令和6年5月30日(木曜日)15時00分~17時00分
文部科学省15階科学技術・学術政策局会議室1及びWeb会議(Zoom)
(国際戦略委員会) 菅野委員(主査)、狩野委員(主査代理)※、梶原(将)委員 オンライン参加:相田(卓)委員、相田(美)委員、飯塚委員、石原委員、礒田委員、小川委員、鈴木委員、野本委員、林委員、松本委員 (人材委員会) 狩野委員(主査)※、梶原(ゆ)委員、杉本委員、桝委員、水口委員 オンライン参加:稲垣委員、迫田委員、隅田委員、長谷山委員、村上委員 ※狩野委員は、国際戦略委員会の主査代理と、人材委員会の主査を兼任。
柿田科学技術・学術政策局長、西條大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、大土井参事官(国際戦略担当)、波羅参事官(国際戦略担当)付企画官、飯塚参事官(国際戦略担当)付参事官補佐、生田人材政策課長、髙見人材政策推進室長、滝沢人材政策課課長補佐、對崎人材政策課課長補佐
科学技術・学術審議会 人材委員会(第101回)・第12期国際戦略委員会(第4回)合同委員会
令和6年5月30日
【狩野主査】 それでは、開始させていただきます。ありがとうございます。ただいまから科学技術・学術審議会 人材委員会(第101回)及び第12期の国際戦略委員会の第4回の合同委員会として開催させていただきます。
本日の会議は、冒頭より傍聴者の皆様にも公開しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、人材委員会から10名、それから国際戦略委員会から13名の委員の皆様に御出席いただいておりまして、合計23名おられます。時間が2時間でございますので、恐縮ですが、発言は簡潔にお願いできればということを思っております。
両委員会とも定足数を満たしておりまして、皆様の御出席に感謝しております。
それでは、議事に入ります前に、まず本日の委員会の開催に当たりまして、事務局の對崎様から注意事項と資料の確認をお願いできればと存じます。お願いいたします。
【對崎人材政策課長補佐】 ありがとうございます。人材政策課の補佐の對崎でございます。
本日の会議は対面とオンラインのハイブリッドでの開催となっておりますので、質疑応答や御発言の際は、対面で御出席の委員は挙手または名立てなどで合図をいただいて、オンライン御出席の委員は挙手機能によりにより挙手ボタンを押していただいて、主査より指名を受けましたら、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただきますようお願いいたします。
ただ、議題1につきましては、順に指名をさせていただく形ですので、その際は、順次、主査が指名をしますので、挙手ボタン等を押さずに、その後、主査の指名を受けましたら御発言いただければと思います。
機材の不具合等ございましたら、対面での御出席の委員の方々は合図等をこちらの事務局のほうまでいただければすぐ対応いたします。
またオンラインで御出席の委員の皆様は、マニュアルに記載の事務局の連絡先まで御連絡をいただければと思います。
資料につきましては、Zoom上での共有も行いますけれども、会場にお越しの委員の皆様にはお手元にお配りしておりますので、お手元の資料も御確認いただければと思います。
では、資料の確認でございますが、議題が、「イノベーション人材の確保・育成・活躍に向けた論点」ということで、その関連の資料として、資料1-1がパワーポイントの資料でございまして、資料1-2がその参考資料集、また資料2として「流動性確保・好循環に関する主な論点案」というものがございまして、それ以外に参考資料1で両委員会の委員名簿をつけてございます。
進行の過程で不備等がございましたら、こちらも事務局まで御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【狩野主査】 ありがとうございました。それでは、本日の議題に入りたいと思います。イノベーション人材の確保・育成・活躍に向けた論点でございまして、合同開催ということで、御承知のとおり、国内外を含めた、そのような議題ということになります。
この後、趣旨の内容を事務局の皆様より説明いただきまして、その後に委員の皆様方にお一人ずつ、指名をさせていただきます。順番として今予定しておりますのは、まず国際戦略委員会の皆様、そしてその後に人材委員会の皆様に五十音順で回っていく予定になっておりますので、あ行に近い方、ぜひご質問ご意見を考えてお聞きいただければと思います。お一人当たり、大体先ほど申し上げたとおりで1分半ぐらいになってしまうと思いますが、恐縮ですけれども、その内容をまとめながらお聞きいただければ幸いでございます。
では、事務局からの説明をお願いしたいと思います。まず一つ目が人材政策課のほうからで、生田課長にお願いできればと思います。お願いします。
【生田人材政策課長】 ありがとうございます。それでは、15分の予定で、ざっと資料1-1、それから1-2は1-1のデータ集でございますので、説明は割愛させていただきますが、このセットで横に並べながら見ていただければと思います。
早速ですけれども、資料1-1でございます。まず、タイトルでございますが、「2050年を見据えた『シン・ニッポンイノベーション人材戦略』」ということで案でございますけれども、名前をこのようにさせていただいております。「シン」とつけた意図としては、今までと変わらなきゃいけないという思いで、あえて「シン・ニッポンイノベーション人材戦略」というふうに規定しておりますが、名前も含めて本日御議論いただければと思います。
早速でございますけども、1ページ目行っていただきますと、1ページ目、2ページ目にわたりまして背景と問題点を書かせていただいております。まず、1ページ目が背景でございます。バックグラウンドでございまして、こちらに書いてございますのは、人材政策、国際戦略ともに別に共通のことでございますが、イノベーションに係るバックグラウンドでございます。我々忘れてはいけない、人材政策、語るに当たっては、人口減少、そして少子高齢化、これが、いの一番として前提条件として考えなければならないだろうということでまず先に書かせていただいております。少子高齢化、それから大学の進学者数の低下。ファクトデータは資料の1-2を御覧いただければと思います。
また、相対的な地位の低下。こちら、世界各国のGDPの比較、そして日本での人口減少を踏まえると低成長がやはりこれからも続くのではないかと書いております。
そして社会変化の加速としましては、既存パターンの繰り返しでは乗り切れない。さらに生成AIという新しい技術が出てきておりますので、情報をどのように管理・監督していくのかというものも不可欠になってきております。
さらに国際的な観点でいえば、セキュリタイゼーションというものが指摘されていく中で、同盟国、同志国、そういったところとの連携強化というのが一層意味を持つようになってきています。
さらに、市場のグローバル化、そしてジョブ型雇用化で、ちょっと赤になっておりますが、我が国の「同様」、そして「同調」というものがどちらかといったら重視される傾向というものを社会変化の加速の中で書いております。
さらに社会が求めるものの変化としては、Well-Being。
そして、研究力・技術力・起業力といたしまして、それぞれ、言うまでもないですけども、なかなか日本としては相対的に厳しい状況に置かれていることを書いております。
続いて2ページ目が問題点、そういうバックグラウンドを踏まえた問題点として、こちらはイノベーション政策に少し寄った形で記載をしております。
一点目は、次世代人材の進路選択。アンコンシャス・バイアスというふうによく言われておりますけれども、理系を目指す女子が依然として男子に比べて少ない。そして、リテラシー自体は、理数について高い。しかし進路として選ぶ人が少ないといった、そういった状況をここに書いてございます。
二つ目のイノベーション人材の状況。これは博士、ポスドク・若手、そして流動性・内向き志向といった形で分けて書いてございます。記載している内容はこれまでにも様々な委員会等で指摘されていることを並べておりますが、特に本日この中で低い流動性・内向き志向、セクター組織間の高い壁、この辺に本日はフォーカスを絞りながらぜひ御議論をいただければと思っているところでございます。
さらに三つ目としまして、社会的環境。こちらのほうではゼロリスク志向、事なかれ主義等々、新たな技術ですとか、イノベーティブな人材、この受入れに不寛容な風土というものを自己認識している問題点として書いております。
さらに社会的コミュニケーションの変質としては、新たなコミュニケーションのツール、SNS等が出てきている中で、正しい情報をどう見極め、そして疑問を持ち、議論をする、そういう力が一層必要になってきているのではないかという形でまとめております。
3ページ目以降が、そういう背景、問題点を踏まえた大方針という形で、まず全体の国家像から書かせていただいております。国家像3点ありますが、一つ目、複雑化・多様化する課題の解決を行い持続可能の社会が実現する国家。当然そのためには、未来社会をデザインして、そこからバックキャストというものが必要だろうと。
二つ目としては、イノベーションで経済成長する国家。
三点目としては、Well-Beingが達成された国家。
この辺は今まで言われていることでございますが、こういう国家を実現するためにどういう人材が必要かというので下に6つに因数分解をしているところでございます。なお、6つの力というものは、一人の人が全部の力を最大持っているというよりは、様々な人、例えば1の力が強い人、もしくは5の力が強い人、いろんな人がいると思いますので、下に書いてございますように、個々の人が持つそれぞれの1から6のポテンシャル、これを社会全体の総合力として最大化させる。そういった形が必要ではないかとまとめさせていただいております。
続いて、4ページ目。4ページ目、5ページ目が具体的な人材戦略の中身でございます。こちらについては、柱としては4つに分けてございますが、1、2、3の柱に上に立つ形で、大前提のようなもので0という形であえて柱を書かせていただいておりまして、そちらがいわゆる社会の基盤みたいなものでございます。イノベーション人材とともにある社会の実現。つまり、どんなにいい人材を育てたとしても、その人材が活躍できる社会基盤が整っていないと駄目ではないかという問題意識に基づいて、0という形でここをまとめております。
この要素として三つに分けておりまして、一点目は、思い込みや偏見の打破、そして多様性に対する社会受容性、そして、高い専門性や能力を認め合う倫理感、そういったものが必要ではないかと。
二つ目としましては、今まで結構科学コミュニケーションというと、成果の発信、もしくは共有、これにとどまってしまっている、そういう嫌いがあるのではないかということがありまして、そうではなく、社会と科学をつないでいく、その共感力を醸成する、もしくは科学に対する社会からの信頼を構築する、ELSI、RRIの実践、そういったものが重要ではないかと。
さらにオーディエンスドリブンによる無関心層をどう取り込んでくるか。これもこちらのほうで書いております。
さらに、国際的な観点でいえば、地球規模の視座に立ったアイデア・調整・実践、そういうものが社会基盤として整う必要があるだろうということで書いております。
三つ目としましては、やはり全員が持つべき科学リテラシーの強化という形で、こちらについては、ソーシャルメディアがかなり盛んになっている中で、身近なコミュニケーターみたいな存在も出てきておりますので、いわゆる専門家のコミュニケーターとの役割分担、そういったものもあるのではないかと書いてございます。
これが0の柱でございまして、次の1本目、1、次世代育成。ここは高校生以下のことを念頭に書いております。
一つ目は、地域の社会全体で子供たちの学びを支える環境・仕組み。学校だけではないよと。地域全体でどう支えていくのかというのが一つ目で書いてございます。
二点目がSTEAM教育の充実。やはり文系、理系といった枠にとらわれない形で、サイエンスやエンジニアスキルの土壌を耕す、社会をデザインする基盤力としてのSTEAM教育という形で記載をしております。
三本目、こちらが、どちらかという分野というよりは、横断的な思考として、アントレプレナーシップですとか、科学と社会をつなぐコミュニケーション能力、さらには多様な能力を認め合い協働する包摂性みたいなものにもつながる力、さらに国際経験の充実というものを横断的な力として記載しております。
四点目は、ギフテッドのような特定の分野に優れた意欲・能力を持つ児童・生徒、その人たちをどう伸ばしていくのかというのを四つ目に記載しております。
続いて、五ページ目、二つ目の柱の抜本的強化のところでございますが、こちらは従来からいろいろ議論があります博士課程学生、若手研究者・女性研究者、さらには技術者、そして研究者や技術者とともにイノベーションを起こすのに不可欠なマネジメント人材、そういった人材のサイエンス/エンジニアリング力の強化という形でまとめております。
まず、博士に関しましては、先般来公表されておりますとおり、「博士人材活躍プラン」というものを文科省でまとめておりますので、その実践とこのプランの実効性をさらに向上する目標設定などが重要ではないかと記載しております。
さらに、研究開発マネジメント人材、こちらは人材委員会の下にワーキングも設置して議論をしておりますが、そこでの議論も踏まえながら研究開発成果の最大化に向けてこの人材をどのように活躍促進していくのかということが必要だろうと考えてございます。
三つ目のポツが、これはエンジニアのことを少し記載しております。いわゆる従来のものづくりの枠にとどまらない形で、新しい知識をアーキテクト思考で社会に実装することができるエンジニア、リサーチエンジニアという言葉も昨今出てきておりますが、その方たちの活躍促進ですとか、もしくはグローバル社会においてエンジニアに求められる国際基準や社会からの要請、そういったものを踏まえた高度な専門職として位置づけられている技術者、ここには技術士なども入ってくると思いますが、の継続的な資質能力向上、こういったものが必要ではないかと記載しております。
最後の柱、三つ目、これが流動性確保・好循環。ここが本日、特に御議論いただきたいなと思ってございます。国内にとどまらない国際的な視点を含めての流動性・好循環でございます。
まず一点目は、高度専門人材が組織を超えて自分の能力を活性化し、キャリアをステップアップできる雇用の流動性・安定性の両立。ジョブ型雇用がこれだけ盛んになっている中でどのようにキャリアアップをしていくのか等々がここに入ってくるかと思っております。
二つ目としては、「知」や「人材」のアジャイルな連携を通じたチーム形成の促進と。これは国内や、国籍や、分野とか、そういったものを問わない形で最適なチームをどのように形成していくのか。そのために例えば必要な仕組みですとか、そういったものがあるのかどうか。
三点目、国際頭脳循環の活性化。こちらについては、後ほどの資料2のほうで論点整理の中でも詳しい説明がございますので、省かせていただきますけれども、学生・大学間交流促進ですとか、もしくはその先端、重要分野の戦略的なネットワーク強化等々、様々な観点からこの戦略の中で記載をさせていただいているところでございます。
次の6ページ目、こちらは、今、様々な方向性を示させていただきましたが、それ全体を俯瞰するために少し理想像を書いてみたものでございます。
下に一般国民、そこから小中高生、そして博士後期課程学生、その上に乗っかる形で研究者、技術者、高度研究マネジメント人材、さらには一番右のほうには、企業経営者、行政、国際機関等々で活躍するリーダー人材、そういった形で記載をし、吹き出しでそれぞれ我々が解決していかなければいけない課題ですとか理想像、そういったものを書かせていただいております。
続く7ページ目以降は、これは実は第6期科学技術・イノベーション基本計画の中で、人材政策に関係する目標がどのように設定されていたのかというものを参考まで付させていただいております。7ページ目が博士後期課程学生に関する目標、8ページ目が、それ以外、若手ですとか女性に関する目標設定の内容でございます。
さらに最後の9ページ目、こちらが、先ほど少し紹介しましたが、博士人材プラン、既に3月に公表しているものでございますが、この中で示している指標、目標値のようなものでございますが、ただ、この真ん中の博士後期課程学生への支援、これが2018年度比3倍、2025年の目標になっておりますので、先ほど冒頭、この資料のタイトル「2050年を見据えた」というものにするにはちょっと近過ぎるということで、この辺の目標は今後検討が必要かなと思っているところでございます。
資料1-1の説明は以上でございます。
【狩野主査】 15分の予定のところ、もう少し早く終わらせていただいてしまいまして、ありがとうございました。大変早口にしていただいて申し訳ございません。ありがとうございます。
では、続きまして、国際戦略担当のほうの大土井参事官様からお話をいただきたいと思います。
【大土井参事官】 お手元資料の2番でございます。私は国際担当でございます。国際戦略委員会のほうとの今回合同委員会で、改めて、なぜ今回一緒に議論をさせていただくかというのも含めて少し簡単に資料2に基づきまして説明をさせていただきます。
先ほど生田のほうからもありますとおりで、やはり人口減というのが現実的に我々日本として考えなきゃいけないことであるということでございます。一人一人の能力を上げるのは当然でございますけれども、それだけじゃきっと日本の経済力、競争力は維持できないだろうというのが一番初めの大前提の概念でございます。
その際にやっぱり日本としては、グローバルコンピテンシー、国際交渉力、対応力、これを上げていかないといけないというのが国際戦略委員会的な視点でございます。
既に、アカデミアであれ、企業であれ、現場には海外の方がずっといらっしゃるのが当たり前の世界になっておりまして、これまで人材政策、どうやって人をつくっていくか、あるいはどうやってその能力を上げていくか、やはり国内向けの結構議論が多かったと考えています。それをもう少しグローバル化をして、視点を広くして、日本にいらっしゃる海外の人も含めた政策として改めてつくっていくということが、先ほど2050年に向けた取組の一つの一歩であろうですし、恐らく第7期科学技術・イノベーション基本計画の中におきましても重要なキーワードになると思ってございます。
今回、資料の2に論点示しております。少し役人言葉で難しいことでございますが、もともとの意味はそういうことをまず御理解いただきたいというのが1点と、あとは、資料の2はいろんなことを書いてございますけれども、ぜひ、アカデミアであれ、企業であれ、先生、各人のお立場からそれぞれでどういうふうな取組ができ得るのかというのをぜひ御意見いただきたいなと思ってございます。
資料の一番冒頭ありますのは、低い流動性・内向き志向という課題があります。先ほど話がありましたとおりで、年功序列であるとか終身雇用がまだ多い社会であるということ。海外経験というのがキャリアのステップアップにつながっていない。これも現実問題としてあるのかなと思っております。
アカデミック・インブリーディングも非常に多いのではないかと。これはまだ現場の声としてはあるのではないか。
社会的環境は、一方で社会のグローバル化、マーケットのグローバル化、これはどんどん進んでいる。それに伴って社員の方々も、ジョブ型雇用なり、世界から人を集めてくるというふうなことが進みつつあるというふうな状況かなと思っております。
こういった状況を踏まえまして、論点案がございますけれども、一ポツ、海外の経験、あるいはいろんなところの経験、これがキャリアのステップアップになるような、その流動性をどうやってキープできるか、あるいはそのためにどうやって取り組むか。多様なキャリアパス、これをどうやってつくっていただくようにできるか。それはアカデミアも含め、政府も含め、どんな取組をし得るか。
二番目でございます。国内の人材、国籍を問わない、いろんな分野、いろんな国籍、いろんな文化、バックボーンを持った方々が活躍できる社会、それをするためにどうやって取り組むべきなのか。
予測困難な時代におきましては、いろんなセクター、世界中の人材とネットワークをし、交流をし、刺激を与えながら議論していく、そういったことが必要になりますが、そのためにどうするか。そのためのスキルは何なのか。こういったものが一つ目の論点でございます。
二つ目、裏ページでございます。次のページでございます。国際頭脳循環と我々は書いておりますけれども、二つ目のチェックのところにありますとおり、学生間・大学間、こういったところの流動性をいかにして上げていくことができ得るか。下のほうにありますけれども、ポスドク・PI問わずに海外のポストに自ら申請をし、アプライをし、自分の力でキャリアを開いていく。そういった人材がもっともっと増えていいのではないか。
あとは人口減少の際に、戦略的な人材をどうやって受け入れていくべきなのか。その際に、例えば、ダイバーシティ、国籍、ジェンダー、いろんなダイバーシティをいかにして確保していくことができ得るか。
あとは、その次、企業等におきましても、海外留学生、あるいは海外の方々、ドクター人材もそうですけれども、いろんな人材を積極的に採用していただくためにどういったことを産業界に期待するべきか、あるいはお願いするべきなのか。入り口のところで日本に入ってきた人、これを安心して、企業、アカデミアが活躍してもらえるように、入管政策に対してどういうふうな付け足しを我々としてするべきなのか。
次のページでございます。国際頭脳循環の続きでございますけれども、世界中の人たちが活躍しやすい、そういった研究現場、社会の現場、企業の現場、こういったものをどうやってつくっていくか。我が国研究者、まだまだ国際ネットワークに入っているところであると思いますが、これをもっと太くする、もっともっと多くするためにどういうふうな取組が必要なってくるのか。地球規模的な視座で物事を考えていただくために、どういった取組あるいはアカデミアのカリキュラムをどういうふうにつくっていくのか。
最後、留学生に関しましては、そのモビリティをいかに確保していくのか。そういったことについてぜひそれぞれの御視点で、どういうことがし得るのかということの議論いただければなと思っております。
何しろ次の第7期科学技術・イノベーション基本計画中に何かしら事態を好転させないと、次の50年ないと思っておりますので、ぜひ先生方、御意見いただければと思っております。
以上でございます。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。文部科学省の皆様からここまでの踏み込んだ内容をいただくというのはよほどの危機感のあらわれでは、ということもできますし、我々が直面している事態がなかなか重いということも意味していると思います。
私からは、やはりイノベーションという言葉のもとに戻りますと新しい組合せという意味で、しかもその新しい組合せが「世で用いられる」という意味があると思いますので、そういった意味で、組み合わせる手前の多様性を増やすにはどうしたらいいのかということはひとつ思います。
また、そこで御一緒するためには、「問い」というのでしょうか、今、何が「謎」なのか、「課題」としての謎なのか、あるいは「好奇心」としての謎なのか、いずれでも結構ですけど、そういうことがどこに共有できる人がいるのかというのを探したい、と、ひとつは思います。
また、言語の壁についてもよく言われますけれども、これも機械学習など結構発展してきておりますので、それを活用するといった方法で超えていけることを、ぜひ私の自分の職場の付近でできることはしていきたいなと思いながら伺っておりました。
それでは、まず、先ほど申し上げたとおり、国際戦略委員会の皆様からで、最初に相田卓三先生がきっと力強く発言いただけると思います。ぜひお願いいたします。御準備できたらお願いいたします。
【相田(卓)委員】 すいません、突然だったので。
【狩野主査】 お願いいたします。
【相田(卓)委員】 今日、今おっしゃっていただいたことの中、非常に重要なことがたくさん入っていたと思います。アカデミア自体はいろんな努力をしておりますけれども、やはり幾つか出た中で一番大きいかなと思うのは、やっぱり社会が積極的に、例えば国際的なネットワークの経験をした学生さんとか、あるいは博士を積極的に活用しようとする動きが目に見える形で見えないという点がやっぱり一番大きいかなと思います。
例えば処遇に関しても、多くの企業は、修士よりも3年分多いぐらいがせいぜいですね、給与に関しても。やっぱり特別扱いという感覚が非常に少なくて、そこにわざわざ学生が、ある意味の日本人が最も嫌う、防ぎたいリスクという言葉をあえて使うと、リスクをかけて、3年、ちょうどそのまま延ばした形のものに向かっていくかということも考えたときに、やっぱり非常に難しいと思います。
ただ、やっぱりこれは前も就活と博士課程の学生をどういうふうにバランスを取るかということは非常に大事だということを企業に申し上げたこともありますが、例えば必ずしも博士を取っていたがゆえに成功したという例があまり、ポジティブな例がなかったとか、あるいは国際的な経験をしたのに企業に入ってあまり成功しなかったというようなことがあって、やはり企業としては、博士、あるいは国際経験を持つ人材を優先的に採用しますよという言葉が非常に出しにくいというのが実態かなと思うんですね。
そこは、我々としては、その辺は制度はともかくとして言っていただきというのがありますけども、やっぱり企業の方はうそになるかもしれないから言えないんじゃないかというようなこともあるのかなと。これも日本的な考え方ですね。海外だと平気で言っちゃうところでしょうけれども。その辺が何と解決しないと、多分、さっき言われた次の50年はないかなと思いますけれども。
あともう一つは、発言権、発言力というのはやっぱり日本の学生が非常に少なくて、私のラボは、結果的に今、留学生が非常に多いのですが、やっぱりそうじゃないときも含めて、どっちが主体になっているのか分からないぐらいおとなしいんですね、日本人の学生さんは。留学生のほうがどんどん発言してラボのいろんなことを変えていこうという気が見えますが、日本の学生さんは決してそうじゃなくて、その辺も含めて、やっぱり国際的になかなか出ていけない理由の1つかなと思います。
文化が大きく影響しているかもしれませんし、ただ、人口のことがかなり言われていましたけど、日本よりももっと小さな国が国際的にどんどん出ている例もありますので、必ずしも人口減少が全ての理由ではないのではないかと私は思います。よろしくお願いいたします。
【狩野主査】 ありがとうございました。キャリアへのメリット、それから発言力の強化という辺りをポイントにいただきました。
続いて、相田美砂子先生、お願いいたします。もし1回目で発言しそびれた場合、皆様が短く終わっていただくと後で2巡目がございますので、よろしくお願いします。
相田先生、美砂子先生、お願いします。
【相田(美)委員】 時間が短いので、まず感じたことは、タイトルが、シン何とかってつけるのは、何か奇をてらっているようで嫌な感じがします。つまり、中身に何がシンだろうかという視点でずっと読んでいたんですけど、書いてあることはどれも重要で、本当にどれも重要なことはよく分かるんですけど、何がシンなのかというと、これまでに問題視されていたことをまとめて書かれていることは十分いいんですけど、ただ、それの何がシンなのかというと、シンはないのではないか、もうちょっと普通のタイトルにしたほうがいいのではないかというのがまず感じたことです。
それで、すごく大事なことがいっぱい並んでいて、どれ一つ欠けても日本の将来はないという感じに大事なことばっかりだと思います。だから、全てを、それこそ一人一人の能力が、一人では全部、みんなが集まれば、集まってちゃんとした能力、みんなで併せてという御意見がありましたけども、それと同じように、それは人でもそうだし、地域でもそうだし、大学の種類でもそうだし、いろんなことでそれが言えると思います。
だから、今の日本の一番欠けているところは、どこかに一極集中して、ここだけに何かを集中して、そこだけで世界のトップになれって、それは無理だと思います。やっぱりいろんな意味での裾野とか、いろんな意味での多様性、それを潰しているのが今の日本をつくってしまったと思うので、それを解決することが芯になると思います。
ということで、1分超えてしまいましたので、まずは以上です。
【狩野主査】 御協力ありがとうございました。違いを併せて全体を支えようという御趣旨だったと思います。あと、タイトル、何かすてきなのを考えていたらまた教えてください。ありがとうございました。
では、続いて飯塚先生、お願いできますでしょうか。また違った背景をお持ちだと思います。違いを生かしておっしゃってください。お願いします。
【飯塚委員】 私のほうからは国際的なところからちょっと申し上げたいと思います。いろいろな観点が非常に重要だと思いますが、一つ気になったのは、ステップアップという言葉でした。海外から見てみますと、ステップアップするには流動的に動きます。でも、ここではステップアップというのは上に上がるということで、なぜ上に上がるために脇に流動がないのかということで、普通流動しながらいろんなスキルを身につけていって上に上がっていくというイメージなので、その辺の認識が、もしかしたら私の勘違いなのかもしれませんが、認識がちょっと、日本の今までどおりのステップアップのイメージから書かれているのかなと若干思いました。
あと、流動性の観点から申し上げると、やはりいろいろなネットワークというのはつくるのに時間がかかると。若いうちからやらなきゃいけないと。若いうちから、要するにみんな若造のうちから仲よくなって、その人たちがもともと自分のところに帰っていって、しばらくたつと皆さん偉くなってすごいネットワークになるという、そういうのを繰り返していくというのが普通のネットワークのつくり方だと思うのですね。
なので、すぐバッとできるものでもなく、例えばEUなどでは Horizon Projectとかで、条件をつけて、何か国にまたがるプロジェクトだったらつけますとか、またはエラスムスプロジェクトといって、リサーチにかけないけれども、モビリティにお金をあげますというように、いろいろな仕組みがあったりするので、そういう形のものを取り入れてもいいのかもしれませんし、もしくは、例えばホライズンプロジェクトだったら、韓国とかも参加しています。多分日本も参加できると思うので、そういうところに参加を支援するというようなことも具体的にすぐできることではないかなと思います。
あと、奨学金を経て、もらって日本で留学に来ている方、これちょっとこの辺詳しくないのですが、仕事を得る際に、日本で仕事を得やすいようなビザの取得の仕方のサポートとか、そういったポストがあるとか、もしくはそういう方に向けてのリサーチファンドがある。それは例えば、その方がもし自国に帰るに当たっても、勉強した先の先生、または勉強していたときの同僚と一緒にできるような、そういうリサーチファンドが何らかのところにあると、帰った後も、またはそこにいながら、日本にいながらもそういったネットワークを維持できるのではないかなと思います。そうすると多様性がちょっと担保できるということになるのと、あと、そういうところであれば、要するに、日本人と、また日本の環境を学ぼうというのではなくて、日本に来ている学生からもいろんな刺激が受けられるところだということで、留学生がまた来られるような、そういった環境ができるといいなと思います。流動性のある、または、そこにいてもいろいろな形でずっとネットワークを大切にしていただけるような、そういう環境だということで選ばれる留学先になれるのではないかと思いました。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。「ステップアップ」ノットイコール「すごろくで上がり」であるということが一つと、それから、早くにネットワークをつくって地道にそれが保てるような政策のありようもあるのではないかという御発言をいただいたと思います。
ありがとうございました、では、続いて、石原先生、お願いできますでしょうか。
【石原委員】 二つありまして、内向きマインドの話と理系をなぜ女子が選択しないかという話ですけど、一つ目は、内向きマインドの原因の一つとして、私が大学に所属していることもあるんですけれども、やっぱり他国に比して、入試と新卒重視の就職活動が非常に過度に時間を取られていて、真の大学の活動である学問に集中する期間を阻害しているのが一つ大きな理由になっているかなと思いまして、学生に関しては、中学から高校に行くときにもかなりハードな受験がありまして、高校から大学に行くときもさらにあるという、なかなかハードルの高い、上に行くシステムになっていると思うんですね。
特にそういう教育の受験重視というのが、多感な進路選択のタイミングで浸透し過ぎていて、勉強は自分のためにするものではなくて、いい大学とかいい会社に入るために親や教師にやらされているという感覚の中高生が非常に多くなって、大学は、その準備期間であるから、ちょっと羽を伸ばしてもいいというぐらいの感覚でいることは、ほかの海外に比べると非常に多く感じるのですね。
それと同じように、そういうルートに乗ることを目指すと、人と異なる基準で将来に関わる選択をすることを避けようとすると。大学での学習意欲低下を避けようと思ったら、やはり企業は、入試のときの能力、つまり学校で選ぶのではなくて、大学での学びをやはり評価することを考えてほしいというのと、そういう意味では、入試というものを単に多様化しようというような簡易ソリューションじゃなくて、海外の人材を呼び込んで、日本人留学、日本人学生が海外に留学できるようにするというためにはかなり抜本的な改革が必要ではないかなと。厳格な筆記試験は、人口が増えているときには、狭き門にすることは有効だと思いますけども、今後、受験人口がどんどん減っていくときに、そういうシステムを今後も続けていくべきだろうかというのはやはり考えざるを得ないかなと思います。
そういう意味では、入学した学生を必ず卒業させないといけないというわけじゃなくて、ちゃんと学問を習得して、その証として学資や修士を出すという意味では、入学者数とか、落第の人数の制限なんかはフルフレキシブルに対応すべきかと思っていて、入試業務も非常に大きいんですね。学校によるかもしれませんけれども。特に日本語が流暢じゃない外国人の先生とかにはあんまり任せられないと言われて、日本人の業務のほうに、日本人担当の業務という感じで回ってきていて、例えば外国人の教員を採ろうとするときの強力な反対意見になっているんですね。
一方、若い先生は、それを理由に海外になかなか長期出張が行けないということもあります。
でも一方、海外の先生たちは、講義とかすごく一生懸命準備していて、成績判定とかは日本人の教員よりずっと真面目にやるのですね。だからそういったものをちゃんと生かすべきだなというのを、海外の人たちを呼び込むときには必要かなというのを感じています。
もう一個が、女子学生が理系選択しないという問題ですけども、これについて、本当に長い問題で、私が学生の頃からあんまり状況は改善していないんですけれども、最近思っていることの一つは、入試のシステムの関係ありますけど、やはり早い段階で理系と文系が分かれているというのは、自分のキャリア形成というのを考える前にいや応もなくあるルートに分けてしまうというのは、ひとつ悪い、非常に悪い影響を与えていると思います。
もう一つは、女性、女子学生は本当に小さいときから、小学生ぐらいからアンコンシャス・バイアスの教育を受けていて、いろいろな教育を受けているわけですけれども、特に影響されたなと最近思うのは、やはり母親がちゃんと娘が理系になってほしいと思えるようでないと、なかなか娘がちょっと興味を持ったときにもプッシュしてあげられないし、そこは結構大きな足かせになっているかなと感じます。
なので、母親世代が、文系学生だったら、今だったら理系に行きたかったなって思わせるような情報を伝えると、状況をつくると。例えば仕事と生活のバランスなども含めてですけども、そういうのも含めて、理系に行くとそういう働きやすさがあるとか、そういったものも含めて考えるべきかなあというのを感じています。
一方、女性は留学に対して、昔から治安さえ悪くなければ比較的心的ハードルは少ないと言われますし、実際海外行くと、もちろん人種差別とか宗教とか新しい問題が出てくるのですけれども、女性同士の連帯とか、権利の主張の声も大きいですし、日本でいかに自分がアンコンシャス・バイアスにさらされているかというのを気づいて、ここ生きやすいと思う人も多いんですね。
そういう意味では、女性の母親も、留学はそんなに反対しないということも多いんですね。で、昔から女性が大学でポジション取ろうと思ったら、海外でまず強固な評価を取ってこいと言われていたこともありますので、優秀な女子学生を勧めるために、そういった母親世代のサポート、それをもとに海外に行ってもらって、優秀な業績を出してもらって日本に呼び込むというのは非常にいい循環になるのではないかなと考えておりました。
以上です。
【狩野主査】 大事なポイントをたくさん短い時間に詰め込んでくださいました。ありがとうございました。一応ちょっとだけまとめると、やはり「枠組みにはまろうとする努力で、中身をするほうの余力が残ってないのではないか」という翻訳が多分前半はできそうな気がいたしますし、後半のほうについては、「せっかく持っている柔軟性を生かすのに、分別が早過ぎる」というような点もあるなということを思って伺っておりました。ありがとうございます。
では、続きまして、礒田先生にお願いできればと思います。ちょっと今まで御発言の内容でビジネス側の方から反論したい内容がたくさんあるのかなと思いながら聞いてはおります。当然大学の先生が多いので。続いて大学の先生で、お願いしたいと思います。礒田先生、お願いいたします。
【礒田委員】 我が国の新市場創出とか海外市場の獲得の視点から考えてみると、やっぱり国際拠点化とか、地域ネットワーク化、投資促進を実現する、やっぱりそういう海外の産業化拠点というのがあったらいいじゃないかと思いますけど、そこにもやっぱり世界最高レベルでのR&Dの環境と、あと、海外投資も活用できる事業化の支援体制というもの、両方あるというのが必要かと思うのですね。そこにやはりアカデミアから優秀な人材、そういう環境で研究ができるような人材を配備していく、配置して整備していくということが非常に喫緊の課題なのではないかと思っています。
その場合に国際戦略強化をするときに、やっぱり制度とかデータの国際調和とか、あと知財、遺伝子資源保護とか、その辺りも非常に重要ですし、また、日本モデルというのを国際展開していくという、そういう足場をつくるというのも非常に国際競争力の向上には重要かと思います。
もう一つ、先ほど異分野融合のお話もありましたけれども、非常にやっぱり重要なのが、倫理的なこととか、法的とか社会的問題、こちらはやっぱり文理融合、対話を促進する場で、将来そういったところに進出していく若手の学生とか、ポスドクとか、そういう人たちが、文理融合の対話を促進する場でいろんな経験をしておくという、その場をつくっておくということが必要なのかなあと思いまして、その三つぐらいの観点から、産業界等も含めて、最近も産学連携の研究も非常にポイントとして、共著論文なんかもポイントとして評価されるようになってきていますので、その辺りでこれから人材育成について考えていくというのも重要かと思いました。よろしくお願いいたします。
【狩野主査】 ありがとうございます。「産業とも一緒になって人材の活用を考えていくということ、それから、規制ルールあるいは倫理といった法律的なサポートも必要である」という辺りを教えていただいたと思います。ありがとうございました。
では、続きまして、経団連から小川様にお願いしたいんですけども、ぜひ経団連を背負わないで発言していただきたい気がしておりまして、よろしくお願いいたします。経験を通じてお話しいただければと思います。
【小川委員】 全部背負うほどの私も資格がないので、自由にしゃべらせていただきます。非常に幅広いお話なので、幾つかに絞りたいと思います。まず、御説明いただきました内容は、いずれももっともなことであると思います。とりわけ今まで議論を聞いてこなかった人材の側につきましては、文科省の審議会においてここまでイノベーションに力点を置いた人材の議論がされていたということはある意味うれしい驚きではありました。
ただ、どなたかもおっしゃっていましたけれども、どれも新しい内容ではないなと。恐らくどこでも、最近であれば、どこでも同じような議論を繰り返されていて、できてない、できてないと言われて早3年、5年ぐらいたっているかなと思っていますので、先ほど第7期科学技術・イノベーション基本計画でこれができなかったらもうあとはないという切迫感、表明されていましたけれども、であれば、もう一歩踏み込んだ具体的な施策がこの戦略の下にきちんとついているということが重要なのだろうと思います。
今までもこの戦略に関わるような事業も実は行われてきていると思います。であれば、それがなぜうまく奏功していないのか。どこを直すべきなのかという評価・検証も必要ではないかと思った次第です。
例えばですけれども、留学に関しても、何年もこの議論していると思います。それがうまく増えないのはなぜなのかとか、もし留学を国費で支援していたとしても、それがイノベーションの創出につながっていないとすればなぜなのかという評価・検証をした上で、例えばですけれども、中国とか、アジア、ほかの国では、国費留学生にそのまま現地で起業をさせて、そしてバイネームでそれを呼び戻して、自国でビジネスを発展させるといったところまで踏み込んで支援をしている、ウミガメ政策なのかもしれません。
であれば、日本としても、ただ留学をさせるだけではなくて、例えばその人が日本に帰ってきて起業するときに、そんな多額でなくていいのですけれども、起業の最初の支援を枠化するとか、あるいは海外にそのまま起業されるときにも支援をしてしまうとか、それぐらい踏み込んだ施策があってもいいのではないかと思います。
それから、博士人材のところですけれども、経団連を背負って言ってしまうと、今、産学協議会で博士のジョブ型インターンシップなどもやって、うまく産業界側でも受皿を増やしていけるようにという努力はしています。実際個別の企業さんからは、うちはすごく博士人材採っていますよとか、それも就職、採用時期も特に絞らずに通年いつでも博士人材募集していますよといったお声、結構あります。そういうことがもしかしたら大学院側に伝わっていないということはあるのかなと思って、そういった企業が、より積極的に博士をとても重視して採っていて、こんなふうに評価をして、待遇して、活躍いただいていますということをもう少しPRすることで、博士を目指す方々が増えるということにつながるのであれば、そういう努力は企業側にも必要ではないかと思っています。
ただ、採用、人事戦略というのは極めて経営戦略の真髄ですので、これは企業によってその戦略いかんって、いろいろなやり方はあると思います。先ほど博士はそれなりの待遇をするということを宣言すべきというお話ありましたけれども、博士にそれだけの価値を見いだせるかどうかというのも業種とか分野によって様々グラデーションはあると思います。
ですので、企業が経営戦略上、これは博士を活用していこうと思うところは積極的にPRをすべきだと思いますし、そうでない企業は、博士側が選ばなければいいだけの話と思っています。
そしてまた、企業にだけ博士の受皿を求めるべきではないと思っていまして、今実はイノベーションの中で博士人材が必要とされているところはほかにもたくさんあると思っています。例えば、大学でURAですとか企業支援をしている人たちに専門知識を持っている人が少なくて、技術の目利きができない、発掘ができないというお話がありますので、こういったところで博士をしっかり活用できるように、例えば大学がそういう対策を整えている、博士人材を使ってそういう支援体制を整えているかどうかというところを評価対象にするという手もあると思います。
また、ベンチャーキャピタルも、目利き人材がいなくて、きちんと技術を見分けて投資をすることができないでいるという話がありますので、そういったところにも博士人材の活躍の場はあると思います。
それからまた、ファンディングエージェンシー(FA)ですね、こちらディープテックの支援、今盛んに行われるようになってきていますけれども、こちらもやはり目利き力足りないのではないかと。技術をしっかり見分ける人、そしてそれからそれをビジネスにできるかどうかというところを見分けられる人が足りないというお話もありますので、政府がFAを通じて補助金支援をするときに、こういったところでもしっかり博士人材をつくっていく。そういう形での博士人材の受皿拡大の施策もあるのではないかと思います。
今、一例ではありましたけれども、そういったように、戦略はもう十分に共有されていると思いますので、より一歩踏み込んだ施策に落としていくことがこれから重要になるかと思っております。
以上でございます。
【狩野主査】 ありがとうございました。今まで大学の先生方がいろいろおっしゃったのに対して産業界的なことをしっかりお返事もいただいたように思いました。ぜひ「キャリアとしていろんな道がある」ということをPRという点は御一緒に進められたらなあと思って伺っていました。ほかも大事なことで、ありがとうございました。
では、続いて、梶原先生、お願いできますでしょうか。
【梶原(将)委員】 では、私のほうから、いろいろと貴重なお話いただきまして、ありがとうございました。いろいろお聞きして考えるところありますが、取りあえず今日は国際戦略委員会のメンバーとして出ているので、そっちの観点から二点ほど。
一つは、今、まさに小川委員のほうからも言われた、最後にタブレットにも出てきました、6ページですかね、この表というか、このグラフを見てうーんと思ったのは、博士を取った学生が行く先というところで見たときに、このように書くのは日本だけなのかなと思っており、この図の一番右のところ、点々になっているところ、ここがもっともっと海外では多いのではないかなと思います。ここには例えば企業だとすると、企業の経営者って書いてありますが、企業の方とお話をしていると、海外の企業であれば、別に経営者じゃなくても、例えば工場のトップとか、開発のトップとか、またまた財務のトップとかもドクターの名刺を出してくると言っており、ドクターの活躍の場はもっともっと幅広いのではないかなと思います。
ある意味、我々大学は、そういうドクターをつくっていないというところもあるのかもしれませんが、やはり日本も、国際標準で博士課程のキャリアというのを考える、また採用するような形で、もっともっといろんな職種でドクターが活用できるようなことをする。そのためには、まずはそういう海外に出ていって、そのような環境にちゃんと触れてくる人たちをつくっていくことが大事なのかなと思います。
そう考えると、ドクター出た人たちをここの点々のところにもたくさん輩出できる、特にそれも海外で働く。例えば国際機関にもっともっとドクターを取った人を派遣するとか、あと、経産省のプロジェクト、ヴルカヌス・ヨーロッパ大学院の学生を1年間ヨーロッパの企業でインターンシップをさせるとか研究させるとかいうようなプログラムなど、そういったものをもっともっとやって、博士の多様性、キャリアの多様性というのを世界標準にしていくというのが一つなのかなと思います。
一方で、受入ですけど、受け入れるほうも多分同じで、外国からも博士の人材など高度人材が日本に入ってくる。今後、少子化とかで人材不足のときに、その人たちが、来やすい、そして働きやすい環境をつくっていかなきゃいけないです。その人たちを、世界的な標準というか、世界的な基準で評価することですよね。その評価を常に日本的な評価方法でつけていたら、やっぱりそんなところにはいたくないなと思っていて定着もしないので、環境とか、そういうのも重要ですけれども、やはり海外の人たちには、しっかりとした国際基準の評価方法というのは大事なのかな。
そのときに、今ヨーロッパとか海外では議論が進んでいますが、ジェンダーにおけるイクイティですね。キャリアをアンコンシャス・バイアスで評価してないかとか、そういったところも今後大事になってくるのではないかなと思っていて、そういうところが日本がオープンになれば、もっともっと海外から人が来やすくなるのではないかなと思いました。そういったことを改善していければ国際的な流動性も変わってくるのではないかなと思います。
以上二点、ちょっと気がついたところ、お話しさせていただきました。以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。特に後半は、今までそこまで出なかった視点だったので、ありがたく伺いました。前半も、この図が、やっぱりちょっと文部科学省的……。
【梶原(将)委員】 文部科学省というよりは、国内的な外面だけなので、やっぱり世界的にもいろんなポジションにもっともっとドクターが行けるように我々も誘導していかなきゃいけないのかなと思います。
【狩野主査】 産業界の皆様ともまたそういう意味でもお話をしたいなという感じがして伺っておりました。ありがとうございます。
では、続いて、国際戦略委員会の主査でおられます菅野先生にお願いできればと思います。よろしくお願いします。
【菅野主査】 菅野です。国際という観点よりも、国際から見た国内でどういう課題があるかという観点で三点ほど述べたいと思います。
国際という観点で、先ほどの飯塚先生からのコメントについてです。エラスムスのプログラムのことがありましたけども、あれ大変いいですね。ああいうプログラムができれば多分いいと前々から思っていました。
国籍、ジェンダー、それから年齢というものに対して理念としては区別をなくすというのが多分理想で、その区別をなくして大学の入り口、出口の多様化を図るというのが多分理念として掲げるべきであろうと思います。
あと、ちょっと個別になりますが、キャリアのセットアップなんですけれども、まず一点は、大学内でキャリアパス、もう一回再構築する必要があるんじゃないでしょうか。先ほどの博士を取った人材はいろいろこういうものがあります、こんな出口がありますってありますけれども、大学でやはりそのルートを大学内でつくるべきではないかというのが一点。
というのは、修士で現在就職をする学生が多く、修士から博士へ行く学生が少ない、そこの人材獲得競争に大学は負けているのですね。それは、大学でのドクターの不安定な期間、それからその後、RA、ポスドク、で、任期つきになる、このような状況で、誰が博士課程に行きますかというのをほかの文科省の会議でも言っています。そこが安定でないと、今、経済的にといっても、多分修士からドクターに行く段階で獲得競争に負けます。そこが何とかならないかというのが一点です。それには大学の中で一応キャリアパスをきちんと持つべきであると思います。
二番目は、年齢とも関係ありますが、社会人の博士。学び直しですね。大学が獲得競争に負けて後、企業に行った人材が、企業の中でもう一度、博士課程で学び直して、博士が必要であるという要請から、大学に入ってくるルート、これをもう少し広げるべきであろうと。我々のところでも博士にもう1回来た、博士を取った人材は企業の中でも活躍していますし、あと、その企業を飛び出して大学へ行く、海外へ行く、いろんな活躍をしています。そこをもうちょっと広げるのが、現実的な解として広げるべきではないかと思います。
二番目、国内、国際にとどまらずという二番目の論点のところがありますけれども、人材の裾野を広げるべきです。いろんな施策は、やはり選択と集中というところで、トップに偏りがちです。ではなくて、日本には国立大学がいっぱいある。そこには多くの学生がいる。そこに対象を広げるべきである。そこへの施策を広げるべきである。留学生しかり、大学の中でのジェンダー、なおかつ国籍の多様化しかり、裾野を広げるべきであるというのが第二点。
それから、三番目、産業界において進めるべきこと。これはジョブ型雇用、通年採用だと思います。修士であってもこれになってほしいと。それをすると社会がひっくり返るかもしれないので、すぐには無理かもしれないですけれども、ここが変わると大学の教育も変わらざるを得ない。どっちが先かですが、ジョブ型、通年採用の方向へ行くべきであると思います。
理念、理想ですが、これ三点です。
【狩野主査】 ありがとうございました。「足元を大事」にしつつ、あと「属性にあまりこだわらないで中身で進めていけるといい」というお話だとお伺いしました。ありがとうございました。
では、続きまして、今度また産業界ですね。日立に属しておられます鈴木委員からお願いできればと思います。お願いいたします。
【鈴木委員】 私からやはり企業の立場から発言させていただきます。企業として欲しい人材というのは、やはりほかの企業よりも先に先の課題、将来の課題に気づける人材。それは当然競争力に直結するからそういう人材が欲しい人材です。
しかし、弊社、今国内に2,100人研究者がおりますけれども、修士卒、博士卒にかかわらず、言われたことはできるけれども、自分で課題発見ができる人は非常に少ないと感じています。ここは私見ですけれども、これは日本の受験システムによってつくり込まれてきたのではないかなとは感じています。
一部、先の将来の課題に先んじて気づけるような人もいます。大学にもそういう人がいて、目をつけていると、そういうトップ人材というのは海外に流出してしまっているというのが現状認識としてあります。
その一因は、海外と日本でもサラリーが今圧倒的に違うというところが一個あると思います。
それと、国際競争分の低下というところがやっぱり背景にあり、企業の中では先の課題にじっくり取り組める環境、研究環境ではなくなってきているというところも原因としてあります。
ですので、せめて大学の研究は、数年後に産業応用を目指せとか、そういうようなことは言わずに、挑戦的で、多様な、先ほど選択と集中し過ぎとかいうお話もありましたけれども、そういった多様な研究をすることでそういった人材が育ってくるんじゃないかなと感じています。
以上になります。
【狩野主査】 ありがとうございました。大変短くまとめていただきましたけども、先が見える力、それから「じっくり取り組む内容ができる場としての大学の重要性」ということについてお話しいただけたと思います。ありがとうございました。
では、続きまして野本委員ですね。野本委員もソニーグループの御所属ということで、産業界的な視点をいただけるのかもしれませんし、違う視点でも結構です。よろしくお願いします。
【野本委員】 野本でございます。まず国際化に関しては、企業でも重要なイシューでありますので、いろいろな取組をしているのですが、例えば、どの企業さんでもやられているところ多いと思いますが、社内の公募留学制度をつくって、そこに応募いただいた人に当然いろいろと生活費や、いろいろとそういったことのサポートもして、海外留学に送り出すということもやっていますし、一方で、国際人材を取り込むというためには、海外の高度人材のための特別の雇用体系を準備しております。
ただ、それが必ずしもうまく回っているかというと、そうでもない側面もありまして、やはり公募留学に応募する人とか、日本の企業の海外人材雇用体系に対して応募してくる人というのは非常に限られているのですね。
例えば大学時代から国際意識の高いような活動をしているとか、あるいは、大学の非常に国際的な研究室に行って国際交流をすることに抵抗がない人というのは、そういうことに応募してきやすい傾向にあります。
海外高度人材に対しても似たようなところありまして、やはり日本の生活というのはそれなりにノンジャパニーズにハードル高いので、やっぱり一番企業として、外国人も含めた国際化に社員として取り込みやすいのは、実は日本に来ている留学生が一番採用しやすかったりします。
ですので、いかに大学の国際化を図るということや、生活のインフラの国際化という点も非常に大事だと思っていまして、そこを促進することによって国際感覚を身につけた人が企業に接触していただいて、積極的な公募留学制度に応募してくれるとか、日本に来ている留学生が積極的に日本の企業に就職してくれるということが、実際にはそういった傾向がありますので、そういったところをうまく、その学びを生かしていくところが大事かと思っております。
次に、多様性に関しても、弊社の場合はジョブ型採用だけでなくて、ポテンシャル枠採用で、必ずしも技術のマッチングが取れなくても、大学時代に非常に優秀な成績を残しているであるとか、そういった人を採る枠を一定数設けてありまして、そこには当然博士人材も入ってくるわけでございますし、それだけじゃなくて、社内の人材の多様化を図るためにリスキリングのプログラムを積極的に設けるとか、ジョブローテーションもやっております。
一方、そういったのに積極的に応募する人というのもまたある特徴を持っていまして、もともと自分に多様なスキルを持っている人が、より新しいスキルを身につけることに抵抗がないとかということで生きてくるというところでありますので、大学時代にある程度1つの専門性だけじゃなくて、複数の専門性を持つような機会を与えるということも有効なのではないかと思っております。
そういう意味では、デュアルディグリーをもっと促進するであるとか、あるいは昨今は大学発のベンチャーもいろいろあると思いますので、そういったところに活躍できるような仕組みを増やしていくというところが、そもそも誘導できるポテンシャルの人材育成というところにつながって、そういった方に企業に来てもらえると、我々が準備しているいろんな機会を有効に活用していただけるのかなと思っております。
最後、リケジョの話ですけども、弊社としては、先日、理系女子への返済不要な奨学金プログラムというものを準備させていただきました。そのプログラムに参加していただいたリケジョの女子大学生の方には女子中高生の育成も一緒になってやってもらうという活動をしていって、そもそも市場ですね、リケジョ市場の規模を大きくするというところに少しでも貢献できたら幸いかなと思って活動していますので、これ、1社の企業だけでやってもそんなに大きく効き目がある話でもないので、これをもっと思い切って、やはり女子大生というよりは中高生のうちから理系の人材を増やすというところが非常に重要だと思いますので、そういったところへの思い切った施策というものを考えていただけると効果が高いのではないかと思っております。
私からは以上です。
【狩野主査】 大変すばらしいポイントを四つぐらいいただきました。もし底流に流れるものを勝手に拾わせていただくとすると、「制度をつくるだけじゃなくて、それが受け止められる人の育成も重要であると。」それについても、「もしやるとするとちょっと早い段階からしたほうがいいのではないか」というようなことだと受け止めさせていただきました。誠にありがとうございました。
では続いて、東京外語大の林先生、お願いできますでしょうか。
【林委員】 お願いいたします。国際性に関していうと、先ほどからEU圏のエラスムスの話が出ていましたが、例えばエラスムスのプログラムの中のモビリティートラックを見ますと、本当世界中から募集してEU圏内、あるいはEUの外にもモビリティートラックを及ばせていくというやり方です。そういう懐の深さというか、広さが、大事だと思います。日本の奨学金制度という、国籍で本当に分離させられていて、日本国内で学んでいる留学生は日本から外へ留学するとき奨学金出ないとか、いろいろ制限があります。日本に外国の優秀な人たちを呼び込んでいくにはそういうハードルから一つずつ取っていかなきゃいけないかなと思う次第です。
それから人材のほうに関していうと、6ページの図がとてもよくまとまっているなと思いますが、やっぱり一つここで欠けているのは、学部から、大学院への進学です。人文社会系から考えると、学部から修士に行くところで非常に大きな溝があって、修士にそもそも全然行かないのが人文社会系の特色です。そこを改善していかないと、先ほど御指摘があった幅広い企業の経営とか、そういうところに入っていくような人材に、博士の人材、特に人文社会系の学問分野で博士号を取った人たちが入っていくというところが本当に途絶えてしまう、断絶があると思います。
博士人材が抱えている問題は、経済的な支援と将来への不安という、その2つが理系でもあるわけですけど、人文系の場合、その何倍もそのハードルがあって、企業で博士人材採るといっても、研究人材として採っておられるのが大半で、文系の博士号を持った人たちを採るというのは本当に限られているので、国全体を変えていくような思い切った取組が必要だと思います。そこには入試の問題もあるし、奨学金の問題もあるし、さらには企業への就職活動の問題もあって、人材登用の問題等々全てが絡んでいるので、でも、この機にという、アイデアという形では、そこの問題点もぜひ御指摘いただければと思います。
そのような意味で、とてもダイナミックなので、私は初めて見たときはこのタイトルはいいなと思って伺いました。
以上です。
【狩野主査】 最後に御支援もいただきまして、ありがとうございました。私がお礼を申し上げる立場かよく分かりませんけど、ありがとうございます。
あと、「属性によって線引きをなるべくしないような政策のありようがあるか」どうかということとか、あるいは、「人間の頭から出てくる活動に関する学術というものが、支えられる人はもっと増やせる方法はないのか」というような御指摘もいただいたように思いました。ありがとうございました。
では、国際戦略委員会からはラストですかね、名古屋大学の松本先生にお願いできればと思います。すいません、総長がおられる前で発言しにくいかもしれませんが、そんな気にしないでおっしゃってください。お願いいたします。
【松本委員】 見ないようにしゃべるようにします。いろいろポイントありますけど、前回も話ありました研究支援人材の育成というか、高度人材ですね。ここの支援というのは非常に重要で、キャリアパスとしてここをつくっていくという話も先ほど梶原先生のほうからもありましたけれども、とはいいながら、ポジションにお金がないのでは、そこに例えばどうつけていくのか。そういったところは非常に難しい問題ではありますが、でもここをやっぱり増やさないと駄目なような気がします。
例えば、またWPIの話になりますけど、やっぱり事務部門長というのが各拠点にいて、要するに研究者の人が事務と研究者をつなぐという役割を担っている。これは非常に重要な役割でして、これが要するに何でも屋さんですよね。国際連携やりたいといったら、そこに行って話をしてくるとか、あるいは企業とやりたといったら、企業に行って話をするとか、要するに何でもやる。外国人が困っているといったら、その相談にも乗って、それをまた事務のほうにつなぐと。
こういう人を、今大学としてはURAとかいう制度ありますけれども、今のところトップダウンであんまり現場に下りてきて何かの役に立っているという感触があまり実感としては現場にはない。URA、いろんな宣伝最近始めていますけど、それでもやっぱりまだ自分の近くにいる感じがしない。
逆に、ここら辺が整備された上で、ボトムアップ型に、例えば学科レベルぐらいですね。研究科レベルだとちょっと大き過ぎるので、学科レベル、15人、20人ぐらいの教授がいるようなサイズに対して一人ずつそれぐらいの人を配置するとか、そういった思い切ったことをすると、今の研究専念の時間が取れないというところに加えて、さらに国際化やら何やらやれと言われたときに、もう無理だよという話はある程度解消できるんじゃないかなという気がしています。
それと付随して、先ほどの博士のキャリアパスの中で、一番右側にありましたリーダー人材の育成というところですけど、これも結局そういったところの経験を経てそういうところに出ていける人も出てくる。だから、別枠というよりは、あの枠とあそこはつながっていて、そういったことを経験することによってそういった人材が育成される。そのパスは、博士学生が直接それになるというのでもいいですけど、研究者の中で始めてみて、ちょっと自分やっぱり向いてないなという思う人は多分いるのですよね。そういう人が、きちんとした待遇で、きちんとした評価があるという前提で、例えば助教を辞めてそちら側の支援側に移ると。そういったこともきちんと宣伝していくようなことができると、それは多分処遇によって表現されるだろうとは思いますけれども、そうするとお金が要るという話にまた戻っちゃうのですけど、でも、そういった制度を整えていくということは、極端な話、学科の教員1人削ってそれに置き換えるでも、というぐらいのことをしてでもやっていくべきではないかなと僕は非常に感じています。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。「自分の能力セットに合ったキャリアを見つけられて、しかもそれで満足がいけるということも必要」だなということを思いながら伺いました。
また、そういえば留学生の関係をしている人から聞いたので今思い出したのが、留学生の方がその地域に住むときに、自治体にまずいろいろな手続に行かなきゃいけないんですが、その段階で既にかなりハードルがあると。窓口に行くと日本語しか分からなくて困っちゃうみたいな話を聞いたことがあるので、こういう点もそういう意味では必要かなと松本先生のお話を伺いながら思ったところでございます。ありがとうございました。
これで国際戦略委員会の皆様から御意見をいただくことができましたが、残りが40分ぐらいになっておりまして、続いて人材委員会の皆様からいただきたいのと、その後にできれば西條審議官、それから柿田局長からも何か加えていただける内容があるかもしれませんので、その後にまたお願いしたいと思います。
では、あと9名おられますね。では、またあいうえお順で参りたいと思います。では、続いて、稲垣委員が次の順番ですが、用意できておられたらお願いいたします。
【稲垣委員】 ありがとうございます。今までのお話を聞いていて、やっぱりどこも大変だなというのが感想としてあります。やっぱり大学が一番アジャイルに適用してないというか、アジャイルできない組織体系に今なってしまっているというのが感想としてありました。
何をするにしても時間がかかり、機動性が全くない状態なので、先を読んでいろいろやろうとしても、例えば教育プログラム立てるには設置審を通過しないといけないとかいうこともありますし、ダブルディグリーの調整をしているのも、実は先生で、エラスムス関係だと、やっぱりヨーロッパと日本の単位システムが違うので、結構調整に時間がかかるというようなことを聞いたこともあります。本当に学生の国際的な頭脳循環を考えるのであれば、国際化のことを前提にした単位システムとか、単位のあり方といったことに踏み込んでいったほうがいいのかなと感じました。
あとは、やはり大学によって目的がそれぞれだと思うので、本当に優秀な人材を育てたいという大学を目指すのであれば、やっぱり定員の充足率とか標準年限の修了とかにこだわった評価ではなくどれだけ優秀な人材を輩出したかという観点での評価方が重要だとおもいますので、税金が投入されているということがついてくると思いますが、それぞれの大学の目的に合わせた評価となどを導入していかないとなかなかじり貧になっていくと感じました。減点方式をもう少し見直したほうがいいかなと思います。
ちょっと簡単ですけど、以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。「大学がもっとスピーディーに動けるかどうか」とか、それから「ほかと一緒じゃないといけない程度が結構高く設定されているので、そこを何とかできないか」ということで、CSTI委員も兼ねている方もおられるので、後で何かお考えがあったらいただきたいと思います。ありがとうございました。無論無理に関連の発言をいただかなくても結構です。
ちょうど次がその方ですね。梶原先生、続きお願いいたします。お好きなことをお話しください。
【梶原(ゆ)委員】 私のバックボーンとしては企業ですので、先ほどの小川委員のほうから企業が変わってきている実態、実情はというのは、大学に伝わってないようですねという話がありましたが、まさに私はそれを非常に思っております。資料の2の1ページの書き方で、我が国でも流動性が高まる傾向はある、の次の「ものの」という表現はどちらかというと少しネガティブだと思っていて、「あるので」という形で、ムーブメントを加速するような前向きな捉え方をして、もっと加速していかなきゃいけないと思っています。
加えて、ほかの方も仰っていましたけど、初等中等教育のときからの変化というのがやはり重要で、企業として何が必要か、今話題になっているのは、不確実性が高く、どういうことが起きるか分からない世の中でSTEAM教育を実践した経験を持っていることを非常に重視しているところがあります。アートの部分ですよね、リベラルアーツであったり、それからデザイン思考であったりというところ、それはやはり初等中等教育のところから変わっていかなければいけない。そうすることによって俯瞰的に物事全体が見られるような人だとか、社会との関係性が分かる人が育つ。企業としての取組では、若い女性はこういう形の選択をして今に至って、選択失敗したことはあるけれども、好きなことをやってチャレンジすることが非常に楽しかったとか、ロールモデルを示す。今半導体がブームになっているので、半導体とSTEAMがどう関係性があるかということを説明することをしています。
ある高校生向けのフォーラムでの産業界からの言葉の中で、日本の産業、あるいは日本の将来が悲観的に語られてしまいがちだが、高校生をはじめとする次の世代の人たちには将来に希望が持てる展望を示すということが非常に重要、と言っている。若い人たちに対してどういうメッセージを出すかという意味で、日本の悪い状態を一生懸命言うのではなく、変化してきて、より一層みんなが活躍してもらうという、勇気を持って次に進めるような、そういうメッセージを出していただくというのがいいと思います。
企業は、キャリア採用が非常に増えているのは事実で、即戦力を求めています。つまり、高度専門人材です。そう変わってきていることを明確に企業としても発信していくでしょうし、大学のほうも、最新の実態がどうなのかを知ってください。いつでも同じ課題を聞いてしまっているところがあるので、私としてはもっとアジャイルに変わっていきましょうと思います。
また、企業ではインターンが非常に好評です。それぞれの状況が分かるので、的確な人を採れる、あるいはポテンシャルという話がさきほどございましたが、ポテンシャルがある人を見ることができます。30分の採用面接とは違い双方に有用です。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。「明るく行きましょう」ということと……。
【梶原(ゆ)委員】 本当に明るく行きましょうという感じ。
【狩野主査】 「変化を後押ししましょう」ということと、それから「身近なものとSTEAMをつなげていく」と、「現実を見に来い」ということをいただきました。ありがとうございます。
では、続きまして、次、今日おられるのは迫田先生ですかね。では、日立ソリューションズの迫田委員、お願いできますでしょうか。
【迫田委員】 ありがとうございます。今ちょうど梶原さんも言われましたが、全般的に課題は網羅されているように思いますけれども、やや自虐的に見えて、日本が悪いと見えてしまう点は、これでいいのかなと感じます。
ちょうど最近、『シン・日本の経営』という本を、ウリケ・シェーデというUCサンディエゴの先生が書かれていますが、停滞した30年と言われた中でも日本の企業はしっかり変化しているという見方をされています。カルチャーの差はどうしようもないですけども、それを踏まえてどうやったら日本の勝ち筋があるのかと考えたほうが正しいのではないかなと思いました。
それから、起業が少ないという話とイノベーションとは分けて考えたほうがいいのではないかなと思います世界に影響を及ぼす大きなイノベーションを起こしていくのは、やはりディープテックであり大学も企業もしっかり取り組むべきことだと思います。
また、イノベーションを起こしていくには、課題を発掘し、それを特定し変革していける人材が必要です。今ドクターだけに着目されていますけど、実は6ページの右端のほうのビジネスリーダーのほうが足りないかもしれない。あるいは社会科学系の人たちが足りないのかもしれない。そういう発想もあってもいいのではないかなと思いました。
それから、やはりグローバルに戦っていくときに、他国と比べてどうかという点が重要です。具体的な目標として博士後期課程学生への支援を3倍にするという数字がありましたが、自分たちが頑張って3倍にしたというだけではあまり意味がありません。大学院に行く人たち、博士を取りにいく人たちが、生活の不安がないのはもちろんですけども、他国と比べて日本がどれだけ払えば優位になるのかということから考えていかないとゴールにならないと思います。比較優位をどうやって築くのかという観点で目標設定すべきじゃないかなと思いました。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。ぜひ「勝ち筋の方角に表現ができないか」というお話と、それから、「これから何をやっていくべきかというのを見いだす人たちが博士人材のみならず必要である」ということと、「KPIの裏側は一体何なのかということがもう少し分かるといい」ねというお話をいただいたと思いました。ありがとうございました。
では、お待たせいたしました。杉山先生、お願いいたします。
【杉山委員】 幾つもあるのですけれども、時間ないので、国際頭脳循環のところの流動性について4つほど。
1つは、まず、日本は貧しくなっているという認識をしっかり持たないといけない。これはミスマッチが起きているという問題です。この間、うちの学生がスタンフォードのポスドクに行くというので給料を聞いたところ、年8万ドルだそうです。今のレートでは1,200万、国立大学の教授よりも多い。次にアメリカの有名大学の准教授を採ろうとした。給料を聞いたら3,000万円以上。これが日本に来たら800万円から1,000万円になってしまう。採れません。給与を聞いて断られた。これは本当にごく最近、私が直面したことです。国際流動性を増やすためには、まず日本が貧しいという認識からスタートしないと、全部ミスマッチになる。
一方で、すごく授業料が安いとか、物価が低くて日本は暮らしやすいので、留学生にとっては非常に魅力あるところになっている可能性があるのはプラスな点です。
それから2つ目が、まず海外留学をさせるためには、一歩目のためにしっかり背中を押さないといけない。学部1年生と話していると外国へ行くのが怖いというようなことを言われました。大学院生でも、最初の国際会議とか短期の滞在とかをうまく押してあげると、その後の長い期間の留学、ポスドクなど、いろんなところにつながる。最初の第一歩から、ネットワークをつくっていったり、マインドセットを変えたりするということが重要である。
それから、ちょっと関連しますが、ワールドマーケットに日本のポスドクとか教員は入っていない。完全にそこから分離しています。だから教員の外国人比率もめちゃくちゃ低いですし、それからポスドクも日本の中でやり取りしているだけで、海外にも行かないし海外からも来ないというような完全にクローズドなシステムになってしまっているので、ここを何とかしなければいけない。そのためにはPIレベルの人たちの人材交流とか、いろいろやはり日本の中身を外に見せていかなきゃいけない、ということがあります。いつの間にか完全に鎖国状態になっている。そこで安住している。そうすると国際共同研究も増えないので論文の引用率も下がるみたいな話があります。
最後ちょっと今ややこしいのが、安全保障の問題です。中国と共同研究しようとか、中国から人に来てもらおうとかするといろいろ大変難しい問題が生じている。これはちょっと現場レベルでは厳しい話かな、と思っています。
まだちょっと幾つかありますけども、このぐらいにしておきます。
【狩野主査】 すいません、御遠慮いただきまして、ありがとうございます。もうちょっと時間があれば後で追加いただければと思います。「貨幣価値」の問題、「一歩目をしっかり自信を持ってもらう」こと、「ワールドマーケットに入れる」か、そして「セキュリティーの問題」ということをいただきました。ありがとうございます。
では、続きまして、隅田先生にお願いできますでしょうか。
【隅田委員】 よろしくお願いします。4点お話ししたいと思います。
1点目は、イノベーションに関していえば、やはりもっと時間的な余裕とか、そういうのを確保するのはどうするかというのはやっぱり重要な鍵かなと。キーワードとすると、やっぱり挑戦するとか、日本の強みを伸ばすとか、つくるとか、やはりそういうのがもっと出てきていいのではないかなと思いました。
2点目は、アジアにおける相対性。世界はありましたが、アジアをもう少し考えたときに、例えば紹介されたPISAとかTIMSSの調査で、OECD加盟国の中では1番とよく出ますが、OECD加盟国以外の参加国を合わせると1位はシンガポールです。もっと言えば、TIMSSとかでは、台湾とか韓国も日本より上だったりする。
ですから、アジアの中での相対位置が必ずしも上になってないという、そういうのをどうするか。それで考えたときに、シンガポールと日本の得点別の分布を見ると、日本は真ん中辺りに固まっています。真ん中よりちょっと上に。それがシンガポールはもう少し上のほうにもっと厚い層があり、上位層が多いです。施策の中で特定分野に優れた意欲を持つ児童・生徒の能力をさらに伸ばす取組ってありますが、それをもっと面で広げて、やっぱりもっと上に、より多くという、そうすることでやはりさらにアジアの中でも優位性が出てくる。
3点目はそれにも少し関わるのですが、留学・海外派遣で、やはりこれは大学院生になって急にと留学となっても難しくて、学部の話も出ましたが、やはり高校とか義務教育、小・中・高・大学・大学院とシームレスにもっと考えておかないとなかなかうまくいかない。ちょっときっかけがあってこそできるようになっていくと思います。一度にできるものではないですね。
仕組みのつくり方としていえば、大学でデュアルディグリーとか、私も学内で国際担当ですが、なかなか難しいけれども、最近であればマイクロクレデンシャルとか、もっと細切れにすることで国際通用性のあるものを小さな部分からつくれる仕組みもできてきているので、そういうのはひとつあるのではないか。
4点目は、こういうイノベーションとやっぱり法的整備というか、法律のほうもセットに走らせないと追いつかないですね。やはりイノベーションが出たときに、法的整備で遅れをとらないと。セットでやると。
ここに関していくと、先ほどの大学のベンチャーとか博士人材の優遇に関して、大学や企業への税制優遇があっていいのではないかなとも思いました。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。「じっくりやらないとイノベーションになりません」よねということが一つ。それから、「上位の人たちを増やせる方法はないか」ということ。それから、「小中高で海外との壁を減らす」方法。これちょっと思ったのですけども、英語を成績の評価の基準よりか、運転免許みたいにして、ある一定以上しゃべれればオーケーというような方法をやっていかないと、何となく人々が自信をなくすだけではないかと思ったりもするところがございました。勝手な個人的意見です。
それからあとは、「法律と新しいことのセットで動く」ということをいただいたと思いました。ありがとうございました。
では、続きまして、桝先生、お願いします。
【桝委員】 桝です。よろしくお願いします。私からは委員会の冒頭で触れられた0番のイノベーション人材とともにある社会の実現についてコメントします。誰もが持つことが期待される科学リテラシーの強化とありましたけども、これは社会全体の科学にあまり関心がない層も含めた、市民の皆さんも含めたリテラシー強化のことを言っているかと思いますが、実際日本で科学に積極的な関心層と言われる割合は16%で、逆に言えば残り8割は決して科学に積極的ではないという社会状況が、これ、海外よりは低いのですけれども、それがまず前提としてあります。
その中でどうしてもソーシャルメディアというのが甘い誘惑で、ソーシャルメディアを使うと若い層にも、低関心層にも伝わるのではないかという幻想があると思いますけども、実際、ソーシャルメディア、皆さんもお気づきのとおり、必ずしも低関心層に届きやすいものではなくて、むしろ関心層にのみ偏って届く。その結果リテラシー格差を増幅するタイプのメディアであることが、コロナ禍も含めて皆さんお気づきだと思います。
ですから、文科省さんとして意識してほしいのは、どちらかといえば非選択的な場、受動的な場を活用していくことをもっと意識してほしいなと思っております。かつては新聞・テレビがそれだったのですけども、新聞が既に低関心層に届かないメディアになったことというのは社会調査からも明らかになっていますので、何とかテレビが辛うじて多少保っているというところと、あと、やっぱり小中学校の義務教育の場というのは今や数少ない非選択的な場、受動的な場になっていると私は捉えています。でも今回のイノベーション戦略の話が、テレビの現場、小中学校の現場でどこまで理解されているのかなというところにひとつ課題があるのではないかなと思っております。
恐らく今回のこの戦略というのは、多くの市民にとって直接触れる機会はありません。ですから、本当の意味で皆さんの全員の目に入るような場で、私たちが求めるようなロールモデル、イノベーション人材というものを見せる。それが恐らく非選択的な場で、テレビなのか、あるいは小中学校なのかですけども、見せていくことをぜひ意識してほしいなと思っております。
これが社会全体のリテラシー醸成という点では、先ほどからお話しになっている国際的な流動性とか、アンコンシャス・バイアスの解消にもつながってくる話かと思いますので、ぜひそこを意識していただければと思っております。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。マスコミを背景に持っているのは桝さんだけなので、ちょっと一言だけ質問させていただきますと、ロールモデルを見せるのもそんなに簡単ではないですよね。ここは一体具体的にどのようにすれば、つまり受動的な場にそういう人をあらわせて講演をさせるとか、そういう意味合いですか。
【桝委員】
ロールモデルを見せるというのは、以前も委員会では言いましたけども、例えば、じゃあ、大谷翔平選手は別に難しくなくロールモデルとしてなっているわけで、日本の場合、科学関係の人材のロールモデルって唯一出てくるのが数年に1回のノーベル賞の場だけになります。そこでいうと、テレビでいうならば、そもそもメディアの従事者というのがこういったイノベーション人材というものを正しく理解しているかというところ、私は理解しているつもりですけども、全般的にそこまで理解しているかというところと、あと、メディアの部分の科学リテラシーというのを上げていけば、必然的に、科学にドラマがあることはよく分かっていることですので、あとはそこに気づけるかどうかというところだと思いますので。決して科学にドラマがないとは思いませんし、たくさんポテンシャルはあると思っています。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。ちょっと深めたいところですが、時間がそろそろないので、参りたいと思います。すいません、私がたくさんの方を名簿から見ている中で、桝先生の前の長谷山先生を飛ばしてしまったようで、大変失礼しました。お許しください。長谷山先生、次にお願いできますでしょうか。
【長谷山委員】
長谷山です。学術領域や大学によって、今、私がお話しすることは変わってくると思いますが、主に論点の(3)の頭脳循環について、意見を述べさせていただきます。先ほど杉山委員が、はっきり言ってくださったのでとても言いやすくなりましたが、現状、日本という国は以前のような経済大国ではなくなったことを、理解していない学生や、若いお母様やお父様たちが多く、なぜ海外に行く必要があるのかという意識がいまだにあるように思います。世の中は変わったと考えて施策を打たないと、事業がガラパゴス化することになります。ここから先は、問題を洗い出して施策を打っていくのだと思いますが、杉山先生が、学部学生が海外へ行くのが怖いと言ったというお話で、徐々に育てていく必要性を述べられました。徐々に育てる具体例とすると、大学院生になりますと国際会議は身近なもので、年に2度も3度も海外へ行く学生がそれほど珍しくありません。また、海外大学と積極的に協定を結ぶようにとの施策が打たれておりますので、海外大学と交流することや、互いの学生が行き来し共同で自ら研究を行うことも珍しくありません。
それに加えて、メールは日常ですし、コロナによってウェブミーティングも日常になりました。コミュニケーションを取る方法は多様であり、対面以外を頭脳循環でないと文科省が仰るのであれば、改めて、交流の方法が世の中で変わってきていることをお考え頂き、学部学生から海外交流を身近にする敷居が高くない方法を挟み込むことで、目指す頭脳循環に繋げて頂ければと思います。
冒頭に、私は学術領域によって異なると申し上げましたが、例えば先ほど申し上げたメールやウェブミーティングに加えて、私の研究分野であるAIには、手法やアプリケーションによって議論を行ったりアプリケーションを公開したりするコミュニティが世界中に多く存在します。学生たちは、自身の研究に合わせてコミュニティを選択し、日常的にメッセージを発し、そこから返ってくるメッセージに答えています。これをもってコミュニケーションを取っていないとか、頭脳循環でないと言ってしまうと、これからの社会で海外交流の日常化の第一ステップが損なわれると感じます。学生には既に、海外交流の第一ステップが起こっていると感じます。
最後に、日本人の学生が感じる現在の環境は、我々がここで議論している手法やツールとは随分と異なった形で成長していると感じます。産業界においても、私が就職担当の時に留学生は対象外と言われたことはありませんし、博士課程学生をどんどん送ってくださいとしか言われたことがありません。企業も変わってきていますし、海外との頭脳循環、知識交流というものにも世界的な変化が起こっていると考えます。効果的な支援を形づくることが極めて重要で、ガラパゴス化せずに、また世界から取り残されずに、日本流の新たな方法を考える必要があるのではないかと思います。
以上です。
【狩野主査】 長谷山先生、ありがとうございました。大変順番が間違ってしまって失礼いたしました。要は、「変化している」ということ、それから「出会う、あるいは、ともに進めていく機会は別に行かなくてもある」よということ。そうしたことを、あるいは企業も変わっているということを「知る機会」、そういうことをぜひ活用しながら進める必要があるだろうということをいただいたと思いました。ありがとうございました。
では続いて、今度は、これも珍しくベンチャーを背景とされる水口委員に御意見いただきたいと思います。
【水口委員】
ありがとうございます。私からはベンチャー視点で人材の流動性についてのお話しができればなと思います。最近経産省の方から大学発ベンチャーの実態調査のレポートがありましたが、大学発ベンチャーは増えており、さらに大学発ベンチャーはディープテックを基盤とするような事業になることが多いですので、活躍する博士人材の割合も一般企業より多いというデータもございました。
しかし気になることとして、米国と比べて日本の大学発ベンチャーの倒産数は圧倒的に少ないようです。これは必ずしもいいことではないかなと思っており、厳しい言い方すると、リビングデッドのような企業が増えているのではないかなというところが見てとれます。そのため、このことがもしかしたら人材の流動性を低くさせている原因の1つなんじゃないかなと感じております。
なので、ベンチャーは挑戦して、うまくいかなかったら潔く解散すると。そして人材流動性を高めて、いい人材を集めて海外で戦える新しいベンチャーをつくって、そういった循環を生み出していくということが必要なんじゃないかなと感じております。
その上で、挑戦を評価するであったりとか、失敗を評価したりというような文化の醸成を行い、次のトライが生まれ続けていくような気持ちを促すような仕組みができればいいなと思います。また、取り組まれているところもありますが、ベンチャーやアカデミアVC、大企業等の人が集まるようなコミュニティ、エコシステムをつくって、例えばあるベンチャーが潰れてしまったら、じゃあ、うちのベンチャーにおいでよとか、一緒に新しい会社を起こそうみたいな、そういった会話が生まれるような場所がつくれるといいのではないかなと感じております。
以上です。
【狩野主査】 大変貴重な御意見ありがとうございました。ちょっとだけまた質問させていただくと、一つ目、日本のベンチャーに海外から人を引き寄せる方法があり得るでしょうか。二つ目は、コミュニティに関しては政府が関わる必要がありますか。お願いします。
【水口委員】
そうですね。まず1つ目ですが、我々の企業にも留学生が大学院修了後に入社している事例がありますので、海外人材が日本のベンチャーに入る場合も見られます。また、アカデミア発ベンチャーの場合、国際的な研究者ネットワークを持っている場合が多いと思いますので、そのような繋がりを生かした連携により、海外から人を引き寄せたり、逆に海外展開を促進させていったりということが期待できます。
2つ目ですが、やはり資金が必要になってきますので、政府の支援も必要だと思います。ただ場所をつくっただけでは機能しないと思いますので、うまく循環させるような仕組みは要るかなと思います。
【狩野主査】 ありがとうございました。では、続いてというか、ようやく人材委員会のラストまでお待ちいただきました村上先生の番になっております。よろしくお願いいたします。お待たせしました。どうぞ。
【村上委員】
村上です。私からはまず学位取得型の理系大学院生の日本からの留学を増やすということをお願いしたいと思います。大学院生の人数の構成を見ますと、修士は理系が約3分の2、博士になると7割が理系になりますけれども、日本学生支援機構の海外留学支援制度の応募状況を見ますと、自然科学系は人文社会系よりもはるかに少ないということで、もともと応募しないために、留学に行く数が少ないという結果につながっています。
人文社会系は、言語であるとか文化や社会とかが研究対象になっているので、海外に行ったほうが良いということになりますが、自然科学系、工学、保健も含む分野というのは日本にいても十分やれるという部分はあると思います。そういう意味で行かない理由はあると思いますが、私はそれでもやっぱり留学に行ったほうがいいと思います。先ほど長谷山先生から、今は色々なツールが使えるので、色々な形での交流ができるという御意見があって、それももっともだと思いますけれども、やっぱり若いときにつくるネットワークというのは非常に重要で、それは卒業してからもずっと使えるものになります。
また、色々な国際連携とか産学連携の成功要因を見ますと、多くの国の研究者がいろいろ論文を書いていらっしゃいますが、トラストが一番の要因です。そのトラストは、認知的な信頼と情緒的な信頼の2つに分かれていますが、短期間のオンライン会議でそれが生まれるのかというとちょっと疑問もあるので、やっぱり長期にわたって一緒に研究するとか、同じ学生生活を過ごすとか、そういうところのネットワークというのは非常に重要だと思います。
先ほど国外ネットワークを強くするためにはというお話を、文科省さんからいただきましたけれども、単に形成するだけではなくて、それを強くするというのは非常に重要なことだと思いますので、そういう意味で留学に送り出すのは重要です。今、奨学金を与えて日本からの留学を促進していると思いますが、そのときにちょっと遅れが目立っている理系の方に重点的に配分するとか、応募をプッシュするなどしていただいたほうがいいのではと思います。
それから、日本に来る留学生は、欧米からではなくアジア、発展途上国等からが多いわけで、そういう国では、実験設備がないなどの理由で理科教育が遅れているということもあって、留学生の学部の分布を見ますと、日本の学生の学部分布よりも人文社会系に偏っています。そうすると、理系では、日本に来る留学生も少ない中で、日本人も海外に行かないので、相対的にドメスティックな環境になっていると思われます。そこを打破していく必要があるのではないかと思います。
また、海外に行かない理由として、経済的な問題、特に日本は最近経済力が弱いために余計に海外に行く金銭的ハードルが高くなっているとは思いますが、お金の問題を解決したとしても、帰ってくるときの就職に対する不安や壁がある、日本での就職の仕方は海外での就職の仕方と違うというところがネックになっていると思いますので、海外に送り出すと同時に、博士号取得者などが日本で就職したい場合に、それを支援するという政策、対策、も必要なのではないかと思います。
それから、私は国際ネットワークを強くすることは非常に重要だと思っていて、そのために海外在住者は非常に貴重な存在だと思います。今は海外に行ったからといって頭脳流出だと嘆く時代ではなくて、色々な形で海外にいる人たちと連携もできますので、日本から海外へ行った人たちとの結びつきを共同研究などでもっと戦略的に活用していってもいいのではないかと思います。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。最後におっしゃった「海外在住の皆様の活用の方法」というのは今までおっしゃった方がいなかったかもしれないので、大変重要な点を加えていただいたと思います。あと、「トラストをつくるための時間をつくる」ということについての重要性もありがとうございました。あるいは「アジア、途上国の方々からどうやって選んでもらえるか」という視点、それから、「分野ごとに事情が少し違うかもしれない」という視点は非常に重要なことをおっしゃっていただいたと思います。誠にありがとうございました。
どうしましょう。出席の方々の側からすると文部科学省の方がこれを聞いてどう思ったかも少しうかがえると多分うれしい気がするかもしれません。何かいただけることありましたら。
【柿田科学技術・学術政策局長】
柿田です。ありがとうございました。非常にたくさんの御意見をいただきまして、ありがとうございました。
昨日、人材委員会と国際戦略委員会の資料を局内で共有していただいて、30分、40分程度、ミーティングをやっていました。委員からご意見いただいた人材戦略に関する資料1-1のタイトルですが、昨日まではオーソドックスなタイトルでした。しかし、シン・ニッポンイノベーション人材確保・育成・活躍促進戦略という漢字が多く、長いものでした。せっかくニッポンイノベーションということで片仮名から始まっているから、その前にシンをつけるというように、何かちょっと変えてみよう、ということになりました。確かにタイトルと中身が合ってない点があるかもしれません。タイトルの変更については私が言ったことでございます。
先生方からいただいた沢山の意見の中で、全部に対して網羅してお答えすることはできません。しかし確かに、悲観的なデータ、悲観的な現状をあぶり出してどうしようと検討することが、我々に染みついているかもしれません。課題は何かと言われれば、一生懸命調べて、課題を整理して、このような課題があるからこのような結論になるという流れで動いています。政策文書や施策の立案や本日の資料のようなものも、このように悲観的になりがちです。網羅的なものでなくても、梶原ゆみ子先生が仰っていただいたように成功事例が出ている部分を強調し、前向きにやっていこうとか、出てきている良い兆しを強くアピールして、その方向により一層強く進めていくような形の人材戦略でよいと私は思います。例えば次世代と博士の問題とか、若干テーマを絞ったとしても、前向きに、そして特に若い人を中心とした世の中の人に、自分もその道に進んでみたいと思っていただけるような明るい戦略にしたものをシン・ニッポンイノベーション人材戦略にできたらいいのかなと思いました。今日のご意見を聞いて、我々の意識を変え、悲観的になることはやめましょうということで進めていきたいと思いました。
以上です。
じゃあ、審議官にマイクを渡します。
【西條大臣官房審議官】 局長の御指名なので。ちょっと敵対のような座席にもなっているので、局長が言ったことを否定するわけにいかないですけど。
ありがとうございます。本日いろいろと御意見いただきまして。先ほど局長が申し上げたとおり、昨日も少し我々の中でも議論をさせていただきましたが、本日、非常に示唆に富んだ御意見いろいろいただきましてありがとうございます。
今局長からもお話ありましたけれども、確かに我々、課題は課題として大事かなと思いつつも、出していくイメージを、未来に向かって、将来に向かって、担う人材をつくっていくということなので、子供たちのみならず、社会に対してそういうメッセージを出していくというのは大事だと。それを見せる上で、桝先生のほうからもありましたけど、どうやってロールモデルや見える化をしていくかという、これは非常に重要かなと思っております。
それを我々もやろうとはしているのですけれども、なかなかできていないところもあって、例えば先ほどの博士人材のインターンシップも、これも前々からどうしても大学から言わせると、企業が採らないから悪いだろう、企業から言わせると、採りたいと思うような人材がいないから悪いだろうというのがずっと続いてきたところを、今、博士インターンシップ、いわゆる一緒になって考えましょうと。実際に本当にそうですかって、学生をちゃんと企業側からジョブディスクプリションを出してもらって、それに学生が行って、実際にやってみると非常にいい評価というところにはつながっていまして、逆に言うと、その中から大学でこれ足りないよねというのはフィードバックしていただければいいですし、逆に企業側に対しても大学側からの声が届く。実際やってみないとできないところがある。そこは一つ一つ潰していかなきゃいけないかなと思っておりますので。
そういう意味でも、とにかく見える化というか、実際に実践やってみるような場をつくっていかなきゃいけないのかなというところを非常に思っております。
それと、留学とか、国際の観点で申し上げますと、今日も長谷山先生からもちょっとお話もありましたし、皆さんからもありましたけど、割と我々も平均を見てどうしても施策という話になっちゃいますけど、やっぱりいろいろと現象違う、分野も違う、細かいところにどこまで手を入れるかというところはあるのですが、少しやっぱり平均ではなく、どういうところで何が起こっているのかというところで少し細かめに見ていかなきゃいけないかなと。
ただ、その際に、先ほど村上先生からもありましたが、海外の留学、直接学位を取りにいくようなものも必要だというのもありますし、逆に言うと理系なんかは、大学で大学院に行ってその中で研究の中で海外に2か月行く、半年行く、これは学位取得ではないんですけど、こういったルートもあって、多分その辺のバランスの問題だと思って、これはおっしゃるとおり、今、学位取得というのは非常に少ないので、ここはやっぱり伸ばす必要があるんですが、じゃあ、全部が海外の大学に行けばいいかという問題ではないと思っていますし、そういう意味では、それぞれの施策を、もう少しばらばらではなくて、施策をネットワーク化してどうやっていくのか、ここら辺も少し考えてやっていく必要があるのかなと思っております。
いろいろと本当に、今日は逆に言うと文科省だけでは、我々の投げかけも文科省だけでできるものだけに限って投げかけたわけではないので、特に大土井参事官なんかはそういう球を投げたのであれですけども、逆に言うと、第7期に向けてということになりますと、政府挙げてのということになりますので、今日いただいた御意見、文科省ののりを越えるところも当然ありますけれども、それをどういうような形で政府全体のまとめにしていくかと、これはまた対応してできたらなと思っております。
どうもありがとうございました。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。もう一巡させようかと思いましたが、少なくとも皆様の御協力で一巡はすることができまして、次回、次々回、また国際戦略委員会、そして人材委員会がそれぞれ開催の予定が近くにありますので、もし言い足りなかった方はそちらでもまた御発言をいただければということを思います。今日責任ある立場のお二方から最後にしっかりとしたお返事をいただきまして、大変よい会になったのではないかなと思っております。
また、省庁の壁を越えるところですけども、やはり省内の皆様にとってはなかなかそれが難しいときがあるとすれば、我々のように外から関わらせていただいている者がそれぞれの関わりの中でまた広げていくということも大事かもしれませんので、こちらも互いに進められたらいいなということを思いながらお伺いいたしました。
そういうことで、今後も議論を深めてまいりたいと思いますという整理を最後に言うことになっていました。ありがとうございました。
それで最後に事務局より事務連絡をお願いすることになっております。對崎さんと飯塚さんとそれぞれお願いできますでしょうか。
【對崎人材政策課長補佐】 ありがとうございました。人材委員会の委員の先生方に御連絡でございますけれども、次回の開催につきましては、御連絡のとおり、6月24日を予定しております。
また、通常の連絡でございますけれども、本日の会議の議事録は作成の上、皆様にお目通しいただいた上で、主査の確認で、その後文科省のウェブサイトに公表させていただきます。
本日、人材委員会の委員の方々をはじめとして、国際委員会の委員の方々にも御意見を、ふだんお伺いできないようなところも聞けて個人的にも大変勉強になりました。どうもありがとうございました。
【飯塚参事官】 続きまして、国際戦略委員会の関係で、事務局の飯塚のほうから御連絡させていただきます。
次回の国際戦略委員会の開催日時につきましては、先日御連絡しておりますとおり、6月もしくは7月の開催を予定しております。実際どっちにするかというのはちょっと調整中でございますので、またメール等で御連絡させていただければと思っております。
また、国会戦略委員会におきましても、人材委員会同様に議事録を作成し、御確認をいただきまして、文科省のホームページに公表させていただければと考えております。
本日はありがとうございました。
【狩野主査】 ありがとうございました。陪席の皆様も80名近くずっと最後まで聞いていただきまして、誠にありがとうございました。
それでは、今日はこれにて閉会といたします。誠にありがとうございました。
―― 了 ――
科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付