科学技術・学術審議会 大学研究力強化委員会(第4回)議事録

1.日時

令和4年5月30日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 大学研究力強化に向けた取組 (1. 世界と伍する研究大学の実現に向けた大学ファンドの創設 2. 地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ 3. 大学の強みや特色を伸ばす取組の強化(大学研究力関係))
  2. その他

4.出席者

委員

  (主査)大野英男委員
  (委員)相原道子委員、伊藤公平委員、受田浩之委員、梶原ゆみ子委員、片田江舞子委員、小林弘祐委員、新福洋子委員、髙橋真木子委員、林隆之委員、福間剛士委員、柳原直人委員、山本佳世子委員、山本進一委員、吉田和弘委員

文部科学省

  (事務局)田中文部科学副大臣、柳文部科学審議官、池田研究振興局長、千原科学技術・学術政策局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育局連携担当)、森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術学術政策連携担当)、仙波振興企画課長、井上産業連携・地域振興課長、黒沼大学研究基盤整備課長、馬場大学研究力強化室長、季武大学研究基盤整備課学術研究調整官 他

5.議事録

【季武調整官】  それでは、定刻になりますので、これから科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会を始めさせていただければと思います。これからユーチューブでの配信も開始いたしますので、そちら、お含みおきいただければと思います。
 では、大野主査、どうぞよろしくお願いいたします。

【大野主査】  ありがとうございます。それでは、ただいまから科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会の第4回を開催させていただきます。皆様、お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、いつもどおりということになりますけれども、オンラインで開催をいたします。音声などに不具合がある場合には、随時事務局にお伝えいただければと思います。
 それでは、まず事務局より、本日の委員の出欠及び配付資料の確認をお願いいたします。

【季武調整官】  失礼いたします。事務局でございます。本日の委員の出欠状況につきましては、小長谷委員、藤井委員が御欠席です。また、伊藤委員は遅れて出席される御予定となっております。
 続きまして、配付資料の確認です。本日は議事次第に記載のとおり、資料1から資料3、参考資料1から参考資料3を配付しておりますので、御確認をお願いいたします。
 なお、本委員会は、原則として公開で行うこととしております。本日につきましても、事前に御登録いただいた方に動画を配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。
 最後に、オンライン会議を円滑に行う観点から、事務局よりお願いがございます。まず、発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。また、御発言に当たっては、手を挙げるボタンを押していただく、またはカメラに映りやすいように手を挙げていただければと思います。また、資料を参照される際は、資料番号、ページ番号、ページ内の該当箇所などを分かりやすく口頭でお示しいただければと思います。以上、御配慮いただければとお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

【大野主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。今表示されていますように、その他以外は議題1しかございません。大学研究力強化に向けた取組についてです。その中に3つ話題がありまして、それぞれ資料1、資料2、資料3と分かれています。先週公布されました国際卓越研究大学法に関連して最新の状況の御説明、さらに、吉田委員、そして、柳原委員に話題提供をいただくということになっています。それぞれの御説明の後で質疑の時間を設けるとともに、最後にまとめて議論する時間も設けたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それではまず、事務局より説明をお願いいたします。

【馬場室長】  ありがとうございます。それでは、事務局より今表示をしております資料1「大学研究力強化に向けた取組」に基づきまして、大学ファンドをはじめ、前回2月の第3回強化委員会以降の政府の最新の動向を御説明させていただきます。
 それでは、3ページ目を御覧ください。先ほど大野主査からもお話がありましたが、このたび、国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律が成立し、先週公布されたところでございます。審議経過に記載のとおりになりますが、2月25日に法案が閣議決定され、国会に法案を提出して以降、衆議院は4月28日に本会議で採決が行われ、賛成多数で可決し、参議院は5月18日に本会議で可決、成立し、先週公布されたところでございます。
 参考資料1に本日は法律の条文と新旧対照表を添付しておりますので、御参考いただければと思います。また、参考資料2、3に、それぞれ衆議院の文部科学委員会、参議院の文教科学委員会の附帯決議を添付しているので、御参考ください。
 附帯決議の詳細は省きますが、例えば強化委員会の議論にも関わる事項として一つ御紹介させていただきます。事項の4番目として、政府は、我が国の大学全体の研究力の底上げを図るため、個々の大学が、知的蓄積や地域の実情に応じた研究独自色を発揮し、研究大学として自らの強みや特色を効果的に伸ばせるよう、国際卓越研究大学以外、特に地方の大学への支援に十分配慮することとし、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの大幅拡充等により、十分な予算を確保することといった決議が行われたところでございます。
 続いて、資料1の3ページ目、2ポツのところに閣議後会見、法案の成立を受けて5月20日の閣議後会見において、末松文部科学大臣からも発言がございました。世界と伍する研究大学の実現と、地域の大学等も含めた我が国の大学の研究力強化に向けて、引き続き全力で取り組んでまいります旨の発言があったところでございます。文部科学省といたしましても、大臣の発言も踏まえ、大学ファンドを含む関係施策を総動員し、我が国の大学の研究力強化に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 4ページ目が法律の概要です。詳細な説明は省きますが、この法律を通じて実現したい国際卓越研究大学の将来像のイメージを5ページ目に記載しているので、御覧いただければと思います。
 5ページ目です。大学ファンドによるに支援を通じて、日本の大学が目指す将来の姿として3点記載しております。世界最高水準の研究環境で、世界トップクラスの人材が結集すること。英語と日本語を共通言語として、海外トップ大学と日常的に連携している世界標準の教育研究環境。3番目として、授業料が免除され、生活費の支給も受け、思う存分、研究しながら博士号を取得可能とすること。その3点を記載しております。また、右側に図示しているとおり、多様性・包括性のある環境において、人材・知の好循環や資金の好循環の中核となり、新たな知・イノベーションの創出を担っていただきたいと考えており、今後も政府の狙いを積極的に発信していきたいと考えています。
 なお、この将来像の背景として、現状の日本と海外の比較を6ページに記載しているので、御覧ください。こちらでございます。今申し上げた3つの事項それぞれについて関連データを記載しています。
 まず一番上が注目度の高い論文数(Top10%補正論文数)を記載しておりますが、現在、日本は中国等が大きく拡大している中、相対的にシェアが低下傾向にございます。その要因として、例えば2つ目の大学教授の平均給与等で見られますとおり、大きな差が海外とは生まれており、人材獲得競争で不利になっている状況もあるかと考えられます。また、3つ目の教員1人当たりの職員数で見れば、日本の大学が世界標準から大きく外れてしまっており、海外と支援スタッフの数や体制も見劣りしている状況でございます。こういったことが研究環境の悪化や研究時間の減少にもつながっているということが考えられます。さらに、近年改善しつつありますが、女性研究者比率やベンチャー企業の設立時においても、世界と差が生じている現状があるかと思います。
 また、大学院生の留学生の割合、外国人教員の割合については記載のとおりですが、優秀な人材の獲得競争が激化する中、国際頭脳循環のハブとしての役割が期待されているところでございます。
 なお、最後の博士号取得者数や経済的支援については、近年政府としても様々な取組が進められており、また、大学ファンドの運用益から全国の博士課程学生に対して当面200億円程度の支援を行う方向となっております。今後、国際卓越研究大学の認定に当たり基本方針を策定していくことになりますが、このような日本と海外との比較も踏まえつつ検討していきたいと考えております。
 続いて、7ページ目は、前回も御紹介したCSTIの資料です。本日はこの右上の大学基金の状況について米国の事例を御紹介したいと思います。
 8ページ目は、U.S.Newsの記事を踏まえて作成しておりますが、大学の財政力と教育研究機関の質は直接的に関係しないものの、丸1の表にも示しているとおり、大学独自基金(Endowment)トップ10大学は大学ランキングでも上位を占めており、強い相関を示していることが指摘されています。現在、米国では1兆円を超える基金を有する大学が20程度、1,000億円を超える大学が150程度あると言われていますが、大学独自基金は事業運営の独立性や財政面の安定性の向上に貢献していることから、今後、国際卓越研究大学に限らず、大学独自基金を拡充していくための方策が求められるところだと考えております。
 続いて、9ページ目です。実際に大学独自基金がどのように使用されているか、事例としてハーバード大学の例を引用しております。左の円グラフに大学全体の収入源を記載していますが、ハーバード大学の場合、青色でくくった部分、約4割、39%が大学基金の運用益からの配分となっています。それに対して、丸2の棒グラフが学部・研究科別の収入源を記載しています。収入源が多様化しており、具体的には黒色部分が大学基金からの運用益となっておりますが、例えばDivinity、宗教の学術研究を実施する神学校や、また、棒グラフの左から3番目の人文・社会科学などに手厚く配分する一方、医学や工学分野においては、赤色の政府や企業からの委託研究等の割合が高くなっているところございます。このように海外でも、学内一律に配分したり、ましてや目先の研究だけに投資するということではなく、学部・研究科別の状況が異なる中、大学基金が学内の教育研究活動や成長戦略を下支えしているというところが見てとれるかと思います。
 続いて、10ページ目です。右上の世界と伍する研究大学のイメージとして、大学を中核とした好循環に向けた取組を11ページ目に事例として記載しております。
 11ページ目を御覧ください。左側に、次世代技術の開発・実証として、ミシガン大学自動運転車実験施設、Mcityの事例を記載しております。ミシガン大学運輸研究所は、連邦運輸省や州交通局と一体となって2012年から約3,000台の車両が参加する協調型運転支援システムの実証実験を実施し、2015年に中核実験施設としてMcityを建設しています。広大な敷地に多様な走行環境を再現し、写真にあるとおり、交通管制システムの交通シミュレーションなどのIT基盤も整備し、総合大学として大学が有する社会科学、人文科学などの研究者が連携し、多面的な研究を機器・システムの開発と同時に行う体制となっております。アメリカのフォードなどとともにトヨタなどの日系企業も中核企業として名を連ね、まさに大学が中核となることで、プラットフォームとしてのフィールドを整備することで投資の拡大にもつながっている事例かと思っております。
 右側が、異分野融合研究の推進に関連して、ボストンにあるブロード研究所の事例を挙げています。こちらはハーバード大学とMITの遺伝子医学の研究所が2004年に統合改組して設立され、両大学が共同で運営されております。もともとブロード氏という篤志家の1億ドルの寄附により創設されましたが、2008年には安定的に運営するために4億ドルの基金が造成され、現在では毎年度、政府からの支援だけではなく、円グラフにもありますとおり、寄附や産業界、運用益などを得ながら運営しているというところでございます。現在、ボストンのケンブリッジエリアは、バイオクラスターとして次世代医療やゲノム編集技術のメッカとして知られておりますが、関連病院とも連携し取り組んでいるというところも見てとれるかと思います。政府としても、大学ファンド等を活用することにより、公共財としての大学を中核とした好循環を形成していきたいということを考えております。
 続いて、12ページ目でございます。こちらは大学ファンド創設に関するこれまでの進捗と今後のスケジュールを、今回の法成立に伴い更新しております。令和6年度以降の大学ファンドからの支援開始に向け、今後、法律に基づく基本方針を策定し、年内には国際卓越研究大学の公募を開始したいと考えています。その検討状況については、随時この強化委員会でも御報告させていただきたいと考えておりますので、どうぞ御承知おきいただければと思います。
 なお、13ページ目に、法律の個別条文の詳細を記載しております。今申し上げた基本方針については、1番上に記載している事項を規定していくことを想定しておりますが、大学の認定基準については、先ほどお示しした海外との比較も念頭に置きながら、研究力、ガバナンス、事業成長の観点で規定していくことを想定しております。また、大学に策定いただく強化計画のイメージは、一番下に記載している事項について規定していくことを想定しておりますが、次のページに大学支援の考え方のイメージを策定してます。
 14ページ目ですが、国際卓越研究大学は、欧米のトップレベル大学と同様に、大学の総合知を活用した社会的価値創出や社会課題解決に資する研究基盤への投資だけではなく、大学の持続的成長に向けて、新たな学問分野や若手研究者への投資など、直ちに社会的価値につながらない次世代の知の創出にも取り組むことが求められており、長期的な視野に立って支援を行っていく必要があると考えています。左下にファンドからの支援のイメージを記載しておりますが、これらはあくまでもイメージであり、実際には、大学から提出された強化計画に基づいて大学ファンドの支援を活用されるということを想定しているところでございます。いずれにせよ、引き続き検討状況については本委員会でも随時報告させていただければと思います。
 続いて、総合振興パッケージの状況について改めて御説明させていただきます。16ページ目に総合振興パッケージから抜粋しておりますが、繰り返し御説明しているとおり、4ポツ目のなお書きに記載のとおり、本委員会の議論の動向を踏まえつつ、大学の強みや特色を伸ばす取組の強化を図っていくこととしております。
 17ページ目については、第2回でも集中的に議論いただいた今後の取組の方向性として3点、丸1として魅力ある拠点形成による大学の特色化、丸2、大学の研究基盤の強化、丸3、組織間連携・分野融合による研究力の底上げの3点を求めているところでございます。  19ページ目に前回の御議論の紹介をしておりますが、今後の議論の方向性としては20ページ目を御覧いただければと思います。こちら、総合振興パッケージを基に多様な研究大学群の形成に向けてということで作成しておりますが、これまでの委員会での議論も踏まえ、大きく分けて2つの方向性が重要であると考えております。
 まず左上、メニュー1として、個別の大学に対する支援策です。左側に、日本全国の大学に対して、魅力ある拠点形成による大学の特色化として、これまでも文部科学省として例えば世界トップレベル研究拠点プログラム、WPIや共創の場形成支援プログラムなどの事業がございますが、今後の方向性として、既存の施策で十分なのか、改善する必要があるのか、拡充するべき要素としてどういったものを考えるのか、そういったところが議論の論点として一つあるかと思います。
 続いてメニュー2として、大学の枠を超えた支援策です。特定の強い分野における人材流動や共同研究の促進等を通じ、互いが切磋琢磨できる関係を構築していく。これに向けては、これまでも大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点等の共同利用・共同研究体制なども構築されているところございますが、国際的な動向や研究DXの進展を踏まえつつ、大学研究基盤としての役割・機能をどのように強化していくべきか、そういった論点が考えられるところございます。
 本日の御議論も踏まえまして、次回以降、文部科学省としての取組を打ち出していきたいと考えておりますので、ぜひ活発な議論をお願いし、私からの説明とさせていただければと思います。
 事務局からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

【大野主査】  どうもありがとうございました。それでは、今の御説明に対して、御質問あるいは御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。山本委員、お願いします。
【山本(佳)委員】  山本です。9ページのハーバード大学の収入源をどんなふうに、分野によって活用も違うのか、収入源が違うのかというところのグラフについて、これは私の感想です。新しい法律に対して今もなお研究者のほうから批判があるところでは、やっぱり人文・社会科学だとか基礎科学のほうがおろそかにされるんじゃないか、外部資金が獲得できるところばかりにならないかということがかなり大きいと思っております。それに対してこのグラフというのは、とても意味があるといいますか、よく分かる資料だなと感じました。つまり、決まった、対象になった大学の場合は、その大学の中で、社会の賛同を得てお金を得るセクションもあるだろうし、そうでないところも逆に基金のほうからきちんと長期的に基礎的で地味なところもやっていくんだという、この違いが学内にある。だからこそ大きな大学での長期的な成長になるんだというところ、これはもっと発言していったほうが、社会に発信していったほうがいいのではないかと感じました。
 以上です。

【大野主査】  まずは御質問、御意見をいただいてから、事務局に発言をお願いします。
 それでは、新福委員、お願いいたします。

【新福委員】  私もこのハーバードの例における多様な分野に政府からの支援を使うことができるようなイメージというのは非常に重要だと思っておりまして、そのことも踏まえ、やはりそこに使っていくには、外部から得られる寄附金や、産業界との連携がますます求められていくのではないかと思います。
 そうしたときにはやはり大学の広報力というのが非常に重要になってまいります。私も実は4月から国際広報担当の副学長を拝命しておりますが、事務職員と直接的に仕事をし始めて思うのは、広報に対して研究者があまり力を入れていなかったり、広報担当の事務職員が論文の結果を正しく魅力的に発出するということは、必要な人材がいないと容易ではなく、特に多くの数を行うというのは難しいということが分かってまいりました。ただ、研究者の時間を使って、また研究の時間を減らして行うというのも望ましくはないと私も思いますので、そういった発信ができる人材の雇用、日本国内にも国際的にも発信できる事務職員が必要になってくるかと思います。
 もう1点におきましては、6ページにありました諸外国との比較の中でやはり気になるのが、女性研究者割合がずっと低い。上がってきていると申しますが、あまり正直、数年変わっていないと思います。ここにおきましても、女性研究者が、特に若手で小さいお子さんがいると責任が多重になるにも関わらず、環境的な整備や配慮が十分ではないということだと思います。例えば研究者同士ですと、男性の研究者と女性の研究者が御夫婦でも離れたところに暮らしていらっしゃることをよく見かけます。これからDXがますます広がっていくと思いますので、働き方に関して、遠くからでも働ける、遠隔的に働ける、または採用の際に御夫婦一緒に採用ができるような仕組みをますます拡充させていく必要があるというのを感じました。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。広報関係を強化しようとしますと、教員1人当たりの職員数の問題もございますね。
 受田委員、お願いします。

【受田委員】  ありがとうございます。私は質問です。20ページに多様な研究大学群の形成に向けてというイメージ図をお示しになられています。これは例示だというふうには認識をしておりますけれども、メニュー1にA大学、B大学、C大学というのがあって、それぞれに世界トップレベルの研究拠点が入っているというところが、A大学、B大学のパターンはある程度想像ができるんですけれども、C大学というのは、これはどういうイメージをお持ちなのか、もう少し詳しい御説明をいただければ幸いでございます。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。時間の関係がありますので、まず今回お答えいただいて、今手を挙げておられる皆様までを一区切りとさせていただきたいと思います。
 それでは、事務局、いかがでしょうか。

【馬場室長】  御質問ありがとうございます。今の受田先生の御質問に対してまず答えさせていただければと思います。こちらについては、イメージとしては、まさに高知大学のように、前回御説明いただいたオランダの事例に基づいたIoP、ああいったものにおいて、地方大学であっても、世界から目に見える拠点をつくることによって、地域に根差した研究ができるというところもイメージはさせていただいているところでございます。
 その他の御質問については、この後まとめて回答したほうがいいかと思いますので、先に御質問をお受けしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【大野主査】  ありがとうございます。もし追加がございましたら、またこの後でお願いしたいと思います。
 相原委員、お願いいたします。

【相原委員】  14ページの国の支援の考え方として、研究環境の整備と若手研究者支援、専門職人材の育成はいずれも必須だと思います。それに加えて重要な点としまして、プロジェクトを進めるために必要な人件費、これは研究職、技術職、事務職全ての人件費を意味しておりますけれども、それをしっかりつけることだと思います。モチベーションの高い中堅以上の大学教員や研究者がプロジェクトの維持のために疲弊してしまって、本来の業務も新たなプロジェクトも進まなくなってしまうということを防ぐためにも、ぜひ研究を支える人材のための人件費の確保を確実に進めていただきたいと思います。
 それからもう一つですけれども、16ページの記載を見ますと、このパッケージは、知と人材の集積拠点である大学が、それぞれの強みを生かして、グローバル課題の解決や社会変革を牽引することを目指すことにあるとされています。我が国全体の成長の駆動力とも記載されています。そこで、今さらですけれども、地域の中核であってもICTを活用すれば世界中とつながれる現在において、地域中核という地域色の強さを強調するような表現が本当に適切なのかという点にちょっと疑問がありました。地域の大学をクリエーティブな人材が集まるプラットフォームにして、地域課題の解決からグローバル課題の解決に発展させるということを意図するなら、目指しているのは、世界とつながる特色ある地域研究大学と言うべきものではないかと思いました。
 感想のようなコメントのようなものですけれども、以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。人件費の手当てに関しては、私も非常に重要なポイントだと思います。
 それでは、林委員、お願いいたします。

【林委員】  私も実は人件費のところなんですけれども、研究力を我々議論しているんですけれども、いろいろ議論していますが、何だかんだ言ってもやっぱり研究者の数ですよね。どこのレポートを見ても、研究は人材だとどこにだって書いてありますので、やはりどうやって研究者を確保していくかということだと思います。
 今回資料を見ても、例えば6ページとかでも、例えば教員の給与とか、あるいは研究者と職員の比率みたいなことは書いてあるんですが、ただ、こういう議論がある一方で、週末とかあるいはこの一、二週間、再びというか、日本を代表する大学及び研究機関における雇い止め問題がかなりメディアでも報道されています。今始まった問題ではないんですが、改めてこの間の日本の研究力の低下を考えても、教員、研究者の不安定雇用が、研究者という職は魅力がないものだということで、それで優秀な博士学生が進学しなくなってきたと。今こうやって博士に経済的支援をして何とか行ってもらおうとしているんですけれども、その後どうなるのかということがなかなかちょっと、要は、博士を終えた後どうなるのかが見えなくて、何か昔のポスドク1万人計画と同じことを見ているような既視感もあるわけでございます。ここを議論せずにほかのことだけを議論していて、本当に研究力が強化されるのだろうかとちょっと疑問がございます。
 皆さん御承知のように、改正労働契約法によってこうやって10年間の任期がついているわけですが、その法律の趣旨と現状は明らかにずれているということはもう現場の人間はよく分かっているところでございます。やはり法律の趣旨が実現されていないのであれば、文科省は厚労省、内閣等と連携しながら法律を変えるか、あるいはせっかくこういう新しい国際卓越という枠が出来た、あるいはほかの地域のところもそういう枠が出来るかもしれませんが、規制緩和の中で特区とかそういう形で違うものを実現していくか、あるいはしばしば私も行政の審議会に出ていると、行政府からは予算化するような案件というのはよく出てくるんですけれども、制度を変えようという案件はあんまり出てこないんです。
 労働契約法を改正しなくても、例えば今大学はTLOに出資できるわけですけれども、大学の中に独立した研究実施法人みたいなものをまた置いてそこで雇用するとか、あるいは大学と研究機関、研究機関を大学のキャンパス内に置いて、そこで人材をローテーションさせるとか、あるいは今だって資金配分機関で雇用されている研究者はいるわけで、競争的資金の中で大学雇用と資金配分機関での雇用をローテーションさせるとか、幾らでも制度的に考えようはある気がします。やはり研究者を安定雇用して、研究者が望む研究ができる環境をつくるということを改めてもう1回考えていかなければいけないんじゃないかなという印象を最近受けております。
 以上です。

【大野主査】  どうもありがとうございます。研究者あるいは研究をする人生が魅力的でない限りは、我々のこの様々なパッケージなどが絵に描いた餅になりますので、非常に重要なことだと思います。ありがとうございます。
 続きまして、福間委員、お願いします。

【福間委員】  金沢大学の福間です。11ページに挙げられていた、海外の大学のかなり大規模な自動運転の設備だとか、あるいは医学系の産業界とのコラボレーションが非常に好き事例として挙げられていたんですけれども、私、WPIに関わってきていろいろな大学が大きな国際拠点をつくるという事業が国の支援で走っていて、それが出来た後にやっぱりその後自走化するのがすごく難しいという問題が常に挙げられている中で、国内でも阪大が大きな製薬会社と契約したりとか、あと、東大のケースでカブリという大きな財団と契約するなどの形で自走化を実現している部分もあるんですけれども、この自動車の例とか医学の件を見ても、先ほども御指摘があったと思うんですけれども、研究者自身がすごく大きな時間を割いてビジネスマンみたいなことをやって、いろいろな投資家に頭を下げてお金を出してもらう作業を研究者がやるべき仕事なのかというのは非常に疑問です。
 そのときに、地方大学では特に、そんな大きな拠点を自走化させるという機会も多くはないので、そこで大学が頑張ってノウハウを蓄積しろと言っても、その機会自体がすごく限られるので、成功体験、失敗体験を繰り返すことでこういうものはノウハウを蓄積していくものだと思うのに、そんな限られた機会のノウハウではなかなかうまくいかないんじゃないかということで、僕が思うには、特に地方大学にとっては、そういうものは結構大学横断的にいろいろなプロジェクトの自走化をするというノウハウをためるための組織が何かないと、ノウハウを共有していかないとすごく効率的じゃないというか、非効率なんじゃないかという印象を持っています。
 そうでないと、本当に先ほど挙げた製薬会社とか財団の件も、何か個人に頼った、個人技に頼った確率的事象で起きるのに、運任せみたいな話になってしまって、本当に持続的にノウハウをためて、そういうものをしっかりとできるだけ実現させていこうという形になってないんじゃないかという不安はあるので、そういう大学横断的な組織とかサポートの仕組みが必要ではないかなと感じています。
 以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。つなぐ仕組みの中にもう一つの軸があるのではないかという御発言だったと思います。ありがとうございます。
 それでは、小林委員、お願いいたします。

【小林委員】  ありがとうございます。私は大学ファンドの基金のことでちょっとお話ししたいと思います。10兆円ファンドの法律が制定されて、国際的に卓越研究大学に資金を供給するという仕組みは非常に野心的な仕組みかと思いますけれども、その前に、海外ではやはりハーバード大学を中心に私立大学が独自の基金を持っていて、独自のリスクを持ちながら運用していっているというような現状があります。日本で実際には大学基金というのは国立大学もいろいろトライはしたようではあるんですけれども、はっきり言ってあまり成功していない。それだけのEndowmentが集まらない。それがなぜかということをもうちょっと調べていただいて、大学が基金を集め運用しやすいように、そういう仕組みもちょっと考えていただければ、それぞれの大学がそれぞれのリスクと責任に応じて、そういった運用ができると思うんですね。
 ハーバード大学もこの基金がこれだけ成長するには何十年、四~五十年かかったという話も伺いましたけれども、大学によっては、基金を大学とは分けてリスクを別に転嫁させるとか、いろいろな仕組みが米国では可能になっているようなんですけれども、日本でもそういったものを少し考えていただきたいと思います。それが事務局にお願いしたいところであります。
 ほかにもいらっしゃいますから、これぐらいにしておきます。以上です。

【大野主査】  ありがとうございます。重要なポイントだと思います。
 最後ですが、伊藤委員、お願いいたします。

【伊藤委員】  あえて私も私立大学のほうの立場からちょっと発言させていただきます。まず、先ほどの9ページの各大学の収入の中身というのが、ハーバードのものが出ていましたけれども、これ、早稲田や慶應の場合は、稼ぎ頭は圧倒的に文系の学部です。学費で稼いでいます。理系の学部は、稼いでいるつもりなんですけれども、実は逆に稼いでいません。なぜかというと、いくら外部資金を取ってきても、間接経費の割合が低いからです。
 間接経費の割合を幾らまでにすればいいかというと、例えば3割、4割として、オーバーヘッドも全て同じような割合にしますということになると、当然のことながら理系学部が稼いできたお金に対するオーバーヘッドの一部が様々違う学部に回すことができるようになるわけですけれども、そのオーバーヘッドを慶応や早稲田だけが4割にしますといったときに、当然、そんなに高いんだったら違うところに頼みますということで違う大学に、例えば国立大学の皆さんとかも足並みをそろえてくださらないと、なかなかそっちに行ってしまうということなので、やはり私立として経営していこうと思ったときには、オーバーヘッドを何%にするかというのが、実は研究大学としてやっていくときに結構重要だと私は考えています。
 また、先ほど小林委員がその前におっしゃっていましたけれども、どれほど、要は、基金を集めればいいかと。慶應義塾は今1,000億円近くの基金があり、それが一応日本の中ではトップということになっていますけれども、私たちとしては、5,000億円の基金がまずあれば、しかもそれが奨学金だけに使えれば、大体半分の学生に対して100万円の奨学金を渡せるんです。早稲田の場合は7,500億円集めると、半分の学生に対して100万円の奨学金が毎年与えられるということです。そういうふうに考えていくと、それが実際にハーバードとかがやっていることなんですけれども、その辺のところも含めてしっかりとした奨学金をやろうとすると、5,000億円ぐらい、今の私たちの基金の5倍以上集めなければいけない。
 そのためにはやはり寄附に対する税制度を相当工夫していただかなければいけないところであり、アメリカと日本と比べると、それほど単年度当たりの寄附金に対する税制とは違わないんですけれども、違いがあるのは、例えばアメリカでは5年間に平均して寄附税制の優遇が得られる。つまり、今年はたくさん寄附するんだけれども、それによってぼんと税金が取られるのではなくて、それが5年間の平均でおしなべられて、結果的には、今年はたくさん寄附しやすいんだけどという年にたくさん寄附がもらえるというようなことがあるので、その辺のところをどういうふうに工夫していただきながら、結果的に私立大学なんかでも寄附がもっと集めやすくするかというのが大きなところだと思います。
 結果的には、今、研究力の強化と言っていますけれども、早稲田・慶應レベルにおいても、何だかんだいって学部教育を重視、学部を重視しているので、それをどこまで研究大学として研究力をミッションとして表に出せるか、これは私たちの問題ですので、それをしっかり出すためにも、オーバーヘッド、それから、様々な寄附金の集めやすいやり方というのは重要になると思っております。
 以上でございます。

【大野主査】  どうもありがとうございました。基金の造成の環境、さらには、収入のある分野というのはどういうものなのかということで、私立大学の視点を御紹介いただきました。
 この後、事務局から御発言をいただいた後、今日は田中副大臣に御出席いただいていますので、田中副大臣から一言御挨拶をいただきたいと思います。
 それではまず、事務局から、質疑応答、意見に対して発言をお願いいたします。

【馬場室長】  ありがとうございます。それでは、事務局のほうから、回答させていただければと思います。
 資料1の5ページ目をもう一度表示させていただければと思います。冒頭の山本委員、新福先生からも御説明あった部分にも関わると思います。我々、国際卓越研究大学、どういった大学をつくっていきたいのかというところを、今回こういった形で、学生の方も含めて分かりやすく示していくことが重要ということで策定しているところでございます。やはり海外の大学を中心に、大学独自基金を積み上げた結果、どういったものに使っているかということに関して申し上げれば、やはりスタッフとか研究環境であったり、そういったところに使って将来的な投資をしっかりしていると。それを持続的な成長にきっちりとつなげていくというところが恐らく重要かと思っています。
 福間委員からも地方大学の話がありましたが、そういった構想力をどう大学として描き切れるかという部分については、研究者だけではなく、むしろ研究者が研究に専念できるよう、それをサポートするような大学の体制というものが、1大学で難しければ、複数連携しながら取り組んでいくということが重要であろうと思っているところでございます。
 また、林委員からの御指摘、雇用の話がありました。こういった部分に関しましても、魅力ある環境をつくっていくということが重要な観点かと思いますので、引き続き、文科省のみならず、政府全体で考えていかなければいけない課題だと思っております。
 また、小林委員、伊藤委員から、私立大学の観点からの御指摘もありました。我々としては当然同じような考えを、国立大学であっても公立大学であっても重要な指摘かと思っております。大学が公共財として多様なステークホルダーが支えながら成長していくというものを築き上げていくためにどういったものが必要なのか、今おっしゃっていただいた部分も含めて引き続き検討していきたいと思います。
 本日の時点では十分に回答し切れないものもあるかと思いますが、それについてはまた宿題として、次回以降、文科省としての考えも整理していきたいと思います。
 事務局からは以上でございます。

【大野主査】  ありがとうございます。やり取りはまだあるとは思いますけれども、最後にそれは回させていただきたいと思います。
 それでは、田中副大臣に御出席いただいておりますので、田中副大臣、一言御挨拶をよろしくお願いいたします。

【田中副大臣】  ありがとうございます。田中英之でございます。大野主査はじめ、委員の先生方、今日も大変忙しいところ、この大学研究力強化委員会に御参加いただいて、本当にありがとうございます。もう既に今、役所のほうからの説明があって、本当に活発な御議論をいただいて、本当にありがたいなという思いであります。
 先般、国会のほうで、この間ずっと関心をお持ちいただいておりました、国際卓越大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律が成立をいたしました。今後は大学ファンドによる支援の開始に向けて準備をするわけでありますけれども、認定、また、助成などに関する基本的な方針の検討を進めて、年内に支援対象大学の公募を始められればと思っております。本委員会でも、この基本方針の策定に向けて必要に応じて委員の皆様方に御意見をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  また、今日は、総合振興パッケージに関して示された今後の取組の方向性、また、具体化、実現化に向けての具体的な取組事例として、吉田委員、また、柳原委員から御発表いただくと聞いております。文部科学省として本委員会の議論も踏まえて具体的な施策につなげてまいりたいと思っておりますので、引き続き、皆様方には活発な御議論をお願いしたいと思っております。
 本当に今日は忙しいところ、皆さんありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。ありがとうございます。

【大野主査】  田中副大臣、どうもありがとうございました。
 それでは、今御紹介がありましたように、吉田委員から岐阜大学の取組について御発表いただきたいと思います。それでは、吉田委員、よろしくお願いいたします。

【吉田委員】  それでは、よろしくお願いします。スライドを事務局のほうからよろしくお願いします。
 皆さん、改めましてこんにちは。このたびは大変貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございます。本年4月より岐阜大学長を拝命いたしました吉田和弘でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 早速ですが、岐阜大学の研究力強化についてお話をさせていただきます。スライド2枚目をお願いします。まずは最初に、岐阜大学の紹介をさせていただきます。「学び、究め、貢献する」、「人が育つ場所」という理念の下、スライドの左のごとく、岐阜大学は、5学部、1学環、8研究科で、附属病院、附属小中学校を有した中規模総合大学でございます。御存じのとおり、岐阜大学と名古屋大学は2020年4月から法人を統合し、新たに発足した東海国立大学機構として管理運営を行う1つの法人の下に、両大学が連携して教育研究活動に取り組むことになりました。
 スライド3になります。本日のお話しする内容になります。本日は、東海国立大機構の設立、皆さん恐らく興味がおありの、岐阜大学では何が変わったのかということ、それから、世界と伍する研究力の強み、「地域共創の場」としての地域企業との産学連携、「地域創生のハブ」として自治体との連携による地域活性化、そして、5番目として強み・特色を生かした研究の推進と、将来構想概要案、さらには、研究力強化に必要な支援の御提案という形でお話をさせていただきたいと思います。
 まずは、岐阜大学では何が変わったのか。その前に、東海国立大学機構についてお話しします。東海国立機構は、国際競争力と地域への貢献力の2つのミッションを同時に達成することで、大学改革の一つのモデルとなることを目指して設置いたしました。東海国立大機構スタートアップビジョンをスライドのごとく策定し、構成員による共有と学外に向けた発信を行っております。
 まずは右上の図ですけれども、「勇気をもってともに未来をつくる」という共通理念の下、アカデミック・セントラルを設置し、教育に関わり、共同基盤整備の企画・立案及び両大学に共通する人材育成などを行うこととしました。同時に、デジタル化を推進するデジタルユニバーシティ構想を推進しております。左の下の図ですけれども、両大学のリソースを統合した新たな4つの機構直轄拠点、すなわち、糖鎖研究、航空宇宙、医療データ、農業、この4つの分野について、両大学の英知を結集し、特色ある世界最先端研究拠点を目指しています。右下を御覧ください。地域共創の観点から提唱しているのが、TOKAI-PRACTISSです。中部地域の産業構造を未来型へ転換し、大学・産業界・地域発展の好循環モデルを実現し、これらの発展の中で研究力の強化も図るという構想でございます。
 それでは、岐阜大学の、実際何が変わったのか具体的にお示しします。左のほうを見ていただきますと、まず両大学の強みを生かした産官学連携の研究体制の強化。丸1につきまして、先ほど御紹介いたしました機構直轄4拠点、大学間の枠を超えて研究教育の推進が加速しています。後ほど紹介しますが、糖鎖研究におきましては、共共拠点の認定、国際プロジェクトへの発展、目覚ましい成果が得られています。丸2は、イノベーション創出環境強化事業の採択を契機とした機構横断型プロジェクトの実施などにより、研究者の意欲を高め、研究力強化を推進しています。丸3は、学術研究・産学連携本部を設置し、機構としての産学官連携体制を強化いたしました。地域の中核大学の産学融合拠点にも採択され、設備整備も加速しております。丸4は、コアファシリティ構築支援プログラムの支援を受け、両大学が持つ基盤設備のリソースを共有化しております。
 スライド右上を御覧いただきますと、教育改革に対して、先ほどのアカデミック・セントラルによる大学間の連携強化、それから、連携開設科目による教職課程の開設、博士の課程への支援、また、両大学合わせたジョイント・ディグリープログラムの推進を行い、全国ジョイント・ディグリープログラム協議会を4月に発足し、岐阜大学が事務局を担当することになりました。そのほか、先ほどのデジタル化の推進、また、一番下の事務体制の合理化・効率化・機能強化、この推進ができたことが大きな点でございます。
 次に、世界と伍する研究力の強みについてお話しいたします。大変ビジーなスライドで申し訳ありませんが、このスライドが本日のキースライドの一つとなります。現在、共共拠点にも認定されております糖鎖研究が、国際プロジェクトへ大きく発展するに至った経緯を示しています。
 スライドの真ん中、ここがいつも馬場室長から御紹介いただく三角形。岐阜大学内で1人の研究者が科研費などの研究を育て、大型の研究プロジェクトとなり、さらに研究のセンター化を示したもので、この糖鎖プロジェクトがまさにこれに当たります。
 スライド下には、その経緯、背景に示した矢印は発展の様子を説明したものです。ステージ1、左を御覧ください。この頃は、50年も前から1人の研究者から始まった研究が、ステージ2として、2007年にWPI物質-細胞統合システム拠点、これは京都大学のiCeMSのサテライトとしての参画を機に研究が加速してまいりました。御存じのとおり、10年たつとWPIは終了し、研究のまさに分岐路に立たされたわけであります。ここでは、優れた研究成果や自前での若手の育成、これもできつつありました。当時の学長のリーダーシップによる自己財源の確保、それから、概算要求による国からの支援、研究者の資金獲得努力などによって、岐阜大学ではこのプロジェクトの研究を推進することができました。2016年には、生命の鎖統合研究センターを設立し、異分野融合研究を拡充いたしました。
 しかしながら、地方大学では、さらなる発展をどうするかという大きな課題にぶつかりました。その時期にできたのが、名古屋大学との経営統合でございます。スライド左上に記載してございますように、岐阜大学と名古屋大学の強みの部分が強化され、機構直轄の糖鎖コア研究所を共同設置いたしました。こうすることで、ステージ3、右下を御覧ください。両大学で53名の研究者まで増強し、機構設立とともに機構の重点施策となる直轄拠点として認定され、機構長はじめ執行部との密接な連携、研究成果の報告、その進捗を全体として支援してきました。さらに、自然科学研究機構並びに創価大学との連携、共同研究で、2022年度には糖鎖生命科学連携型ネットワーク拠点に認定され、日本全国100名を超える研究者が関わるオールジャパン体制の研究体制、これが構築でき、この分野で世界をリードするに至りました。また、文科省の学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップの策定、ロードマップ2020に掲載されるに至りました。
 このように、地域の大学からこつこつと研究を重ね、共同研究・連携を重ね、多方向からの支援を得ることで、世界トップレベルの研究、ヒューマングライコームプロジェクトへの展開が可能となりました。
 スライドにおきましては、糖鎖については、分野の異なる先生にはあまり耳にしないことかと存じます。スライド左に示しましたが、ヒューマングライコームプロジェクトとは、簡単に言うと、ヒトの遺伝子の解析に例えると、ヒトゲノムプロジェクトに相当すると考えていただけるとよいと思います。ヒトの細胞の表面には糖の鎖、糖鎖が突き出ていて、まだ全構造の解析ができていません。この糖鎖の全構造の解明、ライブラリー、網羅的検出の開発を行うことで、多くの病気の原因、創薬につながる研究です。例えば糖鎖というのは、血液型や神経難病、がん、インフルエンザやCOVID-19などウイルス感染にも関与します。
 今、日本はこの領域でリードしていますが、諸外国は国を挙げて支援しており、すさまじい勢いで迫ってきており、世界のトップとしてのさらなる発展には、我が国でも国家的なプロジェクトとして国からの支援が私は不可欠であると考えております。繰り返しになりますが、昨年11月に文科省の共同利用・共同研究拠点、糖鎖生命科学連携ネットワーク型拠点に認定され、糖鎖研究を推進する共創的研究プラットフォームとして、研究者に対してオールジャパン体制として広く研究支援を行うとともに、多様な分野の統合・融合的な糖鎖研究の立案をできる、実施できる体制、これが構築できたわけでございます。
 本学の糖鎖研究に携わる若手研究者が、2020年、2021年に創発的研究支援事業に採択されており、糖鎖研究に対する期待の高さがうかがわれます。また、スライド右には、名古屋大学においても2020年に13人、21年には25人と順調に採択者が増加し、東海機構では2期累計では41名となり、東大に次ぐ採択者となっており、これも、両大学の統合効果の現れであると考えております。
 次に、地域共創の場として地域企業との産学連携についてお話しします。スライド左上にお示しますように、2024年に岐阜大学のキャンパス北側に高速道路が開通し、インターチェンジが開設、2027年には岐阜薬科大学が岐阜大学に接して移転を完了するため、これらを契機に岐阜市が提案するライフサイエンス拠点構想の実現に向け連携を行っています。また、スライド中央を御覧ください。内閣府と岐阜県の支援を受け、岐阜県や企業との連携により航空宇宙生産技術研究センターを設立し、地域産業の発展に貢献しています。さらに、スライド右、研究、産学連携の基本方針やアクションプランを取りまとめた岐阜大学地域展開ビジョン2030を策定いたしました。これは各部局のみならず、部局間を横断して地域創生に資する取組を全学的に実施すると。これらの取組は、スライド左下に示しますように、先ほどのTOKAI-PRACTISS、これを実現する取組として位置づけ、法人統合の相乗効果として、今後のさらなる発展を目指して行っているところでございます。
 その一つで、最も実績を上げているのが、このスライドにお示しします航空宇宙生産技術開発センターです。内閣府及び岐阜県の支援を受け、日本で唯一の航空宇宙生産技術に関する教育研究機関として設立いたしました。岐阜大学が持つ生産技術、名古屋大学が持つ設計技術、互いの強みを生かし、必要とされている教育研究、地域企業との連携を行うことで、魅力ある大学づくりと地域産業のさらなる発展を支援しています。また、岐阜県では、産学官金連携による航空宇宙産業の地域中核産業としての発展と、同産業に関する就業者、特に若者雇用の創出を図るため、国内初となる生産技術に関する体系的な教育、それと生産技術の最先端の研究を推進しています。これらの取組は、先般開催された総合科学技術・イノベーション会議の資料において、地域の産学官ネットワークの好事例として取り上げていただきました。これらの産学官の強固な連携により、世界をリードする航空宇宙産業クラスター形成と人材の輩出に貢献しています。
 スライドでは、ものづくり岐阜の基幹である航空宇宙産業の中枢を担う将来の高度専門職業人材の育成をするため、2016年度より宇宙工学講座を開設しております。また、高校生らが空缶サイズの模擬衛星のミッションを行う缶サット甲子園では全国大会で優勝するなど、すばらしい活躍を示しています。これらを踏まえ、スライド右では、岐阜県がぎふ宇宙プロジェクト研究会を設置し、岐阜大学と高校生が連携し人工衛星を打ち上げるぎふハイスクール・サットプロジェクトを実施し、将来の航空宇宙産業を担う人材の育成に取り組んでいるというところでございます。
 このスライドは、法人化以降の産学連携に関する取組についてお話ししてあります。法人化第2期においては、コーディネーターの拡充、本部体制の見直しやガバナンスの構築、学内の内部的な体制強化を図ってきました。第3期におきましては、共同研究講座の設置や、間接経費率の見直し、強み・特色のある研究分野のセンター化などを進め、赤枠で囲んだ部分というのは、第2、第3の矢として次の拠点化を目指しているところであります。これらの資金の獲得に向けた機能強化が進み成果の現れの一つとして、右のグラフを御覧ください。このように、3期の後半には共同研究費が増収を実現し、平成29年度と比べて共同研究費の受入額が大幅増収となりまして、他の重点支援1類の大学の平均と比べ大きく伸びていることが分かります。
 これらの産学連携の効果により、大学の研究者も多くの受賞をすることができています。スライド左の下のごとく、スタートアップでの実績や、右下に示しますような、学生のキャンパスグランプリでの優勝など、アントレプレナーシップの醸成も次第に進んできておるのが現状です。
 次に、自治体との連携による地域活性化、強み・特色を生かした研究の推進について御紹介した後、最後に将来構想と必要な支援についての御提案をいたします。
 これも大変ビジーなスライドで申し訳ありませんが、右の上から時計回りに御覧ください。航空宇宙生産技術センター、それから、地域創生エネルギーシステム、それから、地域連携スマート金型、食品科学、家畜、飛騨牛、それからずっと左へ行って、7番目、野生動物管理などずっと赤の括弧で記載してあるように、岐阜県の支援をいただいています。岐阜薬科大学、これは岐阜市でございます。それから、難聴センター、感染症、それから、保育園、それから、ぎふ地域学校協働活動センター、それから、防災、気候変動、このように、スライドの左の下を御覧いただきますと、岐阜県からの支援といいますのは3年間だけで45億、真ん中の図を、写真を見ていただきますと、これ全部、岐阜大学のキャンパスの中に建物を造っていただいて、なおかつ岐阜県からの職員の派遣もいただいております。
 これらの背景となりますものは、県内29自治体と連携協定を締結し、地域の産業界、自治体と協働し、地域リーダーの育成を目指したCOC+、この事業を展開していることで、事後評価もS評価をいただきました。それから、自治体からのコーディネーターの派遣も特徴的で、COC事業とCOC+、3回連続最高評価のSを獲得したのは岐阜大学のみと聞いております。  岐阜大学では以前より自治体との連携を積極的に進めており、スライド上段のように岐阜県とは連携推進会議を毎年定期的に行っており、これらの活動も自治体との良好な関係を発展するコツと考えます。スライド下段では、岐阜市においては、前述のとおり、岐阜薬科大学の移転やインターチェンジの開通を見据え、ライフサイエンス拠点の形成を予定しており、岐阜大学と連携して実現に向かっているところでございます。
 岐阜大学には獣医学科を備えており、ここに医獣薬の一体型創薬・非臨床拠点の形成に向け、現在体制を整えています。これにより、研究シーズ、非臨床研究、治験・臨床研究、さらには実用化に向けての体制、これらが整えば、研究力のさらなる強化、それと産学連携の推進につながり、東海国立大学機構としての強みとなると考えております。
 このように岐阜大学の得意とする、人づくり、食づくり・ものづくり、産業やまちづくり、新たな医療づくり、これを東海のミ・ラ・イ・エ構想、すなわち、人口のMigrationやLaboratory、Innovation、Educationとして、地域共創、特色ある研究、イノベーション、教育の戦略的推進計画などにより、教育研究、社会貢献を発展させることができればというふうに考えております。
 これらを踏まえ、最後に研究力強化に必要な支援の御提案をさせていただきます。
 1として、国際卓越研究大学と改革への強い意欲と決意を持った有機的な連携を行う地域中核大学ヘの積極的な支援をお願いします。1ポツとして、地域の大学のリソースでは新たなWPI、共共拠点、大規模事業などの継続は困難。これらに対する積極的な基盤の支援。2ポツ、支援上においては、国際卓越研究大学とコンペティティブにならないような設計をお願いしたい。特に人材の流出とかそういうことについての御配慮をお願いでできればと。3ポツ目、研究をサポートする事務職員、URA、研究支援人材の配置・確保、URAの人材のネットワーク化、これらの支援や、ファンドレイザー・広報などの専門職の人材の確保、これに支援をいただきたい。もちろん承継職員の枠の増加もお願いしたいです。
 2番目として、大学独自の特色ある研究での第2、第3の研究のシーズを育てる仕組みの支援をお願いできれば。地域の大学の萌芽的な研究シーズや研究成果を生かす仕組みの強化。例えば、Mini-WPIや複数大学による連携ネットワーク化など新たな仕組みづくり、こういうようなものもよいのではないかと思います。特にカーボンニュートラル、新たな戦略、そういうもの。それから、2ポツ目の、スピーディーに社会実装、地域連携などができる仕組み、こういうものを行う大学に支援。3ポツ目、各省庁が支援する補助事業や共同研究において、人件費、当たり前に必要となる経費については研究費に計上できる仕組み、この改善をぜひお願いしたい。
 3番目、地域中核大学への評価基準の見直しということです。1ポツ目、ガバナンス、経営体制への改革への意欲を示す大学にインセンティブを。それから、2ポツ目、地域の自治体や産業界、地域の大学群等との連携強化をする大学へのインセンティブのみならず、地域や卒業生などのステークホルダーからの寄附金、こういうものも評価軸に加えていただければと。3ポツ目、共同研究などの産業連携による外部資金と同時に、自治体との連携の件数、支援金額、これも評価軸に加えていただければと思います。
 4番目、地域中核大学への学生、若手研究者の人材育成への支援。特に10兆円ファンドからは博士課程はあるんですが、修士課程という言葉がない。修士課程は地域の大学にとっては極めて重要な支援であると考えております。それから、2ポツ目のアントレプレナーシップにおいて実績を上げる意欲のある大学にインセンティブ。文理横断的教育実施に当たっての支援。
 5番目として、デジタル化を推進する大学への支援をお願いしたいと思います。
 最後に、補足説明資料として岐阜大学の取組のポイントをまとめてございます。
 私の話は以上になります。御清聴どうもありがとうございました。 【大野主査】  吉田委員、どうもありがとうございます。科研費の成果から組織的な研究力に発展させる様子や、自治体との連携など、非常に多彩な活動を御紹介いただきました。  それでは、皆様から御質問あるいは御意見を受けたいと思います。
 山本委員からお願いいたします。

【山本(進)委員】  豊橋技術科学大学の山本でございます。まず吉田先生に、すばらしい岐阜大学の発展というか、それに対して敬意を表示したいと思います。実は私、名古屋大学にいたときに、この糖鎖化学をつくったということがありまして、ここまで見事に発展してきたのかなということに関しては非常に敬意を表したいと思います。
 まずそこで一つは、こういういわゆるアンブレラ型、1法人複数大学という形で東海国立大学機構の法人統合、これによって岐阜大学の研究力強化に関して特にメリットがあった点は何かと。複数のことをお聞かせいただきました。どれもこれもすばらしいわけですけれども、大学統合ではなくて法人統合でやる、あるいは単なる大学連携ではなくて法人統合によってどういうメリットが研究力強化に関してあったのか。特にあったことについてお聞かせ願いたいのと、今度は逆にデメリットはなかったのかということでございます。  私の質問は以上です。

【大野主査】  吉田委員、お願いいたします。

【吉田委員】  ありがとうございました。特にあったメリットというのは、やはり両方の強みのある分野を集めて拠点化することで、相乗的、また相補的な強化ができたことだと思います。今日お示ししました4つの拠点それぞれ単独ではなし得なかったことが、特に糖鎖に関しましてはこういうふうな形で発展できました。これには、お互いのある意味切磋琢磨と、それから、研究協力体制、それから、機構の機構長の直轄として両大学の執行部が定期的にやっぱりその進捗を把握し、アドバイスし、それから、資金のやり繰り、そういうものを加えることができた。これはやっぱり大きな設備体制と、それから、研究力の強化のお互いのいい意味でのモチベーションアップにつながったと考えています。
 それから、デメリットに関しては、いろいろなことをやるときに大学独自でいろいろ出していったりすることが時に難しくなることがあります。御存じのように、名古屋大学は岐阜大学のおよそ1.5倍から2倍ある大きな組織で、やはり歴史も違いますし、そうなったときに地方大学、地域の大学のやっぱりニーズ、主張がなかなか十分、100%通らない場合もあるかもしれないと。今のところはないです。しっかり御配慮いただいている。そういう点は今後の課題だと我々は思っています。
 以上になります。

【山本(進)委員】  分かりました。どうもありがとうございました。

【大野主査】  ありがとうございます。それでは、受田委員、お願いします。

【受田委員】  ありがとうございます。吉田先生、大変すばらしい事例を御紹介いただきまして、ありがとうございました。同じ、地域に立脚する大学として心から敬意を表しますとともに、大いに参考にさせていただきたいと思います。
 その上で2点質問です。岐阜大学様と岐阜県との関係というのは、非常に強固な連携をこれまで展開しておられました。一方で法人統合されて、例えば愛知県と岐阜大学との関係とか、逆に岐阜県と名古屋大学との関係、連携によって相乗効果も期待されると思うんですけれども、逆に言うと、これまでの関係が広がり過ぎてマイナスの面が出てくるようなことはないのかという点が1点です。
 それから、2点目については、今日御紹介はございませんでしたけれども、岐阜大学様は金融機関との連携も非常に密であるということを承知しております。地元の十六銀行様との連携が強固であると承知しているところでございますけれども、地元の金融機関との関係等については、法人統合によって、プラスマイナス何かそういった点があるようでしたら教えていただけますと幸いでございます。
 以上です。

【大野主査】  吉田委員、お願いいたします。

【吉田委員】  ありがとうございました。大変重要な点を指摘いただいたと思います。岐阜県と愛知県、統合によりまして、機構長、それから、両方の総長、学長がそれぞれの県に御挨拶に行っております。むしろリストリクトするよりもオープンにすることで、より相乗効果があって、岐阜県、愛知県にとどまらず、東海地区一円が大きく活性化する。それにより、新たなイノベーションであったり、それから、新しい企業、そういうものによって人口が流入して、若手が育つ、生まれる。そうすると、たくさんの人口から高いレベルの学生がそれぞれの大学に入学してくれるんじゃないかというのが将来的な構想になっていると思います。現段階では我々としては、両方に両方の大学がアプローチして支援をいただこうと思っております。
 それから、金融機関も同様でございます。我々岐阜大学自体は、十六銀行、それから、地元の金融ともやっぱり密接に連携して、イノベーション創出とか産学連携を強めています。それから、愛知県はやっぱりたくさんございますので、これも我々のほうとしても愛知県にアプローチして、それから、岐阜県のほうにもアプローチしていただいて、法人として、機構としてやっぱりきっちりと連携をしていこうと。むしろデメリットはないというふうに考えております。すみません、答えになってない……。

【受田委員】  ありがとうございました。

【大野主査】  ありがとうございました。それでは、片田江委員、お願いいたします。

【片田江委員】  吉田先生、すばらしい成果を御説明くださり、ありがとうございました。糖鎖研究への注力や、地域共創の場として宇宙工学の分野での産学連携の推進など顕著な実績が出ておられるということがよく分かりました。特に産学連携の実績としては、実際に共同研究費による収益の増加というところも、定量的に見える結果としてすばらしい成果だと思います。
 特に地方大学の場合、このような特色のある研究領域における成果が、間接的かつ長期的ではありますけれども、学部や修士課程の学生の大学院への進学の動機づけになるのではないかと思います。さらに、最後に吉田先生が御説明されていたように、資金的なサポートが加われば、なお継続的な博士課程への進学者、さらには博士号取得者の創出につながるということが期待できると思います。
 2つ教えていただきたいのですが、実際にこのような糖鎖研究の分野や宇宙工学の分野において成果が出ている中で、大学院への進学率の向上という傾向はすぐに結果が出るものではないというのは十分理解しておりますが、その傾向が見え始めているかということ。ふたつ目は、博士進学を検討するにあたり学生さんの、金銭面だけではなく修了後のキャリアパスに対してもいろいろ不安な面も多いと思いますが、多様なキャリアパス構築を示すことや、金銭面での支援以外に大学院進学者の増加にはどのような要素が必要か、ということについてを現場で見ておられて感じておられるかという点、この2つを教えていただけますでしょうか。

【吉田委員】  ありがとうございました。大変重要な点だと思っております。進学率がどうかというのは、御存じのとおり、実際まだ分からないんですけれども、ただ、学生が非常に活性化しているのは事実じゃないかなと。特にアントレプレナーシップとかは、起業部というのがありまして、そこで一昨年は全国優勝したりとか、そんなに数は多くないんですけれども、少数精鋭です。翌年も中部地区では優勝したりとか。もちろん指導する教員がいるんですけれども、そういうことで非常に新しい起業に対しての活発な状況になっています。恐らく大学院にも進む人が増えるんじゃないかと思います。
 2番目としては、何が必要かと。御存じのとおり、我々は産学連携で企業との協力会をつくって170近い企業、中小企業も含めた企業と連携をしているんですけれども、そういうところでの就職支援とか、そういう仕組みであると。それからもう一つ必要なのは、やっぱり金銭的な支援は、これは実は機構になることによって、機構のほうから機構長裁量経費で御支援していただいたり、あとは、やっぱり何よりも女性研究者、特に理系女子、あるいは子育て支援、そういうライフサイクルイベント等に対しての支援をもう少し密にやるとか、その中で働き方改革をどうするかとか、そういう問題をやっぱり解決していく必要があるんじゃないかなと考えております。ありがとうございました。

【片田江委員】  ありがとうございます。

【大野主査】  それでは、梶原委員、お願いいたします。

【梶原委員】  吉田先生、大変ありがとうございました。法人が統合されるということで、先ほど1足す3は4だという表現がありましたけれども、統合することによって非常に研究力も上がったということで御説明されていらっしゃったので、大変よい成果が出ているのだと思います。
 私が伺いたいと思ったのは、この構想を実施しようというときの最初のトリガーについてです。お互いのビジョンが共有されて、一緒に取り組むほうがより研究力の向上につながるという形で進んできたのだと思うのですが、きっかけはどういうところだったのか、少し泥臭い話かもしれませんけれども、取り組む上での産みの苦しみがあったのではないかと思うのですが、その辺が実際どうだったのか、伺いたいと思いました。
 取り組んでみてどうだったのか、デメリットはなかったのか等、当初想定していたのと違うことはなかったのか等ということも伺いたいと思っていたのですが、デメリットはないとおっしゃられたので、構想して走り始めて、想定以上の効果が出ているように伺い知れます。拠点化することによって人材流動もなされているのだと思いました。振興パッケージのところで、17ページの3で、世界と伍する研究大学の取組と日本全体の研究力の底上げにつながるべきエコシステムのことが書いてありますが、まさに今御説明いただいた、連携して研究力を上げているということが一つのキーになるのではなかろうかと思いました。
 最後のコメントは、文科省において、具体的なエコシステムをどうするかという議論をしっかりやっていただきたいと思いますが、吉田先生には、今質問しましたような法人統合に関する泥臭そうな話が何かあればお伺いしたいと思いました。、よろしくお願いいたします。

【吉田委員】  難しい質問をどうもありがとうございます。まず、第1点目の何がトリガーになったかというのは、これは松尾現機構長と、それから、森脇前岐阜大学長、これが非常に仲がよかった。連携が非常によかった。同じ内科のドクターということもあったんですが、やはりお互いの大学が現状でもう一歩上がるにはどうしたらいいかという、そういう想念と、それから、岐阜県は特に人口が減ってきます。今後、大学の存続、大学が定員を割ることはないでしょうが、レベルがやっぱり下がってくる可能性があると。そうすると、レベルを上げるには、統合することによって研究力を上げて、やっぱりレピュテーションや実績が上がることによって、よりレベルの高い学生が集まってくるのではないかと。そういうことをやっぱり目指されたので、そこから始まったと私は認識しております。
 実際の産みの苦しみというのは、やっぱりこれはかなりあったとお聞きしています。2年以上の準備期間を経て、岐阜大学は、大きな大学と一緒になることで飲み込まれるのではないかと、やはりそういう危惧もありました。そういう点は名古屋大学さんは十分配慮を現段階ではしていただいていて、岐阜大学の総意が伝わるような形のガバナンスとかそういうことにつながればというふうに私は考えております。現段階ではやはり非常に配慮していただいていますが、今後やはり岐阜大学の特徴をどう出していくか、それがどれだけ機構の中で許容されるのかというのは今後の課題でありますし、先生御指摘、私も指摘したように、今後、条件のいい国際卓越大学に優秀な研究者が全て集まった場合に、我々のところからの流出、そういうことも起き得るわけですよね。だから、そういうことに対してはしっかりと循環させていただいて戻していただくと、そういうようなことがやっぱり必要なのではないかなと思っております。ありがとうございました。

【梶原委員】  ありがとうございます。

【大野主査】  ありがとうございます。少し時間が押してまいりましたので、小林委員、短くお願いいたします。

【小林委員】  糖鎖化学・イメージングの研究の発展ですか、ステージ1から4については、非常に感銘を受けました。
 ただ、私立大学の立場からすると、大型研究費を国から頂くことに関しては若干怖い面があります。というのは、いろいろな人たちをそれで特任の助教等で雇うんですけれども、最終的にその研究費は、暫減するか、あるいは打切りになって、なくなるわけですね。後続があればいいんですけれども、ない場合にはその人件費を払っていた人たちが、それで雇用停止になってしまうというところがやはり安定雇用から程遠いところがある。一方で、我々もむやみやたらと人を切るということはできないので、雇用を継続すると、何億もやはり人件費が増えてしまうという問題点もあって、もちろん吉田先生は非常に頑張っていろいろなところから研究費を取られているんですけれども、国立と私立大学では、事情が若干違うような気がするんですけれども、いかがでしょうか。

【吉田委員】  ありがとうございます。確かに研究費という形で来るとやっぱり制限がありますので、その後どうするかという問題はかなりあると思います。ただ、糖鎖に関しましては、現在基礎的な研究をすることで、将来的にはやっぱり大きなものにつながってくると。自走はできないまでも、継続的に国家プロジェクトとして、やはり世界のトップを目指すんだと、そういう意気込みを今皆さん持っていただいて。これは私どもだけでなくて、やはりオールジャパン体制の構築をする、そういうことでの体制の整備と伺っております。答えになってないかも分かりませんけれども、最終的には何らかの形のほかの収入が入ってくるような、自走できないまでも、産学連携とかそういうものにつながる研究であればと私は願っております。

【大野主査】  どうもありがとうございました。それでは、時間もございますので、続いて、柳原委員から富士フイルムの取組について、御発表いただきます。それでは、柳原委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【柳原委員】  柳原です。富士フイルムの取組ということではなく、組織的な研究力強化に向けた具体的な取組として、私が企業で研究に携わっている立場で見たときに、これまでに議論されてきた委員会の内容に対して少し私見を述べさせていただきたいと思っております。
 次、お願いします。内容はシンプルでして、しかも割とレベルの小さな話になるかもしれませんけれども、大学競争力の見える化、それから、大学の組織設計と研究者の意識づけ、それから、地方大学の位置づけとプロデューサー人材ということでお話ししたいと思います。御留意いただきたいところで、これまで議論されている委員会の内容だとか方向性に関して特に異論を唱えるものではなく、この後どのように進めていくかというところで思うところがありますので、紹介させてください。
 次、お願いします。これは要旨ですので、後で御一読ください。  次、お願いします。まず大学の競争力の見える化ということで、強みをあぶり出すフレームワークを紹介したいと思います。基本的にはこれは、経営学で使われる非常にクラシカルなメソッドでして、アンゾフのマトリックスという2軸分析に当たるものです。図1は横軸がWhat、縦軸がHowということで、Whatは解決すべき課題、Howは解決手段になります。企業におきましては、Whatはビジネスにおける言葉になりますから、市場とか製品・サービス、こういったものがWhatになりますけれども、大学の場合は経済合理性だけでは測れない課題もたくさんあるでしょうから、そういう意味では解決すべき課題がいいのではないかと思います。
 軸の見方ですけれども、まずWhatのところは顕在・潜在で2つ切り口があるんですけれども、自分にとっての顕在・潜在と世の中における顕在・潜在、それをまず分けるということになります。解決手段のHowも同じでして、解決手段が既に知られているものか、あるいは全く知られていないものか、それが自分にとってなのか、世の中にとってなのかということを分ける。そうすると、3掛ける3の9象限が出来るわけです。それで、左下が赤い色になっていますけれども、ここはニーズがあり解決手段もあるという領域です。ここから右上に行くに従い、ニーズや解決手段がなくなる領域になるのですが、対極にあるのが、右上の緑のニーズが未知で解決手段もない領域です。こういうふうに見てやると相対的な競合関係を明示することができるということで、自分たちの持っている強みがどこにあるかということが俯瞰できるのではないかと考えております。
 次、お願いします。このフレームワークを使って、例えばA大学という大学を想定したときに、A大学にとってもしくは世の中でということで整理をしていきます。そうすると、一番左下はもう顕在、既知というところですから、そもそも大学が研究対象としてはいけない領域、それ以外のところが対象とする領域になるんですけれども、外側に行けば行くほど、A大学が勝負すべき領域、要するに、イノベーション課題がそこにあり得るということになるわけです。
 真ん中のところが、少しよく考えなければいけないところでして、ほかに先行されている領域なんですね。世の中にとっては知られているけれども、A大学にとっては分かっていないというところ、そういうところがあり得るわけです。こういったところをよく見て、そのテーマの課題のステージがアーリーなのか、マチュアなのか、時間軸も含めて課題を見極めてやらないといけないということになります。このようにしてこのマトリックス整理をしていく、研究テーマをプロットするということです。
 次、お願いします。それで、もう少し違う観点で見たときに、おおよそ勝負するのは3つの領域かなと思っております。1つ目の領域は、解決力で勝負するということで、ここはすごく私の独断が入っていますけれども、どちらかというと、課題解決力で勝負するのは日本が得意ではないかと思っておりまして、1の領域がそこ。それから、2番目は課題設定、課題創出力、ここで勝負するのがいいところ。これは比較的欧米が得意とするというふうに見ています。それから、3の領域は、両方とも超越するということで、本当に革新的な課題設定になるわけです。こういったところに自分たちが今考えている研究テーマがどこにいるのかということをプロットするということをやれば、どのように戦うかということが見えてくるわけです。もちろん解決手段そのものをWhatとするという点もありまして、ここの切り方というのは、各自各様のやり方があると思います。
 ここで難しいのは、自分で評価する場合と他者が評価する場合とで評価の採点が随分変わることがあり得て、それをセットでやる必要があるということです。比較的自分にとっては甘くつけ、他人に対しては厳しくつけるという傾向があるので、その辺りがテーマをプロットするのは難しいところがあります。ですが、このように位置づけることができるかと思います。
 次、お願いします。実際この作業を始めたときに、3の領域というのは世界中を見渡してもなかなか少ないのではないかと思っていまして、日本でもほとんどは1もしくは2に属すのではないかと推察しております。ですが、それはそれで非常に大事なことでして、1もしくは2にいるテーマであったとしても、その先、3の領域に行ける伸び代があるかどうか、技術的にあるいは課題の難しさ等々で伸び代があるかどうか、それによって、今は1の領域にいても、いずれ3に行ける、そういった展望の持てるテーマであればそれはやるべきということになるわけですから、伸び代を考えることが大事ではないかと思っております。
 次、お願いします。もう一つの考え方としては、技術の棚卸しということで、各研究グループが保有する技術の棚卸しをすることも有効と考えます。ただし、この作業は非常にいろいろな意味で難しいです。自己採点とか他者評価の話もそうですし、技術の定義と粒度が合う形での分類が必要不可欠ということなので、やり方を間違えると結構I/Oの合わない作業になるということで注意が必要です。
 次のページ以降で、富士フイルムが行った技術の棚卸しについて結果の一部を紹介したいと思います。1つ目は技術の定義づけということで、我々はコア技術と基盤技術というふうに定義をしておりまして、コア技術は、商品差別化の源泉となる技術、基盤技術は、共通性のある複数のコア技術を内包し波及性が大きい共通の基盤技術というふうに定義しております。コアを武器、基盤を体力というふうに考えてもらえればイメージしやすいです。もう一つは、自分たちが扱っている製品・サービスと技術の関連づけをするということです。  次のページをお願いします。図5、これがコア技術。実際に商品を差別化するために12の技術を有しておりまして、それを共通化していった基盤が9つあるという、こういう整理をしております。
 次、お願いします。これは古きというかアナログ写真のときの銀塩写真のワークフロー。カメラからアルバムまでのワークフローを見たときに、各要素基盤、要素技術、コア技術がこのような関係にあるということで、それぞれのコア技術がちゃんと商品に役立っているということを示しているものです。
 次、お願いします。技術の棚卸しで、前回、NISTEPさんの調査研究の中で金沢大学における大学内部組織と論文分野の関係について定量的な分析事例が示されておりました。これは私にとっては非常にいい分析事例だなと思いまして、今日引用させてもらいました。ただし、この結果は組織と論文ということになっているので、私が提案したいのは、組織というよりは、課題解決する技術、つまりHowですね。Howということで、内部組織でない定義があったほうがいいのではないか、それから、論文に関しては、もう少し対象分野を細分化することができれば、これは棚卸しに資するような一つのメソッドではないかと思っております。しかし、図の下にありますように、青字のところですが、企業においては比較的シンプルに対応ができるんですけれども、学術領域におけるところは、学際領域も含めたときに結構単純では行かないかもしれないなとは思っております。ただし、やり方としてはこのやり方があるのではないかと思いました。
 次、お願いします。次はミッション、ビジョン、バリューということで、大学の組織設計の話になります。大学のミッションは2013年から14年頃に文科省によって再定義されておりまして、その中身を拝見したんですけれども、一定の成果が出ていると思っております。企業では、ミッションはビジョン、バリューをセットで定義することが多いということで、図8にありますように、ミッションとビジョンとバリューがワンセットになっております。図8の右のほうに移りますけれども、会社全体のミッション、ビジョン、バリュー(MVV)を社長、経営トップがつくっていくわけなんですけれども、それを下部組織にどんどん落としていって最終的には一社員に落としていくと。そうやってそれぞれにミッション、ビジョン、バリューを落としていくと、こういう形が理想的なわけなんですね。そうすると、組織として非常に強いことができるということになるわけです。
 次、お願いします。それで、これを大学でできるかということなんですけれども、図9に、同じように学長さんから研究者まで、学部長さん、学科長さん、研究室長さんを通して落としていくこと、通していくことは多分可能、形上は書けるのではないかと思って一応書いてみました。こういうふうなことで整理しようと思って見たときに、各大学におけるミッション、ビジョン、バリューというのはまだ整理されてないように思いました。ただし、ホームページを拝見したところ、書かれているように思いますので、整理だけの問題のような気がします。
 ただし、注意すべき点は、図9の右側に書いてありますけれども、企業と違って、学術領域においてMVVとイノベーションが両立するかどうかの是非を問わなければいけないと思っております。一つはMVVを固定したがゆえに、自由度が失われてイノベーションの弊害になるということ、もう一つは全く逆の考え方でして、MVVを限定することで逆にイノベーションを生みやすくなるということで、この辺りが両立するかどうか、その是非を問うこと、あるいはバランスすることが大事かなと思っております。
 次、お願いします。それからもう一つは、成果創出の3つの鍵ということです。これもドラッカーの有名なステートメントですので御存じの方も多いと思いますけれども、組織が持続的には発展するために3つの取り組みを行うことが重要だと言っております。1つ目が直接の成果、2つ目が価値への取組、3つ目が人材の育成です。このうち1番と3番は比較的簡単なんですけれども、一番下の青いところに行きまして、一番難しいのは第2の領域、すなわち、価値への取組というふうに見ております。これは、定量的なKPIを設定することが困難なことに起因しています。この難問題こそ今この委員会で議論されている課題で、正面から取り組まなければならないというふうに私は思っており、この委員会活動に非常に共感しております。ただし、これをやっていくためには、やはり実効力のあるようにしていかなければいけないと思っておりまして、先ほどから述べておりますように、競争力の見える化、あるいはミッション・ビジョン・バリューの制定等の具体的な作業を伴うことがやはり必要ではないかと思っております。
 次、お願いします。それから、地方大学の位置づけについてお話しします。グローバル企業における研究組織がどのように設計されているかということについて、たくさんのモデルがあるんですけれども、比較的対比しやすいモデルを1つ選びました。図10を御覧ください。青いところに丸1 がありまして、これはいわゆる中央的な、コーポレート的な研究所になります。これは各研究所のハブ機能を持っていて、サブ研究所の技術支援を行うような基礎研究もやっている。研究全体を俯瞰しております。それに対しまして、サブ研究所というのは二種類ありまして、丸2 は、地政学的な観点等で地域ごとに必要な製品・サービスをカスタマイズする研究所ということで、ここでは、US、EU、それから、アジアパシフィックと、そういうふうに書かせてもらいましたけれども、そこの地域に根づいたカスタマイズする研究があります。それとは別に丸3 は、オレンジのところですけれども、特定の技術分野あるいは応用を考えた時に、そういったことに秀でるエリアがあります。そこにはエコシステムがあります。そのエリアで先端技術を研究してイノベーションを起こすという、そういう専門研究所になります。これらがうまく機能しているというのが、グローバル企業における理想的な組織設計の一つだと思います。
 ただし、ここで丸2 と丸3 は同じマネジメントではやらず、同じ地域にあったとしても全然別の立ち位置と関係になります。丸2 というのはあくまで応用、カスタマイズ研究ですので、丸1 もしくは丸3 の技術に味つけをして丸2 にカスタマイズしていくということですので、そこはマネジメントが変わるのが通常になります。
 次、お願いします。こういう観点で日本の大学、地方大学のポジショニングを見たときに、前回の高知大学さんと金沢大学さんの取組はまさに、ちょっとラフに書かせてもらいましたけれども、丸2 と丸3 に当てはまっておりまして、私としては非常にヒットする取組だというふうに感じました。一方、丸1 のところが、日本の大学組織体において、コーポレートの立場で全体俯瞰しつつ、サブ研究所の技術支援や先行研究を行うような基礎研究機能が欠けているように見えますし、あるいは今議論されている世界と伍する研究大学がその位置づけを担うのか。ちょっと違うような気もするんですけれども、この辺りの地方大学とのポジショニングに対してどのように日本の大学の組織として支援していくのか、あるいは協働していくのかというところが、見えないような気がしました。
 次、お願いします。これが最後です。ここはただの1ページの言葉しか書いてないんですけれども、地方大学に限らず、やはり前回から申し上げていますように、鍵となる人材が必要だと思っています。やはりプロデューサーの人材が要るということで、その要素は3つかなと思っています。つけるべき力は構想力とデザイン力ということで、これらをきっちりやっていくということ。それから、それらをやっていく上で、これもさんざんもう昔から言われている話かと思いますけれども、トランスサイエンス、これがまさに今こそ重要な時代になってきたということで、ここも組み込んだ上で人材獲得もしくは育成することが急務と思っております。
 雑駁ではございますが、柳原、これで説明終わります。どうもありがとうございました。

【大野主査】  柳原委員、どうもありがとうございました。それでは、皆様から御質問あるいは御意見をお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。受田委員、お願いします。

【受田委員】  ありがとうございます。概念的な部分も含めて、大学の研究力強化のための具体的提案を御発表いただきまして、本当にありがとうございました。また、私の方から、高知大学として前回プレゼンをさせていただいた内容を中に盛り込んでいただきましたことを重ねて御礼申し上げます。
 最後のほうでおっしゃられたように、エコシステムとして見ていったときに、例えば丸1 の各研究所のハブ機能を持つ、サブ研究所の技術支援を行う基礎研究所、15ページの丸1 の機能をどういうふうに担保していくか、ここがポイントであるというお話、私自身は非常に腑に落ちるお話でございました。各大学あるいは我々、丸2 を担っているとしたときに、フルセットで基礎から応用に至るまで、これを全て単独大学で担うことは難しいと思っております。
 したがって、連携をしていくことが求められており、その連携の一つが、先ほど吉田先生の、法人統合でより組織的な力を連携の下、活用していく方法があり得るのではないかというお話と、最初に馬場室長からの御発表の中で、あえて20ページで質問させていただいたC大学のパターンで、世界のトップレベルの研究拠点がそこに張りついているという、こういったエコシステムの重要性というのが今後求められるのではないかなというふうに今のお話を受けまして感じたところでございます。
 今後、我々大学としては、やっぱり組織的な連携をより強化していく必要性があるということを柳原委員からは御示唆をしていただいたように思うんですけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。

【柳原委員】  ありがとうございます。まさにおっしゃられたとおりと思っております。少し説明をはしょってしまったんですけれども、日本の企業においては1970年代頃に中央研究所というのがはやりまして、結局失敗したんです。それを今日の資料の丸1 は、同じことをやってしまうとやっぱり駄目だと思っております。ですので、丸2 のような、全て最初から、ゼロから最後までできないという、エリアに特化したカスタマイズ研究所に実はすごく解決すべき課題が眠っておりまして、それは一見小さな課題に見えるんですけれども、よくよく見てみると非常に大きなグローバルな共通課題であったりする。今日も最初のほうでそういう意見が出たかと思いますけれども、そういうニーズというのがやはり現場に根差している地方大学にたくさんあると思うんですね。それをいかに抽出しながら、丸1 の機能で俯瞰しながらつなげていくとか支援していく、その枠組みが大事だと思っております。
 ですので、これはグローバル企業の絵を描いておりますけれども、グローバルの単位でこれをやろうとすると実は大き過ぎて失敗してしまうリスクがありまして、例えば今日岐阜大学さんにあったように東海地区でやるとか、そういう枠組みというのはあり得る。非常に適切な規模があると思います。それから、そのときに、今日もまさにありましたけれども、仲がよいというか、学長さんとか大学の先生方が、分野とか競争関係を抜きにして仲がよいというのが非常に大事だと私も思っております。

【大野主査】  ありがとうございました。

【受田委員】  ありがとうございました。

【大野主査】  ほかにいかがでしょうか。相原委員、お願いいたします。

【相原委員】  御講演ありがとうございました。私は、ミッション、ビジョン、バリューについて一言感想を述べさせていただければと思います。大学の社会における重要な役割というのは、既にある価値とか研究域を発展させるということだけではなくて、むしろ新たな価値、つまり、まだ存在しない価値や研究領域を創出することにあると思います。その場合の研究は、将来のウェルビーイングには貢献するにしても、収益には直結しないわけです。そのために、ミッションやビジョンは組織として設定することは重要ですけれども、個々の研究者にまで一貫したバリューを設定することは、大学の社会における役割の一つをもしかしたら放棄することにつながりかねないというような危惧を持ちました。
 一言感想を言わせていただきました。以上です。

【柳原委員】  ありがとうございます。私もここは、企業としては、こうやるほうがある特定の業種の企業においては役に立つというメソッドだと思っております。企業においても、場合によってはこれをやることによって弊害を起こす企業、研究型の企業においてはそういうこともあると思いますので、まさに大学においてはこれを押しつけることはよくないと思っております。
 ただし、大学の役割とか俯瞰するときに必ず帰っていける場所というのが、大学全体もしくは学部もしくは学科、その単位で何かあることはいいのではないかなと思ったりしていまして、その辺りは各皆さんの置かれている現場の様子によるかと思っております。ありがとうございます。

【大野主査】  ありがとうございました。それでは、林委員お願いします。

【林委員】  ありがとうございます。私も2つ質問させていただければと思います。まず1点目、やはり先ほどのハブ機能を持つ、あるいは地域の研究所、そこのところなんですけれども、先ほどの岐阜大学の例のような1法人の中にあると、ここでいう丸1 のような大学というかそこの部分がほかの部分に協力するというか、寄与するというか、それは1つの法人なので成立すると思います。そうでないときに、要は、丸1 と丸2 や丸3 が独立したときに、例えば日本でいえば、今、共同利用拠点とかがそういう形で協力するんだと思うんですが、ただ、なかなか共同利用拠点だって、共同利用のための資金は文科省から出ているけれども、そこを担っている人材とかは個別の大学の運営費交付金から措置しなければいけない。それなのにどこまで相手方に協力しなければいけないんだという、そういう構図がきっと出来てしまうんじゃないかなと思ってお聞きしていました。
 まず素朴に質問させていただきたいのは、まさに先ほど御説明いただいたように、中央研究所や基礎研究所を潰して事業部研究所とかに特化するとともに、オープンイノベーションというキーワードで外から知識を取ってこようというそういう様式に企業はシフトしてきたというふうに聞いているわけですが、そのときに、先ほどのような個別個別の大学と同じような形態になるんじゃないかと思うんですけれども、1つの組織の中で何らかのこういう丸1を持つのがよいのか、それとも、もっと独立した組織間のネットワークをつくっていくという方式を企業としてはとってきて、そっちのほうがよかったのかその辺りの感覚についてお聞きしたいというのが1点目でございます。
 続けてよろしいですか。

【柳原委員】  どうぞ。

【林委員】  もう一つはミッション、ビジョン、バリューのところなんですけれども、先ほどの御質問と同じで、やはり大学の場合、個別の学部から新しい提案が出てきたりという、上からトップダウンよりは、下から上がってくるのもあって、行ったり来たりというそういう状態であるように大学って特徴があると思うんですが、ただ一方で企業もそういうところあるんじゃないかなとは思うんですけれども、実際に企業の中でトップダウン、ボトムアップ、あるいはそれの行ったり来たりって、その辺りの状況というのはどうなっているんでしょうか。

【柳原委員】  ありがとうございます。まずは、ちょっと説明がよくなかったんですけれども、中央研究所という名前での丸1 の機能は失敗したということを申し上げたつもりでして、ハブ機能を持ちながら、社内のアセットを使う、あるいは社外から技術を持ってきて統合していくという、その丸1 の機能は、形を変えて、中央研究所という名前ではなくて、コーポレート的な研究所として存続させているところがたくさんあります。ですから、いわゆる中央研究所の研究のための研究みたいな、ちょっと言い方がよくありませんけれども、どこの役に立つか本当に分からないような研究をやめてきたというのが企業の、営利集団ですから、そういう意味ではそれをなくしてきたと。ただし、とはいえ時間のかかる研究をきっちりやっておこうという、そういうミッションを持った研究所を存続させているところはたくさんあります。それが1つ目の答えです。ですので、確かに1つの組織の中に、ワンカンパニーの中にあるほうが当然やりやすいわけですから、どうしても組織が異なると壁が出来てしまうので、連携の仕方というのは結構難しいものがあると思います。
 それから、2つ目は、もちろん企業においてトップダウン、ボトムアップというのは両方ございます。やはりいろいろな各企業さんのイノベーションの事例なんかを見ても、ある研究者の方がすごく温めて5年10年やっていたテーマが実ったとかそういう話はたくさんあります。ですので、そういうことも含めて、企業の経営層としては、ミッション、ビジョン、バリューを連動させながら行ったり来たりしているということだと思っています。ただし、大きな方向性、学長さんレベルでやっぱりつくるのは、具体性というよりはミッション、やっぱり存在意義ですよね。そういったところはやはりトップがつくらなければいけないと思っております。

【大野主査】  ありがとうございました。柳原委員、どうもありがとうございました。

【柳原委員】  ありがとうございました。

【大野主査】  全体を議論する時間を取ると申し上げましたが、ほとんどなくなってしまいました。まだ御発言をいただいてない委員、髙橋委員はいかがでしょうか。

【髙橋委員】  ありがとうございました。では、一言。今後、国際卓越の大学をはじめとして、大学のガバナンスと、それを運営する執行部体制がますます大きな課題となっているところだと思います。今お話しいただいた柳原委員のように、企業の方でR&Dの本質を理解されている方たちが今後アカデミアの研究運営にもコミットいただくようなパスがあればいいと思いますし、その流れを活性化するようなそんな政策も考えられるといいのではないかとお話を伺って思いました。
 以上です。

【大野主査】  どうもありがとうございます。つなぐ仕組みというものに新たな軸があるのではないかというお話かと思います。
 ほかにいかがでしょうか。最後、もうお一方ぐらいはお受けできるかもしれませんが、よろしゅうございますか。
 すみません、今日はまだたくさん議論をしていただけるような雰囲気でしたが、議事の不手際で、ぎりぎり今のところで終わりにさせていただくことになると思います。よろしゅうございますか。
 それでは、まだ御意見がございましたらば、事務局にメールでお送りいただければと思います。皆様からいただいた御意見を事務局において取りまとめ、次回以降の議論をさらに深めてまいりたいと思います。
 本日は、吉田委員、柳原委員に御説明をいただきまして、誠にありがとうございました。  それでは、本日の大学研究力強化委員会はここで閉会とさせていただきますが、最後に事務局からアナウンスをお願いいたします。

【季武調整官】  事務局でございます。本日も遅くまでどうもありがとうございました。また、途中で画面共有がうまくできない部分がございまして、大変御不便をおかけして申し訳ございませんでした。ここでおわびさせていただきます。
 本日、先ほど大野主査のほうからもおっしゃっていただいたとおり、時間の関係で御発言できなかったことなどがあるかと思いますので、そういった点につきましては、事務局のほうにメールなどで御連絡をいただければと思います。
 また、本日の議事録につきましては、運営規則に基づき公表させていただきます。事務局にて議事録案を作成の上、委員の皆様に御確認をさせていただきますので、その際は御協力をお願いいたします。
 そして、次回の大学研究力強化委員会は、6月30日木曜日の開催を予定しております。詳細については追って御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。ありがとうございました。

【大野主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、これにて第4回大学研究力強化委員会を終了させていただきます。皆様、本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
―― 了 ――

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研究振興局大学研究基盤整備課大学研究力強化室

電話番号:03-5253-4111(内線:3838)

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