令和7年2月4日(金曜日)15時00分~17時00分
オンライン開催
(主査)千葉一裕委員
(委員)相原道子委員、大野英男委員、梶原ゆみ子委員、木部暢子委員、小林弘祐委員、新福洋子委員、高橋真木子委員、那須保友委員、西村訓弘委員、野口義文委員、吉田和弘委員
(事務局) 増子文部科学審議官、井上科学技術・学術政策局長、塩見研究振興局長、奥野大臣官房審議官(高等教育局及び研究振興政策連携担当)、松浦大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、先﨑科学技術・学術総括官、生田振興企画課長、柳澤大学研究基盤整備課長、平野拠点形成・地域振興室長、氏原大臣官房文教施設企画・防災部企画官、助川学術企画室長、小川大学研究力強化室長 他
有限責任監査法人トーマツ・栗井浩史氏
【小川室長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまより科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会を開催いたします。本日は御多忙の中、御参加いただきまして、ありがとうございます。
会議の冒頭は、事務局が進行させていただきます。
なお、本日はオンラインでの開催となっております。音声などに不都合がある場合は、随時事務局まで御連絡をお願いいたします。
最初に、オンライン会議を円滑に行う観点から、事務局より何点かお願いがございます。発言時以外はマイクをミュートにしていただく、御発言に当たっては、「手を挙げる」ボタンを押していただく、またはカメラに映りやすいように手を挙げていただく、資料を参照する際は資料番号、ページ番号、ページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただくなどの御配慮をお願いできればと思います。
なお、本委員会は原則として公開で行うこととしております。本日は、事前に登録いただいた方に動画を配信してございますので、御承知おきいただければ幸いです。
本日の委員の出欠状況については、荒金委員、小野委員、片田江委員、藤井委員、柳原委員、山崎委員が欠席となっております。また、新福委員、西村委員は途中より参加される見込みです。文部科学省からは増子文部科学審議官のほか、関係局課の職員が出席しております。
続きまして、配付資料の確認でございます。本日は、議事次第に記載のとおり資料を配付しておりますので御確認をお願いいたします。説明の際には画面表示をさせていただく予定ですが、必要に応じて、事前に送付したPDF資料も御参考いただければ幸いです。
それでは、今後の議事については、千葉主査に進行をお願いさせていただきます。
【千葉主査】 ありがとうございます。それでは、議事に入りたいと思います。
本日の議題は、「大学研究力強化に向けた取組」についてです。具体的には、国際卓越研究大学の公募・選定について、それから地域中核・特色ある研究大学の振興について、大学研究力強化に向けた主な施策の状況、大学の研究力強化に向けた多様な取組についての4点になります。
前半の国際卓越研究大学や地域中核・特色ある研究大学の振興では、制度や事業の進捗状況、また令和7年度予算案含め新たな取組も進んできますので、その状況等について事務局より報告いただきます。
その後、大学の研究力強化に向けた多様な取組として、第7期基本計画の検討に向けた基礎科学力強化に向けた今後の方向性や、昨年11月の大学研究力強化委員会でも御意見をいただきましたが、多様で厚みのある研究大学群を形成し、我が国の研究力を強化するための次期に向けた検討課題について議論をさせていただきます。
なお、今回が今期の委員会の最終回となりますので、委員の皆様にはぜひ積極的に御発言いただき、活発な御議論をお願いいたします。
それでは、まず、事務局より、資料1の国際卓越研究大学の公募・選定について説明をお願いします。
【小川室長】 事務局から説明させていただきます。
資料1、国際卓越研究大学の公募・選定についてを御覧ください。1ページ目でございます。こちらこれまでも本委員会で報告させていただいておりましたけれども、初回の国際卓越研究大学のアドバイザリーボードにおける公募・選定については、昨年6月に終了いたしまして、認定候補校として東北大学が認められたという状況でございます。その後、11月、12月にCSTI及び科学技術・学術審議会の意見を聴き、東北大学を国際卓越研究大学に認定、また東北大学の体制強化計画を認可といった法定のプロセスを進めてまいりました。その上で、12月24日には第2期の公募を開始したところでございます。
次のページでございます。前回の強化委員会におきまして、第2期公募に向けた変更点を御確認いただきましたが、そちらも示させていただいております。こちらも踏まえまして、公募を進めているというところでございます。
1ページ戻っていただきまして、1ページ目でございます。公募の締切りは5月16日となってございますので、申請大学がそこで見えてくるという状況でございます。また、6月以降に段階的な審査を行っていくということ、特に大学側との丁寧な対話を行っていくことということでございます。令和7年度内には国際卓越研究大学の認定または体制強化計画の認可というところを進みまして、令和8年4月が体制強化計画の開始となるということでございます。
なお、アドバイザリーボードにおける審査の結果、留保条件付で認定候補に選定された大学の計画初年度については、この限りでないと書かせていただいております。
3ページ目、4ページ目につきましては、これまでも委員会で御説明させていただいた中身となりますので割愛させていただきます。
5ページ目以降、こちらは我が国の大学研究力強化に関するシンポジウムを昨年の末に行いましたので、そちらの報告でございます。
6ページ目でございます。こちら文部科学省が主催するシンポジウムとしまして、JSTですとかJSPSに共催に入っていただき、内閣府に後援に入っていただくというものでございました。
趣旨としては、初回公募における国際卓越研究大学の認定が行われまして、第2期の公募もこの段階ではこれから予定されているという状況の中で、世界最高水準の研究大学の実現に向けて国際卓越研究大学制度が目指す姿、また同様にJ-PEAKS等の研究大学施策の全体像を示すということでございます。また、パネルディスカッションでは今後の研究大学の姿や機能強化等について議論を行っております。
登壇者としましては、上山先生、橋本先生、佐藤先生、また東北大学の冨永総長、また本委員会の関係では、千葉先生ですとか、那須先生、高橋先生にも御参画いただき、御議論をいただいたところでございます。
7ページ目でございます。こちらはシンポジウムの概要でございます。左下に申込者数の記載がございますけれども、国立・公立・私立、こういったバランスの大学の関係者の方にも御出席いただきつつ、独法ですとか民間企業の方々にも御参加いただきました。
8ページ目、少しだけその場での議論を御紹介させていただきます。シンポジウム前半では4つの基調講演が行われまして、上山先生から、新たな大学経営のモデルをそれぞれの大学の特色の中で、次期国際卓越研究大学の公募の中で提案し、システム全体の改革を図っていただきたいというお話がございました。
冨永先生からは、大学として、世界と伍して成長していくための大学システム改革に東北大学としては主眼を置いているというお話。那須先生からは、岡山大学だけの研究力強化にとどめることなく、我が国の研究大学群として厚みを形成するというお話。信州大学の中村先生からは、J-PEAKSのビジョンの実現には大学改革、研究大学群の形成等による環境整備が重要と、そういった話もございました。
また、後半のパネルディスカッションにおきましては、10年後を展望した際に、少子化の中で生き残るための大学経営とは何か。個別の大学ではなく、ある種の連合体として考える必要があるのではないか。また、大学が一群となって新しい大学像を描き、総体として我が国の高等教育のランドスケープが変わっていくことを強く期待したいといった形で取りまとまっております。
資料1について、私からは以上でございます。
【千葉主査】 ありがとうございました。
それでは、続いて、資料2の地域中核・特色ある研究大学の振興について、事務局より説明をお願いします。
【平野室長】 拠点形成・地域振興室長の平野と申します。
資料2に基づきまして、J-PEAKSの選定を中心に説明をさせていただきます。
1ページ目をお願いします。こちらのほうが日本全体の研究力発展を牽引する研究システムの模式図でございます。今、御説明のあった国際卓越研究大学の右に赤い四角で「地域中核・特色ある研究大学」、囲まれてございます。こういったものの中心となる施策がJ-PEAKSでありまして、ゆくゆくは国際卓越研究大学と人材流動、共同研究の促進等を通じ、ともに発展できる関係を構築していくということを目指しているものでございます。
2ページ目は、J-PEAKSの概要でございます。御存じのことかと思いますが、令和4年度の第2次補正予算で1,498億円が措置されたところでございます。事業の内容としては、左下の四角の部分でございますけれども、5年間、基金により継続的に支援する。基金については、日本学術振興会のほうに造成がされてございます。支援件数は25件ということで、昨年度12件採択されまして、今年度13件を採択したというところでございます。
支援の内容については、戦略的実行経費ということで年5億円程度のものと設備ということで1件当たり30億円、合計55億円程度ということでございます。右の支援のスキームというところに少しだけ書いてございますが、これは採択された後も文部科学省と学術振興会のほうでしっかり伴走支援をして、各大学が立てられた大学ビジョンの実現というものについて支援を行っていくということにしているところでございます。
3ページ目からが今年度、令和6年度に採択された大学の一覧でございます。まず初めに国立大学10校ということで、弘前、山形、新潟、長岡技科大、山梨、4ページ目に行っていただきまして、奈良先端、徳島、九工大、長崎大、熊本大ということで選ばれているところでございます。5ページ目に公立大学と私学のほうが載ってございます。横浜市立大学と、私学として藤田医科大学と立命館大学ということでございます。提案大学が13で、連携大学が15ということの採択でございます。
審査の過程については非公開ということでございますけれども、6ページ目、これは選んでいただいた委員の先生ということでございます。こちらに御参画の委員の先生にも御尽力をいただいたところでございます。
7ページ目が審査の過程ということでございます。5月28日の公募から書面審査、ヒアリング、サイトビジットを経まして、1月24日に決定されたということでございます。
8ページ目と9ページ目が事業推進委員会、学術振興会に置かれた会議における審査の総評ということでございます。こちらについては、採択された大学について、どのような点が評価されたのかということを中心に、8ページ目に記載がございます。
9ページ目のほうを見ていただくと、不採択大学というものについても引き続き期待というのをおっしゃっていただいていると。上から7行目ぐらいにありますけれども、本事業への申請のために行われた検討というものは、今後の大学の発展に当たっての礎となるというようなことをおっしゃっていただいているところでございます。
参考で10ページ目、11ページ目が昨年の採択の大学でございます。
12ページ目が、実は今回こちらで初めてお示しするものでございますけれども、採択大学を日本地図にはめ込んでみるとこのような形ということでございます。昨年度、今年度という形で北海道大学から沖縄科学技術大学院大学まで、このような形でマッピングされたものということでございます。こちらのほうについては参考におつけしていますので、御覧いただければと思います。
私からの説明は以上です。ありがとうございました。
【千葉主査】 どうもありがとうございました。
それでは、このまま続けて資料3です。大学研究力強化に向けた主な施策の状況について、事務局より説明をお願いします。
【小川室長】 資料3に基づきまして御説明さしあげます。改めまして、大学研究力強化室長の小川でございます。
資料1ページ目を御覧ください。こちらは先ほども図として出させていただきましたけれども、多様で厚みのある研究大学群の形成に向けた支援の全体像をお示ししているものでございます。国際卓越研究大学が世界最高水準の研究大学へと成長し、日本全体の研究力を向上していくためには、大学ファンドによる支援を通じて大学の機能拡張を加速することが重要でございます。また両輪で、多様で厚みのある研究大学群の形成には、地域の中核・特色ある研究大学等への支援を一体的に進めていくことが必要でございます。一番上に黄色とピンク色の図で示しておりますけれども、こういった大学群がともに発展できる関係を構築していくことを推進するための支援を行っております。
一方で、そうした支援施策に加えまして、大学の研究基盤の強化という意味では共同利用・共同研究機能の強化、また産学連携ですとか、世界トップクラスの研究拠点、こういったものをつくるような施策、さらには基盤的経費や競争的研究費、また、研究と教育は切っても切れない部分がございますが、高等教育全体の活性化・質の向上ということでは、これまでも大学教育の質の向上に関する改革を推進するために、大学の優れた取組を重点的に支援するといった施策も行われてまいりました。
また、大学ファンドからの博士課程学生支援、こちらは本年度から大学ファンドの運用益を活用しまして、いわゆるSPRING事業、こういったものの支援を進めていくというところも進んでいるところでございます。
2ページ目をおめくりください。今申し上げましたように、関係施策が、非常に多数ございますので、少し新規要素のございますものをこちらに挙げさせていただいております。
まず、大学(大学院改革)への全学的な支援ということでございます。こちら6ページ目をおめくりください。大学への全学的な支援としましては、デジタル・グリーン等の成長分野を牽引する高度専門人材の育成というところに向けまして、成長分野への学部転換等の改革を行うために基金を創設し、安定的で機動的かつ継続的な支援を行うということで大学・高専機能強化支援事業、これまで2回公募を行っているところでございまして、12ページ目でございますけれども、現在第3回目の公募がまさに進んでいるといったところでございます。
また、2ページ目にお戻りいただきまして、その下、大学への全学的な支援ということで、未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業、こちらは新規で19億円とございます。こちらは産業界及び国内外の教育研究機関との連携強化ですとか、学内外における教育・学生の多様性・流動性を向上させることで世界トップレベルの大学院教育を行う拠点を形成するということを目的とした、大学院改革のための全学的な支援ということでございます。詳しくは13ページ目にございますけれども、令和7年から令和13年にかけて総合型と特色型でそれぞれ4か所、2か所ということを予定しているということでございます。
また、そのほか組織・分野を超えた連携、中規模研究設備といった観点でございますけれども、共同利用・共同研究システム形成事業の中の学際領域展開ハブ形成プログラムでございます。令和7年度は、1件の新規採択を予定しているところでございます。
また、共同利用・共同研究システム形成事業、また国立大学等における教育研究基盤の強化ということで、最先端の中規模研究設備ですとか、また、大学から要望のある優先度の高い教育研究設備、また、組織の枠を超えて効率的・効果的な活用を行う中規模設備といったところにつきましては運営費交付金の枠組み、また、そのほかの一般財源も活用しながら補正予算を今年度組んでいるといった状況でございます。
また、研究人材支援の観点で新しい取組としましては、研究開発マネジメント人材に関する体制整備事業ということでございます。こちらは28ページに具体的な取組については記載させていただいております。大学等において戦略性を持った経営・研究開発が必要でありまして、研究者と研究開発マネジメント人材が連携して研究開発に挑戦する環境の醸成は言うまでもなく重要であるということ。また、そういったマネジメント人材の育成は急務ということにもなります。
また、博士人材が重要だということがございますけれども、一方でキャリアパスの整備という観点も非常に重要な観点でございますので、今回、本事業におきまして、そうした体制強化機関、研究開発マネジメント人材の確保・育成を行う機関。また、研修提供機関、こちらは優れた研究開発マネジメント人材の育成制度を既に持っており、ほかの機関に対してノウハウ展開を行う機関を支援するという、こういった新しい取組も進まっているというところでございます。
最後に、その他としまして医学系研究支援プログラム、こちら補正予算として134億円が措置いただいたということでございます。本委員会でも医師の働き方改革と併せて医師の研究時間の確保、またそういった方々の支援をどういうふうにしていくかというところは議論ございました。その上で、このプログラムでは国家戦略上重要な研究課題に取り組む研究者の研究活動と、大学病院・医学部としての研究環境改善に係る取組とを一体的に基金を活用して柔軟かつ機動的に支援するということで、医学系研究の研究力を抜本的に強化するという趣旨で新しい取組が進められているというところでございます。
私のほうから御説明は以上でございます。
【千葉主査】 ありがとうございました。
ただいま事務局から資料1から3まで通して、一気に説明をしていただきました。ここで一旦、質問のお時間を取らせていただきたいと思いますので、委員の先生方、御質問、あるいは説明の内容に対しての御意見でも結構ですので、何かございましたら挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。後半のほうで全体的な意見交換の場はつくりますので、そのときに御意見をいただく形でも結構です。今の説明内容についてはよろしいでしょうかね。
それでは、御意見は後のほうでいただくということにいたします。
次は大学研究力強化に向けた多様な取組についてです。本委員会は、本日が今期最後の回となりますので、次期に向けた総括を議論したいと考えております。
まず初めに、事務局からの説明となりますが、第7期基本計画の策定に向けた検討が内閣府、文科省にて進んでいると承知していますので、その状況として、資料4の基礎科学力の強化に向けた今後の方向性について、次に、国際卓越やJ-PEAKSといった施策が進んでいる中、各大学においても改革に向けた取組を進めており、資料5においてその状況を説明し、最後に、次期に向けた検討課題として、資料6の大学研究力強化に向けた多様な取組について、事務局より説明をお願いします。その後、全体討論の時間を設けたいと思います。
それでは、資料4について、事務局より説明をお願いします。
【小川室長】 千葉主査、失礼いたします。申し訳ありません。資料の御説明の順番なんですけれども、まず、今回、取組事例のほうを先に御説明させていただきまして、その上で第7期の基本計画の御説明をもしよければさせていただきます。全体の流れがつながるかと思いますので。
【千葉主査】 ありがとうございます。では、その形で、適宜、順番を変えて結構ですのでお願いいたします。
【小川室長】 ありがとうございます。
それでは、トーマツのほうから御説明いただければと思います。
【トーマツ(栗井)】 本日は、このような中間報告の場をいただきまして、ありがとうございます。私は、令和6年度の大学の研究力強化に向けた調査業務を担当しております、有限責任監査法人トーマツの栗井と申します。どうぞよろしくお願いします。
この場をお借りいたしまして、多くの皆様に調査に御協力いただいておりますこと、心より御礼申し上げます。ありがとうございます。
さて、本日は中間報告の資料の一部を御紹介させていただきます。まず、調査の概要を御説明いたしますので、2ページ目をおめくりください。これまでも国内外の研究力向上の好事例というものは、御紹介される機会は多くあったと承知しております。今回は国内外の研究力で評価されている大学等が研究力の強化のためにどのように考えてマネジメントしてきたのかということを分析して、結果をモデルとして可視化して事例を御紹介する調査を進めているところでございます。
次の3ページ目をおめくりください。現在進めている報告書の構成を簡単に御説明させていただきたいと存じます。
第1章で、調査結果を整理した結果として、研究力強化のロジックモデルというものを基本形として、各構成要素の御紹介を予定してございます。
第2章では、国内外の大学のミッションですとかビジョンに基づいて、どの要素に力点を置いて研究力の強化に取り組んでいるのか。マネジメントサイドの先生方にインタビューなどして、それぞれのロジックモデルを御紹介するという立てつけです。好事例を自らの大学に置き換えることが難しく感じられているような大学の皆様にとって議論のたたき台となるような形で考察をしてまいります。
第3章は、主要な要素別に研究力の強化の好事例を紹介していくというものです。
第4章では、KPIを調査しております。効果的な活用方法を検討していきます。
これまでに研究マネジメントに携わっている先生方からのアドバイスをいただきまして、また、文部科学省の御担当者様と議論を重ねながら精緻化を進めてきているところでございます。
4ページをおめくりください。こちらは今回の調査報告書で既に掲載を予定している大学を御紹介させていただいております。参考までに教員数と収益というものを軸にプロットしているものが左のグラフでございます。研究財源だけにフォーカスしているものではございませんので、縦軸は収益全体と置いておりますけれども、教員数が同規模の国内外の大学ですが、海外と国内の大学で差が出てきているというようなところがございます。
さて、第1章について、6ページを御覧ください。こちらがロジックモデルの基本形の外観をお示ししております。研究力強化の要素分解をしておりまして、直接的、間接的に働きかけると研究力に影響するというモデルというものを、これまでの数々の調査事業など、そしてヒアリング、インタビューなどして見える化をいたしました。
また、国際卓越研究大学制度の議論も参考にさせていただいておりまして、例えば審査では研究力、事業・財務戦略、ガバナンスといったところの観点で行われておりましたけれども、ここでは研究力の強化に直接的な影響を与える要素ですとか、研究力の強化を支える事業・財務戦略とガバナンスといったものが土台になっているという関係性を整理してございます。
それでは、幾つかのロジックモデルの外観を御紹介させていただきます。第2章でございますが、8ページを御覧ください。こちらは第2章で掲載を予定しているモデル大学でございます。今回お時間に限りがございますので、これから御覧いただく前にロジックモデルの説明書を9ページにつけてございますので、そちらを初めに御覧いただければ幸いでございます。非常にビジーな資料で恐縮でございますけれども、こちらは各大学が特に重視している要素に対する取組が研究力の強化にどう影響しているのかといったところを、KGIですとかKPIを併せて記載をしています。これから御覧いただく方々に御留意いただきたいのは、特に重視している要素を今回御紹介してございますけれども、それ以外の要素につきましても、各大学は様々な取組を総合的に行っているということが大前提でございます。すなわち、それぞれの法人の個別の好事例を漏れなく御紹介しているわけではないことを御承知おきいただければ幸いでございます。
それでは、10ページでカリフォルニア工科大学のCaltechの事例を御紹介させていただきます。小規模ながら研究力が非常に高いモデルとさせていただいております。こちらは、研究人材の活躍、事業・財務戦略、ガバナンスを特に重視しているといったことを青字で太く記載してございます。一人一人の教員が継続的にアクティブに研究を行える環境の整備のために投資とサポートが充実しております。また、執行部が教員からイニシアティブを吸い上げて、光るアイデアに機動的に投資するメカニズムといったものがありまして、研究マネジメントについては、教員全員が十分な意見交換を行うといったことですとか、優れた研究者の皆様から外部評価委員会のレポートを受けるなど、戦略策定のメカニズムに対する信頼といったものがあるといったところが特徴でございます。
重要な点が、これらを実現するためには機動的で組織的なファンドレイジングといったところがございまして、その個別事例につきまして、11ページから13ページまでありますので、こちらは、今回は割愛させていただきますが、御覧いただけるようご準備いたしました。
続きまして、14ページにイリノイ大学のアーバナシャンペーン校についてのモデルを御紹介してございます。こちらは研究力の強化の源が人材にあるといったところで、州立大学でございますけれども、優秀な教員の採用とリテンションに力を入れているという事例でございます。例えば、リテンションにつきましては、教員の潜在能力を最大限に発揮するために教員に新しいスキルを身につけていただいたり、キャリアの成長を奨励したり、こういった様々な育成プログラムといったものを用意して、研究者としての成長を促すメンタリングも重視しています。さらに、社会的インパクトのある研究に対して外部評価なども取り入れまして、社会課題に取り組む教員をエンカレッジするような仕組みというものを強化してございます。こちらにつきましては、15ページから17ページに記載してございます。
続きまして、18ページから、東北大学の数多くの取組の中から、今回はプロボストの青木先生にお伺いいたしまして、事例を取り上げさせていただいております。18ページは、若手の先生方にユニット運営を任せるなどして研究者の責任と権限を与えるということで、一人前の研究者を少しでも早期に数多く育成していくという環境を整備されている取組を今回挙げさせていただいております。
実際に成果が出ている学際科学フロンティア研究所ですとか、若手の段階からPIとなりまして基盤的経費を措置していって、独立研究環境を提供することで高いパフォーマンスを出されています。また、国際共同大学院プログラムの事例等も御紹介しておりますけれども、学生の段階から一流の研究者の下で学んでいただいて、海外で研究を義務づけるとか、早期に経験を積ませるといったところについて、学内の先生方の理解を促すような環境をつくっておられるといった点が特徴です。
続きまして、21ページにOISTの事例を御紹介してございます。OISTは国内で小規模でも高い研究成果を出しているため、今回ロジックを調査しております。分野の垣根を越えた研究を行っておりまして、新世代のリーダー育成、イノベーション拠点形成に力を入れていて若手を含む全教員がPIとなって自立した研究環境をつくる取組として、コアファシリティの充実など支援体制が整備されています。これまで十分な研究資金を確保してきたことが支援の源泉として土台となっているということを改めて認識させられました。
また、大学へのヒアリングの中で多く上がってきた事例で、大学ではございませんが、マックスプランク協会を29ページから御紹介してございます。ノーベル賞受賞者など優秀な研究者を多数輩出してございます。非常にオープンで、かつ多様性について高いレベルで保証して、研究者の心理的安全を確保して、全ての研究者が快適な環境の下で能力を発揮できるようにして高い研究力を実現しているといったところが特徴でございます。研究人材の取組が多く好事例として掲載させていただいているところでございます。このような形で第2章というものは、マネジメントされている先生方にお聞きして、一つの法人のロジックモデルの紹介をさせていただいております。
35ページからの第3章におきましては、冒頭で申し上げたように主要な要素ごとの取組、個別事例を今後報告書に取りまとめる、大体50件から60件ぐらいの取組事例を掲載する予定で今進めているところでございます。添付しているのは、7月の先生方に御覧いただいた第15回の研究力強化委員会の資料なども一部は掲載しているところでございますので御覧いただければと思います。
最後に、第4章ということで42ページを御覧ください。こちらではKPIの活用事例について、イリノイ大学を御紹介させていただいております。研究力は、ロジックモデルというところの各要素に対して大学がアクションを続けて、そのアウトプットの積み上げにあると考えてございます。このアクションを続けるためには、KPIを設定して、複数の施策に継続的に取り組んでいくということが効果的ということを言われております。
例えばこちらのイリノイ大学でございますが、研究人材の活躍のために、例えば真ん中のほうに記載してございますけれども、Associate ProfessorからProfessorへの昇進に費やす期間をKPIとして掲げております。ただ、こちらをうまく回していくために、こちらの矢印で下に落としてございますけれども、研究支援人材のKPIが達成できているのかどうかといったところに分解して、直接的に大学が把握可能なKPIといったものの達成状況を、マネジメントは継続的に確認することによって研究人材の活躍といったレベルまでひき上げていく、そういったメカニズムがございます。KPIについては調査の過程で出てきているものを、これ以降のページでたくさん示してございます。今後、各大学の皆様方が、それぞれに置かれた経営環境や戦略に合わせてオリジナルなKPIを採用していただくために参考にお示しをしているところでございます。すべてKPIとして採用すべきというものではありません。
私から中間報告をさせていただきました。今後とも皆様方のお力を頂戴できれば幸いでございます。ありがとうございました。
【千葉主査】 どうも大変貴重な情報をたくさんお示しいただいてありがとうございます。大変参考になったと思います。
それでは、続きまして、生田振興企画課長よろしくお願いします。
【生田課長】 振興企画課、生田でございます。
資料5、基礎科学力の強化に向けた今後の方向性について、資料の説明をさせていただければと思います。こちらクレジットが研究振興局となっておりますが、局内で、現在まさに内閣府も含めて検討が始まっております、第7期の科技・イノベ基本計画に向けた検討を中でやっておりまして、その状況を取りまとめしたものでございます。本日、委員の皆様方からも御意見を頂戴しながら、ぜひ文科省としても意見をまとめて、内閣府側にも持っていきたいと思っておりますので、本日よろしくお願いいたします。
1ページ目、2ページ目、この両ページは、昨年の夏の段階で科技審の下にございます学術分科会及び基礎研究振興部会で取りまとめていただいた意見でございますので、こちらは御参考いただければと思います。
4ページ目が論文指標でみる我が国の研究力の現在地ということでございまして、ここからが少し現状の振り返りをさせていただいております。まず、4ページ目のところは皆様方御覧になった図だと思いますが、論文数、Top10%、Top1%ともに日本が絶対値としてどうかというものを見ているものでございます。見て明らかなように、2010年頃から増加していたものが、最近はなかなか停滞しているというのが見てとれるかと思います。
続いて、5ページ目につきまして、こちらが各国との相対的な比較を表したものでございまして、これも上が論文数、下がTop10%の補正論文数でございますけれども、日本の地位というもの、相対的ではありますけれども、明らかに低下をしてしまっているというのが見てとれます。
続いて、論文だけじゃないという御指摘をよく受けますが、6ページ目、7ページ目、こちらの2つにわたりまして、新しい研究の芽を日本が生み出せているかどうかというものを見ているものでございます。サイエンスマップというNISTEPのほうでまとめているものでございますが、左のところにありますように、ほかの研究領域との関与の強さと、それからその領域の継続性、これを二軸で表して、4つの象限に研究領域というものを分類しております。この中で右側、吹き出しで書いてございますが、スモールアイランド型、これがいわゆる新しい研究の芽となる可能性のある研究領域。一方で、下にございますコンチネント型、これが継続性があり、規模も大きい研究領域というふうに御認識いただければと思います。
その上で、次の7ページ目を御覧いただきますと、2004年のサイエンスマップから、右側が2020年のサイエンスマップに移っておりますけれども、例えば日本と中国、右端の2つの棒グラフでございますけれども、これを比較していただきますと、日本は相対的にコンチネント型を増加している。これに対して中国はその逆。一方でスモールアイランド型、これが日本は相対的に減少している。これに対して中国はスモールアイランド型が相対的に大きく増えている、こういったことが見てとれるかと思います。これだけで言えるかどうかというのもありますけれども、新しい研究の芽となる可能性があるいわゆるスモールアイランド型、この部分の参画への遅れが見てとれるのではないかというのがここから明らかだと思っております。
続いて、似たような話で8ページ目、こちらは東京大学の坂田研究室のデータをお借りしております。TOP100の成長クラスタ、こちらは論文データベースから内容的な近さで5,000ぐらいに分類したクラスタ、論文群でございます。そのうち論文数の成長率の高いものをTOP100成長クラスタと定義しております。そのTOP100の成長クラスタに含まれます論文の数が何位の領域がどれだけあるか。例えば日本の2001年を見ていただきますと、X軸が順位、Y軸がどれだけあるかというふうに見ていただきますと、左のほうに結構寄っていると。つまり、約半数の領域でTOP数の順位がTOP3に、論文数の順位がTOP3にランクインできていると。これに対して、下に行きますと2021年、TOP3のところにほとんどランクインできている領域がないというのが見てとれます。一方で、中国はどうかというふうに見てみますと、真逆の状態を表しておりまして、2001年からぽつぽつ出ておりましたが、昨今の2021年で多くの領域で1位の座を獲得していると。この成長領域の牽引力という意味でも日本が相対的に低下してしまっているというのが見てとれるかと思います。
じゃあ今度は組織の力で見てみますと、9ページ目が研究大学群の現状でございます。こちらのグラフはよく先生方も目にされたことが多いかと思いますけれども、いわゆる日独英のTop10%の論文数を比較したときに、大学ごとのものを比較したものでございます。トップ層、左端のほうでございますけれども、トップ層の大学、これがイギリスと日本とでは大きな差ができてしまっている。さらに上位に続く、少しずつ右側にいく部分のところでございますけれども、こちらについては、イギリス、ドイツの水準よりも日本が低い位置に位置づけられているというものが見てとれるかと思います。
同じく次の11ページ目を見ていただきますと、こちらも同じようなグラフでございますが、まさに左下にございますように大学の数が日本とイギリス、ドイツとでは数が大きく違っているというものを踏まえた上でも、日本、イギリス、ドイツで論文をどれだけ生産しているかというのを見てとりますと、日本の場合はある意味、第1グループ、第2グループに限らず、第3、第4も含めて、全体としてそれなりの論文を生産できているというのが状況として見てとれるかと思います。
1枚飛ばしてしまったかと思うんですけれども、10ページ目のほうのデータを見ていただければと思います。こちらは先ほど申し上げました、そういう研究大学にどういう研究者がいらっしゃるかというのを見てみたものでございます。大学の分類は、左の端のほうに第1グループから第4グループと書いてございまして、これはNISTEPのほうで論文数のシェアで第1から並べたものでございます。これで見ていただきたいのは、いわゆる基盤的経費ですとか、国際卓越はともかく拠点支援、こういったものがある程度第1、第2グループに寄っている。これに対して右のほうを見ていただきますと、研究者及び個人支援のところで書いてございます科研費、そして創発の赤い囲みのところでございますが、第3、第4グループの研究者がここで結構な率を占めているというのが見てとれるかと思います。こういった研究者が日本では全国各地にいらっしゃるという、この現状を踏まえた上で、日本全体の研究力をどのように上げていくかというのを考えなければいけないと考えております。
12ページ目は、今度は個人レベルで研究費がどんな状況かというところを見た図でございます。昨今、円安ですとか、光熱水費の高騰、人件費の高騰とかいった形で基盤的経費が実態の金額としても少ないというふうにも言われておりますが、経年変化で2001年から振り返ったものでございます。言わずもがなでございますけれども、いわゆる1人当たりで使えるお金が愕然と減っているというのが見てとれるかと思います。均等配分だったり、対数正規分布だったり、分析にはいろいろやり方はありますけれども、いずれにしても半分以下に減ってしまっていると。右のグラフで示していますのは、1人当たり50万円未満の教員が20年前より30ポイントも増えているというような状況が見てとれます。
そんな中で研究の活動の状況はどうかというのが13ページ目で示しておりまして、13ページ目のグラフは1920年と2012年、このグラフでございます。そして1920年頃は、論文は一人で書くという個人型研究が主流だったものが、2012年の段階ですら5.3人の平均が共著の人数になっているということで、現状はもっと増えているかもしれませんが、チーム型の研究が主流になっているというのが見てとれます。
それから、研究動向の変化という意味では、14ページ目に示しております、DXの変化があるかと思っております。こちらデータ駆動型の研究開発、特に材料分野の事例を持ってきております。当然ながら、DXが入ることにより研究サイクルが加速し、そして新しい発見が出てくるというのも加速されると。左下に書いてございますのがいわゆる論文の数を各国比較したものでございまして、データ駆動型の材料研究開発を行っている論文の数を各国で比較したものが左下、右側はその研究に従事している研究者の数を表したものが右の下のグラフでございます。
中国と米国というのは本当に特出している状況でございますけれども、その2国が論文の数及び研究者の数、両者においても圧倒的にリードしており、日本がなかなかそこに追随できていないというような状況が見てとれるかと思います。こういった現状認識の上で、じゃあ我々は今後どういう方向性を目指すべきかというものをお示ししているのが16ページ目以降に示しているものでございます。16ページ目は振り返りでございますけれども、第5期でSociety5.0というものが提唱され、第6期ではその具体化を目指してまいりました。そして、次の17ページ目でございますけれども、現状において、Society5.0の実現は決して達成したとは言えない、道半ばであると。さらに、以前よりも増してということになるかと思いますが、国際情勢、そして社会構造の変化が加速して、将来に対する漠とした不安が高まっていると。こうした中で、研究開発競争という意味では下半分、これAI関連を持ってきておりますが、左のほうAIの関連領域というのが圧倒的に領域として盛り上がっている。2016年が43領域だったのが、2020年は121領域にまで上がっている。さらにその研究からビジネスにつながっていく。ここが近接しているということもあるかと思いますが、生成AI市場も一気に加速し、2027年には1,200億ドルになることが予想されているというような状況でございます。
こうした中で、日本という国がどういうふうにこれから生き抜いていかなきゃいけないかというのが18ページ目でまとめておりますが、2つ、まず1点目は、日本、我が国が国際社会においてプレゼンスを発揮し、いわゆるSociety5.0というものを実現するためには、先端技術における優位性をしっかり獲得して、それを確実にイノベーションにまでつなげていく。要するに研究だけするのではなくて、それを社会に届ける。こうしたことで戦略的自律性・不可欠性を確保し、揺るがない頑強な国の力を蓄積する。こういった軸がまず当然ながら必要であろうと。ただ、それだけでは駄目で、現在予見されている競争のみならず、予期せぬ事態、自然災害ですとか感染症等々ですとか社会の不連続な変化、こういったものにもアジャイルに対応して、変化への対応を日本が主導できるように将来の競争力の源泉への先行投資、これをどれだけ行えるかが未来の我が国の盛衰を大きく左右するのではないかという形でまとめております。
そのイメージを図式化したのが左の下のところでございまして、いわゆる最初の観点、これが縦軸の赤の部分、要するに揺るぎない国の力をしっかり蓄える。その上で横軸のブルーのところ、アジャイルに対応するべき横軸も伸ばすと、この両軸が必要なのではないかと感じております。
その上で、アカデミアへの期待、これを19ページ目に書かせていただいておりますが、先ほども申し上げましたように、AIのように研究と社会・ビジネスの距離が言わずもがなで近くなってきていると。こういう状況を踏まえますと、社会からの要請を意識した研究ですとか、出てきた成果をしっかり社会実装に結びつける、こういったことに大学ですとか研究者がこれまで以上に関わっていく、これはこれで期待されていると思っております。
ただし、一方で、革新的なイノベーションというものはやはりゼロイチになりまして、ゼロイチを生み出せるのはアカデミアこそ持つ嗅覚ですとか、知的好奇心にほかならないのではないかと感じております。ですので、日本のアカデミアが、世界の学術は当然でございますけれども、産業界をも先導していく知のハブとなって、科学研究における革新的な発見を生み出すことを通じて、日本の発展の原動力となるということが今まで以上に期待されているのではないかと書かせていただいております。
この下にイノベーションのピラミッド、これは東大の合田教授のプレゼン資料を基に書かせていただいておりますが、当然ながら、科学の上に技術、技術の上にイノベーション、このリニアモデルには当然限りませんが、ただ、イノベーションとか技術、ここばかりに研究開発投資が集中してしまうと、その上の部分、イノベーションは一時的に繁栄するかもしれませんが、最終的に長期的に見ると、右下のような形でピラミッドが窄んでしまうということを我々危惧しております。しっかりとベースになる科学の力、ここをアカデミアとともに文科省としては育てていくことが重要ではないかと感じております。
では、具体的にどうするべきかというのが20ページ目でございまして、まず、目指す姿を、アカデミアが開かれたハブとなることで多様な人材、これは研究者だけではないという趣旨でございますけれども、この下の図のところにも様々な人材を書いておりますが、多様な人材がいろいろな組織ですとか分野を超えてチームで協働し、新たな知の創出と社会的価値の顕在化、これを好循環で回していく、こういったものを我々目指す像として規定させていただきました。
その上で、下の3つの丸がございます。まず、1点目が新しいサイエンスをいかに生み出していくか。先ほど新しいものを日本がなかなか生み出せていないというような現状認識を申し上げましたけれども、世界に先駆けてフロンティアを切り開いていく、こういったことがまず1点として必要ではないかと。
2点目は、先ほどのデータでも申し上げましたように、日本は各地に意欲・能力のある人材がいると。そのポテンシャルを最大限引き出していく、そういったことが必要なのではないかというのが2点目でございます。
3点目は、新しいサイエンスを生み出すことにも関係しますが、異分野融合ですとかセクターを超えていく、いろいろな壁を越える。これによって複雑化・高度化、そして、予想できない社会課題への解をしっかりと解いていく。そういったことが必要ではないか、このような3つの形で方向性を示させていただきました。
最後のページ、21ページ目でございますが、もうちょっと施策レベル、政策レベルで落とし込んだ方向性でございます。3つの軸で分けておりまして、1点目が大学という組織の話、2点目はネットワークの構築、3点目はヒトへの投資という形で分類をしております。
1点目の大学の組織の部分でございますが、こちらは6期中に国際卓越、そして先ほども紹介ありましたがJ-PEAKS、こういった施策を立ち上げてきております。こういったものによって研究大学の研究・経営システム改革というものをしっかりと進めていく、これが必要だと思っております。
さらに、今度は大学という意味ではないんですけれども、競争的研究費を獲得している研究者がしっかり研究環境を与えられる、そういう状況をつくり出すことが必要だと思っておりまして、そのために大学のマネジメント改革というものが必要ではないかということを2点目として挙げさせていただきました。
そして、2つ目の柱、ネットワークの部分でございます。こちらは高度な研究環境、これは設備、ファシリティ、そしてそれをアシストするような研究支援、コンサルするような機能、そういったものを持っている大学共同利用機関、これを中心として組織や分野を超えた研究ですとか、そしてまた人材が動いていく、流動のハブとなる、そういう供給システムの機能をしっかり強化していく。さらに設備の共用事業、これも様々現状行っておりますけれども、一層先端研究基盤というものを強固なものにしていく、こういった軸が必要ではないかと思っております。
2つ目の観点といたしましては、そのようなハブ機関をある意味結節点として、いろいろな壁を越えた形で研究活動を促進するようなファンディングの仕組み、いわゆる現状、個に対する支援と組織に対する支援がそれぞれで行われているかと思いますが、その2つをある意味マッチングさせることで組み合わせていく。そのようなイメージをしておりますが、ハブ機関をうまく使いながら、個人がしっかり研究環境が提供されるような形になっていく、そういう姿をつくるための仕組みを検討したいと思っております。
最後の3本目の柱、ヒトへの投資でございますけれども、これはもう皆様方、言わずもがな科研費でございます。質的・量的充実、当然古典的サイエンスのみならず、新しいサイエンスを生み出す真なものになるようにしていくことが必要だと思っております。そして科研費のみならず、競金全体としての質向上、これは異分野融合ですとか新しい領域を生み出すこと、そして全体としての負担軽減というものも併せてやっていかなければいけないと思っております。3点目、好奇心に基づく研究活動に対する社会からの投資拡大でございますが、こちらはイノベーションに近い産学連携、こういったものでは大学が外からお金を取ってくるというような流れ、現状できておりますけれども、そういう観点のみならず、やはり社会全体で、先ほど申し上げましたように科学の力というものをもっと強くしていかないと日本が発展していかない。そういった思いを共有できる、社会と対話しながら、社会から投資を全体として受け入れていく、そういう取組が何かできないだろうかと考えているところでございます。
続く2ページ目は、今申し上げたものを少し概念にしたものでございますので、説明は割愛させていただきます。さらに続く参考資料も御参考いただければと思います。
以上になります。
【千葉主査】 生田課長、どうもありがとうございました。非常に重要な観点を広い視野で御説明いただいたと思います。
それでは、続きまして、資料6ですかね、小川室長から御説明をお願いいたします。
【小川室長】 資料6でございます。「大学研究力強化に向けた多様な取組について」と表題ございますが、本日で今期の議論が最後になりますので、次期に向けた検討課題というところ、この委員会で次期、何を中心に御議論いただくかといったところを示すということが趣旨でございます。
1ページ目をおめくりください。本委員会ではこのポンチ絵自体は何度も御説明させていただいておりますが、現在、どういった考え方で研究大学群の形成を行っていく、また支援を行っていくかというところを、全体像を示しているものでございます。日本全体の大学の国際競争力を高めるという意味では、総合振興パッケージと大学ファンドを連動させ個々の大学の持つ強みを引き上げると。一番下の図で言えば、上に矢印がついているようなところもございますが、こういった取組を進めるというところと、あと複数組織間の連携を促進していくということによって人材の流動性が高いダイナミクスのある研究大学群を構築することが必要ではないかということで、こちら下の図で言いますと、赤い縦軸、また横で「大学共同利用機関等がハブとなり」というところもございますけれども、大学間の連携というところを示しているところでございます。また、それを支える基盤的な活動の着実な推進ということで、こちら基盤的経費ですとか科研費ですとか、そういったものも従前より存在していると、こういった枠組みで現在政策を進めているという理解かと思います。
その上で、2ページ目をおめくりください。先ほど生田課長のほうから御説明いただきましたけれども、第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討が進んでいくと思います。また、高等教育局のほうでは、例えば国立大学法人等の機能強化に向けた検討会、こういったものを参考でも取りまとめ、つけさせていただいておりますが、関連する議論が進んでおります。こうした状況も見据えつつ、改めて本委員会では、これまでも重要な視点でございましたけれども、我が国全体の研究力向上を牽引する研究システムを実現するという中で、その主要なセクターである各大学による研究力向上に向けた改革を継続的・安定的に後押ししていくということが必要であると。また、研究大学群の有機的な連携を促すためのシステムの構築に向けた検討を進めていくことが必要というふうに書かせていただいております。
検討課題の例としましては、先生方からまた御意見をいただいて反映していくものだと考えておりますので、あくまで例でございますけれども、研究大学の機能強化に向けた取組の推進、大学・領域・セクターを超えた連携の拡大、また、国内外での人材の流動性の向上と書かせていただいております。
研究大学の機能強化に向けた取組としましては、一つ国際卓越研究大学制度やJ-PEAKSの対象大学の選定、これが来年度にかけて国際卓越研究大学については進んでいきますし、J-PEAKSにつきましては、先ほど平野室長のほうから日本地図も御覧いただきましたけれども、こうした体制で進んでいく。こういった中で、改めて研究大学群への支援の在り方をどうしていくのかというところは1つのポイントかと思います。
また、※で書かせていただいておりますが、国際卓越研究大学の2期公募が進む中で、本委員会として、こういった大学群の形成の議論を進めてまいっておりますので、こういったところに国際卓越研究大学の第2回の公募の中でも強化委員会としても十分にコミットしていくことは重要ではないかと書かせていただいております。
また、国際卓越研究大学やJ-PEAKSが備える要素・体制の明確化ということで、こちらは骨太2024に基づきまして、EBPMアクションプランを策定するという取組が内閣府のほうでも議論されてまいっております。例えば国際卓越、J-PEAKS、こういった主要な政策につきましてはアウトカム指標を用いた検証というものも必要ではないかという問題提起もされていますので、こういった研究大学が備える要素・体制というところを一定明確化していくような取組。また、先ほどトーマツのほうから調査を御報告いただきましたけれども、こういった好事例をいかにして大学群に横に展開して波及していくか、こういった論点もあるかと思います。
また、多様な大学機能を担う人材の育成ということで大学の経営ですとか、研究マネジメント、こういったことを行う人材を大学内でいかにして確保していくのか。これが実際の大学の研究システムを変えていく際にも非常に重要になっていきますので、どのようにして人材を確保するのか。また、一方で少子化への対応というところが、教育のみならず研究でも大きく影響してきますので、こういったところをどのように考えていくのか。また、経営の観点からも研究力を支える事業・財務の在り方といったところを挙げさせていただいております。
前回の委員会におきましても、例えば国際競争や社会価値創出に向けて大学が目指すべき目標の明確化を行うべきではないか。また、大学の経営人材、こういったところをどのように育成していくのか。ここは引き続き課題ではないのかというお話もあったところでございますので、こういったものも踏まえつつ整理させていただきました。
また、2つ目、大学・領域・セクターを超えた連携の拡大ということ、国際卓越、J-PEAKSの枠組みの中で、例えばJ-PEAKSにおきましては参画大学が多数ございますけれども、大学間連携がこれから促進されていく中で何が改めて必要なのか。さらに、共同利用・共同研究体制というところで、先ほど生田課長のほうからも全国に、地方を含めまして優秀な研究者がいるというところで、そういった方々が自由に研究が進められるような研究基盤・機器共用、また共同利用・共同研究拠点、大学共同利用機関をどのように位置づけていくのかというところがあるかと思います。
この点につきましては、3ページ目に示させていただいておりますが、研究環境基盤部会という別の部会におきましても、例えば国際卓越、J-PEAKS、こういったものが進む中で、そういった大学以外にも広く意欲・能力がある研究者が存在していると。そういったところにつきまして大学共同利用機関ですとか、共同利用・共同研究拠点を活用しまして、横をつないでいくということをどのように進めていくかという問題提起がされているところでございます。
改めまして、1ページ戻っていただきまして、そういう意味でも研究環境基盤部会などで議論が進むところとも連携しながら、こういったところを検討していく必要があるのではないかと考えております。前回の委員会におきましてもデータ基盤への対応、これはたしか大野先生だったかと思いますけれども、ですとか、多様な学問分野の特性を踏まえた体制構築の必要性ですとか、また、大学としての共同利用・共同研究拠点をいかにして活用していくのかですとか、また、人社の観点だったかと存じますが、地方大学と大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点との連携、こういったところをどのようにして実際に進めていただくのかといったところについて御議論があったかと思います。
最後に、国内外での人材の流動性向上でございます。こちら全国の研究者が研究活動に邁進できる環境の構築としまして、ポスト、研究資金、研究設備、また、先ほど上の件とも関連しますが、共同利用・共同研究体制の活用ということで、前回の委員会でございましても国公私立大学を超えた人材の流動性向上をどのように図っていくか、こういったところが意見としてあったかと存じます。
私のほうからは以上でございます。
千葉先生、どうぞよろしくお願いいたします。
【千葉主査】 どうもありがとうございました。
これまで1時間ほどかけて一気に説明をしていただきました。大変な情報量なんですけれども、第7期の基本計画に向けた検討状況や次期に向けた検討課題を中心にして今考えていくということですけれども、改めまして、今期、本日が最後となりますので、委員の皆様からいろいろ御意見をいただきたいんですけれども、非常に多岐にわたるもので、研究力強化と一言で言っても非常に幅が広いんですね。どこから議論していただいたらいいかなと思うんですけど、ちょっと私のほうから総括というのではないですけれども、重要な観点として私が感じていることをまず最初に簡単に申し上げますと、研究力強化は何のためかというと、私はやはり日本の基盤づくり、日本の未来をいかに切り開いていくかというところにあると思っています。
日本はかつてというか、数十年、キャッチアップの体制で、考え方で来たところがありまして、そうするとアメリカはこんなにすごいとか、今度は別の国が先にまたこんなことをやっていると言って、というような発想になるんですけれども、やはりここは、研究ということは、要するに未来を見据えて何をするかということで、そのものも研究ですので、じゃあ日本としては、例えばAIが今全盛期になっていますけれども、AIは多分定着していくだろうけれども、その次に重要になってくるものは何なんだろうかとか、そういうことを先取りしていく。まだほかの国が気づいていないことで日本が先にやるべきことは何なんだろうかとか、そういうような発想も必要だと思っています。
それから、あとは日本の強みというのをもっともっとしっかりと我々は理解をしていかなきゃいけなくて、1つは、連携という言葉でまとめられていましたけど、日本全国に700、800という大学があるというようなところというのは、これだけの割と高密度に、割と規模の小さい大学が集積しているというのは日本の特徴であり、じゃあそれを全部合わせたらどれぐらいの力になるんだというようなことを仮想的に考えてみて、それがうまく機能すれば、国対国という観点でいけば、相当高いレベルに行けるんじゃないかとか、これはある意味、仮説的な物の考え方ですけど、そういうふうに考えてみるとか、あるいは私は日本がかつて経済成長をたくさんしてきたベースにあるのは倫理感だと思っているんですけれども、日本人が十分収益というか、収入がないときも電化製品を買って、それで日本の産業が発展して技術が飛躍的に伸びた。その背景はいわゆる月賦ですね、ローンで買って、きちっと返す。こういうような、日本人だと当たり前だと思っていることが、実は世界中ではそんなに当たり前ではない部分もあるのかな。これも1つの例なんですけど、要するに自分たちの強みというのは何なのか。それは実は大学教育だけじゃなくて初等教育からの積み上げ、あるいは学校に入る前からの家庭教育からの積み上げのところがあるとか、そういうところも全部見渡した上で日本の強みというのはどこでどう発揮されるべきなのか。これ自身も私は研究だと思っているんですけど、それで研究の戦略を考え、前例がなくても突き進んでいくというような勇気が必要なのかなと思っています。
前段の文科省関係の皆さんの具体的な説明とはちょっとかけ離れたような話かもしれませんけど、こういう部分も含めていろいろな観点での重要性というのを、多分、委員の先生方はお感じになっている部分もあるかと思います。一つ一つの施策について、ここはもっとこうしたほうがいいという御意見でもいいですし、あるいはもっと全然違う観点で、こういうことだって考えてもいいんじゃないのかというような御意見でも結構です。1時間弱、50分ぐらいしかないんですけれども、ぜひ御自由に御発言いただければと思いますので挙手をお願いします。時間が近づいてまいりましたら、手が挙がっていても打ち切らなきゃならない場合もありますが、すみません、順次発言をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
いかがでしょうか。小林委員、どうぞ。
【小林委員】 ありがとうございます。皮切りで、失礼します。前回も話したのですけれども、最終的にこの研究力強化をして社会実装、それがイノベーションとして定着する、開花することが一番大事だと思います。日本というのは本当に資源も何もない国で、もしできるとしたら、知の質を高めるしかないと。そうなってきたときに、どうも研究力強化というときに言葉が少し混ざっていて、研究開発というものを重きに置いた表現の仕方と、研究というのを表現する場合もあって、場合によっては研究開発のほうがいいんじゃないかという言葉の使い方もあり、開発というと社会実装というのを見据えた研究という立場が明確になってきます。AMEDも当初の案は医療研究でしたけれど、それに開発を入れることによって、いわゆるイノベーティブな医療機器とか薬を開発するということに立場を大きく変えたという経緯もありまして、言葉は大したことないかもしれませんけど、意外に重要なので、開発という言葉をいろいろなところで使っていただければいいなと思いました。
以上です。
【千葉主査】 ありがとうございます。言葉の定義の問題、大変大事だと思います。その辺がはっきりしていないと、皆さんが見ているところがずれてしまうと意見も広がってしまうということかなと思いますので、小林委員、どうも貴重な御意見ありがとうございます。
続きまして、吉田委員、お願いします。
【吉田委員】 ありがとうございます。今回の国際卓越、あるいはJ-PEAKSのプロセスで全国の大学が本当にこれから真剣にどうあるべきかを考えるというのは非常にいい機会だったと思います。その上で、次に我々考えなくちゃいけないのは、J-PEAKSとか国際卓越とか、強いところをどんどん伸ばしてそちらに集約して、地方の優秀な人たちもそこに集めてかなり高いところを目指すのか。あるいは地域の中で裾野をずっと広げていって、地域の大学というのは地域の産業に直接絡んでいっておりますし、地域のイノベーションにも関係しておりますので、そういうところをどうやって支援するのかというのが次に考えるべき点だと思います。
私は今回、資料3の1ページが、この図というのが象徴的な図だと思うんですけれども、これを見ましても国際卓越と地域中核が手を組んでという図しか見えないので、これ地域の中核大学、地域中核とは書いていないんですけれども、地域の大学もここに手をつなげるような仕組みをしっかり入れていただければ、地域の、今回J-PEAKS、国際卓越に外れた大学の支援も、あるいは個人的な優秀な研究者もしっかりとまた支援していただける仕組みを引き続いて考えていただきたいなと思うのがまず1点でございます。
もう一つの点は、資料6の2ページになります。国内外での人材の流動性の向上というところがあると思うんですけれども、これ前回の学術分科会でも少し発言したんですけれども、先ほどの国際卓越、J-PEAKS、そういうところに地域の優秀な人たち、そういうところが一方的に移動してしまう可能性も危惧されます。したがいまして、地域の大学との人材の循環と、そういうことができるような仕組みをぜひ考えていただきたいというのを少し思っているところでございます。
もう一つ、これに関係して言うとすると、J-PEAKSでは連携する大学、これらに資金の配分とか、人材、研究環境などのリソースの共有と、こういうことが比較的柔軟にできたやに思っております。一方、国際卓越研究大学につきましては、ハブとしての役割を十分期待されているものの、大学単体、この強化がメインになっていて、J-PEAKSほどの他大学との連携を前提にした資金配分やリソースの共有、こういうのがあまりできるようになっていない仕組みかと認識しております。ぜひこういう研究者の流動性の向上の観点から、国際卓越研究大学についても資金、人材、こういうリソースを共有できる仕組みを積極的に取り入れて、他大学とコンペティティブにならないような連携、こういう仕組みをぜひ対応していただければなと思います。
それから3つ目は、ちょうどこれの一番上のチェックになると思いますけれども、多様な大学機能を担う人材の育成というところに関係すると思いますけど、これよく見ると大学院についてはあまり触れてないんですね。これまで若手研究者、博士課程、随分議論して今回の資金にも入れていただいて、先ほど御報告いただいたんですけど、ぜひこれは引き続き多様な大学機能を担う人材育成のところで博士課程、あるいはその前段階の修士課程、そういうことへの支援というのを入れていただいて、ぜひ教育カリキュラムの改善、あるいは教育・経済的なサポート、こういうところも引き続き支援いただければなと思って見ておりました。
以上になります。
【千葉主査】 どうもありがとうございます。
続いて、大野委員、お願いします。
【大野委員】 どうもありがとうございます。3点あります。1つは、今の文科省の認識は共有するといいますか、国際卓越、あるいはJ-PEAKSなどで個別の大学、あるいは連携した大学群のサポートが充実しました。いよいよ全体の底上げが必要だというところであります。資料5の10ページで赤くハイライトされていますけれども、これら第3、第4、あるいはそこのグループには入らない研究者で非常に活発な研究をしている人たちを支える仕組みが必要でありまして、そういう意味で共同利用の仕組みがこれからますます充実させていく1つのポイントになるのだろうと思います。
特に、前回も申し上げましたけれども、データの価値をきちんと科学技術・イノベーションに活かしていくためには、大きく報道もされていますけれども、生成AIの活用は必須です。その活用の先に新たなフロンティアが現れるという意味で、多くの研究者が生成AI等を研究に活用できるような仕組みが共同利用・共同研究の基盤となると思います。そこを重点的にきちんと手当てをすることで日本のどこにいても最先端の研究が組織できる、あるいは参加できるという形にすべきだと思います。
2番目は、これは、今日は出てきていませんけれども、運営費交付金のことです。これは私立・公立でも同じだと思いますけれども、国立大学では人事院勧告3%が提示されています。これは運営費交付金の全体額が変わりませんので、人事院勧告を反映すると、これは当然のことなんですけれども、反映しますと基盤経費がますます減少する。おおよそ見積もると年間200億円ぐらい減少していくので、これは国立大学法人が法人化されて10年間で1,000億円減りましたけれども、その倍のスピードで今減っている。したがって、どんどん人材が薄くなっていくということに対してどういう手を打つのか、どういうシステムをつくっていくのかという視点が極めて重要になります。
それに関連して、3点目ですけれども、トーマツの栗井さんでしたでしょうか、大学群を世界で見せていただきましたけれども、日本の大学は大学の構成員に対して収益が明らかに見劣りをしています。研究に投資できる収益が、あるいは原資がないということですが、これはマネジメント力だけで解決できるものではなくて、逆に原資がないのでマネジメントのしようがないからマネジメント力が現在培われていないんじゃないか、そういう見方もできます。そういう意味で、個別の大学がいかに収益を上げられる環境をつくるかというのも、遠回りのように聞こえるかもしれませんけれども、日本の科学技術、あるいは大学の研究力を強化する非常に大きな観点だと思いますので、それを次期の科学技術・イノベーション基本計画の中に織り込んでいただければと思います。
私からは以上です。どうもありがとうございました。
【千葉主査】 どうもありがとうございます。
それでは、続いて、高橋委員、お願いします。
【高橋委員】 ありがとうございます。恐らく私、10年で卒業だと思いますので、まず、感想なんですけれども、資料4のトーマツさんの資料、大変サジェスティブだったと思います。特にこのレベルの議論では、恐らくWhat、何をやるべきかということはかなりコンセンサスが取れていて、Howに議論がもう少し今後フォーカスしていくべきなんじゃないかと思いました。その観点で資料4の42ページ以降、大変いい情報だと思いました。感想です。
この後、次期に向けてということで、2点ほど述べさせていただきたいと思います。まず1点目、生田課長の大変全体感がある、よく分かる資料、ありがとうございました。御指摘が第5期以降の話が少しフォーカスされていたと思うんですが、もう少しマクロで見たときに大きな変異があるなと個人的に今まで思っていたのは、第5期を境にしたビフォーアフターです。第4期まではいわゆる学際領域、技術科学のキーワードだったと思うんですけれども、例えば第5期はSociety5.0、第6期は強靱な社会の構築等を、簡単に言うとSTがSTIになったことによってカバーする領域が非常に増えてきたというのが、まず大きなそこでの分節点だと思っています。これは何を意味するかというと、Iが入ったことで、イノベーションですね、関係者が増えてきた。さらにやることが増えたという非常に構造変化があったと思います。そういう意味では、増やすポジティブな話も重要だと思うんですが、何をやめて、何にフォーカスするかというところが今後もう少し現実感をもって議論すべきではないかと思います。これが1点目です。
2点目です。先ほど大野委員のお話もあったと思うんですが、もう少し足元の事実確認をしたいと思います。特に、人勧の話もそうですけれども、生田課長のお話にあったいわゆる100万円あってもできることが減っちゃっているという経済動向に見合う研究費の在り方というのは切っても切れない話じゃないかと思います。加えて、5年前に通用していた話というのが、特に若手研究者支援とか若者の志向性とか、研究の活動の在り方に関して言うと、もう5年前の話はほぼほぼ話にならないくらい古い話だと思います。そういう意味では、やはりマクロの視点とともに今後の話をするのであれば、比較対象は5年以内の状況を前提として、今後検討していただければと思っています。
以上です。
【千葉主査】 どうもありがとうございました。
続いて、野口委員、お願いします。
【野口委員】 大変充実した説明、ありがとうございました。私どもの大学も今回J-PEAKSの採択を頂戴しまして、非常に身の引き締まる思いです。大学院強化もやりますし、地域課題解決もやりますし、他機関との連携も進めてまいります。特に展開として重要と思いますのは2つで、1つは多様な大学群を形成していく水平展開と、もう1つは地域、小学校、中学校、高校、大学、大学院の垂直の展開です。例えば、垂直の最上位の方に位置づく大学院強化というのは非常に重要なんですけれども、もっと地域に自律的イノベーションを起こしていくためには、地元の高校生や中学生や小学生、先ほど千葉先生のほうからも初等中等教育の話が出ましたけれども、そういう生徒、学生たちに研究の卓越性やすばらしさを伝え、教え込んで、地元に定着させるような試み、かつ地元の中堅・中小企業とともに、そういう形で根ざしていくような試みを、この地域中核のJ-PEAKSの大学はミッションの一つしていくことは大変重要ではないのかなと痛感しています、研究地元基盤力強化といいましょうか、そういうところを進めていきたいと一方で思っています。
あと2点あります。トーマツさんのほうからのご説明、大変充実した資料で、かつ大変勉強になり、参考になる点も多々ありました。特に永遠の課題といいましょうか、特に重視している要素で、研究時間の確保は非常に重要であると思っています。例えば、研究に専念できるようなメカニズムをどう考えるであるとか、あと研究や教育や行政職とか、今ちょうど入試のシーズンですけれども、こういった様々なエフォートを分析しながら解決策を、教育、研究、行政、社会貢献、その他など依拠するエフォートを考えながら、どのように打ち手を打っていくかというところは非常に重要だなと思いました。これはなかなか明確な解が見つけられない課題ですけれども、重要性は再認識もしましたし、特に議論を促していく必要がある部分ではないかと思っています。
最後に、小川室長のほうからありました資料6の多様な取組のところで、2ページにありました国内外での人材の流動性の向上というのは、非常に重要だと思っています。国際卓越研究大学やJ-PEAKSで1,000名単位の人材の循環が起こるのではないかと思っています。循環が起こるということは、供給と需要があり、そのバランスがとても難しいと思います。そういう観点から、人材の共有ということを考えますと、クロスアポイントメント制度というのは非常に有効性もあり、人材の共有という観点では効果的であると思います。産連調査の結果を見ましても、クロスアポイントはやや頭打ちになっているような数字が出ているように思います。特に企業とのクロスアポイントメント制度はあまり進んでいない状況です。しかしながら、双方の身分を有するのがクロスアポイントメント制度の大きな利点ですので、場合によっては、理事や副学長クラスのトップ層のクロスアポイントメントだったり、URAや場合によっては事務職員、今後重要な位置付けを占める技術職員も実施主体に加えて考えることが、非常に重要になってくると思われます。そして企業とのクロスアポイントメントも重要であることはもちろんのことです。クロスアポイントメント制度は、今後の人材の共有化のキーシステムになり得ると思いますので、とても有益であると思っています。
以上です。
【千葉主査】 どうもありがとうございました。
続いて、相原委員、お願いします。
【相原委員】 私はちょっと視点が違うのですけれども、研究成果をイノベーションにつなげるためには、実際には様々なことがネックになっていると思います。その中の1つに研究成果を社会に還元した際に生じる価値、インパクトと言ってもいいかもしれませんけれども、それに関して大学と企業の認識の違いがあるのではないかと思います。研究者と産業界の密な意見交換がイノベーションに重要と以前から言われていますが、教員は大学のラボに出入りするような企業の研究者や開発担当者とは意見交換をしていますけれども、実際にその研究に資金を投入して前に進めるかどうかを決めるのは企業の別の部署の人たちではないかと思います。その人たちが欧米の企業のように広く社会の様々なニーズについて勉強して感性を磨いていかないと、いくら大学の教員や企業の研究者が力を込めて将来性について説明しても、開発資金も得られなければ社会実装も進まないということになりかねません。つまり、大学側の努力だけではイノベーションは進みにくいという認識を持つことが必要だと思いました。
それからもう一つ言いますと、学会ですね。学会も大学とともにイノベーションの加速に今何を急いで、何に本気で取り組むべきかということをこれまで以上に考える必要があるかと思いました。
以上です。
【千葉主査】 大事な観点を御指摘いただいて、ありがとうございます。
それでは、木部委員、お願いします。
【木部委員】 どうもありがとうございます。今までの意見と重なるかもしれませんけれど、トーマツさんの資料は大変参考になりました。これを見ると、日本の大学が取り組まなければいけないのは、人材育成ですね。人材育成がすべてのベースになると思います。では、どうやったら人材育成ができるか。今、国際卓越とか地域中核とか、制度の改革が始まっていますけれども、そこに入らない大学もあります。これらを含めて、共同利用・共同研究を通じてネットワークを結ぶことが重要だと思います。先ほど千葉主査がおっしゃったように、800ある大学がばらばらに研究や教育を行うのはとても効率が悪いので、これをネットワークで密に結ぶ。それによって、もっと日本の研究力は上がるかもしれないと思います。
そのときに、ネットワークとかハブとかいった言葉はあるんですけれども、その政策をどうするのか。その手段をどうするのかということが今のところもう一つ具体的に出ていません。そこをこれから開発していくべきじゃないかなと思います。
それから、研究時間の確保ですね。そのために、資料5の21ページで大学マネジメント改革というのを打ち出されたのは非常にすばらしいことだと思います。入試も含めて、事務的な仕事や大学運営などのマネジメント改革しないことには時間は生み出されないわけです。だからこれを今後の方向性として打ち出されたことは非常に価値が高いと思います。ただ、これも言うのは簡単ですが、具体的に現場でマネジメントをやっていると、なかなか難しい部分があります。マネジメント改革の実例などをもう少し研究して、強化していくことが必要かなと思いました。
それからもう一つ申し上げたいのは、先ほど大野委員もおっしゃいましたけれども、人件費の問題です。今年は何とかなったけれども、来年はもたないということがどこの組織でも言われています。第5期(※国立大学法人の中期目標・中期計画)まで待てない。第5期までまだ3年ありますので、そこに行くまでに、がたがたになってしまう可能性が高いと思います。ここをもう少し考えていただければと思います。
以上です。
【千葉主査】 どうもありがとうございます。
西村委員、お願いします。
【西村委員】 ありがとうございます。これまでのいろいろな御努力で施設面であるとか、あと仕組みの面とか予算の面ではかなり充実したと思います。その上で、ちょっと今まであまりお話がなかった、嫌われるようなことを言いますけれども、本当に日本の研究者の質が大丈夫なのかということですね。これだけ環境を整えていろいろな条件をつくって、特にイノベーションということで予算をいっぱいつけていても、ディープテックの玉になるようなものがほとんど出てこない。この生み出す力の無さということも、私は今後、考えるべきじゃないかと思っています。研究者の皆さんの能力が低いと言っているのではなくて、持っている能力を本当に発揮しているのかということです。さっき生田さんがおっしゃっていた、ゼロからイチを生み出せるのはアカデミアの嗅覚と知的好奇心、まさしくゼロからイチを生み出すのが大学だと思うし、研究者だと思うんですけれども、その嗅覚とか知的好奇心が劣化していないかということなんです。
私はずっと民間にいて、その後、大学に関わって、最近、J-PEAKSとかCOI-NEXTでハンズオン支援をしていると、研究者の発想に狭さを感じるんです。経験値が狭い。だから、出てくる発想力が脆弱です。ただ、徹底的に議論していくと、多様な見方で考えることを認識する、所謂、総合知を基に考えるようになると、切れのいい研究を発想してくれます。そういう意味でいうと、発想力を生み出すことについて、日本の研究者の皆さんの全体的なレベルがまだ低いんじゃないか。いつの間にか低くなったんじゃないのかと感じます。私は学会を見ていると、学会間の分断があるように思います。例えば、社会学の先生方とバイオテクノロジーの先生方が普通に議論するようなことってないですよね。こういった領域を跨いだ議論は、企業だと当たり前なんです。そういうことをしながら世界と戦ってきているのが企業であり、私もベンチャー企業を経営していたので、領域を跨いだ真剣な議論をやっていたんです。こういった雰囲気が今の大学の環境の中であるかというと、無いと思います。言い方悪いですけど、それぞれが自分の所属する学会(研究領域)に閉じこもって、互いに傷つけないように守り合っているように思います。
そういう意味で、これからの次のステージで、本気で日本の研究力を上げていくと言うのであれば、研究者のプロフェッショナルとは何かと、その姿をしっかりと定義づけをして、そういう研究者のプロフェッショナル集団を養成する。特に若手には、このようなプロフェッショナルの中で戦うことを、それも世界中のプロフェッショナルと戦う意識を持たせる。そのためには世界を知らなきゃいけないのと同時に、社会を理解しなければ駄目だと思います。それも未来社会も含めてです。社会への理解をもとに自分たちの研究の価値を認識し、どのような社会的インパクトが出せるかぐらいの想像力がないと、先ほど説明のあったアイランド型、スモールアイランド型の研究にのめり込むということはできないような気がします。そういう意味で、総合知とか、統合知を身に付けることで研究者自身の発想力を高めないと、研究力強化に向けて行ってきた今までの投資は有効には機能しないような気がします。
少し違う角度から変なこと言ったかもしれませんが、私はそのように感じています。
【千葉主査】 ありがとうございます。大変インパクトのある御意見、いつも西村委員、ありがとうございます。こういう御意見を例えば大学の中とかでももっと自由に発言して、先生たちにも伝えたり、そう思うけど、どうですかということが言える、そういう土壌をつくるというのも大事ですね。なかなかそういうことも言いにくいですよね、一般的には大学の中でも。大変貴重な観点だと思います。ありがとうございます。
新福委員、お願いします。
【新福委員】 ありがとうございます。本日のお話や資料を見て考えたことを話させていただきます。
まず第一に、今後やっぱり大事だなと思うのが柔軟性というところだなと思っています。お話の中で、様々な社会状況にアジャイルに対応できるというようなことがありましたけれども、その辺り日本の大学だとか研究はまだまだ弱いんじゃないかなと思っています。例えば、今であれば大学の経営陣は皆、人件費だとか光熱費、また円安というところに苦しんでいるところがあると思いますし、また、今後求められてくる社会実装を私も実際行う研究者なんですけれども、社会実装をやればやるほど予測していない出来事というのがたくさん起きます。それに対応できるような体制になっているかというと、やはり研究費が使いにくかったりとか、そういったところに対応していないというところがあります。
もう一つは大学の中の人材が多様化していくというところの対応、女性研究者もありますし、また、外国人もこの後増えていくのだと思います。そういったところで産休育休ですとか、また一般的に病欠になる方もいらっしゃれば、いろいろな文化で育ってきた方もいらっしゃいますので、そういったところに柔軟に対応できるような体制というのをつくっていくところが一つ重要だなというふうに見ています。
もう一つは、若手の人材育成というところで流動性ということがよく言われますけれども、非常に大事なことなんですけれども、それというのは不安定さとのバランスだと思っています。これから日本の人口が減っていく中で、優秀な人がアカデミアを選ぶかどうかといったときに、それなりに優秀で業績を積んできた人が非常に不安定な業界に飛び込めるかというところで、我々は魅力的な大学環境、研究環境というのをつくっていかなきゃいけないと思いますし、本日の資料の中でイリノイ大学が出てきまして、私の母校なんですけれども、明確なポストアップというのが提示されていて、私も若い頃、非常にいいなというふうに思ったことがあります。そういったところで現在、日本の大学の中でもPIを増やしたり、裁量を与えたりというところが出てきているんですけれども、非常にいいことだと思うんですが、どうしても若手というのは研究に強くても経験が足りていないところというのがたくさんあるかと思いますので、その辺りのサポート体制だとか教育システムというのを今後考えていかなきゃいけないんじゃないかなと思っています。
最後に、日本の強みをどういうふうに打ち出していくかというところでは、私はやはり医療は日本の中で非常に強みだなと思っています。日本の中で医療の現場では真面目にこつこつと日々やらねばならないことを医療人材は行っていっていますので、日本の中の、特に私、専門母子なんですが、その辺りの指標というのは世界の中でトップレベルになっています。また、今、高齢化で、地域モデルで在宅医療なんかも進んできています。医学・医療と言われると先端医学ですとか、基礎研究のことが用いられることが多いと思うんですが、そういった実践レベル、実装レベルの医療というところも今後ますます世界に打ち出していければなと思っております。
以上です。
【千葉主査】 どうもありがとうございます。
続いて、梶原委員、お願いします。
【梶原主査代理】 ありがとうございます。トーマツさんの調査の資料や、生田さんが御説明した資料で思うことですけれども、まず、ロジックツリーでどのようなアウトプットが見えてくるかというところは、まさにEBPMを進める上でも非常に参考になって重要な要素です。ここで思ったのが生田さんの資料の中で、韓国が非常に研究力の現在地ということで伸びていますよね。トーマツさんの資料のほうはアメリカの状況なので、こうやって高いですよということは、低いところから高いところに上がっている状況かどうか分かりませんが、少なくとも韓国はあまり高くなかったところから、この20年で急速に現在地として着実に上がってきています。日本は横ばい、あるいは低下しています。その差は本当に何なのでしょうというところは見ていく価値があると思います。
そして、少し残念に思うところは、資料5の6ページ、7ページ、先ほど西村先生がスモールアイランドの言葉を言及されましたけれども、私が文科省の委員会に参加するようになって最初の年だと思います。こういうマップのチャートがあって、日本以外のところは、そのときの、少なくとも5年とか6年前ですけれども、現在地としてスモールアイランド型が非常に多くなっていて、新領域への研究開発が進んでいますというお話が出ていました。最初の頃の参加でしたので、よく事情が分からない私は、なぜ日本はこういうことに行かないのか、あるいはスモールアイランド型を追求するということの方向にかじを切らないのかということをコメントしました。
そのときには方向感としてはそこに行くと聞いていて、あるタイミングのときまではどうなったか、どうなったかと聞いていました。私は6年以上関わっていますが、文科省の御担当の方々はそれぞれ替わっていき、こういった課題の追求度合いとかインパクトをどう見ているかというのは、トレースがどの程度行われていたのか分かりませんが、結果的に伸びていないという実態が分かりました。これは政策側である事業を組み上げるときに、そこからもたらされるアウトプット、アウトカムが必ずしもできていないということではないでしょうか。
1つは、それは政策の立案側と実際に実行する側との認識が必ずしも正しく合っていない、うまく伝わり切れていない、そこにギャップがあるからではと思います。ギャップの解消には対話が必要ですよね、現場の大学との対話が必要と思う部分が非常に大きいです。そこで、先ほどのデロイトトーマツの資料に戻りますが、この中で大学の好事例として何が重要かというところが、研究を支える土台としてガバナンスと事業・財務戦略が重要だとあり、事例として出てきている機関、大学は事業戦略、それから財務戦略について全てチェックがされています。それをなし得るのはやはりガバナンスの問題が非常に大きいと思います。お金を獲得するということについてもガバナンスの問題だと思っており、そこの領域を強くしていかないと、大学自身が変わっていかない。
そのためにどうするかということの中で、参考資料の2、1ページ目のところに「財務の現状分析と課題」ということを挙げてくださっているところがあって、文科省のほうで各法人の状況を法人とともに検証の上、対応策を検討することが必要と書かれています。まさに各法人とともに検証の上とあるように、お互いで何をどう見ているかというのは、対話をして、現在地の診断をして、それぞれの処方箋を見て追求していかないと、変われないと思います。全体的にこれが必要だというのは分かっているけれども、変われていない、数年前から同じことを言っているのに、本当に解きたい課題というのがまだ解かれていないところは、実行する上での実態とのギャップを非常に残念に思いますので、ぜひ今回は、政策側と実際に運営する側との対話を進めて、ここを目指して変わるという形で進めていっていただきたいと思います。
そういう認識が合うと、先ほど生田さんから、最後のところで、社会全体で研究力を上げるための支援をしていかなければならないという表現でお話をされていましたが、まさに企業側の支援みたいな形のところで必要性があってやるというのは、冒頭で千葉主査が何のためにかとお話しされましたように、企業としては本当にそこの部分に共感を得てやる必要があって腹落ちすれば、お金を出すはずです。私の経験値の中ではそういうお金の出し方をしていました。そこでも対話ですとか、共感をどう得るかですとか、認識が合っているというところでつながっていくというところがあるので、やはりどこか何かが欠落しているので変われていないと思うので、ぜひ新しく踏み込んだ丁寧な処方箋を各大学に提示してあげていただければと思います。ありがとうございます。
【千葉主査】 企業での大きな経験の中からの貴重な御意見かなと思います。特に今日出てきたキーワードの中も含めて、できていないところがたくさんありますね。じゃあできていないところはどういうところなんだということをもう1回振り返ってみるというところはすごく大事だなと感じながら伺いました。ありがとうございます。
それでは、那須委員、お願いします。
【那須委員】 ありがとうございます。私は少し各論になりますが、1点、ぜひこれを次期に書き込んでいただきたいというのが事務職員の高度化ということなんです。私は前回、今日紹介があった研究力に関するシンポジウムの中でも組織・制度改革というのをJ-PEAKSでやっています。その中で、私もキャリアの中ですごく感じているのは、大学にいる事務職員はまだまだ実力を十分発揮できていない。できるような仕組みになっていないということがあります。ところが、今日の資料の中で、URAの前職の20%が事務職員だったという表が出ました。これってすごいことなんですけど、ただ、数としてはどうなのかなと。事務職員はたくさんいます。その事務職員がもっともっと能力を今以上に高めていくといろいろなことが変わってくる。
資料6の2ページに多様な大学機能を担う人材の育成ということが出ていますが、その中に事務職員というのは書かれていないんですね。一番上の取組の推進で多様な機能を担う人材、私はもっと事務職員が、端的に言いますと、大学の機関申請を行うような申請書を事務職員が書けるかということなんです。今ほとんどのいろいろな書類が研究者に丸投げというか、何でも教員に下りていっているというところが、そういったところが教員の研究時間が減っていく、そういうことの原因。さらに、西村先生がおっしゃった大学の教員が全然余裕がなくなっていくという、そういうところにあります。私このことを4年ぐらいずっとやってきたんですが、事務方はもっともっと能力を発揮できるということ、これが研究力の強化につながっていくと。
私、今日の野口委員のお話が一端かいま見れましたけど、私は国立大学よりも私立大学のほうが事務職員の能力は高いと思っています。数も国立大学より少ないのに運営できているという。そういった中に研究を高めていくということ、さらに、今日あった財務戦略は誰が重要だと、ガバナンスが重要だとおっしゃっていますけど、誰がそれを立案するんだと言ったら教員でしょうか。やっぱりずっと大学にいる事務職員がそれをやっていくという。私としては、ぜひ書き込んでいただきたいのは、多様な人材の育成という中に明確に事務職員というのを書いて、それに対する具体的な施策、本学は大学院修学支援制度を立ち上げましたけど、そういった優秀な職員をどんどん育てていくということも1つの方策じゃないかなと最近常々思っていますので、発言させていただきました。
以上です。
【千葉主査】 どうもありがとうございます。まさにおっしゃるとおりだと私も思います。例えば経営人材とかガバナンスという言葉がよく出ますけど、経営人材、例えばずうっと研究をやっていた教員がぱっと経営人材になれるかというと、なかなかそこも難しいんですけど、やはり事務職員ですと、非常にそこに対して意欲を示す人であれば、一定の時間をかけてそこに向かっていくようなキャリアパスをつくることができますよね。そういう意味で人材の在り方、キャリアの在り方というのを大学はもっとしっかり考えるべきだという強いメッセージだというふうに承りました。重要な観点、ありがとうございます。
どうも委員の先生方、ありがとうございます。たくさん御意見をいただきまして、あっという間に2時間の時間が過ぎ去ろうとしております。今日は本当に、最後、何度も言いますけれども、今期の総括という形で大変前向きに、私、御意見を承っておりました。財政的な問題もありますけれども、皆様、お金何とかしてと言ってどこかからぽんと出てくるわけでもないということも御承知のとおりで、だからといって研究力を増していかなければ日本の未来はないわけで、じゃ、ここをどう乗り切るか。これは本当に挑戦的な考え方が必要になっているなと思いますので、ぜひ今日の御意見とともに次の大きなアクションにつなげていければと思っております。
それでは、本当はまだまだ、本当は意見交換もいろいろしたいところなんですけれども、残念ながら時間が参りましたので、ここで閉会に当たりまして、研究振興局の塩見局長から御挨拶をいただければと思います。
塩見局長、いらっしゃいますか。
【塩見局長】 ありがとうございます。失礼いたします。研究振興局の塩見でございます。
委員の皆様におかれましては、この2年間、大変お忙しい中、貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
今日も様々御議論いただきましたけれど、今期の大学研究力強化委員会におきましては、国際卓越研究大学、それからJ-PEAKS、この2つの両輪となる事業が新たに開始するということで、本当に研究大学政策の中でも大きな転換点を迎える、非常に画期的な位置づけの政策が始まるということで様々な観点から御議論いただいたところでございますが、国際卓越研究大学につきましては、東北大学が第1号として、また、J-PEAKSにつきましては、25大学が出そろったということで、いよいよこれらの取組を通じまして、日本の研究大学の強化に向けた新しい非常に大きな動きが始まっていくということになっていると感じております。この間の委員の皆様の御尽力に心から感謝を申し上げたいと思っております。
また、あわせまして、個別の研究大学を強くしていくということと併せまして、各大学、また領域を超えた、組織を超えた連携を拡大していくということの重要性についても御議論いただいたところでございまして、共同研究、また共同利用の体制の機能強化等につきましても活発な御議論をいただいたところでございます。
現在、第7期の科学技術・イノベーション基本計画の検討が進んできているところでございます。計画の中で大学が担っていく役割というものは非常に大きいものがあるわけでありまして、我が国の大学の研究力の向上というものが我が国の未来、今後の未来を左右すると言っても言い過ぎではないような、そんな重要なものだと考えております。
本日、大変厳しい現状も踏まえながら、様々な角度から御議論をいただきました。本日いただいた御議論も踏まえながら、今後一層深掘りをしていく必要があると考えているところでございます。
委員の皆様方におかれましては、これまでの御尽力に本当に感謝するとともに、また、今後に向けましても様々御議論、また、我々に対する御指導もいただければと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。誠にありがとうございました。
【千葉主査】 塩見局長、どうもありがとうございました。
私自身も今期最後ということですので、一言御挨拶を申し上げます。委員の先生方、本当にお忙しいところ、活発な御議論をいただきまして、ありがとうございます。また、文科省、関係者の方、関係する組織の皆様も御協力いただきまして、非常に大きな成果、議論の結果が出てまいりましたこと、大変ありがたく思っています。
研究力強化というと本当に、冒頭、小林委員からもお話がありましたけど、定義の問題もありまして、非常に幅広いものが含まれるんですけれども、私自身は日本の未来を担う極めて重要な活動というふうに位置づけております。ここが緩んでまいりますと、国自身の未来が塞がれてしまうぐらい重要なことだと思っておりますので、今期はこれで終了となりますけれども、ぜひこれまでの議論をさらに前向きな形で発展できるよう、また、より多くの方に御関心を持っていただき、いろいろな形でこの議論、あるいは具体的な行動に参画していっていただきたいと思っております。本当にこの2年間、誠にありがとうございました。
それでは、事務局から事務連絡をお願いいたします。
【小川室長】 改めてですが、今回で今期の大学研究力強化委員会は終了になります。委員の皆様には多大な貢献をいただきましたことをお礼申し上げます。
なお、次期の強化委員会の体制につきましては、科学技術・学術審議会全体の体制ですとか、先ほど高橋委員からも御自身10年目ですというお話がありましたけれども、こういった通算10年の委員の任期上限ルールなんかもございますので、この辺も踏まえて事務局で検討させていただく予定でございます。
本日、時間の関係で御発言できなかったこと等がある方は、事務局までメールなどで御連絡をお願いできればと思います。
また、本日の議事録につきましては、運営要領に基づきまして公表いたします。事務局にて議事録案を作成の上、委員の皆様に確認をさせていただきますので、御承知おきいただければ幸いでございます。
事務局からは以上でございます。
【千葉主査】 それでは、これで今期最後の第17回大学研究力強化委員会を終了いたします。今期は合計7回の委員会を開催させていただき、各回活発に御議論いただきまして、改めまして御礼申し上げます。今後とも、大学の研究力強化のためにお力添えをいただきますよう、よろしくお願いいたします。
皆様、本日は御多忙のところ、ありがとうございました。
以上でございます。
―― 了 ――
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