科学技術・学術審議会 大学研究力強化委員会(第12回)議事録

1.日時

令和5年6月28日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 大学研究力強化に向けた取組
  2. その他

4.出席者

委員

(主査)千葉一裕委員
(委員)相原道子委員、大野英男委員、小野悠委員、片田江舞子委員、木部暢子委員、新福洋子委員、高橋真木子委員、那須保友委員、西村訓弘委員、野口義文委員、藤井輝夫委員、柳原直人委員、山崎光悦委員、吉田和弘委員

文部科学省

(事務局) 増子文部科学審議官、池田貴城高等教育局長、西條正明大臣官房審議官(高等教育局及び研究振興政策連携担当)、山下科学技術・学術政策局総括官、笠原大臣官房文教施設企画・防災部長、平野国立大学法人支援課長、梅原産業連携・地域振興課拠点形成・地域振興室長、馬場大学研究力強化室長 他

科学技術・学術政策研究所

大山科学技術・学術政策研究所長、伊神科学技術予測・政策基盤調査研究センター長

 

5.議事録

【馬場室長】  定刻となりましたので、ただいまより科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会を開催いたします。
 本日は御多忙の中、御参加いただき、ありがとうございます。
 会議の冒頭は、事務局が進行させていただきます。
 本日は、いつもどおり、オンラインの開催となっております。音声などに不都合がある場合は、随時事務局まで御連絡をお願いいたします。
 最初に、オンライン会議を円滑に行う観点から、事務局より何点かお願いがございます。発言時以外はマイクをミュートにしていただく、発言に当たっては「手を挙げる」ボタン、挙手ボタンを押していただく、資料を参照する場合は、資料番号、ページ番号、ページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただくなどの御配慮をお願い申し上げます。
 なお、本委員会は原則として公開で行うこととしております。本日は、事前に登録いただいた方に動画を配信しておりますので、御承知おきください。
 本日の委員の出欠状況については、荒金委員、梶原委員、小林委員の3名が御欠席となっております。
 文部科学省からは、増子文部科学審議官ほか、関係局課の職員が出席しております。
 続きまして、配付資料の確認です。本日は、議事次第に記載のとおりの資料を配付しております。御確認をお願いいたします。説明の際には画面表示をさせていただく予定ですが、必要に応じて、事前に送付したPDF資料も御参考いただければと思います。
 それでは、今後の議事につきましては千葉主査に進行をお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【千葉主査】  皆さん、おはようございます。本日もよろしくお願いします。前回に引き続いてになりますけれども、今回、担当課のほうで御用意いただいた資料の説明を伺った上で、ぜひ皆さん忌憚のない御意見をいただき、日本全体の研究力強化ですね。これはいろいろな観点での考え方が必要になると思います。いろんな階層での考え方を自由にまず御意見をいただいて、日本全体としてどうすれば真の研究力強化につながっていくかということ、一つの大きな道筋を見いだしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局のほうから資料の御説明、進めていただけますでしょうか。

【馬場室長】  ありがとうございます。本日は、まず議題1で、事務局より、大学研究力強化に向けた具体的な取組について、現在の政府の政策の全体の方向性や関連事業の進捗について御説明した後、質疑応答の時間を設けたいと思っています。議題2につきましては、多様な研究大学群の形成に向けてとして、前回の議論を振り返った後、科学技術・学術政策研究所より最新の意識調査について御説明いただき、小野委員より学術会議の若手アカデミーの提言について話題提供いただく予定としております。その後、説明内容に対する質疑に加え、研究大学群のあるべき姿について議論の時間を設けたいと考えております。
 それでは、資料1を御覧ください。こちら、資料1に基づきまして、現在の政府の政策動向に加え、大学研究力強化に係る各種事業の進捗状況について説明させていただければと思います。
 まず、3ページ目を御覧ください。これまで強化委員会では、多様な研究大学群を掲げてまいりました。今月決定した経済財政運営と改革の基本方針2023、いわゆる骨太方針においては、多様で厚みのある研究大学群の形成に向けてということがうたわれているところでございます。本日、また今後の強化委員会において議論を重ねていければと考えております。また、骨太の方針では、この後御説明いたしますが、国際卓越研究大学について選定を着実に進めるとともに、戦略的な自律経営が可能となるような必要な規制改革を早期に実行することとされております。また、相補的・相乗的に連携した車の両輪として、地域の中核・特色ある研究大学の多様なミッションの実現に向けた抜本的な機能強化を図るということもうたわれております。さらに、イノベーションの源泉である優秀な若者が博士を志す環境を実現することについても、大学研究力強化に関わる重要な記載であると認識しているところでございます。
 4ページ目の第1回委員会の資料、また5ページ目の研究大学に対する組織支援策の全体像については、前回も説明させていただいておりますので、説明は省略したいと思います。
 続いて、6ページ目、国際卓越研究大学の公募・選定の状況です。
 7ページ目を御覧ください。今月、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で決定された統合イノベーション戦略2023の抜粋になっております。国際卓越研究大学法に基づく基本方針を踏まえた記載となっておりますが、強化委員会の議論も踏まえ、次代を担う若手研究者の育成や負担軽減、知的資源の価値化、大学独自基金の造成などの取組に加え、国際卓越研究大学が我が国の学術研究ネットワークを牽引するということを明記しているところでございます。
 8ページ目を御覧ください。現在、国際卓越研究大学の選定に当たっては、有識者会議としてアドバイザリーボードを立ち上げ、4月以降議論を重ねているところでございます。第1回に出席した永岡大臣の発言も踏まえ、世界最高水準の研究大学の実現に向け、大学側との対話を通じ、変革への意志と将来構想を引き出し、挑戦を後押ししていきたいと考えているところでございます。
 9ページ目に審査の流れを掲載しております。6月には申請のあった全10大学との面接審査を実施し、7月には、研究現場の状況等を把握するため、3大学の現地視察を実施することとしております。引き続き、申請のあった10大学との対話を継続し、選定に必要な手続を進めていき、秋頃には選定の状況を公表することを予定しております。随時、選定の状況については、この強化委員会にも御報告させていただければと思っております。なお、先ほどの骨太の方針でも指摘されているとおり、必要な規制緩和についても検討を重ねております。
 10ページ目に、今回の公募時に複数の大学から要望のあった規制緩和事項を中心に記載しております。現在はリストアップするにとどまっておりますが、今後、アドバイザリーボードにおいても、国際卓越に限定されず、研究大学として必要な規制緩和についても積極的に検討していく予定としております。こちらについても今後の対処方針についてこの場でも報告させていただくことを考えております。
 続いて、11ページ目を御覧ください。地域中核・特色ある研究大学の振興です。
 12ページ目に統合イノベーション戦略2023の抜粋を記載しております。こちらも、強化委員会の議論も踏まえ改定が行われた総合振興パッケージに基づき、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業の推進に加え、学際領域展開ハブ形成プログラム等の円滑な実施や、共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)を通じた産学連携拠点の着実な構築、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に取り組んでいきたいと考えております。
 各種事業の進捗については以降のページにも記載されておりますが、15ページ目、例えば地域中核・特色ある研究大学強化促進事業につきましては、現在、日本学術振興会(JSPS)において先月から公募を開始しており、7月に締め切った後、8月以降、審査を開始する予定です。年内には採択大学を決定する予定ですが、こちらの状況についても随時強化委員会にも御報告させていただく予定でございます。
 また、18ページ目には、学際領域展開ハブ形成プログラムの公募についてまとめております。こちらは6月末に、今月末に公募を締切り、秋には事業開始を予定しているところでございます。
 その他、WPI、共創の場についても現在、審査、また公募を行っているところでございますが、前回吉田委員から御指摘ありましたが、各大学が特色を伸ばすためにも、引き続き関連事業の拡充に努めていきたいと考えているところでございます。
 事務局からの説明は以上です。

【千葉主査】  ありがとうございます。
 それでは、ただいまの御説明に関連したところで皆様から御質問あるいは御意見いただきたいと思いますが、どなたでも結構です。手を挙げていただければと思います。野口委員、お願いします。

【野口委員】  説明、ありがとうございました。私は特に地域中核の13ページの箇所を指摘したいです。冒頭、3ページにもありました、博士を志す環境を実現するのはとてもこのスキームでも重要だと思っており、特に一番下の基盤的活動の強化の箇所です。そこから上層については固有の事業等の名称がありますが、この基盤的活動の強化がとても重要と思っています。先般、募集を締め切りました大学・高専機能強化支援事業もここに当てはまると思います。その上で、学部等の再編については支援1であり、組織特性を見て、私立・公立のみに限った学部ということについてはとても良いと思います。ただ、実質的に研究力のボトムを上げていくには大学院にフォーカスした再編が非常に重要で、特にそこが遅れている私立・公立を強化していかなければならないと思います。つまり、支援1の対象は、定員の充足率等も含めて悩んでいる私立・公立も一定数あると思うので、大学院の再編まで拡張して、ボトムを強化していくのが重要ではないかと思います。その点について少しお伺いしたいと思いました。
 以上です。

【池田局長】  高等教育局長の池田でございます。ありがとうございます。
 今御指摘の点、ここではどちらかというと研究面に着目してまとめてありますけれども、おっしゃるように、教育面、人材育成の観点から、3,000億円の基金もこれとリンクさせて考えていかないといけないと思っております。支援1は、おっしゃるとおり、公立・私立大学の学部への支援で、支援2のほうで国公私立大学の大学院を中心とした支援をということになっておりますので、まずは支援1のほうで支援を受けつつ、大学院を本気で充実させるという構想をお持ちの場合は、もう今回まさに審査に入っておりますけれども、支援2のほうでチャレンジしていただくことができると思っています。

【野口委員】  どうもありがとうございました。やはり支援1で射程に入れているところが私立・公立の学部再編ということですので、今後の進捗見ながらぜひ御検討いただければと思いました。
 以上です。

【千葉主査】  野口委員、ありがとうございます。
 それでは、木部委員、お願いします。

【木部委員】  私も13、14ページの地域中核・特色ある研究大学の振興のところで御質問いたします。14ページに図がありますけれども、大学が連携するということが非常に重要だと思いますが、それを、大学全体として取り組む、そういう形で本当の連携の形につくり上げていく必要があると思います。今までも連携はしていると思います。個人個人の研究者同士は連携していますけれども、それが大学としての連携にまで大きく発展していないことが多かったと思うんです。もとは個人同士の連携研究がベースなのかもしれませんけれども、それを大学として支援するというような形にする必要があると思います。それをどういうふうに形成していくかということについて、もしお考えがあればお伺いしたいと思います。

【梅原室長】  ありがとうございました。

【千葉主査】  お願いします。

【梅原室長】  
 まさにご指摘の点が非常に重要な肝だと考えております。単なる共同研究の延長ですとか拠点事業の延長ではなくて、今回の基金といいますのは、提案大学でまず自分で研究戦略をしっかり立てていただいて、その上で、足りないものは何なのか、今後伸ばしていきたい分野はどこなのかというようなことを考えていただいた上で、大きな視点で連携を考えていただくことを想定しております。それは公募要領の中にもしっかり明記しておりまして、そのような観点でしっかり審査をしていく予定です。

【千葉主査】  木部委員の御指摘、大変重要な観点だと思うんですけれども、連携するといっても、実際は形だけになってしまう可能性がある。過去そうだったものが散見されるということだと思うんですけど、この辺り、恐らく申請する大学のかなり踏み込んだ、独創性というか、これまでにない考え方とか、そういうものを入れていくというところが重要なのかなと思うんですけど、木部委員、そういうことでしょうか。

【木部委員】  はい、そうですね。そのためには、やっぱり大学としてこの取組を取り上げていただきたい。もちろん大学として申請することにはなるんでしょうけれども、個人ではなくて学部、あるいは学部だけではなくて、複数の学部に及ぶような工夫を大学としてもしていただきたいなと思っています。

【千葉主査】  ありがとうございます。私もそう思います。特にこういう申請というと、どうしたら申請の理念、公募の理念に合致するんだろうというふうについ大学の人間は考えがちなんですけど、それよりももっと、本来はこうあるべきだから我々はこうするんだというような、かなり主体的な考えに基づく発想と提案というのがますます大事になってきているなと思います。要するに、過去のことは反省材料としていろいろありますけど、未来のことは恐らくよく分からない部分が多い。そこでこそ、やはり大学の力を示す非常に重要なところかなと思いますので、ぜひ御参加いただいている皆さんも新しい観点で御提案されたらいいのかなと私も思っています。
 それでは、吉田委員、お願いします。

【吉田委員】  ありがとうございます。今のに関連して、木部委員の意見に私は大賛成で、後のディスカッションで少し上げてもらってもいいかなと思っていたんですけれども、連携の方法、個人レベルの、プロジェクトレベルの連携から大学レベルの連携、その究極がやっぱり1法人複数大学化であるとか、今回、東工大とか東京医科歯科大学がやられた大学の統合という形になるんですね。だから、そこら辺のところはまだ新しい仕組みでできたばっかりなので、その評価の方法とかいうのは全くできていないのが現状ではないかと思いますので、それに対する評価をどうしていくかというのは今後ぜひこの委員会でも考えていただければなと。とかく、大きな大学、小さな大学、一緒になった場合に、小さな大学が消えてしまうようなイメージがありますので、そういうところの配慮とか、あるいはどう評価するかということをぜひ皆さんで議論いただければと思いました。
 以上です。ありがとうございます。

【千葉主査】  吉田委員、どうもありがとうございます。
 ほかに、ただいまの御説明全般で、どの部分でも結構ですけど、御意見等いただければと思いますが、いかがでしょうか。ちょうど地域中核・特色ある研究大学は今まさに申請の準備中のところも多いと思いますので、関心の高いところかなと思いますが、これを実質的に非常に意味のあるものにできるかどうかというところ、まさにこれは提案するところの構想力にかかっている部分がありますので、ぜひそのヒントにもなるような御意見があればありがたいと思いますが、いかがでしょうか。藤井先生、どうぞ。藤井委員。

【藤井委員】  この件はこの場でもずっと議論してきました。具体的な事業を進めるのはもちろんですが、やはりこの地域中核・特色ある研究大学となる大学そのものの組織的な部分を強化していただくことも重要です。特色ある活動を地域も含めて進めるに当たり、今の状況では、様々な事業を引き受けて実施すればするほどしんどくなってしまう。大学そのものの組織あるいは体制自体、つまり特色ある事業を展開していくための地力を強化することに予算を使っていただくべきとこの場でも繰り返し申し上げてきました。今後この事業の採択作業に入っていく過程でも、その点をしっかり見極めながら進めていただければと思います。

【千葉主査】  非常に本質的なところ、御指摘いただいて、ありがとうございます。大学そのものが強くなるということを前提に設計していかないと、補助金を頂いて、また次のということをやっていくと、どんどんやるべきことが増えてしまって、実際は大学の全体のアクティビティーが落ちてしまうということも危惧されるというので、ここはかなり工夫が必要ですね。
 那須委員、どうぞ。

【那須委員】  先ほどの皆さんの意見に私も賛成で、これは単なる補助金ではないという感覚で、研究力の強化というキーワードで、これはもう大学が変わっていかないといけないということであり、今、私どもも財務とか総務とか総力を挙げて、本来あるべき姿はどうだということでやっておりますし、私はこれはもう学長の覚悟を試されているんじゃないかという、要するに、学長が本気でやる気なのかとか、学内の予定調和をやって、適当なところでやることはあり得ないと感じています。そういった意気込みでやはり地域の大学がやっていく必要があるというような認識を持っております。
 以上です。

【千葉主査】  ありがとうございます。非常に本質的なところに今議論が集中してきているなと思うんですけれども、西村委員、どうぞ。

【西村委員】  ありがとうございます。ほとんど先生方がおっしゃっていることに賛同ですけれども、私ちょっと大学経営も関わったりとか、いろんな審査とかいろいろ関わっていてよく思うのは、客観的な自分たちの立ち位置を見ていない可能性がある。社会を変えなきゃいけないんですよねと、研究成果をもって。そのことを内部の中の積み上げとか内部の組替えで、もしくは外部との組合せをしても、自分たちの範疇での考え方で本当に成り立つのか。本当は解かなきゃいけないところから最適解を、チームをつくらなきゃいけないけれども、私、前のちょっと審査を見ていて、そういうところがあまり見えなかったんですね。だから、大学のための大学改革予算ではなくて、社会のための大学改革予算なんだという視点がちょっとやっぱり、いずれの予算に関わっていても、低いような気がするんです。今回のものも、ちょっと精神論になって申し訳ないんですけれども、客観的に見て自分たちの存在は本当に社会に必要になっているのか、役に立っているのか、どう社会を変えていくインパクトを出しているのか、これは国際的に見て、この予算をかけて、本当にその成果が出ているのかという視点がどこかにあると、そのことを本当に内部だけでできるのかということがちょっと危惧するところにはなります。
 すみません、ちょっと取りとめのない言い方ですけど、以上になります。

【千葉主査】  ありがとうございます。これは研究成果を活用するというときにも研究者が陥りやすい発想で、自分はこういう研究が得意だからそれを使って何かできないかなという、そんな発想では実際は社会を動かすようなところにつながらないでしょうということと同じで、大学もそういう考え方が必要ですねということだと思います。大変重要な観点、ありがとうございます。
 大野委員、お願いします。

【大野委員】  どうもありがとうございます。連携など非常に多様な方向性が出てくると思います。それ自体はとても歓迎すべきことだと私は考えています。地域の特性だったり、強みや特色がそれぞれありますので、今おっしゃられた社会的なインパクトも含めて、それらをいかに最大化して実現していくかということが問われているわけであります。多様だということは、それぞれの大学あるいは大学連携したチームがいろいろな段階にあるということです。そういう意味で、ここの図にも伴走支援などが書かれていますが、伴走する側の深い理解、つまり、そのそれぞれのチームや大学が、社会に貢献し発展していくあり方に対する深い理解が強く求められる仕組みになっていると私は理解しています。藤井先生がお話しになられた、大学が多くのものを引き受ければ引き受けるほど研究する時間もなくなるといった状況を過去のものにするという強い意志も、この事業で実現してほしいことの一つです。
 以上です。ありがとうございました。

【千葉主査】  どうも大野委員、大事な御指摘をありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。
 非常にまとまった形で、重要な方向性を示す御意見をいただけたと思っています。ぜひ、これは今日本全国で視聴いただいていると思いますので、参考にされると、非常に有意義かなと思いますので、よろしくお願いいたします。
 そうしたら、事務局のほう、次の議題に移ってよろしいですかね。

【馬場室長】  はい、大丈夫です。

【千葉主査】  では、お願いします。

【馬場室長】  それでは、次の議第、継続した話になりますが、資料2-1を御覧ください。多様な研究大学群の形成に向けて、強化委員会における主な検討事項等について御説明させていただきます。
 2ページ目に前回配付した検討事項等についてまとめております。本日は前回に引き続き、4番目、総合振興パッケージの改定に際して示された羅針盤を踏まえ、各大学がそれぞれのビジョンの下、適切な研究マネジメント体制を構築し、研究環境を持続的に向上できる必要な仕組みであったり、5番目、振興パッケージと大学ファンドを連動させ、複数組織の連携を促進し、人材の流動性が高いダイナミクスのある研究大学群をシステムとして構築するなど、我が国の研究大学群のあるべき姿に向けて、必要な取組について議論を重ねていければと考えております。
 次のページ、中央を御覧ください。これまでも説明してまいりましたが、例えば、昨年度までこの10年間実施してきました研究大学強化促進事業の事後評価で効果が実証された取組であったり、創発的研究支援事業における若手研究者をめぐる研究環境の改善の取組の好事例に加え、この後プレゼンいただきますNISTEP定点調査2022における大学研究力強化に関わる回答の状況であったり、また、前回強化委員会、本日御欠席ですけど、小林委員のほうからも若手研究者の生の声という要望がありました。それも踏まえまして、この後、小野委員から説明いただきます日本学術会議若手アカデミーの提言等も踏まえて、ぜひこの委員会において、適切な研究マネジメント体制の構築、研究環境の持続的向上に向けた方策というのを議論していければと考えております。その上で、我が国の研究大学群のあるべき姿として、研究大学100年構想を念頭に、総合振興パッケージで示された大学自身の取組の強化に向けた具体策に充実・追加すべき取組であったり、我が国全体の研究力向上を牽引する研究システムをどのように構築していくかということについて議論を重ねていきたいと思っております。真ん中に小さく書いてある例につきましては、例えば、流動性が高く、開かれた持続可能な研究環境などは、この後、若手アカデミーの提言にもございますが、テニュアトラック制度の確立であったり独立支援の充実、挑戦、越境、そういったものを促進する制度については、個々の大学で取り組むだけではなくて、日本全体、研究大学が備える要素として明確化していくということが必要ではないかと考えております。前回、研究大学100年構想、Jリーグ百年構想をお示ししましたが、かつて30年前10チームだったクラブチームがもう今60チーム以上のクラブチームを抱えているのと同じように、今回、骨太の方針で厚みということも強調されましたが、ぜひこの強化委員会の議論も踏まえながら、大学ファンドや地域中核基金等も連動し、研究大学の多様性や厚みを伸ばす方策についても議論していきたいと考えているところでございます。
 4ページ目には、本日の議論に関係する前回の主な意見をまとめております。
 5ページ目には、研究環境の改善の事例として、この10年間事業を実施してきた研究大学強化促進事業における取組例をまとめております。例えば、左上の東北大学のURAが主導する国際研究ネットワークの構築については、この後御説明があります若手アカデミーの問題意識として、連携を促進する人材の育成、国際化、そういったものの確保にもつながる取組かと思っております。また、右上の岡山大学の事例も、ヨーロッパ出身の海外のURAの方が中心となってEUのファンディングを獲得したり、IR分析によって大学が強みを持つ研究領域を設定して重点支援を実施している事例など、こういったものは他大学でも参考になる取組かと思いますが、やはり今の時点ではまだ個々の大学にとどまってしまっているという部分があるかなと思います。こういった部分について、例えば若手を大切にする、博士課程学生を重要にする、スタートアップ支援を拡充する、そういった部分については、研究大学の求める要素として明確化していくことも今後必要ではないのかなと考えております。
 その他、8ページ目、9ページ目には、総合振興パッケージに記載されている大学自身の取組の強化に向けた具体策をまとめております。この2年間、前期の強化委員会の議論も踏まえてまとめられたものですが、この後のNISTEPや若手アカデミーの議論も踏まえ、さらなる充実に努めていきたいと考えています。特に③番、組織間連携・分野融合による研究力の底上げに関しては、先ほど皆様から御議論もありました、連携すること自体が目的ではないはずであると。大学として何をしていくか。その上で、国際卓越研究大学、大学共同利用機関、そういったものがハブとなりながら、全国の中核の研究大学との連携を強化した上で、人材の流動性向上、共同研究の促進、リソースの共有、こういったものもシステムとして構築していくことということが今後求められると我々認識しております。この辺り、前回の強化委員会で十分議論が終わらなかったところでもあるので、継続して議論を重ねていければと思っています。
 以降の資料につきましては、前回も御説明した資料と重複するので、説明は省略させていただければと考えております。
 この後、NISTEP、科学技術・学術政策研究所、また小野委員の御説明も踏まえながら、議論、御質疑いただければと思っております。
 事務局からの説明は以上です。

【千葉主査】  では、一旦ここで御意見をいただく形でよろしいですかね。

【馬場室長】  まとめて意見で大丈夫だと思います。

【千葉主査】  いかがでしょうか。御質問でも構いません。

【馬場室長】  千葉主査、申し訳ございません。もしよろしければ、この後の科学技術・学術研究所と小野委員のプレゼンを聞いた上で御議論したほうがよろしいかと思います。

【千葉主査】  続けて、分かりました。それでは、全部、御説明を続けていただければと思います。よろしくお願いします。

【馬場室長】  では、この後、大山所長のほうから御説明させていただければと思います。お願いいたします。

【大山所長】  ありがとうございます。科学技術・学術政策研究所の所長の大山でございます。本日、私のほうからは、NISTEPの定点調査について、大学の研究力に関連した現状などにつきまして御紹介させていただきます。
 資料2ページを御覧いただきますと、構成としては大きく3部構成となっております。最初にまず、この定点調査はどういう調査かという御紹介。それから、2点目として、NISTEPの調査の結果のポイントについて3つの観点から御紹介したいと考えております。また最後には、この調査のまとめと示唆ということでお話をしたいと思います。
 まず、定点調査はどんなものかということですが、資料4ページ目を御覧ください。科学技術の状況に係る総合的意識調査ということでして、第一線で研究開発をやっておられる研究者の方あるいは有識者の方の意識を通じて科学技術等の状況変化を定性的に把握するということで、日銀短観の科学技術版といったような性格のものでございまして、毎年1回、同一集団にアンケート調査を実施しておりまして、今回御紹介しますのは22年の9月から12月に実施したもので、回収率92%となってございます。調査対象は、左側にありますように、研究者1,500名ほど、また有識者、大学のマネジメント層の方々等800名となっております。調査の項目につきましては、その右にございますように、研究人材、研究環境等の6項目と、また加えて深掘りの質問といったようなこともやってございます。
 5ページ目を御覧ください。調査に当たりましては、大学をグループ別に分類しまして、また、結果の表示については指数で、状況が十分かどうか、あるいは不十分かどうか、それを示しています。大学のグルーピングについては、論文数のシェアが、2015年―2019年の自然科学系の論文数シェアを用いてグループ化しております。第1グループがまず、論文数シェアが1%以上のうちの上位4大学ということで、大学名ありますように、大阪、京都、東京、東北といった大学。第2グループにつきましては、論文数シェア1%以上で、今の上位4大学を除いたものということで、金沢ですとか九州、名古屋、北海道、また私学ですと早稲田、慶應といったようなところでございます。第3グループは、論文数シェアが0.5%以上1%未満ということで、御覧のような大学。また、第4グループは、0.05%以上0.5%未満というシェアでございまして、記載のような大学ということになってございます。指数で結果を表示しておりまして、数字が高いほど状態がいいとの認識でして、さらに分かりやすくということでお天気マークで表示しております。5ページ目の右下にありますように、十分という認識で、5.5以上の指数ですと晴れマーク、状況が厳しくなってまいりますと曇りになり、雨になり、雷になりということで表示させていただいております。
 では、結果の内容について御紹介いたします。大きく3つの観点ということで、まずは若手の研究人材について、続けて学術研究・基礎研究の状況と、最後、3点目として、大学のグループ、立場によって認識に特徴が表れたものと、大きく3つについて御紹介いたします。
 まず、若手の研究者、若手人材についての状況ということで、資料8ページを御覧ください。若手研究者について、問いの101、102ということで、環境整備ですとか、あるいは研究者の数というところでは、大学グループの第1グループの指数が相対的には高くなってございます。103の若手の無期雇用の拡充につきまして、ここは第1グループで雨が降っているということで、相対的には指数小さいということですので、これから考えますと、第1グループの大学では、自立的に研究開発を行う若手研究者は一定数いるのだけれども、その方たちに無期雇用を提供できていないという状況が示唆されるということでございます。また、問いの103、無期雇用の拡充では、全体的に指数の低下が見られます。括弧内が、前回、前年の調査からの変化、差分でございますが、全体的に低下が見られて、不十分ということでございます。また、このお天気マークの見方ですが、セルの背景が赤くなっているところ、これは0.3以上下降した場合に背景が赤になってございます。
 続けて、9ページを御覧ください。若手人材の状況ということでございますが、問いの105の指数が他の質問と比べても小さく、雨が降っていたり雷ということで、また21年度から下降傾向で、不十分ということでございます。続いて博士後期課程の進学者の数でございます。問いの106、107について、進学に向けた環境整備ですとかキャリアパス多様化への環境整備ということでございますが、この辺りにつきましては第1・第2グループの大学が第3・第4グループの大学の指数よりも大きいという傾向が見てとれるわけでございます。
 資料10ページを御覧ください。こちらも参考ということで、こういった若手人材に関しての状況の自由記述でお書きいただいたことでございます。若手研究者の状況について、JSTの事業などの申請、活用ということもあるといった御意見のほか、他方で、やはり研究以外の負担が大きくて、雇用条件も不安定といったようなところの御意見、若手が実績を積みにくいといったような御意見もあります。また、研究者を目指す若手人材の状況につきましても、やはりJSTなどの補助で改善はされてきているというのはあるけれども、給料はやはり企業に就職したほうがいいということ、あるいは、博士に進んでほしいけれども、キャリア展望を描けないという声が聞かれるといったようなことが見てとれます。
 続きまして、大きく2つ目の結果の御紹介で、学術研究・基礎研究の状況とその背景の課題ということでございます。
 資料の12ページからを御覧ください。まず、学術研究・基礎研究の状況でございます。挑戦的研究を行う環境、あるいは基礎研究の多様性、国際的に突出した成果やイノベーションへの接続と、全ての質問に関して全ての属性の方が21年度に続き指数として4.5未満で不十分という厳しい状況、雨マーク、雷マークというのがついてございます。他方で、明るい面としては、JSTの創発ですとか科研費の改革で改善も見られるというような御意見も多数見受けられたというところではございます。十分度を下げた理由の例として、12ページ右下にありますように、研究資金、研究時間の不足ですとか、選択と集中が多様性を阻害するといったことも見てとれました。
 また、資料の13ページ、基盤的経費・研究時間の状況ということでございます。ここも全ての質問で多くの属性で不十分ということで、質問としては、基盤的経費の確保や研究時間確保の取組といったことだったわけですが、こういった不十分という傾向は過去のNISTEPの定点調査からも継続してございます。また、研究時間については、また次ページでも御紹介いたしますけれども、いろんな言及もあるということで、ただ、これは非常に重要な、科学技術・イノベーション創出の様々な面に影響を及ぼす事項ということでございます。
 続けて、14ページを御覧ください。研究時間に影響を及ぼすような業務負担についての御意見で、2021年度から変更されたものの理由でございます。肯定的な影響としては、デジタルツール活用、バイアウトの制度の導入等ということへの言及もあったわけでございますが、他方で、否定的な影響について言及された理由としては、大学研究所内の業務の非効率、人員不足ですとか手続の非効率、あるいはデジタルツール導入の失敗ですとか研究費申請に係る業務の課題性といったようなこと、また手続の負担が国際連携を阻害しているんじゃないか、研究時間低下が研究力を低下させているんじゃないかというようなことなどについても御指摘の御意見がありました。
 続けて、15ページ、ここも参考ということで、自由記述の回答例でございます。学術研究・基礎研究の状況については、科研費の改革、JSTの創発はいい制度だといったような御意見がある一方で、他方で、研究費申請のほとんどが実績重視ということで、新課題探索への自由度がほぼないといったような御意見、円安、物価高で資金足りないといったような御意見があります。また、基盤的経費の確保の状況についても、一方では、学長の戦略経費などで、挑戦すれば可能性があるという御意見もありますが、他方では、基盤経費が少ないため、研究費の申請、面接の準備に、膨大な時間が取られるということ、あるいは外部資金頼みで、大学の研究費だけではとても研究できる状況ではないといった御意見などが自由記述の中でも出ているという状況でございます。
 さて、それでは、次、16ページ以降で、大学のグループあるいは立場、マネジメントか研究者かといった立場によって御認識に特徴が表れたという事項について御紹介いたします。
 まず、17ページからでございます。外国人研究者の状況ということで、その受入れ・定着の取組がどうかということで、これは大学グループ、第1グループの指数が相対的に高くて、第2グループ、第4グループと指数低下傾向というのが見てとれます。これも21年度、前回からの指数の変化を見ますと、第2グループにおいて指数が下降しているということで、組織、部局によって外国人研究者の受入れ・定着の状況悪化という見方があるということが示唆されております。
 資料の18ページを御覧ください。ここは研究者の業績評価の状況でございます。これも業績評価の観点の多様化ですとか結果を踏まえた処遇ということが質問項目になってございますが、ここで、大学の自然科学系の研究者全体の指数は大学マネジメント層の指数に比べて小さいという状況になっております。ここから、大学マネジメント層の取組が現場の研究者の方にとっては必ずしも満足なものではないといったようなことですとか、マネジメント層が実施しておられる業績評価の結果の使途が現場の研究者の方には見えていないといった可能性も見受けられます。問いの113、処遇のほうの指数が評価の観点の多様化の質問よりも概して低いということを見ますと、業績評価の結果を活用する段階に相対的に課題があると捉えられているということも見てとれます。
 続きまして、19ページ、研究施設・設備の状況です。質問項目としては、施設・設備の程度ですとか共用の仕組み、利用のしやすさの程度ということですが、いずれの質問でも、第4グループの指数が小さいという傾向が見てとれます。研究の施設・設備の状況が相対的にはよくないということがうかがえるかと思います。また、21年度と比べまして、第2・第3グループで指数が下降傾向にあるということも見てとれます。
 続きまして、資料の20ページでございます。知識に基づいた価値創出の状況ということです。問いの401、402、こちらは民間企業と連携を行う取組ですとか、企業との連携を通じた着想の研究開発への反映についての質問でございますが、この401、402に比べまして、403、404といった、ベンチャー企業を通じた知識移転、新たな価値創出、あるいは民間との人材交流等についての質問で、指数が相対的には小さいと、厳しいという状況になっておりまして、組織間での資源ですとか人材の異動を伴う活動でより課題が認識されているということが見てとれます。また、いずれの質問でも、第1・第2グループの大学群のほうが第3・第4グループよりも相対的には指数が大きいというところが見てとれるところでございます。
 それから、続けて、21ページでございます。地域創生の状況についてということでございます。こちらも、質問項目407が地域創生に資する人材育成、408が地域創生に資する研究、イノベーションの創出ということになりますが、いずれの質問でも、大都市圏以外の大学が多く含まれます第2・第4グループの指数が相対的に大きいものとなっております。大学の研究者の方々よりもマネジメント層の方の指数が大きい、晴れマークとなってございます。また、問いの408におきましては、第4グループで2021年度と比べて下降しているということでございます。十分度を下げた理由に関しましては、地域創生に関連する取組が見られない点、あるいは機関の目的とやや外れているといったような意見もありまして、大学や機関の地域貢献へどういう方針をお持ちかということによっても差が出るところであるというのが見てとれます。
 それから、続けまして、22ページを御覧ください。大学経営の状況についてでございます。こちら、質問としては、研究あるいは経営情報を収集・分析する能力ですとか、自らの個性等を生かして自己改革を進める取組ですとか、多様な財源を確保する取組という質問項目でしたが、いずれの質問でも、第1グループの指数が相対的に大きいということで、大学グループによって大学経営に関する取組の進展度合いが異なるということが見てとれました。また、研究者全体で見ると、括弧内を見ていただきますと、21年度と比べて下降傾向ということでございまして、他方で、大学マネジメント層では上昇傾向ということが見てとれるわけでございます。
 続けまして、23ページに参りまして、ここでは大学の研究面から見た強み・特色をさらに伸ばすための重要な支援・取組についてお聞きしたところでございます。大学グループ、それから、研究者か、あるいはマネジメント層かというお立場によって、ここの重要な支援・取組についての認識、上位2位までに入る取組について、異なっているというところでございます。大学の研究者とマネジメント層、上位に選んだ項目で、①②、卓越した能力を有する研究者の確保、あるいは外部資金を獲得するためのサポートがあるという共通点も見られますが、相違点もございまして、例えば⑥⑦、設備・機器等についてでございますが、第1グループですと、この⑦の運用を行う技術職員の確保、こちらが高くなっておりますが、他方で、第3・第4グループのほうで申しますと、⑥のほう、まずは設備・機器のインフラの導入と、こちらが高い位置づけになってございます。また、マネジメント層で見てみますと、研究成果展開の企業との連携体制強化、これが高く挙げられているというところでございます。また、1位に挙げられているところでも、第1・第2グループでは卓越した研究者確保、第3・第4グループ及びマネジメント層では外部資金獲得のサポートというところも若干違ってはございます。
 続きまして、24ページでございます。ここも、これらに関連しての自由記述のところでございます。知識に基づいた価値創出の状況では、一方では民間企業との連携が増えているというようなところがあるんですが、他方では、地方に多い中小企業には負担が大きい傾向といったようなこと、また、大学の経営の状況に関しましては、執行部が積極的に資金・成果・ブランディングについて教員に研修を通して伝えていますよという面がある反面、他方では、アンケート調査などはあるけれども、情報が十分フィードバックされていないというようなことですとか、改革が頻繁で、十分な評価がなされていないといった御意見もございました。
 最後になります。この定点調査のまとめと示唆ということで、具体的には26ページを御覧ください。大きく3つの項目について御紹介したところをまとめてございます。
 若手研究者・研究者を目指す人材については、実績を積んだ若手研究者が安定的ポジションを得られていないという状況への示唆、また、博士課程に進学をしようとする学生のマインドにもこれが影響を与えているということが見てとれます。他方で、博士課程進学者への経済的支援については環境整備の進展についての指摘もあったということで、実績を積んだ若手に安定したポジションを提供すること、また、優秀な学生の博士課程進学を継続して後押しすることの必要性が見てとれると思います。
 大きく2点目、学術研究・基礎研究の状況と課題ということでございます。学術研究・基礎研究の評価、つまり環境づくりですとか取組が不十分だという認識が継続しておりまして、背景として研究時間や研究資金不足といった要因が示唆されています。ここについての示唆でございますが、研究力の基盤として、研究時間と安定した研究資金の確保の優先順位は大変高いということでございます。
 3点目、大学グループ、第1から第4のグループですとか、立場、研究者かマネジメント層かによって認識に特徴が表れた事項についてでございますが、御紹介しました外国人の研究者の受入れ、研究施設・設備、知識に基づいた価値創出、地域創生、大学経営、こういったところで大学グループ間での差異が見られますし、また、研究者の業績評価ですとか大学経営などについては、立場による認識にも差が出ております。大学の研究面から見た強み・特色をさらに伸ばすための重要な支援・取組につきましては、大学グループごとですとか、マネジメント層と研究者という立場ごとに優先順位に特徴も見られたということでございます。これを踏まえますと、やはり特徴を踏まえた支援・取組が有効だということでございます。また、大学内において、研究面から見た強み・特色を伸ばすことに向けてマネジメント層と研究者の方々の共通認識をさらに醸成していくということも求められている、重要と見てとれるわけでございます。
 私からは以上でございます。

【千葉主査】  説明は以上でしょうか。馬場さん、以上でしょうか。

【馬場室長】  ありがとうございます。この後、小野委員から学術会議若手アカデミーの提言を説明いただいた後、ディスカッションができればと思っております。よろしければ、小野委員のほうに御説明の機会、よろしくお願いいたします。

【小野委員】  現在、若手アカデミーで中間取りまとめを行っております「2040年の科学・学術と社会を見据えて取り組むべき10の課題~イノベーション・越境研究・地域連携・国際連携・人材育成・研究環境~」、こちらの内容について御紹介させていただきます。日本学術会議連携会員で、25期若手アカデミーの幹事をしております、豊橋技術科学大学の小野です。よろしくお願いいたします。
 まず、若手アカデミーですが、日本学術会議に設置されている若手の組織になります。人文・社会科学と自然科学にまたがる多様な分野にわたる45歳未満の研究者で構成しています。3年を1期とし、現在25期です。51名のメンバーで構成しています。8つの分科会を中心に、分野横断的かつ公的な若手研究者の組織としてのシンクタンク活動・発信、日本学術会議の活動や発信への若手研究者視点での反映というところを主な目的、活動としています。
 25期において設置している分科会がこちらになります。イノベーション、越境、地域活性化、国際連携、人材育成、業界体質の改善、こういったテーマで分科会の活動を行っています。
 こちらは今期取り組んだ幾つかの取組の紹介になります。研究者評価に関する若手研究者の幅広い意見の取り込みですとか、イノベーションと地方創生に関する地域の当事者、イノベーションアクセラレーターとの意見交換、こういったことを継続的に行っています。また、日本学術会議の審議に参加することで若手研究者の意見を反映させていただいています。それから、世界の若手研究者との議論も活発に行っています。こちらは今日参加しています広島大学の新福先生などが中心になって取り組んでくださっています。
 25期若手アカデミーでは、今後20年の科学・学術と社会を担っていく当事者であるという強い認識の下、20年後の科学・学術と社会を見据えたリモデリング戦略を社会に提示するというミッションを当初より掲げておりました。
 3年弱にわたる活動を基に現在こちらの取りまとめを行っているところです。今後、学術会議から意思の表出という形で発出を予定しております。今日も様々な視点から御議論いただき、それを踏まえて取りまとめを行っていければと考えています。
 我が国の未来においてイノベーション創出が非常に重要であり、このイノベーション創出において科学・学術の立場から貢献することが強く期待されていることは広く共有されていることかと思います。若手アカデミーでは、こうしたイノベーション創出を今後20年にわたって科学・学術の立場から支えていくために、既存の基盤的あるいは伝統的分野における知識・技術の蓄積を大前提としながらも、イノベーションのフィールドとしての地域連携、越境研究、国際連携をさらに促進していくことが重要である、と考えております。しかしながら、こういったイノベーションの土壌は弱体化しています。今こそ研究環境・業界体質を改善し、人材育成・キャリアパス整備を推進しなければ、こうした越境研究、国際連携、地域連携は推進されず、今後20年間にわたる我が国のイノベーション創出も期待できない、というのが若手メンバーの強い危機感です。
 では、何が我が国のイノベーション創出を阻んでいるのか。これについて分野を越えて若手メンバー間、また、様々なステークホルダーと共に議論してきました。阻害要因を整理したものがこちらになります。個々には様々なところで指摘されているものもありますが、そういったものがどのように関係しあって現在のような状況になっているのか、全体を俯瞰しながら議論を重ねてきました。
 これを少し整理したものがこちらになります。過度に競争的でハードワークを要する研究環境が一つの大きな要因となり、研究者人口の減少、研究力の低下といった負のスパイラルを招いています。さらに分野によっては学問の存続危機も指摘されています。研究環境の悪化に関しては、研究以外の業務が増加していること、この増加の原因にもなっている基盤的経費の削減、研究支援体制の不足、こういったことが大きな原因になっています。さらに、過度に定量的で近視眼的な研究者評価が拍車をかけています。また、研究者人口の減少と研究力の低下については、博士号取得者のキャリアが困難であること、他の主要な先進国と比べても大学や大学院進学率が低いこと、そして産官学や学問分野間の縦割りなどが影響しています。こうしたことが絡み合うような形で、真に重要な研究課題に取り組んだり、越境研究を行ったり、あるいは国際連携、地域連携を行っていくことを阻害し、国外への人材流出も招きながら、イノベーション創出を阻んでいます。
 これに対して、今取り組むべき10の課題を整理しています。すみません、最初に説明を忘れていましたけれども、こちらの発表資料に加えて、参考資料に提案の本文が入っていますので、よろしければそちらを見ていただければと思います。50ページ近い資料ですが、本文自体は20ページほど、それから要旨も2ページで入れております。より具体的な内容についてはそちらを見ていただければと思います。
 この10の課題について簡単に説明させていただきます。
 まず、大前提として、イノベーション創出のためには基盤的・伝統的分野における知識や技術の蓄積こそが非常に重要であり、その維持と発展が決定的に重要であるということをまず1つ目の重要な課題として置いてあります。
 2つ目が、越境研究や地域連携に対する評価や支援の拡充です。分野あるいはセクターを越えた学際的な越境研究や地域課題を解決するための学術研究を長期的な時間スケールで的確に評価するシステムの確立、ポストや予算のさらなる措置が急務です。評価に関しては、今期、若手アカデミーで、全国の約8,000名の若手研究者の方からアンケートの回答をいただき、それらを分析して、シンポジウム開催などを通じて議論を重ねてきたところです。不安定な雇用環境に置かれた若手研究者は、組織内の評価、採用人事、直接的なボスの評価、アカデミアの評価など、様々な評価にさらされる中で、生き残りをかけて、非常に敏感に適応策を取ろうとします。そうした中で、過度に定量的な評価というのは、論文数を稼ぐこと自体を目的化しかねない。それによって、挑戦的な研究や国際的な研究、地域連携、越境研究といったようなチャレンジングな研究に取り組むことを躊躇ってしまう、そういったリスクが指摘されています。定量的な評価の問題に関しては、国際的な場でもかなり議論が進んでいて、見直しを求める声が高まっています。評価は、学術の振興や研究者の育成が目的であること、それから、評価の設計に当たっては、組織や研究者個人がそれぞれどうありたいかというビジョン、ミッションに基づいて丁寧に設計していく必要があることなどが若手の中でも議論されてきました。そういったことのより詳細な内容についても、参考資料に整理してあります。
 課題の3つ目、博士号取得者を擁するコアファシリティーの拡充。業務過多の中でも多様な人材が活躍し、重要な研究課題に集中するためには、諸外国と同等の高度な技術者を擁するコアファシリティーの拡充が急務であると指摘しています。施設あるいは設備などのハードだけでなく、人材にきちんと予算配分して充実していく必要があることを強調しています。
 4番目、セクターを越えた共創プラットフォームの整備。アカデミアが産業界・行政・地域社会と連携し、重要な領域横断的課題を力を合わせて解決するとともに、連携できる人材を育成する共創の場の整備が急務であることを指摘しています。マッチングやプラットフォームの構築だけでなく、セクターを越えた柔軟な人事、長期的なインターンシップなども含めて進めていく必要があります。
 5つ目、競争的資金を活用するための基盤的経費の拡充と研究支援人材の増強です。基盤的経費の拡充の必要性については様々なところで指摘されていますが、ここで強調しているのは、基盤的経費の不足や研究支援人材の不足が、もはや競争的資金を十分に活用できないくらいのところまで来ている、という若手の実感です。資金が多少増えても、そのために増える事務、コストのほうが大きくて、競争的資金を獲得しても、十分にそれが活用できないという本末転倒な状況を改善するために、やはりそうしたところの拡充支援が不可欠です。また、他にも幾つか具体例挙げていますが、特に国際連携において、海外からの研究者の招聘、あるいは海外への留学とか海外での研究、こうしたことに関わる事務手続が年々増えているというのが現場の実感です。そうしたところの研究支援人材も重点的に増やしていく必要があります。それから、基盤的経費に関して、教育の視点からも課題を指摘しています。20年後を見据えると、当然、次の若手の研究者育成が重要になってきます。学生を研究者に育成する主な場は研究室です。研究室は大学から配分される運営費交付金と研究者個人が獲得する外部資金、この2つで主に運営されていますが、運営費交付金が削減されていく中で、外部資金を取ってこられない研究室では教育が十分に行えないという問題が生じます。また、外部資金は直前にならないと獲得できるかどうかが分からない、短期的な成果を求める性質がある、そもそも申請コストが非常に高いといったようなところで、中長期的な視点が必要な教育とは相性が悪いという問題もあります。そのため、教育を研究者個人の外部資金に依存するのではなく、教育研究機関からの研究室への配分で支えていく必要があります。質の高い教育・研究によって、次の優秀な人材を育成することが重要です。
 6つ目、科学技術外交に関わるキャリアパスの整備です。若手アカデミーとしてあえてとがった形で入れた項目になりますが、科学・学術分野における国際連携力を強化する人材として、科学技術外交を担える人材のキャリアパスをきちんと整備していく必要があります。他国がつくったルールの下で、相対的に不利な状況の中で科学技術をやっていかなければならないという状況を次の世代に残さないようにしたいという思いで、このような提案を入れています。
 7つ目、過度な経営的視点や失敗を許さない前例踏襲主義からの脱却です。ゼロから1を創り出すイノベーションを支えるために、経営的な視点に依存し過ぎた研究費などのリソース配分を改め、失敗を許容する予算配分や運営を行うことが急務です。
 8つ目は、教育費の家計負担の低減です。先ほども申しましたが、主要先進国と比較しても、我が国は大学進学率が低く、修士号取得者、博士号取得者も少ない状況にあります。さらにそこに人口減少がかぶさっていく中で、イノベーション人材をいかに供給していくか、いかに先進国であり続けるか。博士課程の支援は充実してきていますが、学部生、修士課程の学生も含めて、教育費の負担をさらに減じていくような政策ミックスが必要です。
 9つ目は、アカデミア自身の業界体質の改善です。ハードワークを美徳とするような業界体質を改善し、形式にとらわれず本質を精査して、無駄なコストや自己目的化した活動をアカデミア自らが効率化していくことが急務です。ほかの取組については予算が必要なものもありますが、業界体質の改善については自ら改めていくことができます。具体的な改善提案についても幾つか挙げています。1つ御紹介させていただくと、エフォート管理です。ここ20年間、研究者の研究時間がどんどん減っています。研究者は、研究以外の業務をこなして、残った時間を研究に充てるというのが実態です。そうではなく、研究に充てる時間、エフォートを先に決めておいて、それ以外の時間を他の業務に充てるようにすべきではないか。他の時間で担えない業務については、非常勤の方あるいは外部に委託する、そういうことで対応していくということも考えられるのではないかと提案しています。
 最後は、博士号取得者のセクターを越えた活用とジョブ型雇用の推進です。多様なセクターでの高度専門人材の活用を推進し、雇用の流動性を高めること、そのためのジョブ型雇用の推進が急務です。今後、人口が減少し、組織体制も旧来のものから変わっていく中で、アカデミアだけでなくて、産や官においても外部で獲得した専門性や経験をいかに活用していくかが重要になってきます。それから、研究職の他職種との比較においての優位性や魅力をきちんと明確化していく必要も併せて指摘しています。
 以上が現在、中間取りまとめとして整理している内容になります。
 最後に、イベントについて御紹介させていただきたいと思います。7月2日日曜日、午後に、学術会議主催の学術フォーラムを開催します。今日はこの内容について概略しか説明できませんでしたが、具体的な改善案に踏み込んで、学術関係者、メディア関係者、政策立案者、産業界リーダーらと議論していきます。私たちも、こういう提言を書いたから、あるいはイベントを開催したからといって何かがすぐ変わるとは思っておりません。また、若手研究者の悲惨な状況を何とかしてくれと訴えているわけでもありません。今後、科学・学術、それから社会を担う一当事者として、ぜひ一緒に議論し、取り組んでいきたいという思いが、この取りまとめとなります。フォーラムでぜひ一緒に議論できたらと思っております。会場は東京、乃木坂にある日本学術会議講堂です。ハイブリッド開催ですので、御都合のつく方、御参加いただければ幸いです。
 以上で若手アカデミーの取組について御紹介させていただきました。お時間いただき、ありがとうございました。

【千葉主査】  ありがとうございました。3件通して御説明いただきました。多様な研究大学群の形成に向けてということでの御説明と、それから、NISTEPからの科学技術の現状に係る総合的意識調査、それから、ただいま小野先生に御説明いただきました、2040年の科学・学術と社会を見据えて取り組むべき10の課題ということでございます。これについて、全体を通して、非常に中身の濃い、濃縮されたまとめ、御意見をいただけたと思いますので、ぜひ委員の先生方から御質問あるいはさらなる御提案をいただければと思いますが、いかがでしょうか。野口委員、どうぞ。

【野口委員】  野口です。非常に丁寧なご説明、ありがとうございました。
 私はポイントの一つは、定点調査の小野委員からのご説明にもありましたように、やはり博士のキャリアパスだと感じております。幾つか挙げますと、先ほどNISTEPの説明にありました、ページ10のところの後段にもありますように、JSTのほうで各種補助、つまり、創発事業であるとか学振DCであるとかSPRINGも含めて約1万8,000人の博士の経済的支援も行っているにもかかわらず、NISTEPの別の資料も個別に見ているのですが、博士課程に進学をせずに就職を選んだ理由というのは、経済的に自立したい、社会に出て仕事がしたいというのが非常に大多数を占めていました。一方で、企業側が博士を受け入れると、学士や修士を受け入れた際よりも企業側の満足度が高いというデータもNISTEPの資料にあります。そのような観点から、小野委員の10の課題のところで、4のセクターを越えたプラットフォームの整備や10のセクターを越えたジョブ型雇用というのは、非常に示唆に富んでおり、重要であると思っています。やはり様々なセクター内で混ぜる育成であるとか、社会に博士の専門知識を評価されるような活動も指摘されてのことだと思っております。よりまして、地域中核研究大学事業も踏まえてのことですが、博士キャリアパスを意識した項目を公募事業に設定するや、特に私立大学には文系博士課程所属も多いので、そういったことを意識した観点も必要であると思います。とりわけ小野委員のほうにお聞きしたいのは、この10の課題の4と10のところです。共創プラットフォームの整備というのが急務ということですが、どういうイメージをなされているかということと、あとジョブ型雇用というのが、文科省のほうでもジョブ型研究インターンシップ推進事業を実施していても、その効果のほどがなかなか難しい観点もあると考えます。この4と10に対してどのような推進のイメージを描いているかというのをお聞きしたいと思います。
 以上です。

【千葉主査】  じゃあ、御質問いただきましたので、簡単にお答えいただけますか。

【小野委員】  はい。まず、御質問いただき、ありがとうございます。まず、この4と10はつながっていると思います。4はマッチングやプラットフォーム構築が主で、10が人事に関わるようなところというぐらいのイメージでしょうか。
 共創プラットフォームに関しては、産官学でのマッチングですとか、分野によっては、私、都市計画が専門ですが、大学と民間と行政がそれぞれ人・物・金・情報などの資源を出し合って実際の社会課題を解いていくというようなことをやっています。そうした実効性のあるプラットフォームを構築するというのも一つの提案になります。あと、地域連携という観点から、科学・学術の知見を備えた人材が地域の中で幅広く活躍していけるようなシステムが必要と考えています。そのときに、今大学が取り組んでいる高校生向けの出前講座やオープンキャンパスはあくまでも大学進学が目的化されているため、そうではなくて、高校生、中学生の頃から何か専門的なことを学んで地域で活躍する、その道程に大学が入ってくるというようなイメージでの教育も必要だろうという提案も入っています。それから、ずっとアカデミアにいたのでは、行政の考え方とか民間のやり方が分からず、セクターを超えた越境は難しいので、有給型のインターンシップを促進して、例えば、研究者が一定期間、2年ぐらい国の機関で働くとか、またその逆があったりというようなこと、そういうことをもっと活性化していくべきではないかという提案もしております。
 それから、ジョブ型雇用に関して、1つ具体的な提案として挙げているのは、博士取得者が産官などで活躍できるキャリアを形成するために、例えば大学・研究機関側で博士号取得者の能力を客観化する、他のセクターでは、専門性を活用できる業務内容を構築したり、業務遂行において求める能力に関する詳細な定義するなど、共に新しい仕組みを構築していくことが必要ではないかという提案をしています。

【千葉主査】  ありがとうございます。
 それでは、今大勢手を挙げていただいていますので、まず一通り御意見、質問など伺いたいと思います。山崎委員、お願いします。

【山崎委員】  ありがとうございます。貴重なデータ、ありがとうございました。いろんなことが見えてきたような気もします。
 まず最初にちょっとだけ、確認のための質問なんですけど、NISTEPの御報告の中で、最初の5ページ目のところにグループの区分けの説明がある中のその他グループのところの大学共同利用機関というのは、何だろうな。10%とか1%論文の話とは別に、ここに全部ひっくるめて入れてあるという理解でいいんでしょうかね。まずそれをちょっと教えてください。

【伊神センター長】  NISTEPの担当の伊神と申します。
 今の御指摘のとおり、大学共同利用機関につきましては、機械的にその他グループに含んでございます。

【山崎委員】  特に論文の業績がどうのこうのとは無関係に、そこにひっくるめて入れてあるという理解でよろしいですか。

【伊神センター長】  そうですね。そういうことです。

【山崎委員】  ありがとうございます。最初の前半のところでもちょっと本当は申し上げるべきだったかなと思いながら、私、このデータを見させていただいて、3点ほど指摘と御提案を差し上げたいと思っております。
 前半で話題になった地域中核の話の中では、私ちょっと気になっているのは、連携の話を最初に取り上げられた委員がいらっしゃいましたけど、連携の必然性というのをやっぱり(取組大学自身が)もうちょっとそれぞれお考えにならないと(いけない)というふうに前から思っておりますことと、どこの都道府県もなかなか、県とか自治体とそこに存在する地域中核大学になろうとする大学との関係が必ずしもよろしくないとか無関係だとかというのが非常に多いので、日本の研究力を強化、あるいは地域の産業の創生という観点を考えたときに、やっぱりこれからはもう少し文科省自身も、地域中核大学と都道府県との間の密接な関係が生ずるような施策とか何か仕掛けが必要ではないかなと日頃から思っているところであります。
 それから、後半の今日の説明をいただいた観点から、私から2つのことを少し、さらに調べてほしいなとか提案が欲しいなと思ったことを述べさせていただきます。
 1点は、最終的には研究者の質の向上が喫緊の課題だなと理解しました。なので、進学率を上げろとかいろんな御指摘があったんですが、もちろんそうなのでありますけれども、やっぱり優秀な能力を持った人をどうやって大学院(学生)として確保するか、あるいは大学院教育そのものが社会が受け入れるような、必ずしもアカデミアを育てるだけではなくて、社会に広く受け入れられる博士後期課程、博士課程の学生をしっかりと育てていくということが最終的に大事じゃないかなと思いました。また併せて、研究力強化という観点から、日本人にこだわる必要は全くないので、もっと外国人比率、研究者としての外国人比率、大学院生としての外国人比率がどうなっているかという年度ごとに追ったデータについてもNISTEPのほうで少し注目して、私どもに教えてほしいなと思いました。
 もう一点ですが、私、立場が変わって、いろんな国立の研究機関等を訪問させていただきながら、そこでの研究の活動の成果あるいは活動状況等をつぶさに見させていただいたときに、大学に比べると、これは私の主観が大いに入っているんですが、もっと幸せな研究者生活を送っていらっしゃる方が多い、たくさん見られると思っております。この国の、日本の研究力を強化しよう、あるいは国力を高揚しようという観点から考えたときに、国立の研究機関といわゆる大学間が協働するとか連携するとかという何か仕組みがこれからしっかりと出てこないと、せっかく国のお金あるいは予算を使いながら、なかなかそういうことに結びついていないなと。それぞれ違うベクトルで、違う方向に研究が進んでいるなと感じております。
 議長、以上2点でございます。

【千葉主査】  大変重要な観点、御意見ありがとうございます。
 それでは、一通り御意見いただくということで、次、高橋委員、お願いいたします。

【高橋委員】  ありがとうございます。御発表、大変貴重なものを拝聴いたしました。
 NISTEPの方と若手アカデミー小野先生、両方にコメントですけれども、まずNISTEP様のほうは、14ページぐらいから始まる自由記述の問題指摘、これは大変リアリティーに富んでおりました。これは、馬場室長がおっしゃっていた、今後規制改革とインフラを整えるというところの生データになると思うので、ぜひ連結をしていただければと思っています。私のコメント、いずれも、今まで本当にそうそうたる方たちが研究力強化のための問題指摘は定性的にされていたと思うんですが、一方で、恐らく、文科省様の政策立案サイドの方たちからすると、小野先生のロジックモデルの12ページの課題もそうなんですけれども、個々にはやっているよということが事業レベルであるとは思うんです。ただ、それが、ともすると、事業が運営されると、その事業設定範囲に閉じてしまい、マクロな問題のどの部分の何をプラスに転じさせるためにこの事業をやっているかという大目的と最終的なアウトカムの関係性が薄れてしまう。各事業の中で閉じてしまうと、結局、一応行政サイドでは措置されていたりお金を出していたりするんだけれど、小野先生の12ページのマクロなこのロジックモデルの中では、まだ駄目だよねとなってしまって、それは国として大変もったいない話だと思っています。なので、ぜひ自由記述のような生の情報というのを生かせればいいかなと思います。
 NISTEP様のほうに、これだけの貴重なデータを経年計測しているということに関して、今後、できればお願いしたいことが1点ございます。例えば、全体トレンドとして、マネジメント層と現場研究者レベルの、時差も含む認識の差というのがあるかと思いますが、例えば一部のクエスチョンに対して、G1グループの研究者も徐々に曇りから晴れへというようなトレンドが見えているような気がします。これをぜひ変革の浸透度という形で、マネジメント層と現場、現場の中でも4つのグループというのがどんなふうに変化していったかというのを経年で見ていただくことによって、差があるね、残念、以上ではなくて、少しずつ変わっていったというふうなマクロな傾向が我々捉えられれば、現場もその変化により元気が出るのかなと思った次第です。
 最後に、若手アカデミーの小野先生、まずはリーダーシップに大変敬意を表します。1つだけ申し上げたいとすると、科学技術外交人材です。私もURAのグローバルなコミュニティーに触れていて、本当にプレーヤーとしての日本の位置が相対的になくなっているという物すごい危機感を覚えます。とりわけリサーチインテグリティーですとか、アメリカとEUのデータの取扱いの違いなどです。先月の南アの学会参加でも、グローバルサウスが、特にアフリカに対しての、欧米とのイコールパートナーシップの関係構築の中で、私たちどうしていくのかということは本当に切実に感じます。ぜひここは継続して議論させていただきたいと思いますし、最後、人材の流動性ということだと、我々の日本のいろんな組織文化とかローカルルール多過ぎとかというところをいかに払拭していくかというのが本当に重要だと思った次第です。
 大変貴重なお話、ありがとうございました。以上です。

【千葉主査】  どうもありがとうございます。
 では、続いて片田江委員、お願いします。

【片田江委員】  大変示唆に富む御発表、ありがとうございました。大山先生と小野先生、いずれの御発表でも、博士学生のキャリア困難という点が非常に重要な課題と提起されておりました。アカデミアポジションの開拓については、大山先生の御指摘のとおり、安定したポジション提供など、いろいろな施策が提案されており、ここに加えまして、アカデミアポジション以外の博士取得者のキャリアパスや具体的なロールモデルが多様化していることをビジネスの現場では感じます。私自身は博士号を取得してベンチャーキャピタリストの道へ進みましたし、他業種においては具体的には、従来から大手事業会社、メーカーなどで活躍される方はいらっしゃいますけど、そこに加えて、外資系のコンサルで活躍される方、行政で活躍される方、あるいは最近上場したバイオベンチャーにおいては、所属されている方の約7割が博士号取得者であるというような事例も出てきておりますので、このような具体的な事例を示しながら、博士号取得ということが、単にアカデミアポジションのための選択肢ではなくて、様々なキャリアのチャンスを得られるということを学部生や修士の学生さんたちに常に情報発信し続けることが非常に重要と思いました。それを継続することで結果として、国際的な競争力強化という観点で見たときにも、優れた大学、アカデミアから生まれた優れた技術シーズをグローバルに展開させるというプロセスにおいて、博士号取得者の専門性の高い知識であったり経験であったりというものが様々な場面でその実現を後押しするのではないかと非常に強く思いましたので、引き続きそのような活動をしていただければと思います。よろしくお願いします。

【千葉主査】  どうも片田江委員、ありがとうございます。
 では、続いて新福委員、お願いします。

【新福委員】  広島大学の新福です。
 冒頭のほうの議論の中にも、大学というのは社会課題の解決に応えていく、社会のための大学の在り方というところも議論されたかと思います。そのように大学が変わっていくには、やはり鍵となるのは、それを担える人材育成であると考えております。私も一若手研究者として若手アカデミーないしその世界版であるグローバルヤングアカデミーの活動に従事しておりますけれども、そういった活動というのは社会問題に対する意識ですとか、またグローバルな課題解決に向けた議論に参加するという意味で非常に重要だと考えております。そうした国際活動は国際的な知識循環にもつながっておりますので、研究におけるイノベーションにもつながるものと考えております。
 私のほうも、小野さんが挙げてくれた10の課題の6番、科学技術外交というところに関わる話になるんですけれども、そうした活動をしていく、またさらに世界の中でリーダーシップを取っていくには、それに対する支援がやはり必要だと思います。日本の中で中心的に会議を開催する、例えば私もグローバルヤングアカデミー総会を昨年日本で主催したんですけれども、それをするにはやはり資金というところが非常に必要で、たまたまなんですが、その時期、JSTがそれをサポートするようなファンドを2年間の期間限定で支援を出しておりまして、それを頂くことで実行することができました。こうした、研究活動にダイレクトに関わるようなものではないにしても、科学技術外交に関わるような活動支援というところのファンドが、時限で行われるというので途切れるのではなく、継続していくことで、この後もずっとグローバルな課題解決に日本が関わっていく、リーダーシップを取っていくということは非常に重要になってきますので、ぜひそういった支援の在り方というのを御検討いただければと思っております。
 以上です。

【千葉主査】  ありがとうございます。長続きする大きな支援の重要性、御意見いただきました。
 では、大野委員、お願いします。

【大野委員】  お三方の発表、どうもありがとうございました。3点発言をさせていただきます。
 まずはNISTEPの調査ですけれども、もう既にz御発言もありましたが、文科省の施策がどう効いたからここにこう反映された、あるいは、どこがうまくいかなかったのでここに出てこなかったんだというような視点の分析も必要だと思います。戦略性を持って様々な政策を打っているわけですけれども、その効果がここに現れるはずですから、ぜひそういう観点で見ていっていただきたいと思います。
 2点目は、これは個人的な見解になるかもしれませんけど、誤解を恐れずに言えば、研究者はそもそもジョブ型なんじゃないか。したがって、研究する時間というのは最初から確保されていなければいけないことだと思います。そういう意味で小野委員の発表に大変共感を覚えました。もちろん教育も大事ですし、ほかの仕事も大事ですけれども、今まではそれらをやった上で余った時間で研究をやりなさいという立てつけでした。それでは絶対に研究が立ち行かなくなることを現実は示しています。研究エフォートを確保する、研究者は研究がジョブであることを体制の上で示す、これが喫緊の課題と思います。
 3つ目ですけれども、人口減少の中で研究人口をどのように確保するのかということ。これももう既に御発言がありましたけれども、海外の力も含めて使っていく、一緒にやっていかないと、これからの研究エコシステムは成り立ちません。そういう意味で、岸田政権が、先日の教育未来創造会議の第二次提言で、数値目標を掲げて学生を外に出していく、あるいは外から受け入れるという大きな方向性も出しましたので、それを追い風に、さらに研究環境を整えて、研究人口を確保していくという発想が必要です。昨日まで環太平洋地域の50大学の学長の集まる会議に行っていました。そこでは、米中のはざまで、アメリカの大学には人材が行かなくなり、研究が停滞しているという発言がありました。その中でシンガポールが大学はハブの役割を意識して。中国からも来られる、アメリカからも来られる、あるいは経済成長している東南アジア、インドネシア、フィリピンなどの大学学長に呼びかけて、エコシステムを一緒に作ろうというアピールもありました。そういう戦略的立場は、日本の科学技術外交の一部になると思います。我々が意識し、実行できる形に、支援も含めて体制を整えていく必要があるのではゃないかと思いました。
 どうもありがとうございます。以上です。

【千葉主査】  大野委員、ありがとうございます。確かに、国際的な学術でリーダーシップを取っていく日本の戦略と、そういう観点はすごく大事ですね。どうもありがとうございます。
 では、柳原委員、お願いします。

【柳原委員】  若手アカデミーのことに関してコメントいたします。非常によい活動だと思って、すごくいい、感激したというか、感銘を受けました。共感もしました。それで、やはり若い方々がリードして新しい施策をどんどん提案して実行していくと、これがやっぱりエネルギーの源になると思うんですね。そういう意味で期待しております。イノベーションのところで10の課題がありましたけれども、それに関して2点、簡単にコメントいたします。
 私自身は博士課程におけるテーマ設定が結構大事だと思っていまして、どちらかというと修士課程の流れからますます狭くあるいは深くなっていくような研究になってしまうのではないかと。そのときにやはり、短期的な成果をあまり求めずに、視座を高める、あるいは視野を広げるということで、修士課程のテーマから非連続的に専門分野をもう少し変えてみるとか、そういったことをやっていくことによって、その研究者自身がすごく豊かな構想力を持てるのではないかと思っております。
 2点目は、片田江先生と同じことになってしまうんですけれども、キャリアパスの問題ですね。まさに高度な専門力とか、あるいは研究力を持った方、その人が、外交のみならず、目利き、あるいは構想していくようなプロデュース、そういったことで活躍できるところはいっぱいあると思っています。企業においても、企業においてはそういう道が――博士じゃないんですけれども、修士の方々が多いんですが、そういう道がたくさんあると考えると、ドクターを持った方のほうがそういう意味では専門力が高いでしょうから、そういったキャリアパスを大学でもどんどん広げていくことが大事だと思っておりまして、企業としても何か支援等あればと思っております。
 以上です。

【千葉主査】  ありがとうございます。確かに、企業の方とお話しすると、博士を含めて、こういう力のある人ぜひ欲しいという声は非常に強くなっていますよね。そこが十分大学に届いていない、あるいは教員まで達していない可能性もあると、そういう面もあるかもしれませんので、ぜひその辺り、一つの突破口になればと思います。ありがとうございます。
 では、相原委員、お願いします。

【相原委員】  私は、新しい研究開発の育成という視点でのコメントをさせていただきます。
 1つ目ですけれども、優れた特徴をさらに伸ばすための選択と集中というのが重要なことは理解しておりますけれども、行き過ぎた選択と集中で多様性を損なったり、それから全く新しい視点の研究開発を阻害することがないように、新しい研究を育てるという視点でバランスを取ることが重要と考えます。
 それから2つ目ですけれども、基盤的研究費の拡充のお話も出ておりましたが、以前にも増してそれが重要と考えます。現在、円安、物価高の影響で大学運営はますます厳しくなっている状態で、大学によっては、研究者に配分する基盤研究費を削ったり、削ろうとする動きがあると聞いておりますので、ぜひそこが重要なことを大学または行政のほうで認識していただいて、適切に対応していただきたいと思います。
 それから最後に、これは文科省の担当ではないと思うのですけれども、公立大学としましては、地域の行政が学術振興を地域行政の重要施策として位置づけて、大学をその中心と認識すること、これが重要だと思っております。先ほども少しお話が出ていましたけど、それが弱いと、公立大学、地方大学としてはなかなか、進めたいことも進められませんので、そこにしっかりと力点を置いた検討もしていかなければいけないと思っております。
 以上です。

【千葉主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、木部委員、お願いします。

【木部委員】  ありがとうございました。3つとも参考になりましたが、特に若手アカデミーの報告に、非常に感銘を受けました。特に今日示していただいた、後ろから4枚目ぐらいの図ですね。フォロー図というか、まとめた図がありますが、これは、よくまとめられていると思います。これを見ていて、「基盤的・伝統的分野における知識や技術」をまず第1点目に挙げているのはすばらしいと思います。それともう一つ、「過度に競争的でハードワークを要する研究環境」、これが図の真ん中に来ていますが、これが実は「基盤的・伝統的分野における知識や技術」の衰えにつながっているんじゃないかと思います。競争的資金を獲得するために、どうしても新しい分野とか融合分野とか、新しい研究計画を立てなければならない。そのために、もしかして基盤的な、基礎的な研究がおろそかになっているんじゃないかと、誰もが思っているんですが、ここではっきり指摘してくださったのはすばらしいことだと思います。真ん中に「過度に競争的でハードワークを要する研究環境」というのが置かれていることを我々は、若手から突きつけられた課題というふうに受け取って、この問題を考えていかなければと思います。
 それと、これらの課題を具体的に解決していくために何が必要かを考えなければいけない。1つには8番の教育費の家計負担、それから研究費の基盤的経費の不足ですね。こういう経費の問題があると思います。国の政策としてもすでに取り組まれていることですが、早く解決しないと、若手は研究職、あるいは、研究職に限らず、大学院に進学するということに魅力が感じられない。それを経済的な面でまず改善していくということが重大課題の一つだと思います。
 それともう一つは、研究の手法だとか方法だとか、それから分野の問題ですね。そういう若手の問題意識を酌み取って、全体として解決策を検討していかなければいけないと強く感じました。
 どうもありがとうございました。

【千葉主査】  どうもありがとうございます。
 では、那須委員、お願いします。

【那須委員】  ありがとうございます。今日、若手の方の発言で刺さった言葉は、業界の体質改善ということで、いまだに体質改善されていないということにじくじたる思いがあるということと、あと、山崎先生が幸せな研究生活とおっしゃっておりましたが、まさにそうだなと思いました。今、医師の働き方改革を私もやっていますが、そういうところに通ずるものがあって、研究者の働き方改革を考えないとならない。社会のウエルビーイングを追求する大学が自分たち研究者のウエルビーイングを保障できないというのはまずいなと感じました。
 その点で、いわゆる手薄な研究支援体制と研究者の人口減少、研究者の確保という点で、私、最近、先ほどもありました国立の機関、大学共同利用機関の方々と話していますと、いわゆるコアファシリティー的な技術職員の方もハッピーのようで、大学はそういったところの制度を少し導入すべきであるなと私は感じております。NISTEPの調査結果の23ページの⑧のところ、大学共同利用機関との連携というところが非常にパーセントが低い。そこがプレーヤーとして、私はもっと大学共同利用機関と連携すべきだと感じました。
 それともう一つ、研究者の確保ということで、私はもう一つやはり欠かせない視点が工業高等専門学校との連携と考えています。既に本学でやっておりますが、さらにより深めて、高度な専門性の確保とかリベラルアートの素養とか、そういった工業高等専門学校との連携というのをもう少し考えてやっていきたいなと思っています。一つの意見として述べさせていただきました。
 以上です。

【千葉主査】  那須先生、ありがとうございます。ウエルビーイングの話、まさにそのとおりで、今、国を挙げて、あるいは大学がそういうものを目指していこうというときに、じゃあ自分の足元はどうなってんだと、その観点はすごく大事ですよね。そこができなくて、どうして社会をそういうふうにすると言えるんだという、まさに大学そのものの体質を変えていくというところ、物すごく大事だと思いました。
 西村委員、お願いします。

【西村委員】  ありがとうございます。少し違った角度から、もしかしたら先生方に非常に厳しいことというか、嫌なことを言うかもしれませんけど、ちょっとそこだけ御了解ください。NISTEPで見ていたやつで、博士課程に行きたくないということですよね。つまり、憧れる職業じゃないということですよ、研究者が。大学に行くとか、大学院に残るとか。これは例えば、とはいえ、ほかのプロフェッショナルな世界を見ると、例えがよくないかも分からないけど、大谷翔平が出てきたりとか、サッカーで世界で戦う人たちが、若者人口が減っているのにもかかわらず、質と層が上がっているということですよ。日本はできるんだということですね。だから、この前の文科省がおっしゃっていたJリーグ百年計画を例えば研究大学100年計画のような形で、本当にここがプロフェッショナル人材が戦うというか、競い合いながら、逆に言うと、何が研究者にとって面白いのか、楽しいのかということは――僕は、緩やかな環境の中で好きな研究やっているんじゃないと思うんですよ。社会が変わるというところに対して自分の研究成果が活用されたときに、このかんだ感覚、進歩につながったときが多分研究者冥利に尽きるんだと思うんです。この経験を本当にさせていますかということですね。こういう場に大学が変わっていったり、大学じゃなくても、博士を取った人材が産業界でそういう場があったら、スタートアップもそうでしょうけれども、絶対やりますよと。だから、そういう意味でいうと、ちょっと私は何となく、大学のための改革、大学だけを見ている改革、ちょっときついことを言うと、過保護だと思いますね。ではなくて、私たちの社会を進歩させるために大学が存在して、そういう人材をつくり上げて、その人たちに楽しい人生を送ってもらおうとしたら、やはり研究者の育成のところがすごく弱いような気がします。若手の研究者の方々、すごく立派な方々がいらっしゃるんだけれども、僕は人材育成のスピードが遅いと思います。それと、経験値の積み方が多様性がなさ過ぎると。特に、研究の中のど真ん中を行くというのは分からないですけど、私は、研究者の中で社会で活躍する研究者を考えたら、どう考えても、大学が囲い込み過ぎですよ、アカデミアの中で。本当は、学部生からでも、大学生からでも活躍して、そこの中で切磋琢磨しながら、本当の意味で博士人材、総合知を持った人間に仕上げるということを大学側は本当は踏み込んでやるべきだと思うんです。私、民間でキャリア積みながら、途中で自分で博士取って、最終的に今大学に来て、それでマネジメントもやったんですけれども、逆から見ていると、物すごく遅いですよ、ゆっくりですよと。それと、競争させていないですよ。最終的には何かで拾おうとしていますよね。でも、本当はのめり込むように研究させて、本当に成果が出たときにめちゃくちゃ皆から憧れられるとか、場合によっては収入でも成功するとか、そのようなことをやっぱりどこかでつくっていくことも必要だと思うんです。
 もう一点重要なのが、私が今スタートアップの経営者をやっていて一番思ったのは、日本というのはほとんどのところは年功序列と終身雇用なんですよ。大学はプロフェッショナル人材の集まりではないです。ここは雇われ人の集まりです。だから、必ず守られています。その中での競争では、やっぱり本気にはならない可能性がある。でも、ここで競争したときには何をするかというと、やっぱり負ける人たちが出るんですよ、ジョブ型にも。ジョブ型で負けて落ちていく人たちのキャリアパスをしっかり大学の中でつくるとか、産業界でもつくる。それで、本気で頑張る人たちは、大谷翔平がみんな出てきても困るわけです。あれはやっぱり勝ち抜いて勝ち抜いてあそこまで行ったから、ああいうふうに。日本ではそんな勝ち抜いて勝ち抜いていく研究者をつくる環境になっていますか。これを100年ぐらい、100年と言わんかも分からん。10年とか20年かけて、全員がそうならなくてもいいです。飛び抜けた人はそういうふうになるんだぐらいのことをやって、若い人たち、特に小学生、中学生が憧れる職業は研究者ですというふうなこと、それも、学術的な博士ではなくて、社会を変える博士ですというふうな社会をつくっていくというのがいいような気がします。
 すみません、ちょっと概念論になって申し訳なかったんですけれども、少しそういう哲学のようなもの、大学の定義というんですかね、人材育成も含めた。もう少し議論していくといいのかなと思ったので、あえてこんな話をさせていただきました。ありがとうございます。

【千葉主査】  西村委員、ありがとうございます。非常に重要な、厳しい観点での御意見、いつもすばらしいなと思っているんですけれども、一言で言えば、大学がもっと本質的に変わるべきだということかなと。それで、つい日本の国の政策としては、じゃあ、どこに予算を投入すればいいんだとか、そういう発想になるんですけれども、その前にもっと大事なことがあるんじゃないかというような投げかけかなと思います。やはり大学の人間としてはそういうところをしっかり考えなければいけないなと思います。ありがとうございます。
 それでは、藤井委員、お願いします。

【藤井委員】  ありがとうございます。2点ほど申し上げます。西村先生の御指摘に関係しますが、過度に競争的でハードワークを要するという点については、その中身がどのようなものかが重要です。本来やるべきことで競争してハードワークしているのかどうか、そのための環境が整えられているかどうかということが問題で、その点は、社会全体で見たときに大きな意味での資金の循環がちゃんとつくれているかが一番のポイントになると思います。この循環をいかにつくっていくかは、我々全体で、つまり研究者あるいはアカデミア全体で考えていかなくてはいけない議論だと思いますし、当然、社会全体の理解を得るための努力もまだまだ足りていないと思います。そういう意味での大きな循環づくりが大事である、というのが1点です。
 もう1点は、文科省からの御説明のときにキーワードとして出てきましたが、大学研究力強化委員会であまり議論されていないことの一つとして、いわゆる共同利用・共同研究の仕組みがあります。できてからかれこれ15年ほど経っていると思います。もしかすると別の審議会で取り扱うべきかもしれませんが、この仕組みがどのように作用して、どういった成果が上がっていて、現状がどうなっているのかを議論すべきです。さらに、今日は木部先生がいらっしゃっていますが、共同利用機関法人の中にある研究所群も、日本として長年かけてつくってきた、それぞれ重要な研究所です。今回、大学にフォーカスした改革のプログラムが並んでいますが、共同利用・共同研究の制度および共同利用機関法人との関係で、日本全体の研究力をどのように上げていくのかについて、いま一度しっかり議論をしておくべきと思います。
 私からは以上です。

【千葉主査】  どうもありがとうございます。
 そうしましたら、吉田委員、お願いします。

【吉田委員】  ありがとうございます。小野委員からの発表、本当に感銘を受けました。地域の大学という立場から1つだけコメントさせていただきます。
 特に、イノベーションの10の課題の中の(5)の競争的資金を活用するための基盤的経費の拡充と研究支援人材の増強、ここのところは地方の大学にとっては極めて喫緊とした課題で、この人材がいない、研究者がいない、そういう中で、何か新しいことをするにも、何もできない状況というのもあります。そういった中で、骨太の方針にもありますような、多様で厚みのある研究大学群を形成しという文言、それから、相原委員からも御指摘いただきました、過度の選択と集中、これを避けるべきだというコメントに呼応して、特に、例えば国際卓越大学あるいはそれに準ずる大学がたくさんの資金を持っているがゆえに、地方から研究者あるいはそういう支援人材が流れてしまうということがややもすると起こる傾向にあるのではないかと非常に危惧をしております。そういう観点から、若手の皆さん方もぜひ地方に残っていただきつつ研究できるような環境あるいは人材の支援ができるような環境を、裾野も広げて、ぜひつくっていただければなと思いました。
 以上になります。

【千葉主査】  ありがとうございます。
 どうも委員の先生方、貴重な御意見をありがとうございます。今日報告いただいた3件に基づいて、非常に大事なお話をたくさんいただいたと思います。今御意見いただいた地方、地域との関係というところについても、新しい大学の覚悟、その連携の在り方についての構想も必要だということ、それから、あとは、特に人材養成のところですね。博士人材、もっと広く言うと学部も含めてなんですけど、やはりこの20代の前後というところの日本がこれからますます貴重になる年齢層のところ、それを一手に担っているのが大学であるということをいま一度我々は認識すべきかなと思っております。要するに、どんな価値を提供できますかと言われたときに、実は最も重要なところを大学が責任を持って担っているわけで、その部分と社会とのつながりの仕組みというのをもっと大学自身が考えていく必要があると思います。これは、経済的なところについても先ほど御意見ありましたし、10の課題についても、かなり多くの部分は、経済性のバックグラウンドが必要であると、そういう間接的な投げかけにも見えるなというふうに私見ておりました。これは、ただ国に、もっと、だから、資金をくださいと言うのではなくて、やはり、大学がそれだけのものを社会にちゃんと提供していくのだから、大学も適正な形で経済的な力を持っていくという流れをつくらないと、常に、予算がなければできませんという発想になってしまう。それでは発展性がないので、やはりここはかなり大学が自主的に、主体的に、大学が中心にならなければ社会が変わっていかないというぐらいの自負を持つべきだというふうに私は皆様の御意見を伺って感じました。私の解釈が必ずしも正しいわけではないと思いますけれども、ぜひ今日の議論を大学人としての力強い次の一歩を踏み出す大きなきっかけにできればと思っております。
 大変貴重な意見をたくさんいただいた中でまとめるのはちょっと難しいんですけれども、まずこういう形で一区切りつけさせていただければと思いますが、馬場室長、いかがでしょうか。

【馬場室長】  ありがとうございます。貴重な御意見、本当にありがとうございます。時間の都合で一つ一つ回答することは難しいんですが、1つだけ申し上げさせていただければと思います。
 資料の3ページ目を共有いただければと思います。こちら、今日の議論でもNISTEPの提言あったと思います。実は我々も、政策担当者としては宝の山のアンケートだと思ってはいて、あのアンケートを見て、自分もかつて、創発的研究支援事業を研究者目線でやっていこうというような事業の制度設計に生かしていたりはしています。また、この調査をするときにも、実は大学のグループごとだけではなくて、例えばSPRINGやフェローシップに採択されている大学と取られていない大学で何か違いがあるのかとか、もう少し細かく見てくると、いろいろと政策の立案にも役立つところも出てくるのではないかなと思っているところであります。
 また、吉田先生を含めて、やはり地方の大学の課題、そういったところについても、我々、これまでも国の施策というのは、どちらかというと国の政策目的に基づいてある意味平等的にやってきたというところが、いい点、悪い点あったかと思います。
 多様で厚みのある研究大学群の形成の部分については、要素の明確化に加えて、やはり研究大学の状況や成長に合わせた支援の在り方というところをしっかりと考えていくというところが今回の地域中核を含めて重要な視点だと思います。
 また、その上にあります、URAのことを書いてありますが、教職協働、これはたしか千葉主査の言葉だったと思いますが、大学としてビジョンとミッションを一体的にしっかり持った上で取り組むというところが若手を引きつけるというところにもなりますし、先ほど西村委員の言葉にありました大学というところ、どう本当に研究力という魅力を向上できるかというところになってくると思います。外にいる方々、学生だけではなくて、大学に行きたいと思えるかどうかというところは重要なところかと思っております。
 また、藤井委員から大学共同利用機関、共同利用・共同研究体制、大学研究力強化委員会の所掌に実は含まれてはいますので、そこについても継続して議論していきたいと思います。
 また、別途、こちらのところに書かれている中規模研究設備群の整備、こういったものについて学術分科会のほうでも集中的に議論を重ねているところでございますので、強化委員会では、そういった議論も踏まえながら、大所高所で御議論を重ねられていければいいかなと思っております。
 時間の都合で全てお答えすることは困難ではありますが、ぜひこの後も議論を重ねていくことによって、10年先、20年先、100年先を見越した研究大学群、多様で厚みのあるものをつくっていければいいかと思っております。
 一旦主査にお返しいたしたいと思います。

【千葉主査】  馬場室長、ありがとうございました。大変これは壮大な課題設定でございまして、まさにこれは日本の未来の発展を担う、その中核の議論と言っても過言ではないと思います。そういう意味では、非常にその中心の役割を果たす委員の皆様あるいは視聴していただいている方々、またこれからいろいろ御意見いただけると思いますけれども、それだけ重要なことだということを改めて御認識いただいた上で、また次回につなげていき、また、単に会議だけをすんなり進めるのではなくて、大学それぞれが実践しないと全く意味がございませんので、ぜひそこにつなげていっていただければと思います。
 時間になりましたので、本日の会は以上とさせていただきたいと思います。どうも、御協力をいただいて、ありがとうございました。

【馬場室長】  ありがとうございました。
 最後、事務局からでございますが、本日、時間の都合で発言できなかった点ありましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
 議事録についても、別途、運営要綱に基づいて公表する予定としております。また別途確認させていただければと思います。
 次回の大学研究力強化委員会につきましては、追って開催日を調整させていただいて、傍聴されている方々含めて、開催案内を発出させていただければと思います。
 事務局からは以上でございます。本日はありがとうございました。

【千葉主査】  どうもありがとうございました。
 
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