第12期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第3回)議事録

1.日時

令和6年5月9日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省15階科学技術・学術政策局会議室1及びWeb会議(Webex)

3.議題

  1. 国際連携・協力の状況・取組について
  2. 質疑応答・意見交換

4.出席者

委員

菅野委員(主査)、狩野委員(主査代理)、梶原委員、松本委員

※オンライン参加:相田(美)委員、飯塚委員、石原委員、礒田委員、小川委員、鈴木委員、野本委員、林委員

文部科学省

柿田科学技術・学術政策局長、西條大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、大土井参事官(国際戦略担当)、波羅参事官(国際戦略担当)付企画官、飯塚参事官(国際戦略担当)付参事官補佐、植田参事官(国際戦略担当)付参事官補佐、長田参事官(国際戦略担当)付参事官補佐

オブザーバー

鈴木科学技術振興機構安全安心グループリーダー、浅野科学技術振興機構科学技術外交グループリーダー

5.議事録

第12期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第3回)

令和6年5月9日

 
 
【菅野主査】  それでは、定刻になりましたので、第12期科学技術・学術審議会国際戦略委員会を開催いたします。第12期科学技術・学術審議会国際戦略委員会主査の菅野でございます。本日は、対面及びウェブ会議システムによるハイブリット開催とさせていただくこととなりました。委員の皆様には御協力をいただき、誠にありがとうございます。
 初めに、開催に当たっての留意事項を事務局から御説明をお願いいたします。
【飯塚補佐】  事務局より、会議開催に当たっての留意事項を御説明します。本日の委員会は公開で開催させていただいております。まず、出席状況ですが、本日は全員出席ということで、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 続きまして、配付資料について御説明します。会場に御出席の委員の皆様は、お手元にあります資料を御覧ください。オンラインで御出席の皆様は、事前に事務局から送付しましたファイルを御覧ください。座席表、議事次第、資料1-1から1-3及び参考資料1~4となっております。なお、資料は一つのPDFにまとめており、しおり機能で各資料をすぐ開けるようにしておりますので、御活用ください。ファイルの不備や操作方法に関してのお尋ねなどございましたら、事務局までお知らせください。
 また、会議の円滑な運営のため、Webexによるウェブ会議システム注意点を申し上げます。委員の先生におかれましては、表示名は本名、日本語表記、フルネームとしていただきますようお願いいたします。また、回線への負荷軽減のため、通常はマイクをオフにしていただきますようお願いいたします。
 発言される際の注意事項です。御発言がある場合は、会場に御出席の委員におかれては挙手を、オンラインで御出席の委員におかれてはWebexの挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。オンラインで御出席の皆様は、マイク設定のミュートを解除し御発言をお願いいたします。発言が終わりましたら、両方マイクを再度オフにしていただきますようお願いいたします。また、御発言の際には、オンライン参加者にも分かりやすいよう、最初に御自身のお名前から御発言いただきますようお願いいたします。そのほか、システムの不備等が発生しましたら、随時お知らせいただきますよう、よろしくお願いいたします。ウェブ会議システムの音声が切れてしまった場合には、事務局より事前にいただいておりますお電話番号に御連絡させていただきます。表示名や音声、映像については事務局により操作させていただく場合がありますことを御承知おきいただければと思います。御不便をおかけすることがあるかもしれませんが、何卒よろしくお願いいたします。
 そして最後に、文科省関係者の出席者を御紹介させていただきます。まず、柿田科学技術・学術政策局長。
【柿田局長】  柿田です。よろしくお願いいたします。
【飯塚補佐】  また、西條審議官。
【西條審議官】  西條です。よろしくお願いいたします。
【飯塚補佐】  西條審議官につきましては、本年4月より科政局審議官に着任しております。
【西條審議官】  よろしくお願いします。
【飯塚補佐】  また、大土井参事官。
【大土井参事官】  大土井でございます。どうぞよろしくお願いします。
【飯塚補佐】  あと、波羅企画官。
【波羅企画官】  よろしくお願いします。
【飯塚補佐】  そのほか、私、飯塚と、あと補佐の植田と長田が出席しております。
 また、議題1において、科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)より話題提供を予定しておりまして、浅野科学技術外交グループリーダー。
【浅野グループリーダー】  よろしくお願いいたします。
【飯塚補佐】  鈴木安全安心グループリーダーにも御参加いただいております。
【鈴木グループリーダー】  よろしくお願いいたします。
【飯塚補佐】  事務局からの説明は以上です。
【菅野主査】  ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。議題「国際連携・協力の状況・取組について」では、議題2の意見交換に関連する話題提供として、事務局及びCRDSよりそれぞれ御説明いただきたいと思います。なお、御質問はこの後の意見交換の中で併せていただければと思います。
 まず、資料1-1の国際連携・協力を取り巻く状況について、事務局より御説明をお願いいたします。
【大土井参事官】  参事官の大土井でございます。どうぞ今日からよろしくお願いいたします。このタイミングでの議論の、まず背景を少し簡単に御説明させていただきます。
 御案内のとおり、令和3年3月に科学技術・イノベーション基本計画第6期が策定されております。4月1日から施行されまして、今、4年目を迎えているという状況でございます。政府内でも当然ながら、第7期、次期計画に向けた議論がそろそろ始まるという時期に差しかかっておりますので、文部科学省といたしましても、文科省視点で研究開発、科学技術に関する国際で何を進めるべきなのか、どういった点に留意するべきなのかといった点を意見としてまとめていただきまして、政府部内で共有及び議論に生かしていきたいというふうなことを考えてございます。何卒、どうぞよろしくお願いいたします。
 資料の説明につきましては、飯塚のほうからさせていただきます。
【飯塚補佐】  では、私、飯塚のほうから資料1-1について簡単に御説明させていただきます。
 資料1-1では、ファクトベースで、国際共同研究であったり、人的交流がどうなっているのか、さらには、科学技術会合、国際会議でどういった議論が最近行われているかということについて御説明させていただければと思います。
 まず、資料をおめくりいただきまして、2ページ目を御覧ください。2ページ目、国際共同研究が現状どうなっているかという点ですけれども、図として、国際共著論文の数の推移を左側に示し、右側で特定論文における国内論文数、国際共著論文数というのをお示しさせていただいております。こういったことから、これらの図からも分かるように、国際共著論文というのは世界的にも増加しており、各国とも国際協力の重要性を認識し、国際化を加速させているというふうに考えております。
 続きまして、3ページ目、各国が国際共同研究を強化している中で我が国の位置づけがどうかというところなんですけれども、主要国の国際共著相手を見ると、日本の位置づけの低下傾向が見られているところです。例えば、下で米国の例をお示ししておりますけれども、米国では全分野において我が国の位置づけが低下しているという状況になっております。
 続きまして、4ページ目なんですけれども、4ページ目は、研究人材の流動性ですとか、留学生の状況をお示しさせていただいております。左側というのが、研究者の国際的な流動性がどうなっているかというものを示しております。赤い矢印というのが、非常に活発に行き来が行われていると。緑、水色というのが、なかなか人数としては少ないというような状況になっています。この図から分かることとして、米国、欧州、中国が研究ネットワークの中核に位置していると。一方で、我が国というのは、国際的な研究ネットワークの中核になっておらず、中核との連携が相対的にも弱いというような状況になっているかなと。
 右側ですが、高等教育段階における外国人学生の出身国・地域と受入れ国・地域がどうなっているかというものをお示ししたものです。米国や英国というのは多くの留学生を受け入れている。一方で、ちょうど日本、真下ぐらいにありますが、我が国の受入れも送り出しも非常に多いとは言い難い状況かなと。
 また、図では示していないんですけれども、コロナ前というのは世界の留学生数というのが大幅に増加しておりまして、2000年に160万人だったものが2022年には560万人に達しているというような報告も上がっております。全体的に留学生数や、流動性というのは増しているというふうに我々として考えているところです。
 続きまして、5ページ目、日本と米国における外国人大学生がどこの国が出身になっているかというところをお示ししております。下の図の上段が日本、下の図は例として米国を挙げさせていただいております。我が国では中国が最も多く、次いでインドネシア。10位以内に欧米諸国はなく、基本的にはアジアの国・地域が占めているような状況です。また、日本の特徴として、1位と2位以降に大きな差があるといった特徴があります。米国では、人口が多いということもあって中国、インドというのは多いんですけれども、日本ほど1位、2位と3位以降の差に大きな差は見られないというような状況があります。
 続きまして、6ページですけれども、アカデミアの現場がどれぐらい国際化しているかというのを、個別事例になってはいるんですけれども、そういったものをお示しさせていただいております。米国、英国、シンガポールなどのQS世界大学ランキング上位校においては、外国人教員の割合は、米・英で5割程度、シンガポールでは6割程度であるのに対して、日本はなかなか、東大・京大ですら7%、10%で1割未満にとどまっているというような状況になっております。
 また、下のほうでは留学生の割合も示しているんですけれども、各国3割から、スタンフォードが低くて3割で、そのほかでは5割を超えるような数字になっている一方で、一応、東大・京大では、全学部ですけれども、大体3割前後にとどまっていると、そういうような状況になっております。
 7ページ目、人材に関する競争力の国際比較ということで、IMDの世界人材力ランキングと、OECDの国際人材誘致ランキングというのをお示しさせていただいております。いずれも日本は上位に位置しているような状況ではないというような状況になっています。
 以上が、ここまでまずファクトベースのところで、これから先、今現状、国際会議の場でどういった議論が行われているかということを簡単に御紹介させていただいております。ここ1年で大きな会議といいますと、昨年のG7、科技担当大臣会合、仙台で行われました。今年はイタリアで、今それの準備がいろいろ進められているところです。
 また、OECDでこの4月、5月に大きな会合が開催されたところで、まず一点、OECDの閣僚理事会がパリで行われまして、これは今年、日本が議長国として議論をリードしているところです。
 もう一点、OECDではCSTP、科学技術関係の委員会で閣僚級会合が約9年ぶりに開催されまして、持続可能で包摂的な未来に向けた変革的なSTI政策のための大臣宣言が今回久しぶりに採択されているところです。また、サイドイベントとして、日ASEAN科学技術イノベーションラウンドテーブルを開催しております。
 最後、日ASEAN友好協力50周年の特別首脳会議も昨年12月に行われました。そういった中で、共同ビジョン・ステートメントも採択をし、科学技術関係の交流強化というものも盛り込まれているところです。
 ざっと会議はどういったことを開催したかというのを御紹介させていただいているんですけど、ここから一歩深掘りして御説明させていただきます。昨年、G7では、「信頼に基づく、オープンで発展性のある研究エコシステムの実現」をテーマに議論を行い、大臣宣言を採択しています。オープンサイエンスの推進ですとか、研究セキュリティ・研究インテグリティ確保による信頼ある科学の研究の促進、あるいは地球規模課題を解決するための国際頭脳循環を含む科学技術の国際協力などについて、重要だよねということを確認したというところです。G7の中でも研究セキュリティ・研究インテグリティのところは非常に重要なテーマとして扱われておりまして、9ページになりますが、ワーキングを今設置して議論されているところです。
 2021年6月にコミュニケの付属文書として「研究協約」を公表し、ワーキングを設置し、る議論が進められているところです。その成果として、現時点では「価値観と原則」及び「ベストプラクティス」文書を策定し、「バーチャルアカデミー」を立ち上げるといった動きも見られているところです。
 続きまして、先ほど御紹介したOECD/CSTPの閣僚級会合の結果について御紹介させていただきます。先ほども申し上げましたとおり、約9年ぶりに開催をしまして、テーマは「課題を共有し、変革をもたらす」ということで議論されました。アジェンダとして、真ん中に書いてありますけれども、「混乱の時代における国際協力と競争」というのを一つ重要なテーマとして取り上げて議論され、また昨今、新興技術の発展が目覚ましいところで、そういった新興技術のガバナンスをどうしていくのかというようなところも重要なテーマとして議論されております。
 また、プレナリー3では、グリーン/トランジションですね、地球規模課題が深刻化する中で、いかにしてグリーン/トランジションを成し遂げていくのかというような観点での議論が行われました。
 また、プレナリー4では、グローバル課題に対する国際的なアクションということで、オープンサイエンスの実現のためにどういったことを国際社会としていくべきかというような議論もされています。こういったところをベースにして大臣宣言を採択しました。
 次のページに、大臣宣言のポイントを簡単にまとめさせていただいております。柱としては4テーマありまして、変革的な科学技術イノベーション政策の立案と実施ということで、いろいろグローバルイシューが深刻化する中で、変革的な科学技術イノベーションをどう形成していくのか、そして実行していくのかというところを改めて確認したというのが、まず一点重要なところかなと。
 二点目として重要な点としては、国際協力、地政学的緊張だったりとか、経済安全保障に関する懸念が増す中で国際協力をいかに進めていくのか、そして、共有価値というのをいかにして再確認するのかといったところが盛り込まれています。具体的には、学問、科学の自由だったり、科学的卓越性、公開性、透明性といった共通価値観というのがOECDでも改めて確認をしているところです。今までG7なんかではこういったところを確認されているんですけれども、OECDで改めてこの点を確認されているというようなところです。
 三点目、四点目としては、科学技術イノベーションを、より多様なステークホルダーを巻き込んで実施していくことが重要だよねとか、エビデンスベースの政策立案が重要だというようなところが盛り込まれているところです。
 このほかに、10ページに戻っていただいて、変革的なSTI政策のためのアジェンダですとか、新興技術の先見的なガバナンスといった成果文書もまとめられているところです。
 私からの説明は以上です。13ページ以降に参考資料として、主な科学技術外交スケジュールですとか、文科省の国際関係の事業の参考資料をまとめさせていただいております。
【大土井参事官】  以上、資料1の説明でございましたが、改めてCOVIDもありました。世界規模課題、地球温暖化等も踏まえまして、国際的な連携の強化、これの必要性というものがすごく、どの場面においても、G7のみならず、G20、OECD、幅が広くなってもその重要性はみんなで共有していくという点がまず一点目。
 あと、それまではG7がメインで議論していた研究インテグリティ・研究セキュリティ、その国際連携に向けた基盤となる考え方がどんどんOECDレベルまで広がってきているというのが大きな大きな動きの一つかなというふうなことだと理解をしております。
 以上でございます。
【菅野主査】  ありがとうございました。
 それでは、続いて資料1-2の「各国の国際連携に関する取組」について、CRDSより説明をお願いいたします。
【浅野グループリーダー】  ありがとうございます。CRDSの浅野と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、早速めくっていただきまして、スライド2が本日のアウトラインでございます。まず、私から一ポツの国際環境の変化に伴う科学技術の位置づけの変化、それから二ポツのSTI政策における戦略的な国際連携を御説明申し上げまして、その後、三ポツから鈴木にバトンタッチして御説明差し上げたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、スライド3の国際環境の変化に伴う科学技術の位置づけの変化ということで、最初の黒丸ですが、国際環境の変化、主に地政学的な緊張の高まり、それから地球規模課題、気候変動、感染症の深刻化、そして新興技術の急速な発展、この辺りは皆さん、いろんなところで指摘されておりますし、既に言うまでもないことなんですが、いま一度、こういうことが進展しているということを確認した上で、その上で何が起きているかといいますと、国家安全保障、それから経済安全保障、外交、競争力、経済の観点から、その観点からも科学技術イノベーションの重要性が高まっていると。科学技術政策とそのほかの国の重要な政策の関連がすごく大きくなっているということがこの数年間の傾向かと考えております。
 そうしたことを受けまして、先に下の表のところを御説明申し上げますと、各国の安全保障戦略や経済安全保障戦略の中に科学技術、新興技術が占める割合、重要度が高まっております。どういう書きぶりになっているかと申しますと、一つ目のアメリカですが、アメリカのバイデン政権の2022年の国家安全保障戦略においては、赤字にしておりますが、インド太平洋、欧州のパートナーとの連携に加えて、地球規模課題、共通課題に対応するためには、地政学的なライバル等も含め共通の課題に取り組むというようなことも書いております。また、欧州のほうを見ていただきますと、欧州の経済安全保障戦略によりますと、彼らは、Protecting、Promoting、Partnering、この3つをきっちりバランスを取りながらやっていくということをうたっております。
 そして、英国の統合レビューに関しましては、こちらも同じような文脈で、やはり世界中のパートナーとの連携と全世界との価値を共有していない国々を含むほかの国との協力ということにも言及しております。こうしたことを傾向といたしまして、上の二つ目の黒丸ですが、推進、保護、国際協調、3つのPですね、Promoting、Protecting、Partnering。これをバランス取って進めつつ、国際協調に当たっては、価値を共有する国との戦略的な連携と、あとは地球規模課題対応のためには全世界との連携をすると。この、一見違うものをバランス取りながら両輪で進めるというような傾向が見られるということが分かってまいりました。
 次にめくっていただきますと、OECDの発表したレポートを御紹介させていただきます。OECDの科学技術政策委員会、先ほど飯塚補佐の御紹介でもありました閣僚級会合を開催した科学技術政策に関する委員会が2年ごとに発表しております基幹報告書におきまして、これが2023年の3月に発表されたんですが、ここで彼らはSTI政策の安全保障化(Securitization)というのを指摘しております。ここでいう安全保障化というのは、防衛とかそういうことだけではなく、気候変動とか移民、食料、エネルギー、技術なども含めた広い意味での安全保障ということをうたっておりますが、このSecuritizationというワードを主張しております。
 また、それと同時に、その次に記しておりますのが、技術主権ですとか、戦略的自律性、こうした概念が各国のSTI政策のフレームワークに入ってきていますよということを報告しております。
 そして、このレポートでも同様に、中国、EU、米国等のSTI政策の観点を分析した結果として、Protection、Promotion、こちらはProjectionというふうに書いておるんですが、先ほどのEUと似たような政策の観点というのを指摘しております。その上で何が必要かということで、STIのレジリエンス機能の強化ということと、あと、STI政策と国際協力の方向性を明確にすべきではないかと。冒頭にも申し上げましたとおり、科学技術とほかの重要政策の距離が縮まっているということで、関連省庁が連携する体制を整えなければいけないですとか、また、必ず一つのルールで全てのことは解決できないので、ケース・バイ・ケースできちんと対応する。そして、戦略的インテリジェンスの強化、また、さらに志を同じくする政府は協調して対応というようなことも指摘をしております。
 それでは、次、5ページに行っていただきまして、国際枠組みの動向を御紹介いたします。先ほどこちらも飯塚補佐からG7のことなど、OECDのことも御紹介がありましたので割愛しつつ進めますが、まず、左側の図ですが、国際枠組みが活性化していると。これはバイデン政権になりまして、アメリカがこういう国際舞台にまた復活したことによって影響力が増しているということも影響しているのではないかなと考えるんですが、やはりこういう枠組みが重要視されているということと、もともとこうした枠組みは従来、科学技術を相談しようということでつくられた枠組みでは当然ないわけですが、その中で科学技術がかなり議論されて、中心の議題のときには中心になりながら議論されているということも着目すべきではないかと考えております。G7は飯塚補佐の御紹介のとおり、科学技術が取り上げられましたし、G20やQUAD、そのほかの枠組みでも科学技術、新興技術について大きく取り上げられております。
 そして、右側のOECDプレゼンスの向上ということで、こちらもすみません、飯塚補佐に中身は御説明していただいたので、背景というか動向ですが、OECDもやはりアメリカや英国が最近積極的に関与しているということ、また、G20やG7と連携しており、特にAIなんかは、昨年の広島サミットのG7の成果文書でも、OECDのプラットフォームを活用してやるということが何度も触れられておりまして、そういうところでOECDの出すもの、報告書ですとか宣言ですとか、そういうものの影響力というのが強まっているのではないかというふうに考えております。
 次にめくっていただきますと、そうした状況下で、政府レベルでどういうような国や地域の国際連携がなされているかというのを大きく分けて御説明申し上げます。最初、左の上からですが、やはり欧米の協力体制は深化をしております。こちらに米国×EU、それから米国×英国、EU×英国など挙げておりますが、もともとの同志国としてさらに関係を深化しているというふうに言えるかと思います。
 その一方で、先に右側に行っていただきますと、やはり欧米もグローバルサウス、特にインド太平洋地域と言われるASEAN・インド諸国との連携を強化しているのが見受けられます。一つ目がアメリカとASEANなんですが、アメリカは2022年にASEANとの政府の包括的なパートナーシップを既存から格上げした形にしまして、さらに協力を深めるとしております。それをフォローアップした形で行われた23年9月に行われた会談では、こういう具体的なセンターをつくるなどアクションも進めているというふうに発表しております。
 それから、英国とASEANについては、国際科学パートナーシップ基金というものを立ち上げて、マレーシアから始まってASEANを中心に人材育成など協力をしていくという発表がございました。そして、アメリカとインドも、重要・新興技術に関する米印イニシアチブに合意いたしまして、新興技術、それからSTEM教育、人材育成、大学連携などを進めるということで、これも実際に動いているというふうに承知しております。
 そして、そんな中で左下ですが、EUやアメリカは、冒頭にも申し上げました気候変動、それから食料問題等の地球規模課題においては、中国とも合意をしているというような状況でございます。
 それでは、次、そうした中で、注目の課題というか動向といたしまして、人材獲得競争と国際頭脳循環について最後に触れたいと思います。やはり科学技術、産業競争力、安全保障の観点から人材が非常に重要であると。特に新興技術、AI、量子もそうですが、新しい分野で優秀な人材が必要ということは世界共通の認識となっております。そうした中で、奨学金とか研究者交流等のそういう事業を各国やっていることに加えまして、ビザの優遇などで科学技術政策以外のものでもこういうことに取り組んでおります。その例がフランス、それからイギリス、イギリスのグローバルタレントビザは皆さん御承知かと思いますが、これは結構大胆なあれで、優秀な大学からは優先的にビザがもらえるという制度で動いているというふうに承知しております。そしてアメリカも、やはりビザの優遇措置を行っていて、我が国でも、そういうビザの優遇措置が始まるとともに、国際頭脳循環の事業が先進国向けとASEAN向けと両方で始まっているというふうに承知しております。こうしたことが、大体のここまでの国際動向になります。
 最後に、8ページ目に参考にちょっと資料をつけておりまして、こちらは米国の状況なんですが、米国は今、実はインドの修士の留学生がどんどん増えております。これまで中国への依存というのが問題になっていたかと思うんですけど、もはやインドにも依存しているので、インドと中国以外から引きつける必要があるのではないかということを国家科学審議会が提言しております。ですので、アメリカはこれから中国・インド以外のASEANですとかアフリカですとか、そういうところから人材を獲得する政策にかじを切るのではないかということで少し注目している動向を御紹介いたします。
【鈴木グループリーダー】  続きまして、国際連携における研究の開放性と安全の重要性についてということで、科学技術振興機構の鈴木と申します。よろしくお願いいたします。
 先ほどから、外国人研究者の受入れとか送り出し、また、共著論文も含めた共同研究の促進も含めた国際協力の重要性ということが述べられてきたかと思いますが、それを受けまして、国際協力における研究の開放性(オープンネス)、それを進めていく上での安全性(セキュリティ)の重要性について各国でいろいろな取組が行われておりますので、それについて御紹介をさせていただければと思います。
 まず、大前提として、研究そのものというのはオープンな環境で、自由な環境で行われるべきだということが、いわゆる研究セキュリティ・研究インテグリティということの重要性が述べられているような文書の中でもたくさん述べられております。例えば、アメリカですけれども、国家安全保障大統領覚書33号というのが出されていますが、そちらの中でも、米国の研究機関のオープンで協調的な性質というものがアメリカのイノベーションや経済競争力、あとは国家安全保障を支えるものの基盤になっていますよというふうな言及がございます。
 EUにおいても、国際協力に関する戦略が出されておりますが、Global Approach to Research and Innovationという戦略の中においても、開放性と学問の自由といった基本的な価値を重視するとともに、自律性、競争力、知的財産の保護と安全保障といったEUの戦略的な利益もきちんと重視しましょうということで、まず、いろいろなものを守る前提として研究の開放性の重要性ということが全ての文書の中でうたわれているということになっております。
 続きまして、10枚目のスライドに移ります。そもそも、こういった研究協力を進めていくに当たって、いろいろな懸念事項が併せて議論され始めております。2010年代から、こういったオープンな研究環境が前提とはなるものの、そういったものに対してそれを不当に利用しようとする外国の影響であるとか干渉というものが着目されるようになっております。
 例えば、高額な報酬や研究費を提供することによって、大学の研究者を抱え込むようなリクルート活動が行われているケースだとか、あとは留学生による研究員等も含めて、科学技術情報をラボから持っていくような形の収集であるとか、技術流出につながるようなケース、また、直接大学がアタックを受けるようなサイバーセキュリティ攻撃みたいなものが散見されるようになりまして、こういった外国からの不当な影響、干渉ということが着目されるようになっております。こうした外国からの不当な影響について各国も懸念を示しておりまして、アメリカにおいては通商代表部、大統領府、国防関係から報告書が出されておりまして、中国をはじめとする関係諸国が、米国の先端技術を合法・非合法で入手して軍事利用している可能性があるのではないかという指摘を出していたり、イギリスにおいても、議会のほうで出されている報告書で、知財、汎用技術、新興技術へのアクセスと軍事利用の懸念性というものを示しております。また、欧州委員会、EUにおいても、外国からの干渉全般に関する課題を検討すべきだということで懸念が示されているところでございます。
 続きまして、11枚目のスライドに移ります。さきに述べたようなこういった懸念を受けて、改めて研究インテグリティと研究の環境を守る研究セキュリティの必要性ということが議論されております。繰り返しになりますが、活力あるイノベーション、活力ある研究システムを守っていくためには、研究のオープン性・国際化が重要であるという前提がありますと。それに対してリスクとして、かつては研究不正、利益相反・責務相反、コンプライアンス違反というようなものが提示されてきましたが、こういったオープンな研究システムを改めて利用してしまうような不当利用に対してもリスクとして懸念が示されているところでございます。
 こういったリスクを放置することによって、研究システムの健全性・公正性が毀損され、ひいては、科学研究、大学・研究機関、国際協力における信用の低下を招き、ひいては安全保障上の影響にも及ぶのではないかというふうなことが議論されております。よって、活力ある研究システムを維持していくためには、研究コミュニティの責任ある行動を通じた研究インテグリティの強化及びリスク分析、リスクマネジメント、あとは研究者を含めた研究コミュニティの意識向上であるとか、トレーニングを含めた研究セキュリティの対応が求められているということになります。
 参考資料の中に研究インテグリティと研究セキュリティの定義については入れているんですけれども、ここで言っている研究インテグリティというのは、研究における客観性、公正性、透明性、公平性などといった専門的な観点や原則を遵守することを指しておりますし、研究セキュリティについては、そういった研究者の行動に対して、行動原則のみならず対応に当たるところを研究セキュリティというふうに言っております。
 12枚目のスライドになりますけれども、こういった研究インテグリティ・研究セキュリティの必要性に伴って、各国においてどういったことを取り組んでいるのかということをまとめたのが12枚目、13枚目と続いているスライドで、全部で7か国分表示をさせていただいております。
 例えば、アメリカにおいては国家安全保障大統領覚書や半導体・科学法等において、連邦政府及び資金配分機関に対して研究セキュリティ強化をしなさいということで要請を出しております。いわゆる情報開示を徹底する利益相反・責務相反に関連する情報開示の徹底とリスク管理、リスク評価を行いましょうということと、アウェアネスを高めていくためのトレーニングモジュールを構築するということ、あとは研究セキュリティを包括化したようなプログラムをきちんとつくりましょうということ、そういった取組が行われております。また、そういったことを一体的に行っていくために、NSFの中にもOffice of Research Security and Policyというところで体制整備も行った上で、NSFを中心にしていろいろなセキュリティ対策が行われているということになっております。
 また、イギリスにおいても、政府を中心にしてTrusted Research Guidanceというものが発表され、リスク評価であるとか利益相反の可能性、国際協力におけるサイバーセキュリティの可能性等、チェックができるようなガイドラインが示されております。
 カナダにおいても、研究者向けのトレーニングコースであるとか、安全保障機関から提供されたベストプラクティスであるとか、チェックリスト、ツールみたいなものをまとめて提示することで研究コミュニティ全体の意識の底上げを図っているところです。また、特徴的なところとしては、いわゆるリスクが懸念される研究分野の提示であるとか、リスクが懸念される連携パートナーについてもリストを提示しているというのがカナダの特徴になっているかなと思います。
 続きまして、13枚目のスライドになりますけれども、EUにおいても、直近になりますが2022年に研究イノベーションにおける外国からの干渉に対処するための作業文書ということで、欧州委員会、欧州のコミュニティの中でもこういったことを促進していこうということで、リスクのある国・機関の特定をしていきましょうというところと、脆弱性の評価をきちんとしていきましょうというところ、あとは外国からの干渉に対する行動規範、どういうふうなことを行うべきかということをきちんと示すというところと、体制整備をきちんとするということ、あとはリスク管理システムを構築してサイバーセキュリティ対策をするようにということで示されているところです。
 ドイツにおいても、いわゆる研究セキュリティに関連する部署として研究セキュリティ課というものが設置されておりますし、研究セキュリティのポジショニングペーパーも示されているところになっております。我が国においても、情報開示、リスクマネジメントの強化を要請する動きが出ておりますし、そういったことに関する機関でどういったことが行われているかのフォローアップ調査なども実施が進められております。
 こういったことを幾つかの国のことをまとめてみますと、右の図に表しているとおりですけれども、研究セキュリティの対応としては、基本的には情報開示をして透明性を高めると同時に、何がリスクであるのかということを把握するためのリスクを理解する仕組みづくり、あとはリスクを評価・管理していく仕組みづくりですね、その上で、リスクのあるところに、程度に合わせた情報管理の強化、あとは皆さんが、研究コミュニティがそういったところにリスクがあるよということを理解するための意識向上及びトレーニングの強化、そういったことを研究コミュニティのみならず、安全保障上という特有の課題がございますので、政府との連携もきちんと深めた上で行っていくというふうなことが行われていることが伺えるかと思います。
 最後に参考資料でつけておりますけれども、米国においてもこういった研究セキュリティの取組は積極的に行われているところではありますが、なかなか苦労しているところもございます。研究セキュリティプログラムということで、統一した標準プログラムをつくろうということで要請が出ていて、それに基づいてドラフトも出されて、パブリックコメントも出されているところですが、研究コミュニティのほうからは、こういったことを行っていく上では、人的コストも含めて、金銭的コストも含めて、誰がどこで負担するのか、また、事務負担、大学の規模に合った対応になっているのかといったコメントが出されると同時に、そもそもなぜこういうことが必要なのかということ、共通認識を持つことが重要であるというふうなことも指摘が出されております。そういったことが、アメリカの下院議員の公聴会のほうでも指摘を受けているところで、こういった研究セキュリティの統一プログラムをつくるに当たっても、なぜ遅れているのかという指摘を受けるわけですが、やはりこういったことを研究コミュニティ全体で意識を高めていく土壌形成にまだまだ時間がかかっているというのがアメリカの現状でもございます。
 最後になりますが、15枚目のスライドになります。今までのお話のまとめになりますけれども、そもそも科学研究の開放性というのは、歴史的に科学コミュニティの科学倫理の柱の一つでございました。商業化、社会実装までのスピードが加速化する現代において、開放的でかつ国際的な研究開発というのは、多くの優秀な人材を引きつけ、イノベーションの原動力ともなっております。
 一方で、このようなオープンな研究環境が不当に利用されて、知的財産、人材、技術獲得がなされるなどの懸念が高まっていると。活力ある研究システムを維持するために、研究コミュニティの責任ある行動を通じた研究インテグリティの強化及び研究セキュリティの対応が求められております。
 研究の開放性と安全というのが、いずれかを選択するトレードオフというふうな関係性ではなくて、両者のバランスを取るための両立に向けた取組ということで、各国においても、現在進行形で悩みながらどこの国もやっているというのが現状かと思います。
 以上でございます。
【菅野主査】  ありがとうございました。
 それでは、続いて、資料1-3の「国際連携・協力の状況を踏まえた主な論点案」について、事務局より説明をお願いいたします。
【飯塚補佐】  事務局の飯塚のほうから御説明させていただきます。資料1-3につきましては、資料1-1、1-2の話題提供等を踏まえて、こういった論点があり得るかなということで事務局と主査で一覧としてまとめさせていただいております。これについて簡単に御説明させていただきます。
 2ページ目、まず、主な論点を進める前に、留意すべき動向・背景って何なのかというところを上段部分でまとめさせていただいております。皆さん御認識いただいていると思うんですけど、地政学的変化、科学技術分野においても中国の台頭ですとか、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、また、米中間をはじめとした先端技術をめぐる熾烈な国家間競争が一層激化している、経済安全保障の重要性が高まっているといったことは留意すべき動向かなと。また、生成AIなどの先端技術の著しい進展というのも見逃せない動向かなと。また、地球規模課題の深刻化も一国では解決できない複合的危機の時代になっている。このように国際社会は変化し続けていると。このため、これまで以上にグローバルな視点で科学技術政策を戦略的に実行し国際社会との連携・協力を強化することが必要なのではないかという点は留意すべき動向・背景かなというふうに考えております。それを踏まえた上で、主な論点として2ページ目、3ページ目で大きく3点柱を立てております。
 一点目が、開放性を持った研究環境や国際交流の重要性の再確認が必要ではないか。やはり、イノベーションだったり競争力、人材獲得を支えることとして開放性を持った研究環境だったり国際交流の重要性が必要ではないか。そのために何をすべきなのかと。細かい矢柱を立てておりますけども、繰り返しになりますが、世界中の人材が協働する開かれた研究環境の中で、研究者の自由な発想に基づく研究によりこれまで科学が進歩してきたところだと。一方で、近年開かれた研究環境が不当に利用されることで、外国への不正な技術移転や外国による研究に対する干渉が生じるリスク、さらにはそれが国の安全保障に影響を及ぼすリスクについて世界的に認識していると。
 そういった懸念、リスクが高まっている一方で、改めてOECD/CSTP、今年の4月に開催されたCSTPの閣僚宣言においては、学問、科学的自由、公開性、透明性、互恵性など共有された価値観に基づく国際協力メカニズムの再評価と再参加の必要性を確認していると。そういった状況を踏まえまして、経済安全保障上の懸念が増す中で科学的知識のオープンな循環・交換にどういった課題をもたらしているのか。特に研究の開放性及び優秀な外国人研究者の受入れを過度に制限することが、我が国の優位性や健全な科学の発展に影響を及ぼしていないか。一方で、開かれた研究環境を守るためにも、研究インテグリティ・研究セキリティといった国際的な共通の価値観・原則を進めることが必要ではないといったところを挙げさせていただいております。また最後に、少子化や留学生の増加を踏まえた施策として政策や施策はどういったことができるのか。
 二点目ですけれども、国際連携や頭脳循環を促進する上で必要な事項や戦略性は何か。開放的な研究環境を守るということと同時に、科学技術が競争力とも密接不可分である中で、我が国の競争力を維持・強化し、存在感を発揮するためにどういった戦略をもって国際連携を進める必要があるのか。あと、国際的な研究ネットワークの中には国の研究者が入る、あるいは優秀な人材を我が国に引きつけることが一層必要ではないか。また、アカデミアの健全な連携・協力を確保する上で留意すべき事項は何なのか(多様性の確保など)というようなところを二点目として挙げさせていただいています。
 三点目。二点目とも大分近しい論点ですが、グローバルに活躍する研究者を確保・育成する上で必要なことは何か。我が国が国際的なネットワークの中で存在感を発揮し、リードしていくために、グローバルに活躍できる若手研究人材を確保・育成する必要があると。そのために必要なことは何なのか。人材獲得競争が激化するとともに、我が国の人口減少を見据えて優秀な人材を多様な国より確保して、活躍してもらうということが必要ではないか。そのためにどういったことができるのかといったことを挙げさせていただいております。
 事務局からの説明は以上です。
【菅野主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明を踏まえて、質問、御意見をお願いしたいと思いますが、今、事務局から論点の一番目として研究環境の課題について、二番目として国際戦略について、三番目は、グローバル人材についての論点三つ、提示いただきました。別々に議論するというのもどうですかね、まとめて幅広く様々な意見をいただければと思います。
 では、まず。
【狩野主査代理】  いつも口火を切ります狩野です。
 結局、国際では何が同じであるべきで何が違うべきかという視点が非常に重要かなといつも思います。というのも、今日の情報もたくさんございましたけれども、とりわけ欧米各国とともにということであるとすると、社会規範が先方では人と違うべきであるという社会規範であるので、その中で我が国は一体どのように違えるのかということは非常に一つ大事な視点であるというふうに思います。もちろん、他方で何か同じでないと一緒にできないので、一体どこをどのように設定するのかということは考えていく必要があると思っています。
 同じであるべきことの一つは、必要とされる内容だろうかと。つまり、課題ですね。ここにも書いてあるように共通の課題。それから、ルールに関してもなるべく同じであるほうがあつれきは少ないだろうということは思います。他方で、違うべきところとして、例えば視点、あるいはアプローチ、それから社会の状況、その他いろいろあると思うんですけれども、こういうことを明確にして戦略を立てる必要があるのではないかというふうに私は思っております。
 例えば、1か国では解決困難な複合的な危機の時代ということに対して日本は何を得意にするのか、それから今できるのか、そしてこれから得意にしていきたいのかということ。それは、しかも欧米の各国と一体何が違えるのかということについては、まだあまり明確にできていない気がするので、この辺りを明確にしていくことは今後必要ではないかというふうに一つ思っております。
 それから、同様のことでは、留学生の関連、あるいは頭脳循環の関連があると思っています。人の流れは、水の流れに例えて言うと、何かの高いところから低いところに流れる。いろんな言い方があると思うんですけど、我々は一体何を高く設定できて、何はそうでない設定になっているのか、あるいは現状そうなっているのかということを、これまたやはり明確にしていく必要があると思います。その際には、日本国内に対して外は全部同じだという設定ではなくて、国・地域によって全く何を求めているのか、何を魅力に感じているのか違うということを思いますので、そういう比較的精緻なサブグループ化しての議論が今後きっと留学生獲得という意味では必要になるでしょうし、また、送り出しのことについても、欧米各国に送り出すという点での論点と、あるいはほかの世界の地域とのつながりを強めるというための論点は違ってくるということは思いますので、一体それをどういうふうに設定するかということは今後考えていくべきだろうというふうに思っております。その詳しいことをちょっと書き出しはしましたけど、長くなりそうだからやめます。
 とりわけ、それを設定するときにもう一つ、その動機づけがあったとして、一体あとは何が阻害因子になっているかということもやはり明確にしないと、人の流れは起きてこないということは思いますので、ここも今後しっかり見いだしていくというか、明確にしていくことが課題という書きぶりはありかなということを思った次第でございます。
 差し当たり以上で。失礼いたしました。
【菅野主査】  ありがとうございます。それでは、ほかにいかがでしょうか。
 日本の強みを生かしたというのが多分重要でしょうね。いかに弱い分野と強い分野、それをどのようにこの一つの施策の中にまとめるかというのは大変重要なポイントかと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
【梶原委員】  じゃあ、私のほうから。
東工大の梶原です。今、狩野先生からもお話がありました点、幾つかあるんですけど、に関して、国際的な協力というのが様々な分野で今後必要になってくるというところにおいて、それに関してもう一歩進んで、政策立案の部分のところからしっかりと協力をしていくというか、比較的今はどちらかというと、独自のところで違いを見つけて、ここが違うんだというようなところ、ここは共通だとやっているんですけれども、そういうことをもっと前に出て、ほかの国がどう思っているのかというのが違うのかもしれないので、やはり我々、一緒に国際協力をやるのであれば、協力する前段階からそういうディスカッションの中で、ほかの国が、やはり日本はここだよねというふうな位置づけの下で進めていくことが必要なのかなと。
 どっちかというと、自分たちで自分たちの分析をして我々はここが強いと言っているんですけど、外から見たら、実はそこ強くなかったり、ほかの国は思ったりしていて、そうするとほかの国は同じことをやり始めるということになってしまって、そういう政策立案のところからの国際協力というのが少し今後、全部の分野ではなかなか難しいと思うんですけれども、そういうのは我々としても、これだけいろんな国との連携というのは取っているので、当然、アカデミアの我々は共同研究等で一生懸命連携はしているんですけれども、それだけじゃなくて、政策立案の方々についても政策の対話、そういうものを通して、政策立案のところから国際協力をしていく部分というのは必要なんじゃないかなというのがちょっと感じたところです。
 それと、もう一点、これはちょっとあれなんですけれども、先ほど鈴木さんのほうからお話があって、研究のセキュリティ・研究インテグリティで、お話の中で、特に誰がどういうお金を使ってやるのかというところ、ここの部分でやはりちゃんと、私が知らないだけかもしれないですけど、担保されてないのではないかなと。やはり何かを整備して何かをやるということになれば、人件費もかかるしいろんなものにお金がかかると。多分、研究セキュリティ・研究インテグリティって物すごく大事なことで、しっかりやらなきゃいけないんですけど、それに対してかなりの努力が必要なんですが、それにどれだけのお金がつけられていて、どれだけの人が割けられているのかというところがあまりよく見えていない。
 なので、変に言えば、それをどこまでやらなきゃいけないのか。例えば、地方の大学で研究セキュリティと言われたときに、地方の大学で本当に僅かな中の人件費を割いてそれをやって、それぞれの大学でのセキュリティのシステムをつくっていって、それだけでどれだけの人がかかるのかということを考えると、資金もなければ何もなくてやってくださいだけじゃなかなか難しいんじゃないかなと。そこら辺を本当にしっかりとやっていかないといけないのかなというふうに思って聞いておりました。
 また、ちょっと今日、これはどっちかというと、鈴木さんのほうにお願いする話かもしれないんですけど、加えて、このセキュリティのことに関して今結構いろんな、7か国ぐらいのセキュリティの状況とかを出させていただいたんですけれども、私もちょっと調べてないからこういうことを言うのも何なんですけれども、例えば、それの相対する国がどう考えているのか。そういった情報がやっぱり、こっち側ばかりの情報しか見ていないんですよね。相手がどういうふうに考えているのかというのを知った上で我々はプロテクトするなり、オープンにするなりということを考えなきゃいけないんですけど、何となく相手は危ないんだというところで自分たちだけで考えているところがあるので、情報としてやはり、相手国が今どんな感じなのかという情報がしっかりとシンクタンクで分かれば、もっと考えやすいのかなというふうには思いますので、もしそういう情報があれば、取りにくいとは思うんですけれども、やっていただければすごく下々としてやりやすいかなと思いました。
 以上、まずは二点、コメントさせていただきました。
【菅野主査】  ありがとうございます。CRDSから何かありますか。
【鈴木グループリーダー】  コメントありがとうございます。研究セキュリティ確保のコスト面の件については、こういったことをやるために新たに予算をくっつけるというふうなことだけではなくて、アメリカにおいても、今あるシステムないしは今ある人材でできるところとできないところ、新たに補充しなければいけないところはどういうことなのかといういわゆるギャップアナリシスというのをやった上で、足りないところを考えていくというふうなことをしています。
 あわせて、大きな大学と地方大学とで資金面でもすごく大きな差がありますので、できる限り共通でできるところは共通のパッケージの、例えばトレーニングモジュールは共通でつくってみんなが使えるようにしましょうであるとか、そういったことで、できるだけどこの大学も併せて使えるようなものを開発していくと同時に、全ての大学に一律に研究セキュリティ対策が必要なのではなくて、一定金額以上の連邦政府の資金を受けているところを対象にするというふうな形で、グラデーションを持って対応策を検討しているということになりますので、何が何でも一律全部というふうなことはやっていないということになります。なので、規模に合わせた形で導入しやすいように、現状に合わせた取組というのを日本でも考える必要があるのかなと思っております。
 あとは、相手国のお話ですけれども、まだ我々のほうでも調べ切れていないところはありますけれども、おっしゃるとおりで、やみくもに怖いと恐れるのではなく、何がどういうふうに怖いのか、本当に恐れるべきものは何なのかということをやはり把握することは重要だと思っております。これは、誤解を恐れずに言うのであれば、一つの我々みたいなシンクタンクでできる話ではなくて、いろいろなところが持っていらっしゃる情報とかを共有できる仕組みというのは必要かなと思っております。
 またアメリカの事例で恐縮ですけれども、アメリカにおいても、いわゆる情報機関みたいなところと、あとはファンディングエージェンシーであるとか、ほかのデパートメントみたいなところがそういった情報を交換できるような公式もしくは非公式の対話の場があるというふうに聞いていますので、そういったようなことで情報交換をきちんとして、それが研究コミュニティに展開されるような仕組みが重要かなと考えております。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 研究セキュリティ・研究インテグリティに関しては、御紹介いただいたとおり、各国、悩みながら進んでいるということかと認識しています。日本においてもこれから多分、研究の開放性というのを担保するためには、非常に重要な戦略として今後検討していかざるを得ないことかと思いますが、事務局は何かコメントありますでしょうか。
【大土井参事官】  ありがとうございます。文科省、大土井でございます。
 まず、政策立案を国際的にという視点に関しては、それこそ先生、GSFのビューロに入っていただいておりますけれども、G7、OECD、可能な限りのインプットはさせてもらいたいなと思いつつ、ただ、各国の政府の政策はそれぞれ別とあり、その最小公倍数、あるいは最大公約数の部分でああいった国際条例を使っていくんだろうと思っております。一方で、例えば総務省さんとかは、電波、デジタルの世界でも標準をOECDのものを使ってやっていらっしゃるということもありますので、うちとしても、ぜひ引き続きというか、さらにこれは強化しなきゃいけないなと思っております。
 あと、インテグリティ・セキュリティに関しては、鈴木さんからの回答もありましたけれども、一方で役所サイドからすると、必要なことはしっかりどの大学においてもやっていただきたいというのが基本姿勢です。インターネットが普及をし始めた頃、今は当たり前のようにウイルスチェッカーが入って、パソコンというか、サイバーのセキュリティは上がっているわけですけれども、今のインテグリティ・セキュリティの取組は、恐らく今後一般化するものであろうと思っておりますので、どのレベルというそのレベル感はあるかもしれませんが、どの大学、どの機関においても、やっぱり最低限のことはやっていただく必要が出てくるんだろうというのが早晩訪れる世界だと思っています。
 あともう一つ、先ほどのCRDSさんの資料をよくよく読んでみると、さっき菅野先生からもありましたとおりで、主体が実はそれぞれの国はまだまちまちなんです。例えばアメリカであれば、NSFという国の機関であるものの、別の研究FAが主体になって動いています。ほかの国、オーストラリアとかであれば、例えば国が主体になって動いているということもあり、まだそこが実は日本でも軸足がしっかりと定められていない。なので、おっしゃるとおり、主語はしっかり僕らも意識をしながら、誰が何をしていくのかと。総体的にこの研究セキュリティ・研究インテグリティに一定程度の機能を持たせるということを、もう少し具体的に今後政府全体として考えなきゃいけないなと思っております。
 以上でございます。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 それでは、次、鈴木委員、お手が挙がっているようですけれども、お願いできますでしょうか。よろしくお願いします。
【鈴木委員】  御説明ありがとうございました。主な論点三点目の、いかにグローバルに活躍する研究者を確保していくかというところの観点で意見を述べさせていただきたいと思います。
 先日、前半にもありましたけれども、我が国の研究力の低下の因果推論というものに関する講演を聴く機会がありました。それは鈴鹿医療科学大学の豊田学長がいろんな分析をされたその結果をお聞きしたんですけれども、今日前半でもお話がありましたとおり、グローバルには論文の数というのはマクロに増えていますし、国際共著の論文というのも当然増えていますと。その中で論文の質の観点と量の観点がありますけれども、論文の質というと、その論文がどれだけ引用されるかというところが質の大きな指標になるかと思いますけれども、質の観点だと大分日本は下がってきていると。それと量を合わせて、それをほかの、G7ですね、日本以外の国になりますけれども、そこの平均を取ったものに対して日本がどのぐらい量的に論文を出しているか、質的に論文を出しているかというのを比較すると、2004年から顕著に低下が見られると。日本全体で見るとそうなっているけれども、学群別というんですか、大学群別に見るとどうかというと、国公立大学は下がってきているけれども、むしろ、例えば早稲田大とかそういった私立の総合大学はむしろ、ほかの海外の国と同様に伸びていっていると。
 じゃあ、2004年に何があったんだろうというと、先生の分析ですと、国立大学の法人化が2004年から始まりましたけれども、それが最大のマイナス効果ではないかと。その結果として、いわゆる研究にかけられる時間が減ってしまったというようなところが影響した可能性が高いというような御報告と、さらに加えて、今、政府が10兆円ファンドということで東北大には配付されるというようなお話を伺っていますけれども、それで競争力が挽回するかというところもシミュレーションされていますが、仮に年間3,000億円とかいうものを配付したとしても、それは一つの大学にどんと3,000億円配付されるわけではございませんので、必ずしも十分な効果にはならないだろうというような予想もされているところです。やはり1兆円規模ぐらい大学への研究開発費というものを投下しないと、挽回というものは見られないんじゃないかというようなお話を先日お聞きしました。やはり研究にかける時間ですとか密度ですね、時間はあっても、その中身も重要ですので、そういったところを十分に確保できる環境を整えないと研究力は上がらないし、そういった国にいかに、オープン化したとはいえ、海外から優秀な研究者はあえて日本を選んでは来ないだろうというようなところにつながってくるのかなというふうに思います。
 ですので、今、いろいろ御議論されている内容に合わせて、日本の研究環境を、主に人的研究環境というんですか、いい箱物を整えるとかそういうところではなく、人的研究環境をよくしていかないと、いい研究者というのは集まらないんじゃないかというので、そこを両輪でいかにやっていくかというところも一つ議論のポイントとしてあるのではないかというふうに思っております。
 以上になります。
【菅野主査】  ありがとうございました。日本の研究環境、先ほど、海外の例もありましたけれども、海外は大学の研究者、外国籍がかなり多いと。日本はまだまだそこまで行っていない。日本の研究環境をどうするかというのは、この国際循環と、大学自体のシビアなこれから競争に立ち向かうという、国際化という問題だけではないなかなか難しい問題がありますね。
 それでは、次、相田委員、相田卓三先生、お願いできますでしょうか。
【相田(卓)委員】  今、たまたま中国にいるんですけれども、セキュリティの問題ですけれども、やっぱり大変難しいと思いました。いろんな美しい文言が並ぶんですけど、実態として非常に難しいなというのが現状です。
 昔、かなり前ですけど、アメリカに行ったときにIBMにいたんですけれども、ちょっとだけですね。そのときは、我々とか、あるいはポスドクの連中が入れる部屋と入れない部屋というのがありまして、それはカードでちゃんと決まっているんですね。私がもらっているカードでは、一番セキュリティの高いところは入れないということになっていて、そこは開かれた研究をIBMの研究所がやっていたんですけれども、やっぱり会社のコアに関わるところはちゃんと締め出しがなされていたということで、1986年ですけど、そのときはそういうふうに会社では完璧にやっていたわけです。会社はできるんだろうなと思うんですけれども、大学のことを考えると、何を言おうが絶対に無理だと私は、すみません、思います。イーラーニングとか盛んにいろんなこともやらされているんですけど、それを幾らやろうが、多分そこで学んだものを持って帰って研究をやるというのは、普通の流れなのではないかなというのは、特にこの中国に来ていて、ある分野での発表を聞いて、学生、今の中国のいわゆる若手のPIになったばかりの、テニュアトラックになっていて物すごく論文を出さなきゃいけないときというのは、もうその研究を聞くだけで元のボスが誰だったのかすぐ分かるという状況なんですね。つまり、同じことを継続しているわけです。ほとんど同じコンセプトですね。
 もちろん、その中でそうじゃない研究も出てきていて、ハイインパクトのジャーナルにも出ているんですけれども、私が働いている科学のいわゆる専門誌と言われる中の一番上の論文というのは、当たり前のようにそういう若い方が出していて、それはコミュニティがあって、ボスがアメリカの誰、日本の誰ということはすぐに分かるようになっているんです。効率よく論文を出していかないとテニュアが取れないので、そこにがんがんと働いて出しているという中で、日本にそういう環境というか状況はないですよね。そこがまず一つかなと思います。
 日本に例えば中国の学生が来るのに、ビザの取得に半年かかるわけですね。これは、ほかのここに来ているヨーロッパの人にも聞きましたけれども、イギリスもドイツもやっぱりかなり長くなっているということで、その間に一体何を調べているんだとみんな言っていましたけど、とにかく遅いということになっています。ただし、ドイツにしても博士課程の学生が多いので、主体はやはりドイツ人であると。アメリカは、大学にもよりますけれども、あるマテリアルの分野とかは、かなり中国人、インド人になっているんですね。なので、そこは今大打撃を受けているんですけれども、やはり、でもアメリカも博士課程の学生が多い。
 じゃ、日本は何かというと、ほとんどいないわけです。これは、ここに来てもう随分言われました。日本って誰もじゃないけど、行くけどそんなことまではないよと言うんですけど、いたら将来の人材につながるかなと思うんですけど、そこが非常に少ないです。そこが非常に大きくて、プラス、円が弱いので給料が非常に低いんですね、今ほかの国に比べて。中国のポスドクよりも日本のほうが低いです。深圳の給料を聞きましたけれども、断然多いんですよね。
 そんな中で、日本って人材どうするのというのが私の一番大きな問いかけであります。人材がいなければ、どんなルールができても、どんなことをやろうが、絶対将来がないんですよ。今その状況に来ているということですよね。特に地方大学に行くと、博士課程にまれに学生はいるんですけど、ほとんど留学生です。そういうことがありますので、日本はなぜこうなったかというのは、もちろんさっき鈴木先生がお話になりましたように、日本はランキングがどんどん落ちて、今世界の13位というのが、Top10%ジャーナルですね。そこにわざわざ来る人って非常に減っているわけです、今。もちろん、その中でもすごく光っている人をカタログにして、ここ来れますよと言うと違うかもしれませんけど、ぼーっとキャンペーンをしただけでは、やっぱり日本は通り過ぎていかれる国に今なっています。
 今、私、頭脳循環のASPIREというのをJSTのほうでやっているんですけど、まず一番困るのが、日本に、これは若い人を海外に送って、向こうからも来てもらうということが前提のプログラムなんですけど、送る学生がいないんです。つまり、修士の学生とかになって、送ってもほとんど意味がないだろうなという学生しかいないので、プログラムに応募できないんです。応募してもらうと、すごくぎりぎりのところになっていて、本当に送ってもらえるんですかみたいなことを一々言わなきゃいけないし、向こうからはなかなか来ないんです。これが現状で、すごくいいプログラムではありますけれども、少なくとも最初の1年たちましたけど、大丈夫かなというのが現状であります。
 基本的には日本が強くならない限りは、どんどんどんどん見捨てられていくのかなと思いまして、そういう中で日本はなぜここまで落ちているのかということですけど、特に国立大学というのは今お話がありましたように、ほかのことにたくさんの時間が取られているのと同時に、超社会主義ですので、どんな活動をしようがほとんど処遇が変わらないと。私立は、まだそこで例えばいい論文が出たりすると多少のことがあるのかもしれませんけど、国立に至っては全く無風ですよね。
 そういうことがあって、中国に来ていて、中国に来ると億万長者になれるとか言われているんですけど、それはうそだと思いますけれども、日本は全くそういうことがないというのが、この間、JSTが主催した日本って大丈夫かという会で随分話になりましたけど、助教の給与、これ2.5倍ぐらい違うんです。シンガポールとか中国、韓国も大きいですし、アメリカに至ってもそうです。日本だけがめちゃくちゃ低い状況になっているということを今日の先生方にぜひお考えいただいて、少しでもいい方向に動いていくように推していただければと思います。ありがとうございました。
【菅野主査】  ありがとうございました。いろんな論点がありますけれども、取りあえずは、ほかの先生方の御意見をお聞きしたいと思います。
 次、小川先生、いかがでしょうか。
【小川委員】  ありがとうございます。二点申し上げたいと思います。
 まず一点目の頭脳循環でございますけれども、我が国の研究開発力の低下ということは、経済界のトップの間でも非常に深刻な懸念が示されております。やはり研究力というのは,多様性によって保たれるものであろうと思います。アメリカの研究力が高いのはアメリカ人の能力が高いからではなくて、世界中からトップレベルの研究者が集まってこそ維持されるものであろうと思います。
 そういう観点から、先ほどの相田先生のお話、ほかの先生のお話も非常に深刻に受け止めておりまして、世界中のトップレベルの人材にもはや日本が選ばれなくなっているということは、本当に深刻に受け止めるべきであると思います。これは産業界でも同じ悩みを抱えておりまして、今、IT人材をはじめとして、優秀な人材を世界中から呼んできたくても、まずこの為替と日本の賃金水準で、もはや途上国と今まで思っていたような国の方からさえ見向きもされないという状況があります。為替とか賃金水準はなかなかすぐに変えられるものではないんですけれども、であれば、それだけ魅力のある研究環境ですとか、そういったものが必要なんだと思うんですけれども、企業で言えば、比較的グローバル化が進んで、日本においても外国籍の方も活躍されている企業を拝見しますと、カルチャーからがらっとグローバルに変えているんですよね。報酬制度であったりとか、人事制度であったりとか、それから公用語、英語ということも含めて、仕事の仕方、ジョブ型を取り入れるとか、そういったことも含めて、グローバルに合わせて日本の会社の本社のほうも変えているところでは、例えば管理職に、役員のところに外国の方も大勢入っていて多様化が進むといったことが見られますので、恐らく大学においても、今のような硬直的な閉鎖的な人事制度であったりとか、報酬制度のままで外国の方に魅力を感じていただくというのはなかなか難しいのではないかと想像いたします。ですので、ただ単に頭脳循環、人の動きのところだけ見るのではなくて、大学の組織そのものの全体の改革と合わせてこれは考えるべきなのであろうと思います。
 それから、外に出していくほうのお話も、今、相田先生のお話を聞いていて改めて深刻だと思いましたが、これは研究者に限らず、我が国の産業を支える人材という意味でも、これからグローバルにビジネスを展開していける人材を育成するという意味で、出ていく留学生の数は桁違いに増やす必要があると考えております。ここが増えないという話は、この国際戦略委員会の何期か前から同じ資料を拝見して、同じ課題をいつも議論しているような気がするのですけれども、そろそろ具体的にどのような施策を打って、それがどういう効果を上げているかという検証が必要ではないかと思います。
 また為替水準の話になってしまいますけれども、今この為替水準で留学に出るって、相当コストがかさむ状況になっていますので、国としてやはり桁違いにここに資金を投じて外に出ていく留学生を支援して、桁違いに増やすということをそろそろ真剣に考えるべきではないかと思っております。
 それから、研究インテグリティ・研究セキュリティのところは本当に難しい問題だなと思います。産総研の事件などもあって、経済界としてもやはりアカデミアと連携していくときに研究セキュリティがしっかり確保されていないと、なかなか産学連携も進めにくくなってしまうのではないかと思っています。とある著名な国研で、そこが気になってどのような取組をされていますかという質問を私はしたことがあるんですけれども、非常にセキュリティの、機密性の高い研究をしているので外国籍の方は採用しておりませんという、その1点しか伺えなかったことがあるんです。果たしてそれで十分なのかと。たとえ国籍が日本人であっても、そこから何かが漏れないとは限らないわけですから、今アカデミアのほうでもしっかり取り組んでくださいということは国から言われていると思うんですけれども、どういう取組が必要でどういう取組が十分かというところ、非常に悩まれているのではないかと思います。
 他方で、大学院などでは中国籍の留学生の方がいらっしゃらないともたない、大学院が維持できないというようなお話も聞きますので、国籍でただ単にシャットアウトするというわけにもいかないと思いますけれども、他方で、では出入り自由にしていたら、他の国の人たちは、何かあれば国のほうに報告する義務を持っていらっしゃると思いますので、そこをどううまく切り分けて考えていくのかというところ、私も正解を持ち合わせているわけではありませんし、恐らく他国でも悩んでいる最中なのだろうと思います。
 先ほど、各国の取組の実例をお聞かせいただきまして、大変参考になりましたけれども、さらにここを深掘りして、具体的に、例えばアメリカの大学でどのように取り組んでいらっしゃるのか。リスクベースでどこは開放してどこをしっかりとシャットアウトしているのかといったような取組事例を共有しながら、日本においてもより具体的に、国研や大学に対して、やり方も含めて示していくという取組がこれから必要になってくるのかなとお話を伺いながら思っておりました。
 以上でございます。
【菅野主査】  ありがとうございます。今の研究セキュリティ・研究インテグリティに関してですけれども、産業界から、例えば個別の大学に対する要求という以外に、施策としてどのようなことが重要であるとかという意見、コメントというのはありますでしょうか。
【小川委員】  具体的にどういうことが必要、十分なのかということを私どももまだ十分検討できているわけではございませんので、これから少し企業の方々の御意見も伺ってみたいとは思っております。例えば、大学の中だと、どうしてもファイアウォールを設けにくいということがあれば、非常に機密性の高い、リスクの高い分野については、大学の外に外出しにしてオフキャンパスのような形で産学連携を進めるのがよいのではないかといったような議論を聞いたこともございます。いろいろと工夫の仕方はあろうかと思います。また、そうしたことが、恐らくアメリカなど他国でも今工夫が進んでいるところなのかなと推察しますので、情報交換もした上で検討していければと思っています。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 それでは、次、飯塚委員。お願いできますでしょうか。
【飯塚委員】  ありがとうございます。皆さんの御意見を伺っていて、多分いろいろ重複するところがあるのかなと思いながらお伺いしていました。
 最初の発表において発表されていた内容で思うには、日本はこれから人口減少もある、それから、あと労働力も少なくなっていく、なおかつ研究人口も減っているということで考えると、どうしても留学生に頼らざるを得ない状況というのはこれから続いていくんじゃないかと予想されると。
 じゃあ、留学生は一体どこから来ているのかという先ほどの資料を拝見しますと、大体アジア諸国から来ていて、先ほど資料にございましたが、研究インテグリティの研究対象となっている国からは来ていないと。そうすると、もちろん研究インテグリティの対策を取っている国々と同調するというのはすごく必要なんですが、その国が果たして派遣先、アメリカでも中国やインドから多くの留学生を得ているということであれば、どういう対策を取っているのか。先ほど相田委員からは、ビザがすごく長い間かかるということですが、何をその間しているのかということをもうちょっと深掘りして伺ってみるのも参考になるのじゃないかなと思いました。アメリカなりイギリスなりEUが留学生をリクルートする際、どういった観点、学術以外の観点でどういうことを調べていらっしゃるのかという点は非常に興味深いところかなと思いました。
 それとあと、お給料の面ということを考えると、来てくれないということもあるかもしれないんですが、現在日本から出ていってしまっている研究者の方がなかなか帰ってくれなくなっているという状況はあるのではないかと。これ多分、前に狩野先生もおっしゃっていたことだと思うんですが、こういった方々をどうやって人材として生かしていくのかという、また、こういった方々を、ある意味、価値を共有している方々としてみなすのであれば、活用するということも考えていく。その場所にいながら、例えば留学生の受入先になっていただくなり、その方々の学生を日本に送っていただくなり、そういった形の協力を得ることも可能ではないかなと思いました。
 それと、日本の環境をよくしていくというところで、先ほどほかの委員の先生方もおっしゃっておられたと思うんですが、研究環境だけではなく働く環境、これは御家族がいらっしゃったときにどういった対応ができるのか、それは留学生も含めてですね。インターナショナルスクールに入れるのかどうかとか、そういったファシリティがあるのかどうか。台湾などは、例えばそういった帰国する方々に向けては、インターナショナルスクールの授業料とかをかなり安くしているというふうにも伺ったことがございますので、そういった体制というのももしかしたらこれから必要になってくるのかなと思います。
 それからもう一つ、先ほど相田先生がアメリカにいたときに、ポスドクの場合は入れるところと入れないところがあるというふうにおっしゃっておられましたけど、私はこういったルールを入れていかないと、国際化する研究者というか、また、研究者のいる環境をマネージできないんじゃないか。要するに、クリアにルールが徹底されているからこそ、誰もが開放的にいろんな活動ができるということになるのではないかと思いますので、そういう形にどんどん進めていく必要があるのではないかと思いました。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。外国人研究者、日本人の科学研究者を受けるその周辺の環境をどのようにして整えるかということに関しては、何か施策としてできることがあるかもしれないですね。
 次、それでは、礒田先生。よろしくお願いいたします。
【礒田委員】  説明をいただきまして、ありがとうございました。OECD、CSTPのプレナリー2のところに、新興技術の先見的ガバナンスというのがございましたけれども、これについては、リスクマネジメントと同期させていくというところだと思うんですが、そもそも新興技術の先見的なガバナンス、こちらについて、例えば文科省が主導する場合に、ニーズ型の研究をある程度トップダウンで技術革新につなげていくような、そういう育成する場をつくっていくとか、例えばそういうことが必要なのかな。でも、既にもうそういう課題がトップダウンで出てきて、そこに緊急性があるような研究をどんどん集積していくということもあったと思いますので、そのときに、新興技術を日本としてどう位置づけていくかというところで、もちろん社会的に必要な新興技術というのはあると思うんですけれども、我が国としてのニーズ、新興技術の部分についても少し整理して考えていく必要があるのかなと思いました。もし既にそういう情報がありましたら、教えていただきたいと思いました。
 それからもう一つ、科学技術を包括的にビジネスとか労働組合なんかも一緒にやっていきましょうというところで、その辺りは、例えばアカデミアの現場には、産学連携の研究、非常に盛んになってきていると思いますけれども、研究者や大学の評価の指標として、産学連携との共著論文の数とか質とか、その辺りも指標に入ってきているように最近思いますので、非常にその辺りで活発化していけるというところでいい方向かなと思って聞いておりました。
 それから、STI政策と国際協力の方向性の明確化というところが御説明にあったんですけれども、これについては、日本においてはどういったところが協調させていくべきところなのかというところ、既にもし整理している情報とかがありましたら、やはりそれを教えていただきたいなと思いました。ちょっと質問もかぶる発言になっておりますが、よろしくお願いいたします。
【菅野主査】  今の質問に関して何か。
【大土井参事官】  じゃあ、私のほうから。まず、ニーズプル型の研究はいろんな、うちの中でも制度は異なっております。ただ、個別個別の技術分野、技術というよりは、どっちかというと、OECDでの議論は比較的、例えばAIどうするかとか、少しマクロな分野としての捉え方に寄った議論だったと私は記憶しております。そういったAI、フェイクニュースもしかり、社会的な大きな影響を与え得る可能性がある技術が急速に進展したときに、そのガバナンスをどうするか。そのためには政策自体がアジャイルにならなきゃいけない、そういった少しマクロな議論がOECDの中でありまして、それはうちの国内でもそのつもりで引き続き、今までもそうしたが、今後もやっていくんだろうなと思っております。
【礒田委員】  先ほどの新興技術の部分については、AIとかそういう分野ということもあるんですけれども、例えば新興技術とは何かといったときに、調べますと、ゲノム編集だったり合成生物学であったりとか、かなり具体的に産業を引っ張るようなものが出てきたりしていますので、産業界からのニーズなんかも踏まえた新興技術を少し整理して集中させていくというのもいいのかなと思ったところです。
【大土井参事官】  ありがとうございます。その点、例えば経営プログラムといったものに関しては、法定協議会をつくって保秘をする形で企業のニーズも聞きながら、社会実装に向けた伴走支援を行うという取組も、一部ではありますが始めておりますので、その取組は、恐らく政府内でも今後広がっていくんだろうと思っております。
 あと、最後にありました、日本として今後の国際戦略をどうするかという意見は、ぜひこの場で先生方の御意見をいただきたいと思っております。我々、今時点で成案があるわけではありませんので、そのためにぜひ御意見いただきたいなと思っております。
 以上でございます。
【礒田委員】  ありがとうございます。
【菅野主査】  よろしいでしょうか。
 それでは、次、相田美砂子先生、お願いできますでしょうか。
【相田(美)委員】  相田美砂子といいます。よろしくお願いします。
 幾つか気になっていることがあるんですけれども、エビデンスベースということが重要だということで、いろいろなグラフをいつも出していただいているんですけれども、何をもってエビデンスとするかということは非常に重要じゃないかと思うんです。特に研究力というと、いわゆるハイインパクトというか、私はあれを質の高いと称するのは間違っていると思っていまして、数字で質の高い・低いというのを判断するということ自体がもう既に間違ったエビデンスじゃないのかというふうにちょっと感じているところではあります。
 それで、ああいうデータを出すことは、世界的に非常に大きなデータベースをつくる業界があって、そこの業界の土俵の上で動かされているようなものでして、あの数字を高めるためにはどうすればいいかという、そういうような業界になってしまっている。そもそもアカデミックは搾取されている業界になってしまっているんじゃないかというふうに感じています。
 例えば、インパクトファクターが高いような被引用数が高いような、いわゆる先ほどの話の中で質の高いと称されるようなものにするためには、今は非常に投稿料が高くて、毎日若い研究者は、今円は幾らだろうということを真剣に見ているんじゃないかと思うんですけれども、1つの論文を投稿するのに50万円ぐらいかかっちゃうわけです。今どき50万円の研究費を公費でもらえている国立大学なんかもうないので、その50万円をどうやって出すんだということなので、論文の投稿料50万円、研究費ゼロ。どうやって論文書くのということに、何か笑い話になってしまっている状態です。
 なので、つまり、何をもってエビデンスとするのかということと、それから先ほど多くの皆様が御発言なさっているように、そもそも日本の研究環境が非常に低くなってしまっているので、その中で数字を上げるということだけをエビデンスとして掲げるというのは、そもそも方向が違うんじゃないかというふうに強く感じます。
 それと留学生に関することなんですけれども、先ほどの今日の論点案の3番で、我が国の人口減少を見据えて優秀な研究人材を多様な国より確保する云々という言葉があったんですけれども、これも非常にミスリーディングな表現じゃないかと思うんです。我が国の人口減少を見据えることは重要ではありますが、今現在というか、私、独自で自分でちょっと数字を、グラフを作ったことがあって、日本の、例えば高校進学率はもうほぼほぼ100%です。学部進学率も男女共々、もう50%を超しています。問題はその次で、マスターコース、福祉課程前期への進学率が今現在、まだ男性が10%行かないんです。七、八%です。私、年度、生まれた年ごとに学部の進学率とか、マスター、ドクターの進学率ってどれぐらいあるんだろうと思って、自分で学校基本調査を利用してグラフを作っているんです。
 そうすると、例えば1995年生まれの人だと、マスター進学率、男性7.2%、女性2.3%、ドクター進学率、男性0.7%、女性0.3%、1995年の人たちの15歳年齢がおおよそ男女共々60万人ぐらいの世代。つまり、百二、三十万の赤ちゃんが生まれていた時代なんですけれども、なのでドクターに行く人たちが1%も行っていないんです。やっぱりここを増やさないことには、人口減少に対することももちろん大事だし、いろんなことが大事なんですけれども、今現在のドクターコースを増やすということがいろんな施策、文科省さんもいろいろやっていただいていてフェローシップも重要だと思っているんですけれども、もっと強力にしないと、結局、国際的な活躍云々ということは、足元の若い人たちがちゃんと育っているということがなかったら、数値目標だけ掲げても無理だろうというふうに思います。
 なので、何をもってエビデンスとするかということと、特に地方の大学はかなり厳しい状況で、論文投稿料なんかとても出せないという現実があるということと、それからやっぱり学生さん、若い人たちがもっと頑張って勉強して世界に羽ばたこうとかという気になるような、そういう施策をもっと子供のときから植え込めるようになるといいなというふうに、そういうことが必要じゃないかと思います。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。ドクターの進学というのはなかなか悩ましい問題で、解決が望まれるところですが、産業界にもお願いしたいところではあります。地方に関しても大変重要な問題で、多分、この国際化の施策というのも、中央の拠点ということを施策としてまず考えてしまうんですけれども、そうでなくて地方からというのは、多分、大変重要な観点かと思います。むしろ、地方から国際化をするということのほうが重要なのではないかと私個人的には思います。ありがとうございました。
 それでは、次、野本先生ですかね。
【野本委員】  ほかの委員の方がおっしゃられたことと重なる部分も多いんですけれども、まず、研究セキュリティ・研究インテグリティのところですが、企業の中では日常的にやられていることで、必要技術に関しては知財化するであるとか、技術輸出に対して一緒に注意深く情報の出し入れをするとかというのをやっているんですけれども、先ほどの大学の先生の方々のお話を聞いていると、やはり大学側でこれ、学生を含めてコントロールするのは非現実的であるというお話でありましたということで、そこを無理くりやるのは無理筋なのかなというふうに感じていて、一方、私も昔、MITに所属していたことがあるんですけども、MITの中ではセキュリティ度が非常に高くて、セキュリティカードがないと入れないエリアというのが幾つもあったんですね。やはりそういった形で、日本として何を安全保障に関する研究分野であるということを同定して、そういった対策を取るということしかやりようがないんじゃないかなと思いますので、これは恐らく欧米で進んでいる、そういった対応の進んでいるところもあると思いますので、そういったところのリサーチをもう少ししていただいて参考にするのがよいのかなと思いました。
 二番目に論文の話ですけれども、サイテーションが多い論文であるとか、論文の件数の話は、やはりこれ、時代の時流に乗ったインパクトのある研究に取り組めているかどうかというところが大事だと思うんです。伝統的なアカデミズムにこだわった研究ですと、やはりどうしても古い研究になってしまうので、サイテーションされることは非常に少ないと。一方、欧米ですと、かなり産学連携が進んでいて、産業界にもインパクトがあるような論文というのが幾つも幾つも非常に出てくるというところで、論文のサイテーション、あるいは数が増えているんじゃないかなと思っています。
 実際に私どもの研究所でも、大学の研究パートナーを探すときにも、どうしても大学の先生のどのぐらい論文を出しているかとか、サイテーションの数がどのくらいでありますかということを結構注意深く調べたりしていると、どうしても、もちろん日本の先生方とも共同研究させていただいていますが、特にデータサイエンスやAI等は欧米がかなり先に、アメリカが特に早く進んでしまったので、そちらの先生と共同研究を図るということも多いですので、そういった意味で、産学連携をより強めるということと、必ずしもデータサイエンスは、産業界が引っ張ったということだけではなくて、むしろアカデミアがそういった分野を先に強くして、そこに産業がついてきたというのが本当に一番最初の最初でありましたので、大学のほうでも、産業の先を読むというところも含めて、そういった研究に取り組むというところの何がしかのインセンティブみたいなことを考えられてもいいのかなと思いました。
 先ほど、テニュアになってしまうとあまり論文を出そうが出すまいがインセンティブは変わらないのでという話もありましたけど、それは結構問題じゃないかと思っていまして、やはりしっかりと論文を出してサイテーションの多い研究者の方々には、何かのインセンティブというのを改めて考えてあげてもいいと思いますし、逆にそういった活動が少ない研究者の方には、それなりの対応というのも考える必要があるのかなと思いました。
 あと、国際化のところですけども、企業の国際化を図るために外国人の方に就職してもらうためには、日本に来ている海外留学生を採用するというのが一番やりやすいんですね。ですので、大学での優秀な留学生の数を増やすということがありがたいです。ですので、なかなか大学ですと、全ての授業を英語化するなんていうことは非常に難しいことだとは重々理解していますけれども、とはいえ、やはり言葉の問題は大きいですので、海外留学生が日本の大学に入学しやすくなるような施策を一つでも二つでも取っていただけると、留学生が日本の大学に入って、そこから日本の企業に就職し、国際化が進むという流れができるのではないかと思っております。
 日本には非常に魅力があると思っていまして、非常に環境も安全な国とか、いろんな意味で中立性があるとか、あるいはインバウンド需要が示していますように、文化的にも非常に魅力がある国であると思いますので、実際に日本で勉強したいという人はたくさんいると思うんですよね。なので、そういったものを阻害している要因というところをミティゲートするような考えをいろいろと考えられるとよいのかなと思いました。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。
 それでは、石原先生、お願いできますでしょうか。
【石原委員】  私もほかの先生方と大きくかぶるところが多いんですけれども、日本物理学会の会員の変化を最近調べていたんですけれども、1万5,000人ぐらいいまして、大体数百人ずつ毎年減っていっているというのは、そこは何でなんだろうかというか、何が原因なのかというのをいろいろみんなで考えてはいるんですけれども、それを調べていきますと、都市圏に分けて比較したときに、都市型の研究大学は実は会員数が増えていて、減っているのは地方の大学らしいというのが最近見えてきています。このことを考えますと、これは本当にそういった国際化と非常に強くつながっているのではないかなというふうに感じておりまして、日本はもともとボトムアップ型の研究が非常に強かったわけなんですけれども、そこに選択と集中という考え方を最近取り入れるようになって、結果的に、都市圏の大学であれば、その選択と集中とボトムアップ型が相殺する、もしくは少し勝つぐらいな感じでどんどん人はそんなに減ってはいないんですけれども、研究人口としましては。でも、地方に行くと、それがうまく回っているかというと、やはりそこはちょっと大きくうまく回っていない部分が見えてきているのではないかなというのが、そういった数字を見たときに私が感じたところです。
 この都市型で例えばあるプランをつくって、それを簡単に地方でもやれますよという形で分配したとしても、結局、それが地方であってもうまくいくとは限らないというふうに感じていまして、やはり地方の国際化というのが重要だということが皆様の認識となったら、それは地方独自に即したプランを考える必要があるというふうに考えております。それが1つです。
 ボトムアップ型と選択と集中のときに、海外の研究者に魅力を持って日本に来てもらうというのは、そのテーマづくりというのが大変重要でして、日本に特化した日本じゃなきゃできないというようなものであったとしても、それが国際的に重要でなければやはりそういった論文のサイテーションとかは増えないわけですね。一緒にやって、ぜひ日本に来て、経験を積んで元の国に戻る、もしくは違う国に行く、もしくは日本に残るという、そういった道をしたいと思うような魅力的なテーマづくりというのが必要なんですけれども、それがやはりまだちょっと、ある意味、私の感じでは、行き当たりばったりに決められているような感じが、ほかの例えばアメリカとかですと、NSFとかの中に何人も元一流の、本当に一流の研究者の人たちがNSFとかにリクルートされて、そういった先端研究のテーマを考える、もしくはそういったテーマの実験のサポートに専門職として加わって、例えばどのタイミングでどういうプロポーザルを書くとより大きな予算が取りやすいかとか、そういったアドバイスをちゃんとくれる専門職の人がいまして、ある程度、それをより魅力的にするように導いてくれるというような形があるんですけれども、日本では、一つ一つの予算が出たときに、集められる委員の中でそれが決まっていくというところの差はありまして、それがちょっと私の感じる長期視点に立った魅力的なテーマづくりが日本において今欠けているかなというところを感じております。
 私からは以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。アカデミアと産業を含めた日本の強みを生かした国際化というところが重要なのかなというような御指摘かと思います。
 林先生、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
【林委員】  ありがとうございます。論点案のところで三点挙げられているんですけど、今皆さんの御議論を伺っていても、研究の担い手としての大学というものの問題点、あるいは課題、あるいはそこが社会の矛盾のたまり場になっているという現状があるので、科学、国際連携協力の状況を考えていく上でも、その日本の受皿になっていく大学をどうしていくかという問題が触れられていてもいいのかなというふうに思いました。
 もちろん、今いろいろございましたように、選択と集中とか、独法化とかいろんなことがあって、私どもの大学みたいなところでは、お金がなくて本当に何もできないという状況に立ち至っているわけで、そういう状況は、これだけの問題じゃないので何ともできないことではあるんですけれども、やはり問題の根幹にはあるだろうと思います。
 あと、大学というのは教育と研究の場で、それは切り離せないんですけれども、ただ、教育の場合、非常に広い。特に日本の社会の中での関心は学部教育に向けられているので、国民の関心はですね。向けられているので、今言われている話は大学院の話ですので、学部の教育を担う大学の問題と、大学院教育以上、あるいは研究大学というものの位置づけの再考というのが必要になってきているということがそこはかとなく分かるような文章が必要なんじゃないかなというふうに思いました。
 それは例えば、留学生の受入れにしても、今何十万人という数がJ-MIRAIなどで示されていますけど、その中で、今ここで話題になっているような留学生というのは、そのほんの一部の特別な大学院の優れた留学生のことを言っているわけなので、そこと何十万人という者の議論がぐちゃぐちゃになってしまうことを避けるような手だてということが必要だと思います。
 その避けるというのは、一つは特別扱い、特区をつくっていくという、日本の中はとても平等主義なので、先ほど超社会主義という言葉もありましたけど、平等なので、あるいは論文書いても給料は増えないという。あるいは、いい仕事をしても、給料は何号俸何等級で決まっているというそういう社会の中で、そこをブレークスルーしていこうと思うと、外出しの仕組み、あるいは特区的なものを発想していかないと今の閉塞状況は打破できないんじゃないかなと思いまして、そういったことを何となく盛り込んでいただけたらなというふうに思いました。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。大学のシステムとも関連するという御意見でした。なかなか壮大な計画になろうかと思います。
 松本先生。
【松本委員】  論点は大分出たなという感じなので、結局、研究環境を整えるということが根本的な話、そして、それを支えるためのお金の話というのがやっぱり根本にあるなというのは本当につくづく思うんですけど、特にWPIの拠点を運営していて、先ほどの話じゃないけど、特区的なものですよね。そこをつくってかなりの予算が来て、研究環境を整える予算があったわけです。研究支援部分をちゃんと人を雇って、知財のことであったり、その他もろもろ、建物のこともそうですけど、そういったものを全部サポートするチームがあって、研究者は本当に研究に専念できる体制でやれていた。それが10年間で終わって、そこはちょっと支援できないかなと。予算的にもうどうやっても全部をカバーできないので、かなりの部分を研究室側にお願いする形を取らざるを得ないという状況になったわけですね。そうすると、その環境では今までやってくれていたのに、研究に専念するだけの時間が足りないと。一応、特任教員が多いので部局の仕事というのはそれほど多くはないんですけれども、それでもやっぱり研究に割く時間が減ってしまう。
 海外から帰ってきた人たちで、日本人の人ですけど特任教員になった人がいるんですけど、やはりその人たちも、実感としてやらなきゃいけない仕事が多過ぎるというのを本当につくづく言っていて、この研究インテグリティの話もそうなんですけど、もちろん、分野をどう設定するかというのは、分野が物すごく多岐にわたるので難しいところがあるのは分かるんですが、我々がやっている化学と生物の本当に基礎研究のところで、一律同じルールで全部チェックをされて、海外に行くときはパソコンに何が入っていますかみたいな、それを全部やらなきゃいけない。でも、そんなの絶対にオーケーが出るのはみんなが分かっているのに、でもやらなきゃいけない仕組みに今なりつつある。それでもしお金があれば、そういう環境、そういうのをサポートしてくれる人がいれば、もちろんそんなことはやれるんですけど、自分が、研究者が全部やらなきゃいけなくなってきている。本当にそこは何とかしないといけないんじゃないかなと思いますね。
 あとは、施策関係で言うと、大学院生の外へ出ていくほうの留学の話ですけど、これも今までリーディング大学院とか卓越大学院が今走っていますけど、これがあると、それを原資にして学生たちも行きたい、もちろんそこに入ってくる人たちのモチベーションが高いというのもあるので、全体像を反映しているかどうかは分かりませんけれども、それでも主要な国立大学で卓越大学院をやっているようなところの学生については外へ出ていこうという意識はあります。それはすごく強く感じるんですけど、7年で終わるので、その後お金がないからサポートできませんよという話になってしまうわけですよね。
 だから、そういう単発的な施策を打てば、多分活性化されるということを考えると、やっぱり根本的なところはお金の話に行き着くんじゃないかと。それをどう配るかはともかくとして、アドオンでも別に、限られた大学でも仕方がないとは思う、もちろん全部やれるのが一番ベストですけど、それができないのであれば、卓越大学院みたいなものの後継プログラムをちゃんとつくってもらうとか、そういったところは非常に大事だなというふうには思っていますというところですかね。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございます。いろんな御意見をいただきましたけれども、時間がもうそろそろ。
【柿田局長】  よろしいですか。柿田です。どうもありがとうございました。たくさんの先生から多くの御意見をいただきまして、それに対して包括的に答えることはできないんですけれども、私の今日出させていただいての印象なんですけれども、やはり委員の先生方もおっしゃっていましたけれども、従来からずっと言われている課題がそのまま残っているということは、まさにそういう部分もかなりあるかなと思います。
 一方で、文部科学省としてもかなり、特にここ数年、いろんな施策を予算とともに確保しながら進めているという状況がありますので、2004年ですか、国立大学の法人化以降というようなお話も意見の中にありましたけれども、それが大きな原因の一つであるかどうかというのはともかくとして、ここ、トレンドとして20年ぐらいにわたってかなり、日本の、何ではかるのかという意見もございましたけれども、研究力が芳しくない状況になっているという状況、これは事実だろうと思いますし、それは一足飛びに直ちに解決すると、これができればいいんですけど、なかなかそれは難しいかなという中で、一つ一つ、毎年新しい施策を立ち上げながらやっているということでございます。
 ですので、先生方からぜひ、大土井参事官からも話がありましたけれども、また来年度に向けての施策をちょうど考え始める時期にございますので、今走っているASPIREの話もございましたけれども、具体的にこういうところを改善すべきであるとか、こういう課題についてはこういう施策を打つべきであるとか、より具体的な御提案なりお知恵を授けていただければありがたいなというように思いました。
 それからあと、ドクターの進学率を上げるという話、これも本当に我々痛感している課題でございまして、御案内かと思いますけれども、3月には盛山大臣のタスクフォースのまとめを出して、これは役所としても初めてだと思いますけれども、産業界とも連携して博士を取得し、そして多様なキャリアパスに向けて博士人材が活躍していくという視点を持っていろんな施策を強化していくということを始めたところです。
 これをこれからさらに具体の施策も新たなものを追加しながらやっていこうと思っておりますけれども、ぜひここは、大学院生が博士課程に進まないというところについては、大学側における努力というのはどうなっているのかなという私は素朴な疑問がありまして、多分、先生方、一生懸命努力されていると思います。運交金もない中で、若手のポストも減る中で、そんなところで大学院の博士に進む人が増えないでしょうという御意見かもしれませんけれども、国としてやるべき施策、これは引き続き我々強化しなきゃいけないと思いますけれども、大学の現場で努力されるというところも多分あると思いますし、また、こういう努力をしているんだけれどもここがまだ進まないんだというような現状もインプットしていただければありがたいと思いますし、それからこの関係では、ソニーの野本委員がおっしゃっていただきましたように、留学生はこの日本をこれから引き続き繁栄し続けていく国家としていくためには、優れた人材、留学生の段階から獲得し、そしてそれを何よりも日本の企業をはじめ、国内で職を得て立派に活躍していただける状況をつくっていくという流れ、これを本当につくっていくことが大事だと思います。
 日本の留学生に対する、あるいはポスドクに対する処遇面の低さ、国際的な水準にまだ達していないという部分はあるかもしれませんけれども、研究するのが目的ですので、多分、日本の大学のこの先生のところに行ったらこの研究ができるから、だから行きたいんだというのが私は一番の留学生の目的であると思いますし、そこに生活面も含めた、処遇面も含めたものが伴えば一番いいと思うんですけれども、そこのところは、さらに立派な日本の中の企業、そこに就職するという流れが太く太くなっていくと、日本の中で。今現状、必ずしもそうなっていないという状況もあると思いますので。ですので、そういったところで産業界、それから国、大学がよりそれぞれのできる取組といったものをお互い、かみ合う形で政策を考えていくことが大事なのかなというように思いました。
 ちょっと長々となりましたけれども、今日は本当に皆様から忌憚のない御意見をいただきまして、ぜひ、メールの形でも結構ですし、具体の注文を政策に反映できる形での御提案を引き続きいただければ幸いでございます。ありがとうございました。
【菅野主査】  柿田局長、どうもありがとうございました。
 それでは、本日の国際戦略委員会、ここまでとしたいと思いますが、事務局より。
【大土井参事官】  最後、事務局からでございます。先ほど局長からもありましたとおりで、国際という議論と、あと人材育成という議論、今切り離せないような状況になっております。なので、次回、第4回の我々の委員会は、人材委員会と一緒に5月30日に開こうと思っております。ですので、国内の人材、海外の人材、一緒くたでぜひ御議論いただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 以上でございます。
【菅野主査】  では、次回、5月30日ですね。今日の国際戦略委員会、これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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