科学技術・学術審議会 大学研究力強化委員会(第2回)議事録

1.日時

令和4年1月17日(月曜日)16時00分~17時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 大学研究力強化に向けた取組 (1. 世界と伍する研究大学の実現に向けた大学ファンドの創設 2. 地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ 3. 大学の強みや特色を伸ばす取組の強化(大学研究力関係))
  2. その他

4.出席者

委員

  (主査)大野英男委員
  (委員)相原道子委員、伊藤公平委員、受田浩之委員、梶原ゆみ子委員、片田江舞子委員、小林弘祐委員、新福洋子委員、髙橋真木子委員、林隆之委員、福間剛士委員、藤井輝夫委員、柳原直人委員、
   山本進一委員、吉田和弘委員

文部科学省

  (事務局)田中文部科学副大臣、柳文部科学審議官、千原科学技術・学術政策局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育局連携担当)、寺門科学技術・学術総括官、
   笠原大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官、堀野国立大学法人支援課長、井上産業連携・地域振興課長、馬場大学研究力強化室長 他

  科学技術・学術政策研究所

  佐伯科学技術・学術政策研究所長

5.議事録

【馬場室長】それでは,定刻となりましたので,ただいまより科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会の第2回を開催いたします。本日は御多忙の中,御参加いただき,ありがとうございます。
本日は,小長谷委員,山本佳世子委員が御欠席となっております。
なお,本日は,新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,オンラインでの開催となっております。音声などに不都合がある場合は,随時事務局まで御連絡をお願いいたします。
最初に,オンライン会議を円滑に行う観点から,事務局より何点かお願いがございます。まず,発言時以外はマイクをミュートにしていただく,御発言に当たっては「手を挙げる」挙手ボタンを押していただく,又はカメラに写りやすいよう手を挙げていただく,3点目として,資料を参照する際は資料番号,ページ番号,ページの中の該当箇所などを分かりやすくお示しいただくなどの御配慮をお願い申し上げます。
なお,本委員会は原則として公開で行うこととしております。本日は,事前に登録いただいた方に動画を配信しておりますので,御承知ください。
それでは,委員会の開催に当たりまして,文部科学省を代表して,田中文部科学副大臣より御挨拶申し上げます。
副大臣,よろしくお願いいたします。

【田中副大臣】本日は大変お忙しいところ,大学研究力強化委員会に御出席いただき,本当にありがとうございます。
本日は,世界と伍する研究大学のみならず,多様な研究大学群の形成に向けて,大学が強みや特色を伸ばし,研究力や地域の中核としての機能を強化する上で必要な取組や支援策など,幅広い観点から議論を行っていただきたいと思っております。
岸田政権の成長戦略の第1の柱は,科学技術立国の実現であります。我が国の成長とイノベーションの創出に当たって,大学の研究力を強化することは極めて重要であります。未来の先行投資を担う文部科学省として,日本の確かな未来のために,本委員会での議論を我が国全体の研究力強化にしっかりと繋げてまいります。
前回に引き続きまして,皆様方には活発な御議論をお願いし,私からの御挨拶とさせていただきたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いします。

【馬場室長】ありがとうございました。
それでは,以降の進行は大野主査にお願いさせていただきます。大野主査,よろしくお願いいたします。

【大野主査】皆様,お忙しい中御参加いただきまして,ありがとうございます。
今日は1時間という短い時間ですので,御発言はできるだけ短くしていただいて,全員の方に御発言いただけるようにさせていただければと思っています。
それでは,議題の1,大学研究力強化に向けた取組について,事務局より御説明をお願いいたします。

【馬場室長】それでは,資料1に基づきまして,大学研究力強化に向けた取組について,事務局から御説明申し上げます。
本日は,資料12ページ目にあるとおり,世界と伍する研究大学の実現に向けた大学ファンドの創設,2つ目として,地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ(通称総合振興パッケージ)について,3番目として,大学の強みや特色を伸ばす取組の強化について御説明したいと思います。
次のページを御覧ください。4ページ目です。大学ファンド創設に関するこれまでの進捗と今後のスケジュールを表示しております。前回の委員会でも御紹介いたしましたが,昨年1月に国立研究開発法人科学技術振興機構法の一部を改正する法律が成立して以降,上半分,大学改革につきましては,CSTIの下に,世界と伍する研究大学専門調査会が設置され,8月に報告された中間取りまとめに基づきまして,文部科学省において,研究振興局,高等教育局を共同事務局とする「世界と伍する研究大学の実現に向けた制度改正等のための検討会議」において議論を重ねてきたところでございます。今後,CSTIにおいて最終まとめが決定されて以降,文部科学省においては,関連法案の提出,対象大学の選定,令和6年度以降の大学ファンドによる支援といったものが想定されているところでございます。下半分,資金運用につきましては,先般17日に文部科学大臣として,助成資金運用の基本指針を策定したところでございます。今年度中にはJSTにおいて運用を開始する予定となっております。本日は,先般取りまとめが行われました上半分の検討会議について,論点整理を御紹介したいと思います。
5ページ目を御覧ください。制度改正に向けた論点整理として,概要を取りまとめております。一番上の箱囲いですが,国際卓越研究大学制度の構築として,世界最高水準の研究大学を形成するため,世界と伍する研究大学となるためのポテンシャルを有する大学を,変革への意志(ビジョン)とコミットメントの提示に基づき,国際卓越研究大学として国が認定することを想定しております。また,国公私立大学を対象とする新たな枠組みを構築し,認定された大学に対しては,大学ファンドからの助成を含め,総合的な支援を実施することを示しております。
6ページ目を御覧ください。前回お示しした国際卓越研究大学制度の全体像のイメージを更新しております。本委員会にも関わる事項としては,この国際卓越研究大学への国の関与の仕組みとして,左上にもございましたとおり,実際の大学認定やアドバイザリー機能を果たす上で,科学技術・学術審議会における有識者の知見も活用することが適当とされているところでございます。引き続き,令和6年度の助成開始に向けて,法案の検討を含め,詳細な制度設計に向けた準備が必要となりますが,本委員会でも随時検討の状況について御報告したいと思います。
続いて8ページ目を御覧ください。総合振興パッケージの検討状況について御報告させていただきます。昨年8月に開催されたCSTIにおいて,地域の中核大学への必要な政策パッケージについて今年度中の取りまとめを総理から指示いただいたところでございます。これまでに,関係府省から構成されるタスクフォースやCSTIの有識者議員懇談会において議論,検討が重ねられ,今後開催されるCSTI本会議において決定されることが予定されているところでございます。
続いて9ページ目を御覧ください。こちらに総合振興パッケージの方向性を示しております。一番上の箱囲い,地域の中核大学や特定分野の強みを持つ大学が,特色ある強みを十分に発揮し,社会変革を牽引する取組を強力に支援すること,また,実力と意欲を持つ大学の個々の力を強化するのみならず,先進的な地域間の連携促進や,社会実装を加速する制度改革などと併せて,政府が総力を挙げてサポートすること,さらに,地域社会の変革のみならず,我が国の産業競争力強化やグローバル課題の解決にも大きく貢献することを記載しております。
その上で3つの柱,1つ目が,大学の強みや特色を伸ばす取組の強化,2つ目が,つなぐ仕組みの強化,3つ目が,地域社会における大学の活躍の促進。そういった3つの柱を基に,地域の中核大学や特定分野の強みを持つ大学の機能を強化し,成長の駆動力へと転換すること,また,日本の産業力強化やグローバル課題解決にも貢献するような大学の実現を目指すこととしております。
続いて9ページ目を御覧ください。総合振興パッケージによる支援の全体像を示しております。先ほどの3つの柱に基づき,例えば,右側にございますが,自治体との連携強化や,府省間の事業連携による一体的支援,また,特区の活用も含めた制度改革などを挙げているところでございます。詳細については,本日は説明の時間がありませんが,参考資料2に総合振興パッケージの素案を添付しておりますので,御参照いただければ幸いでございます。
続いて12ページ目を御覧ください。大学の強みや特色を伸ばす取組の強化として,こちらは前回の委員会でも御説明いたしましたが,科学技術・学術政策研究所の佐伯所長から話題提供いただいたデータも踏まえつつ,上位に続く大学の層の厚みが形成されるよう,特色ある強みを伸ばす施策の展開が必要としております。
13ページ目を御覧ください。こちらも詳細な説明は割愛しますが,イギリス,ドイツの状況との比較も踏まえつつ,多様な研究大学群の形成に向けては,全国の研究大学が国内のみならず世界の大学と伍する研究力を獲得していくためにも,大学の知的蓄積や地域の実情に応じて研究独自色を発揮していくことが重要ではないかということを記しております。
最後,14ページ目を御覧ください。本日の議論の中心となる資料となります。大学の強みや特色を伸ばす取組の強化として,研究部分を抜粋したものになっております。こちらは,先月,CSTIの有識者会合で配付された資料を一部改定したものになっております。前回の強化委員会の議論並びに先生方からの追加意見を踏まえ,改定しております。
今お話ししたことの繰り返しになりますが,一番上から,個々の大学が,知的蓄積や地域の実情に応じた研究独自色を発揮し,研究大学として,自らの強みや特色を効果的に伸ばせるよう,重層的な支援策を大学目線でメニューとしてしっかりと分かりやすく可視化するとともに,予見可能性を向上すること,また,大学のミッションの実現に向け,基盤的経費と各種支援策とを連動させ,大学マネジメントと連動した研究力向上改革を推進すること,さらに,前回の強化委員会での山本委員からの御発言,また柳原委員からも組織的な研究力の向上について追加意見がございましたが,この10年間取り組んできた研究大学促進事業や,培われたURAの知見なども最大限に活用するべきではないかという問題意識も踏まえ,全学的な研究マネジメント体制の構築や研究の独自性・競争力の向上を通じて,大学の戦略的な経営を強化し,新たな価値創造を推進するべきということを記載しております。
今後の取組の方向性として3点記載しております。まず,魅力ある拠点形成による大学の特色化といたしましては,世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)については,多様性に富んだ国際的な融合研究拠点形成を計画的・継続的に推進することとしております。特に先ほどの予見可能性の向上等の観点も踏まえ,来年度の政府予算案におきましては,新規で3拠点の採択を予定しているところでございます。また,次回,福間委員には,金沢大学の取組についても話題提供いただくことを検討しているところでございます。
続いて,大学の知的資産の蓄積や地域の実情に応じた研究独自色の発揮に向けては,前回とほぼ同様の書きぶりとなっておりますが,伊藤委員から,自然科学,科学技術,医学・医療研究の発展のためには,持続可能性や倫理観といった社会的影響も鑑みた「総合知」によるガイダンスが不可欠であり,「総合知」に特化した大学単位で支援する枠組みが必要ではないかといった意見も踏まえまして,「総合知」の創出・活用等という部分を追記しているところでございます。
続いて,丸2,大学の研究基盤の強化です。こちらについても,基本的には前回と同じ記載になっておりますが,小林委員から追加で頂いた問題意識も踏まえまして,国立のみならず国公私立大学を念頭に置いた記載にするとともに,戦略的・計画的なキャンパス整備を推進するといったことを明記しているところでございます。
最後,丸3番目,組織間連携・分野融合による研究力の底上げでございます。今後,本委員会でも継続的に議論することとなりますが,世界と伍する研究大学のみならず,大学共同利用機関等がまさにハブとなり,全国の国公私立大学等の連携を強化することにより,人材の流動性向上や共同研究の促進,リソースの共有等を図り,日本全体の研究力発展を牽引する研究システムを構築することが必要ではないかとしているところでございます。
また,共同利用・共同研究体制につきましては,日刊工業新聞の山本委員からも重要性について御指摘があったところ,大学の枠を超えた取組として明記しているところでございます。
なお,15ページ目に参考資料として,WPIや創発的研究支援事業の取組に加え,16ページ目には,共同利用・共同研究拠点及び国際共同利用・共同研究拠点の一覧を掲載しておりますが,本日は時間の都合もあるので詳細な説明は割愛させていただければと思います。
最後になりますが,今回,当初予定していた会合より前に追加的に委員会を開催させていただいた趣旨としましては,この総合振興パッケージの政府決定が想定よりも早まったことを踏まえ,最終的な取りまとめの前に委員の皆様から御議論いただく機会を設けたいということを考えたためとなっております。特に,強化委員会での議論が総合振興パッケージに適切に反映されることが,今後,強化委員会として関連施策の具体化・実質化を図る上で重要な機会になるかと考えているところでございます。
本日は,総合振興パッケージの本体はもちろん,今後必要な施策を検討,実施するに当たり,留意すべき事項など,幅広い観点から御議論いただければ幸いでございます。
事務局からの説明は以上でございます。

【大野主査】どうもありがとうございます。
今の説明についてこれから御質問あるいは御意見を受けたいと思いますが,事務局より御説明がありましたように,地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージに関して,今後の取りまとめに向けて,特に大学研究力について御意見をいただけると大変ありがたいと思います。
それでは,いかがでしょうか,御発言。御質問でも結構ですし。柳原委員,お願いいたします。

【柳原委員】柳原です。前回タイミングを失ったので,今回は最初に発言させてください。
私は,過去の取組も含めて少し調べてみたりしたのですけれども,書かれている構想とかアイデアというのは,総じていいことが書かれてあって,特に違和感のあるものがないと。むしろ,今回,最後のディスカッションポイントの14ページのところで言うと,強みとか特色というところですけれども,これは,自分たちは本当にどこが強いのかということの分析とか理解がすごく大事だと思っておりまして,そこを各大学あるいは拠点でやっていくことが大事かなと。それをやって理解した上で,今度はどのように連携していくか,進めていくかというところは,プロデュースをする機能が要ると思うんです。ですから,そのプロデューサー機能というところをもっと強化することによって,実行ベースでどのようにこの課題に取り組んでいくかというところが大事ではないかと思っております。
以上です。

【大野主査】どうもありがとうございます。
まず,手が挙がっている順番からしますと,次は高橋委員,御発言をお願いいたします。

【高橋委員】ありがとうございます。2点ほどコンパクトに申し上げます。
1つ目が,参考資料227ページ以降なんですけれども,地域中核・特色ある研究大学ということについてです。先ほどの方に同感で,総じて書いていること自体はアグリーです。実際にそれをどう実装するか,そこで重要だと思うのですけれども,具体的なところを1点申し上げたいです。各事業に落とし込まれると,66ページ以降にいろいろな事業リストがあって,そのこと自体,個性が異なる各種事業があることはとてもいいことだと思いますが,個々の事業設計と採択基準のところまで具体に落とし込まれたときに,ともすると論文等の生産性など,審査基準が一般的なものになり,結果,個性がある事業群の多様性をメリットとして生かせていないのではないかなという懸念です。せっかく「地域中核・特色ある」と銘打った事業群ですので,是非募集要項や,特に審査基準のところで,一般的ないわゆる研究力を測る定量的な指標,論文生産性やTop10%論文だけではなくて,その事業特有の指標というのがきっとあるべきなのではないかと思った次第です。66ページ以降,できれば,事業毎にメジャーとなる審査基準がリストに1列入って,それがどのぐらいバリエーションがあるかということが,私たちがその多様性を持つ事業群を運営することのメリットではないかと思った次第です。
2点目です。資料114ページの論点整理,大変アグリーです。研究マネジメント体制,特に研究推進支援人材というのは,活動評価がしにくくある種地味な要素ですが,これも事業群を持っている私たちの多様性を生かすという意味では,場合によってはそういうものがあることやそういう人材が活躍していることを一つの事業の採択基準にするようなものがあってもいいのではないかと思った次第です。これが2点目です。
以上です。ありがとうございます。

【大野主査】どうもありがとうございます。
少しページ数の確認ですけれども,今ある参考資料には60ページまではないのですけれども,事務局,どのページだか分かりますか,今,高橋委員がおっしゃっていただいたところは。

【高橋委員】申し訳ありません。参考資料2というのが,PDF3種類のうちの3個目に配られていまして,その「今後に向けて」以降です。

【馬場室長】事務局から失礼いたします。参考資料2のページ番号でいうと,27ページ目以降になるかと思います。

【大野主査】分かりました。

【高橋委員】申し訳ありません。そうですね。3種類のファイルで87分の64以降です。申し訳ありませんでした。

【大野主査】了解しました。どうもありがとうございます。
それでは続きまして,梶原委員,お願いいたします。

【梶原委員】ありがとうございます。今回の世界と伍する研究大学,そして総合振興パッケージは,一部の限られた大学の研究力強化を決して意図しておらず,日本の大学の研究力の全体が底上げされることが非常に重要です。そのためには,大学間で一定の競争意欲が働くことも求められると思います。世界と伍する研究大学についても,初年度に認定されるか否かで今後の評価が決まってしまったり,序列が固定的になってしまったりすることのないように,当該事業の意図や趣旨などを含めて適切なメッセージを示していくことが重要だと思っております。
もう1点は,大学の強みや特色を伸ばす取組を強化していく中で,今後,具体的な検討を行う際には,トップ大学や中堅大学等,グループごとにそれぞれの課題を深掘りして施策を検討する必要があると思います。統一的にまとめるというよりも,それぞれの個性に応じて具体的な要素を拾い上げられるような検討の仕方が必要と思います。加えて,少子化の影響や,あるいは産業界からの資金の提供など,大学を取り巻く環境がどう変わっていくと研究力がどのようになっていくのかといった関係性をエビデンスベースで見ていく必要があると思いますので,そのような進め方をしていただければと思います。
以上です。

【大野主査】どうもありがとうございました。
それでは続きまして,吉田委員,お願いいたします。

【吉田委員】ありがとうございます。今回の御提案につきましては,非常によく練られていて,すばらしいと思っております。
細かいことも含めて,質問も含めて3点ほどお話しさせていただきますと,まず第1点は,資料114ページになります「今後の取組の方向性」というところで,項目立てについて少しディスカッションできればと思います。14ページの丸2,大学の研究基盤の強化,これの3つ目の矢印になります。「地域や産業界等との共創の場となる「イノベーション・コモンズ」の実現を目指した大学等の戦略的」云々のところでございます。地域中核大学の研究力強化においては,これは自治体や産業界というものが極めて重要ですので,単にここの項目として,研究基盤の強化の一つとして丸2の中に入れるのではなくて,あえて項目を立てていただいて,丸3,丸4,あるいはどちらでも良いのですが,地域の自治体や産業界・地域の大学群というものの連携・基盤強化というような形で,別に項目を立てていただいたらどうかなと思いました。
2つ目ですが,人材育成についてです。人材育成は,9ページの丸1の大学の強みや特色を伸ばす取組の強化,こういうところには「人材育成」という言葉が記載はされているのですが,14ページの取組の方向性というところには,あえて書いていなかったのか,丸3の下のところの「人材の流動性」という言葉を今回加えていただいているように思いますので,ここに集約するのか,ちょっとどうなのかなというのは疑問に思いました。特に若手の育成なのか,あるいは博士課程の人材の育成なのか。博士課程につきましては,10兆円ファンドの方で手当てをするということですが,地方大学では,博士課程の前の修士課程というのが極めて重要で,そこの手当てというのがあれば非常に,もっと助かると思っております。
それから,今回,14ページのURAというものを一番上の四角の3つ目のところに加えていただいたのですが,これに加えて,できれば承継職員の追加であるとか,そういうものがあればいいなと思いました。
大きな3つ目は,前回少し触れたと思うのですけれども,私は医学の方ですので,医学に特化した発言がふさわしいかどうかは分かりませんけれども,医師免許取得者の博士課程への進学率は非常に低下していて,基礎研究力の低下が目立っていることを前回お話ししました。その原因として,医師の専門医制度の普及による進学の控え,地域医療の充実のための医師派遣による進学の低下,それから医師働き方改革の推進による研究時間の短縮,こういう3つがあると思います。ただ,医学系の新規技術や創薬に関しましては,Top10%の論文はかなり大きなインパクトを持っていますので,こういうものも支援していただくとすれば,治験や臨床研究体制というものの新たな構築の努力であるとか,人的資源を含む支援,インセンティブの付与,こういうものは研究力の強力な強化につながるのではないかと思いました。
以上でございます。

【大野主査】ありがとうございます。
それでは続きまして,相原委員,お願いいたします。

【相原委員】これまで言われてきたことでもありますけれども,地域の大学が特色を生かした研究で社会水準の活動をするためには,地域の中心でプラットフォームの機能を持つことが重要だと思います。そのための環境整備の必要な地域や領域が多々あると思いますので,これは大学だけではできることではございませんので,官庁の枠を超えて,制度面を含めた検討をしていただきたいと思います。
もう少し具体的に言いますと,政府の打ち出しているデジタル田園都市国家構想において,地域の大学が主要なプレーヤーになり得るように,大学における,ハイレベルなデジタル環境の整備というのは欠かせないことだと思います。先ほども研究基盤のところで設備のお話が出ましたけれども,その一つとして考えていただきたいと思います。
また,前回も少し触れましたけれども,国立大学にできて公立大学にできないこと,例えば大学発ベンチャーに出資する行為などは,国立並みに制度改革をお願いしたいと思います。
最後に,特定分野において社会的な拠点となっている大学への支援強化と,国際卓抜研究大学制度とかぶらないような形で制度を構築していただきたいと思います。大学の序列化のあおりを受けて,発展どころか,世界水準のパフォーマンスを維持できなくなるようなことがあってはならないと思いますので,その点を考慮した制度設計をよろしくお願いいたします。
以上です。

【大野主査】どうもありがとうございました。
それでは続きまして,林委員,お願いいたします。

【林委員】ありがとうございます。「世界と伍する」のほうは,私も委員ですので,特にここで申し上げることはありませんが,地域中核総合支援パッケージ,そこはなかなか分からないところもあるので,質問も込みでコメントさせていただきたいと思います。総合振興パッケージ,パッケージということで既にあるような各部署の事業群が並んでいるわけですけれども,このパッケージと,それから10兆円ファンドによる新たな投資というか,それとの関係がなかなかこの資料から読み取れないところがございます。
今回,研究力のところのお話を中心に挙げていますが,つなぐ仕組みの強化とか,地域社会における大学の活躍の促進というのは,ある種,大学がそれぞれに地域と連携しながら行っている活動,フローというか,今行っている活動の支援ということだと思いますので,文科省がやるべきところの重点は,まさに冒頭で副大臣がおっしゃったように未来の先行投資を担うということですので,基盤をつくっていくという,そこだと理解しています。そのときに,14ページに挙がっているような話をどう運用していくのか,お話を聞いていてもよく分かりません。WPIも既にありますし,共同利用・共同研究拠点もありますし,ここに挙がっているのは,既にある事業群が今並んでいるわけですけれども,10兆円ファンドを使うのか使わないのかすら少し私は分かっていないのですけれども,それによって,これらの取組をパッケージとして更に強化していこうという話であるのか,それとも,私は先ほど基盤のところは大事だと申し上げたのですが,これまでそれぞれやっていても,我々が理解しているところは,それぞれの事業が単独で動いて,期限が終わるとみんな潰れてしまうという状況があると。実際は,WPIだって,本当に優秀な若い人がいるのに,それが任期が終わって出ていかなければいけない。共同利用・共同研究のところも,利用のためのお金は出ているけれども,では共同の施設の整備とかをどうするのかという話はまた別にある。こういうものが,大学がある種戦略的にちゃんとそれぞれを融合させながら動かせるような体力を持つということが恐らく,もしこの新しいファンドを使えるのであれば,やるべきことだと思っています。「世界と伍する」の方も同じ発想で,それぞれの大学が戦略的に使えるお金を増していくということですので,こういうところも,地域のところも,そのようなある種フレキシブルで戦略的に使えるようなものを使って,こういう事業を各大学の中で相互に連携させながら動かしていけると思います。そういう体制をつくっていくのかなということを思っております。
それから2点目は細かい点ですけれども,WPIと書いてあるのですが,WPIはかなり厳選された世界レベルの拠点ですけれども,当然WPIみたいな拠点が突如生まれてくるわけはなくて,小さいものがどんどん大きくなっていくわけですので,そういうものをちゃんと大きくしていくような,そういう仕掛けも必要だと思っています。もし先ほど言ったような大学の戦略的に使えるお金が来るのであれば,大学の中でそういうものをちゃんと動かしていくための資金というか,補助になるようなことをぜひ考えていっていただければと思います。
以上になります。

【大野主査】どうもありがとうございました。
それでは,新福委員,お願いいたします。

【新福委員】これまでの先生方の御意見と非常に重なる部分もあるのですけれども,私も高橋先生と似たような懸念を持っておりまして,結局,事業に落とし込んだときに,似たような分野ばかりが選ばれたりとか,特定の分野が優先されるということが起きてしまうのではないかという部分がございます。
また,今流行している新しいトピックというのも,どこまでその新しさが続くのかというのは未知の部分がありまして,賞味期限は長くて10年ぐらいではないかということがございます。我々若手研究者としては,今後20年,30年現役でこの研究科学技術分野というのをけん引していかねばならない。また,その後の後輩たちに研究できる環境というのを整えていかなければならない。そういう立場に立ちますと,あまり選択と集中でできる研究の分野というのが非常に限られてしまうと,本当に研究科学技術というのが先細っていってしまうということを非常に懸念しております。これまで行ってきた強みのある分野というのを深めていくことに加えまして,新しく,不確実性があるとしても挑戦的な分野,それこそ「総合知」を優先していくのであれば,人文社会とか,このいわゆるイノベーションの指標ではかり切れない内容の研究分野がたくさん残っているというのが将来において非常に大事ではないかと思いますので,できる限りサポートされる領域というのが多様であって,絞られていないということが大事ではないかと思っています。
それに関係しまして,また大学が研究に対する体力を蓄えておくにおいては,研究者の研究時間というのが担保されていることが非常に大事になりますので,昨今の人数の削減とか研究費の削減というのがそれと反対方向に動いているということは再度申し上げておきたいですし,吉田先生が医師のことをおっしゃっておりましたけれども,看護の分野でも,私の専門でございますが,同じです。コロナの対応で日々忙しさが変動していく中で,研究時間の確保が非常に難しいという部分もございます。その辺りも御理解いただければと思います。
また,全体的に御意見を差し上げたいのが,世界と伍する,また地域の中の中核というような様々なレベル感が今後出てくるとしても,どの分野においても国際的な連携とか発信というのが非常に大事ではないかと思います。たくさん魅力あるプログラムが存在していても,それらがどれだけすぐに発信されているのか,非常に,実は海外にとっても魅力ある分野であるのに,発信が不足しているのではないかというところの懸念がございます。特に中堅分野におきましては,途上国とか新興国の中で一緒にやっていきたいとか,アピーリングである分野というのがたくさんあるのではないかと思いますので,この「世界と伍する」だけが国際的に競争するというよりは,様々なレベルで国際的な連携とか競争というところを視野に入れていただければと思います。
以上です。

【大野主査】どうもありがとうございました。
それでは続きまして,伊藤委員,お願いいたします。

【伊藤委員】ありがとうございました。今までの御発言にも重なるところはあるのですけれども,この3つの分野,「世界と伍する」,「地域中核」,「特色」,これは全て大切だと思います。その上で全てにおいて,例えばどれだけの金額が充てがわれるのか,それからどれほど使いやすいのか,そしてそれがどのような形で継続されるかという,この3つのことが重要になってくると思います。
私は,例えば「世界と伍する」といったときに,1つの大学に200億円,300億円,400億円充てがわれる。それは私たちから見ると,例えば慶應義塾では年間30億円ぐらいが運用で回ってくるわけですけれども,それに比べて10倍以上のお金が一つの大学のどこかに行くことになるので,そんなことだったら我々は競争できないと一瞬思うのですが,でも「世界と伍する」という目的を達成するためには,例えばハーバードなどは運用益だけで2,000億円とか,そのような額を一年ごとに得ているわけですから,全くもってそれで世界と伍することができるのかというまた別問題があるわけです,目標を達成するために。ですので,そこら辺のところをどこまで,金額と使いやすさということも含めて,本当にその目的とすることが達成できるように使えるのか,事業整備できるのかということが大きな問題だと私は思っています。
これは2番の「地域中核」,それから「特色ある大学」に関しても全く同じことだと思います。お金が無尽蔵にあれば,全てのことに対してお金をつぎ込むことができるのですけれども,それがなかなかできないところにおいて,どこに力を入れていくかということをこの会議が決めていくのだと理解しています。
特色あるところで私が提案しました「総合知」について入れてくださることは,本当にありがとうございます。また,小林委員が提出した戦略的・計画的なキャンパス整備の推進ということも,私もサポートしているところでありますが,例えば「総合知」ということになりますと,時には,国または政府が考えていることに反するようなことを学術的に出していくことが,時にはというか,結構出てくる可能性もあります。そういうものに対してどのように国のお金をもらっている大学が扱われるかということは結構重要なことだと思います。また,「総合知」を有する大学というのが,10兆円ファンドを取る大学またはその他の科学技術を中心とする大学と組んでいくということもとても大切だと思うので,その「総合知」が出してくる成果というものをどのように国が,自分にとって耳が痛いことも含めて,それらをそしゃくしながら政策部門へ反映していくことができるかということを考えていくことが大切だと思っております。その上で,様々な大学の協調,特に10兆円ファンドを受け取るところに関しては,それはその大学だけでできることではないと思いますので,結果的には2番,3番との金額も含めた,活用も含めた協調が大切になってくると考えております。
以上でございます。

【大野主査】ありがとうございました。
それでは続きまして,受田委員,お願いいたします。

【受田委員】御指名いただきまして,ありがとうございます。高知大学の受田でございます。少し参加が遅れましたので,説明を全て拝聴したわけではないという前提でコメントすることをお許しいただければと思います。
今回,資料1を拝見して,10ページの特に総合振興パッケージによる支援の全体像については,私ども地域の中核を目指している地方の国立大学法人として,非常に関心を持って拝見させていただきました。特に大学による強みや特色を伸ばす戦略的経営の展開は極めて重要だと思っております。そして,我々としては,製薬におけるパイプラインのように,裾野をしっかりと構築して,ここで研究の拠点,あるいは人材育成の拠点,あるいは社会連携に対する拠点としての脆弱性を脱して,より安定的なものを経営的に展開していきたいと思っているところでございます。ぜひ,振興パッケージについては,先ほどもいろいろな委員の皆様から御意見をお出しいただいておりますけれども,単に競争的資金に頼ることなく,より安定的な基盤経費がこのパッケージの中に設けられることをぜひお願い申し上げたいと思います。そして,そこで裾野を広げることによって,吉田委員からも御発言がありましたように,マスターコースや,教育としては,さらに裾野がしっかりとした体制を構築していきたいと思うところです。
最後に,つなぐ人材や組織に関する重要性をこういった支援の全体像では表現していただいております。ぜひ議論としてお考えいただきたいのは,以前に科学技術振興機構(JST)のイノベーションサテライトとかプラザが,非常に効果的に地域科学技術の社会実装に奏功しておりました。それが一瞬の間に事業仕分によって,失われていったという実情を思い返していただきたいと思います。こういったつなぐ仕組みは既に今までの政策・施策であったわけです。これらが失われ,武器を失った形で地域の中核の大学とおっしゃられても,基盤が失われていることをもって,我々は活動しにくい状況になっております。ぜひ,こういったところ,以前の政策・施策も振り返りながら,安定的な基盤を構築する方向をパッケージで目指していただきたいということを意見しておきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。

【大野主査】ありがとうございました。
それでは続きまして,小林委員,お願いいたします。

【小林委員】北里研究所の小林でございます。まず,今回は総合振興パッケージをまとめるということが一番のお題目だと思いまして,そのためには14ページが一番議論の中心になるかと思います。その中で2番目の,先ほど慶應の伊藤塾長がお話しされた「総合知」,これは非常に大事だと思います。
それから,2番目の大学の研究基盤の強化の中で,今回,やはり国公立中心の考え方が多いのですけれども,いわゆる民間の力をもう少し引き出していただければと思います。
3番目の矢印のところで「戦略的・計画的なキャンパス整備を推進」というのを出したのも,一つは,結構いろいろな規制があるんです。例えば,うちの大学で病院を閉院して,それをほかの用途に使おうと思ったら,土地の使用制限があるので,なかなか許可が下りないということで,そのまま宙ぶらりんになっているとか,そういった規制が結構多いのですよね。国立は大分規制緩和されてきていますけれども,逆に言うと,私立大学の規制緩和はもっともっとしなければいけないので,民間の活力をもっと使っていただきたい。一つは,キャンパス整備に関係した特区制度をもう少し活用していただいて,かなりの規制緩和をしていただきたいと。また,良い研究があれば,企業がどんどん乗ってきます。うちには大村智記念研究所がありますけれども,例えばコロナ関係であっという間に2億円以上集まって,これは一般の寄附,企業の寄附,それからあといろいろな製薬会社も乗ってきたりして,シーズさえあれば,民間の力をどんどん活用することでいい研究が出てくると思いますので,そういう形で,例えば寄附税制の改革とか,そういった形でのサポートをアメリカ並みにやっていただければというのが大きなテーマであると思います。
先ほどデジタルの話もありましたけれども,地方はデジタルの基盤が非常にぜい弱です。それも,省庁間の連携を保ってやっていただきたい。
あとは,失敗に学べというのがありまして,失敗と言ったら大変申し訳ないのですけれども,韓国でKAISTという国立大学が1981年にできて,ここはノーベル賞を取るぞというのが一つの目的で,ネイチャー,サイエンスレベルの論文をどんどん出さないと首になるというようなすごく厳しい大学ですけれども,結局まだノーベル賞は出ていないです。国もいろいろな篤志家も多額のお金を投入したにもかかわらずうまくいかないというのはなぜだったのかというのを,お金を出せばいいという問題でもないということを少し検討してみる必要があるかと思います。
以上です。長くなりました。すみません。

【大野主査】ありがとうございました。
それでは,藤井委員,お願いいたします。

【藤井主査代理】ありがとうございます。日本全体としてどのようにやっていくかという議論の中で,地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージをどうするか,それから大学・研究の強化をどうするかという議論だと理解しました。そうしますと,今考えなくてはいけないことは,社会経済システムの中での資金循環の流れについて,もっと地域にお金が回っていくような新しい資金循環をつくっていかなければいけないということです。これまでの物質的な豊かさのみを追求する資本主義というものの修正が今,議論されております。例えば,特定の地域にだけ,特に20代前半の人口流入が集中しているという状況が起こっています。地域の中核になるような大学を強化することによって循環を変えていき,例えばそこでしっかりとした産業が興るようにする,あるいはそこに資金が流入して,若い人たちがそこで活躍できるようにするということを考えていかなくてはいけないと思います。
そのために,今,大学の強みや特色を生かすという議論がなされているわけです。もちろん世界トップレベルで世界とつながっているという分野は,それぞれの大学にあると思います。それに加えてもう一つ大事なことは,その地域のニーズや課題に大学が積極的に関わっていくことをどうやって広げていくかということかと思います。そのときに国がやるべきこととして,インフラの整備,人材への投資,制度の整備が大事になってきます。
インフラの整備について少し申し上げます。共同利用・共同研究拠点との関係では,今,日本では,学術目的の補助ネットワークについて非常に充実したものが整備されています。SINET5から6になり,さらにその容量が大きくなっていきます。今日の拠点の紹介にもありますように,ネットワーク型拠点の一番上に書いてあると思いますが,大学が共同利用・共同研究拠点として動かしているものの一環として整備されているということがあるわけです。ですから,そのようなものをもっと活用できる形で,日本全体をいわゆるスマートアイランドにしていくことによって,地域にあっても,しっかりとしたデジタルのインフラを使いながら,例えばそのスタートアップのアクティビティーなどがしっかり行われていくように整備していくといった考え方が重要だと思います。
世界ともつながりながら地域のニーズ・課題にしっかり取り組んでいくときには,参考資料のリストにあったような各府省による事業を獲得して実行していくに当たっても,大学側の体力強化をしっかりやっていくということが極めて重要だと思います。こうした事業で積極的に,その地域の中核をなすような大学を受け入れていって,しっかり動かしていけるようにすること。事業費を受け取って事業を行うというだけではなくて,そのことが大学の体力強化につながるような,そういった仕組みの上での支援をしっかり考えていく必要があるだろうと思います。
もう1点,共同利用・共同研究拠点については,先ほど申し上げましたように,既に日本の中のそれぞれのコミュニティーをカバーする拠点になっています。全体を見たときに,どのようにこれを支援していくのか。あるいはこれをインフラと見たときに,日本全国いろいろな地域に広がっていることから,地域のニーズやか課題とも向き合いながら,あるコミュニティー全体をカバーする形でどのように活用していくかという議論は,もう少し俯瞰的なレベルでしていく必要があるだろうと思います。
私からは以上です。

【大野主査】ありがとうございました。
続きまして,片田江委員,お願いいたします。

【片田江委員】御説明,ありがとうございました。時間も限られているので,手短にですけれども,前回の会議でも,地方大学を含めて,その大学の強みや特色を生かすという観点で,将来の継続的・発展的な成長を遂げるために,若手の研究者あるいは学生さんの基礎研究を追求するような,若手研究者の継続的な創出が重要になるという議論があったと思いますし,私も個人的に強くそう思っています。
そういう観点からも,今回の14ページの資料を拝見した,あるいはそのほかのページを拝見したときに,あまりそこが明確に記載あるいは表現されていないような印象を少し受けてしまいました。「人材育成」という表現に含まれているのかもしれませんが,博士号取得者あるいは修士に進学する者の人数を増やす,あるいは博士号取得者を育成するというような明確化した表現にするとか,あるいは14ページの丸1のところに「若手研究者を中核とした創発の場の形成」などの表現はあるのですけれども,ここに修士や博士人材の育成に全学的に取り組む大学を総合的に支援するなど,その学生支援のところに注力している地方大学などを積極的に支援しますということを明文化することが,そういう学生さんの進学率向上などにつながるきっかけになる可能性があるなと思いましたので,そのように思いました。
以上です。

【大野主査】ありがとうございます。
続きまして,山本委員,お願いいたします。

【山本(進)委員】豊橋技術科学大学の山本でございます。今後の取組の方向性3点について,私の意見をかなり取り入れていただいて,ありがとうございます。
それで,1番目の魅力ある拠点形成による大学の特色化ということについて,私も関係しておりましたWPIの成果は高く評価できるということですが,WPIの申請要件あるいは基準を満たすこと,これは多くの地方大学にとってはなかなか困難でございます。福間先生の金沢大学は例外と言えるのではないかと思っております。ですから,WPIのみならず,前回申し上げましたプチWPI,文系,理系を問わず,各大学の一押し研究拠点のような研究拠点を形成することによって,文系を含めて,多様性に富んだ国際的な融合研究拠点の形成が可能になるのではないかと思っております。
それから,大学の研究基盤の強化ということですが,これまで研究者間のつながりにて運営されていた大学間の連携研究については,機関間の組織的な関係を強化して,一層の発展を目指す大学共同利用機関,自然科学研究機構に自然科学大学間連携推進機構(NICA)というものがございます。これを有効活用して,分野・組織に応じた研究基盤の共用を推進することができるのではないか。文部科学省にはそういった非常にいいプロジェクトがありまして,中規模研究設備群に関しては,オンラインによって遠隔共同利用を目指す先端研究基盤共用促進事業,いわゆるコアファシリティ構築支援プログラム,このスキームの発展的有効利用というのは非常に意味があるのではないかと思っております。
それから,3番目の組織間連携・分野融合による研究力の底上げということに関しては,日本全体の研究力発展を牽引する研究システムの構築に対して,全国の国公私立大学のみならず,先ほどどなたかがおっしゃっておりましたが,他省庁の研究所あるいは民間あるいは高等専門学校,こういったところを巻き込んだオールジャパンの研究システムの構築も重要であると。
さらに,藤井先生が少しおっしゃっていた,全国の共同利用・共同研究拠点及び国際共同利用・共同研究拠点のさらなるネットワーク化と共同研究の推進が重要ではないか。
なお,視点は異なりますが,我が国全体の今後の研究力強化を進める上で,オープンサイエンスとオープンイノベーションのような,サイエンスとイノベーションを変革する枠組み,こういったことを積極的に検討していくのも必要ではないかと考えております。
私からは以上です。

【大野主査】どうもありがとうございました。
それでは続きまして,福間委員,お願いいたします。

【福間委員】私は,地方大学の観点から申し上げますと,この地域振興パッケージということの目的から考えますと,大学の研究力の基盤を強化する仕組みづくりというのをしっかり評価軸及び選考及び自己評価とかの評価軸に据えていただきたいと思います。
あと,地方大学という意味では,規模感で評価されては困るというところで,いかにこの地方大学のいいところを伸ばすかという意味では,小さくてもコアになる,小規模でもすごく特徴的ないい研究をピックアップして,それを育てるような仕組みづくりをどのようにやるかというところを選考の観点に据えてほしいということ。
それから,このいいというのは,WPIの場合は,多分論文とか基礎研究のところにフォーカスしているので,そこがよくなければならないというところはあると思うのですけれども,多分ここで言う地方大学の強みという意味では,論文数だけではなくて,そういう共同研究のユニークさとか,そういったところもあると思うのですけれども,そういったきらりと光るところ,ユニークなところを伸ばすということが一つと,もう一つは,以前,前回も議論があったのですけれども,そういったところを優遇すると,必ずあつれきというのが生じるので,その策として,必ず二の矢,三の矢を育てるという体制が必要だと思っていて,今光っているものを育てる仕組みとともに,その次に育てなければならない,それに続くものを育てる仕組みをしっかり整備するような提案をサポートしてほしいと思います。
これが実現できるかどうかは,いかにこのパッケージというのが長期的に,また大学の自由裁量で使える自由度が高く保たれるかということが非常に重要だと思っています。こういったことは政策側でコントロールできないようでいて,政策,お金を出す側がこういうところで評価するのだという評価軸をはっきり言っていただくことで,かなりコントロールされる部分はあると思います。
少し懸念しているのが,今回,仕組みで研究力を伸ばすというところのほかに,地域大学,地域とつなぐ仕組みとか,いろいろな側面を3つぐらい挙げていただいたのですけれども,そこら辺のバランスとかも,各大学によって,地域によってアンバランスさがあっていいと思うのですけれども,ともするとこういった評価というのは,何か評価項目が決まっていて,同じような点数が配点されていて,アンバランスさを許容しないような評価というのが発生しがちなので,ユニークさを評価するという意味ではその辺りもしっかりとケアした選考というか,この内容,目標自体はすごくいいと思うので,初めの議論にもありましたけれども,選考というのがどういう観点で行われるかというのがすごくこの成否を左右するのではないかなと思っています。
以上です。

【大野主査】どうもありがとうございます。
これで私以外の委員の皆様は御発言されたのかなと思いますので,最後に,1分ほどありますから,私も2点発言させていただきます。
研究大学といいますと,研究のアウトプットだけが出てきても駄目で,人材がそこで育成されなければいけません。研究大学というこのシステムの中には人材育成が入っており,そこをどうやってカップルさせるのか。研究のアウトプットだけで人材が出てこない,あるいは人材が育成されるけれども研究が出てこないというのは,どちらも研究大学ではないので,研究大学としてのシステムが重要です。かつ,それを継続的に維持・発展させられる,資金循環,あるいは知の価値化,イノベーションで,研究大学が発展していける仕組みをつくるのが重要だと思います。それが1点目。
もう一つは,あまりここで議論されていませんけれども,論文に代表される学術情報の問題です。(大学によっては特定の)ジャーナル論文を読めない人たちも増えていますし,あるいは書くとお金を取られる。APCと言われるチャージが来る。学術情報をマネージするこれらの部分を我が国は大学に任せています。そういう(学術情報という)研究基盤も(国として)考える必要があるのではないか。それが,今お話にあったオープンデータにつながり,オープンイノベーションつながりますので,そこも視野に入れるべきかと思います。
私からは以上でございますが,皆様の方から,最後に絶対これは言いたいということもありましたらば。よろしいですか。
どうもありがとうございます。それでは,本日頂いた皆様の御意見を事務局において取りまとめて,今回もそうでしたけれども,次回以降,さらに議論を深めたり,あるいは資料に反映するような形で進めていただければと思います。
今回の総合振興パッケージについての議論は,CSTIでの取りまとめに反映できるものはしていただければと考えています。
それでは,本日の大学研究力強化委員会はここで閉会とさせていただきたいと思いますが,最後に事務局からアナウンスがありましたらお願いいたします。

【馬場室長】ありがとうございました。本当に貴重な意見,限られた時間でありましたけれども,大変助かります。時間も限られていたこともありますので,もし追加の意見等ありましたら,ぜひ事務局まで御連絡いただければと思います。我々文部科学省としても,一過性の取組にせずに取り組んでいきたいと思います。
次回は27日の開催を予定しております。詳細については,追って御連絡させていただきますので,よろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。

【大野主査】少し通信インフラが聞き取りにくいところがありました。この進行メモによりますと,馬場室長は,発言できなかったことは事務局までメールなどで御連絡をお願いしますと言っています。よろしいでしょうか。議事録についても公表しますということ,そして第3回は27日ということです。よろしくお願いいたします。

【馬場室長】申し訳ありませんでした。よろしくお願いします。

【大野主査】それでは,第2回の大学研究力強化委員会を終了いたします。どうも皆様,お忙しいところ,御出席いただきまして,ありがとうございました。


―― 了 ――

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