科学技術・学術審議会 大学研究力強化委員会(第6回)議事録

1.日時

令和4年7月14日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 大学研究力強化に向けた取組 (1. 世界に伍する研究大学の実現に向けた大学ファンドの創設 2. 地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ 3. 大学の強みや特色を伸ばす取組の強化(大学研究力関係))
  2. その他

4.出席者

委員

  (主査)大野英男委員
  (委員)相原道子委員、伊藤公平委員、受田浩之委員、小長谷有紀委員、小林弘祐委員、新福洋子委員、高橋真木子委員、林隆之委員、福間剛士委員、山本佳世子委員、山本進一委員、吉田和弘委員

文部科学省

  (事務局)柳文部科学審議官、増子高等教育局長、千原科学技術・学術政策局長、池田研究振興局長、西條大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、坂本大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、笠原大臣官房文教施設企画・防災部長、平野国立大学法人支援課長、井上産業連携・地域振興課長、梅原産業連携・地域振興課 拠点形成・地域振興室長、仙波振興企画課長、黒沼大学研究基盤整備課長、馬場大学研究力強化室長、季武大学研究基盤整備課学術研究調整官 他

科学技術・学術政策研究所

佐伯科学技術・学術政策研究所長

 

5.議事録

【大野主査】  皆さんこんにちは。ただいまより科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会の第6回を開催させていただきます。
 本日も御多忙の中、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 いつものようにオンラインで進めてまいります。音声などで不都合がありましたら、事務局にお知らせいただければと思います。
 それではまず、事務局より、本日の委員の出欠、そして配付資料の確認をお願いいたします。

【季武調整官】  事務局でございます。本日の委員の出欠状況にございましては、梶原委員、片田江委員、藤井委員、柳原委員が御欠席です。小林委員は追って参加いただく予定となっております。
 続きまして、配付資料の確認です。本日は、議事次第に記載のとおり、資料1から資料3を配付しておりますので、御確認をお願いいたします。
 また、本委員会は原則として公開で行うこととしております。本日は、事前に登録いただいた方に動画を配信しておりますので、お含みおきいただければと思います。
 最後に、オンライン会議を円滑に行う観点から、事務局よりお願いがございます。まず、発言時以外はマイクをミュートにしていただくこと、また、御発言に当たっては手を挙げるボタンを押していただく、もしくはカメラに映りやすいように手を挙げていただく。さらに、資料を参照される場合には、資料番号、ページ番号、ページ内の該当箇所などを分かりやすく口頭でお示しいただくことなどについて、御配慮をいただければと思います。毎回のことになりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 以降の進行は、大野主査にお願いさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【大野主査】  どうもありがとうございました。それでは、早速議事に入りたいと思います。前回は時間が十分取れなかったところもありますので、大学ファンドの主な論点について議論を行った後、大学研究力の強化に向けた取組について議論を進めてまいりたいと思います。
 大学ファンドに関わる資料1と2をまず御説明いただいて、意見交換などをしたいと思います。その後、資料3に基づいて御説明を受けて、さらに意見交換を進めるという構成にさせていただきます。
 それではまず、科学技術・学術政策研究所より、「国際卓越研究大学の特徴を計測する指標について」の御説明をお願いいたします。

【佐伯所長】  ありがとうございます。御紹介にあずかりましたNISTEPの佐伯でございます。事務局より、国際卓越研究大学の選定や、今後の大学における計画の作成といった作業に際し、議論の参考となる指標例を専門的知見に基づき紹介してもらいたいというお話がありましたので、内部で検討したものを御説明申し上げます。
 このスライドでは、指標の例示、検討の考え方を示してございます。まず、卓越大学としての適性を把握するためには、アセットやアウトプットの多寡を見るというよりも、目指すビジョンを実現するためにどのような取組をしていくのか。それに必要なアセットの存在と、これまでの取組が一定の成果を上げてきたというような実績を確認できる指標かどうかが必要だろうということを考えました。そこで、法律の規定や、世界と伍する研究大学の在り方を検討してきたCSTIのレポートから、目指す大学が備えるべき特徴、必要とされる取組を抜き出し、それらの姿を浮かび上がらせる指標の例を検討し、今回議論の材料として御紹介するものでございます。その際、留意すべき事項につきましての要点を、このスライドに示してございます。実現する力を見る上ではトレンドの把握が必要かと思いますし、大学間の比較や後の検証を行うためには、データのソースや分析手法などをそろえておくことも大切といったような事項でございます。
 こちらは、アカデミアの間で定量的な評価に関する留意点を整理した声明がございますので、参考までにつけてございます。
 この法律で認定されている要件は、第4条第3項各号で記されておりまして、文部科学省の検討を踏まえつつ、各号について、NISTEPとして指標が想定できる事項を中心に考え方を紹介したいと思っております。
 まず、第1号では、国際的に卓越した研究の実績を示すことでございますが、こちらはCSTIの最終まとめで関連部門といたしましては、卓越し、かつ多様な学問分野の展開と、次ページにあります、世界トップクラスの研究者・学生が糾合する研究領域の創出・育成として、卓越大学の姿を描いてございます。このうち、最初の①につきましては、卓越した研究が多様な分野で行われているということを示す指標例としてどういうものがあるかという議論をしてまいります。
 まず、研究分野での対話や結合を可能とする上では、全体としての幅広い基盤を有することが重要と考えましたので、大学の全体の論文数を例示してございます。同時に、卓越したという意味では、その性格を見るために、高い注目度、被引用数がTop10%に入る論文数を例示に取り上げてございます。これから、Q値、いわゆる注目度の高い論文のシェアといった見方も可能でございます。
 次に、多様な分野をより具体的に見るための指標といたしましては、Top10%の論文について、一定以上の国際的地位、例えば国際的に見たシェアあるいは順位といったもの、こういった地位を占める分野がある程度の数以上存在するということが指標として考えられます。なお、ここでTop10%としておりますのは、Top1%ですと絶対数が少なく、安定性に欠けるため、この10%という数値を選んでおります。
 2番目の研究実績の中で、トップ研究者などが糾合する研究領域の創出・育成につきましては、高い業績を上げている研究者や優れた学生が集まる研究組織、あるいはその研究のグループにつながる芽や萌芽としてのプロジェクトが創出されていることを示す指標例を検討してみました。具体的には、組織やプロジェクトに関しましては、既に実績がある組織としてTop10%論文の責任著者が一定数存在することをベースに、それがどう形成されてきたかということを見てはいかがかというものでございます。エコシステムといいますか、そういった組織のダイナミズムを見るということになるかと思います。そのために、研究科、研究機構、ラボといったものを取り上げております。
 2つ目といたしましては、今後そういった研究領域の創出につながるようなプロジェクトをリードするような研究者がどのくらいいらっしゃるかということで挙げてございます。
 3つ目は、まだ実績は上がっていないが、評価されつつある研究組織、あるいはそういった新しい取組を生むための組織といったものを指標として取り上げることもできるのではないかと。これは何らかの形で外部から評価されていることが必要でございますが。
 次に、こういった活動を支える基盤として、大学全体のアセットについても指標としての意味があるだろうということで、研究者あるいは学生について、責任著者といったような形、あるいは評価されて経済的支援を受けているといったもの、あるいは学会での活躍等を示すことができないかということを挙げてございます。
 さらに、世界をリードするということを考えた場合には、その人的ポテンシャルといたしまして、中心となる卓越した研究者のリストを、業績、国際ネットワークなどとともに示していただくということが考えられるのではないかと思いました。また、一過性ではなく今後の成長もしっかり見込まれるという意味で、層の厚みを測れないかということも挙げてございます。さらには、海外から人を集めてくるような、ポストドクターといったものがあるかと思っております。
 層の厚みにつきましては、我々も、様々な見方があるために端的な指標は提示できておりませんが、例えば最近、かつて日本が強いとされていた分野の幾つかについて、相対的な地位の低下が顕著な部分がございます。これを分析したことがございました。これは化学の例でございますが、有力な大学について、失速要因として、左側は大学全体のTop10%補正論文の数の変化ですが、2011年ぐらい以降急に下がってきておりますのは、1人の研究者の退職があって、次につながっていないと。その退職に伴いまして、その研究室にいた中堅の方でしょうか、かなり論文を出している方が他大学に移ってしまったり、あるいは海外との共著のネットワークも途切れてしまったりというような形がございます。こういった形で研究室が変わっていくこと自体というのはダイナミズムが必要ですので、一概に判断はできませんが、少なくとも、組織全体でこの次の世代が育っていくという厚みが必要だろうということを示すデータかなと思って御紹介いたしました。
 次でございますが、法第2号の経済社会の変化をもたらす研究成果の活用実績、その活用の体制、2号と4号でございます。こちらにつきまして、CSTIの最終まとめでは、成果の社会実装が社会的価値の創出につながる、あるいはグローバルな課題解決に貢献といった捉え方を提示されております。そこで想定される手法といたしまして、左上にございますが、経済社会に変化をもたらすという点で広く使われ、相当の市場規模の製品、サービスに展開された技術の創出実績が考えられます。社会価値として捉えるのであれば、個々の技術がもたらした変化を見るといった定性的な評価が重要になってまいりますが、その影響力、社会の評価について、経済的価値を代理指標として、その集合体として定量的に評価できないかという考え方でございます。
 こういったトップ技術につながる基盤といたしまして、その下にあります特許関係のデータですとか、右下のほうにございます民間企業、自治体やNPOとの連携、ベンチャー関係の指標の活用が考えられますし、グローバル対応という点では、国際協力事業への関与、貢献といったものが、右上でございますが、あるかと思っております。
 次の第3号、教員組織及び研究環境の整備等につきましても、基本的に定性的な仕組みになるかと思いますが、取組の実情を判断する上でも、活用できるデータをここに挙げてございます。ただ、次のページの事業計画と関連しますので、そちらのほうをベースに説明を申し上げます。
 資料の8ページのスライドです。では、法第5条の2項の関係でございます。体制強化を目的とする事業計画について、こちらについて、事業計画の実現性やコミットメントの強さといいますか、それらを確認するための評価指標の例をいろいろ並べてございます。例えば、大学の取組に関してより広くここでは提示してございますが、研究環境の整備につきましては、研究を支援する人材のデータ、あるいは施設設備の共用でありますとか、オープンサイエンス関係のデータの共有といったような取組についてのデータ、事務の効率化、さらには新興融合分野あるいは萌芽的な挑戦といったものを導くような取組などについて指標的にデータを使えないかということでございます。
 若手研究者につきましては、人事マネジメントの方針と、それに基づいてどの程度若手教員が確保されているかというようなデータ、テニュアトラックや研究室のスタートアップといった立ち上げの時点の取組も含めた実績、あるいはポスドクや博士修了者の活躍の状況といったもの、さらには海外研さんの機会など、こういったものも指標になるかと思っております。
 右上の卓越した研究者・技術者等の確保につきましては、獲得のための取組、給与の面ですとか海外での拠点の設置といったようなこと、それからの受入れといったものが考えられますし、研究者・技術者について、家族の滞在も含めた環境整備といったものもあるかと思っております。そして大事なこととして、研究時間の確保や、女性研究者などのダイバーシティーへの配慮などといったことが大切かと思っております。
 支援人材については、その育成取組も見ることが必要かと思っております。
 成果の活用につきましては、産連本部などの人材も含めたスタッフと併せましてネットワークをつくり、実現をしていくようなプラットフォームといったものもあるのではないかと思っております。
 以上が大体個別のことでございまして、少し指標に関しての留意事項とつながるようなことを御紹介したいと思います。次をお願いします。こちら、スライドの9では、評価対象は同じでも多様な指標があり得ることを示してございまして、例えば規模で見るか、規格化するかでも、その評価の結果は変わり得るというものがございます。ここに論文の例でいろいろ書いてございます。御参考にしていただければと思います。
 次のスライドでは、Top10%補正論文数とQ値の関係を記してございます。青い線がQ値でございまして、オレンジの棒グラフがTop10%論文です。Top10%論文については対数表示となっておりまして、1目盛りで10倍となります。御覧いただきますように、規模が大きくて一定のQ値を示す大学もあれば、規模が小さくてもかなり高いQ値を示す、いろいろなケースがあるわけでございます。
 同じく論文の分析において、整数カウントと分数カウントの差異を示してございます。国際比較を行う上では、共著による水膨れを防ぐ意味でも、分数カウントを我々はよく使ってございます。しかし、個々の大学を見た場合、このように分数カウントでは減少傾向――この場合オレンジでございますが――となっておりますが、整数カウントがかなり伸びている、こういった大学もございます。この整数カウントと分数カウントの差は、右側の棒グラフを御覧いただきますと、特に国際共著の進展、あるいは国内の共著の進展も進みまして、それぞれ共著者との間で1つの論文の貢献を分化することによりまして、この当該大学の分数カウントというのは相当小さくなってしまうといったような効果のものでございます。したがいまして、大学の活力を見る場合には、少し注意をしてデータを扱っていく必要があるかなと我々も痛感した次第でございます。
 冒頭でトレンドと申し上げましたが、この改革や発展に大学がどう取組を展開していくかという意味で、その潜在力あるいはこれまでのものを含めた実力を見ることによりまして、そのコミットメントの強さや潜在的な発展力を見ることもできるのかなと思っておりまして、同じような論文数になっても、近年伸びているところと低下しているところとの差というのはかなり明確に出てくるものが上のほうでございまして、横ばいのものと長期的に下降傾向のものでも同じような数字になるといったものもございます。したがって、やはりトレンドというものが大事なデータを示すのではないかと思っております。
 最後のスライドでございますが、前回、本委員会におきましても、他大学との連携や日本全体の研究力向上への貢献といった御意見がございました。実は私どもも同じような疑問点から、ネットワーク分析をごく最近したことがございまして、これは大学間の共著関係がどう発展してきたかというものでございます。これは1本の線が80本の共著につながっていることを示しております。2001年ではまだ非常に粗な状態ですが、2010年になってくるとかなりネットワークが出てきておりまして、2019年になりますと、非常にある意味複雑な、国内でのネットワークが広がっていることが見て取れるかと思います。この中で、やはりハブ的な役割をしているような大学というのも、比較的ビジュアルにはっきりと見えてくるといったような特徴もございます。こういったネットワークを見る指標といたしましては、共著関係に加えまして、共著と併せて使うことによって役割を見ることができる責任著者の分析ですとか、施設や設備の供用の実績、あるいは連携協定の数といったようなものもあるかと思っております。
 以上、簡単ではございますが、まだ途中段階的なものでございますけれども、私どもが考えた指標の例を御紹介いたしました。ただ、今御紹介した指標につきましては、全てについて私どもがデータを保有し分析をしているというものではございませんで、大学側で準備をして新たに出していただかなければならないようなものも含まれているわけでございます。
 以上でございます。

【大野主査】  どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、事務局より、大学ファンドの基本方針の策定に向けた検討状況について説明をお願いします。

【馬場室長】  それでは、事務局より、国際卓越研究大学の制度設計に関して、現時点の検討状況について報告させていただきます。本日は、資料2に基づきまして、国際卓越研究大学法に基づく基本方針の策定に向けた状況について御説明したいと思います。
 まず2ページ目です。これまでも御説明させていただいているとおり、大学ファンドに関するスケジュールとなっております。左から、昨年、令和3年1月に成立いたしました国立研究開発法人科学技術振興機構法(JST法)の一部を改正する法律に基づきまして、上半分、CSTI(総合科学技術・イノベーション会議)の世界と伍する研究大学専門調査会や、文部科学省における検討会議の議論も踏まえ、2月1日にCSTI本会議において最終取りまとめがなされたところでございます。令和4年5月には、国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律が成立し、本法律に基づく基本方針を策定することとなっており、この基本方針策定後、支援対象大学の公募を開始し、選定を実施することとしております。
 また、下半分、資金運用・助成につきましては、JSTにおいて運用業務が可能になったことから、体制整備を進め、昨年度末から運用開始、令和6年度以降、実際の支援を開始することを予定してございます。本日は、この真ん中にある基本方針の策定に向けた検討状況について御説明させていただければと思います。
 3ページ目、この基本方針の記載事項のイメージでございますが、法律に基づき求められている事項のうち、前回は、支援対象大学の選定について、主に「二」、大学の認定に関する基本的な事項の、例えば認定に関する基準や、「三」の体制強化計画の認可に関する基本的な事項の事業の内容について御意見をいただいたところでございます。本日は5ページ目、「四」に関わる助成の実施に関する論点につきましても、前回御指摘いただいた論点に加えて説明させていただければと思います。
 続いて7ページ目です。前回、論点とさせていただきました支援対象大学の選定について、委員会における主な御意見も踏まえて、対応の方向性について説明したいと思います。
 まず、その前提として8ページ目に、今回、この国際卓越研究大学の認定・体制強化計画の認可の審査の流れに関してイメージ図を作成しております。繰り返しにはなりますが、今後、基本方針の策定や法施行を経て、年内には公募を開始することを予定しております。数か月程度の公募期間を経て、大学認定・計画認可に関する審査を実施する予定としております。その際、前回御説明したとおり、認定・認可の審査プロセスを一体的に実施するとともに、研究現場の視察や大学側との丁寧な対話を通じて審査を実施することを予定しています。
 さらに、大学ファンドの支援対象大学においては、自律と責任あるガバナンス体制を構築いただくことを予定をしており、例えば合議体の設置等も最終的な要件となってくることを予定しておりますが、法改正や寄附行為の変更等も必要になってくることから、申請段階におきましては、ガバナンスの変更の計画や予定を明示した上で、申請自体を可能とするということを予定しているところでございます。
 それでは、9ページ目を御覧ください。まず、論点の1つ目、国際卓越研究大学の認定に必要な要件として、ポテンシャルの確認についてでございます。こちらは、まず前提としては、今回、支援対象大学の選定に当たっては、これまでの実績や蓄積のみで判断するのではなく、世界に伍する研究大学の実現に向けた変革するというビジョンとコミットメントがあるかどうかを見極めて実施することが必要であるとされているところでございます。その上で、定量指標、定性指標としてどのようなものが考えられるかという論点でございます。前回いただいた主な御意見といたしましては、例えば、国際卓越研究大学に認定される一部の大学が世界最高水準の研究大学を目指すことのみを目的にするのではなく、先進的な取組を他大学にも横展開することにより、日本の大学全体の研究力向上にもつながるべきではないか。また、国際的に卓越した研究の実績として、Top10%補正論文数を指標にする際には、学内で一部の分野が軽視されないよう学内の体制も併せて確認すべきではないか。また、定量的指標については、現時点の状況だけではなく、伸び率や現在進行形の観点も考慮に入れたほうがいいのではないか、そういった御意見があったところでございます。
 対応案として、下半分にありますが、この支援対象大学、世界最高水準の研究大学を目指すということがまず重要ではあるものの、全国の大学等との連携を強化することで、人材の流動性の向上や共同研究の促進等が起こり、新しい学問領域を創出・育成し続けることなど、学術研究ネットワークを牽引する責務を負うことを基本方針に明記してはどうかと考えております。また、大学のポテンシャルを確認する際には、計画と一体的に審査することにより、大学の持続的成長に向けた研究体制や今後の取組も併せて確認することとしてはどうかと考えております。また、定量的指標につきましても、現状の値に加えて、将来的な目標値と併せて考慮してはどうかと考えています。
 10ページ目が現時点で想定される国際卓越研究大学の認定に必要な要件となりますが、先ほどのNISTEPの佐伯所長の説明や留意事項も踏まえ、引き続き国際卓越研究大学の選定や、また、今後大学が計画を策定するに当たり、定義等を精査してまいりたいと考えているところでございます。
 続いて12ページ目です。体制強化計画における目標の適正性の審査について、論点2として、世界トップレベルの研究大学のベンチマーキングを行うこととしてはどうかという観点です。前回、ベンチマークは必要であるものの、画一的なものを設定するのではなく、大学ごとの特徴を生かせるよう柔軟に設定すべきではないか。また、研究環境やオープンサイエンスなど、改革の方向性の明確化や世界からリソースを獲得する戦略としての活用や、大学を取り巻く制度や環境の違いを把握していくことにより、日本の大学制度の改善を促していくことが期待されるといった御意見があったところでございます。
 対応案といたしましては、各大学がそれぞれの独自性や強み、特色を生かすことができるよう、個々の目標や具体的な取組に応じてベンチマーキングを行うことを明確化する方向で検討するとともに、当然ながら、国ごとに社会的、文化的背景が異なることに留意し、併せて大学から規制緩和を提案する機会を設けるなど、双方向型の環境を整備してはどうかということを考えているところでございます。
 続いて14ページ目、論点3番目です。大学ファンドにより実施される取組についてでございます。こちらについては、大学ファンドによる支援をただ単に使い切ってしまうと取られかねないよう、事業規模拡大を通じた好循環を生み出すことができるような取組こそが必要であるといった御意見があったところでございます。
 対応案といたしましては、大学の持続的成長に向けて、新たな学問分野や若手研究者への投資など、直ちに社会的価値につながらない次世代の知の創出にも取り組むことが求められている旨を基本方針等においても強調していきたいと考えているところでございます。
 続いて16ページ目、支援期間及びモニタリング・評価等についてでございます。具体的な支援期間としてどの程度の期間を設定すればいいか。また、モニタリング・評価を行う頻度や内容をどうするべきかということでございます。こちらについては、対応案の特に下の2つ目、支援期間につきましては、対象大学において財政基盤の自律化が果たされるまでの間、継続的・安定的に支援を行うとの目的も踏まえ、長期の期間、例えば25年を目安とし、ある程度柔軟性を持たせた上で、その範囲内で大学自ら目標や計画を併せて設定することとしてはどうかと考えております。  続いて、17ページ目、前回の議論を踏まえた追加論点を4つ今回準備しております。大学ファンドからの支援に当たって制度設計にも関わる部分かと思っております。
 18ページ目でございます。こちらは、まず追加論点1として、各大学の事業規模(3%事業成長の対象)としてどのような範囲とすべきかということです。この点については、これまで問われるたびに答えてきたつもりではございますが、参考として、先般の国会審議におきまして末松文部科学大臣が答弁した内容を添付しております。この大臣の答弁にもございますが、事業規模を広げるということで得られる資源を中長期的視点で人材育成や研究基盤に再投資する好循環を構築することが重要であると我々としても考えているところございます。また、民間企業とは異なり、公共財としての大学において、純利益が3%上がるということではなく、大学のミッションに基づき、若手研究者を雇用したり、新たな領域の施設設備を整備することなどにより、大学の機能拡張に伴うものであることから、上にございますとおり、原則として、教育研究、社会貢献にわたる大学全体の事業規模の成長を見ていく必要があるのではないかと考えております。また、大学の機能を大幅に拡張していくことに着目する必要があることから、単に収入を得た時点ではなく、原則として、それを支出した時点での事業成長に着目すべきではないかということを考えております。
 なお、国・公・私立大学に通じた制度設計にする必要があることから、財務諸表上確認できる数値にしたほうがいいかということも考えております。
 他方、大学全体を見た際に、附属病院の扱いについては、大学によって病院の有無が異なる中、コロナであったり診療報酬といった政策的な影響を受けること、また、大規模修繕などの影響を受けることから、当該データを使用する場合、適切に事業規模、事業成長の算定が行われない可能性があることから、その取扱いについても整理する必要があるのではないかと考えているところでございます。
 続いて19ページ目、追加論点2つ目、助成額の関係です。こちらは、大学ファンドからの毎年度の各大学への助成額につきましては、外部資金の獲得実績や大学ファンドへの拠出に応じて決定することとされておりますが、これらを具体的にどう定義するかということでございます。大学ファンドからの毎年度の助成額につきましては、大学の自律的な経営能力の向上や多様な財源確保を促す観点から、運用益の範囲内で、外部資金の獲得実績等に応じて決定することを予定しているところでございます。
 このうち、この外部資金につきましては、多様な財源確保を促す観点から、公的資金以外とするとともに、平準化を図るため、例えば過去5年間の平均を基準にしてはどうかということを考えております。なお、計画の策定に当たっては、運用益の範囲内であることに留意が必要ですが、この外部資金獲得額がインセンティブになるよう、この外部資金獲得額に一定の係数を掛けた金額が支援額として措置される前提としてはどうかということも考えております。  さらに、この助成金が大学の経営の自由裁量の下、柔軟かつ適切に使用されるよう、補助金や委託費といった形ではなく、使い勝手の観点で、いわゆる交付金的に措置してはどうかということも現在検討しているところございます。
 続いて20ページ目、大学ファンドへの資金拠出の観点です。こちらは前回配付した資料からの抜粋ではございますが、大学ファンドの資金拠出に関して、支援終了後も含めた大学の成長や大学ファンドそのものを持続的なものにする観点から、大学ファンドからの支援が終了するタイミング、いわゆる卒業時の払戻しを通じた将来的な自律的財務運営の実現に向けた大学独自基金の成長、また、大学ファンドの原資、すなわち運用元本の増強への大学による協力の観点から、支援対象大学から大学ファンドへ資金拠出を慫慂する仕組みを設けるということを予定しております。この背景としては、「参考」にもあるCSTIの2月の最終取りまとめにおきまして、このファンド対象大学当たりの支援規模については、外部資金の獲得実績や大学ファンドの拠出などに応じた決定をすること、そのルールを明確化することが求められるとともに、2つ目のポツ、研究活動及び若手研究者支援の持続可能性確保のための将来的な自律的財務運営の実現に向け、大学独自基金を成長させることが必要であることを踏まえ、大学独自基金の運用とファンドへの拠出が相まって基金を成長させる仕組みや、大学ファンドからの卒業時における基金への集約についてのルールを明確にすること、そういったことがCSTI決定としてされているところでございます。
 そのような中、21ページ目、追加論点の3つ目として、大学独自基金造成と大学ファンドへの拠出として挙げております。大学ファンドへの拠出をどのように慫慂するのか、また、支援終了時の払戻しをどのように行うかという観点です。1つ目のポツは今申し上げたところで、2つ目のポツになりますが、今回、大学ファンドの目的としては、将来的に支援対象大学において潤沢な大学独自基金(エンダウメント)の造成があるかと思います。この将来の自律のためには、大学独自基金の造成が必要不可欠であると考えており、そのため、現時点で検討している仕組みとして記載しております。まず、大学ファンドからのいわゆる卒業、つまり大学ファンドからの支援終了のタイミングで、自らの大学独自基金の運営、運用益により、大学ファンドからの助成金を受けたときのものと近いレベルの事業規模を維持できるだけの大学独自基金の造成を求めることとし、大学独自基金についての目標値と計画を申請時に提出することとしてはどうかと考えております。また、各大学に対しては、事業成長に加えて、体制強化の一環として、この大学独自基金造成計画の達成を求めることとしてはどうかと思っています。ただ、実際には大学の努力だけで欧米のように数千億の基金を限られた期限で造成することは困難であることから、一定の条件の下、大学が大学ファンドへ資金拠出した場合には、最終的に大学ファンドの支援期間終了のタイミングで払戻しを実施することとし、各大学の独自基金に組み入れて自ら運用することを可能とする仕組みとしてはどうかということを検討しているところでございます。詳細については引き続き検討していきたいと考えております。今回、大学ファンドの政策目的として、フローとしての事業成長、大学としての機能拡張の部分と、ストックとしての大学独自基金の造成をどう両立・実現していけばいいのか。関係者からの理解も得られるようシンプルな制度にしていきたいと考えているところでございます。  最後、22ページ目でございます。追加論点4つ目として、大学ファンドの運用益の配分についてでございます。大学ファンドの運用が安定するまでの間、運用益を大学支援、バッファー確保等にどう配分していくのかという観点でございます。この大学ファンドの運用に当たっては、毎年度の支援額を運用益で賄えない場合に備え、3,000億円掛ける2年分のバッファーを確保することということが既に決まっているところでございます。ただ、このバッファーが積み上がっていない期間、どのように支援を実施すべきかということに関して、論点として挙げております。例えば、初年度、運用益が100億円あった場合に、全額そのまま支援を実施した場合、景気の動向次第で翌年度の運用益がなくなって支援ができないといった場合も想定され得るかと思います。そのため、支援に充てるのは、当面バッファーが上限に達するまでは、当年度の配分可能利益の3分の1程度とすべきではないかということを考えております。例えば、100億円ある際に全額支出するのでなく、安定的な支援を重視し、30億に支援額をとどめ、翌年度、翌々年度以降もそのまま支援を維持できるというような規模で助成を実施してはどうかということを考えております。
 また、大学ファンドから博士課程学生への支援につきましては、大学ファンドの運用益から200億円程度を支援することを予定しております。この国際卓越研究大学の助成とこの博士課程学生の支援に関して、運用益の状況や、また、各採択校の計画も踏まえつつ判断する必要がありますが、それぞれ資金確保の必要性があることを考慮した上で支援を実施すべきと考えているところございます。
 なお、博士課程学生につきましては、既に大学ファンドによる支援に先駆けまして、JSTの次世代研究者挑戦的研究プログラム、いわゆるSPRINGを通じて、全国6,000人の支援を既に開始しているところであり、間違ってもこの支援を受けている博士課程学生に不利益が生じないよう、十分に考慮する必要があると考えているところございます。
 本日は、この支援対象大学の選定に係る前回の論点に関する方向性に加えまして、前回委員会の指摘も踏まえまして、特にこの支援・助成に係る追加論点を4つ掲げさせていただきました。技術的な事項や検討中の内容も多いですが、大学ファンドの制度設計に関わる重要な事項でもあることから、本日御説明させていただいた次第でございます。十分説明し切れていないところもあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。

【大野主査】  どうもありがとうございました。それでは、皆様から御質問あるいは御意見をお受けしたいと思います。非常に重要な論点がたくさん盛り込まれていたと思います。それでは、まずは小長谷委員からお願いいたします。

【小長谷委員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございました。直接の質問ではないんですけど、私、途中で退席するものですから、一言先に意見を述べさせていただきます。
 それは日本のドネーション文化についてです。世界寄附指数という調査があって、2021年ですと、日本の場合は114か国の最下位です。日本社会全体として何のためであれ寄附するということが全然根づいていないという中で、こういう大きなドネーションを大学に託すというのは大変でしょう。もちろん大学の責務でもあるけれども、日本社会全体の不利な状況の中でさせられるというのは大変なことだなと思います。ですから、こういうことを進めるときに、社会全体の寄附文化、それから学術を支援するという形に持っていくことが必要かなと思って聞いておりました。

【大野主査】  ありがとうございます。我々がどういう社会的・文化的背景の中で活動しているのかということをちゃんと踏まえるべきであるという御意見だと伺いました。ありがとうございます。
 それでは順番で、次は山本佳世子委員からお願いいたします。

【山本(佳)委員】  山本です。私は、事務局説明の追加論点1、18ページの事業成長3%についてお伺いします。これまで3%の定義ははっきりしていなかったところで、こういった形で出てきたと理解しております。10兆円ファンドの配分は入るのか入らないのかとか、入っていいなら随分楽だというようなうわさがあったわけですけども、それは3%の収入の事業成長だと皆考えていたと。それに対して今回出された説明ですと、収入ではなくて支出で見るのだということですね。つまり、事業成長に向けて先行投資としてどれだけやっていくか、もちろん元手があっての話ですけれども、どれだけ積極的にやっていくかというところの3%増を見るものだという理解でいいのかというのが1つです。
 そうしますと、大学ファンドから入ったものは入ったもので、その後の支出で見ますから、当然、対象大学は潤沢でありますし、使途の自由度は高いしということで、どんどん使えるという状況かと思います。それによっていろいろな環境、人的環境であったり、基金の環境であったりを進めるということだとは思うんですけれども、結局3%成長というのは、別にハードルでも何でもないのかなと今思っているところです。対象大学の認定に向けた大きな経済的なハードルという意味でしたらば、むしろ対象大学から大学10兆円ファンドへの拠出額ですとか、むしろそういうことが重要になってくるという理解でよろしいかということ、この点をお願いいたします。

【大野主査】  ありがとうございます。では、こちらをまずお答えいただいてから、次に進みたいと思います。事務局、いかがでしょうか。

【馬場室長】  事務局です。まず、小長井先生の寄附文化のこと、我々も大変重要なものだと思っております。今回、国際卓越研究大学において、海外より潤沢なエンダウメントを積み上げていただくというところは、ひいてはほかの大学にも大きな影響を与えられる観点かと思っていますので、ぜひ今回、こういった取組を通じて、ほかの大学にもいい影響を与えられるよう、日本全体として寄附文化を醸成していくということが重要だと考えているところでございます。
 今、山本佳世子委員の御質問につきましては、我々、最後のほうでも申し上げましたが、今回大学ファンドの大きな政策目的としては、何よりも国際世界最高水準の研究大学をつくっていくという観点で、フローとしての事業成長、機能拡張という部分、また、ストックとしての大学の独自基金の成長というところも重要だと考えているところでございます。今回、当然ながら、大学ファンドの支援を受けながら、大学としてどういうことに取り組んでいくのか。それについては、一過性のものではなく、将来の先行投資になるような取組をやることによって好循環を積み上げていっていただくというところが何よりも重要かと思っておりますので、一面的に、今この瞬間どうこうということではなくて、むしろ、今後の好循環をどう積み上げるかというところが重要な観点になっていくのかなと思っております。
 また、この事業成長支援額に関しましても、先ほど申し上げたとおり、外部資金等の獲得額に応じて決定するということを考えておりますので、当然ながら、各大学においては、その獲得努力の部分というものも十分必要になってくると思いますし、先ほどの寄附のところにもつながるように、独自基金の造成というものも何とか実現していただきたい。そういったフローとストックに関して、この大学ファンドについて、何とか制度上後押しをしていきたいと考えているところでございます。
 事務局からは以上でございます。

【大野主査】  どうもありがとうございます。
 山本佳世子委員どうぞ。

【山本(佳)委員】  では、今の私の確認なんですけども、3%のところは、今認定を考えているような大学にとって、そこが重要なことというよりも、むしろ外部資金の獲得額であるとか、どういった形でフローとストックを高めていくのかという、そちらのほうが重要だという理解でよろしいですか。もう一度確認です。

【馬場室長】  ありがとうございます。おっしゃるとおり、外部資金獲得額に応じて大学ファンドの支援額も決まっていくことであることから、山本先生おっしゃるとおり、外部資金を獲得する努力というところも当然見ていく必要はあるのかなと思っているところでございます。

【山本(佳)委員】  ありがとうございます。

【大野主査】  それでは続きまして、吉田委員、お願いいたします。

【吉田委員】  お願いします。私も18ページ以降の前回の議論を踏まえた追加論点1について2つ、それから大学院に対して1つ御質問とコメントを差し上げたいと思います。
 まず、18ページの、大学全体の事業規模の成長を見ていく必要があるのではないかという下線部に関しまして、事務局のほうから、大学病院については少し考えたほうがいいというコメントをいただきました。私も賛成でございます。病院収入というのは、特に診療報酬に伴うものや、先ほどありましたコロナ、あるいは承継債務、そういうものは研究力以外の要素がかなり含まれているので、私は除外していいのではないかと。必ずしも研究力を反映しているものではないと考えていいのではないかと思います。
 一方で、臨床研究や治験、こういうものの収益というのは、大学の研究力を反映するものの一つとして極めて重要であると考えます。したがいまして、こういうものは少しプラスアルファ評価というような観点からの制度設計にしていただければどうかと思います。
 それから2つ目は、19ページになりますか、外部資金獲得額に一定の係数を掛けた金額が支援額として措置される前提という下線部の黒文字があります。この部分に関連すると思いますが、前回でも少し申し上げたんですけれども、外部資金に対しての成長率も少し加味してはどうか。今回9ページに対応策として少し入れていただいてはおるんですけれども、ここでも、全体としての規模だけでなく、成長することにチャレンジする大学、こういうことが評価されるような仕組みにぜひしていただければと思います。特に、この「一定の係数」という意味が、あまり説明がなかったので、これは成長率を加味したものなのか、あるいは全ての大学に一定の係数という意味なのか、もし現段階で何かあれば教えていただければと思います。
 それから3つ目としては、22ページになります。博士課程の学生への支援というところで、国際卓越研究大学それから地域中核大学、特別なアライアンスによる連携を行う大学というのは、柔軟に連携教育の取組が実施できるような条件の緩和や支援があってもよいのではないかと私は考えます。簡単な例で、例えば海外との連携ではジョイント・ディグリーというのをやっていると思うんですが、このジョイント・ディグリーのイメージで考えていただいて、所属の地域の大学から、一定期間、国際卓越のような研究大学で研究指導を受けて、両大学から学位、こういうものを取れるような仕組み、制度、こういうものがあると、ひょっとしたら国際卓越に殺到した大学院生が入学できない、そういうときに連携をした地域の大学に来ていただく。優秀な将来の研究を担う若手が地域でも育成できるという形で、国際卓越大学が世界から大学院生を呼ぶだけでなく、地域からも優秀な大学院生が活躍できるような仕組み、こういうものもぜひ考えていただければなと思います。
 以上でございます。

【大野主査】  ありがとうございます。事務局、今の吉田委員の御質問部分は答えられますか。

【馬場室長】  ありがとうございます。事務局でございます。今、3つ御質問、御意見があったかと思います。
 まず、1つ目の病院については、今の御意見も踏まえながら我々努めていきたいと思っております。やはり病院収入というのが、大学の自助努力によらない部分の大きい、財務構造的にも大きな影響、インパクトがあるというところも踏まえて条件を設定していく必要があるのかなと思っております。その一方、今、吉田委員がおっしゃっていただいたとおり、臨床研究であったりとか、医療系の研究力強化に関係する部分については積極的に評価すべきとは考えておりまして、先ほど申し上げた公的資金以外の外部資金の中にはそういった病院関係の研究力強化の関係の部分というところも当然ながら入っていくべきと思っています。
 2つ目の外部資金獲得額に一定の係数を掛けた部分については、こちらについては、まさに我々も検討しておりまして、どういったものにするべきなのか。特に悩ましいと思っているところは、実際、5年後、10年後、また20年後、どういった係数であれば大学の努力に応じた形になり得るのかというところ、今の御意見も踏まえながら、一定の係数の部分については引き続き検討していきたいと思います。
 最後の博士課程の部分、いわゆる連携の部分とも関わってくると思うんですが、今回、大学ファンドの制度設計上、国際卓越研究大学が提案する計画に基づいて助成するということが予定されております。その計画において、その大学が自らの特色をどう伸ばすのか、研究力の向上においてどう連携をしていくのか、そういったところも踏まえて計画を認可することになってくると思いますので、その計画でどういったものを掲げてくるのかというところにもよるかと思っています。その部分についてが、お互いの大学にとってウィンウィンの関係がしっかりと築けて、その大学にとって研究力が確実に上がって世界で勝負できるという実現可能性が高まるということであれば、当然ながら認められるべきものと思っております。
 御質問の回答としては以上でございます。

【大野主査】  ありがとうございます。よろしゅうございますね。
 それでは続きまして、小林委員、お願いいたします。

【小林委員】  ありがとうございます。今日の議論は、国際卓越大学の認定審査のところと、その後のアフターフォローの話になるかと思うのですけども、まず、機能拡大3%の事業拡大に関しましては、これは25年ももしかしたら助成するわけなので、その中で、やはり研究分野もだんだん変わってくると思いますので、ある程度スクラップ・アンド・ビルドというか、時代に合わなくなった分野は縮小して、新しい分野をまた開拓するとか、そういったことも必要なので、ただ規模だけで見るというのはちょっと無理があるのじゃないかと思いました。
 あと、病院に関しては、先ほどの吉田委員もおっしゃったように、やはり臨床研究とか、医師主導治験とか、そういったものも評価していただきたい。
 それからあとは、ベンチャーの話が全然出てきていないのですけども、最終的にベンチャーをどれぐらいつくったかというのも見ていただきたいなと思います。アフターフォローのほうですね。
 あと、そのアフターフォローの中では、外部資金に関しては平準化という議論も加えられていますけども、例えば論文数とかそういったものについても、年ごとの凸凹はどうしてもあると思いますので、いろいろな指標に対して3年ないし5年ぐらいの平準化した指標で評価するというやり方も御提言したいと思います。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。事務局、今の小林委員の御発言に関していかがでしょうか。

【馬場室長】  ありがとうございます。4点ほどあったかと思います。
 まず、1点目の事業成長に関しましては、御指摘は理解をするところでございます。その点について、機能拡張をどう求めていくかというところ、実際、各大学がどういったビジョンでどういう計画を出してくるか、そういった部分についてしっかり確認をする必要があるのかなと思っています。特に今回、自律した経営体としてどういうプランをつくっていくのかというところが重要になってくると思いますので、その点について、しっかり選定の際には留意したいと思っております。
 また、2つ目の病院については、先ほど吉田委員の回答に答えたとおり、成長、研究力が向上される部分としてきちんと評価していくべきだと、また我々も考えているところでございます。
 また、3番目のベンチャーにつきましても、今、政府全体でスタートアップについてどう進めていくかというところが全体としての大きな方向性になっておりまして、その中で大学が果たすべき役割というのは、我々も重要だと思っております。今回の大学ファンドとスタートアップという大きな方向性というのは、両輪にも当たるような部分かと思っておりますので、そういった部分についても、計画の中、また、実績の部分でもしっかり確認していくべきところかなと思っています。また、特にその部分というのが、今後、大学の機能拡張に当たっての好循環を生み出す上で大きな観点なのかなと思っております。
 その意味でも、4つ目の平準化の観点も、我々は、大学というものが普通の民間企業とは異なって時間がかかるというところは、前回の論点としても掲げさせていただいているところでございます。中長期的な視点で見る必要があるという部分については、論文は当然の話ではありますし、また、ベンチャーについても、すぐにできるというものでもないと思っておりますので、その辺りについても、中長期的な視点でしっかり見られるような形、また、年度ごとのばらつきというところも意識しながら、モニタリング評価等をやっていく必要があるのかなと思っております。  以上でございます。

【坂本審議官】  研究振興局審議官の坂本です。
 今御指摘いただいたように、小林委員の1つ目の、25年のような長期の中で、サイエンスの分野がどのように変化していくのか、その中でスクラップ・アンド・ビルドが必要ということは非常に重要だと考えています。したがいまして、当然、今この支援対象大学というのは、その強みをどう伸ばしていくかというところを計画で出していただくことが必要なんですが、より深いところで、新しい分野が開拓される、あるいは新しい課題が生まれたときに、若手の育成であるとか、あるいは新しい分野を自ら生み出すための研究者集団をどう形成していくか、そういったマネジメントシステムをいかにこの助成金を使って構築していただくか、そういったところの提案のほうが重要だと我々は考えています。
 以上です。

【小林委員】  ありがとうございます。

【大野主査】  どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、山本進一委員、お願いいたします。

【山本(進)委員】  豊橋の山本進一のほうです。NISTEPの佐伯さん、どうもありがとうございました。私、これまであまり質問や意見を言う機会がなかったので、佐伯さんの資料の4ページですか、国際的に卓越した研究の実績①というやつですが、もちろんこういうビブリオデータ、論文数やTop10%は重要であるということに関しては全く異論はございませんが、ここで大学ランキングのよしあしについて議論するつもりはございません。ただし、いわゆる世界3大ランキングというものが、皆さん御承知のようにございまして、その一つに上海ジャオトン、上海交通大学ランキングがあります。このランキングに対しては、世界の研究者は、他の2つのランキングに対して好意的でございます。上海交通大学のランキングにはノーベル賞という指標が入っております。世界に伍する大学といった場合の指標として、ノーベル賞あるいはその類似の賞を指標とすることも重要ではないかと。例えば1900年以降、ハーバードでは百五、六十ですか、ケンブリッジでは120、UCバークレーでは100、シカゴ、コロンビア、大体それぐらいのノーベル賞の受賞数であります。ノーベル賞は、御承知のように文学賞も経済学賞もあるということでありますし、それに類似の賞としては、数学でいうとフィールズ賞、工学系ではゴードン・ベル賞、あるいは医学ではラスカー賞といったような世界レベルの賞があると。こういうものも指標として重要ではないか、もちろんそれを指標の要件とするということを主張しているのではなくて。ベンチマーキングの過程におきまして、当該大学が世界に伍すると自己判定した場合に、その理由として挙げていただく一つの条件としてもよいのではないかと。どちらかというと、欧米の大学に行って、ワールド・レベル・ユニバーシティーズといったときには、ノーベル・プライズ・ウィナーズということが議論の中に出てきますので、そういう要素もあったほうがいいのではないかと考えます。
 以上です。

【大野主査】  どうもありがとうございました。事務局から何か、よろしいでしょうか。

【佐伯所長】  では、佐伯からお答えしてよろしいでしょうか。

【大野主査】  はい。

【佐伯所長】  その点につきましては、用意した資料の5ページの部分を御覧いただきたいのですが、別なくくりにはなっておりますけれども、まさに重要な指標として、世界をリードする研究活動ができる人的ポテンシャルは、これは見るべきだと私どもは思っております。中心となる研究者、そこは国際賞の受賞歴を含めて、やはり世界で評価される研究者、あるいはさらに言えば、そういう方が大きなネットワークを持っていますと、先々の成長にもつながりますので、そういった人に着目した意味での指標といいますか、判断根拠というものをぜひ出していただければと私どもは思っております。
 以上でございます。

【山本(進)委員】  ありがとうございます。

【大野主査】  ありがとうございました。それでは、受田委員、お願いいたします。

【受田委員】  受田でございます。御説明ありがとうございました。私からは2点です。
 まず、9ページに、(1)国際卓越研究大学の認定に必要な要件というのがございます。前回も、総合振興パッケージに相当する地域中核大学あるいは特色ある研究大学と、ファンド支援を受ける国際卓越研究大学との関係性について議論をさせていただきました。その点が、「他大学にも横展開」という表現が真ん中付近にあったり、それを踏まえた対応策として、「全国の大学等との連携を強化する」と表現をしていただいております。これはまた、表現としてはこういう形もあり得ると思うんですけれども、一層、地域中核大学あるいは特色ある研究大学との連携という部分も、より、互恵的発展という表現でこの後の資料に出てくるかと思いますけれども、具体化をしていくイメージを明確にここで盛り込んでおくべきではないかと感じました。これが1点です。
 それから2点目は、16ページ、先ほど小林委員からも25年のお話がございましたけれども、前回私は15年という、長期的に見た際に具体的な年限として提案をさせていただきました。今回25年というのが提案されていて、正直、これは相当長いなという印象を感じました。かなりこれだけ長いと、支援大学が固定化されてしまうということが予想されます。同時に、先ほどの互恵的連携の形を想定した総合振興パッケージとの連動性というのが、座組みとして固定化されてしまうということが、どういうふうな形を生み出してしまうのかというところが1つ心配な要素です。  前回の5回目の最後のところに大野先生が御発言をされた、こちらの10兆円ファンドの支援が長期にわたるとすれば、総合振興パッケージも同様に長期にという連動性の御発言もございましたけれども、ここをどういうふうに考えていくかはポイントになるかなと思っているところでございます。この点に関して、先ほどスクラップ・アンド・ビルドの話もありましたし、こういったパッケージの対象大学が、そのスクラップ・アンド・ビルドに対応して変化をしていく、そういうスキームもあり得るのかなと思って、先ほどの議論を拝聴しておりました。この辺はポイントになるかと思ったところでございます。
 以上です。

【大野主査】  どうもありがとうございました。事務局いかがですか。

【馬場室長】  ありがとうございます。まさに受田委員等の御指摘も踏まえて、横展開というところも今回記載させていただいたところでございます。今の御指摘についても、総合振興パッケージの今後の検討にも関わるところでございますので、その点も踏まえて、併せて検討していきたいと思います。
 資料3におきましては、実は互恵的な発展関係というのも若干書き加えていたところであるんですが、その辺りのイメージをどうしていくのか、支援期間、固定化させない、そういったところを含めて、今の御指摘を踏まえながら考えていきたいと思います。ありがとうございます。

【坂本審議官】  振興局審議官の坂本です。すみません、補足させていただきます。
 受田委員のほうから御質問ありました2つ目の、座組みの固定化に関する懸念、これも非常に重要だと考えています。その論点と、一方で、このファンドは将来的なファンド対象大学、支援対象大学の自律的な財務運営、独自基金の造成も含めて、成長を持続していくという、そのシステムを構築していただく、これにはかなり時間かかるというところ、こういった要素もございます。したがいまして、固定化させることは決して健全ではないと思いますけれども、この持続的に成長できるシステムをつくるという、ここの長期的な課題とどうバランスさせるか、ここを引き続きしっかりと整理をしていきたいと思います。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。途中で卒業という言葉が出てきましたけれども、卒業要件とは何なのか、何を達成することによって卒業なのかが明らかになると、年限的な問題も、あるレベルで見えてくるのかなと思います。今、そういう趣旨の御発言だったかなと思います。よろしゅうございますでしょうか。  それでは続きまして、高橋委員、お願いいたします。

【高橋委員】  ありがとうございます。大きく2点あります。
 1つ目は、ちょうど直近の話の16ページで、まさに同じトピック、例えば25年というところです。私は、何人かの先生方と御一緒に、文部科学省のほうの制度設計のワーキングにも入れさせていただきまして、ここまで集約整理された資料を、まずは事務局にありがとうございます。その上で、細かい制度設計のリアルが非常に重要なポイントだと思っているんですけども、私は25年程度が適切ではないかと思っております。根拠としては、財政的な自律というのをきちんと収穫するということで、大学発のスタートアップによる大学への大きなマネーの還流というのが考えられると思うんですが、例えば私の専門に近いところでいうと、ディープテック系のスタートアップというのは、設立当初から数年はR&Dによって赤字財政というのが通常かと思います。業界用語で言うと、ホッケースティック・カーブといいますが、そこから収益を立て直して、最終的に大きく黒字になって、企業として成長していくわけですが、例えば製薬系のディープテックですと、そこの収益がちゃんと上がるまで10から15年とも言われています。それが恐らく1社では駄目なので、例えば最初のゼロ年から5年ぐらいまでの間に、そういうようなディープテック系のスタートアップが複数社生まれたとして、その果実を収穫するまでにということだと、例えば20年以上というのは妥当な算出効果かなと思った次第です。これが前回議論した論点に関する1点目のコメントです。
 2点目は、今回の追加論点です。ページとしては22ページ目になります。ファンドの運用益の配分に関してです。2つコメントがあるのですが、まず1点目は考え方ですけれども、当初に馬場室長から御説明があったように、配分の考え方としては、100億もうかれば、100億をぱんとその年度限りというのではなく、むしろこのファンドがあることの最大限のメリットというのは、安定的に複数年度支援ができるということに尽きるのではないかと思っています。ですので、例示として、例えば100億のうち30・30・30というようなお言葉もありましたが、そういう形で、少なくとも向こう2年ぐらいは受ける大学が予見できるというところが非常に重要かと思っています。これが1点目の考え方。  2点目は支援対象についてなんですけれども、国際卓越研究大学において博士課程人材支援というのは非常に重要な本丸だと思っています。ただ、これに加えて、多くの施策が、文部科学省に限らずですが、やはり単年度でかなりの部分が区切られていくということの構造上の問題というのを非常に感じています。先ほど坂本審議官が強調なさっていた研究分野のスクラップ・アンド・ビルド、これを本当に実装しようと思うと、例えば、新しい研究分野の推進に必要な研究インフラというのはどんどん変わっていき、多くの施策の定型的なフォーマットとして、例えば最初5年は文科省事業によってインフラをつくりますと。だけど、6年目以降、事業が終わったら、ちゃんと自分たちでそれを使い続けなさいねというような、その構造自体が、時として短過ぎたり、それでは一大学の中に閉じてしまうという構造問題があると思っています。ぜひ支援対象として、博士課程の学生支援は非常に重要ですが、加えて、そういう研究推進支援機能のハブ的な機能で、各事業がもう少し全国的に展開するためだとか、そもそもコストセンターなんだけれども、全ての大学に必要なものというものに対して、こういう研究のインフラとしてやっていただければと思っています。イメージのインフラは、例えば研究インテグリティーですとか、オープンサイエンスですとか、技官やURA等のいわゆるソフト専門人材などが対象になるかと思っています。
 以上です。

【大野主査】  どうもありがとうございます。事務局からいかがですか。

【馬場室長】  ありがとうございます。大きく3点あったかと思います。
 支援期間については、いろいろと御意見いただいてありがとうございます。我々としても、今回の大学ファンドの趣旨にのっとって、長期的・安定的に支援するということが重要かと思っておりますので、大学の特性に合わせた形での支援期間というものも引き続き検討を深めていきたいと思っています。
 また、バッファーについても、御指摘のとおり、我々はこれまでの反省も踏まえて、今回大学ファンドの制度設計においては、海外のエンダウメントの発想に鑑み、安定的・長期的にできるというところを重視していきたいと思っておりますので、支援にあっては、確実にバッファーを積み上げつつ、安定的に大学が予見可能性があるような形で支援をしていきたいと思っております。
 最後のコストセンターというところについても、支援期間とつながってくる大事な論点かと思いますので、そういったところも意識しながら制度設計を引き続き詰めていきたいと思います。ありがとうございます。

【大野主査】  ありがとうございます。それでは続きまして、相原委員、お願いいたします。

【相原委員】  私は2点ございます。
 これまでにこの会議で何度か人材の流動性が重要という表現が出てきておりますし、今日も出ていましたけれども、流動性の評価とか、それに関することはあまり出てきた記憶がございません。実際に人材の流動性というのは、人材育成の観点からいっても重要と思いますので、どういうことが考えられるのかを教えていただきたいと思います。
 それからもう1点は、いろいろ法整備を整えていただいていますけれども、何度か言っておりますけど、公立大学についても法整備をしていただきたいと思います。特に大学独自基金が造成できるように法整備していただかないと、全く蚊帳の外になってしまいますので、よろしくお願いします。
 以上です。

【大野主査】  それでは、事務局お願いします。

【馬場室長】  ありがとうございます。まず1点目の人材の流動性については、国内はもちろん、国際的にも大事な観点かと思います。やはり今回、国際卓越研究大学が国際頭脳循環のハブとなっていただくというところは大事かと思いますし、先ほどの吉田委員の質問にも関わってくると思うんですけど、地方中核の学部を出て国際卓越を経て海外に、いろいろな考え方があり得るかと思っています。さらに、相原委員が前回も御指摘されたとおり、URAだったりとか、そういう技術支援者、インテグリティーに詳しい方、そういった方々に関しても、専門性を生かせるような形での流動性というのは重要かと思っています。その点に関して、どういった形で今後考えられるのか、恐らく総合振興パッケージも含めてそういった流動性についてしっかり考えていくべき必要があるのかなと思っています。
 2つ目の公立大学については、我々は常に意識はしておりまして、今回、国際卓越研究大学制度自体、国・公・私にまたがる制度だと考えておりますので、例えば事業規模の3%成長に当たって我々が今検討しているのは、その国・公・私を通じた財務諸表上どういう数字を使えばいいのかというような部分でありましたりとか、あとは独自基金については、公立大学はもちろんなんですけど、国立大学においても、まだ法律上制度化されていないところでもありますので、しっかり大学独自基金というものを日本のどこの大学であってもしっかり積み上げることができるようにしていくというような制度整備ということも必要かと考えております。よろしくお願いいたします。

【大野主査】  ありがとうございます。それでは、林委員、お願いします。

【林委員】  ありがとうございます。前回の議論を踏まえていろいろと盛り込んでいただいたと思っていまして、追加論点のところで、1つコメントと1つ質問がございます。
 19ページ、助成額の算定のところでございますが、ちょっと細かいコメントになるかもしれませんけれども、ボックスの下のポツの2つ目で、「当該外部資金については、多様な財源確保を促す観点から、公的資金以外とするとともに」と書いてあるんですが、これは運営費交付金や私学助成のような基盤的資金以外ではないかと思っています。というのは、やはり公的な外部資金に関しては、これまでもいろいろなところでフルエコノミック・コストの議論がありましたが、競争的資金を取ってきても、それに必要なある種の間接経費のようなものが十分でないので、交付金のほうから補塡しなければいけないという現状があるという議論はあったところです。日本の場合、公的資金は30%の間接経費ですが、アメリカとかですと60~70%ですので、30%分足りないと考えると、公的な外部資金についても少なくとも30%分を措置するような発想が必要ではないかと思っています。
 それとともに、公的といったときに、例えば地方自治体等が今もインパクトボンドのようなインパクト志向のファンドを考えることが多い中で、特に国立大学は公共を担う経営体とか言われていますので、そういうものを推進していくためにも、そういうミッション性を持ったような公的資金をぜひどんどん獲得していってもらうことにはインセンティブをつけたほうがいいと思いますので、この辺りは御検討いただければと思います。これが1つ目のコメントです。
 それから質問なんですが、論点1の一個前のページの3%事業成長です。これがやはりどうしてもよく分からない。冒頭で山本委員からも御質問がありましたが、まずこれは、支出した時点での事業成長に着目すべきではないかと書いてありますが、これは、支出額だと、逆に、来たお金を単に毎年使い切ってはよくないという議論がある中で、単に支出額という話ではないという理解でよいのかということと、それから、先ほどの25年が長期か、長期でないかという議論もあったんですが、3%成長、1.03を25乗するとちょうど2になるんですけども、要は、25年後に大学が2倍になっていてくれという、そういうメッセージを持っているのかという、そういう理解でいいのかと。そうであれば、25年が一つの長期の目安となっているということは、要は、25年かけて大学を2倍に拡大していってほしいというメッセージがあって、その上で10年くらいの計画を出してほしいと、それだったら分かりやすいというか、そういう意味でいいのかと。
 さらに追加で言うと、25年となったときに、今もいろいろな組織の間の境界というのは非常に緩やかになってきているところで、例えば組織間の合併であるとか、あるいは、今のような個別機関というよりは、組織間が一つのネットワーク型の組織になっていくようなこともあると思いますので、そうなったときに、25年で2倍になるというときも、あまり固定したイメージではなくて、できるだけ多様な在り方が、この25年もの長期の間には多様な形があり得るという前提の下できっと議論をしていただいたほうがいいんじゃないのかなとは思っています。最後はコメントになりましたが、質問は以上になります。

【大野主査】  ありがとうございます。最初のコメントは、大学ファンドだけではなくて、総合振興パッケージも含めた、今回我々が議論している大学研究力全体に関わる問題だと私も認識しています。
 事務局いかがでしょうか。

【馬場室長】  ありがとうございます。事務局でございます。
 まず1つ目のフルエコノミック・コストに関わるような問題については、大野主査が御指摘いただいたとおり、総合振興パッケージも含めて重要な観点かと思っています。その意味で、我々が今回公的資金以外にしたほうがいいのではないかと考えた背景といたしましては、各大学で選ばれた国際卓越研究大学になるような大学においては、寄附金であったり民間企業であったり、また、海外からの様々な研究資金であったり、そういったものをぜひ獲得していただきたいというような観点から、そういった公的資金以外にしたほうがいいのではないか。国からお金をもらって、さらにまた国から出るというようなところが、あまり健全ではないかなということも少し考えておりましたが、今の林委員の御指摘も踏まえて、この範囲はどの程度にするかというところをもう少し精緻に記載したいと思いました。  また、3%成長の部分につきましても、これも我々としても、大学の特性を踏まえて、持続的に事業規模・機能拡張をしていただきたいということを考えております。前回林委員から御指摘があったとおり、支出を単に使い続けて使い尽くすというところを我々は全く望んではいない中で、先ほどのスタートアップ等も含めて将来的な機能をどう拡張していけるかというところが大事だと考えています。そのような中、我々が悩ましいのは、将来のこの25年後の大学の姿がどういったものになっていくのかというところがなかなか想像しづらい部分もあるかと思います。その点については、計画を実際大学が考えるビジョンとして出していくときに、我々はそういったところも含めてきちんと見ていく必要があるのかなということを考えております。その辺りについては、まさに我々としても丁寧な審査をしていかないといけないと考えている一つの理由になっているところでございます。ありがとうございます。

【坂本審議官】  審議官の坂本です。
 今、林委員から御意見がありましたフルエコノミック・コストの回収、これは極めて重要だと考えております。今、助成額の算定のところでは、外部資金、公的資金以外のものというふうに今ここで提示をさせていただいておりますけれども、公的資金であれ、民間資金であれ、プロジェクトを行う際に、きちっと間接経費も含めて回収できていないという問題は我々も認識をしております。そこにはやはり大学の中の会計の問題も非常に大きなところがある。要は、どれだけの間接経費の割合が実際に必要になっているのかというところ、そういったところも含めて、この国際卓越研究大学の中では、しっかりとこのコストを回収して、さらに再投資をする経営モデルをつくっていただくということも重要な視点になるのかなと考えております。このマネジメントシステムも重要な要素と考えております。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。いかがでしょうか、もう手は挙がっていないようですけれども。今、坂本審議官のおっしゃったことは極めて重要です。ただ、時間的には、先ほど申し上げたように、大学ファンドと総合振興パッケージの両方に関わって、我が国の研究大学が全体として発展していくためには、待ったなしの事項に思われますので、インプリメントを、大学ファンドの大学から順次やってモデルをつくってというのでは時間がかかりすぎると思います。そういう意味でおっしゃったのではないとは思いますけれども、ぜひ御検討いただきたいと思います。
 私のほうからも幾つかコメントさせていただければと思います。これまでの説明では資金の循環、そういう言い方が適切かどうか分かりませんが、ファンドをつくって、どういう大学を育てて、大学がどういう形になれば、資金の面も含めて目標を達成したとなるのかが必ずしも明確になってないと思います。先ほども申し上げましたが、卒業要件というのが明らかではないのかなと。一つの考え方は、このファンドの大学に指定されたときに、自立できる自らの基金をある目標額を達成できれば、そこからは御自分でどうぞということで卒業できるということになると思います。それが非常に早ければ、早く卒業していただいて、次々にそういう大学をつくっていくということに回せますし、高橋委員が一度おっしゃったように、非常に大きなリターンのあるスタートアップが出て、一気にいってしまうということだって考えられるわけです。そういう資金的な面で何を目標にしているかということのフロー図みたいなものがあると、卒業要件の一つは明確になるのではないか。しかも、それは共通に認識しておかないと議論がしにくいところがあります。
 もう一つはちょっと細かいところですが、最初の方にネットワークを牽引するというお話が出ていました。それを要件にしようということであります。それはそれで極めて重要で、こういうトップ認定される大学が我が国の全体を引っ張っていってくれないと、もう話にならないわけです。一方で、共・共拠点に代表されるつなぐ仕組みというのは他にも構想されて、実際に動いているわけです。動いているといっても、先日の相原委員のコメントにもありましたけれども、この額であれだけのことをやるのかという面があります。そういうところを充実させていくのと、この牽引する責務というのをどう分けるのか、あるいは分けないのか、そういう整理も必要かと感じているところです。  伊藤委員のお手が挙がっています。伊藤委員、お願いいたします。

【伊藤委員】  今、大野座長の話を伺っていて、私も特に前半の部分はずっと考えていたことでした。私も、このコロナが、また7波が来ているような感じですけども、やや落ち着いたときに一気に、イギリスやオランダやフランスや、そしてまたシンガポールとかいろいろ出張を重ねてきたんですけども、やはりヨーロッパの大学の学長たちと話をすると、国立ですから国、または公立大学で、地域がしっかりとお金はサポートしてくれる。そのお金を基に、もちろん競争的にはCOE、センター・オブ・エクセレンスというものには出していくけども、基本的なところはしっかりとサポートしてくれるんだと言っていました。その一方で、アメリカの大学になると、プライベートの大学は国からは何も来ないわけですけども、例えば州立大学とかいっても、カリフォルニアの場合はおおよそ14%がカリフォルニア州から来るということで、14~15%というのは、実は、我々が慶応義塾から頂いている私学助成と同じぐらいなんですね。私が何を今ここで申し上げたいかというと、ヨーロッパの大学は国からしっかりと支援され続けるということはあまり心配していない様子でした。もちろん、ランキングを上げなきゃいけないとかいろいろなことはあるんですけど、そこはあまり心配していないようだった。今回のこの施策によって、国際卓越大学院によって、そのトップの大学は基金を蓄えることによって、最終的には国からのサポートが15%ぐらいとか、カリフォルニア大学まで下げようとしているのか。それとも今までどおりしっかりと、例えばヨーロッパのように国立大学としてはしっかりとサポートしながら、プラス、基金をためなさいと言われているのか、そこら辺の卒業要件がどうしても私は混乱しているんですね。卒業要件といっているときに、国ができるだけ支出を減らそうとして、独立しなさい、結局私立大学に近づきなさいと、国立大学または研究大学のトップのところに言っているのかどうか。そこのところが出口が分からないので、どうなっているんだろうなというのが一番分からないところであります。
 慶應義塾では私、去年1年間、昨年度ずっと塾長をやって、寄附を集めることに奔走しました。これは公開されている情報ですから、奔走して寄附は78億円集めました。でも、これは大変でした。そのようなお金の集め方をして初めて蓄積していけるんですけど、実際にやってみて、皆さんが本当に同じようなことをやりたいかどうか、やれるかどうかというのはまた別問題だと思っているんですね。ですから、それだからこそ、例えば国立・公立大学において基金をためていく、これは委託研究では30%だから、何かバッファーのオーバーヘッドだなんてできないわけですよね。ためていくことができる、委託研究というのは恐らくそれは使い切るものだと思うので。基金をためていく、寄附金、エンダウメントを集めていく。ではそうすると、今度は国がお金を出していかなくなるのか、そこら辺が私にはどうしても分からない、それが卒業要件としては分からないというのが、結果的に何を目指しているのかが分からない。質問でございます。

【大野主査】  ありがとうございます。少しだけ付け加えさせていただくと、先日私も国立シンガポール大学のタン学長と雑談をする機会があって、シンガポールも同じような仕組みを持っています。つまり、民間からの資金は、個別大学でも集めることによって、それとマッチングしてシンガポール大学、シンガポール政府が、以前は1.5倍だったそうですけれども今は同額を出して、それで、新たな分野を今つくっているというようなお話がありました。そういう意味で、どこのサポートが主体かにもよらずと言っていいのかもしれませんけれども、各国はそうやって研究大学の必須のアイテムとして必死に進行しようとしているというのは、中国の例は皆さんよく御存じだとは思いますけれども、ほかにもちゃんとそういう例があるということを共有させていただければと思います。
 もう1点だけ、貯めるということに関して言うと、先ほどのフルエコノミック・コストのところで、我々の知的な価値が必ずしも表現されていない形でプロジェクトを引き受けると、そこはやはりたまらないどころか、教員研究者の疲弊につながるわけです。それは、教員・研究者の疲弊につながるだけではなくて、やはり大学の疲弊にもつながっているので、その場をちゃんとつくっている大学を含めて、フルエコノミック・コストというものは我々の知的な価値として表現するべきではないかと考えているところです。

【伊藤委員】  ごめんなさい、それを受けて全く私は同感なんですね。結局、国立・公立大学は国または地域の自治体からしっかりとサポートされ続けるようなヨーロッパタイプが私はいいと思うんです。その上で今、タン学長が行っているような、シンガポールでできたような、さらに来たものにマッチングするというインセンティブを加えるというのはとてもいいことだと思います。結局、基金をためるという部分の目的が私には最後分からないということですね。基金をためることによって、国が支出を減らそうとしているのか、いや、基金をためることによって国がお金をサポートし続ける、でも基金もためる。それによって世界に伍する大学となるのでしょうけども、そういうことを目指しているんですかという質問ですかね。

【大野主査】  今、福間委員の手が挙がっておりますし、その後、池田局長の御発言もいただきたいと思いますが、実は今のは非常に重要なポイントで、大学が大学の自由な発想で、ある分野を開拓しようとか、多様なことをやっていこうとしたときに、自分の資金がないとできないのではないかというところが、多分この発想の原点にはあったんだと思います。その原点を踏まえて、目的を卒業要件という形で表現する必要があると感じています。
 それでは、まず福間委員に御発言いただいてから、池田局長に発言いただければと思います。

【福間委員】  福間のほうから発言させていただきます。皆さんの御意見と割と似ているところもあるんですけれども、聞いていて、すごくたくさんの指標を検討いただいていますし、それぞれにすごく重要だと思うものの、翻って見て、この世界と伍する大学というのを考えたり、研究力強化をしなければならないと考えた背景として、やはり日本の研究力はいろいろな研究力という指標で落ちていて、それを何とか世界と伍するレベルにしようというところから、ここがモチベーションとしてきているというところは間違いないわけで、本来なら、そういう意味では、結果として世界と伍する研究と言われるための研究力に関する指標というか、その評価が一番重要視されるべきで、そこが最大の目標になるべき指標であるべきで、それと、そのための、こういうふうなことをやったらいいんじゃないかというモニタリングの指標は別にカテゴライズして議論すべきではないかなと思っていて、そうしないと、どれを目標にしていいのか分からなくて、我々研究者の立場からすると、こういうものというのは、来るたびに物すごい量の書類を作らされて、結果的に研究力が疲弊するということになって、本来研究力を上げるための施策であったはずなのに、研究力が衰えるということになってきた制度がたくさんこれまでにもあったと思うんですけども、そういうことにならないように、そこは、先ほどの御発言にも関わることかと思うんですけど、しっかり切り分けて、指標と目標というのを、モニタリング指標と目標というのを分けて議論するべきかなと思います。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。極めて重要な視点だと思います。
 それでは、池田局長、お願いいたします。

【池田局長】  ありがとうございます。今、大野主査と伊藤委員、福間委員がおっしゃっていたことが今回の大学ファンド構想のまさに本質的な部分だと思います。こういった議論をしている中で、3%成長であるとか独自基金の造成というところに注目が集まりがちですけれども、今回の大学ファンドの最も大事なところは、先ほど大野主査もおっしゃったように、大学の自由な発想で、新しい分野の研究をやりたいといったときに、それをきちんと後押しできるような仕組みを作って、大学にそうした形になっていただきたいというところにあります。本来であれば、基盤的経費をしっかり確保しながら個別のプロジェクトなどの経費も十分な措置ができればいいわけですけれども、今なかなか厳しい財政状況の中で、これらの経費が飛躍的に増えるということは現実的には難しいと。そういう中で、大学が独自に、先ほど海外の大学のお話も出ていましたけれども、やはり独自基金を造成することも含めて、大学が自由に戦略的に使えるような経費も持っていただきたい。そのために、事業規模も一定の成長をしていただきたい。それを後押しするために、今回10兆円のファンドで中長期的に支援をして、大学の成長を促すような仕組みだと考えております。
 これまでだと、どうしても新しい分野とか融合領域を大学が研究に着手したいとなったときに、先ほどフルエコノミック・コストの話もありましたけれども、既存の研究なり体制強化したところをどこかしら切らないといけないところがあったり、あるいはプロジェクト経費などがついても、3年ないしは5年やって、プロジェクトが終わったときにどうしても研究が縮小してしまったり、それまで形成してきた基盤が弱くなってしまったりする。そういうことのないよう、大学が戦略的に新しい分野にも展開していただけるようにするというのが最終的な姿でありまして、そのために、卒業要件はどういう形で設定すればいいのか、最終的な姿は、先ほど申し上げたような形ですので、そこを25年なり20年くらいかけてその姿になっていただくために、どういうところを見て卒業すると認定するのか、そこを十分議論していただく必要があると思っております。ちょっと明確なお答えではないかもしれませんが、まず最終的な目標の姿をきちんと描いた上で、それに対する卒業の要件ということをお考えいただければと思っております。  以上です。

【大野主査】  どうもありがとうございます。もう一つ議題がありますので、制度設計に向けた検討をこれから事務局でさらに深めていただきたく思います。次回の委員会の話題になりますので、ひとまずここで区切りとさせていただきます。
 続きまして、事務局より大学研究力の強化に向けて、これまでの主な御意見について説明をお願いします。

【馬場室長】  事務局です。それでは、資料3に基づきまして、大学研究力強化委員会の主な御意見について紹介させていただければと思います。こちらは前回も御説明したものを若干更新したものになっております。
 まず2ページ目、1ポツ、全学的な研究マネジメント体制の構築です。主に更新した部分を中心に御説明したいと思います。まず2つ目のポツ、URAや技術職員についてです。こちらの3行目に人材育成機能の強化や公的機関との連携も含め、対応をすべきではないかということを追記しております。こちらは、前回の山本委員のプレゼンに加え、高橋委員、相原委員、また小林委員の特許庁のお話を踏まえ修正しているところでございます。
 続いて5個目の項目です。こちらは藤井委員、また、片田江委員の御意見を踏まえて追記している部分でございますが、個人レベルでの研究の推進の観点からも、コアファシリティーやオープンラボなどの共有システムを整備することが重要である。その際、利用者が集まり、多く使われることで最先端の技術等の集積・洗練が進み、さらに技術の進展や知の集積等により、高度な測定や設備の維持・発展が行えるようになるといった、そういった好循環を生み出す仕組みを設計する必要があるのではないか。また、研究者のコアファシリティー等へのアクセスを全国的に確保することも求められるということを追記しております。
 また、6つ目の項目です。こちらは先ほどの御議論、また前回、福間委員はじめ複数の委員からもあったところでございますが、大学独自のそれぞれの研究力強化策につきまして、継続的に安心して実施できるような支援、取組が必要ではないか。大型プロジェクトの終了後に自走化のメカニズムを設けるなど、長期的に大学の自立を促す仕掛けを検討していくことが期待されるということを記載しております。
 続いて3ページ目、魅力ある拠点形成による大学の特色化、大学の研究基盤の強化の観点でございます。こちらは、例えば2つ目のポツ、これは吉田委員の発言を踏まえて追記しているところかと思います。地域の中核大学の単独では、大型のプロジェクトの申請や維持・発展が難しいため、大学間の連携を促進することにより、第2、第3のシーズを引き上げていく仕組みが重要ではないか。世界に発展するからこそ、地域に還元できる観点から、地域中核であっても、世界レベルに躍進させるために段階的に支援していくような枠組みが必要ではないかということを記載しております。
 また、一番最後の行には、新福委員から御指摘いただいたとおり、分野の多様性だけではなく、ジェンダー・ダイバーシティーも含め、多様な人材が活躍できる環境整備の重要性についても追記しております。
 最後、4ページ目です。組織間連携・分野融合による研究力の底上げの観点についてでございます。まず1つ目のポツ、最後の行ですが、受田委員から本日も御指摘があったかと思いますが、健全な共創の観点から切磋琢磨するだけではなく、国際卓越研究大学と互恵的な発展ができる関係を築いていくことも重要ではないかということを明記しております。加えて、次の項目についても、受田委員からの御質疑の中での御意見も踏まえ、アカデミアの世界では、これまでも分野の枠を超えた取組は自然発生的に行われてきたが、現状、機関の枠を超え切れないことによる閉塞感が生じているのではないか。機関の枠を超えるための具体的手だてとして、クロス・アポイントメント制度や中央教育審議会(中教審)で議論している基幹教員などがポイントになってくるのではないかというコメントを追記しております。
 さらに、上から4つ目、これはまたミッションにも関わるところでございます。大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点の活用に当たって、小長谷委員からも御指摘がありましたが、もともと我々も念頭にございましたが、この人文社会科学を含めるというところは明示させていただきました。
 続いて次の項目、こちらは、山本進一委員の説明や、それを受けた質疑の中でのコメントでございます。複数の大学、大学共同利用機関などが連携することで、研究者が結集し、新しい学問分野が創生されてきた。そこで同時に人材も育成し、参画した若い世代が次を担っていく。さらに、海外大学も含めた連携により、国際的な頭脳循環のハブになっていく。そういった大局的な構想を支えていくことが大事ではないかというような部分を追記させていただいております。
 次回、8月3日の委員会に向けては、これまでの強化委員会でいただいた意見も踏まえ、総合振興パッケージとの関係であったり、来年度予算の概算要求を見据えた具体的な施策や制度改正の方向性についても御説明していきたいと考えております。
 本日は、抜けている観点や、また、追記すべき事項等、そういった観点がございましたら、御指摘いただければと思っています。
 事務局からの説明は以上でございます。

【大野主査】  ありがとうございます。今御説明いただいた内容、あるいはこれも考えるべきだ、ここは一体どうなっているのかというようなことも含めて、御質問あるいは御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。  受田委員、お願いいたします。

【受田委員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございました。これまでの委員からの御意見、また、私の意見等も反映していただいておりますことを感謝申し上げます。
 その上で、まず2ページ目の御意見①ですけれども、これの一番最後の項目がちょっと私は意味が分からなくて、確認をしておきたいと思います。特に2行目の最後、「総合振興パッケージの対象となる研究大学においても、大学ファンドによる支援の有無にかかわらず」と書いてあります。これは、大学ファンドは国際卓越研究大学の話にもともとなっているはずで、総合振興パッケージの対象となる、例えば特色ある研究大学というところは、これは直接重なり合わないんじゃないかと思っていましたので、ここの文章が意味していることを確認しておきたいというのが1点です
 それから、先ほど4ページの一番上のところで互恵的な連携、そして吉田委員から互恵的な発展という言葉の提案があり、ここは反映していただいております。これもそうなんですけれども、これは全体にも関わるんですが、それぞれの項目の主語がいろいろと変化しているようにも思います。特に今、国際卓越研究大学と互恵的な発展ができる関係というのは、これは当然、地域中核大学あるいは特色ある研究大学で、総合振興パッケージの対象大学という意味だと思うんですけれども、その関係を明確化するというようなところと、それぞれの項目の主語が何なのか。先ほどの国際卓越研究大学と、この今議論していただいている資料3の関係性、この辺りがもしかすると非常にコンフューズしていく可能性があるんじゃないかと、文章をいろいろ見て感じたところでございます。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。事務局いかがでしょうか。

【馬場室長】  ありがとうございます。御指摘のまず最初の、大学ファンドと総合振興パッケージの対象となる大学との関係、受田委員のおっしゃっていただいているとおりで、我々としては、特色ある研究大学も研究活動を拡大し、成長していくということをきちんと環境を整える必要があるというところ、ちょっとそこら辺は主語が分かりづらかったところもありますので、その点、もう少し丁寧に書きたいと思います。以前、委員会の場においても、国際卓越研究大学が3%の事業成長をするだけではなくて、特色ある研究大学も当然ながら機能拡張して成長していくような環境を整えるべきではないかというような御指摘があったことを踏まえて記載していた部分ではありますので、その辺り、もう少し丁寧に書きたいと思っています。
 また、互恵的な発展についても御指摘のとおりで、我々としては、特色のある研究大学や国際卓越研究大学を含めて、日本全国の機関が互恵的な発展ができるような関係を築いていくということが重要だと考えておりますが、主語であったり文章の適正性については、再度確認をして趣旨を明確化するように努めていきたいと思います。ありがとうございます。

【大野主査】  そうですね、大学がやれることなのか、そういう環境をつくるということを文科省がやれるというステートメントなのかということをはっきりさせると、いろいろ明らかになることが出てくる、そういう御意見だったかと思います。ありがとうございます。
 いかがでしょうか、ほかに。小林委員、お願いいたします。

【小林委員】  すみません、よろしいでしょうか。2ページ目の、URAや技術職員等の人材も含めた研究マネジメント体制、これは研究マネジメントに特化した文章なので、しようがないのかもしれませんけども、この前の回に指摘させていただいたように、URAを知財にも巻き込もうというような動きもありまして、今、特許庁ではそういう体制をつくろうとして支援事業というのもやっていますので、そういう形のURAという、要するに知財を基にして研究も発展させるという、ちょっと逆のフィードバックもあるかと思ったので発言させていただいたのですけど、どういうふうな表現にしたらいいか、ちょっと難しいところかもしれません。
 それから4ページ目の機関の枠を超え切れないことによる閉塞感という2ポツ目ですけども、クロス・アポイントメント制度や中央教育審議会で議論している基幹教員などがポイントになるということは確かなのですけども、中教審でも私は何度も発言しているのですけども、国立間ではこれは可能な制度設計だと思うのですけど、実は国・公・私立で両方で基幹教員になるというのは、結構制度的に難しいんじゃないかと思うので、そういった実際に動かせるような形にしてほしいという旨でお話をしているんですけど、中教審では、それは議論の対象ではないみたいな感じでいつも却下されるので、ここでも発言させていただきました。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。どこで議論すればよろしいんでしょうかね。それも含めて、事務局、何かございますでしょうか。

【馬場室長】  ありがとうございます。まず1点目の知財、特許の話については、まさに御意見を踏まえて、公的機関ということを加えたところでございますが、その辺りもまたきちんと精査していきたいと思います。
 2点目の質問に関して、どう答えていいのか悩ましいところではあるんですけど、文部科学省内でしっかり担当部署、本日の強化委員会でも御出席している部分もございますので、省内できちんと連携して対応を検討していきたいと思います。

【大野主査】  ありがとうございます。それでは、高橋委員、お願いいたします。

【高橋委員】  今の小林委員の御指摘、URAと知財の関係について、補足的に状況を御説明しようと思いまして。  URAの15科目の研修科目の中に、既に産学連携と知財は含まれておりまして、そういう意味では、おっしゃった概念はここに入る、知財というキーワード自体は入っていないものの、URAの機能という意味では既に入っているものだと御理解いただいても大丈夫だと思います。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。吉田委員お願いいたします。

【吉田委員】  ありがとうございました。少しお時間をいただけるようなので、1つだけ追加をしたいと思います。  4ページの、先ほど受田委員からの御指摘があった、国際卓越研究大学の互恵的な発展、これはもう極めて重要な観点で、地域中核大学の観点から考えると、国際卓越がハブとなってあまねく拾っていただきながら全体を上げていくという、そういう総論的な観点、これはいいんですね。では、具体的などういう発展なのか、あるいは関係なのかというときに、やはり10兆円ファンドの対象大学は、国際卓越で世界に伍するというところを目指しているわけですから、地域中核大学が国際卓越大学の弱い点を補う部分、相補的あるいはさらに強い点もさらにアップする、そういうような関係があるとき、そういうときのみ、人的あるいは資金的な交流があってもよいのではないか。
 以上です。

【大野主査】  どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。今日の委員会全体について、何か御発言があれば、ぜひお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 よろしゅうございますか。やや早めではありますが、御発言がないようですので、今回はこのぐらいにさせていただければと思います。
 本日の大学研究力強化委員会はここで閉会とさせていただきますが、まずはその前に、事務局から事務連絡をお願いいたします。

【季武調整官】  事務局でございます。本日の議事について、もし改めて御意見がございましたら、事務局にメールなどで御連絡をいただければと思います。
 また、本日の議事録につきましては、運営規則に基づき公表いたします。事務局にて、今回も議事録案を作成の上、委員の皆様に確認をさせていただきますので、御対応をよろしくお願いいたします。
 次回の大学研究力強化委員会は、8月3日水曜日の開催を予定しております。詳細については追って御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。

【大野主査】  どうもありがとうございました。それでは、第6回の大学研究力強化委員会をこれで終了させていただきます。本日は、皆様お忙しい中、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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