様に設置いただいております。これがその企業であります。この44拠点あります。
そして、この青葉山キャンパス内にあるサイエンスパーク4万平米には、NanoTerasuを起点に企業のR&D拠点をキャンパス内に設置して、産学官金を巻き込んだイノベーションエコシステムを構築したいと考えておりますが、既にこの2棟が建設され、右の青葉山ユニバースには半導体、材料科学、グリーン、宇宙等の研究分野、スタートアップ企業、民間企業等が入居し、左の国際放射光イノベーション・スマート研究棟には、NanoTerasu研究群などの集積が開始されております。大学債等により昨年竣工したこの2棟の研究棟は、募集するとすぐにいっぱいになりまして、2027年、遅ければ28年度内にここに新たな施設が竣工する予定であります。
この9月から始動したのはZERO INSTITUTEでありまして、これはグローバルに活躍する若手研究者とスポンサー企業をつなぐ全く新しいハブとして構想しました。従来、一対一の共同研究が多かったと思いますが、これはN対Nでそのプラットフォームをつくって、先端研究に企業が触れる、そして、そこからスタートアップやカーブアウトを目指すというものであります。
続いて、教育についてです。教育におきましては、我々、社会の皆さんから高い評価をいただいておりますが、今後研究大学にふさわしい教育を目指して、3つの強化計画を立てました。1つ目は入学者選抜を統括するアドミッション機構の創設。2つ目は徹底した国際共修環境を備えたゲートウェイカレッジの創設。3つ目は大学院を一元管理する高等大学院の設置であります。
続きまして、博士課程学生への経済支援についてですが、本学では経済支援は独自プログラムも活用しまして、一人当たりの平均経済支援額は年190万円の支援を実現しています。これは政府目標を大きく上回る数字で、一層の充実を図っているところです。
続いてガバナンスでありますが、ガバナンスにおきましては、従来の枠組みである学内構成員による教育研究評議会、学外者が過半数を占める経営協議会、学内と学外の同数の委員で構成する総長選考・監察会議、そして役員会が設置されているところでありますが、国立大学法人法の改正によりまして、運営方針会議が新たに設置され、過半数を学外委員として、多様性に配慮した委員構成となっております。
これがその委員でありますが、上段が学外委員、下段が学内委員となります。企業等の社長経験者、あるいは海外大学でのマネジメント経験者、法律・会計の専門家など、様々な専門性のある方に参画いただいております。
続いて、国際化について述べたいと思います。これまでの大学改革では、国際化を叫びながらなかなか進んできませんでした。本学では包括的国際化を推進する役員としてチーフ・グローバル・オフィサー(CGO)を新たに設置して、国際化を進めております。国際卓越研究大学に認定されて以降は、本学への来訪者等も非常に増えておりまして、海外との連携が加速されています。
次のテーマは課題についてでありますが、まず、研究者の獲得であります。研究力を高めていくには、資金、戦略、仕組みが必要な要素だと考えています。このことは先日、NHK「クローズアップ現代」でも報告させていただきました。
こちらはアメリカ及びイギリスの給与状況を調査した結果となっておりまして、本学がベンチマークとしているイギリスと日本の差は、給与の面では似通った傾向がありますが、海外との差は大きく、この点は大きな課題と認識しております。
このスライドが課題のまとめの資料ということになります。今後の研究大学は、人的資本経営を最重要課題と位置づけて、人材を資本とみなして投資して、その価値を最大限に引き出す、そういった組織経営が必要となると考えています。そのためには、まず給与水準に関する課題があります。これは運営費交付金が減少し、雇用の不安定性につながっているということ。
2番目として、国際的な人事獲得に関する課題として、先ほど給与格差の話をしましたけども、円安の進行による魅力ある処遇が困難であるという点。
3番目は、若手研究者に関する課題で、若手のキャリアパスの仕組みが不足していること。
4番目として、専門人材に関する課題として、研究支援や国際、広報などの多様な専門性を持つ人材が不足しているということ。
5番目として、大学経営に関する課題として、資金調達や学生の獲得などに関して様々な制約が存在するということ。
これらを解決していくためには、公的支援の充実、2番目に大学と民間企業との間で高度人材の流動化を促進する支援、3番目に規制緩和、こういったものが必要になってくると感じております。
これは、今まで述べてきた日本流の大学総体の強みを発揮する政策イメージをまとめたもので、海外の大学は様々なビジネスモデルを持っている中で、日本の大学も法人ごとに特色あるビジネスモデルを開拓すべきだと考えています。そのためには、発想の転換と規制緩和が重要であるということを意味しています。
一方、下半分はAI活用がサイエンステクノロジー、イノベーションの切り札になる時代となりますので、リソースを共有して、デジタル基盤の統合による生産性の革新と新市場の創出を図るべきということを示しています。
次に、国際卓越研究大学に認定されて以降の学内外の変化について述べたいと思います。先ほど述べましたとおり、人事戦略を統括するHCM室を設置しまして、部局との対話の充実を図っております。HCM室には部局長の経験者などのシニアの教授にも参加いただいており、分野ごとの戦略を確認し、本部の考えも伝え、風通しのよい環境をつくり上げています。海外から本学への注目度・期待度も非常に高くなっておりまして、様々な海外大学との連携が拡大されてきているということを感じています。
続きまして、これは法人戦略予算の創設についてです。法人戦略予算というのは、従来持っておりました総長裁量経費と、大学ファンド助成金を合わせて法人戦略予算としており、この法人戦略予算を様々な各部局の戦略に沿って配分することとしています。これはその配分のために年に1回、全ての組織の長と3日間かけてヒアリングを行いまして、現状や課題を共有することで一体感を醸成することに効果的であると考えています。
それから、これは平均的な一日の各職務の割合を把握するため、FTE(フルタイム換算データ)をアンケート調査しており、その結果、2年前と比べて今年度の調査では「研究活動」が37.5%ということで、2ポイント上昇しておりました。
最後は、学術ネットワークについてお話しいたします。国際卓越研究大学として認定以降も様々な大学・研究機関と連携し、研究力強化や機能強化、課題解決に取り組んでいることに変わりはありませんが、現在取り組んでいる取組についてお話しいたします。
1つはみちのくアカデミア発スタートアップ共創プラットフォームでありまして、こちらは、JSTからの支援を受けて立ち上げました。現在、東北地方・新潟も含めて国公私立大学、高専の24機関が参画しています。これはスタートアップを支援するプラットフォームでありまして、本年度は43件のGAPファンドを採択したほか、起業に向けた準備の一環として、セミナーやワークショップ、人材マッチング、個別相談会など充実した伴走支援をしているところであります。
そして、こちらも東北地区の国立大学で若手研究者を育成する取組になります。TI-FRISという名前のプログラムで、これは先ほど御紹介した学際科学フロンティア研究所で経験した若手研究者の育成を東北の各大学に広げたもので、各大学から推薦された若手研究者が合宿やセミナーをする、あるいは討論会などを行い互いに研さんを積んでいます。それぞれ国内と国外のメンターを1人ずつ2人つけるということも特色の一つでありまして、この取組は非常に各大学からの評価も高く、そして国からも中間評価としてS評価を受けております。
本学ではコロナ禍以降、コネクテッドユニバーシティ戦略として、全方位のDXを推進しており、業務のDX推進を全学で進めています。2020年度にプロジェクトチームを立ち上げて始まったものですが、様々な変遷を経まして、現在は10チームに拡大され、東北大学アプリの開発などにも取り組んでいます。これらの活動を、大学DXアライアンスとして、101大学、1研究機関、2行政機関、39企業、2学生団体から561名が参加し、DXによるビジネスモデルを深化させて、新しい価値の共創を目指すという取組を進めているところであります。
以上、本学の取組の概略を紹介させていただきました。どうもありがとうございました。
【千葉部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、続いて④の地域中核・特色ある研究大学の振興に向けて、岡山大学から、J-PEAKSの取組の進捗等について御説明をお願いします。
【那須委員】 では、私、岡山大学の那須より、本学のJ-PEAKSの取組について、スライドに沿って御説明させていただきます。48ページと大部ですが、説明は前半の10ページで行わせていただきまして、残りは添付資料ということで、詳細をそちらでリファレンスしていただければと思います。
次のページをお願いいたします。本日の論点、4つお題をいただきました。どのような改革が既に進んでいるか。改革のネックとなるもの/なりそうなもの。いまだに解決していない課題の真因は何か。学内外の関係者にこのJ-PEAKSの採択によって何か変化が見られるかというところ。全国の多様な研究大学との連携状況はどうだということ。さらに、こういった活動をする中で、我が国の学術研究ネットワーク全体をどのように牽引していくかというようなこと。ここは、実際私が行ってみて感じたこと、そして私としてこういうふうにやりたいというようなことも含めてですが、今日はお話をさせていただきたいと思います。
次、お願いいたします。まず最初に、岡山大学の姿勢として、ここに書かせていただきましたが、日本の大学は世界と比べて、150年余りしか歴史のない中で、類いまれなすばらしい学問の府をつくり上げておりますが、最近の転換点を迎える中で、やはりこの150年前にあったそういった先人の思いを胸に、いま一度私はこの事業を通じて、日本、そして世界に開く新しい学問の府をつくり上げるべきだと考えておりまして、我が国の研究大学群のPEAKSの形成のために、このコンペティションからコクリエーションにわくわくどきどきする形で社会変革を担い、そして大学が変わっていくべきであるということで、私が学長になりまして、「不易流行」ということを経営の根幹に据えて口酸っぱく構成員に言っておりまして、そういった不易流行ということを思いながら、このJ-PEAKS事業をさせていただきました。やはりこのJ-PEAKSの事業が、ちょうどやはりこの我が国の高等教育の変革のときにおいて、まさに時を得た起爆剤になっているということで、しっかり変わっていくきっかけだと考えております。
まず、最初のお題でございます。次のページをお願いいたします。研究大学として、様々な大学法人のいわゆる経営のシステム改革を、どういうことをやってきたかということでございます。大きく4つに分けております。
人事制度改革、昨今私ども教員の学位取得から15年ルールというものも制定いたしました。これは相当もう落ち着きました。そして、指標を用いた研究業績で昇任・評価を公平にやっていくということと、総合技術部の創設、そして高度マネジメント人材としてのURAの進化、そして私は常にこの委員会で次の発言をさせていただいておりますが、大学における事務職員の高度化、事務職員の改革というのが非常に大きなファクターであるということで、次はこれを進めていこうと思っております。さらに、複線型人事、機能分化等についてはほぼできて、さらにこの制度を進めていくというところまで来ております。
研究者の研究環境整備では、先ほど東北大学にもありましたが、研究時間ということで、脱・教員中心の大学法人経営。何でも教員が担う組織、これをやめていこうということで、何となく理事とか副学長は教員がやるものだというものがありますが、そういったところで甘んじている状況を変えていくということをしております。研究時間の確保については、様々な取組を具体的にやり、教授会の会議時間の短縮等も進めております。
次に、研究大学としてのマネジメントシステム改革ということで、研究のポリシー、職員・技術者・研究者はイコールパートナーであるとか、最重点研究分野の設定、そして研究特区の設定等々を行ってまいりました。
産学共創のチャレンジとしては、2つ目と最後ですね。やはり地域のシンクタンクとしての機能を強めていくということと、将来を担う学生を起点とした様々な取組を行っている。
私は、この中で改革をするという中で、右側の下のところにある「やる」か「やらない」かの議論ではなくて、まずは行動しましょう。これは、大学の中で議論ばかりやっているというところが私はかねてより非常にフラストレーションを感じておりまして、まず一歩を踏み出そうということと、いつも新しいことをするときには、「できない」という理由をまず最初に言ってくるわけですが、「できる」、「できない」の判断ではなく、「どうしたらできる」のかをやっていこうという、そういう組織風土を変えていくということが肝要と感じておりました。
次のページをお願いいたします。次なる改革ということで、真ん中の図にありますように、人事・財務、研究力、イノベーション創出、研究基盤改革、この4つをシナジーをもって、外側に書いております様々な施策をこれから進めていく、非常にスピード感を持って進めていきたいということで、特に複線人事につきましては、ほぼ制度上は確立いたしましたので、もう実際何人かどんどん問合せが来ておりますので、そういったロールモデルをしっかりつくっていくとか、さらには様々な技術職員の頭脳循環を進めていく。
右側の財務につきましては、授業料の適正化をやはり進めていくということ。研究につきましては、右側にありますように新たな拠点を形成していく。そして、裾野を拡大していく。そういったことを進めていくということ。そして、先ほど言いました産学連携では、若手・学生目線の取組を行っていくということと、左側の研究基盤、様々な取組、ヘリウムネットワーク、そういったこと。さらには、リース、機器は買うから借りるというようなことを、ファーストペンギンとして進めていきたいと考えております。
次、お願いいたします。実際にやってみまして、なかなか言うは易し、やるは難しでございまして、課題・ネックは何かということでございます。私は今年、各部局以外に細かく事務組織といったところを30か所回って、大体1時間、学長自ら皆さんに語りかけていろいろ意見を聞いてまいりました。去年もやりました。その中で大分浸透はしてきましたが、ここにあるようないろいろなネックが出てまいりました。
1番が最も大きく、研究者の研究時間の確保を図ると言っていますが、じゃあ、その分、誰にしわ寄せが行くのだというようなことが事務方から出てまいります。そこはやはり高度化といったことでクリアしていこうということとか、研究特区においてもその評価は非常に嫉妬を生むというようなこともあり得ますので、ガラス張りのえこひいきをやると、エビデンスに基づいてやっていくというようなことを強調しております。
さらに、7番にありますように、まだまだ共用・自立化の意識が整っていないということ。8番にありますように、技術職員はやはりもっと独立してほしいということで、研究者もしっかり伴走していきましょうというようなことも、技術職員をまとめましたけど、そのまとめた次の先に何があるんだというようなことを技術職員にしっかりインプットしているというようなことでございます。
10番、11番がなかなか未解決というところで、やはり評価の仕組み、特に文系の評価の仕組みをどういうふうにしていくかということ、分野によってもかなり異なるということで、ここを今、各部局の担当者と話しながら、きめ細かくやることを始めたところでございます。
こういった中でやはり私が思うのは、意識変革と行動変容が重要であるということで、まだまだ学内には浸透していない、足らないというふうに、他人事だと思う方が多いということで、やはりこの千載一遇のチャンス、大学が変わるチャンスということを、皆の構成員が関わるんだという意識を強めております。これは他のJ-PEAKS大学でも恐らく同じようなことが起こっているのではないかと私は思っておりまして、これは決して学長が元気だからやるのではなくて、属人的なものではなくて、しっかり組織として変わっていくということを言っております。そういうことで、11月には私、改めて研究大学宣言というものをしていこうと考えております。
次、お願いします。学内外の関係者に変化が見られたかということですが、当然、①にありますように研究者においては変化は徐々に見られています。これは、上から言われるということではなくて、若手を中心とした研究者たちからクラスター形成が加速しているということ。
2番目は地域です。我々地域にとっても、J-PEAKS大学ということで、こういう特区事業をやりながら、スタートアップのエコシステムに採択されたり、さらに本学だけではなく、県内の大学の学生も巻き込みということで、地域全体にこういう機運が高まっているということでございます。
さらに、一番最後、4番目の人事制度改革、やはりこれを自らが変わっていく、職員自らが変革をしていくということが少しずつ見られていると私は感じております。特に、やはり15年ルールというものの考え方が皆さんに浸透することによって、自分及び部下のキャリアをしっかり考えていくという、当たり前であるんですけど難しいこと、これをしっかりやっていくということ、そういったことで研究大学としての発展を遂げていきたいと考えております。
次、お願いします。④の全国の多様な研究大学との連携状況ということです。これは10ページにあるような多くの大学と研究力強化・イノベーション創出・人材育成等について交流をしているということでございます。
では、8ページに戻っていただいて、今、J-PEAKSの大学間でサイトビジットが盛んに行われております。今日も都内の大学で行われていると承知しておりますが、そこでリエゾンの方々が活発に交流しているということ。そして、リエゾンのみならず、その周辺のURA、事務職員たちもどんどん自発的に交流を、半分飲みニケーションが入っておりますが、そういったことをすることによって、自然発生的に様々な連携ができてきているというのは、これは私、J-PEAKS25校、しっかり皆さんが自然に連携している姿を見ております。非常にこれは今までなかったことだと私は思っております。
そういった中で、本学では新しい取組、今までしてこなかった取組、痛みを伴う改革を率先して実行していきたいと考えております。例えばリースのプラットフォームとか、人事改革の15年ルール、こういったことをやはり先行して実施していく。私の不易流行の「流行」は先取りして先行するということを言っております。まさにそれに沿った形でやっておりまして、スピード感を持ってファーストペンギンとして挑戦して、他の機関へしっかり拡散、皆さんにとってこれはいいというものがあれば、それをどういうふうに拡散していくかというようなことについても、岡山大学としてはしっかり汗をかいていきたいと考えております。
これらは、我が国の研究大学のPEAK形成のため、そして日本全体の研究力強化、イノベーション創出のためであり、大学内、国内大学同士の競争・コンペティションから、皆さんとともにわくわくどきどきコクリエーションしていくというようなことをやっていきたいと考えております。もうこのJ-PEAKSというチャンスをいただいたということはやはり非常に大きいと考えております。
最後のスライドでございます。現状の人材の流動性の向上ということでございます。これについては、研究者はやはり従来流動性がしっかりあると考えております。それ以外に、こういった活動をすることによって、高度専門職、事務職員、技術職員も交流をし、そういった中でいろいろな専門性やスキルの基準をある程度一定にしたりすることで流動性を図る。特に私はこのマネジメント人材の方々、今ちょうど研究開発マネジメント人材養成事業というのが公募になっておりますが、そういったものを使って、全国のこういったマネジメント人材が一定のスキルを持って成長することで、それで流動性が高まると。
私の目指す姿は、例えば親の介護で地元に帰らないといけないという方が、じゃあ、どうするんだと。地元の大学に行きたい、こういうスキルスタンダードを持っている、じゃあどうぞというような流れがどんどんできていくということ、そういったこともしっかり進んでいく。そういったことも行っていくべきではないかと思っております。
決して研究者だけではなく、そういった様々な職種の方がこのJ-PEAKSの目指すところを共有して取り組んでいくことによって、私どもは最終的に研究力が高まっていくんじゃないか。
ただ、私、最後に学長の心配事としては、ちらっとさっき書きましたが、こういうことをやって本当に研究力が上がるんだろうかと。様々な政府の研究力の指標がございます。3年か4年ぐらいたったときに、その指標がきっちりちゃんと達成しているかどうか。反面、そんなことを今学内ではうるさく言っています。掛け声だけではなく、そういったしっかりKPIを達成していくというようなところについても、しっかり取り組んでまいりたいと思います。
私の発表は以上でございます。ありがとうございました。
【千葉部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、これから質疑に入りたいと思いますが、本日は会場御参加の委員も含めて、オンラインはもちろんですけれども、質問があるときは、Zoomの挙手ボタンを押していただければ、こちらから順番にお願いさせていただきます。すみません。会場も含めてZoomの挙手ボタンをお使いください。
それでは、御質問をお受けしたいと思います。冨永総長、それから那須学長に対して、いかがでしょうか。
それでは、質問が出るまで、ちょっと私のほうから冨永総長に非常に大局的なところをお伺いしたいんですけども、非常にアクティビティの高い内容を御説明いただいてありがとうございます。それで、これは大学ファンドがベースになっているというお話もございましたが、この大学ファンドという日本で非常に画期的な進め方で始まっているものなんですが、例えば東北大学さんの活動と、大学ファンドそのものの基金の拡張性、あるいはこの資金循環の在り方という観点に立つと、非常に難しい悩ましいことをたくさん感じられているのではないかなと思うんですね。もちろんうまくいけば一定の資金は自前でできるようになるとかという話があると思うんですけど、それに向けていろいろな御心配事とか、こういうことをクリアしていかないとそこはうまくいかないんじゃないかという、具体的な計画を進められて初めて分かる部分もあるのかなと思いますので、もしその辺お感じになっていることがありましたら、ぜひ皆様と共有していただければと思います。よろしくお願いします。
【東北大学(冨永)】 ありがとうございます。昨年会計基準が改正されて、大学運営基金を経年的に持ち越して、それを大きくしていくということが事業モデルとしてできるようになりました。
これは、例えば欧米の大学が非常に大きな自己基金を持って、自分の望む研究あるいは教育にそれを投資していくということが可能で、国際卓越研究大学では最終的にそのような姿が求められていると考えており、その大学の運営基金をいかに大きくしていくかが重要になります。それに関しましては、大学ファンド助成金の一部を基金に組み入れる仕組みがあり、これを25年かけて大きくしていくものになります。そういった仕組みに加えて、やはり自分たちで寄附金の獲得や外部資金を大きくしていかなければならないと考えております。
課題の一つは、寄附金を集めるということが大学で長くやってきたことではないので、同窓生を中心に寄付金を募っているような状況なので、今後ファンドレイザーを雇用していくことでいかに大きくしていくかが非常に大きな課題だと思っております。
それから、産学連携の中から外部資金を獲得していくということもありますが、仙台は地方中核都市であって、周りに大企業がたくさんあるわけではありません。産学連携を行って、2,000件を超える契約をしておりますが、その平均額が小さいため、今後はそれをもっと引き上げていき、外部資金をもっと増やしていかなければいけないと考えています。
【千葉部会長】 どうもありがとうございます。
それでは、
荒金委員、どうぞ。
【荒金委員】 ありがとうございます、。
那須先生のほうに御質問させていただきたいと思います。大変分かりやすくアグレッシブな御活動の御説明、ありがとうございました。よくこういう会議で大変難しいということで出されるんですが、その人事関係ですね。大学の教員の方の評価と、その人事をどうするかというのは、非常にイノベーションを推進する上でも大事だけど、なかなか手をつけるのが難しいという話を皆さんからお伺いするんですが、先生は人事をつかさどるお部屋を一つ設けながら、任期を変えられたりとか、今回人事のところにすごく踏み込んだ改革をなさっているようにお見受けしましたが、その辺りは学長のリーダーシップがあればどこの大学でもできるということなんですか。どんな御苦労があるかということも含めて教えていただければと思いました。
【那須委員】 ありがとうございます。これは、人事はちょっとなかなか一言では言い尽くせないいろいろな、部局によっても全然違いますし、人の選び方その他が非常に統一してない状況がございました。それを、少なくとも一定の指標で選ぼうということを、つい先週、はっきりしたこういう項目で選びましょうというようなことを伝えて、ただ、それはさらにもっと、いろいろな学部によってはそれは重きが違うので、業績についての審査は一定の基準、それはJ-PEAKS大学のKPIに連動しているというようなこと。それは1点、絶対に変えられないというところで行いました。これは比較的皆さん、やはりagreeをしてくれました。ただ、実際にそれぞれの学部や学科によっては評価軸とかいろいろなものが違うので、そこは可変をVariableでいいというふうにやって、今、人事担当理事と打合せを詰めているという状況でございます。
一番私が避けたいと思ったのは、それぞれの部局においてばらばらの基準と、ある程度声の大きな人の声が通って人事がいってしまうというようなことは絶対にないようにということで、やはり下の若い人が見ていますので、下の若い人から見て公平だな、頑張ったらちゃんとポジションが与えられるんだなという、そこのところは絶対に譲らないようにと。あとは、かなり譲歩するというところでございます。そこが基本的なスタンスで、さすがにそれを巧みに抵抗するのは、多分難しいと思います。
【荒金委員】 ありがとうございます。
【千葉部会長】 続いて飯田委員、お願いします。
【飯田委員】 ありがとうございます。
まず、冨永先生に1つと、2人の先生に1つ御質問させていただきたいんですが、冨永先生には国際化について、世界最高水準の研究を推進するための国際化の取り組みについて、主にCGOという役員の配置や外国人教員の獲得という点が中心と理解しました。ただ、それだけではグローバル推進は難しいのではないかと思っており、その背景にある文脈や具体的な施策があればお教えていただければと思います。
もう1点は、お2人に共通して、支援人材についてです。専門人材、あるいは技術職員という言葉で支援体制強化に触れられていましたが全国の大学でこういった人材確保に苦労されています。この点で、質と量を両立させながら人材を確保するための戦略などがあれば、お教えいただけると幸いです。
以上です。
【千葉部会長】 まず冨永総長、お願いします。
【東北大学(冨永)】 国際化についてはおっしゃるとおりで、我々フランスのINSA Lyonで活躍されていたファブル先生という方をCGOとして招きました。包括的国際化ということで、学内の国際化と学外の国際化を担っていただくことをミッションとしております。
まず、学内の国際化につきましては、やはり国際化といっても、学内の業務が全て英語でできるのかというと、そうではないということもありまして、実際ファブル先生が各部局長と全て面談しまして、何が今後問題なのかということを詰めて、そして今、全学にアンケート調査を行っているところです。ファブル先生はフランスの方ですので、フランス語の中に英語を取り入れてきた歴史を経験していますので、そのような観点からも国際化を図っていく予定です。
もう一つは、学外においては当然国際的なリンケージの中に入っていくということが何より重要かなと考えておりまして、戦略的なリレーションシップの構築に関してファブル先生から助言や仲介していただきながら国際化を図っていきます。
【飯田委員】 はい、よく理解できました。ありがとうございます。
【千葉部会長】 では、支援人材について、まず、那須先生、お願いします。
【那須委員】 分かりました。これは私のところで9ページになりますが、やはり各専門性、特に技術系職員の方々のスキル基準を明確にしていくということがもう一つ。これは東京科学大学さんと一緒に、テクニカルカレッジ、TCカレッジというのを行っております。そういったことをして、しっかり基準を定めていく。さらに、それにのっとった職階をしっかり上げていく。それに伴った給与水準も整備していっております。
そういったことで、今の若い方にとってみたら、きっちり自分の行く先が見えるという形をするということ。さらに、私の思いとしては、いずれこういった方が大学の経営にも参画して、理事とかそういったところに昇進していくという姿、ロールモデルをしっかりつくっていくこと、やる気を出していく。さらに、量という点でも、こういったことを整備すれば、博士後期課程の方々がそちらのほうに進んでいこうかというような流れをこのJ-PEAKS群でしっかりつくっていくということが、質と量を充実させていくということ。
私はもう一つ、技術系職員の統一を担当理事のときやっていたんですけど、やはり大学という仕組みの中で、教授が一番偉いんだというようなヒエラルキーの暗黙の了解があるということ。これをしっかりたたき潰すというか、なくしてしまわないといけないと、イコールパートナーだということをやることによって、皆さんのやる気、わくわくどきどき感が出てくるということが、質と量を充実させる手段だと考えております。
【千葉部会長】 それでは、冨永総長。
【東北大学(冨永)】 研究支援人材を増やしていくということも、当然計画の中に入っておりまして、現在49名の新たなURAをリクルートしました。これは日本国内の各大学で必要とされており、今後それを従来のURAの方々と新たに国際卓越の事業として採用したURAとを組み合わせて、どのような体制を構築し、その後の評価をどうするか。現在その体制をつくっている途中であります。
もう一つは、技術職員に関しましても、現在、コアファシリティの共通機器の整備を各キャンパスで進めておりますが、そういったコアファシリティには専任の技術者が必要で、その体制を整えているところであります。
以上です。
【千葉部会長】 ありがとうございます。
では、続きまして、河原林委員、お願いします。
【河原林委員】 私は東北大学の冨永先生に1つと、あと那須先生に2つ質問があって、まず最初に東北大学の冨永先生のほうにお尋ねしたいと思います。
ちょっと最初、感想になってしまいますけど、実は私も20年前まで東北大学にいまして、そのとき情報科学棟は裏がゴルフ場で表が野球場という、すごいのどかだったのに、今はこれが完全にリサーチパークになってしまい、何かすごく変わって、本当に東北大学は、何というか、攻めているなという感じで、これはもう完全に国際卓越研究大学にふさわしい変化を20年間で見たなということで、ちょっと感慨しているところでございます。
これは単純に感想で、私のほうからちょっと質問したいのは、研究に関するヒエラルキーみたいなのがありましたね。5つトップにあるというもの。あれは私が見る限り、例えば金研だとか、大野先生がいらっしゃる電気通信研究所とか、そういう東北大学の看板になるところが現時点で中心になってやっているような気がしていて、それは強いところを強くするという意味では非常にいいような気がするんですけど、25年やっているときに、何かやはり変えなきゃいけないところとか出てきたり、あるいは新しい組織でもっと強くしたりとか、そういうようなガバナンスが必要になってきたりする、あるいはそういうところの意識が必要になってきたりすると思うんですけど、その辺を動かすところというのはどのようにやる、あるいはどのようなストラテジーを考えられているのかということをお聞きしたいんですけど、いかがでしょうか。
【東北大学(冨永)】
そのトップにあるコアリサーチクラスターというのを重点的にやっているところでありますが、それが永久ではなくて、当然のことながら第二階層の分野融合の次世代のコアリサーチクラスターから第一層を目指すということもあります。ただ、基本的にはトップはいつまでもトップではなくて、入替えができるようなマインドセットで取り組んでおります。
【河原林委員】 はい、分かりました。だから、何年かに一遍見直し、あるいはどこかを格上げとか、そういうことは柔軟にやられていくと。
【東北大学(冨永)】 そうですね。おっしゃるとおりです。
【河原林委員】 どうもありがとうございました。
それで、那須先生のほうにはお話しいただきたいと思うんですけど、今、先生がお話しいただいたのは、自分の解釈では、これでやっと攻撃ができる。攻撃というか、何か今までは大学をどうして守っていくかでほぼ精いっぱいだけど、これでやっと研究に攻撃できるみたいな形の体制ができたという感じがするんだけど、そうなると次の一歩として、どういうような研究、あるいはどういうような拠点、あるいはどういうような分野を強くするかというところのビジョンが必要になってくるような気がするんですけど、その辺のところがもしあれば、まだないのかもしれないですけど、あれば、そのことを先生に教えていただければと思います。いかがでしょうか。
【那須委員】 ありがとうございます。攻撃というか攻めというか、私どもも既に重点研究分野というのはIRによって定めておりますので、その部分をしっかり高めていくということ。既に幾つか高等先鋭研究院ということでJ1がありますので、そのJ1を強くしていくということと、J2の分野に次世代研究分野ということで今回一つ定めましたので、そういったものをしっかりリソースを投入して高めていくということと、やはり私ども全てにおいてピークはつくれませんので、総合大学の中でも関連した部局は、そのピークになっているところの裾野を補強していくような、エベレストみたいなのじゃなくて、私は富士山みたいなものをつくりたいと、そういう形の戦略で強くしていきたいと考えております。
【河原林委員】 そういうところというのは、分野もある程度絞るということなんですかね。例えば、全分野強くなるわけにいかないような気がするんです。
【那須委員】 そうです。
【河原林委員】 そういうような戦略をこれから考えられるということ。
【那須委員】 はい、そうです。
【河原林委員】 分かりました。
あと一点だけ、私もこのJ-PEAKSには関わっていないけれども、それ以外、例えばNIADとか、研究には関係ないですけど、高等局のほうとかの予算とか、そういうところで大学に出る予算のところへ関わっていますけど、ちょっと思うのは、額はここまで多くないけど、何かいろいろとガバナンスに対して注文をつけるようなお金のファンドがかなりたくさんあって、それを多分大学さんで、J-PEAKSを含めてたくさん取ってきているような気がしていて、それを混ぜることによって、何か物すごく大変なことになっているんじゃないのかなと思いながら見ているんですけれども、そういうことをここで言っていいのか分からないんだけど、どういうふうな感じで先生方は見ていらっしゃるのかなということはちょっと思っていて、それが例えば大学の研究力に響いているのであったら、やはりそれは変えていかなきゃいけないのかなという気がする。ちょっとこの話とは変わるかもしれないですけど、何かコメントあればいただければと思います。
【那須委員】 先生の御質問の理解は、私が正しければ、様々な研究に外部資金はしっかり取りに行っていますが、当然そこでdemarcationは説明がつくようにやって、あまり混乱しないようにやるということは相当神経質にやっておりますが、ただ、全体的にお金はやはり最終的には研究力強化だというところできちっと説明がつく範囲でやりますし、分からないときは皆さん本省の方に聞いて、どうでしょうかというところじゃないでしょうか。答えになっておりますでしょうか。
【河原林委員】 分かりました。はい。
【千葉部会長】
それでは、続いて野口委員、お願いします。
【野口委員】 私は質問というよりも意見と感想です。両大学にも共通してお話がありました、冒頭資料1の3ページの、研究大学群への支援の在り方に係る検討課題のところで、アンダーラインの箇所「地域単位による知の拠点の構築」というのがとても重要だと私は思っています。例えば先ほど岡山大学の那須学長からは、J-PEAKS中心に展開していく非常に内容の深いお話がありましたし、東北大学の冨永学長からは、みちのくアカデミア発スタートアップ共創プラットフォームやTI-FRISというように、やはり地域のコンソーシアムをつくって底上げを図っているのはとても大事な要素であると思っています。
その上で2点あるのですが、1点目は、那須学長も触れられましたJ-PEAKS採択の25大学において、それぞれやっていますサイトビジットです。先日、立命館大学で開催されましたが、私は20大学以上の大学が集まって、文科省やJSPSの幹部の方も集まって、政策議論する場の活用というのはとても重要であると思います。希望大学や地元の自治体も幅広くオブザーバーとして参画させることが、意欲ある大学群の増加にもつながりますし、地元自治体のモチベーションアップ等、意識も含めての裾野拡張に繋がってくると考えます。そういう場を、例えばグラスルーツイノベーション戦略ではないですけれども、うまく活用し、文科省やJSPSのほうで意識的に旗を振ると、意欲ある大学や自治体の裾野拡大に繋がるのではないかと、両者の話を聞いて強く思いましたというのが1点です。
2点目が、様々な取組を進めていくためには、やはり自走化するのが後々、非常に大事になってくるのは周知と思われます。そのようなことを考えると、やはり産業界との連携をより深くしていくのが非常に重要で、両大学も触れておられる部分がありましたけれども、産業界に就職・出口を求める、高度専門職人材である博士人材を共に育成していくというスキーム作りはとても重要です。例えば韓国が2003年から始めた契約学科です。大学と企業が契約して学科を設置するというような、企業スポンサー色が強い部分もありますが、そのような思い切った産学連携アライアンスや多様な資金の受入とか、科学技術とビジネスの近接化がより進んでくると思われます。私どもももちろん頑張らねばなりませんが、ぜひ2大学には先導して取り組んでいただきたいと思いました。これは、感想です。
以上です。
【千葉部会長】 野口委員、どうもありがとうございました。
続きまして、大野委員、お願いします。
【大野部会長代理】 大野です。冨永先生、那須先生、御説明どうもありがとうございました。
私からは1点だけなんですけれども、研究時間をどうやって確保するかということは、今どのようにお考えかということをぜひ伺いたいと思います。これは東北大学の資料の40ページに出ていますけど、2002年は46.5%だったのが、今は32.2%と。これは全国の教員の研究時間、研究活動の時間です。もちろん教育と研究は不可分なところもありますけれども、教育で、例えば研究室で大学に出てこなくなるような学生がいると、それを研究室マターとして教員が対応するということになりますし、多くの目の前の学生諸君に対応しようとすると、どうしてもそこに時間が割かれると。もちろん教育以外のところもたくさんありますけれども。
研究というのは、どっちかというとその残りの時間でやるというような立てつけに、文化的になっているのではないかと。そこをどのように逆転させて、そのトレンドをこの研究時間という、ある種余裕がある中で研究時間が増えるというのが理想なんですけれども、そのように私は考えていますけれども、そこら辺のお考えをお聞かせいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
【東北大学(冨永)】 それでは、冨永からよろしいでしょうか。
【千葉部会長】 よろしくお願いします。
【東北大学(冨永)】 研究時間を確保するということが肝でありまして、そのために現場の教員からは、教育の負担以外にも入試業務も非常に負担が大きいということを聞いております。そのため、できるだけ教員の入試負担を減らすために、アドミッション機構を創設し、入試改革にも着手しています。
それから、教育に関しては、教育に重きを置く主幹教員というポジションを新たに創設しました。これまでは教員は研究成果で評価されることが多かったと思いますが、主幹教員は、主に教育に従事して、教育にある程度かなりの時間を割くという教員とし、その分の手当を与えるということで、できるだけ他の教員の教育の負担を減らしていく取り組みを始めました。
それからもう一点は、やはりURA等にぜひ活躍していただいて、現場の研究者の支援をして、研究時間を確保する。こういったところを現在考えているところです。
【千葉部会長】 ありがとうございます。
では、那須学長。
【那須委員】 では、私のほうから、私の資料の4ページを見ていただければと思います。
大まかには冨永先生と類似した内容でございますが、4ページに実際に研究時間の確保ということで、先ほどあった入試業務、これも外注できるところは外注をしたということと、作問という問題を作るところが教員にとっては相当なプレッシャーでございまして、作問内容のチェックを外注化していくというようなことをやっております。ここは力を入れているということ。
あと、会議時間の縮減ということで、実際に私ども一部トライアルで、教授会の時間短縮を30%したということ。様々な規定でいろいろな会議に教員が入るということを一つ一つ今見直して、廃止しているということで、その分、他のマネジメント人材が会議に入っていくということ。それと、そのマネジメントシステムの改革の中の高等先鋭研究院システム、研究特区においては、入試業務は外しました。入試業務はしなくていいということで、これはかなり物議を醸しましたが、私が先ほど申しました透明なえこひいきであるということで、まずここから始めてどのように拡大していくかということで、今後は東北大学様のような何%という数値を出していきたいと考えております。
以上です。
【千葉部会長】 ありがとうございます。
あと10分ほどお受けする予定ですので、今、手を挙げておられる山崎委員、梶原委員、木部委員、3名に順番に御質問いただくということにさせていただきたいと思います。
では、山崎委員、お願いします。
【山崎委員】 ありがとうございます。冨永先生、それから那須先生、御説明ありがとうございました。非常によく理解できました。あんまり今まで議論されてない視点で、お二方にもしお考えがあったらお尋ねしてみたいなと思って質問をさせていただきました。
どこの大学も、常套手段というか普通のやり方として、特区なり別出しにして強い分野をさらに強くするということをやりながら、そういう分野をどんどん多くして裾野を広げながら大学全体を強くするというのはどこもおやりになられている戦略だと思いますけど、その一方で、構成員である研究者、全員とまでは言いませんけども、大方の大多数が、やはり世界卓越研究者をどう目指すかという視点から、先生方を責めるというのは申し訳ないですけど、そういう自覚を持っていただくような方向に行かないと、大学全体としての研究力が高くならないんじゃないかなと。
別にトップ10%、1%がどうのこうのと申し上げているのではないんですけども、最終的には、社会的インパクトのある研究成果をどう世の中に送り出していくかという視点から、もし両先生に何かお考えがあったら教えていただければなと。最終的にはやはり一人一人が自覚をしないといけないんじゃないかなと最近私は思い始めまして、どうなんでしょうと。あいつとあいつが頑張っているから俺はいいやみたいのでは先生方の大学は強くならないんじゃないかということで、もし何かお考えあったら教えてください。
私からは、以上です。
【千葉部会長】 冨永総長、いかがですか。
【東北大学(冨永)】 こちらから、よろしいでしょうか。
【千葉部会長】 はい、どうぞ。
【東北大学(冨永)】 最終的には現場の研究者にいかに研究力を伸ばしてもらうかというところだと思います。そのマインドセットをいかに醸成するかということで、シンポジウムを開催するなどしておりますが、実際的な研究力ということになりますと、今、国際的に卓越した研究者を戦略的にリクルートしているところですが、それで本当に研究力が上がるのかというと、やはり既存の教員の方々の研究力が上がらなければいけない。それをいかにして上げるかということを、今、いろいろ考えておりまして、例えば従来の教員人事トラックでは、年間に50名ぐらいの教授が退職して入れ替わるため、新しい教授を雇用する場合には、できるだけ研究力の高い教授を選考するようなシステムを、今考えているところです。
その一つとして私が思うのは、やはりその選考に当たる部局長や研究科長がキーパーソンの一人ではないかなと考えていて、部局長の任期というのはそう長くない部局も多く、これからはやはり教授選考に当たってある程度本部と戦略を共有して、研究力強化のために、任期を少し長くして、リーダーシップを発揮できる制度に今変えているところです。
【千葉部会長】 ありがとうございます。
那須先生、いかがでしょう。
【那須委員】 ありがとうございます。私どものような地域の大学においての、そういう世界的に卓越した研究者をどうするんだということですが、先ほどのように、私どもの大学ですと、そういう研究者をいきなり採用すると言っても大体東のほうへ流れていきますので、なかなか来ないということで、じゃあ、ある程度自前で育てていく仕組みというのも当然考えておかないといけない。
私の経験からは、今、我々の大学の中では、海外に留学をさせると、した後、なかなか戻ってこないです。ところが、私の育った医療系ですと必ず戻ってくるということで、世界トップレベルのところに人を派遣して人事循環ができて、歴代そこへ人を派遣して、そこから戻ってくるし、向こうの研究者もやってくるという、当然そのトップレベルの大学はできているんじゃないかと思いますが、そういったトップレベルの大学との密な人事循環をやはりやっていくことで、皆さん自覚が出てくると私は思っていまして、本学医療系ですと、かなりもう留学が昇進の条件みたいな、トップレベルの大学へ行って人脈をつくって帰ってくる、多くの世界的人脈、同僚を含めてつくってくるという仕組みができていますので、そういうことを広げたいと考えております。
【山崎委員】 ありがとうございます。両学長先生のガバナンス力に期待をしたいと思います。ありがとうございます。
【千葉部会長】 ありがとうございます。
では、梶原委員、お願いします。
【梶原委員】 ありがとうございます。
文科省の説明資料の「お題」から、どうシステム改革を進めたらいいかということに対して、東北大学からも、それから岡山大学からも、お二方ともやはり人事のところに改革の手を入れる必要があるということをおっしゃっているのが非常に印象的でした。東北大学からは、企業で言うとCHROに多分相当するような人がいて、HCM室がつくられているのは非常に画期的だと思いますし、岡山大学も人事制度改革ということを明確に言っています。
そういった中で、改革する上では、実を言うと企業でもそうですけれども、そんな良いことばかりではなくて痛みも伴うわけですけれども、そういった痛みについて、東北大学ではどんな克服視点があるかを他の大学に伝えることができることがあればお伺いしたいと思いました。岡山大学への質問もございます。東北大学の資料の35ページでは大学と民間企業との間での高度人材の流動化を促進する支援とありますが、岡山大学では産学間で人材の流動化を進めるという意味での支援、具体的にどういう支援があるともっと進むのかというところを、何か想定されているものがあれば教えていただきたいと思いました。東北大学はこの流動化のところについて、どちらかと言うと研究マネジメント人材が流動化することをおっしゃっていますが、民間との間での流動化ですとか、そういったことをどういった視点で見ていらっしゃるか、あるいは期待しているところがあるのかどうかお伺いしたいと思います。
コメントは、研究時間をつくるということで、東北大学は明らかに研究時間が増えているということでした。岡山大学もそれを新しくやっていかなきゃいけないということですけれど、何かの時間をつくると言うと、やらないことを決めるということも重要です。そのやらないことを見出すのは、それを既にやっている人たちよりも、何故それをやらなきゃいけないかを、もっと新鮮な目で見る人がやはり必要になってきたりします。いわゆるその多様なバックグラウンド、違う背景を持った人が入ってくると、何故そんなことやっているのかという疑問を持てる。大学と文科省との間で決まっているという話ではなく、そもそもお互いの間で、本当にそれが必要なのかフレッシュな意見として考えられるということもありますので、多様な人を入れて、その多様な人を受け入れる素地の下、ここは一人入れても駄目で、複数の多様なバックグラウンドの人たちで同じゴールを目指す。ダイバーシティを社内で推進するときに感じましたが、やはり何か変えるということに対して、エンジョイするというようなことで組織全体を変える。組織が本気になっているとなると個人も変わっていき、自分事として動き始めるという好循環が回り始めるといいなと思いました。
すみません。長くなりました。
【千葉部会長】 冨永総長、手短にお答えいただけますか。
【東北大学(冨永)】 流動化に関しては、企業からクロスアポイントメントや特任教員として学内に入っていただいておりますが、企業の方と話をするときには、若い人のキャリアの中でどのようにフレキシブルに企業と流動化できればいいかが話題になります。特に企業から大学院の博士課程に若手を派遣してもらい人材育成をして、また社会で活躍してもらう、といったことも含めて、もっと流動的に人が動けるようになれば良いということをよく企業の方にも申し入れております。
【梶原委員】 すみません。ありがとうございます。
【千葉部会長】 ありがとうございます。そうしましたら、最後に木部委員、お願いいたします。
【木部委員】 どうもありがとうございました。非常に大きな改革が進んでいるということがよく分かりました。
私がお聞きしたいのは山崎委員がおっしゃったこととほとんど同じですので、お答えは、先ほどの山崎委員の御質問に対するお答えで結構だと思います。
文学部や人文系の学部におりますと、何か改革が進んでいるみたいよとか、またあそこに建物が建ったみたいよみたいな、そういうことが今までたくさんありましたので、これをぜひ大学の中の構成員の全員に理解していただいて、一人一人がその方向を向くというふうになればいいなと思います。どうぞよろしく頑張ってください。
【千葉部会長】 どうもありがとうございます。
それでは、予定した時間になりました。活発な御議論ありがとうございました。
冨永総長はここで御退出となります。冨永先生、どうもありがとうございました。
【東北大学(冨永)】 どうもありがとうございました。
【千葉部会長】 それでは、最後に、⑤政策評価に係る検討について、事務局から御説明をお願いします。
【俵課長】 ありがとうございます。政策評価に係る検討ということで議題設定させていただきます。
最初にちょっとだけ背景をお話ししたいと思います。経済財政諮問会議のワーキンググループの中で、重要政策についてはEBPMアクションプランをつくって取組を進めていこうというふうになっています。その重要政策の中に、この国際卓越研究大学の制度についても入っているんですね。その中で、アクションプランをどういうふうに出していこうかという議論をしています。
現状では、その国際卓越研究大学の仕組みの指標として、大学が取り組むことを指標として設定していますが、ワーキンググループの有識者の先生方の中から、国としてもきちんと政策目標を設定して取組を進めるべきだといった意見が出されています。その意見を踏まえて、こういった形で考えたいということを今日紹介したいと思います。
最初に29ページ、今、各大学の取組はお話しいただきましたけども、もう一度だけ国際卓越研究大学制度について少しだけ振り返ってみたいと思います。
最初に小川室長からも説明しましたけども、上の背景・課題のところを見ていただくと、これは欧米のトップ大学の収入の成長と日本の大学の成長の状況が相当違っていて、1つはこの海外のトップ大学の取組を目指すべきじゃないか、そんな議論がありました。上のグラフを見ていただくと、赤が東京大学。大体この20年弱で1.2倍ぐらいというのが日本です。その上を見ていただくと、例えばハーバード大学が1.5倍、オックスフォード大学が2.2倍というふうになっているので、この差を何とか縮め、あるいは追いつくということが必要じゃないか、そんな議論がされました。右側は基金規模、これも全然違うというのがよく分かると思います。
左側、じゃあ、どういう仕組みでやろうかというところに、10兆円の政府の資金を活用して、8.9兆円が融資、1.1兆円が出資と。この10兆円を使って大学を支援することで、研究力を伸ばしていこうということに取り組んでいます。
左下の青字のところに現状を書いています。2番目の星印のところになりますが、現状としてはそれが11.1兆円になっていて、運用資金としては、一番下に書いていますが、昨年度の年間での運用実績が約2,500億円、その前の年の資金と合わせると4,000億円が資金としてありまして、その3分の1を支援額ということで、1,300億円ぐらいを現状としては活用できる、そんな状況になっています。
右側を見ていただいて、これは先ほど室長からもお話ししましたけども、世界的モデルとみなされる世界最高水準の研究大学実現を目指すというのが、目指そうとしているものです。四角囲みの中を見ていただいて、じゃあ、何を目標としてそれに進もうとしているかというと、1つは年3%の事業規模の成長、それと大学独自基金の拡充による資金獲得の構築をベースとします。
もともと僕らとしては、年3%の事業規模の成長を目標として設定したいということで議論していたんですが、研究の視点での目標も必要じゃないか。そんな議論がありました。それで、ちょっと戻っていただいて3ページを見ていただく。これは改めて国際卓越研究大学の仕組みのロジックモデルとして整理をしたものです。ここではインプット、アウトプット、アウトカム、社会的インパクトという形で改めて整理しましたが、インプットが10兆円規模のファンド、アウトプットを見ていただいて、先ほど年の運用のことを話しましたが、目標として年3,000億円と設定しているので、これが1つのアウトプット。もう一つは、これらの資金を活用して大学を認定していく。現状としては数校を目指していると。第1期で東北大学に提案をいただいて、そこに認定をさせていただいていますが、今、第2期公募の最中というのが現状です。
アウトカムについては2つ考えていまして、先ほどの事業規模成長年3%がアウトカム指標の一つ。ここからが新しい指標として設定したいというものになりますが、国としての指標として、さらに論文、1つはトップ10%の割合、1つは論文の数ということで設定したいと思っています。その指標については、割合を20%程度。今日は省略しますが、この後の資料に根拠を書いていますけども、トップ4大学を見ると、20%程度の割合でここ20年ぐらい取り組んでいるというのがあるので、現状日本の大学では10%ぐらいになっていますが、これを20%の目標として取り組みたいというのが一つ。
もう一つ、論文の数については、日本は大体1%弱になっていますけど、これを海外のトップ大学の成長率に合わせた2%に引き上げることで論文の数を引き上げ、割合を20%にして、トップ10%の数も引き上げていく。こういうことで指標を設定したいと考えています。
その上で、最終的には社会的インパクトとして、イノベーション、研究環境、研究力、そして新たな知の創出というふうにつなげていきたいと考えています。
ひとつ先生方、これ、いろいろな方々からも意見を聞いている最中ですけど、知財、知的財産の収入についても指標として設定すべきじゃないか、そんな議論もありまして、少し検討していますが、現状としてはこういった形で考えているということで、先生方から意見いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【千葉部会長】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして御質問ございますか。いかがでしょう。
小野委員、どうぞ。
【小野委員】 ありがとうございます。
1点質問です。この測る対象というのは、国際卓越研究大学という理解でよろしいでしょうか。つまり、国際卓越研究大学における研究時間や10%論文などが対象ということでしょうか。
【俵課長】 ありがとうございます。はい、国際卓越研究大学に認定された大学を念頭に置いた指標として、設定をしております。
【小野委員】 ありがとうございます。ただ、測るべき対象は、国際卓越研究大学そのものではなく、日本の研究システム全体ではないかなと思いまして、質問させていただきました。
そもそもこの制度は、日本全体の研究力や研究機関を牽引することを目的としていると理解しています。であれば、測るべきは選ばれた大学そのものではなく、日本全体の大学の研究力ではないかという素朴な疑問を持ちました。個別の大学で成功が出ても、それが国全体の研究力の最適化につながるとは限りませんし、逆に一部の大学が突出することで格差が拡大したり、地方大学の弱体化を招いたりするリスクもあると思います。そういった観点からも、「研究システム全体をどう測るか」、という視点があってもよいのではないかと考え、御質問させていただきました。
【俵課長】 ありがとうございます。国際卓越研究大学に求められることとしては、大学の研究力だけではなくて、ほかの大学を牽引して全体を引き上げようということもありますので、委員の御指摘もあるかと思うんですけど、今回の指標自体は国際卓越研究大学の制度であり、かつその選ばれた大学に対する指標としてどうかという議論をしていまして、そういう中でのこの指標の設定を考えているものになります。
なので、大学研究力全体としては、委員が言われるように、本来であれば国際卓越研究大学だけではなくて、それをどう見るかということをしてまいりますけれども、今回、先ほどのワーキンググループの中で議論をしていただいているのは、その国際卓越研究大学に対しての指標ということで議論がされていますので、今回このような形で提案をさせていただきました。
【小野委員】 コメントになります。資源を集中的に投入すれば成果が出るのはある意味自然なことです。その中で、何をもって成果とするか、という点については、改めて丁寧に考えていく必要があるのではと感じました。
【俵課長】 ありがとうございます。
【千葉部会長】 どうもありがとうございます。
最後の事務局からの御説明、実はこの制度そのものの根幹をなす財政的なところで、非常に重要なところだと私も思います。一番最後の成果としてイノベーションとありますが、ここが実はキーで、要するに、もっと分かりやすく言うと資金循環ができるかどうか。国際卓越研究大学でもいいですし、日本全部の大学でもいいですし、総力を挙げて、投資したものがさらに増えて返ってくるという循環ができれば、実はみんなが物すごくハッピーに、どんどん研究できるわけです。じゃあ、もっと資金投入して、もっと回せばいいじゃないかとなるわけです。
その仕組みにどうやって持っていくか。それは、最先端の研究をやっているところだけではないところが全部正のサイクルに回らなきゃいけないというのは多分、研究者みんなの思いだと思うので、それをどう誘導していくかというところが、実はまさに国の未来をかけた非常に重要なところかなと思うので、これはもう国全体の視点も持ちながら、その世界にどうやったら持ち込めるかということ、それぐらい大きな構想をみんなで考えているといいなと思います。非常に重要な御提案をありがとうございます。
【千葉部会長】 そうですか。すみません。いっぱい手が挙がっていますか。あと9分なので、回答は短くということで、じゃあ、大野委員、お願いします。
【大野部会長代理】 コメントなんですけども、これは政策評価ということで様々な数値が挙げられていますけれども、結局それをやるのは国際卓越研究大学ということですね。ですので、そういうアワードを獲得してやっている最中にどんどんその指標が増えるとか、やらなければいけないことが増えるというのは、整理をして、世の中、社会にも、そしてそういうことを担う人たちにも説明する必要があると思います。
国立大学などでも途中で様々な評価が入って運営費交付金を上下させるようなことが起きたりしていて、それは結構不信感の源になったりしていた過去もありますので、上手にこの政策評価というのを位置づけてほしいなと思います。コメントです。
以上です。
【千葉部会長】 ありがとうございます。
時間の許す限りコメントいただきますが、もし時間オーバーになりましたら、メールでいただく形でよろしいですか。
じゃあ、続いて片田江委員、お願いします。
【片田江委員】 ありがとうございます。社会的インパクトを評価指標とすることについてですが、大学は研究成果によって社会に貢献するというのは大事な一方で、やはり社会的インパクトを追い過ぎることで、本来、大学が持つべき機能が軽視されてしまうということは、非常に危惧すべきことだと思っています。イノベーションの創出というのは非常に重要ですけど、インベンションとイノベーションは必ずしも一致しないと私は考えていまして、イノベーションの創出を過度に重視し過ぎることで、すぐに社会に役立つものを追い過ぎる。それによって、中長期的な視野に立った基礎研究が軽視されてしまうのではないかと懸念しています。
あと、そういった研究テーマの多様性ですね。イノベーションの創出を重視し過ぎることによって、研究テーマの多様性が損なわれる。例えば特定の社会的に注目される分野にだけ研究が集中してしまったり、それによって多様でかつ自由な探求に基づく研究テーマの存在が、大学全体としてその構成が難しくなってしまうというようなことが起きるのではないかと。
あとは、やはり中立性・独立性というのが非常に大学では大事だと思っていまして、研究そのものが政策的や、経済的な方向に左右されやすくなってしまうということが、研究が本来持つべき独立性・中立性ということが損なわれてしまうことに繋がる。イノベーションや社会的インパクトを求めることは当然ながら重要だとは重々承知はしておりますけれども、これを求め過ぎることで、本来あるべき大学の姿、基礎研究の重要性というところが軽視されてしまわないように、非常に重要かつ慎重に議論・検討すべき事項だと思います。
以上、コメントでした。
【千葉部会長】 大変重要な観点、ありがとうございます。
では、山崎委員、お願いします。
【山崎委員】 ありがとうございます。小野委員の御意見にちょっと触発されて、一言申し上げます。
先ほど予算とか教えていただくと、これ、国際卓越研究大学に応募している皆の大学が採択されるとはとても思えないので、そこから漏れるところは必ず出るだろうというのが一つと、私もJ-PEAKSの選定に関わった者の一人として、惜しくもそこから外れた大学とか、必ずしも研究力がないわけじゃないのに、全部に手厚い支援が行かないというところに若干歯がゆさを感じていまして、政策のチェックは必要ですけども、それが全体としてこの国の研究力強化にどうつながっていっているかという全体指標もしっかりとやはり見ていただかないといけないんじゃないかなということと、外れる大学をどうこれから勇気づける、元気づけるかというところもぜひお考えいただけたらなと思いました。
コメントです。以上です。
【千葉部会長】 ありがとうございます。
では、荒金委員、お願いします。
【荒金委員】 国際卓越研究大学に関する指標ということで御説明いただきましたが、私はそのKGIのところの論文数のところなんですが、一方では論文だけで評価して良いのかというような話もいろいろなところで出ていたと思うんですよね。その考え方というかそこの評価軸と、ここを論文だけに、論文をかなり集中して見ているというところの整理を何かちょっとしていただきたいなと思いました。
コメントです。
【千葉部会長】 ありがとうございます。
野口委員、お願いします。
【野口委員】 私もこの指標は参考にはさせていただいていますが、1点、QSやTHEの世界大学ランキングとのリンケージ性というのは、何か考えていらっしゃるんでしょうか。
以上です。
【千葉部会長】 その部分が重要だというコメントが。
【俵課長】 ありがとうございます。ランキングももちろんあるんですが、今回の指標としてはそうではなくて、論文でどうかなということで考えているものになります。
【千葉部会長】 よろしいでしょうか。
じゃあ、新福委員、お願いします。
【新福委員】 研究者の立場からコメントさせていただきます。
やはり私も、J-PEAKSが下りてきてやっといろいろな活動ができる、新しいイノベーションのために新しい連携先を探す、海外とのコラボレーションを始めたい段階にいる中で、成果をすごく高いところに短い時間で設定されると、難しいなと思います。また、国際卓越研究大学とJ-PEAKSは違うので、国際卓越研究大学に課せられている指標というのはあると思いますし、トップ10パーセント論文の割合というのが出てくるのも当然だと思うんですけれども、例えば社会的インパクトにおいては、まだこれを始めた数などの指標に留めて、何かの大きな成果がもう出たという前提で短いスパンで評価になってしまうとすごく難しいなと思いましたので、コメントさせていただきました。
以上です。
【千葉部会長】 ありがとうございます。
西村委員、いかがでしょうか。
【西村委員】 ありがとうございます。
私もこの20%がちょっと気になったところで、これは目標じゃないですよね。そういうトップ大学になったら、結果として20%になるのが当たり前だということだと思うんですよ。他大学を見るときに、国際的な標準を見たらそういうもんだと思えば、先ほどの2大学のお話を聞いていてちょっとだけ気になったのは、どういう形になれば世界で勝てるのかという、その絵があまり見えてなかったんですね。だから、その国際的に勝てる姿は何かというきちっとしたターゲティングが、本当に客観評価を基にきちんと立てているのか。それに対して、人事的に人員としての揃え方をして、ディビジョンとしてどう勝てるのかという戦略があるのかというのが、何かあまり見えなかったんですよね。
でも、逆にそういうことをつくってしっかりとした雰囲気をつくっていけば、結果的にそれはトップジャーナルに出るような人たちの仕事になるんじゃないかと思うんですよね。だから、何となく下から積み上げで何かを持っていけば、国際的に勝てる大学になりますという感じなんですよ。そうじゃなくて、どのカテゴリーのどのレベル間のどういう構成でやっていったら勝つのかという戦略があって、そこからの絵として個々のものを積み上げていくべきだと思うんですけれども、何となく数字ありきで、達成したら何かという、この考え方はあまり、評価に本当になるのかなという気がしちゃって。
【千葉部会長】 ありがとうございます。その観点は、科学力をもっと上げていく別の文科省の委員会でも議論になっていて、決して数字目標をトップに据えるわけじゃないですし、そこを達成しても、じゃあ、何がどうなるんだということは皆さんも御理解いただいていると思うんで、それを、じゃあ、いかにしてどういう表現にすればいいか、何を目指すべきか、非常に重要な観点だと思いますので、これは引き続き皆さんと意見交換できることは大変大事だと思っています。
それでは、最後に河原林委員、お願いします。
【河原林委員】 私は先ほどの部会長のおっしゃることに非常に賛成で、最終的にどれだけ返ってきたかということを評価するとなると、ここだけではなくて、ここを出た人、人材がどれだけのことをやったか、あるいはそこから出たものが何になったかとか、そういうことはもうちょっとちゃんと評価してあげて、それが長期的に価値があるんだったら、それはこういうアウトカムよりもっと上なのではないかなとすら思うので、その辺のところまでちゃんと書いていただいたほうがいいのかなという気がします。
以上です。
【千葉部会長】 重要な御指摘ばかりです。多分、事務局の議論でもそういうところはあると思いますけど、ぜひそれをいい形で表現して、みんなあらゆる分野の人たちがもっともっと力強く挑戦できるような指標が見つかると本当はいいんですけど、非常に難しいところですよね。でも、委員の御意見、大変貴重なコメントをいただいたと、このように思います。ありがとうございます。
じゃあ、これまた引き続きの議論ということで、本日は時間となりましたので、すみません。大変重要な課題でございました。
それでは、大学研究力強化部会運営規則第7条に基づいて本部会の議事録を作成し、資料とともに公表することになっております。本日の議事録については、後日、メールにてお送りしますので、御確認のほどよろしくお願いします。
それでは、以上をもちまして、第2回大学研究力強化部会を閉会いたします。本日はありがとうございました。
―― 了 ――
電話番号:03-5253-4111(内線:3838)